説明

有機化合物の使用

【課題】レニン阻害剤又は薬学的に許容されるその塩を含む、糖尿病性心筋症の処置用医薬組成物の提供。
【解決手段】2型又は1型糖尿病患者の糖尿病性心筋症の処置用医薬の製造のため、レニン阻害剤例えばアリスキレン又は薬学的に許容されるその塩の、単独で、又は、他の活性成分、例えばACEI、ベータブロッカー、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、TZDのような2型糖尿病治療剤、及びインスリンのような1型糖尿病治療剤から成る群から選択される1種以上の活性成分と組み合わせた組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病性心筋症の処置用医薬の製造のための、レニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩の、単独で、または、1種以上の活性成分と組み合わせた使用に関する。
【背景技術】
【0002】
レニン−アンギオテンシン系(RAS)の酵素カスケードは一連の生化学事象を含み、それ自体よく知られており、例えば高血圧の処置の可能性を開くための、制御的介入を使用するための種々のアプローチが存在する。アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害および/またはアンギオテンシン受容体遮断を介したRASの薬理学的抑制は、広範な心血管疾患(CVD)の処置のための、証明された有効な治療的アプローチである。レニンの酵素活性の阻害剤は、アンギオテンシンIの形成の低下をもたらす。その結果、産生されるアンギオテンシンIIの量が減る。その活性ペプチドホルモンの濃度減少は、例えば、レニン阻害剤の抗高血圧効果の直接の原因である。従って、レニン阻害剤またはその塩を、例えば、降圧剤としてまたは鬱血性心不全の処置に用い得る。さらなる評価が、レニン阻害剤が遙かに広い範囲の適応症(therapeutic indication)に対しても用い得ることも明らかにする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
Hayat et al (Clinical Science 2004, 1007, 539)により記載されている通り、糖尿病患者は心不全を発症するリスクが増大しており、それは、糖尿病性心筋症と呼ばれる別の疾患経過である。それ故、心筋症の発症は、真性糖尿病患者における重大な合併症を代表する。糖尿病患者における糖尿病性心筋症を予防しまたは遅延させるための医薬を提供する必要がある。驚くべきことに、本発明者らは、アリスキレンのようなレニン阻害剤が、単独でまたは組み合わせで、糖尿病性心筋症の処置に有益な効果を有し得ることを発見した。それ故、本発明は糖尿病性心筋症の処置のための治療的アプローチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要約
一つの局面において、本発明は、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩の、単独で、または、例えば、ACEI、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、ベータブロッカー、TZD(チアゾリジンジオン類)のような2型糖尿病治療剤、インスリンのような1型糖尿病治療剤、またはいずれの場合も独立してその塩のような、1種以上の活性成分と組み合わせた、糖尿病性心筋症の処置に使用するための医薬の製造のための使用に関する。
【0005】
一つの態様において、本発明は、糖尿病性心筋症の処置のための、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩の使用に関する。それ故、一つの態様において、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩を、糖尿病性心筋症の処置用単剤療法として投与する。
【0006】
他の局面において、本発明は、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩を、単独で、または、例えば、ACEI、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、ベータブロッカー、TZDのような2型糖尿病治療剤、インスリンのような1型糖尿病治療剤、またはいずれの場合も独立してその塩のような1種以上の活性成分と組み合わせて含む、糖尿病性心筋症処置用医薬組成物に関する。
【0007】
さらに他の態様において、本発明は、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩を含み、さらなる活性成分を何等含まない、糖尿病性心筋症の処置用医薬組成物に関する。それ故、一つの態様において、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩を糖尿病性心筋症の単剤療法として投与する。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩を、例えば、いずれの場合も、単位投与形態の、ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、ベータブロッカー、TZDのような2型糖尿病治療剤、およびインスリンのような1型糖尿病治療剤、またはいずれの場合も独立してその塩から選択される、1種以上の活性成分と組み合わせて、薬学的に許容される担体と共に含む、糖尿病性心筋症の処置に同時に、別々にまたは連続的に使用するための、医薬組成物に関する。
【0009】
本発明は、さらに、ヒトを含む温血動物に、治療的有効量のレニン阻害剤、例えばアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩を、単独で、または、例えば、ACEIs、ベータブロッカー、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト(antagoniss)、TZDのような2型糖尿病治療剤、インスリンのような1型糖尿病治療剤、またはいずれの場合も独立してその塩のような1種以上の活性成分と組み合わせて投与することを含む、糖尿病性心筋症の処置方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による態様
本発明が適用されるレニン阻害剤は、インビボでレニン阻害活性を有し、それ故に、例えば、高血圧(例えば、悪性高血圧、本態性高血圧、孤立性収縮期高血圧、または他の二次的高血圧の何れであるかを問わない)の予防、発症遅延および/または処置用治療剤として、薬学的有用性を有する全てのものである。レニン阻害剤が有用であり得るさらなる適応症は、例えばWO2004/002549、WO2005/089731、WO2006/041763、WO2006/041974、WO2006/116435、WO2002/40007およびPCT出願番号2007/065564に記載されている。
【0011】
例えば、本発明は、下記に開示されたレニン阻害剤から成る群から選択される、レニン阻害剤、特にその化合物請求項および実施例の最終生成物に関する:
米国特許5559111、6197959、6376672、6051712、6197959、6268499および6274735;米国特許出願2004/0204455、2002/087002;WO2003/099767、WO2005/054177、WO2005/051895、WO2005/051911、WO2006/066896、WO2006/069788、WO2006/074924、WO2006/094763、WO2006/100036、WO2006/0117183、WO2006/125621、WO2006/128659、WO2007/006534、WO2007/077005;WO2003/093267、WO2004/002957、WO2004/096116、WO2004/096799、WO2004/096803、WO2004/096804、WO2005/040120、WO2005/040165、WO2005/040173、WO2005/054243、WO2005/054244、WO2006/021399、WO2006/021401、WO2006/021402、WO2006/021403、WO2006/058546、WO2006/059304、WO2006/061791、WO2006/063610、WO2006/064484、WO2006/079988、WO2006/092268、WO2006/129237、WO2006/131884、WO2007/034406、WO2007/034445、WO2007/049224、WO2003/103652、WO2003/103652、WO2007/045551、WO2004/089915、WO2000/63173、WO2000/64873、WO2000/64887、WO1997/09311、WO2005/037803、WO2005/061457、WO2005/070870、WO2005/070871、WO2005/070877、WO2005/090304、WO2005/090305、WO2006/005741、WO2006/061426、WO2006/061427、WO2006/095020、WO2006/103273、WO2006/103275、WO2006/103277、WO2007/031557およびWO2007/031558;PCT出願2007/005130および2007/005131;欧州特許出願07111290.8および欧州特許0863875。
【0012】
レニン阻害剤は、例えば、ジテキレン(ditekiren)、テルラキレン(terlakiren)、ザンキレン、アリスキレンおよびその塩から成る群から選択される。一つの態様において、レニン阻害剤は、アリスキレンまたはその塩、例えばヘミフマル酸塩、硝酸塩、硫酸水素塩およびオロト酸塩、特にそのヘミフマル酸である。遊離塩基形のアリスキレンは、2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミドと化学的に定義され、EP678503Aに実施例83として開示されている。
【0013】
他の態様において、本発明は、レニン阻害剤または薬学的に許容されるその塩と、1種以上の活性成分の組み合わせの、糖尿病性心筋症の処置用医薬の製造のための使用に関する。
【0014】
一つの態様において、他の活性成分は、ACEI、ベータブロッカー、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、TZDのような2型糖尿病治療剤、およびインスリンのような1型糖尿病治療剤、またはいずれの場合も独立してその塩から成る群から選択される。
【0015】
他の態様において、レニン阻害剤、またはその塩と組み合わせて使用すべき他の活性成分は、ACE阻害剤、またはその塩である。
【0016】
本発明に従い使用し得る適当なACEIは、種々の構造特性を有するACEI、例えばアラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラート、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナプリラート(enaprilat)、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリルおよびその塩から成る群のメンバーを含む。一つの態様において、ACE阻害剤は、ベナゼプリル、ベナゼプリラート、カプトプリル、エナラプリル、エナプリラートおよびその塩から成る群から選択され;他の態様において、ACE阻害剤はベナゼプリル、ベナゼプリラートまたはその塩である。
【0017】
さらに別の態様において、本発明は、アリスキレン、またはその塩と、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラート、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナプリラート、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリルまたはその塩、特にベナゼプリル、ベナゼプリラート、カプトプリル、エナラプリル、エナプリラートまたはその塩、特にベナゼプリル、ベナゼプリラートまたはその塩のようなACEI、またはその塩の組合せの、同時の、別々のまたは連続的な使用に関する。
【0018】
なおさらに別の態様において、本発明は、糖尿病性心筋症の処置用医薬の製造のための、レニン阻害剤または薬学的に許容されるその塩とアンギオテンシンII受容体アンタゴニストの組合せの、同時の、別々のまたは連続的な使用に関する。
【0019】
本発明において使用し得る適当なアンギオテンシンII受容体アンタゴニストは、種々の構造特性を有するアンギオテンシンII受容体アンタゴニストを含む。例えば、出願番号443983を有する欧州特許出願および欧州特許1146872B1に上げられている化合物;特に化合物の請求項および実施例の最終生成物、例えば、(S)−N−(1−カルボキシ−2−メチルプロプ−1−イル)−N−ペンタノイル−N−[2’(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]アミン[バルサルタン]およびその薬学的に許容される塩を特記し得る。さらに、公開番号253310を有する欧州特許出願、公開番号403159を有する欧州特許出願、公開番号WO91/14679を有するPCT特許出願、公開番号420237を有する欧州特許出願、公開番号502314を有する欧州特許出願、公開番号459136を有する欧州特許出願、公開番号504888を有する欧州特許出願、公開番号514198を有する欧州特許出願、公開番号475206を有する欧州特許出願、公開番号WO1993/20816を有するPCT特許出願に表記されているもの;特にその中の化合物の請求項および実施例の最終生成物に上げられている化合物も引用される。一つの態様において、アンギオテンシンII受容体アンタゴニストは、バルサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、テルミサルタン、カンデサルタン、サプリサルタン、オルメサルタンおよびその塩;好ましくはバルサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、テルミサルタン、カンデサルタン、サプリサルタンおよびその塩から成る群から選択し;特にアンギオテンシンII受容体アンタゴニストはバルサルタンまたはその塩である。
【0020】
具体的態様において、本発明は、アリスキレン、またはその塩と、バルサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、テルミサルタン、カンデサルタン、サプリサルタンまたはその塩;特にバルサルタンまたはその塩のようなアンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、またはその塩の組合せの、同時の、別々の、または連続的使用に関する。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は、糖尿病性心筋症の処置用医薬の製造のための、レニン阻害剤または薬学的に許容されるその塩とβ−ブロッカーの組合せの、同時の、別々の、または連続的な使用に関する。
【0022】
本発明における使用に適当なβ−ブロッカーは、β−アドレナリン受容体に関してエピネフリンと競合し、エピネフリンの作用を妨害する、β−アドレナリン遮断剤(β−ブロッカー)を含む。特に、β−ブロッカーは、アルファ(α)−アドレナリン受容体と比較してβ−アドレナリン受容体に選択的であり、それ故、顕著なα−遮断効果を有しない。適当なβ−ブロッカーは、例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、カルベジロール、エスモロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロールおよびその塩;特にアテノロール、メトプロロール、プロプラノロールおよびその塩から選択される化合物である。一つの態様において、本発明において使用するβ−ブロッカーは、アテノロール、メトプロロール、プロプラノロールおよびその塩である。
【0023】
さらに他の態様において、本発明は、糖尿病性心筋症の処置用医薬の製造のための、レニン阻害剤(例えばアリスキレン)または薬学的に許容されるその塩と、TZDのような2型糖尿病治療剤の組合せの、同時の、別々の、または連続的な使用に関する。
【0024】
本発明において使用するのに適当なTZDは、例えば、トログリタゾン、ロシグリタゾン、シグリタゾン;ダルグリタゾン;エングリタゾン;イサグリタゾン、ピオグリタゾンを含むチアゾリジンジオン類(TZD)から選択される化合物、およびその塩を含む。一つの態様において、TZDはトログリタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、およびその塩を含む。
【0025】
さらに他の態様において、本発明は、糖尿病性心筋症の処置用医薬の製造のための、レニン阻害剤(例えばアリスキレン)または薬学的に許容されるその塩と、インスリンのような1型糖尿病剤、またはその塩の組合せの、同時の、別々の、または連続的な使用に関する。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、アリスキレンのようなレニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩と、ACE阻害剤またはその塩を組み合わせて含む、糖尿病性心筋症の処置用医薬組成物に関する。この態様のACEIは、例えば、上記のACEIの群から選択され;ACEIは、例えば、ベナゼプリルまたはその塩である。
【0027】
なおさらに別の態様において、本発明は、アリスキレンのようなレニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩と、アンギオテンシンII受容体アンタゴニストまたはその塩を組み合わせて含む、糖尿病性心筋症の処置用医薬組成物に関する。この態様のアンギオテンシンII受容体アンタゴニストは、例えば、上記のアンギオテンシンII受容体アンタゴニストの群から選択され;アンギオテンシンII受容体アンタゴニストは、例えば、バルサルタンまたはその塩である。
【0028】
さらに別の態様において、本発明は、アリスキレンのようなレニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩と、β−ブロッカーまたはその塩を組み合わせて含む、糖尿病性心筋症の処置用医薬組成物に関する。この態様のβ−ブロッカーは、例えば、上記のβ−ブロッカーの群から選択される。
【0029】
なお別の態様において、本発明は、アリスキレンのようなレニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩と、TZDのような2型糖尿病治療剤、またはその塩を組み合わせて含む、糖尿病性心筋症の処置用医薬組成物に関する。この態様のTZDは、例えば、上記のTZDの群から選択される。
【0030】
なおさらなる態様において、本発明は、アリスキレンのようなレニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩と、インスリンのような1型糖尿病治療剤、またはその塩を組み合わせて含む、糖尿病性心筋症の処置用医薬組成物に関する。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、糖尿病性心筋症の処置方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、治療的有効量のアリスキレンのようなレニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩を、ACEI、またはその塩と組み合わせて含む医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。この態様のACEIは、例えば、上記のACEI群から選択され;ACEIは、例えば、ベナゼプリルまたはその塩である。
【0032】
他の態様において、本発明は、糖尿病性心筋症の処置方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、治療的有効量のアリスキレンのようなレニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩を、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、またはその塩と組み合わせて含む医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。この態様のアンギオテンシンII受容体アンタゴニストは、例えば、上記のアンギオテンシンII受容体アンタゴニストから成る群から選択され;アンギオテンシンII受容体アンタゴニストは、例えば、バルサルタンまたはその塩である。
【0033】
さらに他の態様において、本発明は、糖尿病性心筋症の処置方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、治療的有効量のアリスキレンのようなレニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩を、β−ブロッカー、またはその塩と組み合わせて含む医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。この態様のβ−ブロッカーは、例えば、上記のβ−ブロッカーの群から選択される。
【0034】
さらに別の態様において、本発明は、糖尿病性心筋症の処置方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、治療的有効量のアリスキレンのようなレニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩を、TZDのような2型糖尿病治療剤、またはその塩と組み合わせて含む医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。この態様のTZDは、例えば、上記のTZDの群から選択される。
【0035】
さらに別の態様において、本発明は、糖尿病性心筋症の処置方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、治療的有効量のアリスキレンのようなレニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩を、インスリンのような1型糖尿病治療剤、またはその塩と組み合わせて含む医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。
【0036】
下記は、本明細書を通して使用する種々の用語の定義である:
用語“アリスキレン”は、具体的に定義されていない限り、遊離塩基としておよびその塩、特にそのヘミフマル酸塩、硝酸塩、硫酸水素塩およびオロト酸塩、特にそのヘミフマル酸塩としての両態様を含むと理解すべきである。
【0037】
用語“バルサルタン”、具体的に定義されていない限り、遊離塩基としておよびその塩、特に以下に記載の薬学的に許容されるその塩としての両方であると理解すべきである。
【0038】
バルサルタン、または薬学的に許容されるその塩は、例えば、それ自体既知の方法で製造できる。塩形態は、酸付加塩を含む。少なくとも1個の酸基(例えば、COOHまたは5−テトラゾリル)を有する化合物は、塩基とも塩を形成できる。塩基との適当な塩は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩のような金属塩、またはアンモニアまたはモルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ−、ジ−またはトリ−低級アルキルアミン、例えば、エチル−、tert−ブチル−、ジエチル−、ジイソプロピル−、トリエチル−、トリブチル−またはジメチルプロピルアミン、またはモノ−、ジ−またはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えば、モノ−、ジ−またはトリ−エタノールアミンのような有機アミンとの塩である。対応する内部塩を、さらに形成してよい。医薬使用に不適当であるが、例えば、遊離化合物またはその薬学的に許容される塩の単離または精製に使用できる塩も含む。一つの態様において、塩は、例えば、次のものから選択されるから選択される;バルサルタンの一ナトリウム塩の非晶形;二ナトリウム塩の非晶形またはその結晶形、特に水和物形。バルサルタンの一カリウム塩の非晶形;バルサルタンの二カリウム塩の非晶形またはその結晶形、特に水和物形。バルサルタンのカルシウム塩の結晶形、特にその水和物形、主に四水和物;バルサルタンのマグネシウム塩の結晶形、特にその水和物形、主に六水和物;バルサルタンのカルシウム/マグネシウム混合塩の結晶形、特に水和物形;バルサルタンのビス−ジエチルアンモニウム塩の結晶形、特に水和物形;バルサルタンのビス−ジプロピルアンモニウム塩の結晶形、特に水和物形;バルサルタンのビス−ジブチルアンモニウム塩の結晶形、特にその水和物形、主にヘミ水和物;バルサルタンのモノ−L−アルギニン塩の非晶形;バルサルタンのビス−L−アルギニン塩の非晶形;バルサルタンのモノ−L−リシン塩の非晶形;バルサルタンのビス−L−リシン塩非晶形。
【0039】
一つの態様において、バルサルタンを遊離酸として使用する。
【0040】
β−ブロッカーが、酸または塩基または他の方法で薬学的に許容される塩またはプロドラッグを形成できるとき、これらの形は本発明に包含されると見なされ、本化合物はまた、遊離形の形でまたは薬学的に許容される塩または生理学的に加水分解され、かつ許容されるエステルのようなプロドラッグの形で投与し得ることは理解すべきである。例えば、メトプロロールは、その酒石酸塩として適切に投与され、プロプラノロールは塩酸塩として適切に投与されるなど。
【0041】
2型および1型糖尿病治療剤は、抗糖尿病剤を意味し、例えば、インスリン、インスリン誘導体および模倣剤;インスリン分泌促進物質、例えばスルホニルウレア類、例えばグリソキセピド、グリブリド、グリベンクラミド、アセトヘキサミド、クロロプロパミド、グリボルヌリド、トルブタミド、トラザミド、グリピジド、カルブタミド、グリキドン、グリヘキサミド、フェンブタミドミドまたはトルシクラミド(tolcyclamide);および好ましくはグリメピリド、グリクラジド、およびアマリール;インスリン分泌性スルホニルウレア受容体リガンド、例えばメグリチナイド、例えば、ナテグリニドおよびレパグリニド;抗糖尿病性D−フェニルアラニン誘導体;チアゾリジンジオン誘導体、例えばグリタゾン類、例えば、ピオグリタゾン、トログリタゾンまたはロシグリタゾン、特にピオグリタゾンまたはロシグリタゾン;グルコキナーゼアクティベーター;タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤、例えばPTP−112;ベータ−3AR(アドレナリン受容体)のアゴニスト、UCP(脱共役タンパク質)のアゴニスト、PEPCK(ホスホエノールピルベートカルボキシキナーゼ)の阻害剤、PDHK(ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ)阻害剤、GSK3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3)阻害剤、例えばSB−517955、SB−4195052、SB−216763、NN−57−05441およびNN−57−05445;GFAT(グルタミンフルクトース−6−ホスフェートアミドトランスフェラーゼ)の阻害剤、G6Pase(グルコース−6−ホスファターゼ)の阻害剤、F−1,6−BPase(フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ)の阻害剤、GP(糖タンパク質)の阻害剤、RXR(レチノイドX受容体)リガンドまたはアゴニスト、例えばGW−0791およびAGN−194204;ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤、例えばT−1095;グリコーゲンホスホリラーゼA阻害剤、例えばBAY R3401;アルドースレダクターゼ阻害剤;ソルビトールデヒドロゲナーゼ阻害剤;ビグアナイド、例えばメトホルミン;アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、例えばアカルボース、アジポシン、ボグリボース、ミグリトール、エミグリテート、カミグリボース、デンダミステート(tendamistate)、トレスタチン、プラディマイシン−Qおよびサルボスタチン;グルカゴン受容体アンタゴニスト、GSK−3の阻害剤、GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)、GLP−1類似体、例えばエキセンディン−4およびGLP−1模倣剤;GLP−1アゴニスト;PPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体)のモジュレーター、例えば、非グリタゾン型PPARγアゴニスト、例えばN−(2−ベンゾイルフェニル)−L−チロシン類似体、例えばGI−262570、およびJTT501またはデュアルPPARγ/PPARαアゴニスト;抗糖尿病性バナジウム;抗糖尿病性フェニル酢酸誘導体、β細胞イミダゾリン受容体アンタゴニスト、エストロゲン関連受容体ガンマ(ERRγ)アゴニスト、例えばGSK4716またはGSK9089;エストロゲン関連受容体(ERR)、例えばERRα、ERRβ、およびERRγ受容体のアゴニストまたはアンタゴニスト;DPPIV(ジペプチジルペプチダーゼIV)阻害剤、例えば式
【化1】

の(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジン(LAF237またはビルダグリプチンとしても既知)、およびL−threo−イソロイシルチアゾリジン(Probiodrugに従う化合物コード:上記の通りP32/98)、シタグリプチン(MK−0431としても既知)、(2S)−1−{(2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エチルアミノ)−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、または(2S)−1−{(1,1−ジメチル−3−(4−ピリジン−3−イル−イミダゾール−1−イル)−プロピルアミノ)−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、(S)−1−((2S,3S、11bS)−2−アミノ−9、10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド(2,1−a)イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オン、または(S,S,S,S)−1−(2−アミノ−9、10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド(2,1−a)イソキノリン−3−イル)−4−メチル−ピロリジン−2−オン、GSK23A、サクサグリプチン、3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミド;SCD−1(ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1)阻害剤;DGAT1およびDGAT2(ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1および2)阻害剤;ACC2(アセチルCoAカルボキシラーゼ2)阻害剤;タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPase)阻害剤、特に、PTPase−1B(PTP−1B)阻害剤およびT細胞PTPase(TC PTP)、胃内容物排泄阻害剤、およびAGE(糖化最終産物)のブレーカー、またはいずれの場合も薬学的に許容されるその塩を含む。
【0042】
TZD(チアゾリジンジオン)のような2型糖尿病治療剤が、酸または塩基または他の方法で薬学的に許容される塩またはプロドラッグを形成できるとき、これらの形は本発明に包含されると見なされ、本化合物はまた、遊離形の形でまたは薬学的に許容される塩または生理学的に加水分解され、かつ許容されるエステルのようなプロドラッグの形で投与し得ることは理解すべきである。
【0043】
塩は、特に薬学的に許容される塩である。それらは、塩基性または酸性基のような塩形成基が存在するときに形成でき、それは、例えば4〜10のpH範囲の水性溶液中に、少なくとも部分的に解離した形で存在でき、または特に固体形、特に結晶形で単離できる。このような塩は、例えば、酸付加塩として、例えば有機または無機酸と、塩基性窒素原子(例えばイミノまたはアミノ)を有する化合物から形成され、特に薬学的に許容される塩である。適当な無機酸は、例えば、ハロゲン酸、例えば塩酸、硫酸、またはリン酸である。適当な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、アミノ酸、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、安息香酸、メタン−またはエタン−スルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−またはN−プロピル−スルファミン酸、または他の有機プロトン酸、例えばアスコルビン酸である。カルボキシまたはスルホニルのような負に荷電したラジカルの存在下で、塩はまた塩基と形成され、例えば金属またはアンモニウム塩、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩、またはアンモニアまたは適当な有機アミン、例えば、3級モノアミン、例えばトリエチルアミンまたはトリ(2−ヒドロキシエチル)アミン、またはヘテロ環式塩基、例えばN−エチル−ピペリジンまたはN,N’−ジメチルピペラジンとのアンモニウム塩である。塩基性基および酸基が同一分子に存在するとき、化合物はまた内部塩も形成し得る。
【0044】
これらの活性剤は、プロドラッグ形で存在してよい。本発明は、本発明の活性医薬種(pharmaceutical species)のプロドラッグを含み、例えばここで、インビボで遊離酸に変換可能なカルボン酸のエステルの場合、または遊離アミノ基に変換可能な保護アミンの場合のように、1個以上の官能基が保護されているか、または誘導体化されているが、インビボで官能基に変換できる。ここで使用する用語“プロドラッグ”は、特にインビボで、例えば、血中での加水分解により、速やかに親化合物に変換する化合物を意味する。詳細な記載は、T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series, Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987; H Bundgaard, ed, Design of Prodrugs, Elsevier, 1985;およびJudkins, et al. Synthetic Communications, 26(23), 4351-4367 (1996)において提供され、その各々を引用により本明細書に包含させる。
【0045】
プロドラッグは、それ故に可逆性誘導体に変換されている官能基を有する医薬を含む。典型的に、このようなプロドラッグは、加水分解により活性医薬に変換される。例として、以下のものを挙げ得る:
【表1】

【0046】
プロドラッグはまた、酸化的または還元的反応により活性剤に変換可能な化合物も含む。例として、次のものを記載し得る:
酸化的活性化
N−およびO−脱アルキル化
酸化的脱アミノ化
N−酸化
エポキシド化
還元的活性化
アゾ還元
スルホキシド還元
ジスルフィド還元
生体還元的アルキル化
ニトロ還元。
【0047】
プロドラッグの代謝的活性化としてまた言及すべきは、ヌクレオチド活性化、リン酸化活性化および脱カルボキシル化活性化である。さらなる情報に関しては、“The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action”, R B Silverman(特にChapter 8, 497〜546頁参照)。
【0048】
本発明の化合物の保護された誘導体はそれ自体薬理学的活性を有しないかもしれないが、それらを、例えば非経腸的または経口で投与し、その後体内で代謝されて、薬理学的に活性な本発明の化合物を形成し得る。このような誘導体は、それ故に“プロドラッグ”の例である。記載の化合物の全てのプロドラッグが本発明の範囲内に含まれる。保護基の使用は、‘Protective Groups in Organic Chemistry’, edited by J W F McOmie, Plenum Press (1973), and ‘Protective Groups in Organic Synthesis’, 2nd edition, T W Greene & P G M Wutz, Wiley-Interscience (1991)に充分に記載されている。
【0049】
化合物、塩、医薬組成物、疾患、障害等について複数表現を使用するとき、これは、1個以上の単一化合物、塩、医薬組成物、疾患、障害等を意味し、単数表現を使用するとき、これは、複数(例えばまた同一化合物の異なる立体異性体、例えばラセミ体におけるエナンチオマー等)または単数(“一”)を含むことを意図する。
【0050】
用語“有効量”または“治療的有効量”は、糖尿病性心筋症の進行を停止するか、または遅延させる、または、そうでなければ完全にもしくは一部寛解させるか、または該状態に対して軽減的に作用する、活性成分または活性剤の量を意味する。
【0051】
用語“予防的有効量”は、糖尿病性心筋症の発症を予防する活性成分または活性剤の量を意味する。
【0052】
用語“医薬”、“活性物質”、“活性成分”、“活性剤”は、遊離形または薬学的に許容される塩の形の化合物、特にここに特定したタイプの化合物を意味するとして理解すべきである。
【0053】
用語“温血動物”または“患者”は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、サル、ウサギ、マウスおよび実験動物を含み、これに限定されない。一つの態様において、哺乳動物はヒトである。
【0054】
用語“処置”は、該疾患、状態または障害の予防、制圧(combating)または進行遅延の目的のために、好ましくは疾患、状態または障害の制圧の目的のための患者の管理およびケアを意味し、および特にまた予防処置でもある。
【0055】
用語“予防”/“予防する”は、該疾患、状態または障害の発生を予防するために、健常患者に組み合わせ製剤または医薬組成物のような医薬を予防投与することを意味するとして理解すべきである。
【0056】
用語“進行遅延”/“進行を遅延する”は、該疾患、状態または障害の全段階にある患者に、組み合わせ製剤または医薬組成物のような医薬を予防投与することを意味するとして理解すべきである。
【0057】
用語“糖尿病”は1型および2型糖尿病の両方を含む。用語“1型糖尿病”は、インスリン依存性真性糖尿病(IDDM)と呼ばれ、膵臓ランゲルハンス島内のインスリン産生細胞(β細胞)が選択的に、免疫学的細胞の標的となり、その浸潤により破壊される、慢性自己免疫疾患である。IDDMは、一方でのベータ細胞を標的とする破壊的自己免疫過程と、他方でのこれらの細胞の再生能の間の好ましくないバランスによる、膵臓ベータ細胞の進行性損失により特徴付けられる。このアンバランスは最終的にベータ細胞および内因性インスリン分泌の完全な欠失を導く。用語“2型糖尿病”は、2型真性糖尿病を意味し、これは、膵臓が、膵臓ベータ(β)細胞機能の障害により充分なインスリンを分泌しないおよび/またはインスリン産生に対する非感受性(インスリン抵抗性)が存在する、疾患である。典型的に、空腹時血漿グルコースは126mg/dL未満であるが、前糖尿病は、例えば、次の状態の一つにより特徴付けられる状態である:空腹時血糖異常(110−125mg/dL)および耐糖能障害(空腹時グルコースレベル126mg/dL未満および食後グルコースレベル140mg/dL〜199mg/dL)。2型真性糖尿病は高血圧を伴うことも伴わないこともある。真性糖尿病は、例えば、アフリカ系アメリカ人、ラテン/ヒスパニック系アメリカ人、ネイティブアメリカン、アジア系アメリカ人および太平洋諸島系人に頻繁に起こる。インスリン抵抗性のマーカーは、HbA1C、HOMA IR、コラーゲンフラグメント測定、尿中TGF−β、PAI−1およびプロレニンを含む。
【0058】
糖尿病患者は心不全を発症するリスクが増加しており、これは“糖尿病性心筋症”と名付けられる明確な疾患過程である。用語“糖尿病性心筋症”(Hayat et al in Clinical Science 2004, 1007, 539により定義されている通り)は、最終的にLVH[左室肥大]ならびに拡張期および収縮期不全またはこれらの組み合わせに至る、広範な構造異常を引き起こす、糖尿病患者の心筋に影響する疾患過程である。糖尿病性心筋症は、筋細胞肥大および心筋線維症により特徴付けられる(Bell, Diabetes Care, 2003, 26, 2433)。Scognamiglio (The American Journal of Cardiology, 2004, 93, 17A)により記載の通り、糖尿病性心筋症は、顕著な冠動脈疾患または全身性高血圧が存在しない、収縮機能の欠如により特徴付けられる状態である。Bell (Diabetes Care, 2003, 26, 2433)が指摘の通り、糖尿病患者における心不全(HF)の疫学は次の通り、要約できる:
1)HFは、年齢適合非糖尿病対象よりも糖尿病男性で2倍多く、そして糖尿病女性で5倍多い。
2)2型糖尿病対象の約3.3%が、各年にHFを発症する。
3)高齢糖尿病対象は、非糖尿病対象よりもHFを発症するリスクが1.3倍高い。
4)高齢糖尿病対象のHFの有病率は39%である。
5)高齢糖尿病患者におけるHbA1cの1%上昇は、HFのリスクの15%上昇と関連する。
6)糖尿病患者は、大規模HF治験参加全患者の25%を占める。
【0059】
一般名、商標名またはコード番号で同定した活性剤の構造は、標準要約書“The Merck Index”の現行版から、またはデータベース、例えば、Life Cycle Patents International(例えばIMS World Publications)から取り得る。当業者はこれらの引用文献を参照して、活性剤を充分に同定することが可能であり、同様に、それを製造し、標準試験モデルで、インビトロおよびインビボの両方で医薬適応症および特性を試験することが可能である。
【0060】
本発明の医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物への経腸、例えば経口または経直腸、経皮および非経腸投与に適するものであり、組成物は、薬理学的活性化合物を単独で、または慣用的な医薬補助剤と共に含む。例えば、医薬組成物は、約0.1%〜100%、例えば約1%〜約80%の活性化合物から成る。経腸または非経腸投与用医薬組成物は、例えば、単位投与形態、例えば被覆錠、錠剤、カプセル剤または坐薬およびまたアンプル剤である。これらは、それ自体既知の方法で、例えば慣用の混合、造粒、コーティング、溶解または凍結乾燥工程により製造する。それ故、経口使用のための医薬組成物は、活性化合物と固体賦形剤を合わせ、所望により得られた混合物を造粒し、そして、望むならばまたは必要であるならば、該混合物または顆粒を、適当な補助剤を添加後、錠剤または被覆錠コアに加工することにより得ることができる。経口投与のために、レニン阻害剤、特に、例えばそのヘミフマル酸塩の形の、アリスキレン;および所望によりACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、ベータ−ブロッカー、TZDのような2型糖尿病治療剤、インスリンのような1型糖尿病治療剤、および薬学的に許容されるその塩から成る群から選択される少なくとも1種の治療剤を含む医薬組成物は、例えば、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、粉末、マイクロエマルジョンおよび単位投与量小包の形を取り得る。一つの態様において、本医薬組成物は、活性成分を:a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)平滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムまたはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤についてはまたc)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびまたはポリビニルピロリドン;望むならばd)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または起沸性混合物;および/またはe)吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤と共に含む、錠剤またはゼラチンカプセルである。注射用組成物は、例えば、水性等張溶液または懸濁液であり、および坐薬は有利に脂肪エマルジョンまたは懸濁液から製造する。
【0061】
該組成物は滅菌してもよくおよび/またはアジュバント、例えば防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調整用塩および/または緩衝剤を含んでよい。
【0062】
活性化合物の投与量は、投与形態、恒温動物種、年齢および/または個々の状態のような種々の因子に依存し得る。特に、医薬組み合わせの投与は、治療的有効量、特に商業的に入手可能な量である。一つの態様において、投与は、低投与量組み合わせである。
【0063】
通常、経口投与の場合、1mg〜約360mの大凡の1日量が、例えば、体重約75kgの患者に対して概算される。
【0064】
通常、小児は成人量の大凡半量を摂取するか、または成人と同量を摂取してもよい。各個体について必要な投与量は、例えば、活性成分の血清濃度を測定することによりモニターでき、最適レベルに調節する。全ての投与量は、活性剤に基づき、すなわちアリスキレンについては、投与量は遊離塩基に基づく。
【0065】
例えば、体重約70kgの温血動物、例えばヒトに投与すべきレニン阻害剤、例えばアリスキレン、特に酵素レニンの阻害、例えば血圧低下に有効な投与量は、3mg〜3g、例えば10mg〜1g、例えば20mg〜600mg(例えば150mg〜300mg)/人/日であり;例えば、同じサイズであり得る1〜4個の単一用量に、例えば、分割する。例えばアリスキレンの単一用量は、例えば、75、100、150、200、250、300または600mg/成人患者を含む。
【0066】
一つの態様において、単位投与形態のアンギオテンシンII受容体アンタゴニストは、例えば10〜約360mg、例えば、バルサルタン、特に40mg、80mg、160mgまたは320mgの、例えば治療的有効量を含む、例えば、錠剤またはカプセルであり得る。活性成分の適用は、1日3回行い、例えば20mgまたは40mgの、例えば、バルサルタンの1日量から開始して、1日80mgを介して、さらに1日160mgから1日320mgに増やしてよい。一つの態様において、バルサルタンは、1日2回、各々、各80mgまたは160mgの投与量で適用する。対応する投与量を、例えば、朝、昼または晩に摂取し得る。一つの態様において、投与は1日2回(b.i.d.)である。
【0067】
単位投与形態のACE阻害剤は、例えば5mg〜20mg、例えば5mg、10mgまたは20mgの、例えば、ベナゼプリル;6.5mg〜100mg、例えば6.25mg、12.5mg、25mg、50mg、75mgまたは100mgの、例えば、カプトプリル;2.5mg〜20mg、例えば2.5mg、5mg、10mgまたは20mgの、例えば、エナラプリル;10mg〜20mg、例えば10mgまたは20mgの、例えば、フォシノプリル;2.5mg〜4mg、例えば2mgまたは4mgの、例えば、ペリンドプリル;5mg〜20mg、例えば5mg、10mgまたは20mgの、例えば、キナプリル;または1.25mg〜5mg、例えば1.25mg、2.5mg、または5mgの、例えば、ラミプリルを含む、例えば、錠剤またはカプセルである。一つの態様において、投与は1日3回(t.i.d.)である。
【0068】
β−ブロッカーの経口投与用の適当な1日量(成人)は、例えば:200〜1200mgの、例えば、アセブトロール;25〜100mgの、例えば、アテノロール;10〜20mgの、例えば、ベタキソロール;5〜10mgの、例えば、ビソプロロール;2.5〜10mgの、例えば、カルテオロール;100〜1,800mgの、例えば、ラベタロール;50〜450mgの、例えば、メトプロロール;40〜240mgの、例えば、ナドロール;60〜480mgの、例えば、オクスプレノロール;20〜80mgの、例えば、ペンブトロール;10〜60mgの、例えばピンドロール;40〜320mgまたは60〜320mg(長時間作用型製剤)の、例えば、プロプラノロール;160〜320mgの、例えば、ソタロール;20〜60mgの、例えば、チモロールである。
【0069】
TZDのような2型糖尿病治療剤の経口投与のための適当な1日量は、例えば:0.001mg/kg〜約100mg/kg、例えば0.01mg〜2000mg/日、例えば0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0、2.5、5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、125、150、175、200、225、250、500、750、850、1,000および2,000ミリグラムである。
【0070】
最終的に、投与すべき活性剤および特定の製剤の正確な投与量は、多くの因子、例えば、活性剤の放出速度に依存する。例えば、必要な活性剤の量およびその放出速度は、決定し得る、どの程度の時間、血漿中の特定の活性剤の濃度が、治療効果のために許容されるレベルで残るかを測定する、既知インビトロまたはインビボ技術に基づき決定し得る。
【0071】
特に、市販されている本発明による医薬組合せの複数活性成分については、特に治療的に有効な市販の投与量である。
【0072】
大型哺乳動物について、指示される総1日量は約0.01〜100mg/kgの化合物であり、簡便には、例えば徐放形態で約0.1〜約400mgの本化合物を含む単位投与形態で1日1〜4回投与する。
【0073】
本発明が、別々に投与し得る複数化合物の組合せでの処置方法に関する局面を含むため、本発明はまた、キットの形態の別々の医薬組成物の組み合わせにも関する。本キットは、例えば、2または3種の別々の医薬組成物:(1)レニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体または希釈剤および(2)ACE阻害剤、または薬学的に許容されるその塩、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、例えば、バルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩、ベータブロッカーまたは薬学的に許容されるその塩、TZDのような2型糖尿病治療剤、または薬学的に許容されるその塩、インスリンのような1型糖尿病治療剤、または薬学的に許容されるその塩から成る群から選択される少なくとも1種の治療剤、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含み得る。(1)および(2)の量は、別々に併用投与したときに、有益な治療効果が達成されるような量である。本キットは、別々の組成物を含むための容器、例えば、各区画が、例えば、(1)または(2)を含む、複数の投与形態(例えば、錠剤)を含む、分割された瓶または分割されたホイル小包を含む。あるいは、活性成分含有投与形態を分けるよりむしろ、本キットは、各々が全投与量を含み、それが別々の投与形態を含む、別々の区画を含み得る。このタイプのキットの例は、各個々のブリスターが2個または3個(またはそれ以上)の錠剤を含み、1個(またはそれ以上の)錠剤が医薬組成物(1)を含み、第二の(またはそれ以上の)錠剤が医薬組成物(2)を含む、ブリスターパックである。典型的に本キットは、別々の成分の投与の指示を含む。キット形態は、別々の成分を別々の投与形態(例えば、経口と非経腸)で投与するとき、異なる投与間隔で投与するとき、または組合せの個々の成分のタイトレーションが処方医により望まれるときに、有益である。本発明の場合、キットは、例えば:
(1)第一の投与形態で、レニン阻害剤、特に、例えば、そのヘミフマル酸塩の形の、アリスキレン、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、治療的有効量の組成物、および
(2)第二の投与形態で、ACE阻害剤または薬学的に許容されるその塩、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト(例えば、バルサルタン)または薬学的に許容されるその塩、ベータブロッカーまたは薬学的に許容されるその塩、TZDのような2型糖尿病治療剤、または薬学的に許容されるその塩、インスリンのような1型糖尿病治療剤、または薬学的に許容されるその塩から成る群から選択される少なくとも1種の治療剤、および薬学的に許容される担体または希釈剤、および
(3)該第一および第二投与形態を含む、容器
を含み得る。
【0074】
Bell(Diabetes Care, 2003, 26, 2433)により記載されている通り、糖尿病性心筋症は、筋細胞肥大および心筋線維症により特徴付けられる。糖尿病性心不全の病因は、それ故多パラメータ性である。アリスキレンのようなレニン阻害剤の糖尿病性心筋症の処置における適性を示すここに記載の試験は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病マウスにおける心不全マーカーの分析に焦点を当てる。以下のパラメータを分析する:
1)形態計測学的および血行力学的パラメータの分析:心エコーおよびLVカテーテル法により行われる分析は、糖尿病が引き起こす、拡張期および収縮期不全のような心臓病理学に対する試験薬の効果を同定する。
【0075】
2)組織学および遺伝子発現による増強された活性酸素種(ROS)産生、筋細胞アポトーシス、および心臓線維症の分析:ROS産生、アポトーシス、および線維症は、特異的染色を使用した免疫組織化学により、および、これらの状態に関与する遺伝子(例えばNADPHオキシダーゼ、Bcl2、Bax、TGF−β、およびコラーゲン)の発現を測定することにより、検出する。これらの測定は、心臓線維症、アポトーシス、およびROS産生に対する試験薬の効果を同定する。ROSの産生は、糖尿病性心不全の主原因因子であることが提案されており、それはまた心臓筋細胞アポトーシスももたらす。心臓線維症は拡張期不全に関与すると見なされている。
【0076】
3)Ang II測定および遺伝子発現による心臓RASの分析:この測定は、糖尿病における心臓RASの活性化に対する試験薬の効果を同定する。RASは、糖尿病性心不全の病因に関与する。インビトロおよびインビボでの細胞内RASの活性化が当分野で証明されている。Ang IIレベルおよびAGT、レニン、およびACEの発現を測定することにより、循環しているおよび局所的な心臓RASの活性化が決定される。
【0077】
4)確立された心臓リモデリングのマーカー、例えばANP、β−MHC、およびTGF−βの分析;そして糖尿病性心筋症に関与する新たに同定された遺伝子、例えば、筋小胞体Ca2+ ATPase(SERCA2)、p90リボソームS6キナーゼ(p90RSK)、およびプロレニン変換酵素(PRECE)ANP、β−MHC、SERCA2、p90RSK、およびPRECEは、心臓リモデリングの確立されたマーカーである。ANPおよびβ−MHCは、心臓リモデリングの確立されたマーカーである。SERCA2の発現減少が、糖尿病における拡張期不全を担うCa2+恒常性を変化させることがシメされている。より最近、p90RSKおよびPRECEが、糖尿病性心不全に強く関係付けられている。
【0078】
5)炎症誘発性心臓サイトカイン(TNF−α、IL6、およびIL1−β)の分析:糖尿病性心筋症と関連する異常の一つは心臓炎症であり、それは、サイトカイン、例えばTNF−α、IL6、およびIL1−βのレベル上昇を伴う。試験薬によるサイトカインレベルの正常化は、心臓機能の改善を示し得る。
【0079】
6)心臓における試験薬の組織および細胞濃度の測定:アリスキレンが、心臓内のAng IIの局所産生を阻害することにより心保護的効果を生じ得るため、この薬剤で処置している動物におけるアリスキレンの心臓濃度を測定することが望まれる。
【0080】
Ang IIにより調節される、数パラメータがこの試験には包含されている。上記パラメータのいくつかは糖尿病初期(1週間)で明白であるが、より長い試験(4および8週間)が、種々のRASブロッカーの効果をより説得力をもって区別するであろう。
【0081】
驚くべきことに、本発明により、レニン阻害剤が糖尿病性心筋症の処置に使用し得ることが判明した。
【0082】
特に、本発明者らは、アリスキレンのようなレニン阻害剤が、単独でまたは組み合わせで、糖尿病性心筋症の処置において有益な効果を有し得ることを発見した。
【0083】
iAng II(細胞内Ang II)は、心肥大(Kumar R at al in Trends Endocrinol Metab 18:208-214, 2007; Baker KM at al in Regul Pept 120:5-13, 2004)を含む種々の生物学的作用を引き起こすことが示されている。マウスにおけるSTZ誘発糖尿病(1型糖尿病の模倣)の使用により、糖尿病ラット心臓における細胞内レニン−アンギオテンシン系(RAS)の活性化が存在することが判明している。本発明は、高血糖がインビボで心臓細胞内レニン−アンギオテンシン系を活性化することを示し、iAng IIが糖尿病と関連する心血管の病的状態に関与することを証明する。重大なことに、糖尿病ラットにおける、レニン阻害剤によるRASの遮断が、ATアンタゴニストまたはACE阻害剤での阻害と比べて、心臓線維症および酸化的ストレスからのより大きな保護を提供することが判明している。例えば、iAng II合成はアリスキレンで遮断されるが、ベナゼプリルではされず、糖尿病誘発心臓線維症はカンデサルタンおよびベナゼプリルで一部阻止されるが、アリスキレンは完全な阻止を生じる。レニン阻害剤は、それ故糖尿病状態における顕著な心血管への恩恵を提供する。
【0084】
高グルコースは、細胞内RAS活性化の主要な刺激である。1型および2型糖尿病両方とも高血糖を伴う。それ故、1型糖尿病における細胞内RASに関する観察は、2型糖尿病にも適用できる。
【0085】
この仮説は、新生児ラット心臓筋細胞において、インスリンの存在下でさえ高グルコースにより細胞内RASが活性化されることを証明したインビトロ試験の結果により支持される。さらに、2型糖尿病患者からの心臓組織の組織学的分析は、Ang IIに関して増強された細胞内染色を示している(Frustaci A at al in Circ Res 87:1123-1132, 2000)。
【0086】
レニン阻害剤の投与によりまたは本発明に従い使用する複数治療剤の組合せの投与により発揮される薬理活性は、例えば、当分野で既知の対応する薬理学的モデルの使用により、証明し得る。当業者は、前記および後記で示す治療適応症および有益な効果を証明するための関連試験モデルを選択することが充分に可能である。
【0087】
レニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩を含む本発明の組み合わせは、種々の投与経路により投与できる。各薬剤は、最大応答を発揮するための特異的組み合わせおける各治療剤の最適薬剤レベルを決定するために、広範囲の投与量にわたり試験し得る。これらの試験のために、群あたり少なくとも6匹の動物から成る処置群を使用することが好ましい。各試験は、個々の成分の評価と同時に、組み合わせ処置群の効果が測定される、方法で行うのが最良である。
【0088】
レニン阻害剤の、単独での、またはここに記載の通りのさらなる活性成分との組み合わせでの、糖尿病性心筋症の処置のための有用性は、例えば、C57/BL6マウスでの試験の実施により、および後記のパラメータの測定により実験的に証明し得る。
【実施例】
【0089】
方法
【表2】

【0090】
下記の試験法を使用する:
方法1
1型糖尿病:
8群の8週齢雄マウス C57/BL6を使用する:対照、糖尿病、ならびにアンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、例えば、カンデサルタン、ACEI、例えばベナゼプリル、およびレニン阻害剤、例えばアリスキレンで処置する対照および糖尿病マウス。各群は15匹の動物を含む。糖尿病を、低用量(例えば50mg/kg/日で5日間)のストレプトゾトシン(Sigma)の10mMクエン酸緩衝液の反復腹腔内投与により誘発する。対照群の動物は緩衝液のみ受ける。この工程は、マウスにおいて確固たるそして一貫した高血糖を引き起こす。糖尿病の確立を、グルコメータを使用した、>250の血中グルコース測定値により確認する。血中グルコースレベルを、週に2回モニターして、糖尿病の持続を確認する。皮下インスリン処置によりグルコースレベルが正常化された対照糖尿病群も包含させる。アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、例えばカンデサルタン、ACEI、例えばベナゼプリル、およびレニン阻害剤、例えばアリスキレンを、浸透圧ミニポンプにより投与する。動物を、糖尿病の確立から1、4および8週目に心臓機能、形態学、組織学、および遺伝子発現について試験する。浸透圧ミニポンプを、8週群において4週後に交換する。これらの時点で、心臓収縮期および拡張期機能、線維症、酸化的ストレス、および遺伝子発現に対する糖尿病の顕著な影響が測定される。
【0091】
2型糖尿病:
C57BLKS/j背景の、8群の6週齢雄マウス、糖尿病(db/db)および非糖尿病同腹子対照を使用する:対照、糖尿病、ならびに、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、例えば、カンデサルタン;ACEI、例えばベナゼプリル;およびレニン阻害剤、例えばアリスキレンで処置された対照および糖尿病マウス。各群は15匹の動物を含む。糖尿病を、グルコメータを使用して、>250の血中グルコース測定値により確認する。アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、例えばカンデサルタン;ACEI、例えばベナゼプリル;およびレニン阻害剤、例えばアリスキレンを浸透圧ポンプにより投与する。動物を、処置1、4および8週目に心臓機能、形態学、組織学、および遺伝子発現について試験する。浸透圧ミニポンプを、8週群において4週後に交換する。これらの時点で、糖尿病誘発心臓収縮期および拡張期機能、線維症、酸化的ストレス、および遺伝子発現に対する処置の効果が測定される。
【0092】
パラメータ試験:
i)形態計測学的および血行力学的分析:
収縮期血圧を、毎週、尾加圧帯(tail-cuff)プレチスモグラフィーにより測定する。心エコー分析を、麻酔下の動物(例えば40−50mg/kgケタミンおよび例えば腹腔内5mg/kgキシラジンで)で、12MHzトランスデューサーを備えたAgilent 5500 Sono S心エコーを使用して行う。左心室の二次元短軸画像を乳頭筋レベルで得た後、Mモード静止画を得る。拡張終期および収縮末期心室中隔(IVSTd、IVSTs)、後壁肥厚(PWTd、PWTs)、前壁肥厚(AWTd)および左室内部直径(LVDd、LVDs)を、コンピュータ分析システムを使用して測定する。左室径短縮率パーセント(%FS)、相対的壁厚(RWT)、および左室容積(LVM)を、当分野で標準的な式を使用して計算する。心エコー分析を、最初のストレプトゾトシン注射日およびその後毎週行う。6匹のマウスの群は、糖尿病誘導1、4、および8週後40−50mg/kgの例えばケタミンおよび5mg/kgの例えばキシラジン、腹腔内で麻酔下する。変力および変弛緩機能を、右総頚動脈カニューレ挿入を介して左心室に位置する、マイクロナノメーター・カテーテル(Millar 1.4 F, SPR 671, Millar Instruments, Texas)で、左室圧展開(dP/dt max)および左室圧減衰(dP/dt min)を測定することにより評価する。マウスを殺し、心臓を摘出し、秤量し、組織学的分析のために処理する。
【0093】
ii)線維症についての組織学的分析:
組織学的分析を、上記試験(i)で糖尿病誘導1、4、および8週目に得た心臓を使用して行う。摘出した心臓をPBSで濯ぎ、続いてCa2+を欠くKrebs-Hanseleit溶液中で、インキュベートして、心臓筋肉を弛緩させ、その後10%ホルマリンに固定する。エタノールで脱水し、パラフィンにマウント後、5μm厚切片を切る。切片を形態学的分析用にヘマトキシリンおよびエオシンで、および線維症検出用にpicrosirius red(Fluka)で染色する。筋細胞面積を測定するために、10個の別々の切片からのほぼ円形の毛細血管プロファイルおよび核を有する横断面を使用する。
【0094】
iii)心臓筋細胞アポトーシス:
これらの心臓においてTUNEL陽性心臓筋細胞数が増加するかどうかを測定するために、5μm厚パラフィン切片をキシレンに浸漬し、再水和し、プロテイナーゼK(20μg/ml)とインキュベートすることにより脱パラフィン化する。内因性ペルオキシダーゼを3%Hのメタノール溶液で不活性化後、切片を末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼおよびビオチニル化デオキシウリジン5−トリホスフェートと共に、In Situ Cell Death Detection Kit(Roche)を使用してインキュベートする。標識をストレプトアビジン−HRPおよびジアミノベンジンにより検出し、顕微鏡的に観察する。陽性対照として、切片を小球菌Dnase I(1mg/ml)で前処理して、DNA鎖破壊を誘発する。心臓切片を、心臓筋細胞特異的筋節α−アクチンに関してモノクローナル抗体EA−53(Sigma)で共染色し、心臓筋細胞と線維芽細胞を区別する。無作為視野から、平均1000個のEA−53陽性細胞が分析される。
【0095】
iv)ROS測定を凍結心臓切片で、スーパーオキサイドにより、DNAへの挿入により細胞内に捕捉されるエチジウムブロマイドに酸化される、細胞透過性蛍光色素であるジヒドロエチジウム(DHE)で染色することにより行う。凍結心臓切片(20μM)を、10μM DHEと、37℃で45分間、光から保護された加湿チャンバー内でインキュベートする。挿入された色素の蛍光画像を蛍光顕微鏡を使用して得る。
【0096】
v)iAng II測定:
心臓を取り出す10分前にマウスを麻酔し、ヘパリン(5000単位/体重Kg、IP)で処理する。胸部を胸骨で開き、心臓を20G 屈曲性(phalanged) ステンレススチールカニューレで上行大動脈内にカニューレ挿入し、直ちに摘出する。心臓を、80mmHg一定圧のKrebs-Henseleit緩衝液を使用して、大動脈を通して逆行性に灌流する。コラゲナーゼ溶液(0.1%w/v)を灌流緩衝液に添加し、心臓を45分間灌流する。灌流後、心室を小片に切り、コラゲナーゼ溶液を含むスピナー・フラスコに移す。分散した細胞を、各5分間のインキュベーション後にデカントにより回収する。不連続percoll勾配上で筋細胞を非筋細胞と分ける。Ang IIを精製細胞から抽出し、濃度をELISAにより測定する。
【0097】
vi)遺伝子発現:
リアルタイムRT−PCRを使用してAGT、レニン、ACE、TGF−β、ANP、β−MHC、SERCA2、p90RSK、およびPRECE発現を測定する。GAPDHを、相対的定量のためにハウスキーピング遺伝子として測定する。プライマーおよびプローブを文献に記載の通り、例えばNaito et al, Hypertension, 2002, 40, 827; Itoh et al Circulation, 2006, 113, 1787およびHu et al, Circulation Research, 2005, 96, 1006に記載の通り合成する。簡単に言うと、心臓をPBSで洗浄し、−80℃で貯蔵するために直ぐにRNase Later(Ambion)溶液に移す。RNA単離(AmbionのToTally RNAキット)およびcDNA合成(Applied Biosystemsからの大容量cDNA逆転写キット)を、市販のキットを使用して実施する。
【0098】
vii)タンパク質発現:
上記遺伝子の発現を、ウェスタン分析でタンパク質レベルで確認する。タンパク質を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、ニトロセルロース膜に移す。その膜を、標的タンパク質に特異的な一次抗体でプローブする。化学ルミネセンスまたは蛍光のいずれかで検出用に標識された二次抗体を使用して膜に結合した一次抗体を定量し、これは標的タンパク質の量に対応する。
【0099】
vii)サイトカイン:
炎症誘発性心臓サイトカインTNF−α、IL6、およびIL1−βを、市販のELISAキット(Pharmingen/BD Biosciences)により、製造者の指示に従って測定する(Westermann et al Diabetologia 2006, 49, 2507)。
【0100】
本実験研究は以下の通り要約できる:
【表3】

【0101】
方法2
糖尿病の誘導および動物の処置
糖尿病を、成熟雄Sprague Dawleyラット(250−300g)において、0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝化食塩水(pH4.5)に溶解したストレプトゾトシン(STZ、65mg/体重kg、IP)の1回注射により誘導する。対照動物は、緩衝化食塩水のみを受ける。糖尿病を、STZ注射48時間後およびその後1日おきに測定して、持続する血中グルコースレベル>15mmol/Lにより確認する。9匹の動物の群の糖尿病ラットを、インスリン(2−5U、BID、SC)、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、例えば、カンデサルタン(1mg/kg、IP)、レニン阻害剤、例えばアリスキレン(30mg/kg、経口)、またはACEI、例えばベナゼプリル(10mg/kg、経口)のいずれかで、STZ注射48時間後に開始して毎日7日間処置する。7日後、動物を秤量し、ケタミン/キシラジン(50/5mg/kg)を使用して麻酔する。心臓を単離し、秤量し、その後灌流し、後者はLangendorff法を使用する。
【0102】
心臓筋細胞の単離およびiAng IIの測定
心臓を単離し、Krebs-Henseleit重炭酸緩衝液で灌流し、続いてコラゲナーゼII(0.1%w/v)で消化させる。筋細胞を、25×gでn遠心分離により非筋細胞から分ける。この方法を使用した筋細胞調製物の純度は、抗筋節ミオシン(MF−20)および抗筋節アクチン抗体を使用したFACSで分析して、>90%である。筋細胞含有ペレットを、Singh et al in Am J Physiol Heart Circ Physiol 293:H939-H948, 2007に記載の通り、
Ang II抽出のために処理する。細胞をプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)含有氷冷1M酢酸中に、超音波処理(各5秒間の2パルス)を使用して溶解した。この溶解物を20,000×gで10分間沈降させ、上清をvacufugeで乾燥させ、続いて1%酢酸に再構成する。このサンプルを、条件化DSC−18カラム(Supelco)に適用し、メタノールで溶出する。溶出したサンプルを乾燥させ、ELISA用にPBS中に再構成する。血漿からのAng IIの単離のために、等容量の2%酢酸を血漿に添加し、続いてAmicon Ultra-15フィルターを通して濾過する。この濾液をDSC−18カラムに適用し、Ang IIを、細胞溶解物について記載の通り溶出する。上記方法を使用して、外的に添加したAng IIを>90%回収率で回収できる。Ang IIを、定量的、競合的ELISAにより、Am J Physiol Heart Circ Physiol 293:H939-H948, 2007に先に記載の通り、特異的抗Ang II抗体(Peninsula Labs)を使用して測定する。ELISAをプロテインAおよび抗Ang II抗体コート96ウェル皿で行う。合成ビオチニル化Ang IIの、本抽出ペプチド存在下での競合的結合を、ストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ接合体存在下で検出する。定量のビオチニル化Ang IIと共に、非ビオチニル化合成Ang IIの濃度を増加させて作成した標準曲線を使用して、サンプル中のペプチド濃度医を計算する。細胞溶解物中のAng II濃度は、心臓重量あたりのfmoleとして、そして血漿中は血漿タンパク質ミリグラムあたりfmoleとして表す。
【0103】
心臓灌流および酵素的分散後単離した心臓筋細胞中のAng IIレベルは、細胞内に存在するAng IIに対応する。iAng II供給源、すなわち、細胞内合成であるのか、AT介在内在化であるのかを決定するために、糖尿病動物の一群をATアンタゴニストであるカンデサルタンで処置して、受容体介在取り込みを防止する。糖尿病ラット心臓からの心臓筋細胞は、対照動物(0.06±0.01fmole/心臓重量mg)と比較して、iAng IIレベルの9.9倍上昇を示す(0.59±0.01fmole/心臓重量mg)。STZ処置ラットにおけるインスリンによる血中グルコースレベルの正常化は、iAng IIレベルの上昇を完全に遮断し(0.16±0.02fmole/心臓重量mg)、後者が高血糖の特異的作用であることを示す。糖尿病ラットのカンデサルタンでの処置はiAng IIレベルを0.43±0.05fmole/心臓重量mgまで低下させ、これはiAng IIの主供給源が細胞内合成であることを示す。糖尿病ラットのアリスキレンでの処置はiAng IIレベルを標準化させるが(0.12±0.02fmole/心臓重量mg)、一方ベナゼプリルはなんの効果もない(0.55±0.02fmole/心臓重量mg)。
【0104】
心臓筋細胞アポトーシス
アポトーシス心臓筋細胞を、パラフィン包埋心臓切片において、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ介在dUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイおよび開裂カスパーゼ−3染色を使用して検出する。TUNELアッセイを、製造者の指示に従ってアッセイキット(Millipore Corporation, Temecula, CA)を使用して行う。筋細胞からの細胞質および核をα−筋節アクチン抗体およびDAPIを各々使用して対比染色する。開裂カスパーゼ−3染色について、脱パラフィン化切片を、マイクロ波処理(microwaving)による0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)中の抗原回収に付す。5%BSAで遮断後、切片をウサギモノクローナル抗開裂カスパーゼ−3抗体(1:200;Cell Signaling Technology, Danvers, MA)と、一晩、4℃で、続いてフルオレッセインイソチオシアネート−接合ヤギ抗ウサギIgG(1:200;Molecular Probes)とインキュベートする。陽性に染色された核の数を20視野/心臓および3心臓/処置群から計測する。
【0105】
アポトーシス細胞の定量は、TUNELアッセイおよびカスパーゼ−3染色の両方で、対照と比較して糖尿病心臓で3倍の増加を示す。インスリンでの血中グルコースの正常化または3種の異なる阻害剤でのRASの遮断はアポトーシス細胞の数を減らすが、アポトーシスを完全には防止しない。
【表4】

【0106】
心臓における活性酸素種(ROS)検出
心臓におけるスーパーオキサイド産生を、ジヒドロエチジウム染色(DHE、Sigma-Aldrich)により検出する。凍結心臓切片(20μm厚)を10μM DHEと、37℃で45分間、光から保護された加湿チャンバー内でインキュベートする。Olympus FV300共焦点顕微鏡で得た蛍光画像をSlide Book 4.2で分析する。筋細胞核の平均DHE蛍光強度は、同一のレーザーと光電子増倍管設定で観察される15個の無作為に選ばれた視野における、ピクセルの総数によってピクセルの合わせた蛍光値を割ることによって計算する。糖尿病心臓は、対照動物と比較して増強されたスーパーオキサイド産生を示し、これはインスリン処置動物において防止される。糖尿病ラットのカンデサルタンまたはベナゼプリルでの処置は酸化的ストレスを減らすが、一方アリスキレンはそれを完全に遮断する。
【表5】

【0107】
心臓線維症
心臓間質性線維症は、5μmパラフィン包埋切片上のMassonのトリクローム染色により検定する。線維症の広がりおよび程度は0−4のスケールで評価される。グレード0は、毛細血管周囲の線維性組織の小島およびコラーゲン状組織の細胞間単層以外、正常心筋のようにコラーゲン線維増殖がないことを意味する。限局的および極小線維症が1として評価され、軽いパッチ状線維症がグレード2として、中程度の散在性線維症がグレード3として評価し、そして切片の大部分を覆う最も顕著な線維症を4として評価する。最低心臓あたり3切片、切片あたり5視野、および実験群あたり3匹の動物を分析して、結果を平均グレードとして示す。
【0108】
糖尿病経過1週間で、線維症に対する全体的染色は、対照動物(グレード0)と比較して、糖尿病ラットの心臓で増強される(グレード1.5)。インスリン処置は線維症の増加を完全に防止する(グレード0.04)。糖尿病ラット心臓において、カンデサルタンおよびベナゼプリルは線維症の程度を減少させ(各々グレード0.43および0.88)、一方アリスキレンは線維症をより明白に低下させる(グレード0.25)。
【0109】
統計学的解析
値を平均±SEとして表す。テューキーのpost hoc検定を伴うANOVAを統計学的解析に使用した。P<0.05を統計学的有意と見なす。
【0110】
上記は、好ましい態様を含み、本発明を完全に開示する。ここに具体的に開示の態様の修飾および改善は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。さらなる困難を要せず、当業者は、前述の記載を使用して、本発明を完全に実施できるはずである。
【0111】
上記の結果は、アリスキレンのようなレニン阻害剤が、単独で、または他の活性剤との組合せのいずれかで、糖尿病性心筋症の処置に有用であることを証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病性心筋症の処置用医薬の製造のためのレニン阻害剤または薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項2】
2型または1型糖尿病患者の処置のための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
レニン阻害剤がアリスキレンまたはその塩である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
レニン阻害剤または薬学的に許容されるその塩を含む、糖尿病性心筋症の処置用医薬組成物。
【請求項5】
2型または1型糖尿病患者の処置のための、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
レニン阻害剤がアリスキレンまたはその塩である、請求項4または5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
レニン阻害剤または薬学的に許容されるその塩を、1種以上、例えば1〜3種の活性成分と組み合わせて使用する、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
他の活性成分がACEI、ベータブロッカー、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、TZDのような2型糖尿病治療剤、およびインスリンのような1型糖尿病治療剤、またはいずれの場合も独立してその塩から成る群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
他の活性成分が
− アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラート、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナプリラート、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリルおよびトランドラプリルから成る群から選択されるACEI、またはいずれの場合も独立してその塩;
− バルサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、テルミサルタン、カンデサルタンおよびサプリサルタンから成る群から選択されるアンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、またはいずれの場合も独立してその塩;
− トログリタゾン、ロシグリタゾン、シグリタゾン;ダルグリタゾン;エングリタゾン;イサグリタゾンおよびピオグリタゾンから成る群から選択される2型糖尿病治療剤、またはいずれの場合も独立してその塩;および/または
− インスリンのような1型糖尿病性治療剤、またはその塩
である、請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
同時、別々または連続使用のための、請求項7〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
さらに、1種以上、例えば1〜3種の活性成分を含む、請求項4〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
さらなる活性成分がACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、ベータブロッカー、TZDのような2型糖尿病治療剤、およびインスリンのような1型糖尿病治療剤から成る群から選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
さらなる活性成分が
− アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラート、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナプリラート、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリルおよびトランドラプリルから成る群から選択されるACEI、またはいずれの場合も独立してその塩;
− バルサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、テルミサルタン、カンデサルタンおよびサプリサルタンから成る群から選択されるアンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、またはいずれの場合も独立してその塩;
− トログリタゾン、ロシグリタゾン、シグリタゾン;ダルグリタゾン;エングリタゾン;イサグリタゾンおよびピオグリタゾンから成る群から選択される2型糖尿病性治療剤、またはいずれの場合も独立してその塩;および/または
− インスリンのような1型糖尿病性治療剤、またはその塩
である、請求項11または12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項4、5、6、11、12または13に記載の医薬組成物を、糖尿病性心筋症の処置における同時、別々または連続的使用の指示書と共に含む、商業用包装物。
【請求項15】
糖尿病性心筋症の処置用キットであって:
a) 第一の単位投与形態で、レニン阻害剤または薬学的に許容されるその塩;
b) 第二の単位投与形態などで、ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト(例えば、バルサルタン)、ベータブロッカー、2型糖尿病治療剤、1型糖尿病治療剤、または、いずれの場合も、独立して薬学的に許容されるその塩から成る群から選択される、少なくとも1種の治療剤;
c) 該第一、第二などの単位形態を含む、容器
を含む、キット。
【請求項16】
糖尿病性心筋症の処置方法であって、ヒトを含む温血動物、治療的有効量のアリスキレンのようなレニン阻害剤、または薬学的に許容されるその塩を単独で、または、例えば、ACEI、ベータブロッカー、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト(antagoniss)、TZDのような2型糖尿病治療剤、インスリンのような1型糖尿病治療剤、またはいずれの場合も独立してその塩のような1種以上の活性成分と組み合わせて投与することを含む、方法。

【公開番号】特開2010−31006(P2010−31006A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−165467(P2009−165467)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】