説明

有機化合物の製造方法

【課題】天然の石油化学資源の消費を低減することが可能な使用及び方法を提供する。
【解決手段】マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物と塩素化剤との反応によるクロロヒドリン製造方法であって、使用されるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物が、少なくとも1種の固体又は溶解金属塩を含み、少なくとも一部の金属塩を除去するための分離操作を含む、方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いずれも2005年5月20日出願の特許出願FR05.05120及び特許出願EP05104321.4、並びにいずれも2005年11月8日出願の米国仮特許出願60/734659、60/734627、60/734657、60/734658、60/734635、60/734634、60/734637及び60/734636の利益を主張するものであり、これらすべての内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、有機化合物の製造方法、より具体的には、クロロヒドリンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
地球上で利用可能な天然の石油化学資源、例えばオイル又は天然ガスなどは限定されていることが公知である。現在、これらの資源は、燃料を製造するために用いられており、かつプラスチックを製造するためのモノマー又は反応物質などの広範囲に亘る有用な有機化合物を製造するための出発物質として用いられており、その例としては、エチレンオキシド及びクロロエタノール(例えば、K. Weissermel and H.−J. Arpe in Industrial Organic Chemistry, Third Completely Revised Edition, VCH Editor, 1997, page 149を参照されたい)、プロピレンオキシド及びモノクロロプロパノール(例えば、K. Weissermel and H.−J. Arpe in Industrial Organic Chemistry, Third Completely Revised Edition, VCH Editor, 1997, page 275を参照されたい)、エピクロロヒドリン又はジクロロプロパノール(例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5. ed., Vol. A9, p. 539−540を参照されたい)などである。文献Chemistry and Industry, November 20, 1931, Part III, pages 949 to 954及びNovember 27, 1931, Part III, pages 970 to 975には、酸触媒としての酢酸の存在下、グリセロール及び塩酸からジクロロプロパノールを合成する方法が記載されている。
【0004】
クロロヒドリンの公知の製造方法によれば、生成物は、5〜15重量%のタイターの高度希釈水溶液中で一般に得られる。従って、これを精製するにはとりわけ高い費用がかかる。さらに、ジクロロプロパノールの場合には、このような製造方法により得られる主要な異性体は、2,3−ジクロロプロパン−1−オールである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許出願FR05.05120
【特許文献2】特許出願EP05104321.4
【特許文献3】米国仮特許出願60/734659
【特許文献4】米国仮特許出願60/734627
【特許文献5】米国仮特許出願60/734657
【特許文献6】米国仮特許出願60/734658
【特許文献7】米国仮特許出願60/734635
【特許文献8】米国仮特許出願60/734634
【特許文献9】米国仮特許出願60/734637
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に上述の使用のために、天然の石油化学資源の消費を低減することが可能な使用及び方法の発見が所望されていた。
【0007】
さらに、除去又は破壊されるべき副生成物の全体量を最小化するために、他の製造方法の副生成物を再利用するための方法の発見も所望されていた。
【0008】
さらに、高度希釈水溶液と関連する分離操作のコストを最小化するための方法の発見も所望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
結果として、本発明は、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物と塩素化剤との反応によるクロロヒドリン製造方法であって、使用されるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物が、少なくとも1種の固体又は溶解金属塩を含み、少なくとも一部の金属塩を除去するための分離操作を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1には、本発明のクロロヒドリン製造方法を実施するために使用できるプラントについての好ましい特定のスキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素」という用語は、別個の飽和炭素原子と結合した少なくとも2つのヒドロキシ基を含有する炭化水素を意味する。マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、2〜60個の炭素原子を含んでもよいが、この範囲に限定されない。
【0012】
ヒドロキシル(OH)官能基を有するマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のそれぞれの炭素はいずれも、2つ以上のOH基を有することはできず、sp3混成でなければならない。OH基を持っている炭素原子は、第一級、第二級、又は第三級であってよい。本発明において使用されるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、それぞれ1つのOH基を持つsp3混成炭素を少なくとも2つ含有していなければならない。マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素には、より大きなオーダーの連続(contiguous)又は隣接(vicinal)反復単位を含む任意の隣接ジオール(1,2−ジオール)又はトリオール(1,2,3−トリオール)含有炭化水素が含まれる。マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素の定義にはまた、同様に、例えば、1,3−、1,4−、1,5−及び1,6−ジオール官能基の1つ又は複数が含まれる。マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素はまた、ポリビニルアルコールなどのポリマーであってもよい。例えば、ジェミナルジオールは、このクラスのマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物からは除外され得る。
【0013】
マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、芳香族部分又は、例えば、ハロゲン化物、硫黄、リン、窒素、酸素、ケイ素及びホウ素ヘテロ原子を含むヘテロ原子、並びにこれらの混合物を含有し得る。
【0014】
本発明において有用なマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素には、例えば、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1−クロロ−2,3−プロパンジオール(クロロプロパンジオール)、2−クロロ−1,3−プロパンジオール(クロロプロパンジオール)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2,3−プロパントリオール(グリセロール又はグリセリンとしても知られている)、及びこれらの混合物が含まれる。好ましくは、本発明において使用されるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素には、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2,3−プロパントリオール、及びこれらの混合物が含まれる。より好ましくは、本発明において使用されるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素には、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、クロロプロパンジオール、1,2,3−プロパントリオール、及びこれらの任意の混合物が含まれる。1,2,3−プロパントリオールが最も好ましい。
【0015】
マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルは、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素中に存在してもよく、及び/又は本発明のクロロヒドリン製造方法中で生成されてもよく、及び/又はクロロヒドリン製造方法の前に製造されてもよい。マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルの例は、エチレン(ethyle)グリコールモノアセテート、プロパンジオールモノアセテート、グリセロールモノアセテート、グリセロールモノステアラート、グリセロールジアセテート、及びこれらの混合物である。
【0016】
「クロロヒドリン」という用語は、別個の飽和炭素原子と結合した少なくとも1つのヒドロキシル基及び少なくとも1つの塩素原子を含有する化合物を意味する。少なくとも2つのヒドロキシル基を含有するクロロヒドリンもマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素である。従って、本発明の出発物質及び生成物は、それぞれクロロヒドリンであることもある。その場合は、「製品」クロロヒドリンは、出発クロロヒドリンよりも多く塩素化されており、すなわち出発クロロヒドリンより多くの塩素原子及び少ないヒドロキシル基を有する。好ましいクロロヒドリンは、例えば、クロロエタノール、クロロプロパノール、クロロプロパンジオール、及びジクロロプロパノールであり、ジクロロプロパノールが最も好ましい。特に好ましいクロロヒドリンは、2−クロロエタノール、1−クロロプロパン−2−オール、2−クロロプロパン−1−オール、1−クロロプロパン−2,3−ジオール、2−クロロプロパン−1,3−ジオール、1,3−ジクロロプロパン−2−オール、及び2,3−ジクロロプロパン−1−オール、並びにこれらの任意の混合物である。
【0017】
マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、合成マルチヒドロキシル化炭化水素、再生可能な原料から得られるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、又はこれらの混合物であり得る。好ましくは、本発明の方法で使用されるマルチヒドロキシル化炭化水素は、少なくとも部分的に、再生可能な原料から生成されている。同一の考えは、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルとマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素との混合物に適用される。
【0018】
「合成」という表現は、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素が、化石原料から得られていることを意味する。化石原料とは、例えば、石油、天然ガス、及び石炭などの天然の石油化学資源に由来する材料を意味することが意図される。これらの材料の中でも2個及び3個の炭素原子を含有する有機化合物が好ましい。クロロヒドリンがジクロロプロパノール又はクロロプロパンジオールである場合には、アリルクロリド、アリルアルコール、及び「合成」グリセロールがより好ましい。「合成」グリセロールとは、石油化学資源から得られるグリセロールを意味することが意図される。クロロヒドリンがクロロエタノールである場合には、エチレン及び「合成」エチレングリコールがより好ましい。「合成」エチレングリコールとは、石油化学資源から得られるエチレングリコールを意味することが意図される。クロロヒドリンがクロロプロパノールである場合には、プロピレン及び「合成」プロピレングリコールがより好ましい。「合成」プロピレングルコールとは、石油化学資源から得られるプロピレングリコールを意味することが意図される。同一の考えは、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルとマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素との混合物に適用される。
【0019】
再生可能な原料とは、再生可能な原料の処理から得られる材料を意味することが意図される。これらの材料の中でも天然エチレングリコール、天然プロピレングリコール及び天然グリセロールが好ましい。「天然」のエチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセロールは、例えば、バイオマス処理に由来する糖類の熱化学的方法による転化によって得られてよく、これは以下に記載されるとおりである:「Industrial Bioproducts : Today and Tomorrow, Energetics, Incorporated for the U.S. Department of Energy, Office of Energy Efficiency and Renewable Energy, Office of the Biomass Program, July 2003, pages 49, 52 to 56」。これらの方法の1つは、例えば、グルコースの熱化学的転化によって得られるソルビトールの接触水素化分解である。別の方法は、例えば、キシロースの水素化によって得られるキシリトールの接触水素化分解である。キシロースは、例えば、トウモロコシ繊維中に含まれるヘミセルロースの加水分解によって得てもよい。
【0020】
「再生可能な原料から得られるグリセロール」又は「天然のグリセロール」という表現は、特に、バイオディーゼル生成の過程で得られるグリセロール、あるいは一般的な植物又は動物由来の脂肪若しくは油の転化、例えば、ケン化反応、エステル交換反応、又は加水分解反応などの間に得られるグリセロールを意味することが意図される。
【0021】
本発明の方法において使用することができる油の中では、コーン油、ヒマワリ油、以前の又は新しい菜種油、ババス油、コプラ油、キャベツツリー油、パーム油、ヒマシ油及び綿実油、ラッカセイ油、大豆油、亜麻(flax)油及びクランベ油などの全ての現行の油、並びに例えば遺伝子組み換え又は交雑によって得られるヒマワリ植物又はセイヨウアブラナ植物などによる全ての油を挙げ得る。使い古したフライ油(worn oils of crackling)、様々な動物油、例えば魚油、タロウ、ラード及びスクエアリンググリースさえも使用することができる。使用される油のうち、例えば重合又はオリゴマー化などの手段によって部分的に改質された油、例えば「アマニ(linseed)油スタンド油」、ヒマワリ油、並びに吹込み植物油なども示され得る。
【0022】
特に適切なグリセロールは、動物脂肪の転化の間に得てもよい。別の特に適切なグリセロールは、バイオディーゼル生成の間に得てもよい。別の非常に適切なグリセロールは、動物又は植物由来の脂肪若しくは油の転化の間、例えばFR2752242、FR2869612及びFR2869613などの文書に記載されている不均一触媒の存在下でのエステル交換により得てもよい。より具体的には、不均一触媒は、アルミニウムと亜鉛の混合酸化物、亜鉛とチタンの混合酸化物、亜鉛とチタンとアルミニウムの混合酸化物、及びビスマスとアルミニウムの混合酸化物から選択され、また不均一触媒は固定床の形態で使用される。本発明の方法において、グリセロールは、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing chlorohydrin by converting polyhydroxylated aliphatic hydrocarbons」の特許出願に記載されているとおりでよく、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0023】
元素として表した全金属含有量が0.1μg/kg以上であり1000 mg/kg以下である、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を塩素化剤と反応させる、クロロヒドリン製造方法を特に挙げる。
【0024】
その一方、「合成マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素」は、一般に、石油化学資源から得られる。同一の考えは、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルとマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素との混合物に適用される。
【0025】
本発明の方法において、使用されるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、粗マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品又は精製マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品であり得る。「粗」マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品は、その製造後にいずれの処理をも受けていないマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素である。「精製」マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品は、その製造後に、少なくとも1つの処理を受けているマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素である。マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素が、再生可能な原料から得られる粗製品である場合には、これには、例えば、金属塩に加えて水が含まれ得る。金属塩は、特に、金属塩化物であり、好ましくはNaCl及びKClから選択される。金属塩はまた、硫酸ナトリウム及び硫酸カリウムなどの金属硫酸塩からも選択され得る。本発明の方法において使用されるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素には、少なくとも1種の固体又は溶解金属塩が含まれており、この金属塩は好ましくは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリム、及び硫酸カリウムから選択される。本発明の方法において使用されるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、一般に、少なくとも0.5重量%、好ましくはおよそ1重量%以上、より好ましくはおよそ2重量%以上、最も好ましくはおよそ3重量%以上の金属塩含有量を有する。金属塩含有量は、一般に、最大で15重量%、好ましくは10重量%以下、より好ましくはおよそ7.5重量%以下、最も好ましくは5重量%以下である。同一の考えは、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルとマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素との混合物に適用される。
【0026】
本発明の方法において、粗マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品にはまた、例えば、カルボニル化合物、特にアルデヒド、脂肪酸、脂肪酸の塩又は脂肪酸のエステル、例えば特に脂肪酸とのマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のモノ又はポリエステルなど(任意選択で水と組み合わされる)の有機不純物も含まれ得る。マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素がグリセロールである場合には、好ましい脂肪酸は、12個を超える炭素原子を含有する飽和及び不飽和脂肪酸、例えばオレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸などである。これらの酸は、例えば、ケン化反応、エステル交換反応、及び加水分解反応による菜種油の転化の間に生成される。好ましい脂肪酸のエステルはメチル基のエステル(methylic ester)である。
【0027】
本発明の方法において、粗製品には、一般に、最大で10重量%の有機不純物、しばしば8重量%の有機不純物が含まれる。多くの場合、粗製品には、最大で6重量%の有機不純物が含まれる。好ましくは、最大で2重量%の有機不純物が含まれる。最も好ましくは、最大で1重量%の有機不純物が含まれる。有機不純物は、典型的には、脂肪酸及びそれらの誘導体から基本的に成る。
【0028】
従って、本発明はまた、最大で8重量%の有機不純物を含む、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を塩素化剤と反応させる、クロロヒドリン製造方法にも関する。
【0029】
驚くべきことに、高含有量の有機不純物を有する粗製品を使用しても、本発明の方法の基礎をなす反応に大きな影響を及ぼさないことを発見した。有機不純物からの任意の副生成物は、反応混合物から容易に除去し得、例えば、妥当な場合、SOLVAY SAのWO2005/054167特許出願(この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する)の17頁33行目〜18頁2行目、24頁8行目〜25頁10行目に記載されているとおり、パージ率を調節することにより反応混合物から容易に除去し得る。
【0030】
本発明の方法において、粗マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品には、一般に、少なくとも40重量%マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素が含まれる。多くの場合、粗製品には、少なくとも50重量%のマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素が含まれる。好ましくは、少なくとも70重量%のマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素が含まれる。多くの場合、粗製品には、最大で99重量%のマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素が含まれる。典型的には、最大で95重量%のマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素が含まれる。
【0031】
本発明の方法において、粗マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品には、一般に、少なくとも5重量%の水、又は水及びマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素以外の他の化合物の不在下、少なくとも1重量%の水が含まれる。本発明の方法において、粗マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品には、一般に、最大で50重量%の水、又は水及びマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素以外の他の化合物の不在下、最大で60重量%の水が含まれる。多くの場合、粗マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品には、最大で30重量%の水、好ましくは最大で21重量%の水が含まれる。
【0032】
別の実施態様において、粗マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品には、最大で89重量%のマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素が含まれる。別の実施態様において、粗マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品には、最大で85重量%のマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素が含まれる。別の実施態様において、粗マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素には、一般に、少なくとも10重量%の水が含まれており、多くの場合、少なくとも14重量%の水が含まれる。
【0033】
粗マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素製品は、少なくとも0.5重量%、好ましくはおよそ1重量%以上、より好ましくはおよそ1.5重量%以上の金属塩含有量を有する。粗マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素は、最大で15重量%、好ましくは12重量%以下、より好ましくはおよそ7.5重量%以下の金属塩含有量を有する。
【0034】
本発明の分離操作は、特に好ましくは、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素から出発する塩素化化合物の生成に適用され、特にクロロヒドリン及びエポキシドの生成に適用される。驚くべきことに、本発明の分離操作は、再生可能な資源から出発するこれらの化合物を経済的に得ることを可能にする。
【0035】
「エポキシド」という用語は、炭素−炭素結合上の少なくとも1つの酸素架橋を含む化合物を記載するために使用される。一般に、炭素−炭素結合の炭素原子は隣接しており、化合物は、例えば水素原子及びハロゲンなどの、炭素原子及び酸素原子以外の原子を含有してよい。好ましいエポキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシドール、及びエピクロロヒドリンである。
【0036】
結果として、本発明はまた、再生可能な原料から得られるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を用いて、かつ使用されるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物が、少なくとも1種の固体又は溶解金属塩を含む、塩素化有機化合物の製造方法に特に関し、この方法には、少なくとも一部の金属塩を除去するための分離操作が含まれる。以下に記載の製造方法はまた、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルとマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素との混合物を用いて一般に実施され得、再生可能な原料から得られるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物の好ましい使用に限定されないことが理解される。
【0037】
以下において、「塩素化化合物」という表現は、「クロロヒドリン」として理解されるべきである。好ましいクロロヒドリンは、例えば、クロロエタノール、クロロプロパノール、クロロプロパンジオール、及びジクロロプロパノールであり、ジクロロプロパノールが最も好ましい。
【0038】
「クロロエタノール」という用語は、2−クロロエタノールを含む混合物を意味することが意図される。
【0039】
「クロロプロパノール」という用語は、1−クロロプロパン−2−オール及び2−クロロプロパン−1−オールを含む異性体の混合物を意味することが意図される。
【0040】
「クロロプロパンジオール」という用語は、1−クロロプロパン−2,3−ジオール及び2−クロロプロパン−1,3−ジオールを含む異性体の混合物を意味することが意図される。
【0041】
「ジクロロプロパノール」という用語は、1,3−ジクロロプロパン−2−オール及び2,3−ジクロロ−プロパン−1−オールを含む異性体の混合物を意味することが意図される。
【0042】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、塩素化剤は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の4頁30行目〜6頁2行目に開示されているとおり、塩化水素及び/又は塩酸でよい。特に、塩化水素ガス、塩化水素の水溶液、又はこれら2つの組合せであってよい塩素化剤を挙げ得る。塩化水素は、例えば、塩化ビニルの製造などの有機塩素化合物を熱分解する方法、4,4−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)若しくはトルエンジイソシアネートの製造、金属洗浄(cleansing metals)法又は硫酸若しくはリン酸などの無機酸と塩化ナトリウム、塩化カリウム、若しくは塩化カルシウムなどの金属塩化物との反応などに由来してもよい。
【0043】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、塩素化剤は、塩化アリル製造装置及び/又はクロロメタン製造装置及び/又は塩素化分解の装置及び/又は高温酸化装置から生じる塩化水素水溶液又は優先的には無水の塩化水素でよく、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for manufacturing a chlorohydrin by reaction between a multi-hydroxylated aliphatic hydrocarbon and a chlorinating agent」の特許出願に記載されているとおりであり、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0044】
特に、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物、及び少なくとも1種の以下の化合物を含む塩素化剤からのクロロヒドリン製造方法を挙げる:窒素、酸素、水素、塩素、炭化水素、ハロゲン化有機化合物、酸化有機化合物、及び金属。
【0045】
芳香族炭化水素、飽和及び不飽和脂肪族炭化水素、又はこれらの混合物から選択される炭化水素を特に挙げる。
【0046】
アセチレン、エチレン、プロピレン、ブテン、プロパジエン、メチルアセチレン、及びこれらの混合物から選択される不飽和脂肪族炭化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、及びこれらの混合物から選択される飽和脂肪族炭化水素、並びにベンゼンである芳香族炭化水素を特に挙げる。
【0047】
クロロメタン、クロロエタン、クロロプロパン、クロロブタン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、モノクロロプロペン、パークロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロブタジエン、クロロベンゼン、及びこれらの混合物から選択される塩化有機化合物であるハロゲン化有機化合物を特に挙げる。
【0048】
フルオロメタン、フルオロエタン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、及びこれらの混合物から選択されるフッ素化有機化合物であるハロゲン化有機化合物を特に挙げる。
【0049】
アルコール、クロロアルコール、クロロエーテル、及びこれらの混合物から選択される酸化有機化合物を特に挙げる。
【0050】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、銅、鉛、ヒ素、コバルト、チタン、カドミウム、アンチモン、水銀、亜鉛、セレン、アルミニウム、ビスマス、及びこれらの混合物から選択される金属を特に挙げる。
【0051】
塩素化剤を少なくとも部分的に、塩化アリル製造方法及び/又はクロロメタン製造方法及び/又は塩素化分解の方法及び/又は塩素化合物を800℃以上の温度で酸化する方法から得る方法をより特別に挙げる。
【0052】
より好ましい実施態様において、塩素化剤は塩化水素ガス(gaseous hydrogen chloride)を含まない。
【0053】
本発明のクロロヒドリン製造方法は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の6頁3〜23行目に詳細に開示されているとおり、反応器中で行ってよい。
【0054】
反応条件下で塩素化剤、特に塩化水素に対して耐性のある材料で製作又は被覆された装置を特に挙げる。とりわけ、エナメルスチール(enamelled−steel)又はタンタルで製作された装置を挙げる。
【0055】
本発明のクロロヒドリン製造方法は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for manufacturing a chlorohydrin in equipments resisting to corrosion」の特許出願に記載されているとおり、塩素化剤に対して耐性のある材料で製作又は被覆された装置中で行うことができ、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0056】
マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を、塩化水素を含む塩素化剤と反応させる工程、及び塩素化剤に対して耐性のある材料で製作又は被覆された装置中で行う少なくとも1つの他の工程をこの工程の条件下で行う工程を含む、クロロヒドリン製造方法を特に挙げる。とりわけ、エナメルスチール、金、及びタンタルなどの金属材料、並びに高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、及びポリ(パーフルオロプロピルビニルエーテル)、ポリスルホン及びポリスルフィド、グラファイト及び含浸グラファイトなどの非金属材料を挙げる。
【0057】
本発明のクロロヒドリン製造方法は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Continuous process for the manufacture of chlorohydrins」の出願に記載されているとおり、反応混合物中で行うことができ、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0058】
マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を、定常状態組成がマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素及びマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルを含み、そのマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素及びマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルの含有量の合計が1.1モル%以上でありかつ30モル%以下(パーセンテージは液体反応媒体の有機部分に対して表す)である液体反応媒体中で塩素化剤及び有機酸と反応させる、クロロヒドリンを製造する連続方法を特に挙げる。
【0059】
液体反応媒体の有機部分は、液体反応媒体の有機化合物、すなわち分子が少なくとも1個の炭素原子を含有する化合物の合計として定義される。
【0060】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物と塩素化剤との反応は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の6頁28行目〜8頁5行目に詳細に開示されているとおり、触媒の存在下で行ってよい。200℃以上の大気圧沸点(atmospheric boiling point)を有するカルボン酸又はカルボン酸誘導体、特にアジピン酸又はアジピン酸誘導体である触媒を特に挙げる。
【0061】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物と塩素化剤の反応は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の8頁6行目〜10頁10行目に詳細に開示されているとおりの温度、圧力、及び滞留時間で行ってもよい。
【0062】
少なくとも20℃かつ最大で160℃の温度、少なくとも0.3 barかつ最大で100 barの圧力、及び少なくとも1 hかつ最大で50 hの滞留時間を特に挙げる。
【0063】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物と塩素化剤の反応は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の11頁12行目〜36行目に詳細に開示されているとおり、溶媒中で行ってもよい。
【0064】
有機溶媒、例えば、塩素化有機溶媒、アルコール、ケトン、エステル又はエーテル、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素と混和しない非水溶媒、例えば、クロロエタノール、クロロプロパノール、クロロプロパンジオール、ジクロロプロパノール、ジオキサン、フェノール、クレゾール、及びクロロプロパンジオ−ルとジクロロプロパノールの混合物など、又は反応の重質生成物(heavy product)、例えば、少なくとも部分的に塩素化された及び/又はエステル化されたマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のオリゴマーなどを特に挙げる。
【0065】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物と塩素化剤の反応は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for manufacturing a chlorohydrin in a liquid phase」の出願に記載されているとおり、重質化合物を含む液相の存在下で行うことができ、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0066】
マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を、1 barの絶対圧力下において、1 barの絶対圧力下におけるクロロヒドリンの沸点よりも少なくとも15℃高い沸点を有する、重質化合物を含む液相の存在下、塩素化剤と反応させるクロロヒドリン製造方法を特に挙げる。
【0067】
本発明のクロロヒドリン製造方法は、バッチ方式又は連続方式下で実施できる。連続方式が好ましい。
【0068】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物と塩素化剤の反応は、好ましくは液体反応媒体中で実施する。液体反応媒体は、単相又は多相媒体であり得る。
【0069】
液体反応媒体はすべて、反応温度において、溶解又は分散している固体化合物、溶解又は分散している気体、溶解又は分散している液体で構成されている。
【0070】
反応媒体には、反応物質、触媒、溶媒、並びに反応物質中、触媒中、及び溶媒中に存在する不純物、さらに、反応中間体、反応の生成物及び副生成物が含まれる。
【0071】
反応物質とは、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、及び塩素化剤を意味することが意図される。
【0072】
マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素中に存在する不純物の中では、カルボン酸、カルボン酸塩、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素と脂肪酸のエステル、エステル交換の間に使用されたアルコールと脂肪酸のエステル、並びに例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩化物及び硫酸塩などの無機塩を挙げ得る。
【0073】
マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素がグリセロールである場合には、グリセロールの不純物のうち、カルボン酸、カルボン酸塩、モノ、ジ及びトリグリセリドなどの脂肪酸エステル、エステル交換の間に使用されたアルコールと脂肪酸のエステル、並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩化物及び硫酸塩などの無機塩を挙げ得る。
【0074】
反応中間体の中では、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のモノクロロヒドリン、それらのエステル及び/又はポリエステル、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル及び/又はポリエステル、並びにポリクロロヒドリンのエステルを挙げてよい。
【0075】
クロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合には、反応中間体のうち、グリセロールのモノクロロヒドリン並びにそのエステル及び/又はポリエステル、グリセロールのエステル及び/又はポリエステル、かつジクロロプロパノールのエステルを挙げてよい。
【0076】
従って、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルは、反応物質、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素の不純物、又は反応中間体であり得る。
【0077】
生成物とは、クロロヒドリン及び水を意味することが意図される。水は塩素化反応で形成された水及び/又はプロセス中に導入された水であり得る。
【0078】
副生成物の中では、例えば、部分的に塩素化及び/又はエステル化されたマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のオリゴマーなどを挙げ得る。
【0079】
マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素がグリセロールである場合は、副生成物のうち、部分的に塩素化及び/又はエステル化されたグリセロールのオリゴマーを挙げ得る。
【0080】
本方法の様々な工程で、例えば、クロロヒドリンを製造する間又はクロロヒドリンを分離する工程の間に、反応中間体及び副生成物が形成され得る。
【0081】
従って、液体反応媒体は、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、溶解又は気泡形態で分散した塩素化剤、触媒、溶媒、反応物質中、触媒中、及び溶媒中に存在する不純物、例えば溶解した塩又は固体の塩など、反応中間体、反応の生成物及び副生成物を含有し得る。
【0082】
本発明の方法において、反応媒体の他の化合物からのクロロヒドリンの分離は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の12頁1行目〜16頁35行目及び18頁6行目〜13行目に開示されているとおりに実施してよい。これらの他の化合物は、上記で既に挙げたものであり、消費されなかった反応物質、反応物質中、触媒中、及び溶媒中に存在する不純物、触媒、溶媒、反応中間体、水、及び反応の副生成物を含む。
【0083】
本発明の方法において、反応媒体の他の化合物の分離及び処理は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の18頁6行目〜13行目に記載されているとおりに実施してよい。
【0084】
水/クロロヒドリン/塩素化剤混合物の、塩素化剤の損失を最小限に抑える条件下での共沸蒸留、それに続くデカンテーションによるクロロヒドリンの単離による分離を特に挙げる。
【0085】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、反応媒体の他の化合物からのクロロヒドリンの分離は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for manufacturing a chlorohydrin」の出願に記載されているとおりに実施でき、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0086】
以下の工程を含むクロロヒドリン製造方法を特に挙げる:(a)マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を塩素化剤及び有機酸と反応させて、クロロヒドリン及びクロロヒドリンのエステルを含む混合物を得る工程、(b)工程(a)で得られた混合物の少なくとも一部に、工程(a)に続く工程において1つ又は複数の処理を施す工程、並びに(c)マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素を工程(a)に続く少なくとも1つの工程に加えて、少なくとも20℃の温度でクロロヒドリンのエステルと反応させ、少なくとも部分的にマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステルを形成する工程。マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素がグリセロールであり、クロロヒドリンがジクロロプロパノールである方法をより特に挙げる。
【0087】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、反応媒体の他の化合物からのクロロヒドリンの分離は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for manufacturing a chlorohydrin from a multi-hydroxylated aliphatic hydrocarbon」の出願に記載されているとおりに実施でき、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0088】
反応器中に導入される液体流の全体の重量に対して50重量%未満のマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を含む1つ又は複数の液体流が供給される反応器中、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物と塩素化剤を反応させることによってクロロヒドリンを製造する方法を特に挙げる。以下の工程を含む方法を特に挙げる:(a)マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を塩素化剤と反応させて、クロロヒドリン、水、及び塩素化剤を含む少なくとも1つの媒体を得る工程、(b)工程(a)で得られた媒体の少なくとも1つの画分を回収する工程、並びに(c)マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素を加えて、工程(b)で回収した画分から、工程(b)で回収した画分の塩素化剤含有量と比較して低減した塩素化剤含有量を示す水とクロロヒドリンとの混合物を分離する、工程(b)で回収した画分に蒸留及び/又はストリッピング(stripping)操作を施す工程。
【0089】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、反応媒体の他の化合物からのクロロヒドリンの分離は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for converting multi-hydroxylated aliphatic hydrocarbons into chlorohydrins」の出願に記載されているとおりに実施でき、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0090】
以下の工程を含むクロロヒドリン製造方法を特に挙げる:(a)マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を塩素化剤と反応させて、クロロヒドリン、クロロヒドリンエステル、及び水を含む混合物を得る工程、(b)工程(a)で得られた混合物の少なくとも1つの画分に蒸留及び/又はストリッピング処理を施し、水、クロロヒドリン、及びクロロヒドリンエステルが濃縮された部分を得る工程、並びに(c)工程(b)で得られた部分の少なくとも1つの画分に、少なくとも1つの添加物の存在下、分離操作を施し、クロロヒドリン及びクロロヒドリンエステルが濃縮された、40重量%未満の水を含む部分を得る工程。分離操作は、とりわけデカンテーションである。
【0091】
本発明の方法において、反応媒体の他の化合物の分離及び処理は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for manufacturing a chlorohydrin by chlorination of a multi-hydroxylated aliphatic hydrocarbon」の出願に記載されているとおりに実施でき、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。好ましい処理は、他の生成物の画分を高温酸化に供することからなってよい。
【0092】
以下の工程を含むクロロヒドリン製造方法を特に挙げる:(a)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属含有量が5 g/kg以下であるマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を塩素化剤及び有機酸と反応させて、少なくともクロロヒドリンと副生成物を含む混合物を得る工程、(b)工程(a)で得られた混合物の少なくとも一部に、工程(a)に続く工程において1つ又は複数の処理を施す工程、並びに(c)工程(a)に続く少なくとも1つの工程が800℃以上の温度での酸化である工程。前記続く工程において、工程(a)で得られた混合物の一部を回収し、回収の間、その部分に800℃以上の温度で酸化を施す方法を特に挙げる。また、工程(b)の処理が、デカンテーション、ろ過、遠心分離、抽出、洗浄、蒸発、ストリッピング、蒸留、吸着、又はこれらの少なくとも2つの組合せ操作から選択される分離操作である方法を特に挙げる。
【0093】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、蒸気ストリッピング、特に反応媒体の水蒸気ストリッピングを実施できる。反応媒体は先に定義したとおりである。この媒体は、好ましくは、先に定義したとおりの液体反応媒体(液相)である。反応媒体が液相である場合には、「反応媒体」という表現にはまた、液体と平衡な気相も含まれる。従って、以下において、「反応媒体」という表現を用いて、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素と塩素化剤との反応が生じる液相、及びその液相と平衡な気相を明瞭に区別せずに示す。反応媒体の蒸留ストリッピングを実施する場合には、1〜5、時折2〜3、好ましくは1.5〜2.5モル/Lの有機塩素化合物、特にクロロヒドリンを含むストリップされた画分を得ることが可能となる。ストリップされた画分は主に水とクロロヒドリンとからなる。
【0094】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、水を含む画分を回収することにより反応混合物からクロロヒドリンを完全に取り出せない場合には、クロロヒドリンを含む反応混合物の少なくとも1つの別の画分を回収することが可能である。
【0095】
本発明のクロロヒドリン製造方法のこの側面において、一般に、50〜95重量%のクロロヒドリン及び最大で50重量%の水を含む少なくとも1つの画分が回収される。好ましくは、この画分は、75〜99.9重量%、しばしば75〜99重量%のクロロヒドリン、及び0.01〜25重量%、しばしば1〜25重量%の水を含む。
【0096】
回収は、好ましくは、蒸留又は蒸発により実施する。例えば、反応中間体並びに任意選択でマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素及び触媒を含む、この工程の間に得られる他の画分は、塩素化剤との反応にリサイクルされ得る。また、例えばSOLVAY SAのWO2005/054167出願の11頁32行目〜11頁34行目などに記載されている、反応の重質副生成物を含む少なくとも1つの画分を分離することも可能であり、これは特に、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩素化ポリマーであって、破壊され得るか、又は例えば脱塩素処理などによりマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のポリマーを製造するための方法において任意選択で使用され得るものである。
【0097】
蒸留又は蒸発は、一般に、少なくとも20℃の温度で実施する。この温度は、しばしば、少なくとも60℃である。好ましくは、少なくとも70℃である。蒸留又は蒸発は、一般に、最大で180℃の温度で実施する。この温度は、好ましくは最大で140℃である。
【0098】
蒸留又は蒸発は、一般に、0.001 barを超える圧力で実施する。この圧力は、好ましくはおよそ0.003 bar以上である。蒸留又は蒸発は、一般に、最大で15 barの圧力で実施する。この圧力は、しばしば、最大で10 barである。好ましくは最大で7 barであり、より好ましくは最大で1 barであり、さらにより好ましくは最大で0.5 barであり、最も好ましくは最大で0.1 barである。
【0099】
蒸留又は蒸発操作は、蒸留塔(column)によるか、又はフィルムエバポレーター若しくは別法としてワイプト薄膜エバポレーター(wiped thin film evaporator)のエバポレーターによるかのいずれかにより実施できる。
【0100】
残留物の回収可能な画分は、物理的及び/又は化学的操作により、そこから分離できる。物理的操作の例は、有利には、内部又は外部コンデンサーを有するワイプト薄膜エバポレーターによる蒸留である。化学的操作の例は、例えば触媒を回収するための残留物の加水分解である。
【0101】
本発明の方法の特定の変形において、クロロヒドリンがジクロロヒドリンである場合には、ジクロロヒドリンは、
(a)マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素を塩素化剤と接触させて、少なくともモノクロロヒドリンを含む生成物画分を得る、第一反応工程;
(b)任意選択で、生成物画分の少なくとも一部を乾燥操作に供する工程;及び
(c)任意選択で乾燥した前記生成物画分の少なくとも一部を第二反応工程に導入し、少なくとも一部のモノクロロヒドリンを塩素化剤と反応させる工程、
を含む方法により製造する。
【0102】
この変形の工程(a)及び(c)は、好ましくは、本発明のクロロヒドリン製造方法について上述したとおりの条件下及び優先度で実施する。しかし、好ましくは3〜40重量%の範囲、好ましくは反応媒体の総重量に対して3〜40重量%の濃度の水の存在下、工程(a)の反応を実施することが好ましい。
【0103】
工程(b)は、例えば、工程(a)若しくは(c)の少なくとも1つの反応器中でのストリッピング操作により、又は反応器の外側の再循環パイプに置かれたエバポレーターにより、又は蒸留により、実施できる。別の好ましい変形では、メンブレン技術により水を取り除く。
【0104】
本発明のクロロヒドリン製造方法は、例えば、カスケード反応器中、少なくとも1つのプレート塔中若しくは少なくとも1つの気泡塔中、又はこのような反応器の集合で実施できる。
【0105】
反応器は、効果的には、内部撹拌によるか、又は反応器の外側の再循環パイプによるかのいずれかにより撹拌されるタイプのものであってよい。
【0106】
本発明の方法において、反応媒体が加熱される場合には、例えば、ジャケットによるか、又は内部熱交換器により加熱作用を得ることができる。加熱作用はまた、反応器の外側の再循環パイプ上の熱交換器により得ることもできる。任意選択で、ジャケットと、反応器の外側の再循環パイプ上の熱交換器との併用により加熱作用を得る。
【0107】
特に、本発明の方法を連続又はフェッドバッチ(fed−batch)方式で操作する場合には、二次反応が、反応器中、低揮発性の副生成物のビルドアップをもたらし得、これらの中でも、程度の差はあるがマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素の塩素化オリゴマーのビルドアップをもたらし得る。このビルドアップは、反応媒体の体積の漸進的増加、生産性の漸進的損失をもたらし得、適切なレベルの体積を維持するために、反応器の連続的又は非連続的なパージを必要とし得る。「パージ」という表現は、反応媒体画分の回収を意味することが意図される。
【0108】
適切な場合、このようなパージ操作の間に除かれる触媒量は、等価な純粋又は精製触媒を導入することにより補償され得る。
【0109】
反応混合物からのパージ中に含まれる触媒は、精製処理後、反応器中で経済的にリサイクルされ得る。例えば、水中での溶解度が低い触媒を、好ましくは30℃より高い温度、好ましくは少なくとも50℃の温度で実施される酸加水分解処理と、それに続く分離工程、例えば、デカンテーション、ろ過、又は抽出などに供すことができる。アジピン酸の場合に、パージの酸加水分解が、冷却及びろ過の後、良好な収率で高純度の結晶化アジピン酸の回収をもたらすことを発見した。
【0110】
特に、本発明の方法を連続又はフェッドバッチ方式で操作する場合には、原料中、例えば、上記の再生可能な資源に由来するマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物中に任意選択で存在する金属塩、特にNaClが、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物と塩素化剤との反応が実施される反応器中に濃縮し得る。金属塩含有量の増加は、不溶性物質の漸進的結晶化をもたらす可能性があり、これが、反応混合物の体積の増加をもたらし、かつ固体物質の存在と関連する様々な問題、例えば、反応器の壁上、撹拌器上、並びに供給及びパージの管路及びバルブ上への沈着形成などをもたらす可能性がある。反応器の壁上への沈着形成は、熱伝達効率を低下させ、反応混合物の温度を維持するために、増加量のエネルギーを必要とし得る。バルブ及び管路上への沈着形成は、閉塞という問題をもたらし得る。反応混合物中の固体量の増加は、撹拌効率を低下させ、正確な撹拌を達成するために、より高いエネルギー量を必要とし得る。従って、金属塩濃度の増加は、より高い連続又は非連続パージレートを必要とし、生成物のより大きな損失をもたらし得る。
【0111】
驚くべきことに、本発明の方法において、金属塩の存在は許容可能であるが、例えば反応混合物中の金属塩の任意の蓄積を防ぐために、反応系から少なくとも一部の金属塩、特にNaClを除去することが所望されるかもしれない。このような除去は、固体又は溶解した金属塩を含む反応混合物の少なくとも一画分を、少なくとも1つの分離操作を含む処理に供し、前記画分から少なくとも一部の金属塩を除去することにより適切に実施できる。
【0112】
分離操作は、液体/固体、液体/液体、液体/気体、及び固体/気体分離から選択され得る。
【0113】
液体/固体分離操作は、デカンテーション、遠心分離、ろ過、吸着、及びイオン交換樹脂処理から選択され得る。液体/液体分離操作は、デカンテーション及び遠心分離から選択され得る。液体/気体分離操作は、ストリッピング、蒸発、及び蒸留から選択され得る。
【0114】
液体/固体分離操作が好ましく、ろ過がより好ましく、固体として金属を除去するろ過が最も好ましい。
【0115】
本発明の方法において、好ましくは反応混合物中で反応を実施し、反応混合物の少なくとも一画分について分離操作を実施する。分離操作の前に、反応混合物の画分を処理に供して金属塩以外の少なくとも1つの成分を除去することができる。この処理は、ストリッピング又は蒸留操作であってよい。
【0116】
とりわけ反応が液相中で実施される場合には、分離操作に供されるべき反応混合物の画分を反応混合物から直接回収できる。分離操作に供されるべき反応混合物の画分はまた、反応混合物から回収されて、金属塩の除去の前にさらに処理され得る。適切な処理の例は、反応混合物の液体画分に対して実施される濃縮操作であり、ここで、任意選択で回収及び/又は反応混合物へリサイクルされてよい、出発物質及び反応生成物などの揮発性化合物を、例えば、ストリッピング、蒸留、又は蒸発などにより分離し、固体又は溶解した金属塩の増加含有量を有する濃縮画分を得て、金属塩を分離するための処理に供する。
【0117】
従って、例えば、塩素化反応後、反応混合物からクロロヒドリンと水との混合物を取り除く工程の後、蒸留又は蒸発によりクロロヒドリンを回収した後、反応の副生成物のパージ後、又はパージから触媒を回収するための処理の後などに、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の12頁1行目〜18頁13行目に記載のとおり、クロロヒドリン製造方法の任意の工程で、分離工程を実施できる。
【0118】
好ましい実施態様において、金属塩を含む反応混合物画分は、反応が生じる反応器のパージから得られ、少なくとも1つの分離ユニットへと送られ、ここで、金属塩の分離が、例えば、吸着、蒸留、抽出、デカンテーション、遠心分離、ろ過、及びイオン交換樹脂処理などにより実施される。液体/固体分離ユニットが好ましく、ろ過による分離がより好ましい。分離された液体は、好ましくは反応器へと戻されてリサイクルされ、金属塩はフィルター上に残る。
【0119】
ろ過工程は、一般に、4℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、さらにより好ましくは50℃以上、最も好ましくは80℃以上の温度で実施し得る。この温度は、一般に、150℃以下、好ましくは140℃以下である。
【0120】
ろ過システムの種類は重要でなく、本発明の当業者ならば容易に理解される。適したろ過システムの記述は、「Perry’s Chemical Engineers’ Handbook, Sixth Edition, 1984, Sections 19−65 to 19−103」見ることができる。
【0121】
金属塩はろ過システム上に蓄積するので、一般的には、ろ過された塩を除去することにより、ろ過ユニットを定期的に再生することが推奨される。再生は、任意の手段、例えば、固体を特に機械的手段によって除去することにより、又は固体を溶解することにより実施し得る。任意選択で、固体溶出処理を再生手順中に組み込んでもよい。
【0122】
本発明の一実施態様において、金属塩は、任意の前処理を行うことなく、ろ過システムから固体として除去される。
【0123】
第一の変形において、塩は、さらなる処理を行うことなく、適した方法で処分される。
【0124】
第二の変形において、塩は、さらなる処理のために分離管中に保存される。さらなる処理には、溶媒を用いた固体の溶出及び溶媒を用いた固体の溶解が含まれ得る。このような処理を以下の好ましい実施態様に記載する。
【0125】
本発明の好ましい実施態様において、金属塩は、ろ過システムから除去する前に処理される。
【0126】
任意選択で吸着させた生成物及び反応物質、例えば、特に触媒並びにクロロヒドリン及びそのエステルは、例えば、適切な溶出溶媒、例えば水とクロロヒドリンとの混合物を用いた溶出により、金属塩、特にNaClから回収できる。水とクロロヒドリンとの比率はいずれも適している。室温において水で飽和したクロロヒドリンを使用することが好ましい。クロロヒドリンと水とのデカンテーションから得られた相の一つを使用することが特に好ましい。溶出溶媒として使用されるクロロヒドリンの含水量は、一般に、20重量%以下、好ましくは15%以下、最も好ましくは約12%以下である。水とクロロヒドリンとの混合物中の含水量は、一般に1重量%以上である。
【0127】
別の実施態様において、溶出溶媒は、基本的にクロロヒドリンからなる。この実施態様において、含水量は、一般に、1重量%より低く、好ましくは0.5重量%以下である。
【0128】
さらに別の実施態様において、溶出溶媒は、先に定義したとおり、水、例えば淡水(fresh water)である。
【0129】
溶出工程は、一般に、20℃以上、好ましくは50℃以上、最も好ましくは80℃以上の温度で実施し得る。この温度は、一般に、150℃以下、好ましくは140℃以下である。
【0130】
溶出後、金属塩を溶出するために使用した溶媒を塩素化反応器にリサイクルできる。
【0131】
複数の溶出工程を実施できる。
【0132】
特に、クロロヒドリンを用いた溶出後、ついで任意選択で金属塩を水溶液でさらに溶出してよい。水溶液は、方法の任意の工程から生じ得る。以下に定義するとおり、淡水を使用することが好ましい。
【0133】
溶出工程は、通常は、20℃以上、好ましくは50℃以上、最も好ましくは80℃以上の温度で実施し得る。この温度は、一般に150℃以下、好ましくは140℃以下である。
【0134】
溶出後、金属塩を溶出するために用いた水溶液を塩素化反応器、脱塩化水素ユニット、生物学的処理ユニット、又は酸化処理ユニットへと送り得る。
【0135】
第一の変形において、クロロヒドリン及び水での溶出後、さらなる処理を行うことなく適した方法で固体として塩を除去する。ついで、適した方法でこの塩を処分する。
【0136】
第二の変形において、クロロヒドリン及び水での溶出後、塩を水溶液に溶解する。
【0137】
水溶液は方法の任意の工程から生じ得る。先に定義したとおり、淡水を使用することが好ましい。
【0138】
溶解工程は、通常は、20℃以上、好ましくは50℃以上、最も好ましくは80℃以上の温度で実施し得る。この温度は、通常は、150℃以下、好ましくは140℃以下である。
【0139】
溶解した金属塩を含む水溶液を処分できる。好ましくは、これを脱塩化水素ユニット、生物学的処理ユニット、又は酸化処理ユニットへ送る。
【0140】
上記変形において、水での金属塩の溶出及び水での金属塩の溶解は、単一ユニット操作の一部であり得る。
【0141】
上記操作は、金属塩が塩化ナトリム、又は塩化カリウム、又は硫酸ナトリウム、又は硫酸カリウム、又はこれらの任意の混合物である場合に特に適しており、とりわけ塩化ナトリムに適している。
【0142】
パージを非連続方式で実施する場合には、パージのシャットダウンの間にろ過システムを再生できるので、一つのろ過ユニットで通常は十分である。パージを連続方式で実施する場合には、一方が再生モードである間に、他方がろ過モードである交互(alternance)に働く少なくとも2つのろ過ユニットを有することが好ましい。
【0143】
ろ過操作は、バッチ方式又は連続方式で実施し得る。
【0144】
無水HClを塩素化剤として用いる場合には、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素を含む液体流をHCl流(current of the stream of the HCl)に向けることが好ましい。複数の反応器中で方法を実施する場合には、適した固体上、例えば分子ふるいなどへの吸着、又は適したメンブレンを介した逆浸透により、2つの反応器の間、HClを有利に乾燥させる。
【0145】
本発明の方法のこの特定の実施態様は、クロロヒドリンの総重量に対して90重量%以上のクロロヒドリン含有量を多くの場合に有する濃縮クロロヒドリンを特に経済的に得ることを可能にする。クロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合には、このアプローチを用いることにより、80%を超える異性体純度を有する主要な異性体としての1,3−ジクロロプロパン−2−オールを得ることが可能である。
【0146】
本発明の方法において、混合物は、1,3−ジクロロプロパン−2−オール:2,3−ジクロロプロパン−1−オールの質量比が、通常は0.5以上、しばしば3以上、頻繁には7以上、特に20以上である、1,3−ジクロロプロパン−2−オール及び2,3−ジクロロプロパン−1−オール異性体を含み得る。
【0147】
本発明はまた、
(a)マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を、反応媒体中、塩素化剤と反応させる工程、
(b)前記反応媒体から、少なくとも水及びクロロヒドリンを含む画分を連続又は断続的に回収する工程、
(c)工程(b)で得られた前記画分の少なくとも一部を蒸留工程に導入する工程、
(d)前記蒸留工程に水を供給することにより、蒸留工程の還流比を調節する工程、
による、クロロヒドリン製造方法にも関する。
【0148】
反応媒体は先に定義される。
【0149】
工程(b)で回収した画分は、回収画分の総重量に対して、好ましくは12重量%以上の含水量を有する。
【0150】
工程(b)で回収した画分はまた、塩化水素を含んでよい。好ましくは、画分は、その構成物質の形態として、連続的に回収する。その後、得られた画分を、蒸留工程後、デカンテーション操作に供し得る。
【0151】
工程(a)の反応媒体は、水、特に蒸気で供給し得る。供給は、適した供給パイプに由来する外因性の水、又は任意選択で、別のユニット反応若しくは操作から回収した残りの水で達成し得る。
【0152】
この供給は、一般に、SOLVAY SAの名義であるWO2005/054167出願の10頁31行目〜11頁11行目に記載されているとおりの範囲内に反応媒体中の水の濃度を維持するような方法で達成される。
【0153】
連続又は断続的回収は、気相を蒸留工程に導入することにより、特に回収して、液相と等価な気相を蒸留工程に導入することにより実施し得る。本発明の方法の特定の実施態様は、適した蒸留塔を備える反応器中で工程(a)〜(d)を実施することである。工程(a)は反応器中で実施する。この実施態様は、無水塩酸を塩素化剤として用いる場合に特に適している。塩素化剤が塩化水素ガスを含まない場合に最も特に適している。本発明の方法の別の実施態様において、反応器から分離した蒸留塔を配置することも可能であり、この液底(liquid bottom)を反応媒体に戻し得る。この実施態様は、塩化水素、例えば塩化水素ガス、又は基本的に無水塩化水素が塩素化剤として用いられる場合に特に適している。無水塩化水素は、一般に、40重量%以下、好ましくは30重量%以下、最も好ましくは25重量%以下の含水量を有する。無水塩化水素の含水量は、一般に1重量ppm以上である。
【0154】
一つの側面において、反応器から分離した蒸留塔に導入されるべき画分を液体反応混合物から連続的又は断続的に、好ましくは連続的に回収し、少なくとも水及びクロロヒドリンを分離する。加えて、有機生成物、例えば重質副生成物、特に触媒及び/又は塩化水素を含む1つ又は複数の画分をこの蒸留工程において分離することもでき、これは一般的には反応混合物にリサイクルされ得る。適切な還流比を選択することにより、この側面において、実質的に塩化水素を含まない水を少なくとも含む画分を分離することが可能である。
【0155】
還流比は、好ましくは実質的に塩化水素を含まない水を蒸留塔に供給することにより適切に調整し得る。この実施態様において、水は好ましくは蒸留塔塔頂に供給する。水は、例えば、蒸留操作において分離した水の少なくとも一部を蒸留塔塔頂にリサイクルすることにより供給し得る。水はまた、淡水を蒸留塔塔頂に添加することにより供給し得る。水を供給する両方の方法を組み合わせてよい。淡水を添加することにより、特に良好な結果が得られる。
【0156】
「実質的に塩化水素を含まない」とは、水を含む画分における塩化水素含有量が、水を含む画分の総重量に対して、10重量%以下であることを特に意味することが理解される。多くの場合、この含有量は5重量%以下であり、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下である。塩化水素が、「実質的に塩化水素を含まない」画分中に存在するならば、その含有量は、水を含む画分の総重量に対して、一般に1 mg/kg以上、しばしば5 mg/kg以上、特に10 mg/kg以上である。
【0157】
「淡」水とは、有機又は無機の水以外の構成物質の含有量が、水及びこのような構成物質の総重量に対して、12重量%以下、好ましくは10重量%以下、最も好ましくは1重量%以下であることを意味することが理解される。一般に、「淡」水とは、有機又は無機の水以外の構成物質の含有量が、水及びこのような構成物質の総重量に対して、0.001 mg/kg以上、しばしば1 mg/kg以上、頻繁には10 mg/kg以上であることを特に意味することが理解される。淡水の可能性のある供給源は、例えば、以下に記載するとおり、金属塩を溶出するために使用される水、イオン交換樹脂から得られる脱塩水、蒸留水、又は水蒸気凝縮から生じる水などであり得る。
【0158】
水以外の構成物質とは、より詳細にはクロロヒドリンを示すことが意図される。
【0159】
水−塩化水素−クロロヒドリンの三成分組成の気液平衡特性を利用することにより、生成反応から、特にクロロヒドリン及び水を含む反応生成物を回収しながらも、同時に、特にクロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合に、1種以上の触媒及び反応物質(塩化水素を含む)の大部分を反応器にリサイクルさせることが可能になることを発見した。
【0160】
従って、本発明はまた、
(a)マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を、反応混合物中、塩化水素と反応させる工程、
(b)前記反応混合物から、少なくとも水、クロロヒドリン、及び塩化水素を含む画分を連続又断続的に回収する工程、
(c)工程(b)で得られた画分の少なくとも一部を蒸留工程に導入する工程、
[ここで、蒸留工程に導入される画分の塩化水素濃度と水濃度との比率は、蒸留温度及び圧力において、塩化水素/水の二成分共沸組成における塩化水素/水の濃度比よりも低いものである]
による、クロロヒドリン製造方法にも関する。
【0161】
この方法は、好ましくは連続的に実施する。
【0162】
本発明の方法において、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物と塩素化剤との反応が生じる反応器の操作条件、例えば、反応物質、特に塩化水素及びマルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物の供給率、触媒供給率、温度、反応器の体積、並びに圧力などの操作条件は、蒸留工程へと導入する画分の塩化水素含有量が、蒸留温度及び圧力において、塩化水素/水の二成分共沸組成における塩化水素濃度よりも低くなるように好ましくは調整する。この濃度を調整する効果的な手段は、液体反応媒体への塩化水素の供給を調節することである。
【0163】
例えば、水を添加することにより工程(b)の画分における塩化水素含有量を調節することが可能である。このような添加は、例えば、蒸留工程で使用する蒸留塔のボイラーへと蒸気を導入することにより、又は例えば蒸留塔塔頂から回収した画分のデカンテーションにより得ることのできる水相を蒸留工程にリサイクルすることにより、又は蒸留塔塔頂に淡水を添加することにより、又はリサイクル水と淡水との混合物を添加することにより実施できる。
【0164】
下記表に部分的に転載するBonner及びTitusにより出版された共沸性の塩化水素についての気液平衡データ(J. Amer. Chem. Soc. 52, 633 (1930))と一致して、操作圧力がより高い場合に、適した塩化水素の最大濃度はわずかに減少する。
【0165】
【表1】

【0166】
このような条件において、水を含む画分であって、先に定義したとおりの実質的に塩化水素を含まない画分は、反応混合物から、又は液体反応混合物上の気相から蒸留することにより、例えば、前記気相から回収した物質を蒸留し、好ましくは蒸留塔塔頂において水を含む画分を得ることなどにより回収できる。
【0167】
例えば、クロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合には、大気圧(101.3 kPa)において、反応媒体と接触する反応器の気相中、塩化水素と水の総濃度における塩化水素濃度が約20.22重量%より低い場合に、反応器の気相を蒸留することにより、23重量%のジクロロプロパノールを含む水とジクロロプロパノールとの二成分共沸混合物を得ることが可能となる。
【0168】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、クロロヒドリンは、多量のハロゲン化ケトン、特にSOLVAY SAの2005年5月20日出願のFR05.05120に記載されているとおりクロロアセトンを含むことがあり、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。本発明のクロロヒドリン製造方法において、水の存在下、クロロヒドリンを共沸蒸留するか、又はクロロヒドリンを脱塩化水素処理に供することによって、クロロヒドリンのハロゲン化ケトン含有量を低下させることができ、これは、SOLVAY SAの2005年5月20日出願のFR05.05120に記載されているとおりである。
【0169】
ハロゲン化ケトンが副生成物として形成され、形成されたハロゲン化ケトンの少なくとも一部分を除去するための少なくとも1つの処理を含む、エポキシド製造方法を特に挙げる。クロロヒドリンの脱塩化水素化によるエポキシド製造方法であって、ここで、クロロヒドリンの少なくとも一部分は、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を塩素化することにより製造されており、脱塩化水素処理及び水−ハロゲン化ケトン混合物の共沸蒸留処理(両方の処理は、形成されたハロゲン化ケトンの少なくとも一部を除去するために用いる)をすることによる製造方法、並びにハロゲン化ケトンがクロロアセトンであるエピクロロヒドリンの製造方法をより特別に挙げる。
【0170】
本発明のクロロヒドリン製造方法において、クロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合には、驚くべきことに、1,3−ジクロロプロパン−2−オールについての高い選択性が得られ、この異性体は、エピクロロヒドリンの製造を目的とする脱塩化水素のための出発物質として特に適している。
【0171】
本発明の方法において、SOLVAY SAの名義で出願されたWO2005/054167及びFR05.05120の特許出願に記載されているとおり、クロロヒドリンを脱塩化水素反応に供してエポキシドを生成することができる。
【0172】
本発明の方法において、本発明と同日にSOLVAY SAの名義で出願された標題「Process for manufacturing an epoxide from a multi-hydroxylated aliphatic hydrocarbon and a chlorinating agent」の出願に記載されているとおり、クロロヒドリンを脱塩化水素反応に供することができ、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0173】
マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物と塩素化剤の反応から得られる反応混合物であって、反応混合物1 kg当たり10 g未満のクロロヒドリンを含有する反応混合物を、中間の処理を行うことなくさらなる化学反応に供する、エポキシド製造方法を特に挙げる。
【0174】
以下の工程を含むエポキシド製造方法を特に挙げる:(a)マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物を塩素化剤及び有機酸との反応に供し、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、水、塩素化剤、及び有機酸を含む反応混合物中にクロロヒドリン及びクロロヒドリンエステルを形成させ、反応混合物が反応混合物1 kg当たり少なくとも10 gのクロロヒドリンを含有する、工程、(b)先の工程で得られた混合物の少なくとも一部分(この部分は工程(a)で得られた反応混合物と同じ組成を有する)に、工程(a)に続く工程において1つ又は複数の処理を施す工程、及び(c)工程(a)に続く少なくとも1つの工程において塩基性化合物を添加し、少なくとも部分的にクロロヒドリン、クロロヒドリンのエステル、塩素化剤及び有機酸と反応させて、エポキシド及び塩を形成させる工程。
【0175】
本発明のクロロヒドリン製造方法は、例えば、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for manufacturing an epoxide from a chlorohydrin」の出願に記載されているような、グローバルスキーム中に統合でき、この出願を参照により本明細書に援用する。
【0176】
エポキシドの製造方法であって、形成されたエポキシドの少なくとも1つの精製工程を含み、前記エポキシドは、少なくとも部分的に、クロロヒドリンの脱塩化水素方法によって製造されたものであり、前記クロロヒドリンは、少なくとも部分的に、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物の塩素化方法によって製造されたものである、方法を特に挙げる。
【0177】
クロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合には、本発明の方法に続いて、ジクロロプロパノールの脱塩化水素反応によりエピクロロヒドリンを製造でき、エポキシドがエピクロロヒドリンである場合には、エポキシ樹脂を製造するためにこれを有用に使用できる。
【0178】
図1には、本発明のクロロヒドリン製造方法を実施するために使用できるプラントについての好ましい特定のスキームを示す:反応器(4)には、連続又はバッチ方式で、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素のエステル、又はこれらの混合物が管路(1)を介して、また触媒が管路(2)を介して供給され、塩素化剤の供給は、連続又はバッチ方式で、管路(3)を介して実施され、蒸留塔(6)には管路(5)を介して反応器(4)で生成した蒸気が供給され、1つの流は塔(6)から管路(7)を介して回収されてコンデンサー(8)に供給され、コンデンサーからの流は管路(9)を介してデカンター(10)に供給され、ここで水相と有機相が分離される。分離された水相の一部分は、任意選択で、還流を維持するために管路(11)を介して塔頂にリサイクルされる。還流を維持するために管路(12)を介して塔頂に淡水を添加することもできる。クロロヒドリンの生成物は、管路(14)を経由して回収される有機相と、管路(13)を経由して回収される水相との間で分配される。塔(6)からの残留物は、管路(15)を介して反応器にリサイクルしてもよい。重質副生成物は、任意選択で、反応器の液底に位置するパージ(16)により、反応器から除去されてよい。流をパージ(16)から回収して、管路(17)を介してエバポレーター(18)に供給し、ここで、例えば、加熱又は窒素若しくは蒸気を用いたガススイープなどにより一部の蒸発操作を行い、流(17)由来の大部分の塩素化剤を含む気相を管路(19)を介して塔(6)にリサイクルするか、又は管路(20)を介して反応器(4)にリサイクルし、蒸留塔又はストリッピング塔(22)に、エバポレーター(18)から生じる液相を管路(21)を介して供給し、クロロヒドリンの主要部分を管路(23)を介して塔頂(22)から回収し、塔残留物を、管路(24)を介してろ過ユニット(25)に供給し、ここで固体と液相が分離され、液相を管路(26)を介して反応器(4)へリサイクルする。固体は、固体として、又は溶液として、管路(27)を介してろ過ユニット(25)から回収できる。溶媒は、洗浄及び/又は固体の溶解のために、管路(28)及び(29)を介してろ過ユニット(25)に添加でき、管路(27)から回収される。任意選択で、流をパージ(1
6)から回収し、管路(30)を介してろ過塔(25)へ供給する。その場合、ストリッパー(18)及び蒸留塔(22)は回避(bypass)される。
【0179】
この最後のスキームにより得られた結果(ストリッパー(18)及び塔(22)を回避)を実施例1で詳述する。
【0180】
上述の方法は、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセロールであり、クロロヒドリンが、クロロエタノール、クロロプロパノール、クロロプロパンジオール、及びジクロロプロパノールであり、エポキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシドール、及びエピクロロヒドリンであり、塩素化剤が、無水又は水溶液の塩化水素である場合に非常に適している。この方法は、マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素がグリセロールであり、クロロヒドリンがジクロロプロパノールであり、エポキシドがエピクロロヒドリンである場合に特に簡便である。
【0181】
マルチヒドロキシル化脂肪族炭化水素がグリセロールである場合には、方法のこの変形により、反応から生じる水のほとんど全てを出発物質から共沸により上部で除去、及び/又は反応器若しくは塔の底において場合により供給することが可能となり、かつ2つの異性体の合計について99.5重量%を超える、非常に高純度のジクロロプロパノールの混合物を得ることが可能となり、これは炭化水素鎖及び塩化水素に関連する選択性が99重量%を超えるものであり、かつ粗グリセロールを反応に用いた場合には、反応器中にビルドアップし得る金属塩を除去することが可能となる。
【0182】
以下の実施例は、本発明を例証することを目的とするが、これに限定されるわけではない。
【実施例1】
【0183】
[実施例1]
丸括弧の数字は図1に関連する。図1のスキームにおける追加装置であるストリッパー(18)及び塔(22)は、この場合には使用していない。
【0184】
反応器(4)に、粗グリセロール及び33重量%の塩酸水溶液を質量比2.06の相対流量で連続的に供給した。粗グリセロールは、バイオディーゼル生成物の副生成物であり、85%グリセロール、6%NaCl、及び0.5%有機不純物(脂肪酸及び誘導体)を含んでいた。滞留時間は16 hであり、反応媒体中のアジピン酸濃度は、1 kg当たり酸性官能基の2.5モルであった。反応器は大気圧及び115℃で操作した。反応混合物を窒素でストリップし、発生した蒸気相を管路(5)を介して蒸留塔(6)中で処理した(図1)。塔(6)から取り出した気相を25℃で凝縮し(8)、デカンター(10)中でデカントした。還流比を調整して、デカンターから適量の水相をリサイクルすることにより塔頂でジクロロプロパノールの全生成物を回収した。デカンターの出口において、15.0%ジクロロプロパノールを含む水相(13)及び88%ジクロロプロパノールを含む有機相(14)を回収した。これらの相中の有機不純物のプロファイル(profile)は、純グリセロールをこの方法で用いた場合に観察されるものと異ならなかった。
【0185】
反応器からのスラリーを、ろ過塔中の115マイクロメートルPTFE膜フィルター上に汲み上げた(25)。水飽和ジクロロプロパノールを用いて、フィルターにおける塩のケークを20℃で洗浄した。液相を取り除き、固体を脱水(draining)した後、塩を水に溶解し、塩水相を捨てた。洗浄及び塩溶解の期間は約2時間であった。ついで、反応器からのスラリーの新たなろ過サイクルを操作した。ジクロロプロパノール洗浄は、連続的な供給により、反応器にリサイクルした。塩を有する水相の分析は、ジクロロプロパノール:NaClの質量比が1.44であることを示し、少量の触媒(10 g/kg未満)を示した。塩水中のジクロロプロパノールの量は、ジクロロプロパノール総生成物の1.6%を表した。
【0186】
ジクロロプロパノールの全収率は93%であった。
【符号の説明】
【0187】
1,2,3,5,7,9,11,12,13,14,15,17,19,20,21,23,24,26,27,28,29,30 管路
4 反応器
6 蒸留塔
8 コンデンサー
10 デカンター
16 パージ
18 ストリッパー
22 ストリッピング塔
25 ろ過ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロールを塩素化剤と反応させることによる、ジクロロプロパノール製造方法であって、使用されるグリセロールが脂肪酸及び脂肪酸のエステルから選択され、前記有機不純物の含量が最大で8重量%である、方法。
【請求項2】
前記有機不純物の含量が、最大で6重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記有機不純物の含量が、最大で1重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記脂肪酸が、12個を超える炭素原子を含有する飽和及び不飽和脂肪酸から選択される、請求項1乃至3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪酸のエステルが、メチル基のエステルである、請求項1乃至5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記脂肪酸のエステルが、グリセロールの、脂肪酸とのモノ又はポリエステルから選択されるグリセロールのエステルである、請求項1乃至5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記グリセロールのエステルが、グリセロールモノアセテート、グリセロールモノステアラート、グリセロールジアセテート及びこれらの混合物から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
使用する前記グリセロールが、部分的に、バイオディーゼル生成の過程で得られるか、あるいは植物又は動物由来の脂肪若しくは油の転化の間に得られ、前記転化をケン化反応、エステル交換反応、又は加水分解反応から選択する、請求項1乃至8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記油又は油脂をコーン油、ヒマワリ油、以前の又は新しい菜種油、ババス油、コプラ油、キャベツツリー油、パーム油、ヒマシ油及び綿実油、ラッカセイ油、大豆油、亜麻油及びクランベ油、遺伝子組み換え又は交雑によって得られたヒマワリ植物又はセイヨウアブラナ植物による油、使い古したフライ油、魚油、タロウ、ラード、スクエアリンググリース、「アマニ油スタンド油」、部分的な重合又はオリゴマー化ヒマワリ油、並びに吹込み植物油から選択する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
(a)グリセロール、グリセロールのエステル、又はこれらの混合物を、反応媒体中、塩素化剤と反応させる工程、
(b)前記反応媒体から、少なくとも水及びジクロロプロパノールを含む画分を連続又は断続的に回収する工程、
(c)工程(b)で得られた前記画分の少なくとも一部を蒸留工程に導入する工程、
(d)前記蒸留工程に水を供給することにより、蒸留工程の還流比を調節する工程、
による、クロロヒドリン製造方法。
【請求項12】
(a)グリセロール、グリセロールのエステル、又はこれらの混合物を、反応混合物中、塩化水素と反応させる工程、
(b)前記反応混合物から、少なくとも水、ジクロロプロパノール、及び塩化水素を含む画分を連続又断続的に回収する工程、
(c)工程(b)で得られた前記画分の少なくとも一部を蒸留工程に導入する工程、
[ここで、前記蒸留工程に導入される前記画分の塩化水素濃度と水濃度との比率は、蒸留温度及び圧力において、塩化水素/水の二成分共沸組成における塩化水素/水濃度比よりも低いものである]
による、ジクロロプロパノール製造方法。
【請求項13】
ジクロロプロパノールの脱塩化水素によるエピクロロヒドリンの製造が後に続く、請求項1乃至12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記エピクロロヒドリンをエポキシ樹脂の製造のために使用する、請求項13記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−167130(P2012−167130A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133851(P2012−133851)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【分割の表示】特願2008−511714(P2008−511714)の分割
【原出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】