説明

有機化合物の製造方法

本発明は、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB;アンジオテンシンII受容体アンタゴニストまたはAT受容体アンタゴニストとも呼ばれる)およびそれらの塩の製造方法、新規な中間体ならびにプロセスステップに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルサルタンの合成において有用な新規な方法、新規なプロセスステップおよび新規な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、バルサルタンの調製方法に関する。バルサルタン、すなわち、(S)−N−(1−カルボキシ−2−メチルプロパ−1−イル)−N−ペンタノイル−N−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イルメチル]アミンは、例えば、高血圧の治療のために使用される、アンジオテンシンII受容体アンタゴニストであり、以下の構造を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
バルサルタンおよびその合成は、EP−A−0443983およびUS5399578、特にその実施例16、37および54において記載されている。
【0005】
バルサルタンの重要な構造的要素の1つは、そのテトラゾール部分である。テトラゾールを調製する様々な方法は、文献において記載されている。例えば、テトラゾール誘導体は、シアノ基をアジド試薬と反応させること、つまり[3+2]付加環化反応を行い5−置換テトラゾールを形成させるプロセスによって調製できることが当技術分野において知られている。例えば、EP0536400は、シアノ基をアジ化水素酸または、例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などの金属塩(例えば、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化カルシウム、アジ化マグネシウム、アジ化アルミニウムまたはアジ化スズ)、および有機塩基との塩(例えば、テトラメチルグアニジンアジド)などのアジ化水素酸の塩と反応させることによるテトラゾール化合物の調製を記載している。テトラゾールは、例えば、US4,874,867において記載されているように、シアノ基を有機スズアジドと反応させることによって調製することができることもまた知られている。有機スズアジドを使用するテトラゾール形成方法は、環境問題のために生産プロセスにおいて特別な配慮を必要とし、それらを廃水から再循環させるため、およびそれらを所望のテトラゾール生成物から除去するための大量の追加のプロセスステップを必要とし、それにより生産コストをさらに増加させる。有機スズアジドの使用に代わる環境に優しい代替法は、アジ化トリアルキルアンモニウムまたはアジ化テトラアルキルアンモニウムの使用であるが、そのような試薬を使用した場合、反応リアクター中で揮発性の昇華物が形成する可能性があり、これは爆発の危険性を有し、したがって、大規模生産では取扱いが容易でない。
【0006】
上記の不利点を回避する、テトラゾール形成方法の新しい変法を開発することが強く必要とされている。有機ホウ素アジドおよび有機アルミニウムアジドは、テトラゾールを形成するための亜硝酸塩による[2+3]付加環化において有機スズアジドの魅力的な代替物となることが示されている。前記ホウ素およびアルミニウム化合物、特に前記アルミニウム化合物は、かなり大規模で利用可能であり、安価である。特に、WO2005/014602において記載されているように、これらのアジドは、式(IV)の化合物またはそのエステル
【0007】
【化2】

を反応させるステップを含み、式(IV)の化合物の好ましいエステルが、例えば、式(III−a)
【0008】
【化3】

を有するそのベンジルエステルである、バルサルタンの生産方法において有用である。
【0009】
したがって、WO2005/014602において記載されているテトラゾール形成法の一実施形態は、単一のアジド試薬の使用によって2つの反応ステップ:エステル部分の酸部分への変換およびシアノ基のテトラゾールへの変換が行われるワンポット方法に関する。ワンポット方法では、中間体種の単離を行わずに2つ以上の反応ステップが起こる。したがって、ワンポット方法は、ワークアップステップを減少させ、したがって、必要とされる溶媒の量および連続的な製造プロセスステップの間に必要とされる時間および労力を減少させるため、産業上有利な合成方法である。
【0010】
上記のワンポット方法において、エステル部分の酸部分への変換がアシル−アジド副生成物をもたらし、これが次にイソシアネートおよび/またはカルバメート副生成物を形成し得ることが観察される。有機アルミニウムアジド試薬の存在下におけるアルキルエステル部分のアシル−アジドへの変換もまた、Tetrahedron Letters、1994、35、4947などの参考文献から当業者に知られている。アシル−アジド副生成物の形成は、これらが所望の生成物の収率減少を犠牲にして形成されることから望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、WO2005/014602において記載されているプロセスの利点の多くを有するが、前記副生成物の形成を回避する、バルサルタンを調製するための代替的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はこの目的を果たし、したがって、式(IV)の化合物のエステル、好ましくは、下記に記載されているエステルをバルサルタンに変換する方法を提供することが見出されている。したがって、本発明による方法は、以下の利点の1つまたは複数を示す:(1)有機スズアジドが使用されるプロセスステップを必要とせず、したがって環境に優しい;(2)ベンジルエステルなどのエステルの脱保護のためにPd/Cなどの高価な遷移金属触媒が使用されるプロセスステップを必要としない;(3)経済的に魅力的である;(4)大規模に行うことができる;(5)任意選択によりワンポットで行われてもよく、したがって、中間生成物の単離および溶媒置換などの手順のために必要とされる時間および労力を減少させる;(6)鏡像異性的に純粋な標的生成物を生じる;および(7)上記の副生成物の形成を回避する。したがって、本発明の調製方法は、バルサルタンの工業的調製に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
バルサルタンを調製するためのワンポット方法に関する調査中に、本明細書において定義されている式(III)の化合物のエステル基を、上述した式(IV)の遊離酸へ変換するための新規な方法が見出された。すなわち、一態様において、本発明は、有機アルミニウムハライド試薬の使用による、ベンジルエステルなどのエステル基の遊離酸への変換に関する。そのような化学的反応を実現するための有機アルミニウムハライド試薬の使用は、本明細書において以後記載されるように、多くの利点を提供する。典型的には、ベンジルエステルは、水素添加条件下で遊離酸に変換される(すなわち、パラジウム触媒などの遷移金属触媒の存在下において水素を用いて)。有機アルミニウムハライド試薬を使用することによって、可燃性の水素の使用を回避し、加圧リアクターを必要とせず、高価な遷移金属触媒を必要としない。さらに、有機アルミニウムハライド試薬の使用は、毒性およびコストの両方の点から有利である。
【0014】
Tetrahedron Letters、1979、2793において、無機化合物AlClが、ベンジルエステル基の除去を実現して遊離酸を生じることができることが報告されている。したがって、有機アルミニウムハライドがエステル基の遊離酸への変換を実現することができるという発見は新しく、さらに、完全に予期しないものである。加えて、有機アルミニウムハライド試薬の使用は、有機アルミニウムアジド試薬をin situで調製する手段を提供し、したがって、遊離酸中間体を単離する必要なく、その後のシアノ基のテトラゾール基への変換を可能にする。したがって、さらなる実施形態において、本発明はまた、有機アルミニウムハライド試薬の使用によりエステル基の酸基への変換を実現し、好ましくは有機アルミニウムハライド試薬からin situで調製される、有機アルミニウムアジド試薬などのアジド試薬の使用によりシアノ基のテトラゾール基への変換を実現する、ワンポット方法によるバルサルタンの調製を可能にする。
【0015】
本明細書において下記に定義されている式(III)、(IV)および(V)の化合物を調製するための方法は、文献において記載されている。例えば、式(IV)の化合物の調製は、Chinese Journal of Pharmaceuticals 2001、32(9)、385において、およびEP1533305A1において記載されている。例えば、Richard C.Larock、「Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations」、第2版 Wiley−VCH Verlag GmbH、2000において記載されているように、当業者に知られている標準的な方法を使用することによって、式(III)の化合物は、エステル化反応を介して式(IV)の化合物に変換することができる。特に、Rがベンジルである式(IV)の化合物の調製は、Organic Process Research & Development 2007、11、892において記載されている。
【0016】
A.エステル基を遊離酸へ変換するための有機アルミニウムハライド試薬の使用
一態様において、本発明は、エステル基を遊離酸に変換するための、式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
の使用に関する。
【0017】
特に、本発明は、特に、
バルサルタンもしくはその塩、または
式(IV)の化合物もしくはその塩
【0018】
【化4】

の製造方法における、エステル基を遊離酸に変換するための、式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
の使用に関する。
【0019】
B.有機アルミニウムハライド試薬によるエステル基の遊離酸への変換
B.1:シアノ含有化合物におけるエステル基の遊離酸への変換
別の態様において、本発明は、式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩の製造方法であって、
【0020】
【化5】

式(III)の化合物またはその塩
【0021】
【化6】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【0022】
【化7】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)を、
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(IV)の化合物を得るステップ
を含む方法に関する。
【0023】
上記の方法の好ましい一実施形態において、式(III)の化合物についてのRという用語は、
【0024】
【化8】

(式中、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)である。
【0025】
特に、式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩の製造方法であって、
【0026】
【化9】

式(III)の化合物またはその塩
【0027】
【化10】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【0028】
【化11】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素であり、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは、水素である)を、
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(IV)の化合物を得るステップ
を含む方法。
【0029】
上記の方法の好ましい一実施形態において、式(III)の化合物についてのRという用語は、
【0030】
【化12】

である
(式中、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素であり;
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは、水素である)。
【0031】
好ましくは、式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩の製造方法であって、
【0032】
【化13】

式(III)の化合物またはその塩
【0033】
【化14】

(式中、Rは、
【0034】
【化15】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素であり、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素またはC1〜7アルコキシ、最も好ましくは水素である)を、
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(IV)の化合物を得るステップ
を含む方法。
【0035】
好ましくは、上記で詳述された(すなわち、セクションB.1)方法のいずれかについて、R基は、ベンジル、p−メトキシベンジル、アリル、シンナミル、プレニルまたはプロパルギル、より好ましくはベンジル、アリル、シンナミル、プレニルまたはプロパルギル、最も好ましくは、ベンジルである。
【0036】
上記で詳述された(すなわち、セクションB.1)方法のいずれかにおいて、好ましくは、有機アルミニウムハライドは、式R5R6AlXのものである(式中、R5、R6およびXは上記で定義されている通りであり、例えば、ジエチルアルミニウムクロリドまたはジメチルアルミニウムクロリド、最も好ましくはジエチルアルミニウムクロリドである)。
【0037】
本明細書において記載されている有機アルミニウムハライドの、本明細書において記載されている式(III)の化合物に対するモル比は、例えば、6:1、5:1などであり、好ましくは4:1または3:1である。
【0038】
上記に詳述されている方法のいずれかにおいて、反応温度は、好ましくは、室温から溶媒の沸点までの温度範囲であり、例えば、反応温度範囲は、20℃から170℃まで、好ましくは、60℃から130℃までである。
【0039】
B.2:テトラゾール含有化合物におけるエステル基の遊離酸への変換:バルサルタンの合成
さらなる一態様において、本発明は、式(I)の化合物またはその塩の製造方法であって、
【0040】
【化16】

式(V)の化合物またはその塩,
【0041】
【化17】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【0042】
【化18】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)を、
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(I)の化合物を得るステップ
を含む方法に関する。
【0043】
上記の方法の好ましい一実施形態において、式(V)の化合物についてのRという用語は、
【0044】
【化19】

である
(式中、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)。
【0045】
特に、式(I)の化合物またはその塩の製造方法であって、
【0046】
【化20】

式(V)の化合物またはその塩
【0047】
【化21】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【0048】
【化22】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素であり、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは、水素である)を、
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(I)の化合物を得るステップ
を含む方法。
【0049】
上記の方法の好ましい一実施形態において、式(V)の化合物についてのRという用語は、
【0050】
【化23】

である
(式中、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素であり、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは、水素である)。
【0051】
好ましくは、式(I)の化合物またはその塩の製造方法であって、
【0052】
【化24】

式(V)の化合物またはその塩
【0053】
【化25】

(式中、Rが、
【0054】
【化26】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素であり、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは、水素またはC1〜7アルコキシ、最も好ましくは、水素である)を、
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(IV)の化合物を得るステップ
を含む方法。
【0055】
好ましくは、上記に詳述されている方法(すなわち、セクションB.2)のいずれかについて、R基は、ベンジル、p−メトキシベンジル、アリル、シンナミル、プレニルまたはプロパルギル、より好ましくはベンジル、アリル、シンナミル、プレニルまたはプロパルギル、最も好ましくは、ベンジルである。
【0056】
上記に詳述されている方法(すなわち、セクションB.2)のいずれかにおいて、好ましくは、有機アルミニウムハライドは、式R5R6AlXのものである(式中、R5、R6およびXは上記で定義されている通りであり、例えば、ジエチルアルミニウムクロリドまたはジメチルアルミニウムクロリド、最も好ましくはジエチルアルミニウムクロリドである)。
【0057】
本明細書において記載されている有機アルミニウムハライドの、本明細書において記載されている式(V)の化合物に対するモル比は、例えば、6:1、5:1などであり、好ましくは4:1または3:1である。
【0058】
上記に詳述されている方法のいずれかにおいて、反応温度は、好ましくは、室温から溶媒の沸点までの温度範囲であり、例えば、反応温度範囲は、20℃から170℃まで、好ましくは、60℃から130℃までである。
【0059】
C.有機アルミニウムハライド試薬によるエステル基の遊離酸への変換に続くシアノ基のテトラゾールへの変換を介するバルサルタンの合成
C.1:バルサルタンの段階的合成
本発明の別の態様は、エステル基の遊離酸への変換およびシアノ基のテトラゾールへの変換が、段階的に、すなわち、2つの別個のステップにおいて、中間体種の単離とともに行われるバルサルタンの製造方法に関する。
【0060】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物またはその塩の段階的製造方法であって、
【0061】
【化27】

i)式(III)の化合物またはその塩
【0062】
【化28】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【0063】
【化29】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)を
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩を得るステップと、
【0064】
【化30】

ii)式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩を、アジド試薬で処理して式(I)の化合物を得るステップと
を含む方法に関する。
【0065】
上記の方法の好ましい一実施形態において、式(III)の化合物についてのRという用語は、
【0066】
【化31】

である
(式中、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)。
【0067】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物またはその塩の製造方法であって、
【0068】
【化32】

i)式(III)の化合物またはその塩
【0069】
【化33】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【0070】
【化34】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素であり、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは、水素である)を、
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩を得るステップと、
【0071】
【化35】

ii)式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩を、アジド試薬で処理して式(I)の化合物を得るステップと
を含む方法に関する。
【0072】
上記の方法の好ましい一実施形態において、式(III)の化合物についてのRという用語は、
【0073】
【化36】

である(式中、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素であり、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは、水素である)。
【0074】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物またはその塩の製造方法であって、
【0075】
【化37】

i)式(III)の化合物またはその塩
【0076】
【化38】

(式中、Rは
【0077】
【化39】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素であり、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素またはC1〜7アルコキシ、より好ましくは水素である)を、
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩を得るステップと、
【0078】
【化40】

ii)式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩を、アジド試薬で処理して式(I)の化合物を得るステップと
を含む方法に関する。
【0079】
好ましいアジド試薬は、例えば、アジ化水素アジド(hydrazoic azid)の金属塩、例えばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(例えば、アジ化リチウム、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化カルシウム、アジ化マグネシウム、アジ化アルミニウム)、アジ化水素酸の有機塩基との塩(例えば、テトラメチルグアニジンアジド)、または式R7R8MNのアジド(式中、Mは、ホウ素またはアルミニウム、好ましくは、アルミニウムであり、R7およびR8は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキル−C1〜7アルキルまたはC6〜10アリール−C1〜7アルキル、好ましくはC1〜7アルキルである)である。特に、アジド試薬は、式R7R8MNのものである(式中、Mは、アルミニウムまたはホウ素、好ましくは、アルミニウムであり、R7およびR8は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキル−C1〜7アルキルまたはC6〜10アリール−C1〜7アルキル、好ましくはC1〜7アルキルである)。好ましくは、アジド試薬は、ジエチルアルミニウムアジドまたはジメチルアルミニウムアジド、より好ましくは、ジエチルアルミニウムアジドである。
【0080】
好ましくは、上記に詳述されている方法(すなわち、セクションC.1)のいずれかについて、R基は、ベンジル、p−メトキシベンジル、アリル、シンナミル、プレニルまたはプロパルギル、より好ましくはベンジル、アリル、シンナミル、プレニルまたはプロパルギル、最も好ましくは、ベンジルである。
【0081】
上記に詳述されている方法(すなわち、セクションC.1)のいずれかにおいて、好ましくは、有機アルミニウムハライドは、式R5R6AlXのものである(式中、R5、R6およびXは上記で定義されている通りであり、例えば、ジエチルアルミニウムクロリドまたはジメチルアルミニウムクロリド、最も好ましくはジエチルアルミニウムクロリドである)。
【0082】
本明細書において記載されている有機アルミニウムハライドの、本明細書において記載されている式(III)の化合物に対するモル比は、例えば、6:1、5:1などであり、好ましくは、4:1または3:1である。
【0083】
上記に詳述されている方法のいずれかにおいて、ステップi)の反応温度は、好ましくは、室温から溶媒の沸点までの温度範囲であり、例えば、反応温度範囲は、20℃から170℃まで、好ましくは、60℃から130℃までである。
【0084】
上記に詳述されている方法のいずれかにおいて、ステップii)の反応温度は、好ましくは、室温から溶媒の沸点までの温度範囲であり、例えば、反応温度範囲は、20℃から170℃まで、好ましくは、60℃から130℃までである。
【0085】
C.2:バルサルタンのワンポット合成
本発明のさらなる一態様は、エステル基の遊離酸への変換およびシアノ基のテトラゾールへの変換がワンポット方法において行われるバルサルタンの製造方法に関する。
【0086】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物またはその塩のワンポット製造方法であって、
【0087】
【化41】

i)式(III)の化合物またはその塩
【0088】
【化42】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【0089】
【化43】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)を、
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩を得るステップと、
【0090】
【化44】

ii)ステップi)の結果として生じる反応混合物にアジド試薬を添加して、式(I)の化合物を得るステップと
を含む方法に関する。
【0091】
上記の方法の好ましい一実施形態において、式(III)の化合物についてのRという用語は、
【0092】
【化45】

である(式中、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)。
【0093】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物またはその塩のワンポット製造方法であって、
【0094】
【化46】

i)式(III)の化合物またはその塩
【0095】
【化47】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【0096】
【化48】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素であり、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは、水素である)を、
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩を得るステップと、
【0097】
【化49】

ii)ステップi)の結果として生じる反応混合物にアジド試薬を添加して、式(I)の化合物を得るステップと
を含む方法に関する。
【0098】
上記の方法の好ましい一実施形態において、式(III)の化合物についてのRという用語は、
【0099】
【化50】

である(式中、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは水素であり、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくは、水素である)。
【0100】
好ましいアジド試薬は、例えば、アジ化水素アジド(hydrazoic azid)の金属塩、例えばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(例えば、アジ化リチウム、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化カルシウム、アジ化マグネシウム、アジ化アルミニウム)、アジ化水素酸の有機塩基との塩(例えば、テトラメチルグアニジンアジド)、または式R7R8MNのアジド(式中、Mは、ホウ素またはアルミニウム、好ましくは、アルミニウムであり、R7およびR8は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキル−C1〜7アルキルまたはC6〜10アリール−C1〜7アルキル、好ましくはC1〜7アルキルである)。特に、アジド試薬は、式R7R8MNのものである(式中、Mは、アルミニウムまたはホウ素、好ましくは、アルミニウムであり、R7およびR8は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキル−C1〜7アルキルまたはC6〜10アリール−C1〜7アルキル、好ましくはC1〜7アルキルである)。好ましくは、アジド試薬は、ジエチルアルミニウムアジドまたはジメチルアルミニウムアジド、より好ましくは、ジエチルアルミニウムアジドである。
【0101】
好ましい一実施形態において、アジド試薬は、式R7R8MNのものであり(式中、Mは、アルミニウムであり、R7およびR8は、上記で定義される通りである)、アジ化水素アジド(hydrazoic azid)の金属塩、例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(例えば、アジ化リチウム、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化カルシウム、アジ化マグネシウムまたはアジ化アルミニウム)を、本明細書において定義されている式R5R6MXの有機アルミニウムハライド試薬に添加することによってin situで調製される。好ましくは、前記in situでの調製は、アジ化水素酸の金属塩をステップi)の反応混合物に添加することによって行われる。この好ましい実施形態において、有機アルミニウムハライド試薬の有機アルミニウムアジド試薬への変換は、室温で行われ、その後のテトラゾール形成反応は、好ましくは、60℃から130℃まで、90℃から130℃までなど、室温より高く加熱して行われる。この実施形態において、過剰量の、例えば1.2〜2当量の間の量または2当量以上の量のアジド試薬、好ましくは2当量以上の量が使用されてもよい。
【0102】
好ましくは、上記に詳述されている方法(すなわち、セクションC.2)のいずれかについて、R基は、ベンジル、p−メトキシベンジル、アリル、シンナミル、プレニルまたはプロパルギル、より好ましくはベンジル、アリル、シンナミル、プレニルまたはプロパルギル、最も好ましくは、ベンジルである。
【0103】
上記に詳述されている方法(すなわち、セクションC.2)のいずれかにおいて、好ましくは、有機アルミニウムハライドは、式R5R6AlXのものである(式中、R5、R6およびXは上記で定義されている通りであり、例えば、ジエチルアルミニウムクロリドまたはジメチルアルミニウムクロリド、最も好ましくはジエチルアルミニウムクロリドである)。
【0104】
本明細書において記載されている有機アルミニウムハライドの、本明細書において記載されている式(III)の化合物に対するモル比は、例えば、6:1、5:1などであり、好ましくは、4:1または3:1である。
【0105】
上記に詳述されている方法のいずれかにおいて、ステップi)の反応温度は、好ましくは、室温から溶媒の沸点までの温度範囲であり、例えば、反応温度範囲は、20℃から170℃まで、好ましくは、60℃から130℃までである。
【0106】
上記に詳述されている方法のいずれかにおいて、ステップii)の反応温度は、好ましくは、室温から溶媒の沸点までの温度範囲であり、例えば、反応温度範囲は、20℃から170℃まで、好ましくは、60℃から130℃まで、好ましくは、80℃から130℃までである。
【0107】
D.新規で独創的な化合物
上記に示されている方法においては、いくつかの新規で独創的な化合物が関連する。すなわち、本発明のさらなる対象は、下記に示されている化合物である。
【0108】
本明細書において定義されている式(IV)の化合物のアミン塩。
【0109】
式(III)の化合物またはその塩
【0110】
【化51】

(式中、Rは、ベンジル、アリル、シンナミル、プレニルまたはプロパルギル、より好ましくは、ベンジルである)。
【0111】
本発明の新規な中間体および合成ステップを説明するために使用される様々な用語の定義を以下に列挙する。これらの定義は、本開示において使用される1つの、複数のまたはすべての一般的な表現または記号を置き換えること、およびしたがって本発明の実施形態を与えることのいずれによっても、それらが特定の場合において個々にまたはより大きい群の部分として別途限定されない限り、それらが本明細書全体にわたって使用される場合の用語に特に適用される。
【0112】
「C〜C20−」という用語は、分岐した(1または複数回)または直鎖状の、末端または非末端の炭素を介して結合した、最大で20個まで(20個を含む)の、特に最大で7個まで(7個を含む)の、炭素原子を有する部分を定義する。
【0113】
基または基の部分としてのアルキルという用語は、分岐した(1または複数回)または直鎖状の、末端または非末端の炭素を介して結合した、最大で7個まで(7個を含む)の(C1〜7アルキル)、特に最大で4個まで(4個を含む)の(C1−4アルキル)、炭素原子を有する部分を定義する。特に、アルキルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、またはtert−ブチル、より好ましくはメチルである。
【0114】
ハロ−C〜C−アルキルは、直鎖状または分岐状であってもよく、特に、1個〜4個のC原子、例えば1個または2個のC原子を含む。例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2−クロロエチルおよび2,2,2−トリフルオロエチルである。
【0115】
ハロまたはハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード、好ましくはフルオロ、クロロまたはブロモ、好ましくはクロロである。
【0116】
基または基の部分であるアルケニルは、少なくとも1つの二重結合を含有する、直鎖のまたは分岐した(1回または、所望され可能であれば、複数回)炭素鎖であり、例えば、C〜C20−アルケニル(C〜Cアルケニルなど)である。特に、アルケニルは、例えば、本明細書に記載されている通り置換されていないまたは置換されているアリルである。
【0117】
基または基の部分であるアルキニルは、少なくとも1つの三重結合を含有する、直鎖のまたは分岐した(1回または、所望され可能であれば、複数回)炭素鎖であり、例えば、C〜C20−アルキニル(C〜C−アルキニルなど)である。特に、アルキニルは、例えば、記載されている通り置換されていないまたは置換されているプロパルギルである。
【0118】
基または基の部分であるシクロアルキルという用語は、「C3〜8シクロアルキル」であり、最大で8個まで(8個を含む)の、特に最大で6個まで(6個を含む)の、炭素原子を有するシクロアルキル部分を定義する。前記シクロアルキル部分は、例えば、1つまたは複数の二重および/または三重結合を含んでいてもよい単環式または二環式、特に単環式である。実施形態は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルを含む。
【0119】
ヘテロシクリルは、好ましくは3個〜20個(より好ましくは5個〜10個)の環原子を有し、窒素、酸素、硫黄、S(=O)−またはS−(=O)から独立して選択される1つまたは複数の、好ましくは、1個〜4個のヘテロ原子を有する、単環式または多環式、好ましくは、単環式、二環式または三環式、最も好ましくは単環式の、不飽和の、部分飽和の、飽和のまたは芳香族の環系である。ヘテロシクリルが芳香族環系であるとき、これはヘテロアリールとも称される。
【0120】
基または基の部分であるアルコキシは、例えば、C〜C20−アルコキシ(−O−C〜C20アルキル)、好ましくはC〜C−アルコキシ(−O−C〜Cアルキル)である。特に、アルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシおよびヘプチルオキシ基である。
【0121】
アルコキシアルキルは、直鎖状または分岐状であってもよい。アルコキシ基は、例えば、1個〜7個、特に1個または4個のC原子を含み、アルキル基は、例えば、1個〜7個、特に1個または4個のC原子を含む。例は、メトキシメチル、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、5−メトキシペンチル、6−メトキシヘキシル、エトキシメチル、2−エトキシエチル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチル、5−エトキシペンチル、6−エトキシヘキシル、プロピルオキシメチル、ブチルオキシメチル、2−プロピルオキシエチルおよび2−ブチルオキシエチルである。
【0122】
基または基の部分であるアルカノイルは、例えば、−C(=O)C〜Cアルキルである。特に、アルカノイルは、例えば、アセチル[−C(=O)Me]、プロピオニル、ブチリル、イソブチリルまたはピバロイルである。
【0123】
基または基の部分であるアリールは、例えば、基または基の部分であるC6〜10アリールは、好ましくは、単環式または多環式、特に単環式、二環式または三環式の6〜10個の炭素原子を有するアリール部分、好ましくはフェニル、インデニル、インダニルまたはナフチル、最も好ましくはフェニルである。
【0124】
アリールアルキルという用語は、アリール−C〜C−アルキルを指し、ここで、アリールは本明細書において定義されており、例えば、記載されている通り置換されていないまたは置換されているベンジルである。
【0125】
カルボキシルという用語は、−COHを指す。
【0126】
本明細書において使用される「遊離酸」という用語は、COH基を指す。典型的には、COH基は、例えば、参照により本明細書に完全に組み込まれるWO2005/014602の3ページにおいて定義されている有機残基に結合している。
【0127】
本明細書において使用される「エステル」または「エステル基」という用語は、COR基を指す(式中、Rは、式(III)または(V)の化合物について上記で定義されている通りであり、Rは、好ましくは、ベンジル、アリル、シンナミル、プレニルまたはプロパルギル、最も好ましくは、ベンジルである)。典型的には、COR基は、例えば、参照により本明細書に完全に組み込まれるWO2005/014602の3ページにおいて定義されている有機残基に結合している。
【0128】
アリールオキシは、アリール−O−を指す(式中、アリールは、上記で定義されている通りである)。
【0129】
好ましい置換基は、ハロ、ニトロ、C〜C−アルキル、ハロ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ハロ−C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルキルC〜C−アルコキシおよびC〜C−アルコキシ−C〜C−アルコキシからなる群から選択される。
【0130】
「式(IV)の化合物の塩」という用語は、例えば、そのアミン塩、そのアルカリ塩またはそのアルカリ土類金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩など)を指す。特に、「そのアミン塩」という表現における「アミン」という用語は、例えば、式(IV)の化合物のアミン塩に言及している場合、式NR9R10R11の第三級アミン、式NHR9R10Rの第二級アミンまたは式NHR9の第一級アミンを意味する(式中、R9、R10およびR11は、互いに独立して、本明細書において定義されているアルキル、アリール、シクロアルキルまたはヘテロシクリル、好ましくは、アルキルまたはシクロアルキルである)。「アミン」という用語は、例えば、ジフェニルアミン、ジイソプロピルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、t−ブチルアミン、n−ブチルアミンまたはシクロヘキシルアミン、特に、t−ブチルアミン、n−ブチルアミンまたはシクロヘキシルアミン、より好ましくはn−ブチルアミンまたはシクロヘキシルアミンである。
【0131】
アスタリスク(*)付きの結合は、その分子の残りの部分への結合点を意味する。
【0132】
上記の式において、
【0133】
【化52】

という用語は、それぞれの二重結合の(E)立体異性体ならびに(Z)立体異性体を含む共有結合を表す。
【0134】
「ワンポット」または「ワンポット方法」という用語は、一連の(すなわち、1つの連続した)反応、例えば2つ以上の連続する反応において、各反応生成物が、単離および精製を行わずに次の反応に提供されることを意味する。本明細書において定義されているワンポット方法は、単一の反応容器において実施される一連の(すなわち、1つの連続した)反応だけでなく、単離および精製を行わずに、複数の反応容器において(例えば、反応混合物を1つの容器から別の容器に移すことによって)実施される一連の(すなわち、1つの連続した)反応もまた包含する。好ましくは、ワンポット方法は、単一の反応容器において実施される。
【0135】
「段階的方法」という用語は、一連の(すなわち、1つの連続した)反応において、各反応生成物が、単離および任意選択により精製を行って次の反応に提供されることを意味する。
【0136】
「ワークアップ」という用語は、反応が終了すると行われる単離および/または精製の処理を意味する。
【0137】
本明細書において使用される場合、「室温」または「周囲温度」という用語は、15〜30℃の温度、20〜30℃など、20〜25℃などを意味する。
【0138】
本明細書において使用される場合、「in situ」という用語は、アジ化水素酸の金属塩の、本明細書において定義されている式R5R6AlXの試薬への付加により、式R7R8MNのアジド(式中、Mはアルミニウムであり、R7およびR8は本明細書に記載されている通りである)を形成することができることを指す。
【0139】
「有機アルミニウムアジド」という用語は、試薬が式R7R8MNのものであることを指す(式中、Mはアルミニウムであり、R7およびR8は本明細書において定義されている通りである)。好ましくは、式R7R8MNの試薬は、EtAlNである。
【0140】
「有機アルミニウムハライド」という用語は、試薬が本明細書において定義されている式R5AlX2またはR5R6AlXのものであることを指す。好ましくは、式R5AlX2の「有機アルミニウムハライド」は、MeAlClであり、かつ/または式R5R6AlXの式の「有機アルミニウムハライド」は、EtAlClまたはMeAlClである。
【0141】
「アジ化水素酸の金属塩」という用語は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(例えば、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化カルシウム、アジ化マグネシウム)およびアジ化アルミニウムまたはアジ化スズなどの別の金属塩を指す。
【0142】
本発明の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を有することができる。
【0143】
塩は、特に、薬学的に許容される塩であり、または一般には、当業者が容易に理解するであろう化学的理由のために除外されない、本明細書において言及されている中間体のいずれかの塩である。これらは形成されて、塩基性基または酸性基などの塩を形成する基が、水性溶液中で例えば4〜10のpH範囲において、少なくとも部分的に解離した形態で存在することができるように存在することができ、または、特に固体、特に結晶の形態で、単離されてもよい。
【0144】
そのような塩は、例えば、好ましくは有機酸または無機酸との酸付加塩として、塩基性窒素原子(例えばイミノまたはアミノ)を用いて、本明細書において言及されている化合物または中間体のいずれかから、特に、薬学的に許容される塩として、形成される。適した無機酸は、例えば、塩酸、硫酸、またはリン酸などのハロゲン酸である。適した有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸などのアミノ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、安息香酸、メタンもしくはエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−もしくはN−プロピル−スルファミン酸、またはアスコルビン酸などの別の有機プロトン酸である。
【0145】
カルボキシまたはスルホなどの負に荷電した基の存在下において、塩はまた、塩基と形成され、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩などの金属塩もしくはアンモニウム塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩もしくはカルシウム塩、またはアンモニアもしくは適した有機アミン、例えばトリエチルアミンまたはトリ(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−エチル−ピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、t−ブチルアミン、n−ブチルアミン、フェニルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミンまたはシクロヘキシルアミンとのアンモニウム塩であり得る。
【0146】
塩基性基および酸基が同じ分子中に存在する場合、本明細書において言及されている中間体のいずれかはまた、内部塩を形成し得る。
【0147】
本明細書において言及されている中間体のいずれかの単離または精製のために、薬学的に許容できない塩、例えばピクリン酸塩または過塩素酸塩を使用することもまた可能である。
【0148】
中間体として使用することができるそれらの塩を含めて、遊離形態およびそれらの塩の形態での化合物と中間体との間の密接な関係を考慮して、例えば化合物またはそれらの塩の精製または同定において、本明細書中の前述および後述の「化合物」、「出発材料」および「中間体」への任意の言及は、適切なおよび好都合なように、また明示的に別途言及されていなければ、1つもしくは複数のそれらの塩または対応する遊離化合物、中間体もしくは出発材料と、1つもしくは複数のそれらの塩との混合物もまた指し、これらのそれぞれは、これらのいずれか1つまたは複数の任意の溶媒和物または塩もまた含むことが意図されていると理解されるべきである。異なる結晶型が得られてもよく、そのためこれもまた含まれる。
【0149】
化合物、出発材料、中間体、塩、医薬製剤、疾患、障害などに関して複数形が使用される場合、これは、1つの(好ましい)または複数の単一化合物(複数可)、塩(複数可)、医薬製剤(複数可)、疾患(複数可)、障害(複数可)などを意味することが意図され、単数形または不定冠詞(「1つの(a)」、「1つの(an)」)が使用される場合、これは、複数形を除外することを意図していないが、ただ好ましくは「1つの」を意味する。
【0150】
「バルサルタン」という用語は、特に定義されていなければ、遊離酸およびその塩、特にそれらの薬学的に許容される塩の両方と理解されるべきである。バルサルタン、またはそれらの薬学的に許容される塩は、例えば、WO2004/026847において、WO2005/014602においておよびUS5,399,578において例えば記載されているように、それ自体知られているように調製することができる。バルサルタンという用語はまた、Merck Index:an Encyclopedia of Chemicals, Drugs and Biologicals、第13版、ホワイトハウスステーション、NJ、米国:Merck Research Laboratories、2001. ISBN 978-0-911910-00-1において見られるような、N−(1−オキソペンチル)−N−[[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1'−ビフェニル]−4−イル]メチル]−L−バリン;N−[p−(o−1H−テトラゾール−5−イルフェニル)ベンジル]−N−バレリル−L−バリン;または(S)−N−(1−カルボキシ−2−メチルプロパ−1−イル)−N−ペンタノイル−N−[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イルメチル]アミンを指す。
【0151】
好ましい塩形態は、酸付加塩を含む。少なくとも1つの酸基(例えば、COOHまたは5−テトラゾリル)を有する化合物はまた、塩基と塩を形成することもできる。塩基との適した塩は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩、あるいはアンモニアまたは有機アミン(モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ、ジもしくはトリ低級アルキルアミン、例えば、エチル、tert−ブチル、ジエチル、ジイソプロピル、トリエチル、トリブチルもしくはジメチルプロピルアミン、またはモノ、ジもしくはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えば、モノ、ジもしくはトリエタノールアミンなど)との塩である。対応する内部の塩がさらに形成されてもよい。製薬用途に適さないが、例えば、遊離化合物Iまたはそれらの薬学的に許容される塩の単離または精製のために用いることができる塩もまた含まれる。さらにより好ましい塩は、例えば、非晶型の一ナトリウム塩;非晶型または結晶型の、特に水和型の、バルサルタンの二ナトリウム塩から選択される。非晶型のバルサルタンの一カリウム塩;非晶型または結晶型の、特に水和型の、バルサルタンの二カリウム塩。
【0152】
結晶型の、特に水和型(主としてその四水和物)の、バルサルタンのカルシウム塩;結晶型の、特に水和型(主としてその六水和物)のバルサルタンのマグネシウム塩;結晶型の、特に水和型のバルサルタンのカルシウム/マグネシウム混合塩;結晶型の、特に水和型のバルサルタンのビス−ジエチルアンモニウム塩;結晶型の、特に水和型のバルサルタンのビス−ジプロピルアンモニウム塩;結晶型の、特に水和型(主としてその半水和物)のバルサルタンのビス−ジブチルアンモニウム塩;非晶型のバルサルタンのモノ−L−アルギニン塩;非晶型のバルサルタンのビス−L−アルギニン塩;非晶型のバルサルタンのモノ−L−リシン塩;非晶型のバルサルタンのビス−L−リシン塩。最も好ましくは、バルサルタンは遊離酸として使用される。
【0153】
省略形:
AB AB系
AB−gem ABジェミナル系
ar. 芳香族
arom. 芳香族
arom−H 芳香族H
ar−H 芳香族H
ar−CH 芳香族CH
al−CH 脂肪族CH
ali. 脂肪族
ali.−CH 脂肪族CH
δ 化学シフト
Bn ベンジル
Boc tert−ブトキシカルボニル
BOCO ジ−tert−ブチルカーボネート
brm ブロード多重線
br.sign. ブロードシグナル
br.s. ブロードシグナル
br.m. ブロード多重線
br.mult. ブロード多重線
cat. 触媒量
compl.m 複雑な多重線
compl.mult.;copl.m. 複雑な多重線
cpl.m. 複雑な多重線
Cbz カルバミン酸ベンジル
Cbz−Cl クロロギ酸ベンジル
d 二重線
dd 二重二重線
DCM ジクロロメタン
de ジアステレオマー過剰率
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FeCl 塩化鉄(III)
FTIR フーリエ変換赤外分光法
h 時間
HCl 塩酸
HNMR プロトン核磁気共鳴
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
i−Pr イソプロピル
IR 赤外分光光度計
L リットル
LCMS 液体クロマトグラフィー−質量分析
LRMS 低分解質量分析
M モル濃度
m/e 質量対電荷比
Me メチル
mg ミリグラム
MgSO 硫酸マグネシウム
m 多重線
min 分
mL ミリリットル
mmol(s) ミリモル
mol(s) モル
monosub. 一置換
m.p. 融点
MS 質量分析
mult.d 多重二重線
NaOH 水酸化ナトリウム
NaOCl 次亜塩素酸ナトリウム
nm ナノメートル
NMR 核磁気共鳴
oct. オクテット
Pd/C パラジウム炭素
Ph フェニル
ppm 100万分の1
psi ポンド/平方インチ
RT 室温
RuCl 塩化ルテニウム(III)
s 一重線
SiO シリカゲル
sev.brm いくつかのブロードな多重線
sev.dd いくつかの二重二重線
t 三重線
temp. 温度
TBME tertブチルメチルエーテル
TEMPO 2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペ リジニルオキシ
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
Tos− トシル
保持時間
vol. 体積
wt. 重量
【実施例】
【0154】
実験:
次の用語を、本明細書において以下で使用する。
「メチルエステル−ニトリル」=(S)−2−[(2'−シアノ−ビフェニル−4−イルメチル)−ペンタノイル−アミノ]−3−メチル−酪酸メチルエステル
「ベンジルエステル−ニトリル」=(S)−2−[(2'−シアノ−ビフェニル−4−イルメチル)−ペンタノイル−アミノ]−3−メチル−酪酸ベンジルエステル(Organic Process Research & Development 2007、11、892において記載されている)
「酸−ニトリル」=(S)−2−[(2'−シアノ−ビフェニル−4−イルメチル)−ペンタノイル−アミノ]−3−メチル−酪酸(Chinese Journal of Pharmaceuticals 2001、32(9)、385においておよびEP1533305A1において記載されている)
「バルサルタン」=
N−(1−オキソペンチル)−N−[[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1'−ビフェニル]−4−イル]メチル]−L−バリン、または
N−[p−(o−1H−テトラゾール−5−イルフェニル)ベンジル]−N−バレリル−L−バリン、または
(S)−N−(1−カルボキシ−2−メチルプロパ−1−イル)−N−ペンタノイル−N−[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イルメチル]アミン。
【0155】
参照例I:Pd/Cを用いた「ベンジルエステル−ニトリル」の水素添加を介する「酸−ニトリル」の調製
【0156】
【化53】

40g(84mmol)の「ベンジルエステル−ニトリル」を、400mlの無水エタノール中に溶解させ、振とう装置中で0.1バールおよび20〜25℃でPd/C10wt.%(Engelhard4505)を添加することによって水素添加する。1時間後に、理論上の水素取り込みは完了する。ワークアップのために触媒を濾過し、追加の100mlのエタノールで洗浄する。濾液を真空中で蒸発させ、高真空中で乾燥させて、無色の油状物を得る。
1H-NMR: (400 MHz, CDCl3); δH (ppm): 0.67-0.70 (6H, 2 dd, 2x -CH3), 0.78 (3H, d, -CH3), 1.06-1.18 (2H, m, -CH2-), 1.40-1.48 (2H, m, -CH2-), 2.18-2.33 (2H, m, -CH2-C=O), 2.50-2.58 (1H, m, -CH-), 3.37-3.50 (1H, d, -N-CH-COOH), 4.21 (1H, d, N-CH2-Ph-), 4.63 (1H, d, N-H2-Ph), 7.09 (2H, d, ar.-H), 7.24 (1H, t, ar.-H), 7.28 (1H, d, ar.-H), 7.34 (2H, d, ar.-H), 7.42 (1H, t, ar.-H), 7.53 (1H, d, ar.-H)
MS: [M+H]+ = 393
IR:透過型FTIR顕微鏡[cm−1
ブロード−COOH、3600−2400、3064、3030(CH、ar−H)、2962、2932、2873(ali.−CH)、2224(CN)、1735(C=O)、1650(C=Oアミド)、1650、1613(ar.)、1478、1469、1446(ar)、1410、1390、1373、1354、1271、1203、1169、1131、1106、1047、1026、1005、967、941、850、823(CH−パラ)、765(CH−オルト)、692
【0157】
実施例II:ジエチルアルミニウムクロリドを用いた「ベンジル−ニトリル」のベンジルエステルの切断を介する「酸−ニトリル」の調製
【0158】
【化54】

10mlの無水トルエン中の2.41g(5mmol)の「ベンジルエステル−ニトリル」の溶液に、シリンジを介して、トルエン中のジエチルアルミニウムクロリド(12.5ml、22.5mmol)の1.8モル濃度溶液を、室温で窒素下および撹拌下で添加する。添加は発熱を伴う。EtAlCl溶液の添加完了後、反応混合物を50℃まで加温する。2時間後、反応混合物を0℃まで冷却し、次いで、20mlの2モル濃度の塩酸をゆっくりと添加することによって反応停止させる。停止反応はかなりの発熱を伴い、気体放出が観察される。相を分離し、有機相を3×20mlの水で洗浄する。有機相を真空中で蒸発させて、油状物を得る。スペクトルデータは実施例Iと同じである。
【0159】
参照例III:ジエチルアルミニウムアジドを用いたワンポット方法によるバルサルタンの調製
ジエチルアルミニウムアジド試薬の調製:
アルゴン下の乾燥した250mlフラスコに、6.82g(105mmol)無水アジ化ナトリウムを入れる。この固体に、シリンジを介して、撹拌しながら1時間、2.7モル濃度溶液(38.9ml)、キシレン中の105mmolのジエチルアジ化アルミニウム(異性体混合物)を添加する。白色懸濁液を室温で終夜撹拌する。この時間の後、固体NaClおよびジエチルアルミニウムアジドを含有する懸濁液は、次にすぐ使用することができる。
【0160】
ジエチルアルミニウムアジドによるベンジルエステル−ニトリルの「酸−ニトリル」への切断および付加環化
【0161】
【化55】

上記で調製されたジエチルアルミニウムアジド懸濁液を、撹拌しながら窒素下で、同じフラスコ中で80℃まで加温する。この温度で、50mlのキシレン中の14.48g(30mmol)の「ベンジルエステル−ニトリル」溶液(異性体混合物)をゆっくりと(45分)滴下漏斗を介して添加する。添加完了後、HPLC分析は、出発材料の「酸−ニトリル」への完全な変換を示す。次いで、内部温度を100℃まで上昇させる。この温度で3.5時間撹拌した後、内部温度を110℃までさらに上昇させる。反応混合物を、110℃でさらに4時間撹拌し、次いで加熱を停止し、撹拌を室温で終夜続ける。次に、懸濁液を0℃まで冷却する。次いで、懸濁液に、水50ml中の水酸化ナトリウム水溶液(9g、225mmol)および15.52g(225mmol)の亜硝酸ナトリウムの混合物をゆっくりと添加する(1時間)。反応停止させる間、内部温度は0℃に保つ。追加の2モル濃度の水酸化ナトリウム水溶液(40ml)およびイソプロピル酢酸(50ml)を添加して、三相の透明な溶液を得る。相を分離し、有機相を水で抽出する。合わせた水相を濃HClで中和し、最後にpHを1.8に調整する。生成物を酢酸エチルで抽出する。抽出物の合わせた有機相を合わせ、真空中で蒸発させて、わずかに黄色がかった油状物を得る。油状の残渣をシクロヘキサンから結晶化させて、濾過、および真空オーブン中での乾燥後、バルサルタンを得る。スペクトルデータは実施例IVと同じである。
【0162】
実施例IV:バルサルタンの調製:ジエチルアルミニウムクロリドおよびアジ化ナトリウムと反応させることによってin situで生成するジエチルアルミニウムクロリド(エステル切断のため)およびジエチルアルミニウムアジド(付加環化反応のため)を用いた「ワンポット方法」を介して。
【0163】
【化56】

キシレン中の60gの(S)−2−[(2'−シアノ−ビフェニル−4−イルメチル)−ペンタノイル−アミノ]−3−メチル−酪酸ベンジルエステル(「ベンジルエステル−ニトリル」)の溶液(67.1mmol)を0℃で、33gジエチルアルミニウムクロリド(265.5mmol)と混合し、1時間撹拌し、時々冷却することによって混合物を最大で50℃まで温める。8.82gのアジ化ナトリウム(134.3mmol)を添加し、混合物を110℃まで加熱する。4時間後、反応混合物を、混合物の温度を50℃まで上昇させながら、201.6gの12(w/w)%NaOH水溶液を入れたフラスコに注意深く移す。上部の有機相を捨て、水相を60gのキシレンで洗浄する。
【0164】
生成物を含有する油相を分離し、さらなるワークアップのために使用する。これを120gの水に溶解させ、0.94gの亜硝酸ナトリウム(13.6mmol)を添加する。次いで、41.5gの32%塩酸を、5℃まで冷却しながら添加する。得られた懸濁液をBuchner漏斗において濾過し、100mlの0.5%塩酸で洗浄する。濾過ケーキを、40〜50℃において真空中で乾燥して、(S)−3−メチル−2−{ペンタノイル−[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イルメチル]−アミノ}−酪酸を得る。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz, ppm): 回転異性体の混合物、δ= 0.90-1.01 (9 H, m), 1.40 (2 H, m), 1.67 (2 H, m), 2.52 (2 H, m), 2.61 (1 H, m), 3.65 (1 H, d広幅), 4.05および4.29 (1 H, 2 d, 3J = 15.6 Hz), 4.89および5.16 (1 H, 2 d, 3J = 15.5 Hz), 7.12-7.14 (4 H, m), 7.41-7.60 (3 H, m), 7.87-7.94 (1 H, m) ppm.
【0165】
実施例V:3−メチル−1−(p−トリル)−トリアゼンを用いた中間体「酸−ニトリル」のエステル化
【0166】
【化57】

9.8g(65.56mmol)の3−メチル−1−(p−トリル)−トリアゼンを、ジクロロメタン100ml中に溶解させる。この溶液に、ジクロロメタン200ml中に溶解させた24.4g(59.6mmol)の「酸−ニトリル」の溶液を滴下漏斗によって、室温で45分の間撹拌しながら添加する。2時間後、反応混合物を、100mlの1モル濃度塩酸で処理する。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で蒸発させて、HPLCおよびH−NMR解析によれば純粋であるわずかに黄色の油状物を得る。
1H-NMR: (400 MHz, CDCl3); δH (ppm), 室温で回転異性体(6 : 4). 0.82-0.95 (5H, m, -CH3 , 60 %), 0.95-1.03 (4H, m, -CH3, 40%), 1.25-1.37 (1H, m,-CH-, 40%), 1.40-1.49 (1H, m, -CH-,60%), 1.60-1.70 (1H, m, -CH-, 60%), 1.70-1.82 (1H, m, -CH-, 40%), 2.22-2.65 (3H, br, 複雑な多重線, -CH-および-CH2-), 3.37 (s, -OCH3, 40%), 3.45 (s, -OCH3, 60%), 4.07 (0.5 H,40%, d, N-CH-CO2Me), 4.27 (0.5 H, 40%, d, N-CH2-Ph-Ph), 4.69 (2H, 60%, ab, dd, -N-CH2-Ph-Ph), 4.98 (1H, 60%, d, N-CH-CO2Me), 5.08 (0.5H, 40%, -N-CH2-Ph-Ph), 7.25-7.34 (3H, m, ar.-H), 7.40-7.58 (4H, m, ar.-H), 7.60-7.69 (1H, m, ar.-H), 7.72-7.80 (1H, m, ar.-H).
MS: [M+H]+ = 407, [M+NH4]+= 424
IR:透過型FTIR顕微鏡[cm−1
3064、3029(CH、ar−H)、2980、2933、2873(ali.−CH)、2224(CN)、1739(C=O)、1652(C=Oアミド)、1597、1561、519、1504、1478、1464、1435(ar)、1408、1372、1265、1204(C−O−エステル)1169、1133、1106、1007、974、946、888、824(CH−パラ)、765(CH−オルト)。
【0167】
実施例VI:バルサルタンの調製:過剰のジエチルアルミニウムクロリドをアジ化ナトリウムと反応させることによってin situで生成するジエチルアルミニウムクロリド(エステル切断のため)およびジエチルアルミニウムアジド(付加環化反応のため)を用いた「ワンポット方法」を介して。
【0168】
【化58】

アルゴンを充填した三つ口フラスコにおいて、キシレン中の2.4g(3.00mmol)の(S)−2−[(2'−シアノ−ビフェニル−4−イルメチル)−ペンタノイル−アミノ]−3−メチル−酪酸メチルエステルの溶液(3.00mmol)を、5mlの無水キシレン(40mmol)で希釈する。混合物を110℃まで加熱し、1.94mlのジエチルアルミニウムクロリド(15mmol)を添加する。混合物を110℃で撹拌する。60分後、0.59gのアジ化ナトリウムを固体のまま一度に添加する。混合物を110℃で撹拌する。44時間後、反応混合物を室温まで冷却させ、温度を30℃未満に維持しながら、20当量の10%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液(24.0g、60mmol)を入れた三つ口フラスコ中に移す。得られた二相の混合物を分液漏斗中に移し、上部のキシレン相を捨てる。水相を、6.8mlのキシレン(55mmol)で洗浄する。亜硝酸ナトリウム(0.45g、6.6mmol)を塩基性水溶液中に溶解させる。混合物を、温度を氷浴中で5℃未満に維持しながら、7.99gの37%塩酸水溶液(81mmol)および10ml酢酸エチル(102mmol)のエマルジョンに注意深く添加する。相を分離し、水相を10ml酢酸エチル(102mmol)で抽出する。合わせた有機相を10mlのHO(555mmol)で洗浄する。溶媒を真空下で除去し、20mlのキシレン(160mmol)を添加し、混合物を再度、濃縮乾固する。油状の粗生成物を、15mlのEtOAc(153mmol)中に溶解させ、約5mlまで濃縮し、2mlシクロヘキサン(21mmol)を、白色沈殿が60℃ですっかり再溶解するまで滴下添加する。混合物を8℃の冷蔵庫中に置く。16時間後に、オフホワイトの沈殿を濾過によって回収する。生成物を、冷酢酸エチル/シクロヘキサン1:1で洗浄し、真空下で乾燥して、(S)−3−メチル−2−{ペンタノイル−[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イルメチル]−アミノ}−酪酸(バルサルタン)を得る。1H-NMR (CDCl3, 400 MHz, ppm): 主回転異性体δ= 0.94-1.05 (9 H, m), 1.40-1.48 (2 H, m), 1.72-1.79 (2 H, m), 2.61-2.65 (2 H, m), 2.69-2.78 (1 H, m), 3.36 (1 H, d, JH,H = 11.1 Hz), 4.21 (1 H, d, JH,H=14.8 Hz), 5.00 (1H,d, JH,H = 14.8 Hz), 7.19-7.25 (4 H, m), 7.47-7.50 (1 H, m), 7.52-7.56 (1 H, m), 7.59-7.63 (1 H, m), 8.07-8.09 (1H, m).
【0169】
参照例VII:MeAl−Clを用いたフタル酸ビスアリルエステルの切断
【0170】
【化59】

246mg(1mmol)のフタル酸ジアリルを、窒素下で10mlの無水トルエン中に溶解させる。この溶液を加熱還流(110℃)し、2.1mlのジメチルアルミニウムクロリド(2.1当量)の1モル濃度溶液を、窒素下でシリンジによって添加する。反応混合物を、終夜110℃で撹拌する。反応混合物を室温まで冷却し、15mlの2モル濃度HClで反応停止させ、7×15mlの酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を、2×12mlの飽和重炭酸ナトリウム溶液で抽出する。合わせた塩基性の水相を、10mlの希釈した(2モル濃度の)硫酸でpH1に調整する。酸性の水相を再度、7×15mlの酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空中で蒸発させてフタル酸とする。H−NMRおよびLC−MSは、フタル酸の構造(Flukaの市販の試料と同一)を裏付ける。
【0171】
参照例VIII:MeAlClを用いた安息香酸ベンジルエステルの切断
【0172】
【化60】

212mg(1mmol)の安息香酸ベンジルエステルを、窒素雰囲気下で10mlの無水トルエン中に溶解させる。反応混合物を加熱還流し、ヘキサン溶液(1モル濃度)中の1.05ml(1.05当量)のメチルアルミニウムジクロリドを一度に添加する。加熱を終夜続ける。反応混合物を室温まで冷却し、15mlの2M塩酸で反応停止させる。反応混合物を、4×15mlジクロロメタンで抽出する。合わせた有機相を、2×12mlの飽和重炭酸ナトリウム溶液で抽出する。次いで、合わせた水性の塩基性相を、2mlの濃硫酸でpH1に調整する。酸性の水相を、4×15mlジクロロメタンで抽出し、次いで、合わせたジクロロメタン抽出物をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空中で蒸発させて、安息香酸を得る。H−NMRおよびLC−MSは、安息香酸の構造(参照物質と比較)を裏付ける。
【0173】
実施例IX:バルサルタンの調製:ジエチル−アルミニウムクロリド(エステル切断のため)およびジエチルアルミニウムアジド(付加環化反応のため)を用いた「ワンポット方法」を介して。
【0174】
【化61】

【0175】
ジエチル−Al−アジド試薬の調製:
250mlフラスコに、アルゴン下で3.9g(65mmol)のNaNを入れ、10mlの無水キシレンを添加する。この懸濁液に、室温で撹拌しながら、33mlのジエチルアルミニウムクロリドの2モル濃度溶液(66mmol)を15分間添加する。次いで、懸濁液をさらに5時間、室温で撹拌し、これは次にすぐ使用することができる。ジエチルアルミニウムアジドは溶液であるが、固体NaClは懸濁液である。
【0176】
ジエチルアルミニウムアジドを用いたベンジルエステル−ニトリルの「酸−ニトリル」への切断および付加環化
別々の100mlフラスコに、9.64g(20mmol)の(ベンジルエステル−ニトリル)を入れ、次いで、これを室温でアルゴン下および撹拌下で20mlの無水キシレンで溶解させる。この溶液に、室温で撹拌しながら33mlのジエチルアルミニウムクロリドの2モル濃度溶液を添加する。室温で終夜撹拌した後、追加の17mlの2Mジエチルアルミニウムクロリドを添加する。室温でさらに3時間撹拌した後、次いでこの溶液を、滴下漏斗を介して上記のジエチルアルミニウム溶液を入れた250mlフラスコに室温で添加する。
【0177】
次いで、反応混合物を加熱還流する(外部温度150℃)。14時間後、反応混合物を室温まで冷却し、アルゴン下および外部冷却下で激しく撹拌しながら、水25ml中の亜硝酸ナトリウム(4.14g)の溶液および6.7gの水酸化ナトリウム水溶液(30%wt)に対して反応混合物を反応停止させることによってワークアップする。反応フラスコを、水10mlおよびキシレン20mlですすぐ。次いで、得られた懸濁液を、撹拌しながら25mlの5M塩酸をゆっくりと添加することによってpH2〜3に調整する。pH0に到達するまで60mlの5M HClをさらに添加することによって、わずかに濁った黄色がかった溶液が得られる。相を分離し、有機相を4×25mlの水で洗浄する。有機相を真空中で蒸発させて、黄色の泡状物を得る。黄色の残渣を、50mlのEtOAc中に溶解させる。生成物を、50mlおよび20mlの重炭酸ナトリウム水溶液(8%wt)によって水相に抽出する。水相は所望の生成物を含有する。生成物を含有する塩基性水相を、25mlの5モル濃度の塩酸の添加によってpH0〜1に調整し、50mlのEtOAcに抽出する。有機相を水(2×25ml)で洗浄し、真空中で蒸発させて、黄色がかった泡状物を得る。泡状物を、結晶化のために30mlの酢酸エチル中に溶解させ、追加の5mlのヘプタンで処理する。結晶化は、冷蔵庫中、7℃で終夜行われる。結晶懸濁液を、0℃で100mlのヘプタンの添加によってさらに希釈する。濾過、洗浄および真空中40℃での乾燥により、バルサルタンが得られる(H−NMR解析によって裏付けられる)。
【0178】
実施例X:「酸−ニトリル」からの「プロパルギルエステル−ニトリル」の調製
【0179】
【化62】

7.85g(20mmol)の「酸−ニトリル」を、100mlの無水DMF中に溶解させる。この溶液に、3.36(40mmol)の固体重炭酸ナトリウムを撹拌しながら添加して、わずかに黄色の懸濁液を得る。この懸濁液に、8.9ml(100mmol)のプロパルギルブロミドを添加し、100mlの無水DMF中に溶解させる。反応混合物を室温で終夜撹拌する。追加の1ml(11.3mmol)のプロパルギルブロミドおよび0.4g(11.9mmol)の重炭酸ナトリウムを添加する。室温で4時間さらに撹拌した後、反応混合物を、200mlの酢酸エチルで希釈し、その後、3×250mlの水でおよび最後に200mlのブラインで有機相を抽出する。有機相をMgSO4で乾燥し、濾過し、蒸発させ、高真空下で乾燥して、さらなる反応のために十分純粋な粗プロパルギルエステルを得る。
1H-NMR: (400 MHz, d6-DMSO); δH (ppm), 生成物は室温で回転異性体の混合物である:
0.75-0.87 (5H, br.m, -CH3), 0.90-1.00 (4H, m, -CH3), 1.15-1.27 (2H, br. m), 1.31-1.54 (2H, br.m), 2.15-2.25 (1H, br.m), 2.28-2.40 (3H, br.m), 2.52-2.65 (1H, br.m), 3.03 (1H, s, アセチレン-H), 4.30-4.60 (4H, 複雑な多重線), 4.68-4.82 (2H, m), 7.24-7.98 (8H, 7つの多重線, 回転異性体混合物).
MS: [M+H]+ = 431.2, (M+NH4)+= 448.2
IR:透過型FTIR顕微鏡[cm−1
3288、3064、3030(CH、ar−H)、2962、2933、2873(ali.−CH)、2224(CN)、2128(CC−三重 b.)1745(C=O、エステル)、1652(C=O、アミド)、1597、1478、1469、1445、1408、1389、1374、1354、1267、1234、1193、1167、1129、1024、997、973、942、824、766。
【0180】
実施例XI:「酸−ニトリル」からの「シンナミルエステル−ニトリル」の調製
【0181】
【化63】

3.93g(10mmol)の「酸−ニトリル」を、50mlの無水DMF中に溶解させる。この溶液に、1.68(20mmol)の固体重炭酸ナトリウムを撹拌しながら添加して、わずかに黄色の懸濁液を得る。この懸濁液に、5.85g(50mmol)の3−ブロモ−1−フェニル−1プロペンを添加し、50mlの無水DMF中に溶解させる。反応混合物を室温で終夜撹拌する。16時間後、反応混合物を、100mlの酢酸エチルで希釈し、その後、有機相を3×130mlの水で、最後に100mlのブラインで抽出する。有機相をMgSO4で乾燥し、濾過し、蒸発させ、真空下で乾燥して、粗「シンナミルエステル−ニトリル」を得る。粗生成物を、最初にシクロヘキサンを用いて、次いで、シクロヘキサン/酢酸エチル(8:1)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(400g)によって精製した。生成物を含有する画分を、シロヘキサン(cylohexane)/酢酸エチル(5:1)を用いて第2のSiO−カラム(360g)によって再度グロマトグラフィーにかけて、生成物を無色の油状物として得た。
1H-NMR: (400 MHz, CDCl3); δH (ppm), 生成物は室温で回転異性体の約2:1混合物である:
0.84-1.02 (6H, 複雑な多重線, 2x -CH3), 1.05 (3H, d, -CH3), 1.40-1.50 (1H, m), 1.40-1.48 (2H, m, -CH2-), 2.18-2.33 (2H, m, -CH2-C=O), 2.50-2.58 (1H, m, -CH-), 3.37-3.50 (1H, d, -N-CH-COOH), 4.20 (1H, d, N-CH2-Ph-), 4.63 (1H, d, N-H2-Ph), 7.20-7.39 (5H, 複雑な多重線, ar.-H), 7.40-7.51 (4H, br.m., ar.-H), 7.60-7.67 (1H, m, ar.-H), 7.78 (1H, t, ar.-H)
MS: [M+H]+ = 509.3, (M+NH4)+= 526.3, 527.3
IR:透過型FTIR顕微鏡[cm−1
3061、3028(CH、ar−H)、2961、2933、2873(ali.−CH)、2224(CN)、1737(C=O、エステル)、1653(C=O、アミド)、1495、1478、1466、1447、1408、1388、1356、1299、1264、1195、1168、1130、1109、1027、1004、970、944、823、765、746、693。
【0182】
実施例XII:「アリルエステル−ニトリル」の調製
【0183】
【化64】

化合物「アリルエステル−ニトリル」を、「シンナミルエステル−ニトリル」についての上記の実施例において記載されているものと類似の方法に従って調製する。
【0184】
「アリルエステル−ニトリル」のスペクトルデータ:
1H-NMR: (400 MHz, d6-DMSO); δH (ppm), 生成物は室温で回転異性体の約2:1混合物である:
0.75-0.85 (5H, br. m., -CH3), 0.88-0.98 (4H, br. m., -CH3), 1.15-1.25 (2H, br. m.,) 1.30-1.38 (1H, br. m.), 1.40-1.52 (2H, br. m), 1.53-1.66 (1H, br. m), 2.13-2.22 (1H, m), 2.28-2.40 (2H, m), 2.50-2.63 (1H, br. m), 4.16-4.40 (3H, br. m), 4.60 (1H, d), 4.68 (1H, d), 4.85 (1H, dd, AB), 5.20 (1H, q, オレフィン-H), 5.25 (1H, d, オレフィン-H), 5.68-5.83 (1H, br. m., オレフィン-H), 7.23 (回転異性体混合物, d, ar.-H), 7.38 (回転異性体混合物, d, ar.-H), 7.48 (回転異性体混合物, d, ar.-H), 7.52-7.62 (3H, br. m, ar.-H), 7.78 (1H, q, ar.-H), 7.93(1H, t, ar.-H).
MS: [M+H]+ =433.2.3, (M+NH4)+= 450.3
IR:透過型FTIR顕微鏡[cm−1
3065、3029(CH、ar−H)、2961、2933、2873(ali.−CH)、2224(CN)、1738(C=O、エステル)、1653(C=O、アミド)、1597、1562、1518、1479、1468、1445、1408、1388、1372、1267、1197、1170、1131、1107、1005、991、937、822、765。
【0185】
実施例XIII:「プレニルエステル−ニトリル」の調製
【0186】
【化65】

化合物「アリルエステル−ニトリル」を、「シンナミルエステル−ニトリル」についての上記の実施例において記載されているものと類似の方法に従って調製する。
【0187】
「プレニルエステル−ニトリル」のスペクトルデータ:
1H-NMR: (400 MHz, CDCl3); δH (ppm), 生成物は27℃で回転異性体の混合物である.
0.85-1.05 (9H, 複雑な多重線, 3x -CH3), 1.25-1.30 (2H, m, -CH-), 1.55-1.70 (2H, m, および3H, s, -CH3), 1.70-1.83 (1H, m, & 3H, s,-CH3), 2.20-2.68 (3H, br.m), 4.05-4.22 (1H, 複雑な多重線), 4.30-4.55 (3H, 複雑な多重線), 4.68 (1H, d, AB), 4.8 (1H, d, AB), 4.88-4.98 (2H, m), 5.20-5.32 (2H, m), 7.32-7.38 (2H, m, ar.-H), 7.40-7.58 (5H, br.m., ar.-H), 7.62-7.71 (1H, br.m., ar.-H), 7.74-7.82 (1H, br.m., ar.-H).
MS: [M+H]+ =461, (M+NH4)+= 478
IR:透過型FTIR顕微鏡[cm−1
3064、3029(CH、ar−H)、2962、2933、2873(ali.−CH)、2224(CN)、1734(C=O、エステル)、1654(C=O、アミド)、1597、1561、1518、1478、1445、1408、1384、1356、1267、1196、1168、1130、1108、1047、975、942、823、765。
【0188】
実施例XIV:メチルアルミニウムジクロリドを用いた「プレニルエステル−ニトリル」の切断
【0189】
【化66】

窒素流下でヒートガンを用いて乾燥した25mlフラスコに、460mg(1mmol)の「プレニルエステル−ニトリル」および8mlの無水トルエンを入れて、黄色の溶液とする。この溶液に、メチルアルミニウムジクロリドの1モル濃度n−ヘキサン溶液(3.5ml、3.5mmol)を室温で滴下添加して、赤色の懸濁液とする。反応混合物を、終夜(16時間)加熱還流する。反応混合物を室温まで冷却し、次いで20mlの1モル濃度HClで反応停止させる。二相の反応混合物に、20mlの酢酸エチルを添加する。有機相を分離し、水20mlで3回、および20mlのブラインで洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で蒸発させて、粗「酸−ニトリル」を褐色の油状物として得る。粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって20gのSiO2でシクロヘキサン:酢酸エチル:酢酸(60:40:2)の溶媒混合物を用いて精製する。生成物を含有する画分を合わせて、「酸−ニトリル」を褐色の油状物として得る。この物質のスペクトルデータは、上記の実施例において得られた「酸−ニトリル」のデータと同一である。
【0190】
プロパルギルエステル−ニトリル、シンナミルエステル−ニトリルおよびアリルエステル−ニトリルを、上記で定義された様々なアルキルアルミニウムハライドを使用したこの方法によって切断して、様々な収率で所望の生成物「酸−ニトリル」を得る。
【0191】
実施例XV:「酸−ニトリル」のn−ブチルアミン塩の形成
【0192】
【化67】

1.0g(2.55mmol)の「酸ニトリル」を、10mlの酢酸エチル中に溶解させる。この酸溶液に、2mlの酢酸エチル中の330mg(4.5mmol)のn−ブチルアミンの溶液を撹拌しながら添加する。白色固体の沈殿が観察される。白色懸濁液を、0〜5℃に終夜保ち、次いで濾過し、10mlヘプタン/酢酸エチル(1:1)の混合物で洗浄し、40℃で真空中で乾燥して、白色の結晶固体を得る。
MS:[M+H]=393
IR:透過型FTIR顕微鏡[cm−1
3600−2400、ブロード、−COOH&−NH、3029(CH、ar−H)、2961、2934、2871、2758(ali.−CH)、2507、2423、2226(CN)、1637(C=O−アミド)、1595(ar.)、1560(COO)、1477、1467、1456(ar)、1407、1385、1313、1301、1264、1248、1210、1173、1103、1026、1005、974、941、901、858、830(CH−パラ)、765(CH−オルト)、737。
【0193】
実施例XVI:「酸−ニトリル」のジシクロヘキシルアミン塩の形成
【0194】
【化68】

1.0g(2.55mmol)の「酸ニトリル」を、10mlの酢酸エチル中に溶解させる。この酸溶液に、2mlの酢酸エチル中の462mg(2.55mmol)のジシクロヘキシルアミンの溶液を撹拌しながら添加する。7.5mlのn−ヘプタンを撹拌しながら添加した後、10分後に白色固体の形成が観察される。懸濁液を0〜5℃で終夜保存し、次いで濾過し、10mlのヘプタン/酢酸エチル(1:1)の混合物で洗浄し、最後に真空中で40℃で乾燥して白色固体を得る。
MS:[M+H]=393
IR:透過型FTIR顕微鏡[cm−1
3600−2400、ブロード、−COOH&−NH、3030(CH、ar−H)、2933、2860(ali.−CH)、2227(CN)、1633(C=O−アミド)、1650(C=Oアミド)、1597(ar.)、1558(COO)、1452(ar)、1411、1387(COO)、1314、1304、1249、1230、1212、1178、1107、1063、1033、1005、972、939、896、832、810,765(ar−CH)、759(CH−オルト)、722。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩の製造方法であって、
【化69】

式(III)の化合物、またはその塩
【化70】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【化71】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)を、
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
を反応させて、式(IV)の化合物を得るステップ
を含む方法。
【請求項2】
式(I)の化合物、またはその塩の製造方法であって、
【化72】

式(V)の化合物またはその塩
【化73】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【化74】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)を
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(I)の化合物を得るステップ
を含む方法。
【請求項3】
式(I)の化合物またはその塩の段階的製造方法であって、
【化75】

i)式(III)の化合物またはその塩
【化76】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【化77】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)を
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩を得るステップ、
【化78】

ii)式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩をアジド試薬で処理して、式(I)の化合物を得るステップ
を含む方法。
【請求項4】
式(I)の化合物またはその塩のワンポット製造方法であって、
【化79】

i)式(III)の化合物またはその塩
【化80】

(式中、Rは、C1〜7アルキル、
【化81】

であり、
ここで、R1は、水素、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されており、
R2、R3およびR4は、互いに同じであるか、または異なり、水素、ハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリールであり、それぞれ置換されていないか、またはハロ、ニトロ、C1〜7アルキル、ハロ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルキル、C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルコキシ−C1〜7アルコキシ、C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシ、ハロ−C1〜7アルキル−C1〜7アルコキシから選択される1つまたは複数の、例えば最大3個の置換基によって置換されている)を
式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)
と反応させて、式(IV)の化合物またはその塩、例えばそのアミン塩を得るステップ、
【化82】

ii)ステップi)の結果として生じる反応混合物にアジド試薬を添加して、式(I)の化合物を得るステップ
を含む方法。
【請求項5】
Rが、ベンジル、p−メトキシベンジル、アリルまたはプロパルギル、より好ましくは、ベンジル、アリルまたはプロパルギル、最も好ましくは、ベンジルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
有機アルミニウムハライドが、ジメチルアルミニウムクロリドまたはジエチルアルミニウムクロリド、好ましくは、ジエチルアルミニウムクロリドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
Rが、ベンジルであり、有機アルミニウムハライドが、ジエチルアルミニウムクロリドである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アジド試薬が、アジ化水素アジド(hydrazoic azid)の金属塩、アジ化水素酸の有機塩基との塩および式R7R8MNのアジド(式中、Mは、ホウ素またはアルミニウム、好ましくは、アルミニウムであり、R7およびR8は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキル−C1〜7アルキルまたはC6〜10アリール−C1〜7アルキル、好ましくはC1〜7アルキルである)から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アジド試薬が、式R7R8MNのアジド試薬(式中、Mは、アルミニウムまたはホウ素、好ましくは、アルミニウムであり、R7およびR8は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキル−C1〜7アルキルまたはC6〜10アリール−C1〜7アルキル、好ましくはC1〜7アルキルである)であり、好ましくは、アジド試薬が、ジエチルアルミニウムアジドまたはジメチルアルミニウムアジド、より好ましくは、ジエチルアルミニウムアジドである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アジド試薬が、式R7R8MNのアジド試薬(式中、Mは、アルミニウムであり、R7およびR8は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキル−C1〜7アルキルまたはC6〜10アリール−C1〜7アルキル、好ましくはC1〜7アルキルである)であり、アジ化水素酸の金属塩を、過剰量の、好ましくは、2当量以上の本明細書において定義されている式R5R6AlXの有機アルミニウムハライド試薬を含むステップi)の反応混合物に添加することによってin situで形成される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
式R5R6AlXの有機アルミニウムハライド試薬が、ジエチルアルミニウムクロリドであり、式(III)の化合物のR基が、ベンジル、p−メトキシベンジル、アリルまたはプロパルギル、より好ましくは、ベンジル、アリルまたはプロパルギル、最も好ましくはベンジルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式(III)の化合物またはその塩
【化83】

(式中、Rは、ベンジル、アリル、シンナミル、プレニルまたはプロパルギル、より好ましくは、ベンジルである)。
【請求項13】
式(IV)の化合物のアミン塩。
【化84】

【請求項14】
エステル基を遊離酸に変換するための、式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)の使用。
【請求項15】
バルサルタンもしくはその塩、または
式(IV)の化合物もしくはその塩
【化85】

の製造方法における、式R5R6AlXまたはR5AlXの有機アルミニウムハライド(式中、R5およびR6は、互いに独立して、C1〜7アルキル、C〜Cアルケニル、C3〜8シクロアルキルまたはC6〜10アリール、好ましくはC1〜7アルキルであり、Xは、ハロゲンである)の使用。

【公表番号】特表2013−508436(P2013−508436A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535763(P2012−535763)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066041
【国際公開番号】WO2011/051213
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】