説明

有機化合物の精製装置および有機化合物の精製方法

【課題】整粒された結晶を高い効率で得ることができる有機化合物の精製装置および有機化合物の精製方法を提供する。
【解決手段】内部に導入された有機化合物を含有する液状物から前記有機化合物の結晶を析出させる晶析槽10に、前記液状物を当該晶析槽10の外部に導いて当該晶析槽10に戻すための循環流路20を接続する。この循環流路20には、前記液状物を循環流路20を通して循環させながら当該液状物中の結晶を破砕して整粒するポンプ30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物の精製装置および有機化合物の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品などの有効成分として用いられる有機化合物は、一般的に、晶析槽内で、有機化合物を過飽和度で含有する液状物から結晶を析出させ、濾過機で分離する方法(晶析)により精製されている。この場合、有機化合物の結晶の直径(以下、「結晶径」という)は、撹拌速度、結晶化温度、時間などの晶析条件を設定して結晶の成長速度を制御することにより、ある程度制御することができる。
【0003】
しかしながら、有機化合物の種類によっては、どのような晶析条件で晶析を行なっても結晶の成長速度を制御することができず、結晶径が大きくなりすぎることがある。この場合、撹拌しても、結晶が晶析槽の底部に沈降しやすく、晶析槽から濾過機への流路の閉塞や、濾過機の稼働時の異常振動を招くことがある。
【0004】
そこで、晶析槽に接続された排出配管の液状物導入口側の端部に結晶を破砕する破砕羽根を設け、この破砕羽根で晶析槽内の結晶を破砕することによって前記排出配管の閉塞を抑制する方法(例えば、特許文献1を参照)や、撹拌翼の回転数を制御しながら結晶を含むスラリーを撹拌することにより、結晶の沈降を抑制して配管の閉塞を抑制する方法(例えば、特許文献2を参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−103902号公報
【特許文献2】特開2004−351270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、結晶の破砕効率が低く、効率よく結晶を整粒することができないという欠点がある。また、特許文献2に記載の方法は、大きい結晶の場合、結晶の沈降を効果的に抑制することができないという欠点がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、整粒された有機化合物の結晶を高い効率で得ることができる有機化合物の精製装置および有機化合物の精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機化合物の精製装置は、内部に導入された有機化合物を含有する液状物から前記有機化合物の結晶を析出させるための晶析槽と、前記晶析槽の内部の液状物を当該晶析槽の外部に導いて当該晶析槽に戻すための循環流路と、前記液状物を、前記循環流路を通して循環させながら当該液状物中の結晶を破砕して整粒するためのポンプとを備えていることを特徴としている。
【0009】
かかる構成が採用された有機化合物の精製装置によれば、晶析槽の内部の液状物をポンプによって循環流路を通して循環させながら、当該ポンプによって前記液状物中の結晶を容易にかつ効率よく破砕することができるので、結晶の沈降を効果的に抑制することができる。したがって、本発明の有機化合物の精製装置によれば、整粒された有機化合物の結晶を高い効率で得ることができる。
【0010】
本発明の有機化合物の精製装置では、前記ポンプよりも下流側の循環流路から分岐し、整粒された結晶を含む液状物を排出するための排出流路をさらに備えることが好ましい。この場合、液状物を排出流路に導く際に、ポンプによって破砕された結晶を含む液状物をそのままの状態で排出流路に導くことができるので、排出流路が閉塞するのを抑制することができる。
【0011】
また、本発明の有機化合物の精製装置では、前記排出流路が、循環流路と排出流路とに液状物を同時に分配調整可能な三方弁を介して前記循環流路に接続されていることが好ましい。この場合、循環流路と排出流路との分岐部分において、液状物の排出の要否にかかわらず、液状物が常時流れている状態とすることができることから、前記分岐部分における結晶の蓄積を効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明の有機化合物の精製方法は、晶析槽の内部に導入された有機化合物を含有する液状物から、前記有機化合物の結晶を析出させる析出工程と、前記結晶を析出させた液状物を晶析槽の内部から排出する排出工程とを含む有機化合物の精製方法であって、
前記析出工程において、前記晶析槽の内部の液状物を、ポンプによって当該晶析槽の外部に設けられた循環流路を通して循環させながら、析出させた結晶を前記ポンプによって破砕して整粒することを特徴としている。
【0013】
本発明の有機化合物の精製方法では、晶析槽に導入された液状物をポンプによって当該晶析槽の外部の循環流路を通して循環させながら、晶析槽内で有機化合物の結晶を析出させ、かつ前記ポンプによって前記結晶を破砕して整粒することにより、上述した本発明の有機化合物の精製装置と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有機化合物の精製装置および有機化合物の精製方法によれば、整粒された有機化合物の結晶を高い効率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機化合物の精製装置の要部構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る有機化合物の精製装置を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る有機化合物の精製装置の要部構成を示す模式図である。
図1に示される精製装置1は、内部に導入された有機化合物を含有する液状物から有機化合物の結晶を析出させるための晶析槽10と、晶析槽10の内部の液状物を晶析槽10の外部に導いて晶析槽10に戻すための循環流路20と、液状物を、循環流路20を通して循環させながら当該液状物中の結晶を破砕して整粒するためのポンプ30と、整粒された結晶を図示しない濾過機に排出するための排出流路40とを備えている。
【0017】
晶析槽10は、液状物を導入するための槽本体11と、槽本体11を閉じるための上蓋12と、槽本体11の内部の液状物の温度を所定の温度に調節するためのジャケット13と、槽本体11の内部の液状物を撹拌するための撹拌機14とを備えている。
【0018】
槽本体11の底部には、槽本体11の内部の液状物を槽本体11の外部に排出するための排出口11aが設けられている。排出口11aには、循環流路20の上流端が接続されている。排出口11aは、バルブV1が設けられており、このバルブV1の開閉により、槽本体11の外部の循環流路20への液状物の排出が制御される。なお、排出口11aにおけるバルブV1は、種々のバルブを使用することができる。
槽本体11は、有機化合物を含有する液状物に対する耐食性を有する容器である。
【0019】
上蓋12には、原料としての有機化合物を含有する液状物を貯留する図示しない原料貯留槽から当該液状物を槽本体11内に導入するための第1導入口12aと、循環流路20を介して返送された液状物を槽本体11内に導入する第2導入口12bとが設けられている。また、上蓋12には、撹拌機14の回転軸14bが挿通されており、この回転軸14bの下端部に、撹拌機14の撹拌翼14aが配置されている。
撹拌翼14aは、回転軸14bに対して一体回転可能に取り付けられている。回転軸14bは、駆動手段14cにより回転駆動される。これにより、撹拌翼14aは、槽本体11の内部の液状物を撹拌する。
第1導入口12aには、有機化合物を含有する液状物を槽本体11内に供給する供給流路60が接続されている。
供給流路60は、前記原料貯留槽に接続されている。これにより、原料としての有機化合物を含有する液状物が、供給流路60を介して原料貯留槽から晶析槽10に供給されるようになっている。
また、第2導入口12bには、循環流路20の下流端が接続されている。
【0020】
ジャケット13は、槽本体11の外周から底部にかけて設けられている。
ジャケット13は、その内部に、液状物を加熱または冷却するための温度調節用媒体を流通させることができる。このジャケット13は、図示しない熱源と接続されており、内部を流通する温度調節用媒体を加熱または冷却することができる。
これにより、槽本体11の内部の液状物の温度を有機化合物の結晶を析出させるのに適した温度に調節することができる。
【0021】
循環流路20の途中部には、ポンプ30が介在している。
ポンプ30は、晶析槽10の槽本体11内から液状物を循環流路20内に吸入し、この吸入した液状物を循環流路20の下流端に圧送するとともに、当該液状物中の結晶を破砕し整粒する。ポンプ30は、液状物の搬送と結晶の破砕とを効率よく行なう観点から、遠心式ポンプが好ましく、なかでも、渦巻きポンプがより好ましい。また、ポンプ30は、液状物の液性の如何を問わず使用することができ、汎用性が高いことから、酸、アルカリ、有機溶媒などに対する耐食性を示すセラミックス製のポンプが好ましい。
【0022】
循環流路20におけるポンプ30の下流側の途中部には、槽本体11内の液状物を図示しない濾過機へ排出するための排出流路40が、循環流路20と排出流路40とに液状物を同時に分配調整可能な三方弁50を介して接続されている。このように、循環流路20におけるポンプ30の下流側に排出流路40を設けることにより、ポンプ30によって破砕された結晶を含む液状物を排出流路40に導くことができるので、排出流路40が閉塞するのを抑制することができる。また、三方弁50によって、液状物の流路を、循環流路20側と排出流路40側に切換えることができる。この三方弁50は、循環流路と排出流路との分岐部分において、液状物の排出の要否にかかわらず、液状物が常時流れている状態とすることができるので、循環流路20と排出流路40との分岐部分における結晶の蓄積を抑制することができる。このような三方弁としては、手動三方ボール弁を例示することができる。
排出流路40の下流端は、図示しない濾過機に接続されており、整粒された結晶を含む液状物が、排出流路40を通して当該濾過機に供給される。
【0023】
なお、槽本体11または上蓋12には、有機化合物の析出を促進する薬剤や有機化合物の析出温度を調節する薬剤を槽本体11内に投入する薬剤投入流路が接続されていてもよい。
また、槽本体11内には、槽本体11の内部の液状物の温度を測定する温度センサが設けられていてもよい。
【0024】
つぎに、本発明の有機化合物の精製方法について、前述した精製装置1を用いる場合を例として挙げて説明する。なお、本発明において用いられる精製装置は、前述した精製装置1のみに限定されない。
【0025】
本実施形態に係る有機化合物の精製方法では、まず、有機化合物を含有する液状物を、精製装置1の供給流路60を介して第1導入口12aから槽本体11内に供給する。このとき、排出口11aは、閉じた状態とされている。また、撹拌機14を稼動させて槽本体11の内部の液状物を撹拌翼14aによって撹拌する。
【0026】
前記有機化合物は、結晶化させる対象となる化合物であればよく、特に限定されるものではない。前記液状物は、槽本体11への供給前の温度下では、前記有機化合物が溶媒に溶解している溶液である。
【0027】
槽本体11内における液状物の量が一定量に達した後、槽本体11の内部の液状物を撹拌翼14aによって撹拌しながら、排出口11aを開き、かつポンプ30を稼動させる。このとき、三方弁50の排出流路40側の弁は、閉じた状態とされている。これにより、ポンプ30によって、晶析槽10の槽本体11内から当該晶析槽10の外部の循環流路20に液状物を送出し、当該循環流路20を介して液状物を晶析槽10に戻すことができる。このように、有機化合物の結晶を析出させる前に、液状物を、循環流路20を介して循環させておくことにより、有機化合物の結晶が循環流路20に詰まるのをより効果的に抑制することができる。
【0028】
撹拌翼14aの撹拌速度は、液状物が均一に混合できる速度であればよい。通常、前記撹拌速度は、5〜110min-1である。
また、循環流路20の内部の液状物の流量(以下、「循環速度」という)は、0.01〜1.0m3/minの範囲で、液状物が循環できる速度であればよい。
【0029】
つぎに、槽本体11の内部の液状物の撹拌および液状物の循環を行ないながら、ジャケット13内に温度調節用媒体を流通させ、槽本体11の内部の液状物の温度を、有機化合物の結晶を析出させるのに適した温度に調節する。これにより、槽本体11内では、有機化合物の結晶が析出しはじめる。
このとき、ポンプ30を稼動させ、循環流路20を介して液状物を循環させるだけで、ポンプ30によって液状物中の結晶を破砕することができる。そのため、容易にかつ高い効率で結晶を整粒することができる。ポンプ30の回転数は、破砕に要する時間を低減する観点から、1000min-1以上、好ましくは1500min-1以上であり、省エネルギーを図る観点から、4000min-1以下、好ましくは2000min-1以下である。
また、結晶の破砕と液状物の循環とがあいまって結晶の沈降がおこりにくくなる。したがって、結晶の沈降による排出流路40の閉塞や、結晶の沈降により引き起こされる濾過機の重心の偏りによる濾過機の稼働時の異常振動を抑制することができる。
かかるポンプ30を流通した液状物中には、例えば、10〜200μm程度の結晶径の結晶が含まれる。なお、かかる結晶径は、ポンプ30の種類や液状物の循環速度などにより変動しうる。
【0030】
槽本体11の内部の液状物の温度は、有機化合物の結晶が析出する温度に応じて、適宜設定されることが望ましい。また、前記温度調節用媒体は、内部温度とジャケット温度との温度差、液状物の物性、工程許容時間などに応じて適宜選択することができる。かかる温度調節用媒体としては、蒸気、熱水、熱媒用オイル、水、ブライン、空気などが挙げられる。
かかる撹拌翼14aの撹拌速度は、バブルV1に結晶が閉塞しない速度であればよく、結晶化させる対象となる有機化合物の種類、目的とする結晶の大きさなどに応じて、適宜設定されることが望ましい。通常、前記攪拌速度は、5〜110min-1である。
また、液状物の循環速度は、0.01〜1.0m3/minの範囲で、ポンプ30に結晶が閉塞しない速度であればよく、結晶化させる対象となる有機化合物の種類、目的とする結晶の大きさなどに応じて、適宜設定されることが望ましい。
精製装置1において、液状物を循環させる時間(以下、「循環時間」という)は、有機化合物の種類、結晶の物性、液体の物性などに応じて、適宜設定されることが望ましい。通常、1〜24時間程度、液状物を循環させればよい。
【0031】
その後、三方弁50によって循環流路20側の弁の開放度を小さくし、排出流路40側の弁の開放度を大きくすることにより、整粒された有機化合物の結晶を含む液状物を、排出流路40を介して図示しない濾過機に搬送する。整粒された有機化合物の結晶を含む液状物を濾過機に通すことにより、整粒された有機化合物の結晶を得ることができる。
このとき、三方弁50により、循環流路20と排出流路40との分岐部分において、液状物の排出の要否にかかわらず、液状物が常時流れている状態とすることができるので、循環流路20と排出流路40との分岐部分における結晶の蓄積を抑制することができる。
【0032】
なお、原料として用いられる有機化合物を含有する液状物が純度の低い粗結晶を含む場合、かかる液状物を槽本体11内に導入した後、ジャケット13を加熱して槽本体11の内部の液状物の温度を前記結晶が溶解する温度に調節することにより、前記粗結晶を予め溶解させてもよい。
【0033】
以上のように、本発明の有機化合物の精製装置および有機化合物の精製方法によれば、例えば、結晶径が10〜200μm程度の整粒された有機化合物の結晶を容易にかつ高い効率で得ることができる。しかも、本発明の有機化合物の精製装置および有機化合物の精製方法によれば、結晶の沈降が抑制されることから、晶析槽から濾過機への流路の閉塞や、濾過機の稼働時の異常振動を抑制することができる。晶析は、有機化合物の精製に汎用される技術であり、医薬、農薬などの有効成分となる有機化合物の精製などにも利用されている。したがって、本発明の有機化合物の精製装置および有機化合物の精製方法は、医薬分野、農薬分野などをはじめとして、有機化合物の精製を要する種々の分野において非常に有用である。
【実施例】
【0034】
以下に実施例などを挙げ、本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
図1に示される精製装置1の晶析槽10(容積6m3)内に、ベンゾイソチアゾール類とトルエンとn−ヘプタンとを、質量比(ベンゾイソチアゾール類:トルエン:n−ヘプタン)が900:1650:1650となるように仕込んだ。槽本体11内を撹拌翼14aによって撹拌しながら、晶析槽10内の混合物(液状物)を60℃に加熱し、当該混合物中のベンゾチアゾール類の粗結晶を溶解させた。
【0036】
その後、晶析槽10の槽本体11内を撹拌翼14aによって撹拌速度60min-1で撹拌しながら、排出口11aを開くとともに、セラミックス製ポンプであるポンプ30〔NGKケミテック(株)製、商品名:ET−1621〕を回転数:1750min-1で稼動させた。このとき、三方弁50の循環流路20側の弁は、開いた状態とし、三方弁50の排出流路40側の弁は、閉じた状態とした。これにより、循環流路20(内径50mm)を介して液状物を0.33m3/minの循環速度で循環させた。
【0037】
循環を継続しながら、晶析槽10内の混合物(液状物)を0℃まで冷却し、結晶を析出させた。ここでは、液状物の循環時間を10時間に設定した。
【0038】
その後、三方弁50の循環流路20側の弁の開放度を小さくし、三方弁50の排出流路40(内径50mm)側の弁の開放度を大きくして循環速度が0.165m3/minとなり、排出流路40における液状物の流量(排出速度)を0.165m3/minとなるようにした。これにより、液状物を循環させ続けることで、結晶の析出および結晶の破砕を継続させながら、液状物を遠心式濾過機に搬送して結晶を濾過した。ここでは、濾過中における液状物の循環時間を8時間に設定した。
【0039】
遠心式濾過機での濾過の際、循環流路20および排出流路40それぞれの閉塞および異常振動の発生はなかった。得られた結晶を電子顕微鏡にて観察することにより、結晶径を測定した。その結果、結晶径は、10〜100μmであることがわかった。
【0040】
(比較例1)
以下、晶析槽とこの晶析槽に排出流路を介して接続された遠心式濾過機とを備えた従来の晶析装置を用いた。前記晶析装置の晶析槽に、ベンゾイソチアゾール類とトルエンとn−ヘプタンとを、質量比(ベンゾイソチアゾール類:トルエン:n−ヘプタン)が900:1650:1650となるように仕込んだ。その後、晶析槽内の混合物(液状物)を60℃に加熱し、当該混合物中のベンゾチアゾール類(粗結晶)を溶解させた。
【0041】
つぎに、晶析槽内の混合物を0℃まで冷却し、結晶を析出させた。その後、結晶を含む液状物を遠心式濾過機に搬送し、結晶を濾過した。
【0042】
遠心式濾過機での濾過の際、循環流路20および排出流路40が閉塞し、かつ異常振動が発生した。得られた結晶を電子顕微鏡にて観察することにより、結晶径を測定した。その結果、結晶径は、300〜500μmであることがわかった。
【0043】
以上の結果から、晶析槽に導入された有機化合物を含有する液状物をポンプによって当該晶析槽の外部の循環流路に送出して当該晶析槽に戻すことにより、前記液状物を、前記循環流路を通して循環させながら、当該ポンプによって前記液状物中の結晶を破砕して整粒するので、整粒された有機化合物の結晶を高い効率で得ることができることがわかる。また、前記構成を備えた精製装置1によれば、結晶の沈降が抑制されることから、晶析槽10から濾過機への流路の閉塞や、濾過機の稼働時の異常振動を抑制することができることが示唆される。
【符号の説明】
【0044】
1 精製装置
10 晶析槽
20 循環流路
30 ポンプ
40 排出流路
50 三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に導入された有機化合物を含有する液状物から前記有機化合物の結晶を析出させるための晶析槽と、
前記晶析槽の内部の液状物を当該晶析槽の外部に導いて当該晶析槽に戻すための循環流路と、
前記液状物を、前記循環流路を通して循環させながら当該液状物中の結晶を破砕して整粒するためのポンプと、
を備えていることを特徴とする有機化合物の精製装置。
【請求項2】
前記ポンプよりも下流側の循環流路から分岐し、整粒された結晶を含む液状物を排出するための排出流路をさらに備える請求項1に記載の精製装置。
【請求項3】
前記排出流路が、循環流路と排出流路とに液状物を同時に分配調整可能な三方弁を介して前記循環流路に接続されている請求項2に記載の精製装置。
【請求項4】
晶析槽の内部に導入された有機化合物を含有する液状物から、前記有機化合物の結晶を析出させる析出工程と、前記結晶を析出させた液状物を晶析槽の内部から排出する排出工程とを含む有機化合物の精製方法であって、
前記析出工程において、前記晶析槽の内部の液状物を、ポンプによって当該晶析槽の外部に設けられた循環流路を通して循環させながら、析出させた結晶を前記ポンプによって破砕して整粒することを特徴とする有機化合物の精製方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−22469(P2013−22469A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155969(P2011−155969)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)