説明

有機半導体としてのアザペリレン類

【課題】有機半導体材料として使用できるアザペリレン化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるアザペリレン化合物。


(式中、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、独立して、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリール、ハロゲン、Si(RH)3、XR6から選択されるか、R1とR2、R2とR3、R3とR4の一つ以上が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、飽和又は不飽和の、非置換又は置換されている炭素環又は複素環を形成する。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アザペリレン類を有機半導体として含む半導体素子、前記素子の調製方法、とりわけ前記方法で有用な新規なアザペリレン類及び電子素子の調製のための有機半導体としてのアザペリレン類又はその前駆体の使用に関する。
【0002】
有機半導体素子、たとえば有機電界効果トランジスタ(OFET)は、従来の無機半導体に対して数多くの利点、たとえば低コストの製造又はフレキシブル基材との適合性を約束する。特定のポリマーの他にも、数多くの縮合芳香族化合物、たとえばペンタセンが、とりわけ高い電荷担体(電界効果)移動性、高いオン/オフ電流比、低い準しきい(low sub-threshold)電位を特徴とする有用な半導電性を示すということが見いだされている。しかし、これら有利な特徴は、多くの場合、薄膜素子の調製のための蒸着の使用の必要性又は再結晶、相転移もしくは環境的影響のような影響による安定性の欠如などの要因によって損なわれる。
【0003】
理想的には、有機半導体は、廉価な方法、たとえばスタンピング、スクリーンプリント及びスピンコートによる大きな面積への適用に適するために、有機溶媒に可溶性であるべきである。
【0004】
有機半導体の性質を改善するために、主としてこれらの化合物の可溶性を改善するために、構造的修飾が縮合芳香族化合物に加えられた。その例は、ペンタセン(US−2003−0144526)、置換ペンタセン類(US−2003−0105365、US−6690029)、ナフタレンのテトラカルボン酸ジイミド類(US−6252245)又はペリレン(US−2002−0164835)へと熱的に再転換することができるディールス・アルダー付加化合物である。
【0005】
安定で再現精度が高い電子性能特性を提供することができ、良好な電荷担体移動性を示しながらも低コスト製造を可能にする、又は溶媒処理の可能性を提供する有機半導体が要望されている。
【0006】
特定のテトラベンゾ−ジアザペリレン類が有機材料の着色のための顔料としての使用に提案されている(US−5028643、JP−A−63−193960を参照)。K. Kitahara、H. Nishi、J. Heterocycl. Chem. 1988, 25, 1063は、1,8−ジアザ−2,9−ジエトキシカルボニル−3,10−ジフェニル−2,9−ジヒドロ−ペンタセンのジアザペリレンへの転換を記載している。
【0007】
WO02/068431は、有機発光ダイオード(OLED)の調製に有用であると報告されている特定のジアザペリレン類の可溶性ホウ素錯体の調製を開示している。同じ目的のための1,7−ジアザペリレンの使用がJP−A−2000−231987で推奨されている。
【0008】
今、特定の置換ジアザペリレン類が良好な半導電性を有し、よって、対応する素子における有機半導体として、ダイオード又はOLEDとしてだけでなく、特に、薄膜トランジスタ(OTFT)として有利に調製される有機電界効果トランジスタ(OFET)としても使用することができることが見いだされた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、化合物653の発光及び励起スペクトルを示す。
【図2】図2は、実施例によるアザペンタセン薄膜トランジスタのソース電流とドレイン電圧との関係を示す図である。
【図3】図3は、実施例によるアザペンタセン薄膜トランジスタのソース電流とゲート電圧との関係を示す図である。
【0010】
したがって、本発明の主題は、一般に、式I
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、
R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリール、ハロゲン、Si(RH)3、XR6であるか;あるいはR1とR2、R2とR3、R3とR4の一つ以上が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、飽和又は不飽和の、非置換又は置換されている炭素環又は複素環を形成し;
R5は、OR7、SR7、NR7R8、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル又は非置換又は置換されているアリールであり;
R6は、Si(R11)3、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリールであり;
R7は、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリールであり;
Xは、O、S、NR8であり;
R8は、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリールである)
のアザペリレン有機半導体を含む半導体素子に関する。
【0013】
アルキルとは、非環式の飽和した一価ヒドロカルビル基を表し;アルケニルとは、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合(たとえばアリルにおける)を含有するような基を指し;同様に、アルキニルとは、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合(たとえばプロパルギルにおける)を含有するような基を指す。アルケニル又はアルキニル基が2個以上の二重結合を含有する場合、これらの結合は通常、重なることはなく、たとえば−[CH=CH−]n又は−[CH=C(CH3)−]n(nはたとえば2〜50の範囲であってもよい)におけるように、交互に並んでいてもよい。好ましいアルキルは炭素原子1〜22個を含み;好ましいアルケニル及びアルキニルは、それぞれ、炭素原子2〜22個、特に炭素原子3〜22個を含有する。
【0014】
炭素原子2個以上、特に炭素原子3個以上のアルキル部分又は別の部分の一部であるようなアルキルもしくはアルキレン部分は、ヘテロ官能基、たとえばO、S、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10又はNR10(R10は、H、C1〜C12アルキル、C4〜C12シクロアルキルである)によって中断されていてもよい。これらの基は、これらのスペーサ基の1個以上によって中断されていることができ、各場合、1個の基が一般に1個の炭素−炭素結合に挿入され、ヘテロ−ヘテロ結合、たとえばO−O、S−S、NH−NHなどは起こらない;中断されたアルキルがさらに置換されているならば、置換基は一般に、ヘテロ原子に対してα位置ではない。1個の基の中に−O−、−NR10−、−S−のタイプの2個以上の中断基があるならば、多くの場合それらは同一である。
【0015】
よって、「アルキル」とは、どこで使用されようと、主として、特に中断されておらず、適切な場合には置換されているC1〜C22アルキル、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルブチル、n−ペンチル、イソペンチル、1−メチルペンチル、1,3−ジメチルブチル、n−ヘキシル、1−メチルヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、1,1,3−トリメチルヘキシル、1,1,3,3−テトラメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、1−メチルウンデシル、ドデシル、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルヘキシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルを含む。アルコキシはアルキル−O−であり;アルキルチオはアルキル−S−である。
【0016】
「アリール」とは、どこで使用されようと、主として、主にO、N及びSから選択される1個以上のヘテロ原子を環構造の一部として含有する複素環であってもよいC1〜C18芳香族部分を含み;炭化水素アリールの例は、主として、フェニル、ナフチル、アントラチニル、アントラセニル、フルオレニルを含むC6〜C18であり;複素環(C1〜C18)の例は、以下の表:
【0017】
【表1】



【0018】
に示すもの、及びアザナフチル、フェナントロリル、トリアジニル、テトラヒドロナフチル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、
【0019】
【化2】

【0020】
を包含し;もっとも好ましいものはフェニル、チオフェニルである。
【0021】
残基が置換されている場合、置換基は通常、炭素原子に結合し、C1〜C22アルコキシ、C1〜C22アルキル、C4〜C12シクロアルコキシ、C4〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、アリール、たとえばフェニル及びナフチルから選択され;飽和炭素がオキソ(=O)によって置換されていてもよく;隣接する置換基が一緒に連結してたとえばラクトン、無水物又はイミド環を形成してもよい。好ましい置換基は、アルキル又はアルコキシであり;技術的に特に対象となるものは、炭素原子4個以上、特に5個以上を含有するものである(以下参照)。
【0022】
ハロゲンとは、I、Br、Cl又はF、好ましくはCl、F、特にFを指す。また、技術的に特に対象となるものは、過ハロゲン化残基、たとえば炭素原子1〜12個のペルフルオロアルキル、たとえばCF3である。
【0023】
置換シリルは、好ましくは、先に定義したような非置換もしくは置換されているヒドロカルビルもしくはヒドロカルビルオキシ(置換基は、好ましくは置換シリル以外である)から選択される2個もしくは好ましくは3個の基によって、又は非置換もしくは置換されているヘテロアリールによって置換されているSiである。Siが2個の置換基のみを有する場合、シリル基は、−SiH(R2)のタイプであり、Rは好ましくはヒドロカルビルである。より好ましいものは、3個のC1〜C20アルキル又はC1〜C20アルコキシ置換基であり、すなわち置換シリルはSi(R11)3(R11はC1〜C20アルキル又はC1〜C20アルコキシである)であり、特に、3個のC1〜C8アルキル置換基、たとえばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルもしくはイソブチル又はメトキシ、エトキシ、プロポキシである。
【0024】
式Iの好ましい化合物は、隣接する残基R1とR2、R3とR4それぞれが、それらが結合する炭素原子と一緒になって、飽和又は不飽和の、非置換又は置換されている炭素環又は複素環を形成しているものであり;特に好ましいものは、非置換又は置換されている5員もしくは6員炭素環又はNもしくはS複素環である。環形の式Iの化合物によって包含されるそのような環の例は、ベンゼン、ピリジン、トリ又はテトラヒドロベンゼン(「シクロヘキサン」)、フラン、ジヒドロフラン、チオフェン、ジヒドロチオフェン、ピロール、ジヒドロピロール、シクロペンタンのタイプであり;もっとも重要なものは、6員炭素環式芳香環(ベンゼン環)ならびに5員N及び/又はS複素環式芳香環である。
【0025】
R5は、好ましくはOR7、SR7から選択され;炭素原子4個以上の別の置換基が存在する場合、水素であってもよい;
R7は、好ましくは、H、非置換又は置換されているアルキル又はアルケニル、非置換又は置換されているアリールから選択される。
【0026】
式Iのより好ましい化合物は、隣接する残基R1とR2、R3とR4それぞれが、それらが結合する炭素原子と一緒になって、飽和又は不飽和の炭素環式6員環又はNもしくはS複素環式5員環を形成し;
R5がOR7、SR7であり;
R7がH、非置換又は置換されているアルキルであるものである。
【0027】
そのような化合物の例は、構造II
【0028】
【化3】

【0029】
(式中、
A1、A2、A3及びA4は、互いに独立して、それらが結合する炭素原子と一緒になって、非置換又は置換されている芳香族炭素環式6員環又はN及び/もしくはS複素環式5員環を完成させる橋掛け員であり、
R7は、独立して、H又は非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリールであり、
Xは、O、S、NR8であり;
R8は、H、非置換であるか、ハロゲンもしくはOHによって置換されているC1〜C12アルキルもしくはC3〜C12アルケニル又はNR10R10であり、
R10は、H、C1〜C12アルキル又はC4〜C12シクロアルキルである)
に当てはまる。
【0030】
式IIの好ましい化合物では、R7は、式Iの好ましい化合物に関して先に定義したとおりであり;Xは、もっとも好ましくはOである。
【0031】
式Iの化合物のもっとも好ましい例は、構造III
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、
Rは、独立して、H、ハロゲン、OH、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルコキシ、非置換又は置換されているアルキルチオ、非置換又は置換されているアリールであり;
R7は、独立して、H、アルキル、アルケニル又はアルキニル、特にアルキルである)
に当てはまる。
【0034】
技術的に特に対象となる式Iの化合物は、OR7又はSR7としてR5を含み、(R7は、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアリールである);及び/又はR1〜R5の少なくとも一つ、特にそれらの二つ、たとえばR2又はR7が、炭素原子4個以上、特に5個以上のアルキル又はアルキレン鎖を含有する。そのような化合物の例は、R及びR7の少なくとも一つ、特に両方の残基R及び/又は両方の残基R7が、炭素原子4個以上、特に5個以上のアルキル又はアルキレン鎖を含有する上記式(III)の化合物であり;そのような残基の例は、C4〜C22アルキル、C10〜C22フェニルアルキル又は脂肪族部分がO、S、NR10、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10、特にOによって中断されている前記残基である。
【0035】
したがって、本発明はさらに、R1、R2、R3、R4、R6、R7の少なくとも一つが、C4〜C22アルキル、C10〜C22フェニルアルキル又はO、S、NR10、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10によって中断されている前記残基である上記式Iの新規な化合物、好ましくは、式III
【0036】
【化5】

【0037】
(式中、
各Rは、独立して、H、ハロゲン、OH、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルコキシ、非置換又は置換されているアルキルチオ、非置換又は置換されているアリールから選択され、
各R7は、独立して、H、アルキル、アルケニル又はアルキニル、特にアルキルから選択され、R、R7の少なくとも一つは、C4〜C22アルキル、C10〜C22フェニルアルキル又は脂肪族部分がO、S、NR10、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10によって中断されているC4〜C22アルキル、C10〜C22フェニルアルキルである)
の化合物に関する。
【0038】
本発明の好ましい化合物は、有機溶媒にはペンタセン又はペリレンよりも可溶性であり、したがって、経済的な溶液処理堆積法にとってより有望な候補物質である。
【0039】
本発明の化合物はまた、蛍光染料又は赤外線吸収剤として有用である。
【0040】
調製
一般に、式Iの化合物は、K. Kitahara、H. Nishiによって記載されている方法(J. Heterocycl. Chem. 1988, 25, 1063)にしたがって、又はそれと同様にして得てもよい。
【0041】
式Iの好ましい化合物は、式II′
【0042】
【化6】

【0043】
(式中、
R1、R2、R3及びR4ならびにXは、式Iに関して定義したとおりであり、特に、XはOであり、
R′は、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアリールである)
の前駆体を加熱することによって好都合に得ることができる場合がある。
【0044】
加熱は通常、約60〜500℃、好ましくは約100〜350℃、特に約60〜200℃である。式II′の前駆体の薄膜を潜在的半導体として基材に塗布するもっとも好ましい方法では、転写は、150℃までの温度で達成される。
【0045】
式Iの化合物はまた、DE−A−4005056に記載されている方法にしたがって、又はそれと同様にして得てもよい。
【0046】
たとえば、式Iの好ましい化合物の調製は、熱の適用により、反応式:
【0047】
【化7】

【0048】
(R′及びRは、先に定義したとおりである)
にしたがって好都合に実施することができる。
【0049】
R7がHである式Iの化合物及び式II又は式IIIの好ましい化合物は、当該技術で公知のエーテル化、チオエーテル化又はアミノ化の方法により、R7が先に定義した有機残基である所望の誘導体に好都合に移すことができる場合がある。
【0050】
式IIの前駆体は通常、十分に可溶性であり、したがって、従来技術、たとえば浸漬、プリント、スタンピングなどにより、特に薄膜として基材に塗布してもよい。
【0051】
式Iの化合物の半導電層は、事前に調製しておいた式IIの前駆体(潜在的半導体)の層の加熱によって調製してもよい。
【0052】
したがって、本発明の目的は、式IIの有機溶媒可溶性前駆体の薄膜をアザペリレンに固体転換することによってアザペリレンの薄膜を調製することである。本発明のさらなる目的は、アザペリレンの前駆体を約60℃〜約300℃での低ないし中温転換によってアザペリレン化合物に転換することによって調製される、TFT素子の製造のためのアザペリレンの膜を提供することである。
【0053】
本発明のもう一つの目的は、式IIの有機溶媒可溶性前駆体の有機溶媒溶液を基材に塗布したのち溶媒を除去することにより、式IIの有機溶媒可溶性前駆体の薄膜を調製することである。
【0054】
本発明のさらに別の目的は、アザペリレン化合物の薄膜を、アザペリレン化合物膜がp型又はn型半導体チャネルとして働く薄膜トランジスタに使用することである。
【0055】
半導体素子
本発明の化合物は、半導体素子における半導体層として使用することができる。数多くのタイプの半導体素子がある。すべてに共通することは、一つ以上の半導体材料の存在である。半導体素子は、たとえば、S. M. Szeにより、Physics of Semiconductor Devices, 2.sup.nd edition(John Wiley and Sons, New York (1981))で記載されている。このような素子としては、整流器、トランジスタ(pnp、npn及び薄膜トランジスタをはじめとして多くのタイプがある)、発光半導体素子(たとえば有機発光ダイオード)、光伝導体、電流制限器、サーミスタ、pn接合、電界効果ダイオード、ショットキーダイオードなどがある。各半導体素子において、半導体材料は一つ以上の金属又は絶縁材と組み合わされて素子を形成する。半導体素子は、公知の方法、たとえばPeter Van ZantによってMicrochip Fabrication, Fourth Edition(McGraw-Hill, New York (2000))で記載されている方法によって調製又は製造することができる。
【0056】
特に有用なタイプのトランジスタ素子である薄膜トランジスタ(TFT)は一般に、ゲート電極、ゲート電極上のゲート誘電体、ソース電極及びゲート誘電体に隣接するドレイン電極ならびにゲート誘電体に隣接し、ソース及びドレイン電極に隣接する半導体層を含む(たとえば、S. M. Sze, Physics of Semiconductor Devices, 2.sup.nd edition, John Wiley and Sons, page 492, New York(1981)を参照)。これらの部品を多様な構造に組み立てることができる。より具体的には、有機薄膜トランジスタ(OTFT)は有機半導体層を有する。
【0057】
通常、製造、試験及び/又は使用中、基材がOTFTを支持する。場合によっては、基材は、OTFTのための電気的機能を提供することができる。有用な基材材料としては、有機材料及び無機材料がある。たとえば、基材としては、無機ガラス、セラミックフォイル、ポリマー材料(たとえばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリケトン、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンオキシ−1,4− フェニレンカルボニル−1,4−フェニレン)(ポリ(エーテルエーテルケトン)又はPEEKとも呼ばれる)、ポリノルボルネン、ポリフェニレンオキシド、ポリ(エチレンナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS))、充填材入りポリマー材料(たとえば繊維強化プラスチック(FRP))及びコートされた金属フォイルを挙げることができる。
【0058】
ゲート電極は、いかなる有用な導電性材料であることができる。たとえば、ゲート電極は、ドープされたケイ素又は金属、たとえばアルミニウム、クロム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、タンタル及びチタンを含むことができる。また、導電性ポリマー、たとえばポリアニリン又はポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)を使用することもできる。加えて、このような材料の合金、混合物及び多層を使用することもできる。一部のOTFTでは、同じ材料がゲート電極機能を提供し、かつ基材の支持機能を提供することもできる。たとえば、ドープされたケイ素は、ゲート電極として機能し、かつOTFTを支持することができる。
【0059】
ゲート誘電体は一般にゲート電極上に設けられる。このゲート誘電体は、ゲート電極をOTFT素子の残り部分から電気的に絶縁する。ゲート誘電体に有用な材料としては、たとえば電気絶縁性の無機材料を挙げることができる。
【0060】
ゲート誘電体に有用な材料の具体例は、ストロンチエート、タンタレート、チタネート、ジルコネート、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコン酸チタン酸バリウム、セレン化亜鉛及び硫化亜鉛を含む。加えて、これらの材料の合金、混合物及び多層をゲート誘電体に使用することもできる。
【0061】
ソース電極及びドレイン電極はゲート誘電体によってゲート電極から切り離されているが、有機半導体層はソース電極及びドレイン電極の上又は下にあることができる。ソース及びドレイン電極は任意の有用な導電材料であることができる。有用な材料としては、ゲート電極に関して上記した材料の大部分、たとえばアルミニウム、バリウム、カルシウム、クロム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、ポリアニリン、PEDOT:PSS、他の導電性ポリマー、それらの合金、それらの混合物及びそれらの多層がある。当該技術で公知であるように、これらの材料の一部はn型半導体材料との使用に適切であり、他のものはp型半導体材料との使用に適切である。
【0062】
薄膜電極(すなわち、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極)は、有用な手段、たとえば物理蒸着(たとえば熱蒸着又はスパッタリング)又はインクジェットプリントによって提供することができる。これらの電極のパターン付けは、公知の方法、たとえばシャドーマスキング、加法的フォトリソグラフィー、減法的フォトリソグラフィー、プリント、マイクロコンタクトプリント及びパターンコーティングによって達成することができる。
【0063】
本発明はさらに、
基材上に設けられた複数の導電性ゲート電極;
前記導電性ゲート電極上に設けられたゲート絶縁体層;
前記絶縁体層上に設けられ、前記ゲート電極に実質的に重なり合う有機半導体層、及び
前記有機半導体層上に、それぞれが前記ゲート電極それぞれと整合するように設けられた導電性ソース及びドレイン電極の複数のセット;
を含み、前記有機半導体層が式Iのアザペリレン化合物である薄膜トランジスタ素子を提供する。
【0064】
本発明はさらに、薄膜トランジスタ素子を調製する方法であって、
複数の導電性ゲート電極を基材に堆積させるステップと;
ゲート絶縁体層を前記導電性ゲート電極に堆積させるステップと;
式Iのアザペリレン化合物又は式IIのその前駆体の層を、式Iの化合物又は式IIの前駆体の前記層が前記ゲート電極に実質的に重なり合うように前記絶縁体層に堆積させるステップと;
導電性ソース及びドレイン電極の複数のセットを、前記セットそれぞれが前記ゲート電極それぞれと整合するように前記層に堆積させるステップと;及び
式IIの前駆体を使用した場合に、熱を加えて前記前駆体を式Iのアザペリレン化合物に転換し、それによって薄膜トランジスタ素子を製造するステップ
を含む方法を提供する。
【0065】
本発明のアザペリレン化合物の薄膜及びその前駆体の薄膜を調製するためには、いかなる適当な基材を使用することもできる。好ましくは、上記薄膜を調製するために使用される基材は、金属、ケイ素、プラスチック、紙、コーティング紙、布、ガラス又はコーティングガラスである。
【0066】
あるいはまた、TFTは、たとえば、アザペリレン又はその前駆体を、熱的に成長させた酸化膜層で覆われた高度にドープされたシリコン基材に溶液堆積し、次いでソース及びドレイン電極を真空蒸着及びパターン付けすることによって製造される。最終ステップで、場合によっては素子を加熱して前駆体をアザペリレン膜に転換する。
【0067】
さらに別の手法では、TFTは、ソース及びドレイン電極を、熱的に成長させた酸化膜で覆われた高度にドープされたシリコン基材に堆積し、次いでアザペリレン又はその前駆体を溶液堆積して薄膜を形成し、最後に、前駆体を使用した場合に、素子を加熱して前駆体をアザペリレンに転換することによって製造される。
【0068】
ゲート電極もまた、基材又は導電性材料、たとえば導電性ポリマー上にパターン付けされた金属ゲート電極を、溶液コーティング又は真空蒸着によって塗布される絶縁材でコートしたものであってもよい。絶縁材は、酸化物、窒化物のような材料であることもできるし、PbZrxTi1-x3(PZT)、Bi4Ti312、BaMgF4、Ba(Zr1-xTix)O3(BZT)が含まれるが、これらに限定されない強誘電性絶縁材の群から選択される材料であることもできるし、有機ポリマー絶縁材であることもできる。
【0069】
前駆体又は本アザペリレン化合物を溶解させるためには、不活性であり、材料の少なくとも一部を溶解させることができ、従来の乾燥手段(たとえば加熱、減圧、気流など)によって基材から除去することができるものであるならば、いかなる適当な溶媒を使用することができる。本発明の半導体の処理に適した有機溶媒としては、芳香族又は脂肪族炭化水素、ハロゲン化、たとえば塩素化炭化水素、エステル類、エーテル類、アミド類、たとえばクロロホルム、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジクロロベンゼン、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。そして、溶液を、スピンコーティング法、浸漬被覆法、スクリーンプリント法、マイクロコンタクトプリント法、ドクターブレード法のような方法又は当該技術で公知の他の溶液塗布技術によって基材に塗布して半導体材料又はその前駆体の薄膜を得る。
【0070】
好ましくは、有機半導体層の厚さは、約5〜約200nmの範囲であり、特に、約10〜約30nmの範囲である。
【0071】
本発明のアザペリレン化合物は、単独で又は組み合わせて、半導体素子の有機半導体層として使用することができる。層は、有用な手段、たとえば蒸着法及びプリント技術によって提供することができる。本発明の化合物の一部(たとえば十分に大きなアルキル基、たとえば2個のドデシル、ノニル又はヘキシル置換基を有するもの、特に中断されていない非分岐状のもの又は分岐状もしくは非分岐状で中断されている基、たとえばヘテロ官能基に対してα位置で分岐しているアルキル)は、有機溶媒に十分に可溶性であり、溶液堆積することができる(たとえばスピンコーティング法、浸漬被覆法、インクジェットプリント法、流延法又は他の公知の技術によって)。
【0072】
キラルな側鎖の場合、半導体層の調製には、ジアステレオ異性的に純粋な分子の選択が好ましい。
【0073】
本発明のアザペリレン化合物は、複数のOTFTを含む集積回路及び種々の電子製品に使用することができる。そのような製品としては、たとえば、無線周波数識別(RFID)タグ、フレキシブルディスプレーのバックプレイン(たとえばPC、携帯電話又は手持ち式装置に使用)、スマートカード、メモリデバイスなどがある。
【0074】
以下の実施例は、例を示すためのものであり、本発明をいかなる方向にも限定するものと解釈されてはならない。室温は20〜25℃の範囲の温度をいう。断りない限り、%値は重量基準である。
実施例又はその他で使用する略号:
M:1リットルあたりモル単位の濃度
【0075】
調製例
実施例1
K. Kitahara, H. Nishi, J. Heterocycl. Chem. 1988, 25, 1063にしたがって化合物605を調製した。
【0076】
【化8】

【0077】
実施例2
実施例1の化合物605 487mg及び水素化ナトリウム72mgを、N−メチルピロリドン10ml中、窒素下、室温で2時間撹拌した。続いて、1−ブロムドデカン771mgを加え;撹拌を、室温で18時間、次いで70℃で24時間継続した。室温まで冷ました後、撹拌をさらに10分間継続する間に水20ml及びCHCl350mlを加えた。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をシリカ上でクロマトグラフィーに付し、得られた生成物を高温のエタノールから再結晶させると、式
【0078】
【化9】

【0079】
の黄色の固体(化合物653)396mgが得られた。
【0080】
【表2】

【0081】
光物理的性質
トルエン中10-04M溶液のスペクトルをPerkin Elmer(LS-50B)蛍光分光計で記録すると、498nmでピーク発光を示した。図1は、化合物653の発光及び励起スペクトルを示す。
【0082】
固体膜では、蛍光強度は抑制されてオレンジ色の発光を示した。吸収スペクトルは、325nmで最大値を示し、420〜450nm領域でより分解されたバンドを示した。
【0083】
実施例3
エタノール80ml及び6N塩酸1ml中ジメチル−1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジカルボキシレート2.51g及び2−アミノフェニル−2−チエニルケトン5.48gの混合物を窒素雰囲気下で4時間還流させた。冷ました後、沈殿物をろ別し、エタノールで洗浄し、真空下に乾燥させると、式
【0084】
【化10】

【0085】
の化合物659の無色の結晶4.1gが得られた。
【0086】
【表3】

【0087】
実施例4
実施例3で合成した化合物2.3gを、真空(0.1mbar)下、350℃で2時間加熱した。冷ましたのち、ジクロロメタン25mlを加え、懸濁液をろ過した。粗生成物をニトロベンゼン80mlに懸濁させ、加熱して5分間還流し、室温まで冷まし、一晩放置した。懸濁液をろ過し、結晶化生成物をトルエン及びジクロロメタンで洗浄し、80℃/25mbarで16時間乾燥させると、式
【0088】
【化11】

【0089】
の化合物660の濃紫色の結晶1.3gが得られた。
【0090】
応用例
A)精製及び薄膜調製
化合物605を、3ゾーン型オーブン中、アルゴンをキャリヤガスとして使用するトレイン昇華法によって精製した。精製した試料を真空蒸着装置(Balzers)に導入し、0.1nm/sの成長速度で昇華させた。チャンバ圧は、蒸着の開始及び終了時で一般に6×10-6Torrであった。水晶モニタによって膜厚を計測して、50nmの総厚さを得た。
【0091】
B)アザペンタセンベースの電界効果トランジスタ
p−Siゲート(10Ωcm)を有するボトムゲート薄膜トランジスタ(TFT)構造をすべての実験に使用した。厚さ300nmの高品質熱SiO2層が、単位面積あたりCi=11nF/cm2キャパシタンスのゲート絶縁材として作用した。フォトリソグラフィーによってソース及びドレイン電極をゲート酸化膜上に直接パターン付けした(ボトムコンタクト構造)。幅W=2mm、長さL=50μmのチャネルを画定するAuソース/ドレイン電極を使用した。有機半導体の堆積の前に、SiO2面を、160℃の飽和シラン蒸気に2時間暴露することにより、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で誘導体化した。
【0092】
トランジスタ性能
アザペンタセン薄膜トランジスタは、明確なp型トランジスタ挙動を示した(図2を参照)。飽和移動特性の平方根の直線当てはめ(図3を参照)から、5 10-4cm2/Vsの電界効果移動度を測定した(IEEE規格1620)。単位面積あたり11nF/cm2キャパシタンスの300nmゲート酸化膜で、トランジスタは約−20Vのしきい電圧を示した。
【0093】
トランジスタは、104〜105の良好なオン/オフ電流比を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化12】


(式中、
R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、独立して、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリール、ハロゲン、置換されているシリル、XR6から選択されるか;あるいは、R1及びR2、R2及びR3、R3及びR4の一つ以上が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、飽和又は不飽和の、非置換又は置換されている炭素環又は複素環を形成し;
R5は、OR7、SR7、NR7R8、非置換もしくは置換されているアルキル、非置換もしくは置換されているアルケニル、非置換もしくは置換されているアルキニル又は非置換もしくは置換されているアリールであり;
R6は、置換されているシリル、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリールであり;
R7は、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリールであり;
Xは、O、S、NR8であり;
R8は、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリールである)
のアザペリレン有機半導体を含む半導体素子又は半導体要素含有素子。
【請求項2】
式I中、
各アルキルが、O、S、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10又はNR10(R10は、H、C1〜C12アルキル、C4〜C12シクロアルキルである)によって中断されていてもよいC1〜C22から選択され;
各アリールが、O、N及びSから選択される1又は2個のヘテロ原子を環構造の一部として含有していてもよいC4〜C18芳香族基から選択され、好ましいアリールが、フェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニルから選択され;置換基は、存在する場合、炭素原子に結合し、C1〜C22アルコキシ、C1〜C22アルキル、C4〜C12シクロアルコキシ、C4〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、フェニル、ナフチルから選択され;飽和炭素がオキソ(=O)によって置換されていてもよく、隣接する2個の置換基が、それぞれの水素原子の削減によって連結していてもよい、請求項1記載の半導体素子。
【請求項3】
式Iの化合物中、隣接する残基R1とR2、R3とR4が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、飽和又は不飽和の炭素環式又はN複素環式6員環を形成し;
R5がOR7、SR7であり;
R7がH、非置換又は置換されているアルキルである、請求項1又は2記載の半導体素子。
【請求項4】
式Iの化合物が、構造III
【化13】


(式中、
Rは、独立して、H、ハロゲン、OH、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルコキシ、非置換又は置換されているアルキルチオ、非置換又は置換されているアリールであり、
R7は、独立して、H、アルキル、アルケニル又はアルキニル、特にアルキルであり、
好ましくは、R及びR7の少なくとも一つが、C4〜C22アルキル、C10〜C22フェニルアルキル又は脂肪族部分がO、S、NR10、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10によって中断されている前記残基から選択される)
に当てはまる、請求項2記載の半導体素子。
【請求項5】
ダイオード、有機電界効果ダイオード又はダイオード及び/もしくは有機電界効果トランジスタを含む素子である、請求項1記載の半導体素子。
【請求項6】
ゲート電極、ゲート電極上のゲート誘電体、ソース電極及びゲート誘電体に隣接するドレイン電極ならびにゲート誘電体に隣接し、ソース及びドレイン電極に隣接する半導体層を含み、半導体層が式I又はIIIの化合物を含む、請求項5記載の半導体素子。
【請求項7】
R1〜R7の少なくとも一つが炭素原子4個以上のアルキル又はアルキレン鎖を含み、特に、R1〜R7の一つ又は二つが、C4〜C22アルキル、C10〜C22フェニルアルキルから選択される残基又は脂肪族部分がO、S、NR10、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10によって中断されている前記残基を含む請求項1の式Iのアザペリレン化合物の有機溶媒溶液を適当な基材に塗布し、前記溶媒を除去することを含む、有機半導体素子を調製する方法。
【請求項8】
有機半導体素子を調製する方法であって、式II′
【化14】


(式中、
R1、R2、R3及びR4は、請求項1の式Iで定義したとおりであり、
XはOであり、
R′は、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアリールである)
のアザペリレン前駆体を60〜500℃の範囲の温度で加熱することを含む方法。
【請求項9】
5〜200nmの範囲の厚さを有するアザペリレン化合物の膜を形成させる、有機薄膜トランジスタを調製するための、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
式I′
【化15】


(式中、
R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、独立して、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリール、ハロゲン、Si(R11)3、XR6であるか;あるいはR1とR2、R2とR3、R3とR4の一つ以上が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、飽和又は不飽和の、非置換又は置換されている炭素環又は複素環を形成し;
R5は、H、OR7、SR7、NR7R8、非置換もしくは置換されているアルキル、非置換もしくは置換されているアルケニル、非置換もしくは置換されているアルキニル又は非置換もしくは置換されているアリールであり;
R6は、Si(R11)3、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリールであり;
R7は、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリールであり;
Xは、O、S、NR8であり;
R8は、H、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルケニル、非置換又は置換されているアルキニル、非置換又は置換されているアリールであり、
R11は、C1〜C20アルキル又はC1〜C20アルコキシであり、
ただし、R1、R2、R3、R4、R6、R7の少なくとも一つが、C4〜C22アルキル、C10〜C22フェニルアルキル又はO、S、NR10、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10によって中断されている前記残基である)
の化合物。
【請求項11】
式III
【化16】


(式中、
各Rは、独立して、H、ハロゲン、OH、非置換又は置換されているアルキル、非置換又は置換されているアルコキシ、非置換又は置換されているアルキルチオ、非置換又は置換されているアリールから選択され;
各R7は、独立して、H、アルキル、アルケニル又はアルキニル、特にアルキルから選択され、R、R7の少なくとも一つは、C4〜C22アルキル、C10〜C22フェニルアルキル又は脂肪族部分がO、S、NR10、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10によって中断されているC4〜C22アルキル、C10〜C22フェニルアルキルである)
に当てはまる、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
各アルキルが、O、S、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10又はNR10(R10は、H、C1〜C12アルキル、C4〜C12シクロアルキルである)によって中断されていいてもよいC1〜C22から選択され;各アリールが、O、N及びSから選択される1又は2個のヘテロ原子を環構造の一部として含むことができるC4〜C18芳香族基から選択され、好ましいアリールが、フェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニルから選択され;置換基は、存在する場合、炭素原子に結合し、C1〜C22アルコキシ、C1〜C22アルキル、C4〜C12シクロアルコキシ、C4〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、フェニル、ナフチルから選択され;飽和炭素がオキソ(=O)によって置換されていてもよく;隣接する2個の置換基が連結してラクトン、無水物又はイミド環を形成していてもよい、請求項10又は11記載の化合物。
【請求項13】
有機電界効果トランジスタの調製又は動作のための有機半導体としてのアザペリレン類又はその前駆体の使用。
【請求項14】
電子装置の調製又は動作のための有機半導体としての、請求項1〜4又は10〜12記載の式IもしくはIIIのアザペリレン類又はその前駆体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−176967(P2012−176967A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−106954(P2012−106954)
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【分割の表示】特願2008−510543(P2008−510543)の分割
【原出願日】平成18年5月3日(2006.5.3)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】