説明

有機化層状化合物及びそれを含有する樹脂組成物

【課題】曲げ弾性率等の力学的特性及び着色性等の光学的特性を改善する目的で樹脂に添加することができる有機化層状化合物及びそれを含有する樹脂組成物を得る。
【解決手段】
高純度のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルステアリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアンモニウムクロリドなどの少なくとも1種以上からなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機化層状化合物に関するものであり、さらに詳しくは、層状化合物が高純度の有機アンモニウム化合物により処理された有機化層状化合物及びそれを含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂やゴム等の高分子に光学的特性、力学的特性やガスバリア性等の物性を改善する目的で有機化された層状粘土化合物を添加することが数多く報告されている。例えば特許文献1では膨潤性フッ素雲母をジメチルジステアリルアンモニウムクロライドで有機化した層状珪酸塩をポリアミド樹脂に添加し成形し、ポリアミド樹脂のガスバリア性等の特性を向上させることが可能であることが開示されている。特許文献2では膨潤性層状珪酸塩を塩化ドデシルメチルジヒドロキシエチルアンモニウムで有機化した有機化層状化合物がポリアセタール樹脂のそり性を向上させることが開示されている。特許文献3ではナトリウムモンモリロナイトがドデシルアンモニウムで有機化された有機化モンモリロナイトがアクリロニトリル−ブタジエン共重合体に分散性に優れることが開示されている。
【0003】
一方、環境問題から従来の石油系樹脂に代えて、自然環境の中で分解しうるポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、ポリエステルアミド、脂肪族ポリカーボネート等の生分解性樹脂が注目を集めている。しかしながら、多くの生分解性樹脂は、そのガスバリア性が十分でなく、ガスバリア性を高めるために、様々な技術が開発されている。特許文献4では層状珪酸塩をドデシルモノジエタノールアンモニウムイオンで有機化した有機化層状化合物を添加した脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂は水蒸気透過性と酸素透過性が少なく、優れていることが開示されている。特許文献5ではポリ乳酸を主体とする樹脂に膨潤性合成フッ素雲母をジヒドロキシエチルメチルドデシルアンモニウムイオンで有機化しL−ラクチドを挿入した有機化層状珪酸塩を添加し、射出成形した樹脂が耐熱性、耐衝撃性、外観に優れることが開示されている。しかしながらジヒドロキシエチルメチルドデシルアンモニウムイオンの塩や純度については参考例に具体的に記載されていない。特許文献6ではフッ素マイカをドデシルビス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム塩で有機化した有機化層状化合物をポリ乳酸に添加し、分散性から十分な水分の遮断性を有するポリ乳酸を含有する生分解性樹脂が得られることが開示されている。しかしながら実施例に具体的に記載されているドデシルビス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム塩はライオンアクゾより入手可能な商品名エソカードC12であり、純度が60%程度の低いものであった。
【0004】
特許文献7ではポリ−L−乳酸及び0.01乃至20重量%のポリ−D−乳酸を含有するポリ乳酸樹脂組成物であり、且つ結晶化促進剤をさらに含有するポリ乳酸樹脂組成物が開示されている。結晶化促進剤としてはアミド基を有する低分子化合物とタルク及び層状粘土鉱物の少なくとも一方とを併用することが好ましいと記載されているが、実施例にエチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドとタルクについて記載されているものの、有機化された層状粘土鉱物については具体的に記載されていない。非特許文献1はN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデシルメチルアンモニウムクロライドの製法に係わるもので、工場製品を精留して得たラウリルアミンにエチレンオキシドを反応させ、次いで塩化メチルを反応させ、粗N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデシルメチルアンモニウムクロライドを得ているが、純度の高いものを得るためにアセトンで3回再結晶を行っており、収率59%で工業的に有利な方法ではない。N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドも同様に工場製品を精留して得たステアリルアミンにエチレンオキシド、次いで塩化メチルを反応させ、アセトン−酢酸エチルで3回再結晶を行い、収率51%で得ている。N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリド、及びN,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアンモニウムクロリドについても同様に2乃至3回再結晶法により精製しており、工業的に有利な方法ではない。一方、ラウリルアミン及びステアリルアミンにプロピレンオキサイドを反応させ、塩化メチルを反応させ、四級塩にしたものは開示されていない。
【特許文献1】特開平10―1608号公報
【特許文献2】特開2000−351887号公報
【特許文献3】特開2001−164134号公報
【特許文献4】特開2004−346169号公報
【特許文献5】特開2004−323758号公報
【特許文献6】特開2005−105162号公報
【特許文献7】特開2005−281331号公報
【非特許文献1】小森三郎ら、工業化学雑誌 60巻 908−14(1957年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術で樹脂やゴム等の高分子の光学的特性、力学的特性やガスバリア性等の物性を改善されてきているものの、樹脂の着色、強度や水分等の遮断性がまだ不十分であった。さらには、食品用の容器や包装器具等として用いる樹脂では、樹脂に添加する材料もより安全性の高いものが要求されている。特に低純度の有機アンモニウム化合物で処理された有機化層状化合物を含有した樹脂では着色性に問題があった。
【0006】
本発明はこれらの物性、特に曲げ弾性率等の力学的特性及び着色性等の光学的特性を改善する目的で樹脂に添加する有機化層状化合物及びそれを含有する樹脂組成物に関するもので、90%以上の高純度のアミンを用いて工業的に有利な方法で高純度の四級塩を製造し、次いでこれを用いて層状化合物を処理することによって製造される有機化された有機化層状化合物及びそれを含有する樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、90%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ステアリルアミンに塩化メチルをオートクレーブ中反応させるか若しくは、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミンに2―クロロエタノールをオートクレーブ中反応させるか若しくは、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミン及びN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ステアリルアミンに1−クロロー2−プロパノールをオートクレーブ中反応させ、再結晶等の精製工程を経由せずに製造される、高純度のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルステアリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシプロル)ステアリルアンモニウムクロリドの少なくとも1種以上からなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物及びそれを含有する樹脂組成物が上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、層状化合物が高純度の有機アンモニウム化合物によって処理された有機化層状化合物及びそれを含有する樹脂組成物であることを特徴とする。
【0009】
本発明は、
(1)90%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ステアリルアミンに塩化メチルをオートクレーブ中反応させるか若しくは、
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミンに2―クロロエタノールをオートクレーブ中反応させるか若しくは、
N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミン及びN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ステアリルアミンに1−クロロー2−プロパノールをオートクレーブ中反応させ製造される、
高純度のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルステアリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシプロル)ステアリルアンモニウムクロリドの少なくとも1種以上からなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物。
【0010】
(2)92%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン若しくはN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミンに塩化メチルをオートクレーブ中反応させ製造される、92%以上の高純度N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリド若しくはN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの少なくとも1種以上からなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物。
【0011】
(3)92%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミンに塩化メチルをオートクレーブ中反応させ製造される、92%以上の高純度N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドからなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物。
【0012】
(4)92%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミンに塩化メチルをオートクレーブ中反応させ製造される、92%以上の高純度N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリドからなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物。
【0013】
(5)91%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミンに塩化メチルをオートクレーブ中反応させ製造される、86%以上の高純度N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドからなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物。
【0014】
(6)長径の平均の長さが0.01乃至50μmであり、カチオン交換容量が10乃至200meq/100gの層状化合物を処理することによって製造される(1)乃至(5)のいずれか1項記載の有機化層状化合物。
【0015】
(7)長径の平均の長さが1乃至12μmであり、カチオン交換容量が70乃至150meq/100gの膨潤性フッ素雲母、天然ナトリウム型モンモリナイト若しくは天然カルシウム型モンモリナイトを処理することによって製造される(1)乃至(5)のいずれか1項記載の有機化層状化合物。
【0016】
(8)(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の有機化層状化合物を含有する樹脂組成物。
【0017】
(9)有機化層状化合物を0.1乃至20重量%を含有する(8)に記載の樹脂組成物。
【0018】
(10)樹脂が非生分解性樹脂である(8)に記載の樹脂組成物。
【0019】
(11)樹脂が生分解性樹脂である(8)に記載の樹脂組成物。
【0020】
(12)樹脂がポリ乳酸である(8)に記載の樹脂組成物。
【0021】
(13)樹脂がポリ乳酸である(9)に記載の樹脂組成物。
を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高純度の有機アンモニウム化合物によって処理された有機化層状化合物を樹脂と溶融混練し、成形することにより、樹脂中に均一分散し、得られる樹脂成形体の曲げ弾性率が高く、さらに成形体の着色が抑えられる。従って、樹脂成形体の透明性を失うことなく機械強度を向上させ、耐熱性も向上するので各種透明性の高い容器、ボトル、各種の自動車部品、家電製品のハウジング、フィルムやシート等に用いることができる。さらに、本発明の有機化層状化合物は高純度の有機アンモニウム化合物によって処理されたため、従来の低純度の有機アンモニウム化合物より毒性や溶出性が低くなることが期待できる。したがって、食器、食品分野の包装材料等の安全性が求められる用途への使用に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態についてさらに詳細に説明する。本発明の有機化層状化合物及びそれを含有する樹脂組成物は、層状化合物が高純度の有機アンモニウム化合物によって処理される有機化層状化合物及びそれを含有する樹脂組成物であること特徴とする。
【0024】
本発明に使用される90%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミンは高純度のラウリルアミン1モルにエチレンオキサイド2モル付加させることにより得られる。しかしながら、炭素数12のラウリルアミンが天然物由来の高級アルコールから製造されているため、炭素数8のオクチルアミン、炭素数10のデシルアミン、炭素数14のミリスチルアミン、炭素数16のセチルアミン、炭素数18のステアリルアミンなどが混入している場合が多い。このようなアミンを用いて製造したN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミンをメチル化したものがライオンアクゾ(株)製のエソカードC12であり、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドを60%程度しか含有していない。使用される90%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミンは高純度のラウリルアミン1モルにエチレンオキサイド2モル付加させることにより得られるが、市販品のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミンを用いても良い。使用される市販品では純度が90%以上のものが好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上であるものを好適に用いることができる。例えば日本油脂(株)製の商品名ナイミーンL−202及びライオンアクゾ(株)製の商品名エミソン12/12が挙げられる。高純度のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミンをメチル化する工程は小過剰の塩化メチルを用いてオートクレーブ中に圧入し、無溶媒若しくは溶媒の存在下加熱して達成される。塩化メチルは原料アミンに対して小過剰使用するのが良く、好適には1.01乃至1.10当量モルであり、特に好適には1.03乃至1.06当量モルである。使用される溶媒は特に制限はないが、水若しくはアルコール類及びこれらの混合物が好適である。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等があげられ、好適にはメタノール、エタノール、イソプロパノールが挙げられ、特に好適にはイソプロパノールが挙げられる。反応温度は特に制限はないが、副反応を押さえるため、好適には50乃至120℃であり、特に好適には80乃至100℃である。反応時間は反応温度に依存しているが、通常、2乃至48時間であり、特に好適には3乃至24時間である。反応終了後、40乃至70℃で小過剰の塩化メチルを窒素ガスのような不活性ガスを反応液中にバブリングすることによって除去し、高純度のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドを得るものである。得られるN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドは、純度が90%以上のものが好ましく、特に92%以上のものが好ましい。
【0025】
N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリドは高純度のラウリルアミン1モルにプロピレンオキサイド2モル付加させ、塩化メチルでメチル化することにより製造される。使用される高純度のラウリルアミンは90%以上のものが好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上であるものを好適に用いることができる。市販品では日本油脂(株)製のアミンBB(C12アルキル組成95%)、ライオンアクゾ(株)の商品名アーミン12D(C12アルキル組成98%)及び花王(株)製のファーミン20D(C12アルキル組成96%)が挙げられる。高純度のラウリルアミンをオートクレーブに入れ、150乃至165℃に加熱し、2モル当量のプロピレンオキシドを3乃至4時間で圧入する。同温度で15乃至20時間撹拌後、80℃以下に冷却し、小過剰の塩化メチルを用いてオートクレーブ中に圧入し、無溶媒若しくは溶媒の存在下加熱して達成される。塩化メチルは原料アミンに対して小過剰使用するのが良く、好適には1.01乃至1.10当量モルであり、特に好適には1.03乃至1.06当量モルである。使用される溶媒は特に制限はないが、水若しくはアルコール類及びこれらの混合物が好適である。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等があげられ、好適にはメタノール、エタノール、イソプロパノールが挙げられ、特に好適にはイソプロパノールが挙げられる。反応温度は特に制限はないが、副反応を押さえるため、好適には50乃至120℃であり、特に好適には80乃至100℃である。反応時間は反応温度に依存しているが、通常、1乃至4日であり、特に好適には2乃至3日である。反応終了後、40乃至70℃で小過剰の塩化メチルを窒素ガスのような不活性ガスを反応液中にバブルすることによって除去し、高純度のN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリドを得るものである。得られるN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリドは、純度が90%以上のものが好ましく、特に92%以上のものが好ましい。
【0026】
N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリドは高純度のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミンに2―クロロエタノールを無溶媒若しくは溶媒の存在下加熱して達成される。使用されるN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミンは90%以上のものが好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上であるものを好適に用いることができる。2―クロロエタノールは原料アミンに対して等モル若しくは小過剰使用するのが良く、好適には1.00乃至1.10当量モルであり、特に好適には1.00乃至1.05当量モルである。使用される溶媒は特に制限はないが、水若しくはアルコール類及びこれらの混合物が好適である。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等があげられ、好適にはメタノール、エタノール、イソプロパノールが挙げられ、特に好適にはイソプロパノールが挙げられる。反応温度は特に制限はないが、副反応を押さえるため、好適には100乃至150℃であり、特に好適には120乃至150℃である。反応時間は反応温度に依存しているが、通常、1乃至5日間であり、特に好適には2乃至3日間である。反応終了後、40乃至70℃に冷却し、高純度のN,N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリドを得るものである。得られるN,N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリドは、純度が90%以上のものが好ましく、特に92%以上のものが好ましい。
【0027】
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドは高純度のステアリルアミン1モルにエチレンオキサイド2モル付加させ、塩化メチルでメチル化することにより製造される。使用される高純度のステアリルアミンは90%以上のものが好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは93%以上であるものを好適に用いることができる。市販品ではライオンアクゾ(株)の商品名アーミン18D(C18アルキル組成93%)及び花王(株)製のファーミン80(C18アルキル組成92%)が挙げられる。高純度のステアリルアミンをオートクレーブに入れ、140乃至150℃に加熱し、2モル当量のエチレンオキシドを1乃至2時間で圧入する。同温度で1時間撹拌後、80℃以下に冷却し、小過剰の塩化メチルを用いてオートクレーブ中に圧入し、無溶媒若しくは溶媒の存在下加熱して達成される。塩化メチルは原料アミンに対して小過剰使用するのが良く、好適には1.01乃至1.10当量モルであり、特に好適には1.03乃至1.06当量モルである。使用される溶媒は特に制限はないが、水若しくはアルコール類及びこれらの混合物が好適である。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等があげられ、好適にはメタノール、エタノール、イソプロパノールが挙げられ、特に好適にはイソプロパノールが挙げられる。反応温度は特に制限はないが、副反応を押さえるため、好適には50乃至120℃であり、特に好適には80乃至100℃である。反応時間は反応温度に依存しているが、通常、2乃至48時間であり、特に好適には3乃至24時間である。反応終了後、40乃至70℃で小過剰の塩化メチルを窒素ガスのような不活性ガスを反応液中にバブリングすることによって除去し、高純度のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドを得るものである。得られるN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドは、純度が85%以上のものが好ましく、特に86%以上のものが好ましい。
【0028】
N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルステアリルアンモニウムクロリドは高純度のステアリルアミン1モルにプロピレンオキサイド2モル付加させ、塩化メチルでメチル化することによりN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの場合と同様にして製造される。使用される高純度のステアリルアミンは90%以上のものが好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは93%以上であるものを好適に用いることができる。得られるN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルステアリルアンモニウムクロリドは、純度が85%以上のものが好ましく、特に86%以上のものが好ましい。
【0029】
N,N−トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドの製造中間体であるN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミンにN,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリドの製造の場合と同様にして2−クロロエタノールを反応させて達成される。使用される高純度のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミンは90%以上のものが好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは93%以上であるものを好適に用いることができる。得られるN,N−トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドは、純度が85%以上のものが好ましく、特に86%以上のものが好ましい。
【0030】
N,N、N−トリス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアンモニウムクロリド及びN,N、N−トリス(2−ヒドロキシプロル)ステアリルアンモニウムクロリドはN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミン及びN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ステアリルアミンに2−クロロエタノールの代わりに1−クロロー2−プロパノールを同様に反応させて達成される。使用される高純度のN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミン及びN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ステアリルアミンは90%以上のものが好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは93%以上であるものを好適に用いることができる。得られるN,N、N−トリス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアンモニウムクロリドN,N、N−トリス(2−ヒドロキシプロル)ステアリルアンモニウムクロリドは、85%以上のものが好ましく、特に86%以上のものが好ましい。
【0031】
本発明の有機化層状化合物で使用できる層状化合物は、イオン交換可能な無機カチオンを有し、さらに膨潤性及び/又は劈開性を有する粘土鉱物、ハイドロタルサイト類化合物、層状チタン酸及び層状ポリ珪酸が特に好ましい。例えばスメクタイト系粘土鉱物、マイカ系粘土鉱物が挙げられる。該スメクタイト系粘土鉱物としてヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、バイデライト、モンモリロナイト又はこれらの天然または化学的に合成したもの、又はこれらの置換体、誘導体、あるいは混合物を挙げることができる。またマイカ系粘土鉱物としては、化学的に合成した層間に例えばリチウム又ナトリウムイオンを持った合成膨潤性マイカ又はこれらの置換体、誘導体あるいは混合物を挙げることができる。更に、層状ポリ珪酸としては、カネマイト、マカタイト、マガディアイト及びケニヤタイト又はこれらの天然または化学的に合成したもの、又はこれらの置換体、誘導体、あるいは混合物を挙げられる。また、これらの層状化合物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記層状化合物の形状は、特に限定されるものではないが、長径の平均長さが0.01乃至50μm、好ましくは0.05乃至20μm、特に好ましくは0.1乃至12μm、アスペクト比は5乃至500、好ましくは50乃至200であるものを好適に用いることができる。
【0033】
上記層状化合物は、その層間にイオン交換可能な無機カチオンを有する。イオン交換可能な無機カチオンとは、層状化合物の結晶表面上に存在するナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等の金属イオンのことである。これらのイオンは、カチオン性物質とのイオン交換性を有し、カチオン性を有する種々の物質を上記層状化合物の層間に挿入(インターカレート)することができるものが好ましい。なお、上述した有機化剤は、有機化層状化合物の表面及び層間に存在すると考えられ、特に層間に存在することは有機化された層状化合物の層間隔の拡張をX線回折により容易に確認することができる。
【0034】
上記層状化合物のカチオン交換容量(CEC)は、特に限定されるものではないが、10乃至200meq/100gであることが好ましく、50乃至150meq/100gであることがより好ましく、70乃至150meq/100gであることがさらに好ましい。
【0035】
上記条件を満たす層状化合物として、具体的には白石工業のオスモスN、クニミネ工業のスメクトンSA、クニミネ工業のクニピアF、コープケミカル社のソマシフME−100、コープケミカル社のルーセンタイトSWN等を挙げることができる。
【0036】
本発明において有機化とは、有機物を上記の層状化合物の表面及び/又は層間に物理的、化学的手法により吸着及び/又は結合させることを意味する。また、有機化剤とはこのような吸着及び/又は結合が可能な有機物を指し、溶媒中でイオンを生じる極性基を有する有機化合物が通常用いられる。
【0037】
層状化合物を本発明の高純度の有機アンモニウム化合物で有機化させる方法は、特に限定されないが、合成操作が容易であるという観点から、イオン交換反応で無機カチオンを本発明の高純度の有機アンモニウム化合物に交換することにより含有させる方法が好ましい。
【0038】
上記層状化合物のイオン交換可能な無機カチオンを本発明の高純度の有機アンモニウム化合物とイオン交換する方法は、特に限定されるものではなく、既知の方法を用いることができる。
【0039】
具体的には、水中におけるイオン交換、アルコール中におけるイオン交換、水/アルコール混合溶媒中におけるイオン交換等の方法を用いることができる。例えば、水中におけるイオン交換は、本発明の高純度の有機アンモニウム化合物を水に加えて均一に溶解した水溶液に層状化合物を加えてイオン交換を行う操作を示す。水中におけるイオン交換における本発明の高純度の有機アンモニウム化合物と水との混合比は特に限定されるものではないが、1:1乃至1:10000の範囲であることが好ましく、1:5乃至1:1000の範囲であることがより好ましく、1:10乃至1:200の範囲であることがさらに好ましい。イオン交換は、0乃至100℃の温度範囲で行うことが好ましく、10乃至90℃の温度範囲で行うことがより好ましく、20乃至80℃の温度範囲で行うことがさらに好ましい。さらに、反応終了後に溶媒、未反応の原料、副成する無機塩を濾過して取り除くことにより、イオン交換された層状化合物を単離することができる。
【0040】
上記イオン交換の進行状態は、既知の方法を用いて確認することができる。例えば、濾液のICP発光分析法により交換された無機イオンを確認する方法、X線回折により層状化合物の層間が拡張したことを確認する方法、熱天秤により昇温過程の重量減少から有機化合物の存在を確認する方法等を用いることによって、層状化合物中のイオン交換可能な無機イオンが本発明の高純度の有機アンモニウム化合物と置換されたことを確認することができる。イオン交換は、層状化合物のイオン交換可能な無機イオン当量に対し、0.1乃至2.0倍量(ミリ当量換算)であることが好ましく、0.5乃至1.5倍量であることがより好ましく、0.8乃至1.2倍量であることがさらに好ましい。
【0041】
また、イオン交換操作において、層状化合物が有機アンモニウム化合物で処理される前、及び/又は処理された後に層状化合物、若しくは有機化層状化合物を解砕、及び/又は粉砕してもよい。解砕、及び/又は粉砕は、湿式法及び乾式法のどちらでも行うことができる。また、これらの操作を組み合わせて行ってもよい。この操作による分散状態及び粒度分布状態は、既知の方法を用いて確認することができる。例えば、レーザー回折による粒度分布測定で確認することができる。更に、湿式法において層状化合物よりも高い硬度の無機化合物と混合して解砕、及び/又は粉砕を行うと長径の平均長さが1μm以下の層状化合物を得ることができる。ここで用いることができる無機化合物は、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウムが挙げられる。特に炭酸カルシウムを用いた場合、解砕、及び/又は粉砕の後に酸性溶液によって炭酸カルシウムを除去することが可能である。こうして得られた平均長さが1μm以下の層状化合物を有機化した有機化層状化合物を混合分散したフィルムは、透明性及び寸法安定性が向上する。更に、1μm以下の層状化合物を有機化した有機化層状化合物を混合分散した樹脂組成物において、結晶化促進剤として作用し成形性の改善が期待できる。
【0042】
こうして得られた有機化層状化合物を混合分散して樹脂組成物を得ることが出来る。用いられる樹脂としては非生分解性樹脂及び生分解性樹脂等広範囲の樹脂に用いることが出来る。非生分解性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のポリビニル類、ポリスチレン類、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、共重合成分として二量体化脂肪酸を含む共重合ポリアミド、カプロラクタムとヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体(ナイロン6−66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6−10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6−12)、ポリウンデカノラクタム(ナイロン11)、ポリドデカノラクタム(ナイロン12)等の脂肪族ポリアミド類、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンから得られるポリアミド、アジピン酸とメタキシリレンジアミンから得られるポリアミド、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とアジピン酸とヘキサメチレンジアミンから得られるポリアミド、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とアジピン酸とメタキシリレンジアミンから得られるポリアミド等の芳香族ポリアミド類、ジヒドロキシ化合物及び/又はヒドロキシカルボン酸から得られるポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン酸、ポリエーテルポリスルホン、ポリエーテル、ポリアセタール、酢酸セルロース、ポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸及び/又はポリメタクリル酸エステル等のポリアクリル酸系樹脂、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル等のポリフェニレン系樹脂等が挙げられる。
【0043】
生分解性樹脂としては、ポリ乳酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンアジペート)等に代表されるジオールとジカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル、ポリグルコール酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシカプロン酸)等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(ε―カプロラクトン)やポリ(δ―バレロラクトン)に代表されるポリ(ω―ヒドロキシアルカノエート)、更に芳香族成分を含んでいても生分解性を示すポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンテレフタレート)やポリ(ブチレンアジペート−co−ブチレンテレフタレート)の他に、ポリエステルアミド、ポリエステルカーボネート、澱粉等の多糖類等が挙げられる。
【0044】
好適な樹脂としては非生分解性樹脂ではポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、共重合成分として二量体化脂肪酸を含む共重合ポリアミド、カプロラクタムとヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体(ナイロン6−66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6−10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6−12)、ポリウンデカノラクタム(ナイロン11)、ポリドデカノラクタム(ナイロン12)等の脂肪族ポリアミド類、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体及びポリアセタールが挙げられ、特に好適にはポリカプロラクタム(ナイロン6)及びポリアセタールが挙げられる。
【0045】
好適な生分解性樹脂としては、ポリ乳酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンアジペート)等に代表されるジオールとジカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル、ポリグルコール酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシカプロン酸)等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(ε―カプロラクトン)やポリ(δ―バレロラクトン)に代表されるポリ(ω―ヒドロキシアルカノエート)、更に芳香族成分を含んでいても生分解性を示すポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンテレフタレート)やポリ(ブチレンアジペート−co−ブチレンテレフタレート)が挙げられ、特に好適にはポリ乳酸が挙げられ、ポリ乳酸にはポリ−L−乳酸及び/又はポリ−D−乳酸が含まる。更にポリ乳酸の場合、射出成形等による成形品では非晶質部分が多く含まれ、非晶質状態の部分での耐熱性が低いため、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のステレオコンプレックスに結晶核剤として無機系ではタルク、有機系では脂肪族アマイド、リン酸エステル金属塩等を添加することもできる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、主として上記の非生分解性樹脂及び生分解性樹脂と有機化層状化合物からなるが、充填剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電気防止剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌剤等の各種添加剤、及び熱可塑性樹脂、木粉等も同様に加えることが出来る。これらの添加剤等は非生分解性樹脂及び生分解性樹脂と有機化層状化合物との混合物が有する物性を大きく損なわれない範囲で、単独又は二種以上を任意の割合で混合できる。
【0047】
本発明の有機化層状化合物を樹脂と混合して分散させる方法としては、溶融混錬法により分散させる方法がある。溶融混練は、バンバリーミキサー、プラストミル、一軸押出機、二軸押出機等を使用して実施することができる。尚、このような本発明の有機化層状化合物を樹脂と混合して分散させるときの有機化層状化合物の使用量としては、有機化層状化合物の含有率で、0.01 乃至30重量%であることが好ましく、特に0.1乃至20重量%であるとより高い物性及び分散性が得られる。
【実施例】
【0048】
以下の実施例及び比較例により、本発明の詳細を具体的に説明するが、これらの記載例に限定されるものではない。
【0049】
尚、実施例に記載されているカチオン界面活性剤(%)は、試料(g)をメスフラスコ200mLに測り、次いでエタノールを加え200mlの試料溶液とし、その試料溶液5mlをホールピペットで共栓付三角フラスコに取り、ついで水酸化カリウム2.8gと硫酸ナトリウム25gを水1Lに溶かした水酸化カリウム・硫酸ナトリウム溶液20ml、クロロホルム20ml及びブロムフェノールブルー0.01gをエタノール100mlに溶かしたブロムフェノールブルー溶液1mlを加え、0.004mol/Lラウリル硫酸ナトリウム標準溶液で滴定し、終点はクロロホルム層の青色が上層に移行した点とし、以下の式により求めた。
【0050】
カチオン界面活性剤(%)= f×A×分子量×0.16
試料採取量(g)
A:滴定に要した0.004mol/Lラウリル硫酸ナトリウム標準溶液の使用量(ml)
f:0.004mol/Lラウリル硫酸ナトリウム標準溶液のファクター
未反応のアミンの量は残アミン価(試料1g中に含まれるアミンを中和するのに要する塩酸の量を水酸化カリウムのmg数に換算した値)の測定より求めた。試料約10gを三角フラスコ100mlに正しくはかりとる。次いでエタノール約60ml及び10%塩酸溶液を2乃至3滴加えて酸性にし、フェノールフタレイン指示薬溶液2乃至3滴加え、10%水酸化ナトリウム溶液で微紅色になるまで中和する。次いで0.1mol/Lの塩酸標準溶液で紅色が消える点まで中和し、次いでブロムクレゾールグリーン指示薬溶液を2乃至3滴加え、0.1mol/Lの塩酸標準溶液で滴定する。終点は緑色から黄色に変わった点とする。同時に空試験を行い補正する。
【0051】
残アミン価=(A−B)×f×5.6108
試料採取量(g)
A:試料の滴定に要した0.1mol/Lの塩酸標準溶液の使用量(ml)
B:空試験に要した0.1mol/Lの塩酸標準溶液の使用量(ml)
f:0.1mol/Lの塩酸標準溶液のファクター
又、反応率(%)=(原料アミンのアミン価―残アミン価(純分換算値))×100
原料アミンのアミン価
より求めた。
【0052】
実施例及び比較例の評価に用いた測定法は次の通りである。
【0053】
1.有機化層状化合物の層間距離測定:有機化層状化合物の層間距離は、X線解析装置(理学電機Multi Flex)を用い、CuのKα線を線源として集中法により、有機化層状化合物の(001)面の底面反射に由来する回折ピークより求めた。
【0054】
2.熱重量分析:有機化処理前後での重量変化は、TG/DTA320(セイコー電子工業)を用い、アルゴン雰囲気下10℃/分で室温から600℃まで昇温したときの重量変化より求めた。
【0055】
3.熱変形温度:JISK−7207に準拠し、荷重0.45MPaにおける熱変形温度を測定した。
【0056】
4.曲げ弾性率:ISO178に準拠し、変形速度1mm/分の荷重をかけ曲げ弾性率を測定した。
【0057】
5.透明性:各種成形品に対し、目視で評価を行った。厚さ2.0mmに成形し、この成形品を通して文字を識別できたものを透明性良(○)とし、識別はできるが透明感に劣るものを(△)、識別できなかったものを透明性不良(×)とした。
【0058】
6.非着色性:JISK−7105に準拠し、テクニブライトマイクロTB−1C型(カルテックサイエンス)を用い、ポリ乳酸のみからなる成形品を基準として色差(ΔE)を測定した。色差が基準と比較して1.5ポイント未満のものを非着色性良(○)とし、色差が基準と比較して1.5以上のものを非着色性不良(×)とした。
【0059】
[実施例1]
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドで有機化した有機化層状化合物。
【0060】
30Lのオートクレーブに純度95.2%のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン(日本油脂(株)製、ナイミーンL−202(アミン価202mgKOH/g、3350.6g)とイソプロパノール(1340.7g)を加え、90℃で塩化メチル(643g)を1時間圧入した。撹拌下、同温度で15時間熟成した後、55乃至60℃で窒素ガスを1時間バブルさせ、過剰の塩化メチルを除いた。次いでイソプロパノール(13.5kg)を加え、純度92.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの20.8%イソプロパノール溶液(18.5kg)を得た。
【0061】
カチオン界面活性剤(%)=20.8 残アミン価(mgKOH/g)=1.05
反応率(%)=97.5%
層状化合物である膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製、長径7乃至12μm、カチオン交換容量116meq/100g)100gを60℃の水5000mlに分散させた。有機化剤である純度92.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの20.8%イソプロパノール溶液181.5gを60℃に調整した。この混合溶液を先の膨潤性フッ素雲母分散液中に添加し、60℃で2時間撹拌した。撹拌終了後、溶媒、未反応の原料、複成する無機塩をろ過して取り除き、さらに、60℃の水で3回洗浄し、85℃で乾燥、粉砕して有機化層状化合物を得た。以下この有機化層状化合物をHPEO12−MEと呼ぶ。この有機化層状化合物をX線解析で測定したところ、層状化合物は有機化剤によりイオン交換しており層間が拡張していることが確かめられた。
【0062】
HPEO12−MEとポリ−L−乳酸(三井化学社製、LACEA)をニ軸押出機(東芝機械、TEM−35B−10/2V、L/D=31.8、スクリュー径37mm)を用いて200℃で溶融混練を行った。なお、ポリ−L−乳酸とHPEO12−MEの混合比は、前者100重量部に対して後者4.2重量部であった。また、得られた組成物の膨潤性フッ素雲母の含有量は無機量で3重量%であった。次いで、この組成物をISO178に準じて80mm×10mm×4mmの試験片を作製し、曲げ弾性率(変形速度1mm/分)及び熱変形温度(荷重0.98MPa)を測定した。さらに厚さ2.0mmに成形し、透明性及び非着色性について評価した。
【0063】
[実施例2]
N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリドで有機化された有機化層状化合物。
【0064】
1.5Lのオートクレーブにラウリルアミン(日本油脂(株)製、アミンBB、779.3g)を加え、150乃至165℃でプロピレンオキシド(488.1g)を3.5時間圧入した。撹拌下、同温度で15時間熟成した後、純度95.2%のN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミン(1260g)を得た。1LのオートクレーブにN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミン(374.0g、アミン価301.8mgKOH/g)とイソプロパノール(149.6g)を加え、90℃で塩化メチル(65.7g)を6時間圧入した。撹拌下、同温度で15時間熟成した後、更に塩化メチル(17g)を圧入し、同温度で3日間熟成した。55乃至60℃で窒素ガスを1時間バブリングさせ、過剰の塩化メチルを除いた。次いでイソプロパノール(200g)を加え、純度92.2%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの49.6%イソプロパノール溶液(600g)を得た。
【0065】
カチオン界面活性剤(%)=49.6 残アミン価(mgKOH/g)=4.70
反応率(%)=96.9
純度92.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの20.8%イソプロパノール溶液181.5gに代えて純度92.2%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの49.6%イソプロパノール溶液82.7gを用いた他は実施例1と同様にして、有機化層状化合物を得た。以下、この有機化層状化合物をHPPO12−MEと呼ぶ。この有機化層状化合物をX線解析で測定したところ、層状化合物は有機化剤によりイオン交換しており、層間が拡張していることが確かめられた。また、HPEO12−MEの代わりにHPPO12−MEを用いた以外は実施例1と同様にして、ニ軸押出機でポリ−L−乳酸との溶融混練を行った。なお、ポリ−L−乳酸とHPPO12−MEの混合比は、前者100重量部に対して後者4.3重量部であった。また、得られた組成物の膨潤性フッ素雲母の含有量は無機量で3重量%であった。次いで、実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性について評価した。
【0066】
[実施例3]
N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリドで有機化した有機化層状化合物
1Lのオートクレーブに純度95.2%のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン(日本油脂(株)製、ナイミーンL−202、 331.6g)、エチレンクロルヒドリン(96.6g)とイソプロパノール(183.6g)を加え、撹拌下、130℃で3日間反応させた。次いで、50℃まで冷却し、イソプロパノール(1104g)を加え、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリドの16.1%イソプロパノール溶液(1695g)を得た。
【0067】
カチオン界面活性剤(%)=16.1
純度92.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの20.8%イソプロパノール溶液181.5gに代えて高純度N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリド16.1%のイソプロパノール混合溶液256.9gを用いた他は実施例1と同様にして、有機化層状化合物を得た。以下、この有機化層状化合物をHPTEO12−MEと呼ぶ。この有機化層状化合物をX線解析で測定したところ、層状化合物は有機化剤によりイオン交換しており、層間が拡張していることが確かめられた。また、HPEO12−MEの代わりにHPTEO12−MEを用いた以外は実施例1と同様にして、ニ軸押出機でポリ−L−乳酸との溶融混練を行った。なお、ポリ−L−乳酸とHPTEO12−MEの混合比は、前者100重量部に対して後者4.3重量部であった。また、得られた組成物の膨潤性フッ素雲母の含有量は無機量で3重量%であった。次いで、実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性について評価した。
【0068】
[実施例4]
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドで有機化した有機化層状化合物
(1)1.5Lのオートクレーブにステアリルアミン(花王(株)製、ファーミン80、661.8g)を加え、145乃至150℃でエチレンオキシド(219.1g)を1.5時間圧入した。撹拌下、同温度で1時間熟成した後、80℃に冷却し、純度91.8%のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン(875g、アミン価158mgKOH/g)を得た。次いで同オートクレーブ中にイソプロパノール(423.4g)を加え、100℃で塩化メチル(129.9g)を2時間圧入した。撹拌下、同温度で4時間熟成した後、55乃至60℃で窒素ガスを1時間バブルさせ、過剰の塩化メチルを除いた。次いでイソプロパノール(6225.8g)を加え、純度86.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドの12.9%イソプロパノール溶液(6708.6g)を得た。
【0069】
カチオン界面活性剤(%)=12.9 残アミン価(mgKOH/g)=1.10
反応率(%)=94.6%
純度92.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの20.8%イソプロパノール溶液181.5gに代えて純度87.0%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドの12.9%イソプロパノール溶液368.2gを用いた他は実施例1と同様にして、有機化層状化合物を得た。以下、この有機化層状化合物をHPEO18−MEと呼ぶ。この有機化層状化合物をX線解析で測定したところ、層状化合物は有機化剤によりイオン交換しており、層間が拡張していることが確かめられた。また、HPEO12−MEの代わりにHPEO18−MEを用いた以外は実施例1と同様にして、ニ軸押出機でポリ−L−乳酸との溶融混練を行った。なお、ポリ−L−乳酸とHPEO18−MEの混合比は、前者100重量部に対して後者4.5重量部であった。また、得られた組成物の膨潤性フッ素雲母の含有量は無機量で3重量%であった。次いで、実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性について評価した。
【0070】
[実施例5]
N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルステアリルアンモニウムクロリドで有機化された層状化合物
ステアリルアミン(花王(株)製、ファーミン80)を用いて実施例2と同様にしてプロピレンオキシドと反応させ、次いで塩化メチルでメチル化することによりN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルステアリルアンモニウムクロリドの50.5%イソプロパノール溶液を得た。
【0071】
純度92.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの20.8%イソプロパノール溶液181.5gに代えて高純度N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルステアリルアンモニウムクロリドの50.5%イソプロパノール混合溶液100.5gを用いた他は実施例1と同様にして、有機化層状化合物を得た。以下、この有機化層状化合物をHPPO18−MEと呼ぶ。この有機化層状化合物をX線解析で測定したところ、層状化合物は有機化剤によりイオン交換しており、層間が拡張していることが確かめられた。また、HPEO12−MEの代わりにHPPO18−MEを用いた以外は実施例1と同様にして、ニ軸押出機でポリ−L−乳酸との溶融混練を行った。なお、ポリ−L−乳酸とHPPO18−MEの混合比は、前者100重量部に対して後者4.6重量部であった。また、得られた組成物の膨潤性フッ素雲母の含有量は無機量で3重量%であった。次いで、実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性について評価した。
【0072】
[実施例6]
N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアンモニウムクロリドで有機化した層状化合物
実施例4で得られたN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミンと2−クロロエタノールを実施例3と同様に反応させN,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアンモニウムクロリドの18.2%イソプロパノール溶液を得た。
【0073】
純度92.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの20.8%イソプロパノール溶液181.5gに代えて高純度N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアンモニウムクロリドの18.2%イソプロパノール混合溶液280.8gを用いた他は実施例1と同様にして、有機化層状化合物を得た。以下、この有機化層状化合物をHPTEO18−MEと呼ぶ。この有機化層状化合物をX線解析で測定したところ、層状化合物は有機化剤によりイオン交換しており、層間が拡張していることが確かめられた。また、HPEO12−MEの代わりにHPTEO18−MEを用いた以外は実施例1と同様にして、ニ軸押出機でポリ−L−乳酸との溶融混練を行った。なお、ポリ−L−乳酸とHPTEO18−MEの混合比は、前者100重量部に対して後者4.6重量部であった。また、得られた組成物の膨潤性フッ素雲母の含有量は無機量で3重量%であった。次いで、実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性について評価した。
【0074】
[実施例7]
膨潤性フッ素雲母に代えて天然モンモリロナイト(白石工業社製、長径1乃至3μm、カチオン交換容量100meq/100g)を用い、純度92.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリド20.8%のイソプロパノール混合溶液156.5gを用いた他は実施例1と同様にして、有機化層状化合物を得た。以下、この有機化層状化合物をHPEO12−MMTと呼ぶ。この有機化層状化合物をX線解析で測定したところ、層状化合物は有機化剤によりイオン交換しており、層間が拡張していることが確かめられた。また、HPEO12−MEの代わりにHPEO12−MMTを用いた以外は実施例1と同様にして、ニ軸押出機でポリ−L−乳酸との溶融混練を行った。なお、ポリ−L−乳酸とHPEO12−MMTの混合比は、前者100重量部に対して後者4.1重量部であった。また、得られた組成物のモンモリロナイトの含有量は無機量で3重量%であった。次いで、実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性について評価した。
【0075】
[実施例8]
純度92.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの20.8%イソプロパノール溶液156.5gに代えて純度87.0%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドの12.9%イソプロパノール溶液317.4gを用いた他は実施例7と同様にして、有機化層状化合物を得た。以下、この有機化層状化合物をHPEO18−MMTと呼ぶ。この有機化層状化合物をX線解析で測定したところ、層状化合物は有機化剤によりイオン交換しており、層間が拡張していることが確かめられた。また、HPEO12−MEの代わりにHPEO18−MMTを用いた以外は実施例1と同様にして、ニ軸押出機でポリ−L−乳酸との溶融混練を行った。なお、ポリ−L−乳酸とHPEO18−MMTの混合比は、前者100重量部に対して後者4.3重量部であった。また、得られた組成物のモンモリロナイトの含有量は無機量で3重量%であった。次いで、実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性について評価した。
【0076】
[比較例1]
実施例1乃至8で用いたポリ−L−乳酸と同一であり、有機化層状化合物が未添加のポリ−L−乳酸を用いて、実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性を測定した。以下、この試料をブランクとする。
【0077】
[比較例2]
実施例1乃至8で用いたポリ−L−乳酸と同一のポリ−L−乳酸と、実施例1乃至6で用いたものと同一の有機化されていない膨潤性フッ素雲母とを用い、実施例1と同様にして二軸押出機にて混練し組成物を得た。なお、ポリ−L−乳酸と有機化されていない膨潤性フッ素雲母の混合比は、前者100重量部に対して後者3.1重量部であり、得られた組成物の膨潤性フッ素雲母の含有量は無機量で3重量%であった。実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性について評価した。
【0078】
[比較例3]
膨潤性フッ素雲母に代えて実施例7で用いたもと同一の天然モンモリロナイトを用いた他は比較例2と同様にして組成物を得た。なお、ポリ−L−乳酸と有機化されていないモンモリロナイトの混合比は、前者100重量部に対して後者3.1重量部であり、得られた組成物のモンモリロナイトの含有量は無機量で3重量%であった。実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性について評価した。
【0079】
[比較例4]
純度92.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの20.8%イソプロパノール溶液181.5gに代えて純度60%のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの75%イソプロパノール混合溶液43.4gを用いた他は実施例1と同様にして、有機化層状化合物を得た。以下、この有機化層状化合物を60EO12−MEと呼ぶ。この有機化層状化合物をX線解析で測定したところ、層状化合物は有機化剤によりイオン交換していることが確かめられた。また、HPEO12−MEの代わりに60EO12−MEを用いた以外は実施例1と同様にして、ニ軸押出機でポリ−L−乳酸との溶融混練を行った。なお、ポリ−L−乳酸と60EO12−MEの混合比は、前者100重量部に対して後者4.2重量部であった。また、得られた組成物の膨潤性フッ素雲母の含有量は無機量で3重量%であった。次いで、実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性について評価した。
【0080】
[比較例5]
純度92.8%を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの20.8%イソプロパノール溶液181.5gに代えて純度75%のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの75%イソプロパノール混合溶液43.4gを用いた他は実施例1と同様にして、有機化層状化合物を得た。以下、この有機化層状化合物を75EO12−MEと呼ぶ。この有機化層状化合物をX線解析で測定したところ、層状化合物は有機化剤によりイオン交換していることが確かめられた。また、HPEO12−MEの代わりに75EO12−MEを用いた以外は実施例1と同様にして、ニ軸押出機でポリ−L−乳酸との溶融混練を行った。なお、ポリ−L−乳酸と75EO12−MEの混合比は、前者100重量部に対して後者4.2重量部であった。また、得られた組成物の膨潤性フッ素雲母の含有量は無機量で3重量%であった。次いで、実施例1と同様の試験片を作製して曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性について評価した。
【0081】
【表1】

【0082】
比較例2及び比較例3の有機化されていない層状化合物を含有するポリ−L−乳酸の試験片は曲げ弾性率、熱変形温度、透明性及び非着色性の各種試験において実施例1乃至8の有機化層状化合物を含有する同様なポリ−L−乳酸の試験片に比べ著しく劣っていた。比較例4及び比較例5の有機化層状化合物を含有する同様なポリ−L−乳酸の試験片は熱変形温度及び非着色性の試験において明らかに実施例1乃至8の有機化層状化合物を含有する同様なポリ−L−乳酸の試験片に比べ劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
90%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ステアリルアミンに塩化メチルをオートクレーブ中反応させるか若しくは、
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミンに2―クロロエタノールをオートクレーブ中反応させるか若しくは、
N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミン及びN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ステアリルアミンに1−クロロー2−プロパノールをオートクレーブ中反応させ製造される、
高純度のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルステアリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアンモニウムクロリド、N,N、N−トリス(2−ヒドロキシプロル)ステアリルアンモニウムクロリドの少なくとも1種以上からなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物。
【請求項2】
92%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン若しくはN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミンに塩化メチルをオートクレーブ中反応させ製造される、92%以上の高純度N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリド若しくはN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリドの少なくとも1種以上からなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物。
【請求項3】
92%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミンに塩化メチルをオートクレーブ中反応させ製造される、92%以上の高純度N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルラウリルアンモニウムクロリドからなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物。
【請求項4】
92%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ラウリルアミンに塩化メチルをオートクレーブ中反応させ製造される、92%以上の高純度N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルラウリルアンモニウムクロリドからなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物。
【請求項5】
91%以上の純度を有するN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミンに塩化メチルをオートクレーブ中反応させ製造される、86%以上の高純度N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルステアリルアンモニウムクロリドからなる有機アンモニウム化合物で層状化合物を処理することによって製造される有機化層状化合物。
【請求項6】
長径の平均の長さが0.01乃至50μmであり、カチオン交換容量が10乃至200meq/100gの層状化合物を処理することによって製造される請求項1乃至5のいずれか1項記載の有機化層状化合物。
【請求項7】
長径の平均の長さが1乃至12μmであり、カチオン交換容量が70乃至150meq/100gの膨潤性フッ素雲母、天然ナトリウム型モンモリナイト若しくは天然カルシウム型モンモリナイトを処理することによって製造される請求項1乃至5のいずれか1項記載の有機化層状化合物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の有機化層状化合物を含有する樹脂組成物。
【請求項9】
有機化層状化合物を0.1乃至20重量%を含有する請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
樹脂が非生分解性樹脂である請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
樹脂が生分解性樹脂である請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
樹脂がポリ乳酸である請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
樹脂がポリ乳酸である請求項9に記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−238708(P2007−238708A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61053(P2006−61053)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(390014856)日本乳化剤株式会社 (26)
【出願人】(391009187)株式会社白石中央研究所 (9)
【出願人】(506079283)
【Fターム(参考)】