説明

有機半導体素子用電極及びその製造方法

【課題】電界効果移動度が十分な有機半導体素子を安価に製造することができる有機半導体素子用電極、及びかかる有機半導体素子用電極を有する有機半導体素子を提供する。
【解決手段】基板1上に、酸化グラフェンナノリボンを含有するインクをインクジェット法により塗布し、前記インクが含有する前記酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とすることにより形成される有機半導体素子用電極5、6。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体素子用電極及びその製造方法、並びにかかる電極を有する有機半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体薄膜を有する半導体素子として、有機半導体材料を含む有機薄膜を有する有機半導体素子が注目されている。有機半導体素子の製造には、有機半導体材料の他に電極、配線等が必要である。電極、配線等を塗布法により形成するために、金、銀等のナノ粒子を含むナノメタルインクが開発され利用されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】T. Sekitani, Y. Noguchi, U. Zshieschang, H. Klauk, and T. Someya, Proc. Nat. Acad. Sci. 105, 4976 (2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術では、電界効果移動度は高いものの、金、銀等の金属を使用しているために、有機半導体素子の製造コストが上昇する。
【0005】
そこで、本発明は、電界効果移動度が十分な有機半導体素子を安価に製造することができる有機半導体素子用電極、及びかかる有機半導体素子用電極を有する有機半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]〜[9]を提供する。
[1] 基板上に、酸化グラフェンナノリボンを含有するインクをインクジェット法により塗布し、前記インクが含有する前記酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とすることにより形成される有機半導体素子用電極。
[2] 基板上に、酸化グラフェンナノリボンを含有するインクをインクジェット法により塗布する工程と、
前記インクが含有する前記酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とする工程と
を含む、有機半導体素子用電極の製造方法。
[3] 基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、有機半導体、ソース電極及びドレイン電極を有する有機薄膜トランジスタであって、
前記基板上に、酸化グラフェンナノリボンを含有するインクをインクジェット法により塗布し、前記インクが含有する前記酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とすることにより形成される前記ソース電極及びドレイン電極を有する、有機薄膜トランジスタ。
[4] 基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、有機半導体、ソース電極及びドレイン電極を有する有機薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記基板上に、酸化グラフェンナノリボンを含有するインクをインクジェット法により塗布する工程と、
前記インクが含有する前記酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とすることにより前記ソース電極及び前記ドレイン電極を形成する工程と
を含む、有機薄膜トランジスタの製造方法。
[5] [3]に記載の有機薄膜トランジスタを有する、面状光源。
[6] [3]に記載の有機薄膜トランジスタを有する、表示装置。
[7] 基板と、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられる有機半導体層とを有し、
前記陽極及び陰極のうちの少なくとも一方が、[1]に記載の有機半導体素子用電極である、光電変換素子。
[8] [7]に記載の光電変換素子を含む、太陽電池モジュール。
[9] [7]に記載の光電変換素子を含む、イメージセンサー。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機半導体素子用電極を有機半導体素子の製造に用いれば、電界効果移動度が十分な有機半導体素子が安価に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、有機薄膜トランジスタの第1実施形態にかかる模式的な断面図である。
【図2】図2は、有機薄膜トランジスタの第2実施形態にかかる模式的な断面図である。
【図3】図3は、有機薄膜トランジスタの第3実施形態にかかる模式的な断面図である。
【図4】図4は、有機薄膜トランジスタの第4実施形態にかかる模式的な断面図である。
【図5】図5は、有機薄膜トランジスタの第5実施形態にかかる模式的な断面図である。
【図6】図6は、有機薄膜トランジスタの第6実施形態にかかる模式的な断面図である。
【図7】図7は、有機薄膜トランジスタの第7実施形態にかかる模式的な断面図である。
【図8】図8は、太陽電池の模式的な断面図である。
【図9】図9は、光センサの第1実施形態にかかる模式的な断面図である。
【図10】図10は、光センサの第2実施形態にかかる模式的な断面図である。
【図11】図11は、光センサの第3実施形態にかかる模式的な断面図である。
【図12】図12は、有機エレクトロルミネッセンス素子の模式的な断面図である。
【図13】図13は、実施例で作製された有機薄膜トランジスタの模式的な断面図である。
【図14】図14は、実施例で作製された酸化グラフェンナノリボンのAFM像を示す写真図である。
【図15】図15は、実施例で作製された酸化グラフェンナノリボンのラマンスペクトルである。
【図16】図16は、実施例で作製されたグラフェンナノリボンのXPSスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の有機半導体素子用電極は、基板上に、酸化グラフェンナノリボンを含有するインクをインクジェット法により塗布し、インクが含有する酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とすることにより形成される。
また、本発明の有機半導体素子用電極の製造方法は、基板上に、酸化グラフェンナノリボンを含有するインクをインクジェット法により塗布する工程と、インクが含有する酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とする工程とを含む。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、各図は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。以下の説明に用いる各図において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明については省略する場合がある。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置で、製造されたり、使用されたりするわけではない。
【0010】
[酸化グラフェンナノリボンの作製]
酸化グラフェンナノリボン(GONR)は、例えば、多層カーボンナノチューブ(MWNT)をModified Hummers法で酸化することにより作製することができる(D. V. Kosynkin, A. L. Higginbotham, A. Sinitskii, J. R. Lomeda, A. Dimiev, B. K. Price, and J. M. Tour: Nature 458 (2009) 872.参照)。Modified Hummers法は、多層カーボンナノチューブを濃硫酸中で過マンガン酸カリウムにより酸化することにより酸化グラフェンナノリボンを得る方法である。
【0011】
酸化グラフェンナノリボンの作製方法について具体的に説明する。
まず、多層カーボンナノチューブを濃硫酸に加えて、撹拌する。次いで、過マンガン酸カリウムを加えて加熱しつつ撹拌する。放冷後、氷浴上で過酸化水素を含む水に少しずつ加えて懸濁液を得る。得られた懸濁液を減圧ろ過する。得られた固形物を水に溶かして撹拌し、超音波を照射する。得られた溶液を再度減圧ろ過する。超音波の照射とろ過とを繰り返し、真空乾燥することにより酸化グラフェンナノリボンを固体として得ることができる。
【0012】
[酸化グラフェンナノリボンの還元]
酸化グラフェンナノリボンを還元してグラフェンナノリボン(GNR)とする方法の例としては、真空中、或いは水素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中での酸素脱離法(M. J. McAllister, J-L. Li, D. H. Adamson, H. C. Schniepp, A. A. Abdala, J, Liu, M. H. Alonso, D. L., Milius, R. Car, R. K. Prud’homme, and A. Aksay, Chem. Mater., 19, 4396 (2007).参照)、及び還元試薬を用いた化学還元法が挙げられる。化学還元法としては、ヒドラジンによる還元(J. R. Lomeda, C. D. Doyle, D. V. Kosynkin, W. F. Hwang, J. M. Tour, J. Am. Chem. Soc., 130, 16201 (2008).参照)が挙げられる。
【0013】
グラフェンナノリボンの作製方法について具体的に説明する。
グラフェンナノリボンの作製、すなわち酸化グラフェンナノリボンの還元は、例えば、下記(1)又は(2)の方法によって行うことができる。
(1)加熱還元する方法:酸化グラフェンナノリボンを含有する溶液を塗布した基板を加熱する。
(2)ヒドラジン還元する方法:酸化グラフェンナノリボンを含有する溶液を基板に塗布し、該基板に塗布した溶液に含まれる酸化グラフェンナノリボンにヒドラジン1水和物を加えて反応させて、得られた液体から溶媒を留去する。
【0014】
[グラフェンナノリボンを含有する薄膜]
ここでグラフェンナノリボンを含有する薄膜の形成方法の例について説明する。
まず、酸化グラフェンナノリボンを準備する。準備した酸化グラフェンナノリボンを分散媒に分散させる。分散媒の例としては、水、メタノール、エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられる。
【0015】
次に得られた酸化グラフェンナノリボンを含む液体を遠心分離する。この遠心分離工程は、例えば3000rpmで30分間の遠心分離工程である。
【0016】
次に得られた上清を濃縮する。この濃縮工程は例えば上清の量が1/3程度となるまで行う。
【0017】
次に得られた濃縮液を溶媒に溶解させる。この工程は、例えば、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を用いて、超音波を照射することにより行う。
【0018】
次に得られた液体をフィルターに通すことによりインクとする。この工程は、例えば、孔径が5μm程度のPTFEメンブレンフィルター用い、1回又は複数回フィルターを通過させることにより行う。
【0019】
以上の工程により、インクジェット法に好適に適用できるインクを得ることができる。インクジェット法への適用を考慮するとインクの粘度は、25℃において、通常、0.5〜50mPa・sであるが、0.5〜40mPa・sであることが好ましく、0.5〜20mPa・sであることがより好ましい。
【0020】
得られたインクを用いて、インクジェット法により、所定の領域にインクを印刷(塗布)する。
【0021】
インクジェット法には、ピエゾ方式、サーマル方式等種々の方式が知られている。本実施形態のグラフェンナノリボンを含有する薄膜の成膜工程に適用することができるインクジェット法の方式は限定されない。
【0022】
次いで塗布されたインクのパターン、すなわちインクが印刷された基板等を加熱して、インクが含有する酸化グラフェンナノリボンを還元してグラフェンナノリボンとすることにより、グラフェンナノリボンを含有する薄膜を形成する。この加熱工程において、加熱温度は、好ましくは150℃〜300℃であり、より好ましくは200℃〜250℃、更に好ましくは220℃〜240℃である。この加熱工程において、加熱時間は、好ましくは1〜20時間であり、より好ましくは5〜15時間である。この加熱工程は、代表的には、例えば、230℃で12時間の加熱工程である。
【0023】
[有機半導体素子]
好適な実施形態のグラフェンナノリボンを含有する薄膜は、有機半導体を含む有機薄膜への電荷の注入、或いは、光吸収によって発生した電荷を授受することができる。したがって、これらの特性を活かして、グラフェンナノリボンを含有する薄膜を電極として、有機薄膜トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子等の種々の有機半導体素子に適用することができる。以下、これらの有機半導体素子について説明する。
なお、以下の説明において有機半導体素子が有し得る例えば基板等の構成要素が、例えばゲート電極等のその他の構成要素を一体的に兼ねる態様があり得る。この場合、機能的に同様であれば、一体的に構成されている構成要素を有する態様と2以上の構成要素を有する態様とは互換可能であり、例えば一体的に示されている構成要素を有する態様は2以上の構成要素を有する態様と同一視し得る。
【0024】
(有機薄膜トランジスタ)
上述したグラフェンナノリボンを含有する薄膜を用いた有機薄膜トランジスタの例としては、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となる有機半導体層(即ち、活性層)と、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられ、ソース電極及びドレイン電極が、上述したグラフェンナノリボンを含有する薄膜によって構成される。このような有機薄膜トランジスタの例としては、電界効果型有機薄膜トランジスタ、静電誘導型有機薄膜トランジスタ等が挙げられる。
【0025】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層(即ち、ゲート絶縁膜)を有することが好ましい。
特に、ソース電極及びドレイン電極が、有機半導体層に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。電界効果型有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層が、有機半導体を含む有機薄膜によって構成される。
【0026】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が有機半導体層中に設けられていることが好ましい。
特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層中に設けられたゲート電極が、有機半導体層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよい。ゲート電極の構造としては、例えば、くし形電極が挙げられる。静電誘導型有機薄膜トランジスタにおいても、有機半導体層が、有機半導体を含む有機薄膜によって構成される。
【0027】
図1を参照して、有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の第1実施形態について説明する。図1は有機薄膜トランジスタの第1実施形態にかかる模式的な断面図である。
図1に示されるように、有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔で離間するように形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、絶縁層3上に、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように、基板1の厚み方向から見たときにソース電極5及びドレイン電極6にまたがって形成されたゲート電極4と、を有する。
【0028】
図2を参照して、有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の第2実施形態について説明する。図2は有機薄膜トランジスタの第2実施形態にかかる模式的な断面図である。
図2に示される有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1及びソース電極5上に形成された有機半導体層2と、ソース電極5と所定の間隔で離間するように有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、有機半導体層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように、基板1の厚み方向から見たときにソース電極5及びドレイン電極6にまたがって絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を有する。
【0029】
図3を参照して、有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の第3実施形態について説明する。図3は有機薄膜トランジスタの第3実施形態にかかる模式的な断面図である。
図3に示される有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うように基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域をそれぞれ一部覆うように、かつ基板1の厚み方向から見たときにゲート電極4にまたがって絶縁層3上に所定の間隔で離間するように形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにソース電極5及びドレイン電極6にまたがって絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、を有する。
【0030】
図4を参照して、有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の第4実施形態について説明する。図4は有機薄膜トランジスタの第4実施形態にかかる模式的な断面図である。
図4に示される有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1及びゲート電極4上に形成された絶縁層3と、基板1の厚み方向から見たときにゲート電極4にまたがるように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うように、かつ絶縁膜3の一部を露出させるように絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、基板1の厚み方向から見たときにゲート電極4にまたがるように有機半導体層2の一部及び絶縁膜3の一部を覆って、ソース電極5と所定の間隔で離間するように形成されたドレイン電極6と、を有する。
【0031】
図5を参照して、有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の第5実施形態について説明する。図5は有機薄膜トランジスタの第5実施形態にかかる模式的な断面図である。
図5に示される有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔で離間するように形成された櫛歯状のゲート電極4と、櫛歯状のゲート電極4の全てを一体的に覆うようにして有機半導体層2及びゲート電極4上に形成された有機半導体層2a(有機半導体層2aを構成する材料は、有機半導体層2と同一でも異なっていてもよい)と、有機半導体層2a上であって、基板1の厚み方向から見たときに櫛歯状のゲート電極4に重なるように一体的に形成されたドレイン電極6と、を有する。
【0032】
図6を参照して、有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の第6実施形態について説明する。図6は有機薄膜トランジスタの第6実施形態にかかる模式的な断面図である。
図6に示される有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔で離間するように成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにソース電極5及びドレイン電極6にまたがって有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、基板1の厚み方向から見たときにソース電極5及びドレイン電極6にまたがるように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を有する。
【0033】
図7を参照して、有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の第7実施形態について説明する。図7は有機薄膜トランジスタの第7実施形態にかかる模式的な断面図である。
図7に示される有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うように基板1上に形成された絶縁層3と、基板1の厚み方向から見たときにゲート電極4を覆うように形成された有機半導体層2と、基板1の厚み方向から見たときにゲート電極4の一部にまたがるように有機半導体層2上に形成されたソース電極5と、基板1の厚み方向から見たときにゲート電極4の一部にまたがるように、かつソース電極5と所定の間隔で離間するように有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、を有する。
【0034】
有機薄膜トランジスタの第1実施形態から第7実施形態において、ソース電極5及びドレイン電極6を、グラフェンナノリボンを含有する薄膜からなる電極によって構成し、有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aの電流通路(チャネル)を構成する。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
ゲート電極4はグラフェンナノリボンを含有する薄膜により形成することが好ましい。ゲート電極4は、グラフェンナノリボン以外の他の電極材料を使用してもよい。
【0035】
上述した有機薄膜トランジスタの実施形態のうち、電界効果型有機薄膜トランジスタは、グラフェンナノリボンを含有する薄膜からなる電極を除き、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報に記載の方法により製造することができる。また、上述した有機薄膜トランジスタの実施形態のうち、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、グラフェンナノリボンを含有する薄膜からなる電極を除き、公知の方法、例えば特開2004−006476号公報に記載の方法により製造することができる。
【0036】
基板1は、有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければ制限されない。基板1としては、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板を用いることができる。
【0037】
有機半導体層2に使用する材料の例としては、キャリア輸送性を有する高分子化合物及び低分子化合物、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェンナノリボン等の分散によるインクの形成が可能な材料、蒸着可能な低分子材料等が挙げられる。
【0038】
有機半導体層2に使用する材料としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾペンタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ナフトペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ナノアセン等のアセン化合物;フェナントレン、ピセン、フルミネン、ピレン、アンタンスレン、ペロピレン、コロネン、ベンゾコロネン、ジベンゾコロネン、ヘキサブンゾコロネン、ベンゾジコロネン、ビニルコロネン等のコロネン化合物;ペリレン、テリレン、ジペリレン、クオテリレン等のペリレン化合物;トリナフチン、ヘプタフェン、オバレン、ルビセン、ビオラントロン、イソビオラントロン、クリセン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、ビフェニル、トリフェニレン、ターフェニル、クォターフェニル、サーコビフェニル、ケクレン、フタロシアニン、ポルフィリン、フラーレン(C60フラーレン、C70フラーレン)、テトラチオフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン化合物、チオフェンのオリゴマー、ピロールのオリゴマー、フェニレンのオリゴマー、フェニレンビニレンのオリゴマー、チエニレンビニレンのオリゴマー、チオフェンとフェニレンとのオリゴマー、チオフェンとフルオレンとのオリゴマー、これらの誘導体(例えば、テトラセンのベンゼン環付加誘導体であるルブレン等)、フラーレンの共役系を拡張したカーボンナノチューブ等の低分子有機半導体化合物;ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリトリフェニルアミン、トリフェニルアミンとフェニレンビニレンとの共重合体;チオフェンとフェニレンとの共重合体;チオフェンとフルオレンとの共重合体、チオフェン誘導体とベンゾチアジアゾールの共重合体、これらの誘導体(例えば、ポリチオフェンのアルキル置換体であるポリ(3−ヘキシルチオフェン))等の高分子有機半導体化合物が挙げられる。
有機半導体層2に使用する材料は、好ましくは、以下の式(1a)〜式(1o)で表される化合物である。
【0039】
【化1】

【0040】
【化2】

【0041】
【化3】

【0042】
【化4】

【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
【化10】

【0049】
【化11】

【0050】
【化12】

【0051】
【化13】

【0052】
【化14】

【0053】
【化15】

【0054】
上記式(1a)〜(1o)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。nは1以上の整数である。アルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基の炭素原子数は、通常、1〜20である。アリール基、アリールオキシ基及びアリールチオ基の炭素原子数は、通常、6〜30である。アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基及びアリールアルキニル基の炭素原子数は、通常、8〜40である。
上記式(1a)〜(1o)中、nは、繰り返し単位数であり、通常、1〜10000の整数である。
【0055】
有機半導体層2に接して設けられる絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料として公知のものを用いることができる。絶縁層3の材料としては、例えばSiOx、SiNx、Ta、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、フォトレジストが挙げられる。絶縁層3の材料は、駆動電圧をより低くすることができるため、誘電率の高い材料の方が好ましい。
【0056】
ゲート電極4の材料の例としては、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム錫酸化物(ITO)が挙げられる。これらの材料は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ゲート電極4は、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とすることができる。さらに、ゲート電極4として、高濃度に不純物がドープされたシリコン基板を用いることも可能である。高濃度に不純物がドープされたシリコン基板は、ゲート電極としての機能とともに、基板としての機能も併せて有する。例えば、上述した第3実施形態の有機薄膜トランジスタにおいて、ゲート電極4が基板1を兼ねる構成とした場合、そのような有機薄膜トランジスタは、例えば図13に示される構造を有する(詳細は後述する)。
【0057】
ソース電極5及びドレイン電極6は、低抵抗の材料から構成されることが好ましく、本発明のグラフェンナノリボンを含有する薄膜を用いることが好適である。
【0058】
以上、好適な実施形態の有機薄膜トランジスタとして幾つかの構成例を説明したが、有機薄膜トランジスタは上記の実施形態に限定されない。例えば、上述したような有機薄膜トランジスタを作製した後には、有機薄膜トランジスタを保護するため、有機薄膜トランジスタ上に図示しない保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑制することができる。また、保護膜によって、有機薄膜トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する場合、その形成工程における有機薄膜トランジスタへの影響も低減することができる。
【0059】
このような保護膜を形成する方法の例としては、有機薄膜トランジスタを、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機薄膜トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでは、大気に曝すことなく、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等で保持することが好ましい。
【0060】
このように構成された電界効果型有機薄膜トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの各画素を駆動するためのスイッチング素子等として適用できる。そして、上述した実施形態の電界効果型有機薄膜トランジスタのソース電極及びドレイン電極は、グラフェンナノリボンを含有する薄膜からなる。グラフェンナノリボンを含有する薄膜は、有機半導体を含む層との接触抵抗が低く、その結果、電界効果移動度を高くできるため、電界効果型有機薄膜トランジスタの応答速度をより速くし得る。
そして、グラフェンナノリボンを含有する薄膜を用いた有機半導体素子用電極は、インクジェット法等の印刷法を利用できるため、大面積なディスプレイ等の有機半導体素子を安価に製造することができる。
【0061】
(太陽電池)
次に、グラフェンナノリボンを含有する薄膜の太陽電池への応用について説明する。
【0062】
図8を参照して、太陽電池の好適な実施形態について説明する。図8は、太陽電池の模式的な断面図である。
図8に示される太陽電池200は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された有機薄膜からなる有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された第2の電極7bと、を有する。この第1の電極7a及び第2の電極7bのうちの少なくとも一方の電極が、グラフェンナノリボンを含有する薄膜によって構成されている。
【0063】
本実施形態にかかる太陽電池においては、第1の電極7a及び第2の電極7bのうちの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極材料の例としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属が挙げられる。透明又は半透明の電極は、これらの金属からなる半透明膜、透明導電膜を用いることができる。高い開放電圧を得るためには、それぞれの電極として、仕事関数の差が大きくなるように選ぶことが好ましい。有機半導体層2中には光感度を高めるために電荷発生剤、増感剤等のさらなる成分を添加することができる。基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0064】
上記構成を有する太陽電池は、グラフェンナノリボンを含有する薄膜からなる電極7a又は7bが、高い光透過性を有しており、電荷の授受を効率的に行うことができるため、効率よく発電を行うことが可能となる。
【0065】
(光センサ)
次に、グラフェンナノリボンを含有する薄膜の光センサへの応用について説明する。
【0066】
図9を参照して、光センサの第1実施形態について説明する。図9は、光センサの第1実施形態にかかる模式的な断面図である。
図9に示される光センサ300は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された有機薄膜からなる有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された第2の電極7bと、を有するものである。この第1の電極7a及び第2の電極7bのうちの少なくとも一方の電極が、好適な実施形態のグラフェンナノリボンを含有する薄膜によって構成されている。
【0067】
図10を参照して、光センサの第2実施形態について説明する。図10は、光センサの第2実施形態にかかる模式的な断面図である。
図10に示される光センサ310は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された有機薄膜からなる有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された第2の電極7bと、を有する。この第1の電極7a及び第2の電極7bのうちの少なくとも一方の電極が、グラフェンナノリボンを含有する薄膜によって構成されている。
【0068】
図11を参照して、光センサの第3実施形態について説明する。図11は、光センサの第3実施形態にかかる模式的な断面図である。
図11に示される光センサ320は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された有機薄膜からなる有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された第2の電極7bと、を有する。この第1の電極7a及び第2の電極7bのうちの少なくとも一方の電極が、グラフェンナノリボンを含有する薄膜によって構成されている。
【0069】
上記の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態にかかる光センサにおいては、第1の電極7a及び第2の電極7bのうちの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極の材料の例としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属が挙げられる。電極としてはこれらの金属の半透明膜、透明導電膜を用いることができる。電荷発生層8は光を吸収して電荷を発生する層である。有機半導体層2中には光感度を高めるために電荷発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。また基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0070】
上記構成を有する光センサは、グラフェンナノリボンを含有する薄膜からなる電極7a又は7bが、高い光透過性を有しており、かつ電荷の授受を効率的に行うことができるため、高い感度を有する。
【0071】
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
次に、上述した実施形態にかかる有機薄膜トランジスタを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。
【0072】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、通常、駆動トランジスタ及びスイッチングトランジスタの少なくとも2つの有機薄膜トランジスタを有する。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、このうちの少なくとも1つの有機薄膜トランジスタとして、上述した好適な実施形態にかかる有機薄膜トランジスタを用いる。
【0073】
図12を参照して、有機エレクトロルミネッセンス素子の実施形態について説明する。図12は、有機エレクトロルミネッセンス素子の実施形態にかかる模式的な断面図である。
図12に示される有機エレクトロルミネッセンス素子400においては、基板1と、基板1上にパターニングされたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1及びゲート電極4上に形成された絶縁層3と、基板1の厚み方向から見たときにゲート電極4と少なくとも一部が重なるように、絶縁層3上に所定の間隔で互いに離間するように形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6にまたがってソース電極5及びドレイン電極6それぞれの一部を覆うように絶縁層3、ソース電極5及びドレイン電極6上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2全体を覆うように有機半導体層2上に形成された保護膜11とにより、有機薄膜トランジスタTが構成されている。
【0074】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子400においては、有機薄膜トランジスタT上に、層間絶縁膜12を介して、下部電極(陽極)13、発光素子14及び上部電極(陰極)15が順次積層されており、層間絶縁膜12に層間絶縁膜12を貫通するように設けられたビアホール12aを通じて下部電極13とトランジスタTのドレイン電極6とが電気的に接続されている。また、下部電極13及び発光素子14の周囲には、隣り合う発光素子14同士を電気的に分離するバンク部16が設けられている。さらに、上部電極15の上方には基板18が配置され、上部電極15と基板18との間は封止部材17によって封止されている。
【0075】
図12に示される有機エレクトロルミネッセンス素子400において、有機薄膜トランジスタTは、駆動トランジスタとして機能する。また、図12に示される有機エレクトロルミネッセンス素子400において、スイッチングトランジスタは省略されている。
【0076】
本実施形態にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子400においては、有機薄膜トランジスタTに上述したようなグラフェンナノリボンを含有する薄膜を、ゲート電極4、ソース電極5及びドレイン電極6のうちのいずれか又はこれらの組み合わせに適用した有機薄膜トランジスタが用いられる。それ以外の構成部材については、公知の有機エレクトロルミネッセンス素子における構成部材を用いることができる。なお、この実施形態では例えば上部電極15、封止部材17及び基板18を、透明又は半透明としてトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子とすることができる。またトランジスタT、基板1を透明又は半透明にしてボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子とすることもできる。
【0077】
また、図12に示される有機エレクトロルミネッセンス素子400は、発光素子14に白色発光材料を用いることで面状光源として機能させることができる。さらには発光素子14として、赤色発光材料を用いる発光素子、青色発光材料を用いる発光素子及び緑色発光材料を用いる発光素子を形成し、それぞれの発光素子の駆動をトランジスタTにより制御することで、カラー表示装置とすることもできる。
【0078】
このような有機エレクトロルミネッセンス素子において、パターン状の発光を得るための方法の例としては、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、発光素子を構成する発光層の非発光とすべき部分を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極若しくは陰極、又は両方の電極をパターン状に形成する方法が挙げられる。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON又はOFFできるように配置することによって、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。
【0079】
さらに、ドットマトリックス表示素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示やマルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス表示素子は、パッシブ駆動させることが可能であるし、またTFT(薄膜トランジスタ)等と組み合わせてアクティブ駆動させてもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【0080】
なお、好適な実施形態の有機薄膜トランジスタを適用した有機半導体素子としては、このような有機エレクトロルミネッセンス素子以外にも、例えば、電子タグ、液晶表示素子が挙げられる。これらの有機半導体素子に、本発明の実施形態にかかる有機薄膜トランジスタを用いれば、より良好かつ均質なトランジスタ特性を発揮し得るため、有機半導体素子の動作特性を、安定でかつ優れたものとすることができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
[酸化グラフェンナノリボンの作製]
酸化グラフェンナノリボン(GONR)は、多層カーボンナノチューブ(保土谷化学社製、MWNT-7)をModified Hummers法で酸化することにより作製した。
まず、多層カーボンナノチューブ(150mg)を濃硫酸(30mL)中に加え、8時間〜12時間撹拌した後、過マンガン酸カリウム(750mg、4.5mmol)を加え、1時間撹拌した後、60℃で1時間撹拌した。放冷後、氷浴上でイオン交換蒸留水400mLと過酸化水素(5mL、濃度30%)との混合液に少しずつ加え、褐色の懸濁液を得た。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メンブレンフィルター(MILLIPORE、孔径:5μm)により減圧ろ過を行い、得られた固形物をイオン交換蒸留水150mLに溶かし、30分間撹拌し、15分間超音波を照射した。その後、溶液をPTFEメンブレンフィルター(孔径:0.45μm)により減圧ろ過した。30分間撹拌後、15分間超音波を照射し、ろ過した。この超音波の照射とろ過とをさらに繰り返し、真空乾燥して、褐色の酸化グラフェンナノリボン(280mg)を固体として得た。
【0083】
[酸化グラフェンナノリボンの評価]
得られた酸化グラフェンナノリボンのAFM(Atomic Force Microscope)像を示す写真図を図14に示す。
得られた酸化グラフェンナノリボンは、幅160nm程度のナノリボンであった。厚さは1.36nm程度であることから、X線回折(XRD)で観測されたd=0.82nmと比較して、単層のナノリボンに剥離できていると考えられる。図15にラマンスペクトルの測定結果を示す。図15は、ラマンスペクトルを示す図である。ラマンスペクトルは酸化グラフェンナノリボンに特徴的なDバンドを示した。
【0084】
[酸化グラフェンナノリボンの還元]
酸化グラフェンナノリボンの還元は以下の方法によって行った。
加熱還元:酸化グラフェンナノリボンの溶液を塗布した基板を真空オーブンに入れ、230℃で、12時間アニールした。
【0085】
還元前後のX線光電子分光スペクトル(XPS)の測定結果を図16に示す。図16は、XPSスペクトルを示す図である。
【0086】
酸化グラフェンナノリボンは酸化された炭素に特徴的な286.1eVのピークを示すが、還元後にはこのピークが消えており、どちらの方法でも酸化グラフェンナノリボンはグラフェンナノリボンに還元されたことが確認できた。
【0087】
酸化グラフェンナノリボンを含有する薄膜の電気伝導度は4×10-5S/cmであった。上記加熱還元の方法で還元して得たグラフェンナノリボンを含有する薄膜は27S/cmの電気伝導度を示した。アニールしたグラフェンナノリボンを含有する薄膜の厚さは200nmであったので、測定された電気伝導度はシート抵抗1.8kΩ/sqに相当する。
【0088】
以下、有機薄膜トランジスタの実施例について説明する。ここでは図13に示される態様の有機薄膜トランジスタについて図面を参照して説明する。図13は、有機薄膜トランジスタの模式的な断面図である。
【0089】
[有機薄膜トランジスタ用基板]
まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn型シリコン基板31の表面を熱酸化し、厚さ300nmのゲート絶縁膜であるシリコン酸化膜32を形成した。次に、アセトンの入ったビーカーにシリコン酸化膜32が形成されたn型シリコン基板31を入れ、10分間超音波洗浄を行った。続けて2-プロパノール、超純水のそれぞれを用いて同様の洗浄を行った後、基板を150℃のオーブンで10分間乾燥させ、最後にオゾンUVを10分間照射した。
【0090】
[インクジェット法によるソース電極及びドレイン電極の形成]
酸化グラフェンナノリボンを0.1重量%の濃度でイオン交換蒸留水に分散させ、3000rpmで30分間遠心分離を行った。溶液部分90mLを30mLまで濃縮し、60mLのDMFを加えた後、超音波を照射した。PTFEメンブレンフィルター(孔径:5μm)に2回通してインクジェットプリンタ用のインクを得た。得られたインクとピエゾヘッド(JHB-100)を備えたマイクロジェット社製インクジェットプリンタ(Labjet-300)とを用いて、上記基板上にインクのパターンを描画し、その後、230℃で12時間アニールすることによりインクが含有する酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜からなるソース電極33及びドレイン電極34のパターンを形成した。その後、10-6Torrの減圧下で、昇華精製したペンタセンを有機半導体材料として含む有機薄膜35を蒸着法により形成し、有機薄膜トランジスタを作製した。
【0091】
[有機薄膜トランジスタの評価]
以上のようにして作製した有機薄膜トランジスタの特性を半導体アナライザ(Keithley 4200)を用いて測定した(W=800μm/L=1000μm)。VSDを一定にし、VGを連続的に変化させた場合の伝達特性と、VGを一定にし、VSDを連続的に変化させた場合の出力特性の測定を行った。電界効果移動度は伝達特性の飽和領域から求めた。
【0092】
本実施例の有機薄膜トランジスタの電界効果移動度は、0.18cm2/V・sであった。また本実施例の有機薄膜トランジスタのS値は1.7V/decであり、有機薄膜トランジスタのS値としては極めて小さかった。
【符号の説明】
【0093】
1 基板
2、2a 有機半導体層
3 絶縁層
4 ゲート電極
5、33 ソース電極
6、34 ドレイン電極
7a 第1の電極
7b 第2の電極
8 電荷発生層
11 保護膜
12 層間絶縁膜
13 下部電極(陽極)
14 発光素子
15 上部電極(陰極)
16 バンク部
17 封止部材
18 基板
31 n型シリコン基板
32 シリコン酸化膜
35 有機薄膜
100、110、120、130、140、150、160 有機薄膜トランジスタ
200 太陽電池
300、310、320 光センサ
400 有機エレクトロルミネッセンス素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、酸化グラフェンナノリボンを含有するインクをインクジェット法により塗布し、前記インクが含有する前記酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とすることにより形成される有機半導体素子用電極。
【請求項2】
基板上に、酸化グラフェンナノリボンを含有するインクをインクジェット法により塗布する工程と、
前記インクが含有する前記酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とする工程と
を含む、有機半導体素子用電極の製造方法。
【請求項3】
基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、有機半導体、ソース電極及びドレイン電極を有する有機薄膜トランジスタであって、
前記基板上に、酸化グラフェンナノリボンを含有するインクをインクジェット法により塗布し、前記インクが含有する前記酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とすることにより形成される前記ソース電極及びドレイン電極を有する、有機薄膜トランジスタ。
【請求項4】
基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、有機半導体、ソース電極及びドレイン電極を有する有機薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記基板上に、酸化グラフェンナノリボンを含有するインクをインクジェット法により塗布する工程と、
前記インクが含有する前記酸化グラフェンナノリボンを還元して、グラフェンナノリボンを含有する薄膜とすることにより前記ソース電極及び前記ドレイン電極を形成する工程と
を含む、有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の有機薄膜トランジスタを有する、面状光源。
【請求項6】
請求項3に記載の有機薄膜トランジスタを有する、表示装置。
【請求項7】
基板と、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられる有機半導体層とを有し、
前記陽極及び陰極のうちの少なくとも一方が、請求項1に記載の有機半導体素子用電極である、光電変換素子。
【請求項8】
請求項7に記載の光電変換素子を有する、太陽電池モジュール。
【請求項9】
請求項7に記載の光電変換素子を有する、イメージセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−58598(P2013−58598A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195964(P2011−195964)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人応用物理学会 2011年春季 第58回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集 発行日 平成23年3月9日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、ナノファイバーイノベーション創出NEDO特別講座 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】