説明

有機半導体を有する集積回路およびその製造方法

本発明は、有機半導体、特に誘電層を有する有機電界効果トランジスタ(OFET)を備えた集積回路に関する。この集積回路は、a)少なくとも1つの架橋可能なベースポリマーを100部と、b)求電子性の架橋剤としての少なくとも1つのジベンジルアルコール化合物またはトリベンジルアルコール化合物を10〜20部と、c)少なくとも1つの光酸発生剤を0.2〜10部と、d)a)〜c)が溶解されている少なくとも1つの溶媒とからなるポリマー組成物により製造可能である。本発明は、さらに、集積回路の製造方法、特にOFET用の、誘電層を有する集積回路を低温で作ることができる方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前提部に記載の集積回路と、請求項9に記載の、有機半導体を有する集積回路の製造方法とに関する。
【0002】
有機半導体、特に有機電界効果トランジスタ(OFET)を用いた集積回路を有するシステムは、低価格帯の電子部品の大量生産応用分野において将来的に有望な技術とされている。半導体層が有機材料から作られる場合、電界効果トランジスタは特に有機電界効果トランジスタである。
【0003】
OFETにより複雑な回路を構成することができるので、該回路を様々な用途に用いることができる。例えば、この技術に基づくRF−ID(radio frequency identification:高周波識別装置)システムは、障害の影響を受けやすくかつスキャナーと直接視覚的に接触した場合にのみ適用可能であるバーコードに代わる技術として有効である。
【0004】
特に、この場合、役割毎(roll-to-roll)の方法工程で大量に製造可能であるフレキシブル基板上の回路が関心事となる。
【0005】
多くの低価格の基板(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN))では、熱による歪みが生じるので、このようなフレキシブル基板の製造では、温度の上限は130℃〜150℃となっている。例えば、基板を事前に熱処理するなどの所定の条件の元では、この温度の上限を200℃まで上げることができるが、それによって基板の歪みを小さくできても、完全に避けることはできないという限界がある。
【0006】
電子部品における重要な処理工程は、OFETの誘電層、特にゲート誘電層の堆積である。OFETの誘電体の品質に対しては、熱特性、化学特性、機械特性および電気特性に関する要求が非常に高い。
【0007】
シリコン酸化物(SiO)は、半導体技術において広く使われているため、OFETのゲート誘電体として現在最もよく使われている材料である。したがって、不純物をドープしたシリコンウェハーをゲート電極として用い、その上に熱成長させたSiOをゲート誘電体として形成させたトランジスタ構造が記載されている。このSiOは約800℃〜1000℃にて形成される。様々な基板にSiOを堆積するための他の処理方法(例えば、CVD)では、やはり400℃を越える温度で処理を行う。ペンステート大学のあるグループは、高品質のSiOを80℃の処理温度で堆積できるイオンビームスパッタリング処理法を開発した。これに関しては、C.D.Sheraw、J.A.Nichols、D.J.Gundlach、J.R.Huang、C.C.Kuo、H.Klauk、T.N.Jackson、M.G.Kane、J.Campi、F.P.CuomoおよびB.K.Greening著の、Tech. Dig. -lot. Electron Devices Meet., 619 (2000年)の論文、ならびに、C.D.Sheraw、L.Zhou、J.R.Huang、D.J.Gundlach、T.N.Jackson、M.G.Kane、I.G.Hili、M.S.Hammond、J.Campi、B.K.Greening、J.Francl、および、J.West著の、Appl. Phys. Lett. 80, 1088 (2000年)の論文に記載されている。
【0008】
しかし、この方法では、大量生産しようとした場合、処理コストが高くなると共に、スループットが小さいという問題がある。
また、無機窒化物(例えばSiN、TaNなど)を用いることも知られている。無機酸化物の製造と同様に、無機窒化物の堆積にも、高い温度または高い製造コストが必要となる。このことに関しては、例えば、B.K.Crone、A.Dodabalapur、R.Sarpenshkar、R.W.Filas、Y.Y.Lin、Z.Bao、J.H.O'Neill、W.LiおよびH.E.Katz著のJ.Appl.Phys. 89,5125 (2001年)の論文に記載されている。
【0009】
ハイブリッド溶液(スピンオングラス)を用いることも知られている。溶液から作られ、熱変換により「ガラスに似た」層に変換され得る有機シロキサンについては記載がある。SiOへの変換は、高温(約400℃)で行なわれるか、または部分的にしか行なわれず、これにより、トランジスタの品質が低下してしまう(これに関しては、Z.Bao、V.Kuck、J.A.RogersおよびM.A.Paczkowski著の論文Adv.Funct.Mater.、12,526 (2002年)を参照)。
【0010】
さらに、有機ポリマー(例えば、ポリ−4−ビニルフェノール(PVP)、ポリ−4−ビニルフェノール−コ−2−ヒドロキシメタクリル酸塩またはポリイミド(PI))が、すでに用いられている。これらのポリマーの特徴は、比較的容易に処理可能であることである。したがって、これらは、例えばスピンコーティングまたは印刷用の溶液に使用可能である。このような材料の優れた誘電特性については、すでに示されている(H.Klauk、M.Halik、U.Zschieschang、G.Schmid、W.RadlikおよびW.Weber著の論文J Appl.Phys.(印刷中、2002年11月、92巻10号で公開予定)参照)。
【0011】
IC(interconnect layer)中での応用もすでに示されている。この場合、誘電層のパターン形成、および、誘電層の上に設けられるソースドレイン層のパターン形成に必要な誘電層の化学的および機械的な安定性が、ポリマーの架橋によって得られる(M.Halik、H.Klauk、U.Zschieschang、T.Kriem、G.SchmidおよびW.Radlik著の論文、Appl.Phys.Lett.、81,289 (2002年)参照)。
【0012】
しかし、この架橋は、200℃の温度において行なわれるので、面積の広いフレキシブル基板を製造する場合には問題となる。
【0013】
本発明の目的は、低温でOEFTの誘電層を製造できる、有機半導体を備えた集積回路およびその製造方法を提供することである。
【0014】
本発明のこの目的は、請求項1の特徴を有する方法により達成される。
【0015】
本発明によれば、
a)少なくとも1つの架橋可能なベースポリマーを100部と、
b)求電子性の架橋剤としての少なくとも1つのジベンジルアルコール化合物またはトリベンジルアルコール化合物を10〜20部と、
c)少なくとも1つの光酸発生剤(photo acid generator)を0.2〜10部と、
d)少なくとも1つの溶媒と、からなるポリマー組成物からなる有機半導体を備えた集積回路が製造可能である。
【0016】
本発明の集積回路は、特に優れた誘電特性を有する有機層を備えたOFETである。特定のポリマー組成物を用いることにより、この集積回路は、低温(150℃以下)で容易に製造可能である。原理的には、このポリマー組成物は、別の電子素子と組み合わせて用いられ得る。
【0017】
ここで、少なくとも1つのベースポリマーが、フェノール含有ポリマーまたはコポリマーであり、特に、ポリ−4−ビニルフェノール、ポリ−4−ビニルフェノール−コ−メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、または、ポリ−4−ビニルフェノール−コ−メタクリル酸−メチルエステルである場合、より有利である。
【0018】
求電子性の架橋剤としての少なくとも1つのジベンジルアルコール化合物またはトリベンジルアルコール化合物が、4−ヒドロキシメチル−ベンジルアルコールであることが有利である。
【0019】
少なくとも1つの架橋剤は、以下の構造のうちの1つを有する場合、有利である。
【0020】
【化1】

【0021】
なお、R1は、−O−、−S−、−SO−、−S−、−(CH−であり、x=1〜10であり、さらにR1は、以下に示す構造である。
【0022】
【化2】

【0023】
なお、R2は1〜10個の炭素原子を有するアルキル、または、アリールである。
【0024】
光酸発生剤として、紫外線が照射される際に、ベンジルアルコールのヒドロキシ基(特に、スルホニウム塩またはヨードニウム塩)に陽子を渡すための光酸を生成する少なくとも1つの化合物を用いることが有効である。
【0025】
有効な溶媒は、アルコールであり、特に、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル酢酸塩(PGMEA)、ジオキサン、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、キシレン、または混合物である。
【0026】
ベースポリマーと、架橋剤と、光酸発生剤との割合は、5〜20質量%である場合、より良く処理できるので有利である。
【0027】
本発明の目的は、請求項1の特徴を有する集積回路、特に誘電層を備えたOFETを製造する方法により、達成される。本発明によれば、
a)請求項1に記載のポリマー組成物を、特に、予めパターン形成されたゲート電極を有する基板上に塗布し、続いて、
b)ゲート誘電層を形成するために、光誘起架橋反応(photoinduced crosslinking reaction)を行う。
【0028】
OFETを形成するために、続いて、少なくとも1つの他のパターン形成を行う場合、より有利である。
【0029】
光誘起架橋反応を、紫外線を照射することによって開始することが有利である。特に、露光後に熱処理工程(特に露光後焼成工程)を行う場合、有利である。ここで、熱処理工程時の温度が最大140℃、特に100℃である場合、有利である。露光後焼成工程(PEB)の後、OFETを形成するために少なくとも1つの他のパターン形成を行う場合、有利である。
【0030】
ポリマー組成物の塗布は、スピンコーティング、印刷または噴射により行う場合、より有利である。
【0031】
架橋反応は、不活性ガス雰囲気、特にN雰囲気下で行う場合、有利である。
【0032】
ポリマー組成物の塗布後、およびポリマー薄膜の形成後に、特に100℃で乾燥工程を行う場合、有利である。
【0033】
OFETを形成するために、ゲート誘電層に、ソースドレイン層を塗布する場合、有利である。
【0034】
最後に、ソースドレイン層に、OFETを形成するために、特に半導体であるペンタセンからなる能動層を塗布する場合、有利である。この能動層にパッシベーション層が設けられる場合、有利である。
【0035】
本発明について、以下に、添付の図面を参照して複数の実施形態についてより詳細に説明する。
【0036】
図1は、有機電界効果トランジスタを示す概略図である。
【0037】
図2は、PVPと、架橋剤である4−ヒドロキシメチルベンジルアルコールとを含むポリマーゲート誘電層の光誘起架橋反応を示す例である。
【0038】
図3aは、求電子的に架橋されたゲート誘電層を有するOFETの出力特性を示す図である。
【0039】
図3bは、求電子的に架橋されたゲート誘電層を有するOFETの伝導特性を示す図である。
【0040】
図4は、オシロスコープ画像の軌跡を示す図である。
【0041】
OFETは、全てパターン形成された複数の層(膜)からなる電子素子であり、各層の結合により集積回路が形成される。ここで、図1に、下部接触構造におけるこのようなトランジスタの基本的な構成を示す。
【0042】
基板1上に、ゲート電極2が形成される。ゲート電極2は、ゲート誘電層3によって覆われている。後述するように、本発明の方法に係る実施形態では、ゲート電極部2が上に形成された基板1を出発材料とし、その上にゲート誘電層3を設ける。ゲート誘電層3上にはドレイン層4aと、ソース層4bとが形成される。このドレイン層4aと、ソース層4bとは、両方とも、能動半導体層5に接続されている。能動層5の上にはパッシベーション層6が形成される。
【0043】
ソース層4bは、配線層7に接続されている。
【0044】
ここに記載する本発明の実施形態にとって決定的であるのは、ゲート誘電層3の堆積および処理である。
【0045】
本発明の回路およびその製造方法により、ゲート誘電層を有するOFETを提供するという目的を、特に、優れた機械的、化学的および電気的特性を有し、かつ、同時に処理温度を低くした有機ICによって達成している。
【0046】
この場合、OFETは、基本的に4つの成分を有する混合物(ポリマー組成物)から製造できる誘電層を有する。この4つの成分とは、ベースポリマーと、架橋剤と、光酸発生剤と、溶媒とである。ここで本発明の回路の一実施形態では、ポリマー組成物は以下の成分を有する。すなわち、
a)架橋可能なベースポリマーとして、PVPと、
b)求電子性の架橋剤として、4−ヒドロキシメチル−ベンジルアルコールと、
c)光酸生成剤(PAG)として、トリフェニルスルホニウム−ヘキサフレート(triphenylsulfonium hexaflat)と、
d)溶媒として、例えばアルコールまたはPGMEAと、を有する。
【0047】
このポリマー組成物を、これに応じて準備されている基板1(ゲート構造2は、すでに基板1の上に規定されている)に塗布される。ポリマー組成物は、例えば、印刷、スピンコーティングまたは噴射により塗布される。これに引き続く乾燥工程では、適度な温度(約100℃)で、ポリマー組成物を基板に固定する。
【0048】
続いて、紫外線を用いた露光工程を行う。ここで、紫外線の波長および照射時間は、用いられる光酸発生剤に応じて決まる。次の熱処理工程(最大140℃、露光後焼成工程(PEB))において架橋反応を開始する光酸が、光酸発生剤から発生する。
【0049】
図2は、例えば架橋剤として4‐ヒドロキシメチルベンジルアルコールを用いた、PVPのポリマーゲート誘電体の光誘起された求電子性架橋反応を示している。光酸発生剤として、トリフェニルスルホニウム−ヘキサフレートを使用する。
【0050】
光化学的に誘起された架橋反応の結果、架橋された材料と架橋されていない材料とでは、可溶性が異なる。したがって、ゲート誘電層3をパターン形成するために、マスクを用いて露光領域と非露光領域との範囲を規定する。
【0051】
この方法を用いることにより、公知の方法(Halik他の論文(2002年)参照)に比べて、架橋に必要な温度を60℃以上下げることができる。用いられる温度は、基板にとって問題とならない。
【0052】
ここで、ゲート誘電層3の基本的な特性は、ベースポリマーにより決まる。ベースポリマーとしては、原則的にはすべてのフェノール含有ポリマーおよびコポリマーが適しており、例えば、ポリ−4−ビニルフェノール、ポリ−4−ビニルフェノール−コ−メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、または、ポリ−4−ビニルフェノール−コ−メタクリル酸−メチルエステルが適している。
【0053】
ポリマー組成物中の架橋剤およびその濃度を選択することにより、ポリマー層の機械的特性と、化学物質に対する抵抗性とを確実に制御することができる。
【0054】
光酸発生剤を選択することにより、架橋反応の開始のための波長および照射線量を制御できる。ここで、露光後焼成工程(PEB)の温度によって、架橋工程の時間が決まる。なぜなら、架橋工程の時間は、光を発生させる(photo generated acid)酸の拡散に応じてほぼ決定されるからである。
【0055】
溶媒を選択することにより、組成物の薄膜形成特性を決めることができる。
【0056】
以下に、2つのポリマー組成物の例を示す。この2つの組成物は架橋剤の割合のみが互いに異なっている。
【0057】
組成物1は、プロピレングリコールモノメチルエーテル酢酸塩(PGMEA)の10%溶液である。この中に、100部のベースポリマーと、10部の架橋剤と、2.5部の光酸発生剤とが存在する。
【0058】
ベースポリマーとしての2gのPVP(MWは約20000)と、架橋剤としての200mgの4−ヒドロキシメチル−ベンジルアルコールとの混合物を、振盪機上で、溶媒としての20.5gのPGMEAに溶かす(約3時間)。
【0059】
続いて、光酸発生剤として、50mgのトリフェニルスルホニウム−ヘキサフレートを加え、溶液全体をさらに1時間振る。使用する前に、ポリマー溶液を0.2μmのフィルターにかける。
【0060】
組成物2は、PGMEAの10%溶液である。この中に、100部のベースポリマーと、20部の架橋剤と、2.5部の光酸発生剤とが存在する。したがって、架橋剤の割合は、組成物1の2倍である。
【0061】
ベースポリマーとしての2gのPVP(MWは約20000)と、架橋剤としての400mgの4−ヒドロキシメチル−ベンジルアルコールとの混合物を、振盪機上で、溶媒としての20.5gPGMEAに溶かす(約3時間)。続いて、光酸発生剤として、50mgのトリフェニルスルホニウム−ヘキサフラットを加え、溶液全体をさらに1時間振盪する。使用する前に、ポリマー溶液を0.2μmのフィルターにかける。
【0062】
薄膜調製
2mlの組成物1を、スピンコーターを用いて、準備済みの基板(Tiゲート構造部を有するPEN(ポリエチレンナフタレート))に、4000回転/分で22秒間塗布する。続いて、100℃で2分間、ホットプレート上で乾燥を行う。次に、この層を露光する(波長365nm、時間30秒、照射強度7mW/cm)。
【0063】
次に、露光後焼成工程を、140℃の炉において、400mbarのN雰囲気下で、20分間行う。
【0064】
組成物2の薄膜調製も同様に行う。
【0065】
ゲート誘電層のパターン形成
パターン形成を、上記例に示したように行うが、架橋されたポリマー層(ゲート誘電層3)を明視野のクロムマスク(クロムオンガラス、COG)によって露光するという点が異なっている。露光後焼成工程の後、架橋されていない誘電体(つまり、露光されなかった誘電層3の部分)を、アセトンによって溶かして除去する。露光された部分には、パターン形成された誘電層3が残る。
【0066】
続いて、ソースドレイン層4a・4bを通常の方法で堆積し、パターン形成する(30nmのAuを熱蒸着し、フォトリソグラフィによりパターン形成し、I/KI溶液を用いてウェット化学エッチングを行う)。
【0067】
組成物1の場合、ゲート誘電層2の層の厚さは、200nmである。層の粗さは、50μmにつき0.7nmである。
【0068】
組成物2の場合、ゲート誘電層の層の厚さは、210nmである。層の粗さは、50μmにつき0.7nmである。
【0069】
能動素子5(ここでは、ペンタセン)を熱蒸着させることにより、トランジスタおよび回路は完成する。パッシベーション層6以外の図1で示したOFETの構造は、このようにして形成される。
【0070】
本明細書では、OFETを用いた集積回路に用いるためにゲート誘電層3を低温で製造するための、ポリマー組成物およびその使用に関する実施形態について説明した。このゲート誘電層3の特徴は、製造時の処理温度が低いことに加え、優れた熱特性、化学特性、機械特性および電気特性を有していることである。
【0071】
図3aは、求電子的に架橋されたゲート誘電体を有するペンタセンOFETの出力特性を示す。図3bは、同じ構造について、OFETの伝導特性を示す図である(μ=0.8cm/Vs、on/off比=10)。図4は、オシロスコープの軌跡を再現した図である。段毎に80μ秒の信号遅延で動作する5段のリング発振器の特性曲線を示す。
【0072】
これらの図に関して、OFETを、実施形態において集積回路として用いた。しかし、基本的に、本発明の集積回路は、誘電層が用いられる他の構造を有していてもよい。 本発明は、上述の好適な実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明の装置および本発明の方法を基本的に異なる実施形態に用いる多くの変形例が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】有機電界効果トランジスタを示す概略図である。
【図2】PVPと、架橋剤としての4−ヒドロキシメチルベンジルアルコールとを含むポリマーゲート誘電層の架橋反応の例である。
【図3a】求電子的に架橋されたゲート誘電層を有するOFETの出力特性を示す図である。
【図3b】求電子的に架橋されたゲート誘電層を有するOFETの伝導特性を示す図である。
【図4】オシロスコープ画像の軌跡を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート誘電層
4a ドレイン層
4b ソース層
5 能動層
6 パッシベーション層
7 配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体、特に誘電層を有する有機電界効果トランジスタ(OFET)を備えた集積回路であって、
前記誘電層が、
a)少なくとも1つの架橋可能なベースポリマーを100部と、
b)求電子性の架橋剤として、少なくとも1つのジベンジルアルコール化合物またはトリベンジルアルコール化合物を10〜20部と、
c)少なくとも1つの光酸発生剤を0.2〜10部と、
d)前記a)〜c)が溶解されている少なくとも1つの溶媒と、からなるポリマー組成物により製造可能である、集積回路。
【請求項2】
前記少なくとも1つのベースポリマーが、フェノール含有ポリマーまたはコポリマーであり、特に、ポリ−4−ビニルフェノール、ポリ−4−ビニルフェノール−コ−メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、または、ポリ−4−ビニルフェノール−コ−メタクリル酸−メチルエステルであることを特徴とする請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記求電子性の架橋剤である少なくとも1つのジベンジルアルコール化合物またはトリベンジルアルコール化合物が、4‐ヒドロキシメチル−ベンジルアルコールであることを特徴とする請求項1または2に記載の集積回路。
【請求項4】
少なくとも1つの架橋剤は、以下の構造のうちの1つを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集積回路。
【化1】

(なお、R1は、−O−、−S−、−SO−、−S−、−(CH−であり、x=1〜10であり、さらにR1は、
【化2】

なお、R2は1〜10個の炭素原子を有するアルキル、または、アリールである)
【請求項5】
前記少なくとも1つの光酸発生剤が、紫外線が照射される際に、ベンジルアルコールのヒドロキシ基に陽子を渡すための光酸を生成する化合物であることを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載の集積回路。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光酸発生剤が、スルホニウム塩またはヨードニウム塩、特にトリフェニルスルホニウム−ヘキサフレートであることを特徴とする請求項5に記載の集積回路。
【請求項7】
前記少なくとも1つの溶媒がアルコールであり、特に、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル酢酸塩(PGMEA)、ジオキサン、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、キシレン、または混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の集積回路。
【請求項8】
前記ベースポリマーと、架橋剤と、光酸発生剤との割合は、5〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の集積回路。
【請求項9】
有機半導体、特に誘電層を有する有機電界効果トランジスタ(OFET)を備えた集積回路を製造する方法において、
a)請求項1に記載のポリマー組成物を、特に、予めパターン形成されたゲート電極(2)を有する基板(1)上に塗布し、次に、
b)ゲート誘電層(3)の架橋領域を形成するために、光誘起架橋反応を行うことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記光誘起架橋反応は、紫外線を照射することによって開始されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
露光後に熱処理工程、特に露光後焼成工程を行うことを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱処理工程時の温度が最大140℃、特に100℃であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記露光後焼成工程の後、OFETを形成するために少なくとも1つの他のパターン形成を行うことを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー組成物の塗布は、スピンコーティング、印刷または噴射により行うことを特徴とする請求項9〜13の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項15】
前記架橋反応は、不活性ガス雰囲気、特にN雰囲気下で行うことを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー組成物の塗布後に、特に100℃で乾燥工程を行うことを特徴とする請求項9〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ゲート誘電層(3)に、ソースドレイン層(4a,4b)を塗布することを特徴とする請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ソースドレイン層(4a,4b)に、OFETを形成するために、特にペンタセンからなる能動層(5)を塗布することを特徴とする請求項9〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記能動層(5)上に、パッシベーション層(6)が設けられることを特徴とする請求項9〜18の少なくとも1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−504641(P2007−504641A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524220(P2006−524220)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001903
【国際公開番号】WO2005/023940
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501209070)インフィネオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト (331)
【Fターム(参考)】