説明

有機半導体化合物及び有機半導体高分子並びにこれを含むトランジスタ及び電子素子

【課題】有機半導体化合物及びこれを重合して得られる有機半導体高分子を提供する。
【解決手段】下記の一般式1で表わされる有機半導体化合物および有機半導体高分子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体化合物及び有機半導体高分子並びにこれを含むトランジスタ及び電子素子に関し、特に、優れた電荷移動度を有し、しかも、溶液工程によって製造することのできる有機半導体化合物及び有機半導体高分子並びにこれを含むトランジスタ及び電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の情報化社会の発展には目を見張るものがあり、これに伴い、従来のCRT(Cathode Ray Tube)が有する高重量や高体積といった欠点を改善した新規な画像表示装置の開発が望まれている。これにより、液晶表示装置(Liquid Crystal Display Device;LCD)、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode;OLED)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel;PDP)、SED(Surface−conduction Electron−emitter Display Device)などの種々のフラットパネル表示装置が注目を集めている。
【0003】
この種のフラットパネル表示装置のスイッチング素子として、アモルファスシリコンを半導体層として用いた薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)が汎用されている。
アモルファスシリコン薄膜トランジスタは、良好な均一度を有し、しかも、ドープ状態では高い電気的特性を示しつつも、未ドープの状態では優れた絶縁性質を有することから、広く使用されている。
【0004】
しかしながら、従来、アモルファスシリコン薄膜トランジスタを基板に蒸着するためには、通常、約300℃の高温環境下で工程を行うことを余儀なくされるという制限があり、フレキシブルディスプレイ(flexible display)を実現するためのポリマー基板(polymer substrate)などには適用することが困難であるという問題点があった。
【0005】
これを解消するために、有機半導体物質を用いた有機薄膜トランジスタ(Organic Thin Film Transistor;OTFT)が提案されている。
有機薄膜トランジスタは、一般に、基板と、ゲート電極と、絶縁層と、ソース/ドレイン電極、及びチャンネル領域を備えてなり、ソース電極及びドレイン電極の上にチャンネル領域が形成されるボトムコンタクト(BC)型の有機薄膜トランジスタと、マスク蒸着などの方法でチャンネル領域の上に金属電極が形成されるトップコンタクト(TC)型有機薄膜トランジスタとに大別できる。
【0006】
有機薄膜トランジスタ(OTFT)のチャンネル領域に満たされる低分子系もしくはオリゴマー有機半導体物質としては、メロシアニン、フタロシアニン、ペリレン、ペンタセン、C60、チオフェンオリゴマーなどが挙げられ、これらの低分子系もしくはオリゴマー有機半導体物質は、主として真空プロセスによって薄膜としてチャンネル領域に形成される。
有機半導体高分子材料は、プリント技術などの溶液加工を用いて、安価に大面積を加工することができて加工性の面でメリットがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記従来の薄膜トランジスタにおける問題点に鑑みてなされたものであって、、優れた電荷移動度を有し、しかも、溶液工程によって製造し得る有機半導体化合物及びこれを重合して得られる有機半導体高分子を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記有機半導体化合物又は有機半導体高分子を含むトランジスタを提供することにある。
また、本発明のさらに他の目的は、上記有機半導体化合物又は有機半導体高分子を含む電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明による有機半導体化合物は、有機半導体化合物であって、下記の一般式1で表わされることを特徴とする。
【化1】

前記式中、X〜Xは、それぞれ独立して、S、N又はCR50(ここで、R50は、水素、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C20のアリール基である)から選択され、但し、X及びXの内の少なくとも一方はSであり、X及びXの内の少なくとも一方はSであり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC1〜C20のアルコキシ基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキロキシ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーロキシ基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基、電子吸引性(electron withdrawing)イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、NR5152、C(O)OR53、C(O)NR5455(ここで、R51〜R55は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択され、又は、R〜Rのうちの隣り合う2つの置換基は互いに連結されてピレン部分(moiety)と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC1〜C20のアルコキシ基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキロキシ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーロキシ基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、NR5152、C(O)OR53、C(O)NR5455(ここで、R51〜R55は前記R51〜R55と同じである)及びこれらの組み合わせよりなる群から選択され、但し、X及びXの内の一方がSで他方がCR50(ここで、R50は前記R50と同じである)であり、X及びXの内の一方がSで他方がCR50(ここで、R50は前記R50と同じである)である場合、R〜Rの内の少なくとも一つは、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、あるいは、R〜Rの内の隣り合う2つの置換基が互いに連結されてピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成する、ものとする。
【0009】
上記の一般式1で表わされる有機半導体化合物は4つのベンゼン環が連結されたピレン基本構造を含み、第1のベンゼン環に連結されたR〜R官能基と、第2のベンゼン環に連結されたR〜R官能基とを含む。基本構造の第3及び第4のベンゼン環は、それぞれX、X及びX、Xにそれぞれ連結されている。基本構造は、R及びR官能基をさらに含む。
前記一般式1で表わされる有機半導体化合物は、下記の一般式2で表される有機半導体化合物であることが好ましい。
【化2】

前記式中、R〜Rは、前記一般式1のR〜Rと同じである。
前記電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基は、下記の一般式3で表わされる官能基を含むことが好ましい。
【化3】

前記式中、Yは、水素、C1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3〜C20のシクロアルキル基、C6〜C30のアリール基、C1〜C16の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、又はC3〜C16のシクロアルコキシアルキル基である。
前記電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基の具体例としては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリゾリル基、テトラゾリル基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリニル基、イソキノリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリミドピリミジニル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾセレナジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナントリジニル基、及びこれらの組み合わせを含むことが好ましい。
前記硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基は、下記の一般式4で表されるものから選択されるいずれか一つであることが好ましい。
【化4】

前記式中、Yは、水素、C1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3〜C20のシクロアルキル基、C6〜C30のアリール基、C1〜C16の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、又はC3〜C16のシクロアルコキシアルキル基である。なお、Yが複数存在する場合、同じ又は異なってもよい。
前記一般式1中のR及びRは、チオフェニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリゾリル基、テトラゾリル基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリニル基、イソキノリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリミドピリミジニル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾセレナジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナントリジニル基、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明による有機半導体高分子は、有機半導体高分子であって、下記の一般式5で表わされる構造単位を含むことを特徴とする。
【化5】

前記式中、X〜Xは、それぞれ独立して、S、N又はCR50(ここで、R50は、水素、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C20のアリール基である)から選択され、但し、X及びXの内の少なくとも一方はSであり、XおよびXのうちの少なくとも一方はSであり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC1〜C20のアルコキシ基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキロキシ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーロキシ基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、NR5152、C(O)OR53、C(O)NR5455(ここで、R51〜R55は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択され、又は、R〜Rのうちの隣り合う2つの置換基は互いに連結されてピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、但し、X及びXの内の一方がSで他方がCR50(ここで、R50は前記R50と同じである)であり、X及びXの内の一方がSで他方がCR50(ここで、R50は前記R50と同じである)である場合、R〜Rの内の少なくとも一つは、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、あるいは、R〜Rの内の隣り合う2つの置換基が互いに連結されてピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換若しくは無置換のC6〜C30の芳香族環基(aromatic ring group)、置換若しくは無置換のC4〜C14のヘテロ芳香族環基(heteroaromatic ring group)、又は置換若しくは無置換のC6〜C30の縮合多環基であり、p及びqは、それぞれ独立して、0〜10の整数であり、p又はqがそれぞれ2以上の整数である時、複数のAr及び複数のArは互いに異なる、ものとする。
【0011】
前記一般式5で表わされる構造単位を含む有機半導体高分子は、下記の一般式6で表わされる構造単位を含むことが好ましい。
【化6】

前記式中、R〜R、Ar及びArは、前記一般式5のR〜R、Ar及びArと同じである。
前記Ar及びArは、少なくとも一つのチオフェンを含み、下記の一般式7で表わされるものであることが好ましい。
【化7】

前記式中、R55は、水素、C1〜C20のアルキル基であり、Ar’は、C6〜C30のアリーレン基、C6〜C30の縮合多環基、C2〜C30のヘテロ芳香族環基、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、又はこれらの組み合わせよりなる群から選択され、xは、1〜7の整数であり、yは、0〜4の整数である。
上記の一般式7中、チオフェン構造単位とAr’構造単位は、交互に配列されるものやランダムに配列されるものも含まれる。前記電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基の具体例は、上述の通りである。
前記Ar及びArは、置換若しくは無置換のフェニレン基、置換若しくは無置換のチオフェン基、置換若しくは無置換のベンゾチオフェン基、置換若しくは無置換のチエノチオフェン基(thienothiophene group)、置換若しくは無置換のチアゾール基(thiazole group)、置換若しくは無置換のチアゾロチアゾール基(thiazolothiazole group)、置換若しくは無置換のフルオレン基、置換若しくは無置換のカルバゾール基、及びこれらの組み合わせから選択されることが好ましい。
前記一般式5で表わされる構造単位を含む有機半導体高分子は、下記の一般式(8−1)〜一般式(8−4)の内の一つであることが好ましい。
【化8】

【化9】

前記一般式(8−1)及び一般式(8−2)中、R及びRは、C1〜C10のアルキル基又は電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、或は、R又はRがピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、R及びRの内の少なくとも一方は、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、或は、R又はRがピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、R及びRは、C1〜C20のアルキル基であり、a、b、c、及びdは、それぞれ0〜10の整数であり、a+b及びc+dは、それぞれ10以下であり、nは、高分子の重合度である。
【化10】

【化11】

前記一般式(8−3)及び一般式(8−4)中、R及びRは、C1〜C10のアルキル基又は電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、或は、R又はRがピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、R及びRは、C1〜C20のアルキル基であり、a、b、c、及びdは、それぞれ0〜10の整数であり、a+b及びc+dは、それぞれ10以下であり、nは、高分子の重合度である。
前記有機半導体高分子は、5000〜200000の数平均分子量(Mn)を有することが好ましい。
前記有機半導体高分子は、p型有機半導体高分子であることが好ましい。
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明によるトランジスタは、トランジスタであって、上記有機半導体化合物又は有機半導体高分子を含むことを特徴とする。
【0013】
前記トランジスタは、基板の上に位置するゲート電極と、相対向するように配置されチャンネル領域を限定するソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極及びドレイン電極とゲート電極とを電気的に絶縁させる絶縁層と、前記チャンネル領域に形成される活性層とを備え、前記活性層は、前記有機半導体化合物又は有機半導体高分子を含むことが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明による、電子素子であって、上記有機半導体化合物又は有機半導体高分子を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る有機半導体化合物及び有機半導体高分子並びにこれを含むトランジスタ及び電子素子によれば、有機溶媒への優れた溶解性を有し、しかも、優れた共平面性(coplanarity)を有することから、素子の電荷移動度(charge mobility)を改善することができるという効果がある。
これにより、溶液工程によって薄膜を形成することができて大面積の素子の製作に有利であり、しかも、素子の製作コストを節減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態によるトランジスタの概略断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態によるトランジスタの概略断面図である。
【図3】本発明の実施例1で得られた有機半導体高分子のHNMR分析結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例2で得られた有機半導体高分子のHNMR分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る有機半導体化合物及び有機半導体高分子並びにこれを含むトランジスタ及び電子素子を実施するための形態の具体例を図面を参照しながら説明する。
【0018】
但し、これらの実施形態は単なる例示に過ぎず、これらによって本発明が制限されることはなく、本発明は特許請求の範囲の範ちゅうによって定義される。
層、膜、基板などの部分が他の構成要素の「上に」あるとしたとき、これは、他の構成要素の「直上に」ある場合だけではなく、これらの間に他の構成要素がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「真上に」あるとしたときには、これらの間に他の部分がないことを意味する。
【0019】
本明細書において、特に言及がない限り、「ヘテロ芳香族環基」とは、C2〜C30のヘテロアリール基、C3〜C30のヘテロシクロアルケニル基又はC3〜C30のヘテロシクロアルキニル基を意味する。
「縮合多環基」とは、C3〜C30のシクロアルキル基、C3〜C30のシクロアルケニル基、C2〜C30のヘテロシクロアルキル基、C2〜C30のヘテロアリール基、及びC3〜C30のヘテロシクロアルケニル基よりなる群から選択される1以上の環とヘテロ芳香族環基とが互いに連結された融合環を意味する。
ここで「ヘテロ」とは、N、O、S、Si、及びPよりなる群から選択されるヘテロ原子を含む化合物を意味し、一つの環中に1〜4個のヘテロ原子が含まれていてもよい。
【0020】
本明細書において、「置換」とは、官能基や化合物中の水素が、フルオロ基、C1〜C30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C1〜C20のフルオロアルキル基、C1〜C20のペルフルオロアルキル基(C2n+1)、C1〜C30の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、C3〜C30のシクロアルコキシ基、C2〜C30の直鎖又は分岐鎖のアルコキシアルキル基、C4〜C30のシクロアルコキシアルキル基、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される官能基で置換されることを意味する。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、下記の一般式1で表わされる有機半導体化合物を提供する。
【化12】

前記式中、X〜Xは、それぞれ独立して、S、N又はCR50(ここで、R50は、水素、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C20のアリール基である)から選択され、但し、X及びXの内の少なくとも一方はSであり、X及びXの内の少なくとも一方はSであり、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC1〜C20のアルコキシ基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキロキシ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーロキシ基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基、電子吸引性(electron withdrawing)イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、NR5152、C(O)OR53、C(O)NR5455(ここで、R51〜R55は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択され、
又は、R〜Rのうちの隣り合う2つの置換基は互いに連結されてピレン部分(moiety)と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、
及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC1〜C20のアルコキシ基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキロキシ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーロキシ基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、NR5152、C(O)OR53、C(O)NR5455(ここで、R51〜R55は前記R51〜R55と同じである)及びこれらの組み合わせよりなる群から選択され、
但し、X及びXの内の一方がSで他方がCR50(ここで、R50は前記R50と同じである)であり、X及びXの内の一方がSで他方がCR50(ここで、R50は前記R50と同じである)である場合、R〜Rの内の少なくとも一つは、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、あるいは、R〜Rの内の隣り合う2つの置換基が互いに連結されてピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成する、ものとする。
【0022】
一般式1の有機半導体化合物は、ピレン母体構造によって優れた共平面性を有し、このようなピレン母体構造と融合されたチオフェニル環基またはチアゾリル環基構造によって有機半導体特性を有する。
このように優れた共平面性を有する有機半導体化合物は、分子間の電荷の移動が円滑に行われるので良好な半導体特性を示し、その結果、トランジスタに好適に使用することができる。このような有機半導体化合物は、カーボンナノチューブ(Carbon nanotube;CNT)、フラーレン(fullerene)、グラフェン(graphene)などとの混合性に優れていることから、太陽電池などに使用することができる。
【0023】
一般式1の有機半導体化合物において、X及びXを含むヘテロ環、とX及びXを含むヘテロ環がチオフェニル基である場合、R〜Rの内の少なくとも一つは、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、或は、R〜Rの内の隣り合う2つの置換基が互いに連結されてピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成するようにしてHOMOレベルを下げて有機半導体化合物、又はこれから製造される有機半導体高分子の酸化安定性と電気的な信頼性を向上させ、共平面性が高まることから分子間の相互作用が増大してキャリアの移動度の向上を期待することができる。
【0024】
一般式1の有機半導体化合物において、X及びXを含むヘテロ環、とX及びXを含むヘテロ環がチアゾールである場合、電子吸引性基がヘテロ環に含まれることによりHOMOレベルを下げて有機半導体化合物、又はこれから製造される有機半導体高分子の酸化安定性と電気的な信頼性を向上させる。
一般式1の有機半導体化合物において、R及びRは、置換若しくは無置換のチオフェニル基であることが好ましい。
【0025】
前記一般式1で表わされる有機半導体化合物は、下記の一般式2で表される有機半導体化合物であることが好ましい。
【化13】

式中のR〜Rは、一般式1のR〜Rと同じである。
【0026】
電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基の例としては、下記の一般式3で表わされる官能基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化14】

前記一般式3中の、Yは、水素、C1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3〜C20のシクロアルキル基、C6〜C30のアリール基、C1〜C16の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、又はC3〜C16のシクロアルコキシアルキル基である。
一般式3で表される置換基が一般式1に結合される位置は特に制限されないため、別途に表示しない。
【0027】
電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基の具体例としては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリゾリル基、テトラゾリル基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリニル基、イソキノリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリミドピリミジニル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾセレナジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナントリジニルなどが挙げられる。
【0028】
硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基は、下記の一般式4から選ばれ得る。
【化15】

一般式4中のYは、水素、C1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3〜C20のシクロアルキル基、C6〜C30のアリール基、C1〜C16の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、又はC3〜C16のシクロアルコキシアルキル基である。
また、Yが複数存在する場合、同じ又は異なってもよい。
一般式4で表わされる置換基が一般式1に結合される位置は特に制限されないため、別途に表示しない。
【0029】
本発明の他の実施形態によれば、下記の一般式5で表わされる構造単位を含む有機半導体高分子を提供する。
【化16】

一般式5中のX〜X及びR〜Rは、一般式1のX〜X及びR〜Rと同じであり、
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換若しくは無置換のC6〜C30の芳香族環基、置換若しくは無置換のC4〜C14のヘテロ芳香族環基、又は置換若しくは無置換のC6〜C30の縮合多環基であり、
p及びqは、それぞれ独立して、0〜10、又は1〜10の整数であり、p又はqがそれぞれ2以上の整数であるとき、複数のAr及び複数のArは互いに異なってもよい。
p及びqの和は、1以上であることが好ましい。
一般式5において、Ar構造単位、ピレン誘導体構造単位、及びAr構造単位は、交互に配列されてもよく、ランダムに配列されてもよい。
【0030】
前記一般式5で表わされる構造単位を含む有機半導体高分子は、下記の一般式6で表わされる構造単位を含む有機半導体高分子であってもよい。
【化17】

一般式6中のR〜Rは、一般式1のR〜Rと同じであり、
Ar及びArは、一般式5のAr及びArと同じである。
一般式6において、Ar構造単位、ピレン誘導体構造単位、及びAr構造単位は、交互に配列されてもよく、ランダムに配列されてもよい。
【0031】
Ar及びArは、少なくとも一つのチオフェンを含み、下記の一般式7で表わされ得る。
【化18】

一般式7中のR55は、水素、C1〜C20のアルキル基であり、Ar’は、C6〜C30のアリーレン基、C6〜C30の縮合多環基、C2〜C30のヘテロ芳香族環基、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、又はこれらの組み合わせよりなる群から選択され、xは、1〜7の整数であり、yは、0〜4又は1〜4の整数である。
一般式7において、チオフェン繰り返し単位とAr’構造単位は、交互に配列されるものやランダムに配列されるものも含む。
電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基の具体例は、上述の通りである。
【0032】
Ar及びArは、置換若しくは無置換のフェニレン基、置換若しくは無置換のチオフェン基、置換若しくは無置換のベンゾチオフェン基、置換若しくは無置換のチエノチオフェン基、置換若しくは無置換のチアゾール基、置換若しくは無置換のチアゾロチアゾール基、置換若しくは無置換のフルオレン基、置換若しくは無置換のカルバゾール基、及びこれらの組み合わせから選ばれ得る。
【0033】
一般式5で表わされる構造単位を含む有機半導体高分子は、下記の一般式(8−1)〜一般式(8−4)のうちの一つであってもよい。
【化19】

【化20】

一般式(8−1)及び一般式(8−2)中のR及びRは、t−ブチル基などのC1〜C10のアルキル基、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、R又はRがピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、R及びRの内の少なくとも一つは、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、或は、R又はRがピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、
及びRは、ドデシル基などのC1〜C20のアルキル基であってもよく、a、b、c、及びdは、0〜10、又は1〜10の整数であり、a+b及びc+dは、それぞれ10以下であり、nは、高分子の重合度である。
なお、R及びRは、ピレン部分と融合されたチオフェニル環基を中心として互いに対称となる位置にあってもよい。
【0034】
【化21】

【化22】

一般式(8−3)及び一般式(8−4)中のR及びRは、t−ブチル基などのC1〜C10のアルキル基、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、R又はRがピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、
及びRは、ドデシル基などのC1〜C20のアルキル基であり、a、b、c、及びdは、それぞれ0〜10、又は1〜10の整数であり、a+b及びc+dは、それぞれ10以下であり、nは、高分子の重合度である。
なお、R及びRは、ピレン部分と融合されたチアゾリル環基を中心として互いに対称となる位置にあってもよい。
【0035】
一般式(8−1)及び一般式(8−2)中のR及びRのうちの少なくとも一つは、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基である場合には、下記の一般式(9−1)〜一般式(9−4)が挙げられ、R又はRがピレン部分と融合されたチアゾール環基を形成した場合には、下記の一般式(9−5)又は一般式(9−6)が挙げられる。
【0036】
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

一般式(9−1)〜一般式(9−6)中のR、R、a、b、c、d、及びnは、一般式(8−1)及び一般式(8−2)と同じであり、R又はRは、ドデシル基などのC1〜C20のアルキル基であり得る。
【0037】
有機半導体高分子は、約5000〜約200,000の数平均分子量(Mn)を有してもよく、又、約10,000〜約100,000の数平均分子量(Mn)を有してもよい。
上記の範囲の数平均分子量を有する場合、インクジェットプリンティングやドロップ−キャスティング(drop−casting)などの溶液工程作業に役立つ。
又、有機半導体化合物又は有機半導体高分子は、p型の有機半導体化合物又は有機半導体高分子であってもよい。
【0038】
一般式5の構造単位を含む有機半導体高分子は、Stille etal(Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1986, Vol. 25, pp. 508−524)、Suzuki et al(J. Am. Chem. Soc. 1989, Vol. 111, pp. 314−321)、McCullough et al (US 6,166,172, 1999)、又はYamamoto et al.(Macromolecules 1992, Vol. 25, pp. 1214−1226)等の文献に基づき合成され得る。
【0039】
例えば、一般式5の構造単位を含む有機半導体高分子の場合、下記の反応式1から明らかなように、単量体を反応させて製造することができる。
【化29】

反応式1中のX〜X、R〜R、Ar及びAr、p及びqは、一般式5のX〜X、R〜R、Ar及びAr、p及びqと同じであり、
X、X’、Y、Y’、ZおよびZ’は、それぞれ独立して、Br、I、Clなどのハロゲン、トリアルキルスズ基、及びボロン−含有基(boron−containg group)よりなる群から選択される反応性基(reactive group)であるが、これに限定されるものではない。
【0040】
トリアルキルスズ基は、下記の一般式10で表され、ボロン−含有基は、下記の一般式11又は12で表され得る。
【化30】

一般式10中のR31〜R33は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、水素又はC1〜C7のアルキル基であり、R31〜R33のうちの少なくとも一つはアルキル基である。
【0041】
【化31】

【化32】

一般式12中のR34〜R37は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して水素又はC1〜C7のアルキル基であり、R34〜R37のうちの少なくとも一つはアルキル基である。
【0042】
反応式1の反応に供される触媒としては、下記の一般式(13−1)〜一般式(13−4)で表される有機金属触媒が挙げられる。
(化33)
Pd(L ・・・一般式13−1

(化34)
Pd(L4−yCl ・・・一般式13−2

一般式(13−1)及び一般式(13−2)中のL及びLは、トリフェニルホスフィン(PPh)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1,1’−bis(diphenylphosphino)ferrocene(dppf)、アセテート(OAc)、トリフェニルアリシン(AsPh)、トリフェニルホスファート(P(OPh))よりなる群から選択されるリガンドであり、xは2〜4の整数であり、yは1〜3の整数である。
【0043】
(化35)
Ni(L ・・・一般式13−3

(化36)
Ni(L3−yCl ・・・一般式13−4

一般式(13−3)及び一般式(13−4)中のL及びLは、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)などのジフェニルホスフィノアルカン、及びビス(1,5−シクロオクタジエン)(COD)などのシクロアルケンよりなる群から選択されるリガンドであり、xは2又は3の整数であり、yは1又は2の整数である。
【0044】
パラジウム触媒の具体例としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)化合物(Pd(PPh)のパラジウム(0)触媒が挙げられ、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(PdCl(PPh)、[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)ジクロリド(Pd(dppb)Cl)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド(Pd(dppf)Cl)、パラジウム(II)アセテート(Pd(OAc))などのパラジウム(II)触媒が挙げられる。
【0045】
ニッケル触媒の具体例としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)化合物(Ni(COD))のニッケル(0)触媒が挙げられ、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンニッケル(II)ジクロリド(Ni(dppp)Cl)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンニッケル(II)ジクロリド(Ni(dppe)Cl)などのニッケル(II)触媒が挙げられる。
【0046】
触媒の含量は、単量体の含量に応じて調節して使用することができ、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)化合物の場合、単量体に対して0.2〜15モル%の範囲で使用することができ、2〜10モル%で使用することもできる。
【0047】
重合溶媒としては、トルエン、ジメチルホルムアルデヒド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)などを使用することができる。
重合反応は、窒素雰囲気下、80〜120℃で6〜48時間行われる。
【0048】
有機半導体高分子は、トランジスタの活性層に使用することができる。
トランジスタは、基板の上に位置するゲート電極と、相対向するように位置してチャンネル領域を限定するソース電極及びドレイン電極と、ソース電極及びドレイン電極とゲート電極とを電気的に絶縁させる絶縁層と、チャンネル領域に形成される有機半導体高分子を含む活性層とを備える。
一般式1の有機半導体化合物もまたチャンネル領域に使用することができる。
【0049】
活性層は、有機半導体高分子を含む組成物をスクリーン印刷法、印刷法、スピンコート法、ディップ法(dipping)、インクジェット法などの溶液工程によって形成することでなし得る。
このように溶液工程によって活性層を形成する場合、工程コストを節減することができ、大面積の素子の製造に有利である。
【0050】
図1は、本発明の一実施形態によるトランジスタの概略断面図であり、図2は、本発明の他の実施形態によるトランジスタの概略断面図である。
本発明の両実施形態によるトランジスタは、薄膜トランジスタである。
本発明の両実施形態によるトランジスタが薄膜トランジスタである場合、薄膜の厚さは数nm〜数μmである。
【0051】
図1を参照すると、トランジスタ10は、基板12の上にゲート電極14が形成され、その上にゲート電極14を覆う絶縁層16が形成される。
絶縁層16上にチャンネル領域を限定するソース電極17a及びドレイン電極17bが形成され、これらの間のチャンネル領域に活性層18が形成され、この活性層18は有機半導体高分子を含む。
【0052】
図2を参照すると、トランジスタ20は、基板22の上にチャンネル領域を限定するソース電極27a及びドレイン電極27bが形成され、これらの間のチャンネル領域に活性層28が形成され、この活性層28は有機半導体高分子を含む。
ソース電極27a、ドレイン電極27b、及び活性層28を覆うように絶縁層26が形成され、この上にゲート電極24が形成される。
【0053】
基板12、22は、無機物、有機物、又は無機物と有機物との複合体を含むものであってもよい。
有機物としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphtnalate;PEN)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylenenaphthalate;PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリノルボルネン(polynorbornene)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone;PES)などのプラスチックが挙げられ、無機物としては、例えば、ガラス又は金属が挙げられる。
【0054】
また、ゲート電極14、24、ソース電極17a、27a及びドレイン電極17b、27bとしては、通常の金属が使用でき、具体的には、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)インジウムスズ酸化物(ITO)などを使用することができるが、これらに限定されない。
【0055】
絶縁層16、26としては、通常の高誘電率の絶縁体を使用することができ、具体的には、BaO.33SrO.66TiO(BST:Barium Strontium Titanate)、Al、Ta、La、Y、TiOなどの強誘電性の絶縁体と、PbZrO.33TiO.66(PZT)、BiTi12、BaMgF、SrBi(TaNb)、Ba(ZrTi)O(BZT)、BaTiO、SrTiO、SiO、SiN、AlONなどの無機絶縁体と、ポリイミド(polyimide)、BCB(benzocyclobutane)、パリレン(parylene)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポリビニルフェノール(polyvinylphenol)などの有機絶縁体を使用することができるが、これらに限定されない。
以上には言及されてはいないが、米国特許第5、946、551号に記載の無機絶縁体や米国特許第6、232、157号に記載の有機絶縁体なども絶縁層16、26として使用することができる。
【0056】
有機半導体高分子は、太陽電池、メモリ素子、有機発光素子(OLED)、光センサー、レーザー素子などに適用することができる。
【0057】
以下、本発明の実施例を例示する。但し、下記の実施例は本発明の単なる例示に過ぎず、本発明が下記の実施例によって限定されることはない。
【0058】
〔実施例1〕
下記の反応式2に従い有機半導体化合物と有機半導体高分子を合成する。
【化37】

【0059】
(実施例1−1)《2,7−ジ−tert−ブチル−5,10−ジブロモ−4,9−ジ(トリメチルシリルエチニル)ピレン及び2,7−ジ−tert−ブチル−4,10−ジブロモ−5,9−ジ(トリメチルシリルエチニル)ピレンの合成》
2,7−ジ−tert−ブチル−4,5,9,10−テトラブロモピレン(1mmol)、よう化第一銅(40mg)、トリメチルシリルアセチレン(trimethylsilylacetylene)(3mmol)、トリエチルアミン(triethylamine)(2ml)、及びPd(PPhCl(0.02mmol)をTHF(3ml)で混合し、60℃で一晩中攪拌する。
【0060】
固体はシリカパッド(silicapad)でろ過し、溶液は減圧乾燥し、カラムクロマトグラフィ(ヘキサン)にかけて分離する。
【0061】
分析結果は、H NMR(300MHz,CDCl)で、δ(ppm) 8.85−8.78(dd,4H),1.61(m,18H),0.43(m,18H)であり、Maldi−MS Calcd for C3440BrSi:662.1035で、Found:662.104であった。
【0062】
(実施例1−2)《2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b’]ジチオフェン及び2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b]ジチオフェンの合成》
2,7−ジ−tert−ブチル−5,10−ジブロモ−4,9−ジ(トリメチルシリルエチニル)ピレン(2,7−di−tert−butyl−5,10−dibromo−4,9−di(trimethylsilylethynyl)pyrene)及び2,7−ジ−tert−ブチル−4,10−ジブロモ−5,9−ジ(トリメチルシリルエチニル)ピレン(2,7−di−tert−butyl−4,10−dibromo−5,9−di(trimethylsilylethynyl)pyrene)混合物(200mg)を、N−メチルモルホリン(N−methylmorpholine)(1ml)に溶かし、NaS・9HO(1g)を入れた後、185℃で12時間攪拌する。
【0063】
黒変した反応混合物を常温(約24℃)まで冷却し、水及びクロロホルム(chloroform)で層を分離する。
有機層を減圧乾燥した後、カラムクロマトグラフィ(ヘキサン)にかけて分離する。
【0064】
分析結果は、H NMR(300MHz,CDCl)で、δ(ppm) 8.60(s,1H),8.58(d,1H),8.40(d,1H),8.38(s,1H),8.20−8.17(m,2H),7.68−7.66(m,2H),1.64(m,18H)であった。
【0065】
(実施例1−3)《2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b’]ジチオフェン及び2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b]ジチオフェンを含む高分子(PPDTQT)の合成》
2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b’]ジチオフェン(2,7−di−tert−butyl−pyreno[4,5−b:9,10−b’]dithiophene)及び2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b]ジチオフェン(2,7−di−tert−butyl−pyreno[4,5−b:9,10−b]dithiophene)の混合物とNBS(2eq.)とを反応させて得られたジブロモ化合物に対し、5,5’’’−ジ(トリメチルスタンニル)−3,3’’’−ジ(ドデシル)クォーターチオフェン(5,5’’’−di(trimethylstannyl)−3,3’’’−di(dodecyl)quarterthiophene)(1.0eq.)及びPd(PPh触媒(0.1eq.)を用いたスティレカップリング(Stille coupling)反応を行い、所望の高分子(PPDTQT)を得た。
【0066】
このようにして得られた有機半導体高分子のHNMRの分析結果を図3に示す。
有機半導体高分子の数平均分子量(Mn)は、13kである。
【0067】
〔実施例2〕
下記の反応式3に従い有機半導体化合物と有機半導体高分子を合成する。
【化38】

【0068】
(実施例2−1)《2,7−ジ−tert−ブチル−5,10−ジブロモ−4,9−ジ(ジフェニルメチレンアミノ)ピレン及び2,7−ジ−tert−ブチル−4,10−ジ ブロモ−5,9−ジ(ジフェニルメチレンアミノ)ピレンの合成》
2,7−tert−ブチル−4,5,9,10−テトラブロモピレン(2,7−tert−butyl−4,5,9,10−tetrabromopyrene)(10mmol)を20mlのトルエンに溶かし、Pd2(dba)3(0.4mmol)、Xantphos(0.8mmol)、およびNaO−t−Bu(50mmol)を添加し、常温(約24℃)で30分間攪拌した後、ジフェニルメタンイミン(diphenylmethanimine)(23mmol)を添加して100℃で24時間攪拌する。
【0069】
反応混合物を常温(約24℃)まで冷却した後、シリカパッドを用いてろ過して減圧濃縮させる。
クロマトグラフィ(ヘキサン:クロロホルム=3:1の体積比)にかけて所望の物質を分離する。
【0070】
分析結果は、1H NMR(300MHz, CDCl3)で、 δ(ppm)8.51(d,2H),8.09(d, 2H),7.99(br,4H),7.54(m,8H),7.22(m,4H),7.04(m,4H),1.49(t,18H)であり、Maldi−MS Calcd for C50H42Br2N2:828.17で、Found:828.17であった。
【0071】
(実施例2−2)《2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b’]ジチアゾール及び2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b]ジチアゾールの合成》
2,7−ジ−tert−ブチル−5,10−ジブロモ−4,9−ジ(ジフェニルメチレンアミノ)ピレン(2,7−di−tert−butyl−5,10−dibromo−4,9−di(diphenylmethyleneamino)pyrene)及び2,7−ジ−tert−ブチル−4,10−ジブロモ−5,9−ジ(ジフェニルメチレンアミノ)ピレン(2,7−di−tert−butyl−4,10−dibromo−5,9−di(diphenylmethyleneamino)pyrene)(1mmol)を10mlの酢酸と10mlのクロロホルムに溶かし、KSCN(10mmol)を入れ、常温(約24℃)で48時間攪拌する。
【0072】
ろ過してオレンジ色の固体を得る。この固体を硫酸(1ml)と95%エタノール(5ml)、及びNaNO2(1g)が溶解されている溶液に0℃で徐々に添加する。
1時間攪拌した後、1時間加熱して攪拌還流させ、常温(約24℃)まで冷却して冷水に注いで沈殿を得る。沈殿物をろ過してオレンジ色の固体を得る。
【0073】
分析結果は、1H NMR(300MHz,CDCl3)で、δ(ppm)8.69(m,2H),8.52(m,2H),8.46(m,2H),1.65(t,18H)であった。
【0074】
(実施例2−3)《2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b’]ジチアゾール及び2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b]ジチアゾールを含む高分子(PPDTZQT)の合成》
2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b’]ジチアゾール(2,7−di−tert−butyl−pyreno[4,5−b:9,10−b’]dithiazole)及び2,7−ジ−tert−ブチル−ピレノ[4,5−b:9,10−b]ジチアゾール(2,7−di−tert−butyl−pyreno[4,5−b:9,10−b]dithiazole)の混合物(0.2mmol)とNBS(2eq.)とを反応させて得られたジブロモ化合物に対し、5,5’’’−ジ(トリメチルスタンニル)−3,3’’’−ジ(ドデシル)クォーターチオフェン(5,5’’’−di(trimethylstannyl)−3,3’’’−di(dodecyl)quarterthiophene)(1.0eq.)及びPd(PPh3)4触媒(0.1eq.)を用いたスティレカップリング反応を行い、所望の高分子(PPDTZQT)を得た。
【0075】
このようにして得られた有機半導体高分子のHNMRの分析結果を図4に示す。
有機半導体高分子の数平均分子量(Mn)は、15kである。
【0076】
〔実施例3〕
下記の反応式4に従い有機半導体化合物と有機半導体低分子を合成する。
【化39】

【0077】
(実施例3−1)《5,10−ジブロモ−2,7−ジ−tert−ブチル−ピレン−4,9−ジアミンの合成》
5,10−ジブロモ−2,7−ジ−tert−ブチル−N4、N9−ビス(ジフェニルメチレン)ピレン−4,9−ジアミン(12.9g、15.5mmol)をTHFに溶かし、3NHBr溶液を加えた。反応混合物を6時間攪拌還流させた。
反応終了後、常温(約24℃)まで冷却して減圧濃縮を行った。得られた固体をジクロロメタンで洗浄した後、10mlのメタノールと50mlのジエチルエーテルの混合物に懸濁させた。
固体をろ過し、エーテルで洗浄して緑色の固体を得た(9.6g)。
【0078】
(実施例3−2)《N,N’−(5,10−ジブロモ−2,7−ジ−tert−ブチルピレン−4,9−ジイル)ジチオフェン−2−カルボキサミドの合成》
5,10−ジブロモ−2,7−ジ−tert−ブチル−ピレン−4,9−ジアミン(8.1g、12mmol)をジオキサンに溶かし、ジイソプロピルエチルアミンを添加した。反応混合物を0℃まで冷却し、チオフェン2−カルボニルクロリド(3.89ml、36mmol、3eq.)を添加し、反応混合物を70℃で3時間攪拌した。
反応終了後、常温(約24℃)まで冷却してろ過した後、ジエチルエーテルおよび水で洗浄した。乾燥させて白色の固体を得た(6.3g)。
【0079】
(実施例3−3)《N,N’−(5,10−ジブロモ−2,7−ジ−tert−ブチルピレン−4,9−ジイル)ジチオフェン−2−カルボチオアミドの合成》
N,N’−(5,10−ジブロモ−2,7−ジ−tert−ブチルピレン−4,9−ジイル)ジチオフェン−2−カルボキサミド(7g、9.7mmol)をテトラヒドロフラン(THF)及びトルエンに溶かし、ラウェッソン試薬(Lawesson’s reagent、19.6g、48.5mmol、5eq)を添加した後、一晩中攪拌還流させた。
反応終了後、常温(約24℃)まで冷却し、減圧濃縮した。ジエチルエーテルに懸濁して30分間攪拌した後にろ過し、黄色の固体を得た(7.3g)。
【0080】
(実施例3−4)《2,6−ジ−tert−ブチル−4,8−ジ(2−チエニル)−ピレノ[4,5]b:9,10−b’]ジチアゾールの合成》
N,N’−(5,10−ジブロモ−2,7−ジ−tert−ブチルピレン−4,9−ジイル)ジチオフェン−2−カルボチオアミド(7.2g、9.5mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)(120ml)に溶かし、セシウムカーボネート(9.3g、28.6mmol、3eq.)を添加して120℃で3時間攪拌還流させた。
反応終了後、常温(約24℃)まで冷却し、水を添加した。沈殿物をろ過し、ジクロロメタンで洗浄して黄色の固体を得た(4.5g)。
【0081】
分析結果は、1H NMR(300MHz,CDCl3−TFA−d)で、 δ(ppm)9.20(d,2H),8.54(d,2H),8.27(d,2H),8.06(d,2H),7.44(t,2H),1.61(t, 18H)であった。
【0082】
〔実施例4及び5〕
《有機半導体高分子を用いた有機薄膜トランジスタの製造》
まず、洗浄されたガラス基板に、ゲート電極としてのモリブデニュームをスパッターリング法で1000Åの厚さで蒸着した後、ゲート絶縁膜としてのSiO2をCVD法で1000Åの厚さで蒸着する。その上に、ソース−ドレイン電極としてのAuをスパッターリング法で1200Åの厚さで蒸着する。
【0083】
前記ゲート電極、ゲート絶縁膜及びソース−ドレイン電極が形成された基板をイソプロピルアルコールを用いて10分間洗浄しかつ乾燥させた後使用する。前記ゲート電極、ゲート絶縁膜及びソース−ドレイン電極が形成された基板をクロロホルムに10mMの濃度で希釈させたオクタデシルトリクロロシラン溶液に30秒間浸漬し、アセトンで洗浄して乾燥させる。実施例1及び実施例2で合成した有機半導体高分子をそれぞれクロロベンゼンに1.0重量%の濃度で溶解させて活性層形成用組成物を製造する。前記活性層形成用組成物をそれぞれソース電極とドレイン電極との間にスピンコート法で塗布し、窒素雰囲気下、150℃で1時間ベークを行うことで図1に図示されている有機薄膜トランジスタ(OTFT)素子を製作する。
【0084】
〔実施例6〕
《有機半導体高分子を用いた有機薄膜トランジスタの製造》
まず、洗浄されたガラス基板にゲート電極としてのモリブデンをスパッターリング法で 1000Åの厚さで蒸着した後、ゲート絶縁膜としてのSiOをCVD法で1000Åの厚さで蒸着する。その上に、ソース−ドレイン電極としてのAuをスパッターリング法で1200Åの厚さで蒸着する。前記ゲート電極、ゲート絶縁膜及びソース−ドレイン電極が形成された基板をイソプロピルアルコールを用いて10分間洗浄しかつ乾燥させた後使用する。実施例3で合成した有機半導体化合物をソース電極とドレイン電極との間に真空蒸着して活性層を形成することで図1に図示されているOTFT素子を製作する。
【0085】
実施例4〜6で製造されたOTFT素子に対してKEITHLEY社のSemiconductor Characterization System(4200−SCS)を用いて電流伝達特性の曲線を得た後、これによる電気的特性を以下の表1に示した。
【表1】

【0086】
上記表1における電荷移動度は下記の飽和領域(saturation region)の電流式である以下の数式1から(ISD)1/2とVを変数としたグラフを得て、その勾配から得た。
【数1】

上記数式1において、ISDはソース−ドレイン電流、μまたはμFETは電荷移動度、Cは酸化膜静電容量、Wはチャンネルの幅、Lはチャンネルの長さ、Vはゲート電圧、Vはしきい電圧である。
電流点滅比(Ion/Ioff)はオン状態の最大電流値(Ion)とオフ状態の最小電流値(Ioff)の比で求める。
上記表1から分かるように、実施例4〜6の素子は優れた電荷移動度と電流点滅比を示すことが分かる。
【0087】
尚、本発明は、上述の実施形態に限られるものではない。本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の有機半導体化合物又は有機半導体高分子は、トランジスタ、太陽電池、メモリ素子、有機発光素子(OLED)、光センサー、レーザー素子などに好適に使用される。
【符号の説明】
【0089】
10、20 トランジスタ
12、22 基板
16、26 絶縁層
14、24 ゲート電極
17a、27a ソース電極
17b、27b ドレイン電極
18、28 活性層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体化合物であって、
下記の一般式1で表わされることを特徴とする有機半導体化合物。
【化1】

前記式中、X〜Xは、それぞれ独立して、S、N又はCR50(ここで、R50は、水素、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C20のアリール基である)から選択され、但し、X及びXの内の少なくとも一方はSであり、X及びXの内の少なくとも一方はSであり、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC1〜C20のアルコキシ基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキロキシ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーロキシ基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基、電子吸引性(electron withdrawing)イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、NR5152、C(O)OR53、C(O)NR5455(ここで、R51〜R55は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択され、
又は、R〜Rのうちの隣り合う2つの置換基は互いに連結されてピレン部分(moiety)と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、
及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC1〜C20のアルコキシ基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキロキシ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーロキシ基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、NR5152、C(O)OR53、C(O)NR5455(ここで、R51〜R55は前記R51〜R55と同じである)及びこれらの組み合わせよりなる群から選択され、
但し、X及びXの内の一方がSで他方がCR50(ここで、R50は前記R50と同じである)であり、X及びXの内の一方がSで他方がCR50(ここで、R50は前記R50と同じである)である場合、R〜Rの内の少なくとも一つは、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、あるいは、R〜Rの内の隣り合う2つの置換基が互いに連結されてピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成する、ものとする。
【請求項2】
前記一般式1で表わされる有機半導体化合物は、下記の一般式2で表される有機半導体化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体化合物。
【化2】

前記式中、R〜Rは、前記一般式1のR〜Rと同じである。
【請求項3】
前記電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基は、下記の一般式3で表わされる官能基を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機半導体化合物。
【化3】

前記式中、Yは、水素、C1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3〜C20のシクロアルキル基、C6〜C30のアリール基、C1〜C16の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、又はC3〜C16のシクロアルコキシアルキル基である。
【請求項4】
前記電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基は、チアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリゾリル基、テトラゾリル基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリニル基、イソキノリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリミドピリミジニル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾセレナジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナントリジニル基、及びこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の有機半導体化合物。
【請求項5】
前記硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基は、下記の一般式4で表されるものから選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体化合物。
【化4】

前記式中、Yは、水素、C1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3〜C20のシクロアルキル基、C6〜C30のアリール基、C1〜C16の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、又はC3〜C16のシクロアルコキシアルキル基である。
【請求項6】
前記一般式1中のR及びRは、チオフェニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリゾリル基、テトラゾリル基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリニル基、イソキノリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリミドピリミジニル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾセレナジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナントリジニル基、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体化合物。
【請求項7】
有機半導体高分子であって、
下記の一般式5で表わされる構造単位を含むことを特徴とする有機半導体高分子。
【化5】

前記式中、X〜Xは、それぞれ独立して、S、N又はCR50(ここで、R50は、水素、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C20のアリール基である)から選択され、但し、X及びXの内の少なくとも一方はSであり、XおよびXのうちの少なくとも一方はSであり、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC1〜C20のアルコキシ基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキロキシ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーロキシ基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、NR5152、C(O)OR53、C(O)NR5455(ここで、R51〜R55は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換のC1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC2〜C30のヘテロアリール基、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択され、
又は、R〜Rのうちの隣り合う2つの置換基は互いに連結されてピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、
但し、X及びXの内の一方がSで他方がCR50(ここで、R50は前記R50と同じである)であり、X及びXの内の一方がSで他方がCR50(ここで、R50は前記R50と同じである)である場合、R〜Rの内の少なくとも一つは、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、あるいは、R〜Rの内の隣り合う2つの置換基が互いに連結されてピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換若しくは無置換のC6〜C30の芳香族環基(aromatic ring group)、置換若しくは無置換のC4〜C14のヘテロ芳香族環基(heteroaromatic ring group)、又は置換若しくは無置換のC6〜C30の縮合多環基であり、
p及びqは、それぞれ独立して、0〜10の整数であり、p又はqがそれぞれ2以上の整数である時、複数のAr及び複数のArは互いに異なる、ものとする。
【請求項8】
前記一般式5で表わされる構造単位を含む有機半導体高分子は、下記の一般式6で表わされる構造単位を含むことを特徴とする請求項7に記載の有機半導体高分子。
【化6】

前記式中、R〜R、Ar及びArは、前記一般式5のR〜R、Ar及びArと同じである。
【請求項9】
前記Ar及びArは、少なくとも一つのチオフェンを含み、下記の一般式7で表わされるものであることを特徴とする請求項7に記載の有機半導体高分子。
【化7】

前記式中、R55は、水素、C1〜C20のアルキル基であり、Ar’は、C6〜C30のアリーレン基、C6〜C30の縮合多環基、C2〜C30のヘテロ芳香族環基、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、硫黄原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基、又はこれらの組み合わせよりなる群から選択され、
xは、1〜7の整数であり、yは、0〜4の整数である。
【請求項10】
前記Ar1及びAr2は、置換若しくは無置換のフェニレン基、置換若しくは無置換のチオフェン基、置換若しくは無置換のベンゾチオフェン基、置換若しくは無置換のチエノチオフェン基(thienothiophene group)、置換若しくは無置換のチアゾール基(thiazole group)、置換若しくは無置換のチアゾロチアゾール基(thiazolothiazole group)、置換若しくは無置換のフルオレン基、置換若しくは無置換のカルバゾール基、及びこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項7に記載の有機半導体高分子。
【請求項11】
前記一般式5で表わされる構造単位を含む有機半導体高分子は、下記の一般式(8−1)〜一般式(8−4)の内の一つであることを特徴とする請求項7に記載の有機半導体高分子。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

前記一般式(8−1)及び一般式(8−2)中、R及びRは、C1〜C10のアルキル基又は電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、或は、R又はRがピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、R及びRの内の少なくとも一方は、電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、或は、R又はRがピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、
及びRは、C1〜C20のアルキル基であり、a、b、c、及びdは、それぞれ0〜10の整数であり、a+b及びc+dは、それぞれ10以下であり、nは、高分子の重合度であり、
前記一般式(8−3)及び一般式(8−4)中、R及びRは、C1〜C10のアルキル基又は電子吸引性イミン窒素原子を少なくとも1以上含むC2〜C30のヘテロ芳香族環基であるか、或は、R又はRがピレン部分と融合されたチオフェニル環基又はチアゾリル環基を形成し、
及びRは、C1〜C20のアルキル基であり、a、b、c、及びdは、それぞれ0〜10の整数であり、a+b及びc+dは、それぞれ10以下であり、nは、高分子の重合度である。
【請求項12】
前記有機半導体高分子は、5000〜200000の数平均分子量(Mn)を有することを特徴とする請求項7に記載の有機半導体高分子。
【請求項13】
前記有機半導体高分子は、p型有機半導体高分子であることを特徴とする請求項7に記載の有機半導体高分子。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の有機半導体化合物又は有機半導体高分子を含むことを特徴とするトランジスタ。
【請求項15】
前記トランジスタは、基板の上に位置するゲート電極と、
相対向するように配置されチャンネル領域を限定するソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及びドレイン電極とゲート電極とを電気的に絶縁させる絶縁層と、
前記チャンネル領域に形成される活性層とを備え、
前記活性層は、前記有機半導体化合物又は有機半導体高分子を含むことを特徴とする請求項14に記載のトランジスタ。
【請求項16】
電子素子であって、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の有機半導体化合物又は有機半導体高分子を含むことを特徴とする電子素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−184218(P2012−184218A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−700(P2012−700)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】