説明

有機半導体のための誘導体化されたフラーレン系ドーパント

有機半導体材料を、共有結合により結合する少なくとも1つの電子吸引置換基を有し、かつ、前記有機半導体材料の最高被占分子軌道(HOMO)から最低空分子軌道(LUMO)への電子移動を可能にするために十分である前記LUMOを有するフラーレン誘導体によりドープすることを含む、半導体材料を製造する方法が提供される。また、これらの半導体材料からなる、トランジスタ、太陽電池、照明装置、OLEDおよび検出器のような電子デバイスも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、塗布された材料に関し、限定的ではないが、より具体的には、有機半導体の新規なドーパントに関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体(OSC)が、ますます増大する役割を先進エレクトロニクスの分野において果たしている。OSCは、半導体特性を有する有機材料、すなわち、電気伝導率が、典型的な金属と絶縁性化合物の電気伝導率の間にある有機材料である。有機半導体は、単分子、短鎖オリゴマーおよび長鎖ポリマーの形態を取ることができる(例えば、芳香族炭化水素など(半導電性の小分子としてのペンタセン、アントラセンおよびルブレン、ならびに、半導体オリゴマーおよび半導体ポリマーとしてのポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、F8BT、ポリアセチレンおよびそれらの誘導体などが含まれる))。
【0003】
ポリマーOSC(オリゴマーおよびポリマー形態での有機半導体)における電子キャリアは、電子がπ電子雲の重なりを介して移動することを可能にするπ電子および不対電子を含み、一方で、電荷移動錯体では、準安定な不対電子が電荷キャリアである。OSCにおける別の電荷移動機構はまた、電子ドナー分子を電子アクセプター分子と対にすることによって得られる。この分野で使用される用語によれば、電流は、電子(これは負のために「n」と表示される)または「正孔」(これは正のために「p」と表示される)の移動によって生じる。n型半導体材料またはp型半導体材料とそれぞれ呼ばれる電子または正孔の存在が、半導体の何らかの導電性のための基礎である。n型半導体の領域と、p型半導体の領域との間での接合により、様々な半導体型電子デバイスのために不可欠である電場または電子バンドオフセットが生じる。
【0004】
半導体の固有的電気特性を、化学的不純物を半導体に対して導入すること、すなわち、ドーピングとして知られているプロセスによって高めることができ、また、調節することができる。
【0005】
電気伝導率の具体的な増大を達成するのではなく、むしろ、効果色、形態学、イオン移動および他の物理化学的現象を達成することを伴って、少量の1つの物質を母材の別の物質の中に混合することを示すために使用される、半導体に関連しての用語「ドーピング」の文献中でのいくつかの存在とは異なり、本明細書中で使用され、この技術分野において知られている用語「ドーピング」は、電気的ドーピングが何ら生じない一般的な「混合」とは対照的に、ドーピングにより、ドープされた半導体材料における電荷キャリア密度の強化がもたらされる電気的ドーピングのプロトコルをもっぱら示す。
【0006】
ドーパントを、その電気伝導率を改変するように半導体物質の調製に加えることができる。ドーパントの添加は、いくつかの場合には、ある種の金属に近い電気伝導率を示すOSCをもたらすことができる。ドーパントの種類に依存して、半導体のドープされた領域は、電子または正孔の数が変化する。用語「n+」がn型ドーパントのために使用され、用語「p+」がp型ドーパントのために使用される。不純物の量における密度差はまた、小さい電場を、非平衡の電子または正孔を加速するために使用される領域において生じさせる。
【0007】
有機半導体の電気伝導率はドーピングによって強く影響される。有機半導体のマトリックス材料は、良好な電子ドナー特性を有する化合物、あるいは良好な電子アクセプター特性を有する化合物から構成され得る。したがって、どのような半導体へのドーピングも、特に、OSCへのドーピングは、主に電荷キャリア密度を高めることによって、したがって、またいくつかの場合には、有効電荷キャリア易動度を高めることによって、半導体の電子性能に対する影響を有する。
【0008】
ドーピングによる永続的な改変に加えて、半導体の導電率/抵抗を、電場または他の外部エネルギー源(例えば、電磁エネルギー(光)、熱エネルギー(熱)および磁気など)を適用することによって動的に改変することができる。半導体材料の領域における抵抗/導電率を外部エネルギー源の適用により動的に制御することができることはおそらく、半導体の大きな適用可能な特徴の1つである。この可能性は、幅広い様々な半導体デバイス(例えば、トランジスタおよびダイオードなど)の開発に至っている。動的に制御可能な導電率を有する半導体デバイス(例えば、トランジスタなど)は、マイクロプロセッサーのような集積回路デバイスの基本構成要素である。これらの「能動型」半導体デバイス(トランジスタ)は、完全な電子回路を作製するために、半導体材料からもたらされる受動型部品(例えば、コンデンサーおよび抵抗器など)と組み合わされる。
【0009】
n型およびp型ドーピングによる導電率の制御は、低電圧かつ効率的な有機発光ダイオード(OLED)の実現において重要であることが判明している。高品質かつ安定な電気的ドーピングの研究はこれまで主に、蒸気拡散および蒸着によって、小さいπ共役型分子に集中しているが、溶液処理された共役型ポリマーのドーピングに対しては、限られた関心しか向けられていない。有用な意図的p−ドーピングの最初の報告の1つでは、フッ素化TCNQ(テトラフロロテトラシアノ−キノジメタン、F−4−TCNQ)[1]が使用された。それ以降、フッ素化TCNQは、商業的に使用されるための唯一のπ共役型p−ドーパントであるようである[2]。
【0010】
OSCのためのドーパントの分野、および、OSCをドープする方法を拡大することを目指したいくつかの研究が発表されており、例えば、米国特許第6908783号および同第7151007号、ならびに、米国特許出願公開第20050040390号、同第20050061232号、同第20050121667号、同第20050139810号、同第20070145355号、同第20070215863号および同第20070278479号に開示されている。
【0011】
電子移動プロセスによって、強い電子アクセプター、例えば、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6−テトラフルオロテトラシアノ−1,4−ベンゾキノンジメタン(F−4−TCNQ、下記のスキーム1を参照のこと)などが、いわゆる正孔を電子ドナー様母材(正孔輸送材料)において生じさせ、この場合、その数および易動度のために、母材の伝導率が比較的大きく変化することが広く知られるようになってきている[1;3]。例えば、N,N’−ペルアリール化ベンジジンのTPD、または、N,N’,N”−ペルアリール化星形化合物(4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDATA、スキーム1を参照のこと)を含む)、および、ある種の金属フタロシアニン(例えば、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が、正孔輸送特性を有するマトリックス材料として知られている。

【0012】
以前に研究された化合物は、ドープされた半導体有機層の製造、または、この種のドープ層を有する好適な電子部品の製造における工業的使用のためには欠点を有している。これは、大型の工業的製造プラントにおける製造プロセスまたは工業的規模での製造プロセスが必ずしも常に、十分に精密に制御され得るとは限らないからである。このことは、所望される製品品質を得るために、プロセス内における大きい制御費用および調節費用をもたらすか、または、製品の望ましくない許容範囲をもたらす。
【0013】
加えて、以前から知られている有機ドナーの使用における欠点が、電子部品構造物(例えば、発光ダイオード(OLED)、電界効果トランジスタ(FET)または太陽電池そのものなど)に関して存在する。これは、ドーパントの取り扱いにおける前記の製造困難さにより、電子部品における望ましくない不均一性または電子部品の望ましくない経時影響が生じ得るからである。
【0014】
しかしながら、同時に、使用されるべきドーパントが、特定の適用のために好適な適切な電子親和性および他の特性を有することを調べるように気を付けなければならない。これは、例えば、ある種の条件の下では、ドーパントはまた、有機半導体層の導電率または他の電気特性を決定するために役立つからである。
【0015】
各種フラーレンおよびそれらの誘導体が、OSCマトリックスのための物質として、ならびに無機半導体の表面をドープするための物質としての両方で、半導体およびOSCに関連して使用されている。
【0016】
例えば、米国特許第7358538号は、フラーレンをOSCマトリックスとして含有する多数の正孔注入層を有する有機発光デバイスであって、層状構造が、外部回路に対する電気接点として働く電気伝導性層、および、導電性層と、正孔輸送層との間に挟まれたフラーレン層を含む二層化構造を含む有機発光デバイスを教示する。
【0017】
米国特許出願公開第20070278479号は、各種フラーレンが、有機金属ドーパント(例えば、ビス(2,2’−ターピリジン)ルテニウムなど)によってその後にドープされるOSC材料を構成する、有機半導体のn−ドーピングを教示する。
【0018】
Wobkenberg他[4]は、高性能な電子輸送電界効果トランジスタおよび集積回路のためのOSCマトリックスとして使用されるフッ素含有C60フラーレン誘導体を教示する。
【0019】
Liming Dai他[5]は、導電性ポリマーのp−ドーピングのために使用される、すなわち、デンドリマー様分子構造をもたらす(スルホン酸化)分子のためのキャリアとしてのC60球状フラーレンの使用を教示する。この場合、フラーレンはデンドリマーの中心コアを提供し、したがって、電気活性なスルホン酸分子のための物理的キャリアとして作用する。
【0020】
米国特許第7371479号は、プロトン(正に荷電した水素原子、すなわち、H)導体として使用することができ、したがって、電気化学的デバイスとして使用することができる、Liming Dai他によって記載されるフラーレン誘導体と類似するフラーレン誘導体を、出発物質としてのハロゲン化フラーレンから製造するための方法を教示する。
【0021】
Sque他[6]は、フラーレン誘導体が、分子から半導体の最上表面への電荷移動を誘導するために、無機半導体層の最上表面に付け加えられるドーピング方法、および、この方法を使用する半導体デバイスを教示する。
【0022】
Rincona他[7]は、ポリチオフェン(PT)と、C60化合物およびC60(OH)24〜28化合物との均質な偏析混合物から作製される分子皮膜の電気特性および光学特性を報告する。この論文は、C60(OH)24〜28が、効率的な太陽電池運転のために要求される高品質な皮膜を可能にするために、PEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホナート)、2つのイオノマーのポリマー混合物)と、C60系皮膜との間における緩衝層として重要であることを示す。
【0023】
Sariciftci他[8]は、半導体ポリマーと、各種フラーレンとの間での励起状態における電荷移動をそれらの混合皮膜において使用すること、および、太陽電池適用におけるそれらの使用を教示する。
【発明の概要】
【0024】
本発明の1つの局面によれば、有機半導体材料を、共有結合により結合する少なくとも1つの電子吸引置換基を有し、かつ、所定の最低空分子軌道(LUMO)、すなわち、有機半導体材料の最高被占分子軌道(HOMO)からLUMOへの電子移動を可能にするために十分であるLUMOを有するフラーレン誘導体によりドープすることを含む、半導体材料を製造する方法が提供される。
【0025】
いくつかの実施形態において、ドープすることは、有機半導体材料を溶液中でフラーレン誘導体と混合して、その結果、それらの混合物を得るようにすることを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記方法はさらに、混合物を、スピンコーティング、印刷、蒸発、浸漬およびドクターブレーディングからなる群から選択される手順によって基体に適用することを含む。いくつかの実施形態において、ドープすることが、蒸着によって達成される。
【0027】
いくつかの実施形態において、ドープすることは、有機半導体材料およびフラーレン誘導体を2つの別個の供給源から共蒸発させ、基体上に堆積させることを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、ドープすることは、フラーレン誘導体を有機半導体材料の事前に適用された層に蒸着することを含む。
【0029】
本発明の別の局面によれば、共有結合により結合する少なくとも1つの電子吸引置換基を有し、かつ、所定の最低空分子軌道(LUMO)、すなわち、有機半導体材料の最高被占分子軌道(HOMO)からLUMOへの電子移動を可能にするために十分であるLUMOを有するフラーレン誘導体によりドープされる有機半導体材料を含む半導体組成物が提供される。
【0030】
いくつかの実施形態において、組成物は液体形態である。
【0031】
本発明の別の局面によれば、本明細書中に記載される組成物を含む電子デバイスが提供される。
【0032】
いくつかの実施形態において、デバイスが、電気光学デバイス、太陽電池(光起電性セル)、集積回路の部品、有機発光ダイオード(OLED)、薄膜トランジスタ(TFT)、電界効果トランジスタ(FET)、フラットパネルディプレーデバイスにおけるTFT、液晶ディスプレー(LCD)デバイスにおける素子、高周波識別(RFID)デバイスおよび検出器/センサーデバイスからなる群から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態において、誘導体化フラーレンのLUMOのエネルギー準位が、非誘導体化フラーレンのLUMOのエネルギー準位よりも少なくとも0.5eV低い。
【0034】
いくつかの実施形態において、LUMOのエネルギー準位が有機半導体材料のHOMOのエネルギー準位を2eV未満で超える。
【0035】
いくつかの実施形態において、LUMOのエネルギー準位が有機半導体材料のHOMOのエネルギー準位を1eV未満で超える。
【0036】
いくつかの実施形態において、LUMOのエネルギー準位が有機半導体材料のHOMOのエネルギー準位を0.4eV未満で超える。
【0037】
いくつかの実施形態において、有機半導体材料対フラーレン誘導体の比率が、約50対50重量パーセントから、約99.99対0.01重量パーセントにまで及ぶ。
【0038】
いくつかの実施形態において、有機半導体材料対フラーレン誘導体の比率が、約80対20重量パーセントから、約99.99対0.01重量パーセントにまで及ぶ。
【0039】
いくつかの実施形態において、有機半導体材料対フラーレン誘導体の比率が、約90対10重量パーセントから、約99.99対0.01重量パーセントにまで及ぶ。
【0040】
いくつかの実施形態において、フラーレン誘導体は下記の一般式Iを有する:

式中、nおよびmは、このフラーレンにおけるR置換基に対する炭素原子の比率を表す整数である;
Rは電子吸引置換基であり、例えば、ハロゲン、擬ハロゲン、ハロアルキル、ハロ脂環、ハロアリール、ハロヘテロアリール、カルボニル、エステル、アルデヒドおよびそれらの任意の組合せであるが、これらに限定されない;かつ
フラーレンが、球状フラーレン、管状フラーレン、線状フラーレンおよび平面状フラーレンからなる群から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態において、電子吸引置換基がハロゲンであり、フラーレン誘導体がハロゲン化フラーレン誘導体(HFD)である。
【0042】
いくつかの実施形態において、ハロゲン化フラーレン誘導体はハロゲン化球状フラーレン誘導体である。
【0043】
いくつかの実施形態において、ハロゲン化球状フラーレン誘導体はC6036である。
【0044】
いくつかの実施形態において、ハロゲン化球状フラーレン誘導体はC7054である。
【0045】
いくつかの実施形態において、有機半導体材料が、フェナントロリン、置換フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、トリアリールアミン、置換トリアリールアミン、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリビニルカルバゾール−シンナマート(PVK−Cin)、ポリ[−ビス(4−ブチルフェニル)−ビス(フェニル)ベンジジン](ポリTPD)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、アントラセン、テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン、p−クアテルフェニル(p−4P)、p−キンクエフェニル(p−5P)、p−セキシフェニル(p−6P)、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール系化合物、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(2−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−二置換アニリン)、1,3,5−トリス(ジフェニルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−(9−エチルカルバジル−3)エチレン)ベンゼン、4,4’−ビス(n−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル、銅(ii)フタロシアニン、トリ−p−トリルアミン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、8−ヒドロキシキノリン亜鉛、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム、ポリアズレン、ポリピレン、ピラゾリン誘導体;ポリセレノフェン、ポリベンゾフラン、ポリインドール、ポリピリダジン、ベンジジン誘導体、スチルベン誘導体、トリアジン誘導体、置換メタロポルフィン誘導体または金属非含有ポリフィン誘導体、フタロシアニン誘導体、フルオロフタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、フルオロナフタロシアニン誘導体およびフラーレン誘導体からなる群から選択される。
【0046】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0047】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0048】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0049】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0050】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。
【0051】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0052】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0053】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
特許出願のファイルはカラーで描かれた少なくとも一枚の図面を含む。このカラー図面を有する特許出願公開物は要求および必要な費用の支払いにより特許庁により提供されるだろう。本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面および画像を参照して説明する。特に詳細に図面および画像を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面および画像について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0055】
【図1A−1B】図1A−1Bは、還元波の開始またはLUMO準位(2つの化合物について図1Aにおいて矢印によって表される)が示される、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステルのサイクリックボルタンモグラム(PCBM、図1Aにおける破線)および例示的な誘導体化フラーレンC6036のサイクリックボルタンモグラム(図1Aにおける実線)、ならびに、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)のサイクリックボルタンモグラム(P3HT、図1Aにおける挿入図)、そして、単離された化合物のC60、PCBM、C6036およびP3HTのHOMOおよびLUMO準位(図1Bにおける実線)を示す。
【0056】
【図2A−2B】図2A−2Bは、10重量%のC60と混合されたP3HTについて得られる光吸収スペクトルで、新品状態のP3HTについて得られるスペクトル(図2Aにおける実線)に対して右側傾斜部の曲線重なりによって正規化されるスペクトル(図2Aにおける破線)、および、10重量%の例示的な誘導体化フラーレンC6036によりドープされたP3HTの吸収スペクトルで、新品状態のP3HTについて得られるスペクトル(図2Bにおける実線)に対して右側傾斜部の曲線重なりによって正規化されるスペクトル(図2Bにおいて破線)であり、これら2つの吸収スペクトルの差(図2Bの挿入図におけるΔOD曲線)が示され、この差は、ドーピングによって誘導される電荷移動事象の場合に予想されるようなより長波長側への振動強度における変化に起因すると考えられる電荷−ポーラロン誘導の吸収を暗示する。
【0057】
【図3A−3B】図3A−3Bは、ドーピングにより誘導される高まった可視光吸収を示す2組のバイアルのカラー写真である:バイアル番号1はC60(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号2はP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号3は、C60(2mgまたは10重量%)と混合されたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号4は、C60(0.2mgまたは1重量%)と混合されたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号5は、C60(0.002mgまたは0.01重量%)と混合されたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号6は、例示的な誘導体化フラーレンC6036(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号7はP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号8は、C6036(2mgまたは10重量%)によりドープされたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号9は、C6036(0.2mgまたは1重量%)によりドープされたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;およびバイアル番号10は、C6036(0.002mgまたは0.01重量%)によりドープされたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する。
【0058】
【図4】図4は、フォトルミネセンス量子効率(PLQE)が、P3HTにおけるC60(破線および丸記号)および例示的な誘導体化フラーレンC6036(実線および四角記号)について測定されるときの重量パーセントで表されるフラーレンの量の関数として示され(新品状態のP3HTのPLQEは6%であった;データは示されず)、また、C6036は、C60の影響と比較して、はるかにより速く発光を消光することが示される比較プロットを示す。
【0059】
【図5】図5は、OSCに基づくダイオードデバイスにおいて測定されるときの、P3HT(実線)およびドープされたP3HT(破線)に特徴的な比較される電流−電圧(I−V)プロットを示し、新品状態のP3HTについて観測される典型的なターンオン電圧、および、デバイスが、ほとんど完全な短絡特徴を、10重量パーセントの例示的な誘導体化フラーレンC6036によりドープされたP3HTデバイスにおいて示したことが示される。
【0060】
【図6A−6B】図6A−6Bは、新品状態のP3HT(図6Aにおいて点線および三角記号)、0.1重量パーセントのC60と混合された新品状態のP3HT(図6Aにおいて破線および四角記号)、および、0.1重量パーセントのC6036によりドープされた新品状態のP3HT(図6Aにおいて実線および丸記号)に基づく3つのTFTデバイスの、VGS=0VおよびVGS=−20Vのゲート電圧で使用される出力特性、ならびに、10重量パーセントのC60と混合されたP3HT(図6Bにおいて破線および四角記号)、および、10重量パーセントのC6036によりドープされた新品状態のP3HT(図6Bにおいて実線および丸記号)に基づくTFTデバイスの出力特性を示し、C60との混合が、C6036がTFTデバイスにおいてドーパントとして使用されるときに認められる顕著な影響と比較して、TFT特性に対するわずかな影響(これはその重量パーセントとは無関係である)を有することが示され、さらに、P3HTにおいて10%のC6036によりドープされたサンプルの導電率が、ON状態では、新品状態のP3HTのTFTの導電率よりも3桁大きいことが示される。
【0061】
【図7】図7は、例示的な誘導体化フラーレンC6036を本発明のいくつかの実施形態に従って使用する有機薄膜のp型ドーピングの研究において使用された材料であるトリアリールアミン、BCP、ポリTPD、PVK−Cinおよびコンジュゲート化ペンタペプチドの比較されるエネルギー準位図および化学構造を示し、サイクリックボルタンメトリーを使用して求められ、インジウムスズ酸化物(ITO)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、CaおよびAlの値と比較されるときのHOMO−LUMOの値が示される。
【0062】
【図8】図8は、ITO/PEDOT−70nmポリマー−銀のダイオード構造を使用して測定される電流対電圧プロットを示し、架橋トリアリールアミン(破線、丸記号)、ポリTPDと等重量でブレンド混合された架橋PVK−Cin(破線、四角記号)、および、10重量%のC6036が添加された同じ材料(ぞれぞれの記号において実線)の特性が示される。
【0063】
【図9】図9は、電子阻止層およびエミッター層の両方において現れるPVKのカルバゾールユニットに主として基づく二重層LEDについての印加電圧の関数として電流および輝度が示される電流対電圧(C−V)プロットを示し、この場合、約20nmの非ドープPVK−Cinからなる電子阻止層を有するLEDについて測定される結果が四角記号によって示され、PVK−Cin/ポリTPDの1:1の混合物にドープされる10重量%のC6036の約70nmからなる電子阻止層を有するLEDについて測定される結果が丸記号によって示され、発光するコンジュゲート化ペンタペプチド層が約60nmの厚さで保たれた。
【0064】
【図10】図10は、電子阻止層(EBL)が70nmであり、コンジュゲート化ペンタペプチドエミッター(20nm)が溶液からスピンコーティングされ、その後、正孔阻止層(HBL)としての30nmのBCPおよび最上部の接点金属(Ca/Al)が蒸発させられた3層ハイブリッドLEDについて得られた結果の電流対電圧(C−V)プロットを示し、電流および輝度が、重なる線における黒塗り記号および白抜き記号でそれぞれ示され、これに対して、破線および四角記号はデバイス効率をcd/Aで表す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、塗布された材料に関し、限定的ではないが、より具体的には、有機半導体の新規なドーパントに関する。
【0066】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、または実施例において例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0067】
有機半導体(OSC)の電気物理的特性が、無機半導体において価電子帯に対応するその最高被占分子軌道(HOMO)の値と、無機半導体において伝導帯に対応するその最低空分子軌道(LUMO)の値とによって表される。HOMOおよびLUMOのエネルギーの差が無機半導体のバンドギャップに等しく、これは分子または系の励起性の尺度として役立つ。小さいバンドギャップによって特徴づけられる系では、より少ない量のエネルギーが励起のために要求される。一般に、バンドギャップは、熱的影響(例えば、膨張、配向および秩序など)のために、圧力および温度に依存する。温度および圧力のこの依存性が、無機半導体と比較して、OSCでより顕著である。
【0068】
無機半導体については、半導体と絶縁体との区別が典型的には、バンドギャップに関して定義される。半導体は、低いバンドギャップを有する一種の絶縁体と見なすことができ、一方で、より大きいバンドギャップ(通常的には3eVを超えるバンドギャップ)を有する絶縁体は半導体とは見なされず、また、一般には、半導電性挙動を実用的な条件のもとで示さない。有機半導体(OSC)については、典型的には、結合共役またはπ電子の存在が、材料を半導体として定義するために使用される。輸送(電流または電荷易動性)のための電子利用性が、特にOSCでは、材料の電気物理的分類を決定する際には役割を果たすことが理解される。
【0069】
本明細書中上記で述べられたように、OSCにおける電子(または正孔)の利用性がドーピングによって影響を受け得る。OSCは、系のレドックス状態を変化させて、その結果、電子を半導電性系内の伝導性軌道に押し込むようにするための化学的反応物を加えることによってドープすることができる。OSCは、化学的ドーピングによって、すなわち、OSCを酸化剤(例えば、ヨウ素または臭素など)または還元剤(例えば、アルカリ金属など)にさらすことによって達成される伝搬性レドックス反応によってドープすることができる。OSCはまた、電気化学的ドーピング、すなわち、荷電した化学種(例えば、電解質におけるイオンなど)が電子付加(n−ドーピング)または電子除去(p−ドーピング)の形でOSC内に進入するように電気的電位差を加える電気化学的ドーピングを受けることができる。
【0070】
p型ドーピングが、電子をその基底状態(非励起状態)においてOSCから受け入れることができる電子アクセプター化学種を加えることによって達成される。すなわち、アクセプターのLUMOが電子をOSCのHOMOから受け取る。電子を基底状態において受け入れるドーパントの能力は主として、OSCのHOMOと、ドーパントのLUMOとの間におけるエネルギー差に依存する。これらの判定基準は、アクセプターのLUMOがOSCのLUMOの下側にあることを必要とするだけである励起状態において電子が移される場合と基本的に異なる。電子をOSCのHOMOから受け取るアクセプターは、過剰な正孔をOSCに与え、この過剰な正孔はOSCの正孔キャリア濃度(p0)を増大させ、それにより、p型半導体を生じさせる。n型半導体とは対照的に、p型半導体は、電子濃度よりも大きい正孔濃度を有する。本明細書中で使用される表現「p型」は、OSCにおける正孔の正電荷を示す。p型半導体において、正孔が多数キャリアであり、一方で、電子は少数キャリアである。
【0071】
本質的に、OSCへのドーピングは、電荷キャリア密度の上昇を達成し、結果として、OSC材料における有効電荷キャリア易動度にも影響を及ぼし得るプロセスである。電荷キャリア密度および電荷キャリア易動度のこの上昇は、ドーパントが、LUMOを、所定の準位で、すなわち、OSC材料のHOMOからドーパントのLUMOへの電子移動を可能するために十分である準位で有するときに達成される。
【0072】
フラーレン系化合物は典型的には、OSCのLUMO準位の下側にあるLUMO準位を有しており、したがって、(典型的な太陽電池適用の場合のように)知られている励起状態アクセプターである。
【0073】
本発明を構想している間に、本発明者らは、ハロゲン化フラーレン、および、電子吸引基が結合している他のフラーレン誘導体の基底状態電子受け入れ特性を検討し、また、これらの電子アクセプター化学種がOSCのための非常に効果的な基底状態アクセプターまたはp型ドーパントとして使用され得ることを想定している。
【0074】
これまで、ハロゲン化フラーレン誘導体、および、電子吸引基が結合している他のフラーレン誘導体は、バルク半導体の電子ドーパントとして使用されず、有機半導体では全く使用されなかった。
【0075】
本発明者らは、そのようなフラーレン誘導体が、主として電荷キャリア密度および有効電荷キャリア易動度を高めることによって、十分なLUMO準位を様々なOSCに関して有するように、したがって、半導体の電子性能に対する有益な効果を有するように、OSCのドーピングのための使用のために個々に合わせられ得ることを仮定した。本発明をさらに構想している間に、溶液処理されたOSCのp型ドーピングが、可溶性または分散可能な好適に誘導体化されたフラーレン系ドーパントを用いてより効果的に達成され得ること、したがって、溶液処理されたOSCのp型ドーピングでは、面倒な電気化学的ドーピング法、レドックスドーピング法または気相系ドーピング法が回避されることが実現された。
【0076】
本発明を実施に移している間に、フッ素化C60フラーレン誘導体C6036[9]が、例示的なp−ドーパントして選択された。この分子は、多数の、それにもかかわらず、制御可能な数のフッ素原子を有しており、これらのフッ素原子により、C60コアのエネルギー準位の位置における大きい変化が誘導される。C60コアは、いくつかのアクセプター準位を有することが知られている。
【0077】
さらに本発明を実施に移している間に、C60に関してのC6036のLUMO準位の変化が、共役ポリマー型OSC(例えば、溶液処理されたポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(P3HT)など)との基底状態相互作用を著しく増強し、したがって、ポリマーの効率的なドーピングをもたらすこと、すなわち、P3HTのHOMOからC6036のLUMOへの電子移動をもたらすことが見出された。この例示的なOSC系は首尾よく調製され、また、有益なドーピング効果が、吸収スペクトル、PL消光および電界効果トランジスタ測定を使用して特徴づけられ、したがって、これらにより、誘導体化フラーレン(例えば、フッ素化C60など)が、溶液処理されたポリマーに基づくものを含めて、有機電子機器のための新しいクラスの調節可能なドーパントして首尾よく使用され得るという証拠が提供された。
【0078】
6036はまた、他のOSC(例えば、トリアリールアミン、ポリビニルカルバゾール−シンナマート(PVK−Cin)およびポリ[−ビス(4−ブチルフェニル)−ビス(フェニル)ベンジジン](ポリTPD)など)のためのp型ドーパントとして効果的に使用され得ることがさらに示されている。
【0079】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、製造プロセスにおいて取り扱いがより容易であり、かつ、その有機半導体材料が再現性よく製造されることが可能である電子部品をもたらす、有機半導体をドープするためのフッ素化フラーレン系ドーパントに関する。
【0080】
したがって、本発明の1つの局面によれば、半導体材料を製造する方法(プロセス)が提供される。この方法は、有機半導体材料(OSC)を、共有結合に結合する少なくとも1つの電子吸引置換基を有するフラーレン誘導体によりドープすることを含む。
【0081】
用語「ドープする」は、本発明の実施形態に関連して使用される場合、半導体の電気的ドーピングのプロセス、すなわち、自由な電荷キャリアの数を増大させ、結果として、ドープされた半導体材料における電荷キャリア密度の上昇が達成されるプロセスをもっぱら示す。本明細書中で定義されるように、用語「ドープする」は、電気的ドーピングを達成することを伴わない、少量の1つの物質の、多量の別の物質の中への一般的な「混合」とは対照的である。
【0082】
本明細書中で使用される用語「p−ドーピング(p−ドープする)」は、弱く結合した外側の電子を半導体材料から受け入れることができる物質(「ドーパンント」)による半導体のドーピングを示す。したがって、p−ドーピング(この場合、「p」は正を意味する)は、「正孔」または正電荷を半導体において形成するアクセプター材料またはp型ドーパントにより半導体をドープするプロセスである。
【0083】
本明細書中で使用される表現「有機半導体材料」または「有機半導体「OSC」」は、半導体特性を有する有機材料、すなわち、電気伝導率が、典型的な金属と、絶縁性化合物の電気伝導率の間にある有機材料を示し、これには、(オリゴマーおよびポリマーとは対照的に)小さいπ共役分子および/または芳香族分子あるいはそれらの混合物の実質的に1つの化学種の材料、π共役炭化水素および/または芳香族炭化水素の短鎖オリゴマーおよび長鎖ポリマー、ならびにそれらの混合物およびコポリマーが含まれる。
【0084】
コア有機半導体分子(ポリマーにおけるモノマーまたは非ポリマー化合物)は、本発明の実施形態によれば、その1つまたは複数の位置においてさらに置換され得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハリド、ヒドロキシルおよびアルコキシが可能であり、これらの用語は本明細書中で定義される通りである。
【0085】
芳香族分子の非限定的な例には、フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、ペンタセン、アントラセン、ルブレン(5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン)およびそれらの誘導体が含まれる。
【0086】
π共役ポリマーおよび/または芳香族ポリマーの非限定的な例には、トリアリールアミンおよび置換トリアリールアミン;ポリ(チオフェン)およびポリ(置換チオフェン)、例えば、例示的なポリ(3−ヘキシルチオフェン)およびポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)など;ポリビニレンおよびポリ(置換ビニレン)、例えば、例示的なポリ(p−フェニレンビニレン)など;ポリビニルカルバゾール(PVK)およびポリビニルカルバゾール−シンナマート(PVK−Cin);ならびに、他の例示的な共役ポリマー、例えば、ベンジジン誘導体(例えば、ポリ[−ビス(4−ブチルフェニル)−ビス(フェニル)ベンジジン](ポリTPD)など)、ポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−co/alt−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、ポリアセチレン、ならびに、それらの誘導体、コポリマー、交互ポリマーおよび混合物が含まれる。
【0087】
OSC材料の他の非限定的な例には、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、アントラセン、テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン、p−クアテルフェニル(p−4P)、p−キンクエフェニル(p−5P)、p−セキシフェニル(p−6P)、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール系化合物、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(2−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−二置換アニリン)、1,3,5−トリス(ジフェニルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−(9−エチルカルバジル−3)エチレン)ベンゼン、4,4’−ビス(n−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル、銅(ii)フタロシアニン、トリ−p−トリルアミン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、8−ヒドロキシキノリン亜鉛、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム、ポリアズレン、ポリピレン、ピラゾリン誘導体;ポリセレノフェン、ポリベンゾフラン、ポリインドール、ポリピリダジン、ベンジジン誘導体、スチルベン誘導体、トリアジン誘導体、置換メタロポルフィン誘導体または金属非含有ポリフィン誘導体、フタロシアニン誘導体、フルオロフタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、フルオロナフタロシアニン誘導体およびフラーレン誘導体が含まれる。
【0088】
OSC材料としての使用のために好適な他の共役した、または部分共役した発光性有機材料には、ポリ−フェニレン−ビニレン(PPV)、置換PPVおよびPPV誘導体(例えば、ジアルコキシ誘導体もしくはジアルキル誘導体、および/または、関連したPPVコポリマー、ポリ(2−メトキシ−5(2’−エチル)ヘキシルオキシフェニレン−ビニレン(MEH−PPV)など)、ポリフルオレンおよび/またはポリフルオレンセグメントを取り込むコポリマーが含まれる。代替材料には、有機の分子状発光材料が含まれ、例えば、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、LDS−821、あるいは、この技術分野において知られているような任意の他の小さい昇華分子または共役ポリマーエレクトロルミネセンス材料などが含まれる。それにもかかわらず、OSC材料としての使用のために好適な他の好適な発光性有機材料が、例えば、国際公開WO90/13148および米国特許第4539507号において見出され得る(それらの内容は参照によって本明細書中に組み込まれる)。デバイスによって放射される光は可視スペクトル範囲(400nm〜800nm)の範囲内または範囲外であり得る。
【0089】
共有結合により結合する少なくとも1つの電子吸引置換基を有するフラーレン誘導体が、本明細書中で議論されるように、そのエネルギー準位に関して、選択された有機半導体材料に適するように選択される。
【0090】
本明細書中で使用される用語「フラーレン」は、炭素同素体の一群に属する化合物、すなわち、炭素から完全に構成される分子の一群に属する化合物を記述する。種々のフラーレンが、連結した五角形環、六角形環および七角形環によって特徴づけられ、この場合、非六角形の構成要素が化合物またはその一部分の凹性または非平面性に関わる。本発明の実施形態によれば、フラーレンは下記の形態を取ることができる:中空球体(「バッキーボール」またはバッキーボールクラスター、これは本明細書中では「球状フラーレン」と呼ばれる)、例えば、C60など;球状のコアを取り囲む多数の球状炭素層に基づく球状の分子実体である「ナノオニオン」;球状フラーレンと、管状フラーレンとの間における中間の形態学を構成する卵形(卵形状)フラーレン;管状(「バッキーチューブ」または円筒状)フラーレン、これは「カーボンナノチューブ」として知られており、これには、ただ1つだけの壁または多数の壁を有する閉じた中空チューブまたは開いた中空チューブ、および、異なる厚さの壁を有するメガチューブが含まれる;鎖様(線状)構造を含むポリマー、二次元ポリマーおよび三次元ポリマー、鎖および平面(例えば、グラフェンなど);連結した「球−鎖」多量体フラーレン、例えば、炭素鎖によって連結される2つの球状フラーレンを有する二量体など;およびフラーレン環。
【0091】
表現「球状フラーレン」は、本明細書中で使用される場合、炭素から実質的になることによって特徴づけられ、かつ、閉じた球状構造を形成するフラーレン化合物で、例えば、20個以上の炭素原子を有するフラーレン化合物を示す。したがって、球状フラーレンは、いくつかの実施形態によれば、20個、24個、26個、28個、30個、32個、34個、36個、38個、40個、42個、44個、46個、48個、50個、52個、54個、56個、58個、60個、62個、64個、66個、68個、70個、72個、74個、76個、78個、80個、82個、84個、86個、88個、90個、92個、94個、96個、98個、100個、102個、104個、106個、108個、110個、112個、114個、116個、118個、120個、122個、124個、126個、128個、130個、132個、134個、136個、138個、140個、142個、144個、146個、148個、150個、152個、154個、156個、158個、160個、162個、164個、166個、168個、170個、172個、174個、176個、178個、180個、182個、184個、186個、188個、190個、192個、194個、196個、198個、200個、202個、204個、206個、208個、210個、212個、214個、216個、218個、220個、222個、224個、226個、228個、230個、232個、234個、236個、238個または240個の炭素原子あるいはそれ以上を炭素のすべての可能な配置およびすべての可能な対称性関連異性体(非同形形態)において有することができる。フラーレンの命名法および分類に関するさらなる情報については、Cozzi,F.他、著作権、2005年、IUPAC:Pure Appl.Chem.、第77巻、第5号、843頁〜923頁(2005)を参照のこと。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、球状フラーレンは、60個の炭素原子からなるC60「バッキーボール」フラーレンである。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、フラーレンが70個の炭素原子からなる。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態によれば、フラーレン誘導体は下記の一般式Iによって表すことができる:

式中、nおよびmは、このフラーレンにおけるR置換基の数に対する炭素原子の数の比率を表す整数である;かつ
Rは、本明細書中で詳述されるように、フラーレンの電子吸引置換基、または、電子吸引基を有する成分である;かつ
フラーレンが、球状フラーレン、管状フラーレン、線状フラーレンおよび平面状フラーレンからなる群から選択される。
【0095】
表現「電子吸引置換基」または表現「電子吸引基」は、それらの標準的な意味として、当業者に広く知られており、本明細書中では交換可能に使用され、そのような基は、J.March、Advanced Organic Chemistry、第3版、発行者:John Wiley&Sons,Inc.(1985)に記載されるように、この基が分子において同じ位置を占めたならば、電子を、水素原子が引き寄せるよりも多く自身に引き寄せる官能基である。
【0096】
例示的な電子吸引置換基には、ハロゲン、擬ハロゲン、ハロアルキル、ハロ脂環、ハロアリール、ハロヘテロアリール、カルボニル、エステル、−C(=O)Hおよびそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
いくつかの実施形態によれば、電子吸引置換基/電子吸引基は、(フラーレンコアに直接に結合する)ハロゲンであり、または、ハロ置換基(例えば、ハロアルキル、ハロ脂環、ハロアリールおよびハロヘテロアリールなど)に富んでおり、したがって、フラーレン誘導体は本明細書中ではハロゲン化フラーレンとして示される。
【0098】
用語「ハロゲン化(された)」は、フラーレンに関して本明細書中で使用される場合、少なくとも1つの共有結合したハロゲン原子をその構造に含む化合物を記述する。
【0099】
「ハロゲン化フラーレン」は、本明細書中で使用される場合、ハロゲン含有置換基だけを有するフラーレン、または、場合により、他のハロゲン非含有置換基をさらに有するフラーレンを包含する。
【0100】
1つの実施形態において、ハロゲン化フラーレンはハロゲン含有置換基だけを含む。
【0101】
本明細書で使用される交換可能に示される用語「ハロ」および「ハリド(ハライド)」は、フッ素、塩素、臭素、または沃素のハロゲン原子を記載し、本明細書においてフルオロまたはフルオリド、クロロまたはクロリド、ブロモまたはブロミドおよびイオドまたはイオジドとも示される。
【0102】
どのようなフラーレンであっても、フラーレンに結合するハロ原子の数は制御可能に変化し得るので、フッ素化フラーレンが本発明の実施形態に従って有機電子機器におけるドーパントの調節可能な一群を構成することが明言される。
【0103】
用語「ハロアルキル」、用語「ハロゲノアルカン」または用語「アルキルハリド」は、本明細書中では交換可能に示されるが、1つまたは複数のハリドによってさらに置換される本明細書中で定義されるようなアルキル基を記述する。ハロアルキルの非限定的な例には、ハロメチル(−CH、式中、iおよびjは、0から3にまで及ぶ整数であり、ただし、i+j=3であり、Xは任意のハリドを意味する)、ハロエチル(−CHi1j1CHi2j2、式中、i1、i2、j1およびj2は、i1+j1=2、i2+j2=3、または、i1+j1+i2+j2=5である整数であり、Xは任意のハリドを意味する)が含まれる。
【0104】
例示的なハロアルキルには、限定されないが、ハロメチル、例えば、クロロメチル(−CHCl)、ジクロロメチル(−CHCl)、トリフルオロメチル(−CF)、トリクロロメチル(−CCl)、クロロフルオロメチル(−CHClF)、ジクロロフルオロメチル(−CClF)およびクロロジフルオロメチル(−CClF)など;ハロエチル、例えば、1,1,1−トリクロロエチル(−CHCCl)、ペンタクロロエチル(−C)および1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエチル(−CCl−CF)など;ならびに、より長いハロアルカンおよびポリマー、例えば、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(−(CFCF)、デカフルオロブタン(−CF−CF−CF−CF)およびポリ(1,1−ジフルオロエテン)(−[CF−CH−)などが含まれる。
【0105】
用語「擬ハロゲン」は、本明細書中で使用される場合、ハロゲンと類似する活性および大きい度合の電気陰性度を示す二元化合物(例えば、シアニド、シアナートおよびチオシアナートなど)を示す。
【0106】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む脂肪族炭化水素を記載する。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子、より好ましくは1個〜10個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個〜10個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの10個までの炭素原子を含むということを意味する。アルキルは置換または非置換でありうる。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハリド、ヒドロキシ、およびアルコキシであることができ、これらの用語は本明細書中で定義される。本明細書中で使用される用語「アルキル」はまた、飽和または不飽和の炭化水素を包含するので、この用語はアルケニルおよびアルキニルをさらに包含する。
【0107】
用語「アルケニル」は、本明細書中に定義されるように、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和なアルキルを記載する。アルケニルは、本明細書において上記に記載されるような1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。
【0108】
用語「アルキニル」は、本明細書中に定義されるように、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる不飽和アルキルを示す。アルキニルは、本明細書において上記に記載されるような1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。
【0109】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシル」は、−OH基を示す。
【0110】
用語「アルコキシ」は、−OR’基を記載し、ここでR’はアルキル、アリール、ヘテロ脂環式またはヘテロアリールである。
【0111】
本明細書中上記の式における整数nおよび整数mは、nが典型的にはmよりも大きくなるようにされ、ただし、例えば、1:1から1:0.01にまで及び得る、または、別の言い方をすれば、1:1から100:1までとして表されるn対mの比率を有する。いくつかの実施形態において、n対mの比率は1:1から20:1にまで及ぶ。n対mの比率はドーパントの半導電性特性およびその電子アクセプター特性に影響を及ぼすので、この比率は、選択された有機半導体材料に合うように事前に決定され得ることが特筆される。
【0112】
本明細書で使用される用語「アミド」は、−C(=O)−NR’R”(式中、R’は本明細書中で定義される通りであり、R”はR’に対して定義される通りである)を示す。
【0113】
本明細書で使用される用語「シアノ」は−C=N基を示す。
【0114】
本明細書で使用される用語「カルボニル」は、−C(=O)R’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)、例えばケトンを示す。
【0115】
用語「エステル」は、−C(=O)−OR’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0116】
用語「アルデヒド」は−C(=O)H基を示す。
【0117】
n対mの比率はフラーレン分子内における「R」置換基の分布の平均比率を表すことがさらに特筆される。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態によれば、一般式Iによって表される例示的なハロゲン化フラーレン誘導体には、限定されないが、C60、C60、C60、C6018、C6020、C6036、C6048、C60(CF18、C60(CF36、C60(CF48、C60CF、C60O、C60O、C60O、C60OおよびC7054が含まれる。
【0119】
ハロゲン化フラーレン誘導体の例には、塩素、臭素およびヨウ素ならびにそれらの組合せによってもまたハロゲン化される化合物が包含され、また、様々な形状およびサイズのフラーレン、ならびにそれらの混合物が包含されることが本明細書中では明言される。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ハロゲン化フラーレン誘導体はC6036である。
【0121】
したがって、電荷キャリア密度および有効電荷キャリア易動度の上昇が、本発明の実施形態によれば、OSCをハロゲン化フラーレン誘導体によりドープすることによって達成され、この場合、ハロゲン化フラーレン誘導体は、LUMOを、所定の準位で、すなわち、前記有機半導体材料のHOMOから前記LUMOへの電子移動を可能するために十分である準位で有するように選択される。
【0122】
本発明の実施形態に関連して、「電子移動を可能するために十分である」は、半導体材料のHOMOに関してドーパントのLUMOのエネルギー準位差の点で十分に近いことを示す。すなわち、ドーパントのLUMOは、半導体材料のHOMOよりも高く(または低く)てもよく、しかし、電荷移動のための通り道を提供するように十分に接近していることである。代替において、ドーパントのLUMOが有機半導体材料のHOMOと同じであることが可能である。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態によれば、フッ素化フラーレン誘導体のLUMOのエネルギー準位がOSCのHOMOのエネルギー準位を約2eV未満で超える。いくつかの実施形態において、フッ素化フラーレン誘導体のLUMOのエネルギー準位がOSCのHOMOのエネルギー準位を約1eV未満で超える。いくつかの実施形態において、フッ素化フラーレン誘導体のLUMOのエネルギー準位がOSCのHOMOのエネルギー準位を約0.4eV未満で超える
【0124】
表1は、いくつかの例示的なフッ素化C60分子の構造およびLUMOの値を示す。

【0125】
いくつかの実施形態において、ハロゲン化フラーレンのLUMOのエネルギー準位が、非ハロゲン化フラーレンのLUMOのエネルギー準位よりも少なくとも0.5eV低い。したがって、ハロゲン化フラーレンのLUMOのエネルギー準位が、非ハロゲン化フラーレンのLUMOのエネルギー準位よりも、例えば、0.5eV低い、0.6eV低い、0.7eV低い、0.8eV低い、0.9eV低い、1.0eV低いことが可能であり、また、2.0eV以上低いことさえ可能である。
【0126】
「非ハロゲン化フラーレン」によって、置換基を何ら有しない裸のフラーレン、または、本明細書中上記で列挙されるハロ含有置換基ではない1つまたは複数の置換基を有するフラーレンが意味される。
【0127】
一般に、本明細書中に記載されるハロゲン化フラーレン誘導体は、ハロ含有置換基に加えて、様々な置換基によって、例えば、本明細書中上記に記載されるような他の電子吸引置換基/電子吸引基(置換または非置換のアルキル、酸素含有基(例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、アルコキシ、アルデヒド、エポキシドおよびペルオキシドなど)、イオウ含有基(例えば、チオール、チオアルコキシ、スルファート、スルフィド、スルホキシドおよびスルホンなど)、窒素含有基(例えば、アミン、アミド、ジアゾおよびアジドなど)および擬ハロゲン(例えば、シアナート、チオシアナート、ローダニド、アジドおよびシアニドなど)など)によって置換され得る。
【0128】
1つの実施形態において、有機半導体材料がポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)であり、フラーレンハロゲン化誘導体がC6036である。
【0129】
いくつかの実施形態において、有機半導体材料がトリアリールアミンであり、フラーレンハロゲン化誘導体がC6036である。
【0130】
いくつかの実施形態において、有機半導体材料がポリビニルカルバゾール−シンナマート(PVK−Cin)であり、フラーレンハロゲン化誘導体がC6036である。
【0131】
いくつかの実施形態において、有機半導体材料がポリ[−ビス(4−ブチルフェニル)−ビス(フェニル)ベンジジン](ポリTPD)であり、フラーレンハロゲン化誘導体がC6036である。
【0132】
それらのそれぞれのHOMOおよびLUMOの理由から本発明の実施形態の関連での使用のために好適である、有機半導体材料およびハロゲン化フラーレン誘導体の対の他の例には、限定されないが、N,N’−ジフェニル−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)またはポリTPDおよびC6036、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)およびC6036、TDATAおよびC6036、銅(ii)フタロシアニン(CuPc)およびC6036、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)およびC6048、TPDまたはポリTPDおよびC6048、PPVおよびC6048、TDATAおよびC6048、銅(ii)フタロシアニン(CuPc)およびC6048、PVKおよびC6048、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)(PFO)およびC6048、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−co−ベンゾチアジアゾール)(PFOBT)およびC6048、Alq3およびC6048、ならびに、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)およびC6048が含まれる。
【0133】
本明細書中に提供される方法は、一般には半導体に基づく、具体的にはp−ドープされたOSCに基づく電子、光電および他のデバイスを製造するためのプロセスの一部として利用することができ、これらは本明細書中下記で議論される通りである。
【0134】
ドーピングプロセスが、溶液処理される調製と、気相プロセスとの2つの一般的な取り組みによって達成される。これらの取り組みは、所望される物理電子特性を目的とする適用に従って達成するために組み合わせることができる。
【0135】
本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCは、溶液での製造プロセスを可能にするので、特に好都合である。したがって、皮膜(層および被覆を含む)を低コストの製造技術によって作製することができ、例えば、スピンコーティングおよび印刷によって作製することができる。本質的には、OSCマトリックスとして使用される有機材料は溶解することができ、溶媒中でインサイチュで重合することさえでき、したがって、ハロゲン化フラーレン誘導体を、OSCの溶媒において混和性であるか、または、場合により、OSCの溶媒と同じである好適な溶媒に溶解することができる。これら2つの溶液は、その後、本発明の実施形態に従って、ドープされたOSCを与えるための任意の所望される効果的な比率で一緒に混合することができる。そのような溶液系プロセスが一般的に、また、そのような溶液系プロセスによって調製され、かつ、本明細書中に示される例示的な基礎的電子デバイスとして記載される。
【0136】
好適な溶媒または溶媒混合物は、アルカンおよび/または芳香族溶媒、ならびに、それらのハロゲン化誘導体を含む。
【0137】
本発明の実施形態の溶液処理されたp−ドープOSCを適用するための方法は、均一な薄い層に達するように液体を適用する如何なる方法も可能である(例えば、スピンコーティング、印刷および浸漬など)。
【0138】
ポリマー/コポリマー材料のための、代替となる堆積方法には、スピンコーティング、ブレードコーティング、メニスカス(meniscus)コーティング、浸漬コーティング、自己集合、真空昇華(特に、小分子材料の層を製造するために)、インクジェット印刷などが含まれる。ポリマー材料は、いくつかの実施形態によれば、溶液処理可能である。
【0139】
用語「スピンコーティング」は、本明細書中で使用される場合、過剰量の溶液を基体に置き、基体を、流体を遠心力によって広げるために高速度で回転させることによって達成される、均一な薄い皮膜を平坦な基体に適用するために使用される手順を記述する。皮膜の所望される厚さが、回転時間および速度を操作することによって達成される。揮発性溶媒が使用されるならば、溶媒が同時に蒸発する。したがって、厚さが、溶媒の粘度および揮発性、回転の角速度、ならびに、溶質の濃度によって決定される。
【0140】
印刷は、入り組んだ複雑なパターンが基体に適用されることを可能にし、したがって、組成、形態学、厚さおよび活性の点で、無数の形状およびその組合せを達成する、本発明の実施形態のp−ドープされたOSCを適用する別の好適な技術である。
【0141】
本発明のp−ドープされたOSCは溶液で調製され得るので、溶媒および全般的な濃度は、粘度、流動性および他の特性の点で印刷技術に合うように選択することができ、これらはまた、所望される結果を達成するために必要とされる他の成分を含むことができる。印刷された電子デバイス、および、印刷された電子デバイスを与えるプロセスがこの技術分野では広く知られている。
【0142】
OSCをハロゲン化フラーレン誘導体によりドープするために使用することができる別のプロセス(これはまた、ドープされたOSCの薄い均一な層を得るための別のプロセスである)が、蒸発に基づく技術の蒸着である。
【0143】
蒸着は、材料の薄い皮膜を、材料またはその前駆体の気化形態の凝縮、反応または変換によって様々な基体の表面に堆積させるための様々な方法のいずれかを記述するために使用される一般的な用語である。薄い皮膜は、厚さが1ナノメートルの何分かの1から数マイクロメートルにまで及ぶ薄い材料層である。蒸着が、堆積した材料の被膜(皮膜)を形成して、その結果、基体の電気的(例えば、半導体性など)、電気化学的(例えば、電極効率など)、熱的(例えば、熱伝導性など)、光学的(例えば、光反射能など)および化学的(例えば、耐食性、化学的適合性、濡れ性および疎水性など)特性を変化させるようにするために使用される。
【0144】
蒸着プロセスは典型的には、蒸着プロセスの2つのカテゴリーの1つに属する:物理的蒸着(PVD)および/または化学的蒸着(CVD)(これらの両方が通常、真空チャンバーにおいて行われる)。
【0145】
PVDにおいて、コーティング方法は主に、例えば、化学的蒸着(CVD)の場合でのような、被覆されるべき表面における気化させた材料の化学反応ではなく、むしろ、高温、高真空またはプラズマスパッター衝撃などの物理的プロセスを伴う。気化堆積は、堆積させられる材料が「高」真空において電気抵抗加熱によって大きい蒸気圧にまで加熱されるPVDプロセスである。電子ビーム堆積は、堆積させられる材料が「高」真空において電子による衝撃によって大きい蒸気圧にまで加熱されるPVDプロセスである。スパッター堆積は、グロープラズマ放電(通常、磁石によって「ターゲット」の周りに局在化させられる)が、スパッターリングによりその一部が蒸気としてはじき飛ばされる材料に衝突するPVDプロセスである。陰極アーク堆積は、高出力アークが、蒸気の中にその一部が吹き飛ばされる材料に向けられるPVDプロセスである。パルスレーザー堆積は、高出レーザーが材料をアブレーションにより蒸発させるPVDプロセスである。
【0146】
PVD方法は、比較的直接的な手順での対象物全体の一様かつ均質なコーティングをもたらす。しかしながら、対象物およびコーティング用材料がさらされる物理的条件はかなり過酷であり、したがって、いくつかの熱感受性ターゲット材料を傷つけることがある。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、OSC材料およびハロゲン化フラーレン誘導体は、それらの供給源サイズ、温度、濃度および/または量、ターゲット基体からそれぞれの供給源の距離、一方または両方の供給源からのターゲットの部分的ふるい分け、ならびに、この技術分野で知られている他の技術を制御することによってこれらの成分の相対的な比率を制御しながら、2つの別個の供給源から共蒸発させることができる。
【0148】
代替として、OSC材料およびハロゲン化フラーレン誘導体は、所望される比率で一緒に混合し、その後、蒸着プロセスに供することができる。
【0149】
別の代替法が、ドーパントを、p−ドープされたOSCの薄い最上層が得られるようにOSCの既存層に堆積させることである。
【0150】
これらのプロセスが下記の実施例の節において記載される。
【0151】
本明細書中に示される方法、プロセスまたはデバイスのそれぞれにおいて、OSCの電子ドーピングが、ハロゲン化フラーレン誘導体に対する有機半導体材料の比率によって直接に達成される。
【0152】
OSC材料およびハロゲン化フラーレン誘導体(HFD)の固有的な電気化学的特性、すなわち、それぞれ、それらのHOMOおよびLUMOの相対的な差、ならびに、それらを含有する組成物が使用される適用に依存して、組成物におけるこれら2つの成分の相対的比率が、約20%OSC対約80%HFDから、約99.99%OSC対約0.01%HFDにまで及び得る。
【0153】
いくつかの実施形態において、ハロゲン化フラーレン誘導体の相対的な量が、OSCの重量百分率に対して50重量パーセント未満であり、20重量パーセント未満であり、また、0.01重量パーセントもの低さである。
【0154】
本発明の実施形態によれば、OSC対ハロゲン化フラーレン誘導体p−ドーパントの比率が、それぞれ、約80対20重量パーセントから、約99.99対0.01重量パーセントにまで及ぶ。
【0155】
いくつかの実施形態において、有機半導体材料対ハロゲン化フラーレン誘導体の比率が、それぞれ、90/10重量パーセント、99/1重量パーセント、99.9/0.1重量パーセントまたは99.99/0.01重量パーセントである。
【0156】
本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCはさらに、1つまたは複数の他の好適な成分を含むことができ、例えば、溶媒、触媒、増感剤、安定剤、阻害剤、連鎖移動剤、共反応モノマー、界面活性化合物、潤滑剤、湿潤化剤、分散化剤、疎水化剤、接着剤、流動改善剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、補助剤、着色剤、色素または顔料などを含むことができる。
【0157】
本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCはまた、液晶相挙動を誘導または強化するために、重合可能なメソゲン性(mesogenic)化合物と共重合することができる。コモノマーとして好適である重合可能なメソゲン性化合物がこの技術分野では知られており、また、例えば、国際公開WO93/22397、欧州特許EP0261712、ドイツ国特許DE19504224、国際公開WO95/22586および同WO97/00600において開示される(これらは、全体が本明細書中に示されるかのように参照によって組み込まれる)。
【0158】
本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCは、この技術分野では知られているように、重合またはポリマー類似反応によって重合可能な液晶材料から得られる液晶側鎖ポリマー(SCLCP)を含むことができる。側鎖液晶ポリマーまたはコポリマー(SCLCP)は、半導体成分が、脂肪族スペーサー基によって柔軟な骨格によって隔てられるペンダント基として位置しており、非常に整列したラメラ様形態学を得る可能性を与える。この構造は、非常に近い(典型的には4Å未満の)π−π積み重なりが生じ得る接近して詰められる共役芳香族メソゲンからなる。この積み重なりは、分子間の電荷輸送がより容易に生じることを可能にし、これにより、大きい電荷キャリア易動度をもたらし、したがって、本明細書中に示されるように、p−ドーピングを受けやすい。SCLCPは、処理前に容易に合成することができ、その後、例えば、本発明の実施形態に従って、ハロゲン化フラーレン誘導体p−ドーパントにより有機溶媒での溶液から処理することができるので、特定の用途のためには好都合である。SCLCPが溶液で使用されるならば、SCLCPは、適切な表面に塗布されるとき、および、表面積が大きい非常に整列したドメインを生じさせることができるその中間相温度にあるとき、自発的に配向することができる。SCLCPを、重合可能な化合物または混合物から、例えば、ラジカル連鎖重合、アニオン連鎖重合、カチオン連鎖重合、重付加または重縮合を含めて、当業者に知られている従来の重合技術によって調製することができる。
【0159】
本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCは、有機半導体材料が有用である光学用途、電子用途として、また、一般には、有機半導体材料が有用である任意の用途のために有用である。
【0160】
いくつかの実施形態において、発明の実施形態によるp−ドープされたOSCは、例えば、電界効果トランジスタ(FET)における電荷輸送材料として、集積回路の構成部品、IDタグ用途または薄膜トランジスタ(TFT)用途として使用される。代替では、p−ドープされたOSCは、エレクトロルミネセンスディスプレー用途における有機発光ダイオード(OLED)において、あるいは、例えば、液晶ディスプレーのバックライトとして、光起電体またはセンサー材料として、電子写真記録のために、また、他の半導体用途のために使用することができる。
【0161】
典型的には、FETは、有機半導体材料が、ゲート誘電体電極と、ドレイン電極と、ソース電極との間における皮膜として配置される電子デバイスであり、例えば、米国特許第5892244号、国際公開WO00/79617、米国特許第5998804号において、また、本明細書中上記の背景の節で引用される参考文献から一般に知られており、また、教示される。本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCの、溶液に基づく低コストの製造、および、したがって、大きい表面の加工性のような利点のために、これらのFETの好ましい用途が、例えば、集積回路、TFTディスプレーおよびセキュリティー用途などである。
【0162】
本発明の実施形態による有機電界効果トランジスタ(OFET)デバイスは、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ハロゲン化フラーレン誘導体によりp−ドープされた半導体層、1つまたは複数のゲート絶縁体層、および、必要な場合には基体を含む。OFETデバイスの好適な構造および製造方法が当業者には知られており、文献(例えば、国際公開WO03/052841)に記載される。
【0163】
溶液で適用され得ること、したがって、この技術分野で知られている一般的な印刷技術によって適用され得ることのために、発明の実施形態によるp−ドープされたOSCは、セキュリティー用途において特に有用である。トランジスタまたはダイオードのように、本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCを含む電界効果トランジスタおよび他のデバイスは、紙幣、クレジットカードまたはIDカードのような価値のある書類、国内ID書類、免許証、または、切手、切符、株券および小切手のような金銭的価値を有する任意の製造物を本物であると確認するための、また、それらの偽造を防止するためのIDタグまたはセキュリティー標示のために使用することができる。
【0164】
製造のそれらの柔軟性および溶液型プロセスのために、本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCは、例えば、ディスプレー用途における有機発光デバイスまたは有機発光ダイオード(OLED)において、または、例えば、液晶ディスプレーのバックライトとして使用することができる。一般的なOLEDが、多層構造を使用して実現される。発光層は一般には、1つまたは複数の電子輸送層および/または正孔輸送層の間に挟まれる。電気電圧を加えることによって、電荷キャリアとしての電子および正孔が発光層に向かって移動し、発光層において、それらの再結合により、発光層に含有されるルモフォア(lumophor)の励起がもたらされ、したがって、ルミネセンスによるその発光がもたらされる。本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCは、それらの電気特性および/または光学特性に対応して、電荷輸送層の1つまたは複数において、ならびに/あるいは、発光層において用いることができる。OLEDにおいて使用される好適なOSC材料の選択、特徴づけ、ならびに処理が、当業者には一般的に知られており、例えば、Meerholz、Synthetic Materials、111−112、2000、31〜34;Alcala、J.Appl.Phys.、88、2000、7124〜7128;および、本明細書中で引用される参考文献において教示される。
【0165】
別の使用によれば、本発明の実施形態によるp−ドープされたOSC、とりわけ、フォトルミネセンス特性を示すものは、例えば、ディスプレーデバイス(例えば、欧州特許EP0889350に記載されるか、または、C.Weder他(Science、279、1998、835〜837)によって記載されるディスプレーデバイスなど)の光源材料として用いることができる。
【0166】
別の使用によれば、本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCは、例えば、米国特許出願公開第20030021913号に記載されるように、LCDデバイスまたはOLEDデバイスにおいて、あるいは、LCDデバイスまたはOLEDデバイスにおけるアラインメント層として、単独で、または、他の材料と一緒に使用することができる。本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCの使用はアラインメント層の電気伝導率を増大させることができる。LCDにおいて使用されるとき、この増大した電気伝導率は、切り換え可能なLCDセルにおける有害な残留DC影響を低下させることができ、かつ、例えば、強誘電LCDにおける画像の焼付けを抑制することができ、または、強誘電LCの自発分極電荷の切り換えによって生じる残留電荷を低下させることができる。アラインメント層の上に施される発光材料を含むOLEDデバイスにおいて使用されるとき、この増大した電気伝導率は発光材料のエレクトロルミネセンスを高めることができる。メソゲン特性または液晶特性を有する本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCは、上記で記載されるような配向した異方性皮膜を形成することができ、この異方性皮膜は、この異方性皮膜の上に施される液晶媒体におけるアラインメントを誘導または強化するためのアラインメント層としてとりわけ有用である。本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCはまた、米国特許出願公開第20030021913号に記載されるように、光アラインメント層における使用または光アラインメント層としての使用のための光異性化可能な化合物および/または発色団と組み合わせることができる。
【0167】
本発明の実施形態によるp−ドープされたOSC、とりわけ、その水溶性配合物(例えば、極性側鎖またはイオン性側鎖を有するもの)は、様々な分析物(例えば、化学的分析物および生物学的分析物など)を検出し、識別するための化学センサーまたは材料として用いることができる。例えば、本発明の実施形態によるp−ドープされたOSCに基づく検出器/センサーを、一般にはDNAを検出し、特定するために、また、特定の配列のDNAを検出し、特定するために使用することができる。そのような使用が、例えば、L.Chen、D.W.McBranch、H.Wang、R.Helgeson、F.WudlおよびD.G.Whitten、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1999、96、12287;D.Wang、X.Gong、P.S.Heeger、F.Rininsland、G.C.BazanおよびA.J.Heeger、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、2002、99、49;N.DiCesare、M.R.Pinot、K.S.SchanzeおよびLakowicz、Lamgmuir、2002、18、7785;D.T.McQuade、A.E.Pullen、T.M.Swager、Chem.Rev.、2000、100、2537に記載される。
【0168】
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、多くの関連するのハロゲン化フラーレン誘導体ドーパントを有するp−ドープ有機半導体が開発されることが予想され、有機半導体材料をp−ドーピングするためのハロゲン化フラーレン誘導体ドーパントの用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。
【0169】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0170】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0171】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0172】
材料および方法
ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(P3HT、CAS N.104934−50−1)をRieke Metals Inc(USA)から購入した。
【0173】
[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステルまたはフェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM、99.5%)をNANO−C,Inc.から購入した。
【0174】
60(C6036調製用、99.5%)をTermUSAから購入した。
【0175】
60(参照用、99.9%)をSigma−Aldrichから購入した。
【0176】
すべての商用の試薬および材料を、さらなる精製を行うことなく使用した。
【0177】
6036を、発表された手順[9]に従って、C60およびMnF(Fluorochem Ltd.、99%)から合成した。
【0178】
実験で使用されたダイオードタイプおよび薄膜トランジスタタイプの電子デバイスの活性層は、位置規則性(regio−regular)のP3HT(Rieke Metalsから購入)と、フッ素化フラーレンC6036との混合物を含有した。
【0179】
実施例1
ドープされた系のポテンショダイナミック電気化学的測定
6036のドーピングのための能力および容量を特徴づけるために、そのHOMO−LUMOギャップを測定し、他のC60誘導体と比較した。
【0180】
OSCポリマーのポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(P3HT、CAS N.104934−50−1)を、C60および例示的なフラーレン誘導体[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM)(これは励起状態アクセプターとしてこの技術分野で一般に使用される)のドーピング影響を示すための例示的なOSCポリマーとして選択した。
【0181】
サイクリックボルタンメトリー(CV)を、薄い皮膜の形態での分析物の電気化学的特性のポテンショダイナミック電気化学的測定のために使用した。
【0182】
一般的には、ポリマー皮膜を、P3HT/フラーレンのそれぞれ、90/10重量パーセント、99/1重量パーセント、99.9/0.1重量パーセント、99.99/0.01重量パーセントおよび100/0重量パーセントの比率でのブレンド混合物をスピンコーティングすることによって作製した。P3HTを最初、20mg/mlの溶液を得るために1,2−ジクロロベンゼン(DCB)に溶解し、その後、DCBにおけるC6036またはC60/PCBMの20mg/mlの溶液とブレンド混合した。ブレンド混合物を不活性雰囲気のグローブボックスにおいて45℃で約7時間撹拌した。活性層を、ブレンド混合物を1500rpmで80秒間スピンコーティングすることによって得た。サンプルを不活性雰囲気のグローブボックスにおいて110℃の熱によって180分間乾燥した。皮膜の厚さが、α−工程によって測定されるとき、約70nmで推定された。
【0183】
CV測定用のサンプルを、P3HTについては4000rpmで、他の材料について1500rpmで、CCl(ジクロロベンゼン、DCB)溶液からのスピンコーティングを行うことによって、作用電極としてのインジウムスズ酸化物(ITO)基体における皮膜として調製した。サンプルを、0.1Mのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート(BuNPF)を支持電解質として無水アセトニトリル(CHCN)に含有するセルにおいて調べた。白金線を対向電極として、Ag/AgNO(CHCNにおいて0.01M)を参照電極としてそれぞれ使用した。走査速度が0.1ボルト/秒(V/s)に等しかった。
【0184】
すべての調製および測定を、不活性雰囲気のグローブボックスにおいて、CV分析計AUTOLAB、PGSTAT12(Eco Chemie B.V.、オランダ)で行った。開始電位を使用して、HOMOエネルギー準位を真空下で求めた。すべての測定を、フェロセン(Fc)を標準物として使用して較正した[11]。調べられた系のHOMO/LUMOに関しての結果が図1A〜図1Bに示される。
【0185】
図1A〜図1Bは、還元波の開始またはLUMO準位(2つの化合物について図1Aにおいて矢印によって表される)が示される、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM、図1Aにおける破線)、C6036(図1Aにおける実線)、ならびに、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)のサイクリックボルタンモグラム(P3HT、図1Aにおける挿入図)、そして、単離された化合物のC60、PCBM、C6036およびP3HTのHOMO準位およびLUMO準位(図1Bにおける実線)を示す。
【0186】
図1A〜図1Bにおいて認められ得るように、P3HTのLUMOの相対的位置およびこれらフラーレンの相対的位置により、これらのフラーレン分子が、良好な励起状態電子アクセプター分子として明らかにされる。しかしながら、基底状態において、C60および/またはPCBMにおける電子のための利用可能な状態(LUMO)は、P3HTの被占HOMOを1eV超(約1.4eV)超えており、したがって、このことは電子移動事象を非常に起こりにくくしている。すなわち、C60および/またはPCBMをOSC(例えば、P3HTなど)に加えることは、効果的な電子ドーピングプロセスを構成しないと考えられる。他方で、C6036のLUMOは、P3HTのHOMOをほんの0.6eV超えるだけであり、したがって、このことは、基底状態電子移動事象を室温においてさえ、より起こり易くしている。したがって、C6036をP3HTに加えることは、p型ドーピングまたはOSCのp−ドーピングプロセスを構成し、それにより、p−ドープされたOSCポリマーを多くの電子適用のためにより好適にしている。
【0187】
実施例2
ドープされた系における電荷−ポーラロン誘導による吸収
OSC共役ポリマーにおける電荷移動の知られているシグナチャーが、電荷−ポーラロン誘導による吸収に関連する新しい吸収帯の出現である。ポーラロンは、電子および電子に関連する分極場から構成される準粒子である。ポーラロンは、分子鎖内の電荷が核の局所的幾何学に影響を与えるときに形成され、このことは、近くの結合交代振幅の減衰を生じさせ、または、その反転さえ生じさせ、これにより、より低いエネルギー準位帯と、より高いエネルギー準位帯との間におけるエネルギー準位を有する励起状態が構成される。
【0188】
本発明の実施形態によるフッ素化フラーレン誘導体によるOSCポリマーのドーピングの影響を測定するために、様々な系の吸収スペクトルを下記のように記録し、比較した。
【0189】
ポリマー皮膜(および、OSCと、各種フラーレンとのブレンド混合物)を、本明細書中上記の実施例1に記載されるように調製した。吸収スペクトルを、UV−Vis−IR分光光度計(Shimadzu Scientific Instruments)を使用して測定した。
【0190】
調べられた系で観測される光学密度および色に関しての結果が図2A〜図2Bに示される。
【0191】
図2A〜図2Bは、10重量%のC60と混合されたP3HTについて得られる光吸収スペクトルで、新品状態の(ドープされていない)P3HTについて得られるスペクトル(図2Aにおける実線)に対して右側傾斜部の曲線重なりによって正規化されるスペクトル(図2Aにおける破線)、および、10重量%のC6036によりドープされたP3HTの吸収スペクトルで、新品状態のP3HTについて得られるスペクトル(図2Bにおける実線)に対して右側傾斜部の曲線重なりによって正規化されるスペクトル(図2Bにおいて破線)であり、これら2つの吸収スペクトルの差(図2Bの挿入図におけるΔOD曲線)が示され、この差は、ドーピングによって誘導される電荷移動事象の場合に予想されるようなより長波長側への振動強度における変化に起因すると考えられる電荷−ポーラロン誘導の吸収を暗示する。
【0192】
ドーピングによって引き起こされる誘導された吸収変化を取り出すこの方法は、金属−絶縁体−半導体(MIS)ダイオードデバイス構造の無機系におけるP3HTの電荷変調分光法(CMS)を使用する他の実験に類似する[12]。これらの知見は、観測された影響が電荷移動またはp−ドーピングの直接的な結果であるという作業仮説を強く裏付けている。
【0193】
実施例3
ドープされた系の視覚影響
本発明の実施形態によるフッ素化フラーレン誘導体によるp−ドーピングの視覚影響を明らかにするために、非フッ素化フラーレン(C60)およびフッ素化フラーレン(C6036)と混合されたOSCポリマーをジクロロベンゼン(DCB)において含有する2組の溶液を目視検査によって比較した。結果が図3A〜図3Bに示される。
【0194】
図3A〜図3Bは2組のバイアルのカラー写真である:バイアル番号1はC60(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号2は3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号3は、C60(2mgまたは10重量%)と混合されたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号4は、C60(0.2mgまたは1重量%)と混合されたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号5は、C60(0.002mgまたは0.01重量%)と混合されたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号6はC6036(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号7はP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号8は、C6036(2mgまたは10重量%)によりドープされたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号9は、C6036(0.2mgまたは1重量%)によりドープされたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する;バイアル番号10は、C6036(0.002mgまたは0.01重量%)によりドープされたP3HT(1mlのDCBに20mg)を含有する。
【0195】
図3A〜図3Bにおいて認められ得るように、可視光の、ドーピング誘導による高まった吸収の影響を、10%および1%のC6036を含有するバイアル(バイアル番号8および9)における溶液の黒色の色、ならびに、この現象が、C60を含有するバイアル(バイアル番号3および4)では認められないことによって表されるように、明瞭に認めることができる。
【0196】
実施例4
ドープされた系のフォトルミネセンス消光
OSCと、フッ素化フラーレン系ドーパントとの間における相互作用を明らかにするために、フラーレン系分子(例えば、例示的なC60またはC6036)を添加したときのOSC(例えば、P3HT)のフォトルミネセンス(PL)消光を様々な濃度で測定した。
【0197】
PLスペクトル測定およびPL量子効率測定を、Edinburgh Instruments Ltd.(英国)によるFS920フルオリメーターに基づく一体化されたシステムで行った。PL量子効率測定を、発表された手順[13]に従って、FS920にファイバー結合されたIS−040−SL積分球(Ladsphere)を使用して行った。正規化されたPL量子効率(PLQE)曲線が図4A〜図4Bに示される。
【0198】
図4は、フォトルミネセンス量子効率(PLQE)を、P3HTにおけるC60(破線および丸記号)およびC6036(実線および四角記号)について測定されるときの重量パーセントで表されるゲスト分子の量の関数として示す(新品状態のP3HTのPLQEが6%であった;データは示されず)。
【0199】
図4において認められ得るように、C6036は、C60の影響と比較して、はるかにより速く発光を消光し、その著しい消光が、P3HTにおける0.1重量パーセントのC6036において既に観測される。このより遠距離かつより著しい消光により、P3HTからC6036への電荷移動の機構(すなわち、p−ドーピング)を介してであると考えられるこれら2つの化学種の間における相互作用が示唆される。図1Bにおいて認められ得るように、C6036のLUMO準位がP3HTのHOMO準位に対して十分に近く、したがって、このことは電荷移動を室温においてエネルギー的に実行可能なプロセスにすることが予想される。
【0200】
実施例5
ドープされたOSCに基づくデバイスの電圧・電流特性
デバイスにおけるOSCの電子ドーパントとしてのC6036の性質および使用を調査するために、様々な電子デバイス構造物、すなわち、C6036ドープOSCを含有するダイオードおよび薄膜トランジスタ(TFT)を調製した。
【0201】
ダイオードを、ITOが底部接点として働くガラスITO基体の上に調製した。第1の状態調節用PEDOT層を約100nmの厚さにスピンコーティングし、100℃で3時間アニーリングした。その後、P3HTに基づく活性層をスピンコーティングによって塗布し、110℃で3時間アニーリングした。デバイスを、銀接点を蒸気によって形成することによって完成した。I−V特性を、半導体パラメーター分析計(Agilent Technologies)を使用して測定した。
【0202】
図5は、OSCに基づくダイオードデバイスにおいて測定されるときの、P3HT(実線)およびドープP3HT(破線)に特徴的な比較される電流−電圧(I−V)プロットを示す。
【0203】
図5において認められ得るように、およそ1eVである2つの接点(PEDOTおよびAg)の間での仕事関数の差によって決定される典型的なターンオン電圧が、新品状態のP3HTについて観測される。図5においてさらに認められ得るように、デバイスは、ほとんど完全な短絡特徴を、機器のコンプライアンス電流(4mA)に至るまで、10重量パーセントのC6036によりドープされたP3HTデバイスにおいて示した。
【0204】
TFTデバイスの組み立て手順および測定手順を、発表された手順[14]に従って行った。簡単に記載すると、TFTの構造は、ドープされたケイ素が熱酸化物により覆われ、これらがゲートおよびデート誘電体としてそれぞれ働く典型的な底部接点の有機TFTの構造であった。金のソース電極およびドレイン電極を酸化物上にリトグラフィーによりパターン化し、デバイスを、有機皮膜をスピンコーティングすることによって完成した。
【0205】
図6A〜図6Bは、新品状態のP3HT(図6Aにおいて点線および三角記号)、0.1重量パーセントのC60と混合された新品状態のP3HT(図6Aにおいて破線および四角記号)、および、0.1重量パーセントのC6036によりドープされた新品状態のP3HT(図6Aにおいて実線および丸記号)に基づく3つのTFTデバイスの、VGS=0VおよびVGS=−20Vのゲート電圧で使用される出力特性、ならびに、10重量パーセントのC60と混合されたP3HT(図6Bにおいて破線および四角記号)、および、10重量パーセントのC6036によりドープされた新品状態のP3HT(図6Bにおいて実線および丸記号)に基づくTFTデバイスの出力特性を示す。
【0206】
図6Aにおいて認められ得るように、C60を混合することは、C6036がTFTデバイスにおいてドーパントとして使用されるときに認められる顕著な影響と比較して、TFT特性に対するわずかな影響を有しており、その特性は、ゲート作用デバイスではなく、むしろ、抵抗器の特性に類似する。
【0207】
図6Bにおいて認められ得るように、P3HTにおいて10%のC6036によりドープされたサンプルの導電率が、ON状態では、新品状態のP3HTのTFTの導電率よりも3桁大きく、特徴的な誘電率が、約3×10−2S/cmであると計算される。
【0208】
実施例6
溶液処理によるp−ドープされたOSC−一般的手順
溶液処理のために、OSCおよびハロゲン化フラーレン誘導体p−ドーパントを、本発明の実施形態に従って、好適な溶媒に別々に溶解して、約20mg/ml溶液の溶液を得る。2つの溶液は好ましくは、同じ溶媒に基づき(例えば、1,2−ジクロロベンゼン(DCB)においてP3HT)、または、2つの相容性溶媒に基づく。
【0209】
その後、溶液を、所望されるOSC対ドーパントの重量比(例えば、80:20のOSC:ドーパントの比率など)に達するように適切な比率で混合する。混合物を不活性雰囲気のグローブボックスにおいて45℃で1時間以上撹拌して、十分な混合を確保する。
【0210】
活性層をスピンコーティングまたは印刷のどちらかにより溶液から堆積させ、その後、約100℃での1時間の乾燥段階を続ける。
【0211】
上記パラメーターおよび約1500rpmでの回転を使用して、皮膜を約70nmの厚さで得る。異なる厚さの皮膜を得るために、または、いずれかの印刷技術を使用するために、溶液の濃度および粘度が、選択された技術および装置のために好適であるように選択される。これらは十分に確立され、この技術分野で知られている通りである。
【0212】
すべてのプロセス工程を不活性な雰囲気の条件のもとで行うことができる。
【0213】
実施例7
気相処理によるp−ドープされたOSC−一般的手順
p−ドープされたOSCの真空昇華皮膜を、本発明のいくつかの実施形態に従って、蒸着に基づく技術によって得ることができる。
【0214】
簡単に記載すると、ハロゲン化フラーレン誘導体ドーパントおよびOSCを、酸素、水分および空気を排除するために真空下で別々の蒸発源に置く。p−ドープされた層を、所望される比率にそれらの間で達するように、事前に決定された速度で2つの供給源の共蒸発によって得る。代替として、ハロゲン化フラーレン誘導体ドーパントおよびOSCが、所望される比率で混合され、1つの蒸発源に置かれ、その後、混合物が、p−ドープされた皮膜を達成するために共蒸発させられる。
【0215】
多層コーティング(例えば、ラングミュア・ブロジェット(LB)技術または同等な技術を使用する)によるドーピングを、ハロゲン化フラーレン誘導体ドーパントの単分子層またはサブ単分子層をOSCの単分子層の間に挿入することによって達成することができ、この場合、ドーパント単分子層対OSC単分子層の比率により、ドーピング濃度が規定される。本発明のいくつかの実施形態によれば、この比率は80:20のOSC:ドーパントである。
【0216】
実施例8
フッ素化C60を使用する有機薄膜のp型ドーピング
電子的配合の概念に依拠して、架橋された正孔輸送ポリマーにおけるp型ドーパントとしてのC6036の使用が下記において明らかにされる。
【0217】
2つの架橋方針が試験されている。第1の方針が、オキセタン側鎖基を重合するための光酸(photoacid)触媒に依拠し、第2の方針では、ケイ皮酸エステル側鎖基の光付加環化が使用される(すなわち、触媒が使用されない)。
【0218】
図7は、フッ素化C60を本発明のいくつかの実施形態に従って使用する有機薄膜のp型ドーピングの研究において使用された材料であるトリアリールアミン、BCP、ポリTPD、ポリビニルカルバゾール−シンナマート(PVK−Cin)およびコンジュゲート化ペンタペプチドの比較されるエネルギー準位図および化学構造を示し、インジウムスズ酸化物(ITO)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、CaおよびAlの値と比較される、サイクリックボルタンメトリーを使用して求められたときのHOMO−LUMOの値が示される。
【0219】
図8は、ITO/PEDOT−70nmポリマー−銀のダイオード構造を使用して測定される電流対電圧プロットを示し、架橋トリアリールアミン(破線、丸記号)、ポリTPDと等重量でブレンド混合された架橋PVK−Cin(破線、四角記号)、および、10重量%のC6036が添加された同じ材料(ぞれぞれの記号において実線)の特性が示される。
【0220】
図8において認められ得るように、トリアリールアミンおよびPVK−Cin/ポリTPDブレンド混合物の両方の場合において、C6036を加えることは、印加電圧を、いずれの与えられた電流についても、著しい量で低下させた。別の研究(示されず)では、架橋スキームにおける光酸の使用が、プロセスを、使用された条件(少量の残留触媒が強力な消光剤である)に対して非常に敏感にすることが見出された。したがって、研究を、ケイ皮酸エステルに基づく光架橋スキームを使用して続けた。
【0221】
図9は、電子阻止層およびエミッター層の両方において現れるPVKのカルバゾールユニットに主として基づく二重層LEDについての印加電圧の関数として電流および輝度が示される電流対電圧(C−V)プロットを示し、この場合、約20nmの非ドープPVK−Cinからなる電子阻止層を有するLEDについて測定される結果が四角記号によって示され、PVK−Cin/ポリTPDの1:1の混合物にドープされる10重量%のC6036の約70nmからなる電子阻止層を有するLEDについて測定される結果が丸記号によって示され、発光するコンジュゲート化ペンタペプチド層が約60nmの厚さで保たれた。
【0222】
図9において認められ得るように、このデバイスの操作のために要求される全体的な電圧が比較的高かった。このことは、PVK(カルバゾール)に基づくLEDについて典型的である。電子素子層(EBL)の厚さを3倍にしたにもかかわらず、p型ドーパントとしての10重量%のC6036の添加は、100cd/mを達成するために要求される電圧を約20%低下させたこともまた特筆される。図9においてさらに認められ得るように、おそらくは、過剰な正孔が、ドープされた電子素子層を介して注入されるために、電圧の低下には、EL量子効率の低下が付随する。
【0223】
図10は、電子阻止層(EBL)が70nmであり、コンジュゲート化ペンタペプチドエミッター(20nm)が溶液からスピンコーティングされ、その後、正孔阻止層(HBL)としての30nmのBCPおよび最上部の接点金属(Ca/Al)が蒸発させられた3層ハイブリッドLEDについて得られた結果の電流対電圧(C−V)プロットを示し、電流および輝度が、重なる線における黒塗り記号および白抜き記号でそれぞれ示され、これに対して、破線および四角記号はデバイス効率をcd/Aで表す。
【0224】
図10において認められ得るように、このハイブリッドLEDは、6Vをちょうど下回る「ターンオン」電圧、および、650cd/mにおいて約4.5cd/Aに達する効率を示す。
【0225】
したがって、C6036が、架橋された正孔輸送ポリマーにおけるp型ドーパントとして有機LEDに首尾よく取り込まれ得ること、また、p型ドープされた層の使用は、改善されたターンオン電圧および輝度を有するハイブリッドLEDの製造を可能にしたことが示される。C60に結合するフッ素原子の数が、制御された変数であるので、フッ素化C60が、本発明の実施形態による有機電子機器におけるドーパントの調節可能な一群を構成することが明言される。
【0226】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0227】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体材料を、共有結合により結合する少なくとも1つの電子吸引置換基を有し、かつ、前記有機半導体材料の最高被占分子軌道(HOMO)から最低空分子軌道(LUMO)への電子移動を可能にするために十分である前記LUMOを有するフラーレン誘導体によりドープすることを含む、半導体材料を製造する方法。
【請求項2】
前記ドープすることは、前記有機半導体材料を溶液中で前記フラーレン誘導体と混合して、その結果、それらの混合物を得るようにすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物を、スピンコーティング、印刷、蒸発、浸漬およびドクターブレーディングからなる群から選択される手順によって基体に適用することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ドープすることが、蒸着によって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ドープすることは、前記有機半導体材料および前記フラーレン誘導体を2つの別個の供給源から共蒸発させ、基体上に堆積させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ドープすることは、前記フラーレン誘導体を前記有機半導体材料の事前に適用された層に蒸着することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
共有結合により結合する少なくとも1つの電子吸引置換基を有し、かつ、前記有機半導体材料の最高被占分子軌道(HOMO)から最低空分子軌道(LUMO)への電子移動を可能にするために十分である前記LUMOを有するフラーレン誘導体によりドープされる有機半導体材料を含む半導体組成物。
【請求項8】
液体形態である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項7に記載の組成物を含む電子デバイス。
【請求項10】
前記LUMOのエネルギー準位が、非誘導体化フラーレンのLUMOのエネルギー準位よりも少なくとも0.5eV低い、請求項1〜9のいずれかに記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項11】
前記LUMOのエネルギー準位が前記HOMOのエネルギー準位を1.75eV未満で超える、請求項1〜9のいずれかに記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項12】
前記LUMOのエネルギー準位が前記HOMOのエネルギー準位を1eV未満で超える、請求項1〜9のいずれかに記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項13】
前記LUMOのエネルギー準位が前記HOMOのエネルギー準位を0.4eV未満で超える、請求項1〜9のいずれかに記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項14】
前記有機半導体材料対前記フラーレン誘導体の比率が、約80対20重量パーセントから、約99.99対0.01重量パーセントにまで及ぶ、請求項1〜13のいずれかに記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項15】
前記有機半導体材料対フラーレン誘導体の比率が、約90対10重量パーセントから、約99.99対0.01重量パーセントにまで及ぶ、請求項1〜13のいずれかに記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項16】
前記フラーレン誘導体は下記の一般式Iを有する、請求項1〜15のいずれかに記載の方法、組成物またはデバイス:

式中、nおよびmは、前記フラーレンにおけるR置換基に対する炭素原子の比率を表す整数である;
Rは電子吸引置換基であり;
前記フラーレンは、球状フラーレン、管状フラーレン、線状フラーレンおよび平面状フラーレンからなる群から選択される。
【請求項17】
前記電子吸引置換基はハロゲン、擬ハロゲン、ハロアルキル、ハロ脂環、ハロアリール、ハロヘテロアリール、カルボニル、エステル、アルデヒドおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項18】
前記電子吸引置換基はハロゲンであり、前記フラーレン誘導体はハロゲン化フラーレン誘導体である、請求項17に記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項19】
前記ハロゲン化フラーレン誘導体はハロゲン化球状フラーレン誘導体である、請求項1〜17のいずれかに記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項20】
前記ハロゲン化球状フラーレン誘導体はC6036である、請求項19に記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項21】
前記、ハロゲン化球状フラーレン誘導体はC7054である、請求項19に記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項22】
前記有機半導体材料が、フェナントロリン、置換フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、トリアリールアミン、置換トリアリールアミン、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリビニルカルバゾール−シンナマート(PVK−Cin)、ポリ[−ビス(4−ブチルフェニル)−ビス(フェニル)ベンジジン](ポリTPD)、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、アントラセン、テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン、p−クアテルフェニル(p−4P)、p−キンクエフェニル(p−5P)、p−セキシフェニル(p−6P)、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール系化合物、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(2−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−二置換アニリン)、1,3,5−トリス(ジフェニルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−(9−エチルカルバジル−3)エチレン)ベンゼン、4,4’−ビス(n−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル、銅(ii)フタロシアニン、トリ−p−トリルアミン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、8−ヒドロキシキノリン亜鉛、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム、ポリアズレン、ポリピレン、ピラゾリン誘導体;ポリセレノフェン、ポリベンゾフラン、ポリインドール、ポリピリダジン、ベンジジン誘導体、スチルベン誘導体、トリアジン誘導体、置換メタロポルフィン誘導体または金属非含有ポリフィン誘導体、フタロシアニン誘導体、フルオロフタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、フルオロナフタロシアニン誘導体およびフラーレン誘導体からなる群から選択される、請求項1〜20のいずれかに記載の方法、組成物またはデバイス。
【請求項23】
電気光学デバイス、太陽電池(光起電性セル)、電子デバイス、集積回路の部品、有機発光ダイオード(OLED)、薄膜トランジスタ(TFT)、電界効果トランジスタ(FET)、フラットパネルディプレーデバイスにおけるTFT、液晶ディスプレー(LCD)デバイスにおける素子、高周波識別(RFID)デバイスおよび検出器/センサーデバイスからなる群から選択される、請求項9に記載のデバイス。

【図1A−1B】
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【図2A−2B】
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【図3A−3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A−6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−502495(P2012−502495A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526631(P2011−526631)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000879
【国際公開番号】WO2010/029542
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(504127647)テクニオン リサーチ アンド ディベロップメント ファウンデーション リミテッド (20)
【Fターム(参考)】