説明

有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法

【課題】多結晶性の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度等の電子移動性を評価するに際し、結晶内におけるキャリア移動頻度と結晶間におけるキャリア移動頻度とを分離して評価する方法を提供する。
【解決手段】本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、多結晶性の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度を評価する方法であって、有機半導体薄膜において、結晶1内および結晶1間の少なくとも一方におけるキャリア移動頻度を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法に関する。さらに詳しくは、多結晶性の有機半導体薄膜におけるキャリア運動頻度の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子系および低分子系の有機半導体を用いる有機エレクトロニクスは、フラットパネルディスプレイや電子ペーパー等を製造するための、主要な次世代技術として注目されている。既に製品化されている有機電界発光ダイオード(OLED)に加えて、アクティブ・マトリックス用スイッチング素子を用途とする有機半導体薄膜電界効果トランジスタ(OFET)の研究開発が、近年、大きく進展している。
【0003】
有機半導体薄膜電界効果トランジスタの性能は、現在ディスプレイに多用されているアモルファスシリコン薄膜電界効果トランジスタの特性を凌駕しており、今後の実用化に備えて、デバイス特性およびその長期安定性をさらに向上させるための技術開発が求められている。これに伴い有機半導体薄膜内の電子移動性等に関する評価分析方法の開発が求められている。
【0004】
ここで、有機半導体薄膜は、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット印刷法等により形成される。有機半導体薄膜のほとんどは、有機分子からなる微結晶(微小な単結晶)が集合して形成された多結晶性の薄膜である。単一ドメイン(結晶サイズがチャネル全体に及ぶ)の有機半導体単結晶薄膜は、より高い性能を示すと期待されるが、少数の例外を除き、その形成法はいまだ知られていない。また、有機分子の配列が乱れた状態で薄膜化したアモルファス薄膜は、一般に電子移動性が著しく悪く、有機半導体薄膜電界効果トランジスタを構築するための研究対象とはなっていない。
【0005】
多結晶性の有機半導体薄膜は、多くの場合、平板状の微結晶が平板面を基板に対して平行にして成長し、これらの微結晶が集合して形成されている。これらの微結晶の厚さは薄膜と同程度であり、大きさは100nm〜数十μm程度であり、微結晶内では有機分子が並進対称性を保ちながら規則正しく配列している。多結晶性の有機半導体薄膜は、これらの微結晶が互いに密に接触することによって、薄膜面内での電子移動性を実現している。
【0006】
上述した多結晶性の有機半導体薄膜の電子移動性を向上させるためには、微結晶内の電子移動性(キャリア移動頻度)とともに、これらを接続する界面となる微結晶間の電子移動性(キャリア移動頻度)を改善させることが重要である。特に後者、すなわち、微結晶間の電子移動性は、製膜プロセス条件等に依存すると考えられる。すなわち、同一の有機半導体材料であっても、プロセス条件を最適化することによって微結晶間の電子移動性を改善し、有機半導体薄膜の特性を大きく改善することができると考えられる。また、微結晶と微結晶とを接続する界面は、酸素分子などの異分子の吸着によってデバイス特性の安定性が阻害されることが予想される。このため、微結晶間の電子移動性は、デバイス特性を安定化させる上でも重要であると考えられる。
【0007】
しかしながら、通常の電気的手法を用いて、微結晶と微結晶とを接続する界面の電子移動性を取り出して評価分析することは困難である。通常の電流―電圧特性などの電気的特性を評価する方法では、有機半導体薄膜トランジスタを構成する、多結晶性の有機半導体薄膜における薄膜面に平行な方向に流れる電流を計測することから、微結晶内の電気伝導と微結晶間の電気伝導とを全て重畳されたものが結果として得られ、これらを区別することはできないからである。
【0008】
これまでに、微結晶内の電気伝導と微結晶間の電気伝導とを分離して評価する手法として、ケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)を用いて、多結晶性の有機半導体薄膜の微結晶内および微結晶間の電位ポテンシャル変化を評価する実験が行われている(非特許文献1を参照)。
【0009】
一方、電流―電圧特性測定や電位ポテンシャル分布測定などの電気的評価法の他に、近年、有機半導体薄膜電界効果トランジスタの新しい評価方法として、電子スピン共鳴法がしばしば用いられるようになっている(非特許文献2,3を参照)。これは、電界誘起電子スピン共鳴(FI−ESR)法と呼ばれ、電界効果トランジスタを構成する有機半導体薄膜内にゲート電圧印加によってキャリアを誘起(蓄積)し、キャリアがもつ電子スピンによる磁気共鳴吸収スペクトルをもとに、キャリアのミクロな電子状態を調べる測定方法である。
【0010】
これまでに、キャリアの運動によるスペクトル尖鋭化の観測によって、キャリア運動を阻害する一因となるトラップにおけるキャリアの平均滞在時間を評価することが可能になっている。さらに、低温でキャリア運動が凍結された状態において測定した電子スピン共鳴スペクトルを詳細に解析することによって、トラップの空間的広がりとその状態密度分布とを評価することが可能になっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Masakazu Nakamura, Naoyuki Goto, Noboru Ohashi, Masatoshi Sakai, and Kazuhiro Kudo, "Potential mapping of pentacene thin-film transistors using purely electric atomic-force-microscope potentiometry", Appl. Phys. Lett. 86, 122112, p.1-3, (2005)
【非特許文献2】長谷川達生,松井弘之,「有機トランジスタの電子スピン共鳴スペクトルにおける尖鋭化効果」,固体物理 43巻, No.6, p.351-359, (2008)
【非特許文献3】H. Matsui, A. S. Mishchenko, and T. Hasegawa, "Distribution of Localized States from Fine Analysis of Electron Spin Resonance Spectra in Organic Transistors", Phys. Rev. Lett. 104, 056602 p.1-4, (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、非特許文献1に示されている手法は、ノイズに埋もれた微小な電位変化の測定が必要であり、ポテンシャル障壁高さの定量化は困難である。
【0013】
また、非特許文献2,3に示されているような電界誘起電子スピン共鳴法では、キャリアが主に収容された微結晶内の運動が観測される。これに対して、微結晶と微結晶とを接続する界面付近のキャリアは数密度が低く、これを選択的に分離して測定する方法はこれまでに知られていない。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、多結晶性の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度等の電子移動性を評価するに際し、結晶内におけるキャリア移動頻度と結晶間におけるキャリア移動頻度とを分離して評価する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、有機半導体結晶の異方的なgテンソルを用いて、結晶の向きによりg値が異なる値となる方向に磁場を印加し、各結晶に由来した電子スピン共鳴スペクトルを、結晶の配向方向によって分離して測定し、これらのスペクトルが温度上昇による結晶間のホッピングによって一本に収束する挙動をもとに、結晶間の障壁ポテンシャルを解析する、多結晶性の有機半導体薄膜の評価方法である。
【0016】
すなわち、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、多結晶性の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度を評価する方法であって、上記有機半導体薄膜において、結晶内および結晶間の少なくとも一方における上記キヤリア移動頻度等の電子移動性を評価する、つまり、上記キャリア移動頻度を結晶内、結晶間ともに評価、またはいずれか一方を評価することを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、結晶と結晶とを接続する界面の障壁ポテンシャルを、簡便かつ定量的に分析することができる。これにより、有機半導体薄膜の特性改善や安定性向上に欠かせない、製膜時のプロセス条件の最適化を行うための有用な評価方法としての利用が可能になる。
【0018】
また、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、上記有機半導体薄膜に配線を施し、該配線に通電した後、電界誘起電子スピン共鳴(FI−ESR)法によって上記キャリア移動頻度を評価することが好ましい。
【0019】
本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、上記配線に通電することによってキャリアを蓄積させ、上記有機半導体薄膜を電界誘起電子スピン共鳴法の測定対象とすることができる。また、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、電界誘起電子スピン共鳴法によって活性化エネルギーを算出することができる。その結果、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、当該活性化エネルギーを用いて結晶間の障壁ポテンシャルを評価することができるため、当該キャリア移動頻度を決定する微視的要因を評価しやすくなる。なお、活性化エネルギーが高いほど、キャリア等の移動を阻害していることになる。
【0020】
また、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、上記有機半導体薄膜を構成する有機半導体が、磁場方向に対し異方性を発現する化学構造を有していることが好ましい。
【0021】
これにより、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、上記有機物半導体が示す、有機半導体結晶の異方的なgテンソルを用いて、結晶の向きによりg値が異なる値となる方向に磁場を印加し、各結晶に由来した電子スピン共鳴スペクトルを、結晶の配向方向によって分離して測定しやすくなる。
【0022】
また、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、上記有機半導体薄膜に用いられる、有機半導体を構成する分子(ポリマー、低分子等)が構成する多結晶性薄膜の薄膜面に平行な方向、および該薄膜面に垂直な方向に、磁場を印加することが好ましい。
【0023】
これにより、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、結晶の向きによりg値が異なる値となる方向に磁場を印加することになるため、各結晶に由来した電子スピン共鳴スペクトルを、結晶の配向方向によって分離して測定しやすくなる。
【0024】
また、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、上記結晶間の障壁ポテンシャルを分析することが好ましい。
【0025】
これにより、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、キャリア移動頻度を決定する微視的要因を評価しやすくなる。
【0026】
また、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、有機EL(electro-luminescence)、有機薄膜太陽電池および有機半導体薄膜電界効果トランジスタからなる群より選択される少なくとも1つに使用される上記有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度を評価するために用いられることが好ましい。
【0027】
これにより、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、有機EL、有機薄膜太陽電池または有機半導体薄膜電界効果トランジスタの分野に広く適用することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、以上のように、多結晶性の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度を評価する方法であって、上記有機半導体薄膜において、結晶内および結晶間の少なくとも一方における上記キャリア移動頻度を評価する方法である。
【0029】
それゆえ、本発明の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法は、結晶内におけるキャリア移動頻度と結晶間におけるキャリア移動頻度とを分離して評価することができるという効果を奏する。
【0030】
本発明によれば、基板上で配向方向の異なる微結晶からなる、多結晶性の有機半導体薄膜において、その電子移動性を妨げる一因となる微結晶と微結晶とを接続する界面の障壁ポテンシャルを簡便かつ定量的に評価分析し、キャリア移動頻度を決定する微視的要因を評価することが可能になる。これにより、有機半導体薄膜の特性改善や安定性向上に欠かせない、製膜時のプロセス条件の最適化を行うための有用な評価分析法としての利用が可能になる。その結果、多結晶性の有機半導体薄膜における特性の改善や安定性の著しい向上が可能になり、ディスプレイなどの有機半導体薄膜トランジスタをアクティブ・マトリックスとして用いるための研究開発が加速されるとともに、上記製品の評価解析ツールとしての利用も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は、有機分子による微結晶が互いに密に接触して形成された多結晶性の有機半導体薄膜において、微結晶内の電子移動性と微結晶間の電子移動性とを示す模式図であり、(b)は、微結晶内の価電子バンドと微結晶間の障壁ポテンシャルとを示す模式図であり、(c)は、微結晶毎にg値が異なる向きへと静磁場を固定した測定条件のもとで、低温にて微結晶間のホッピングが遅い場合と高温にて微結晶間のホッピングが速い場合とに予想される電子スピン共鳴スペクトルを示す模式図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態におけるDNTT薄膜トランジスタの概略構成を示す断面図であり、(b)は、本発明の一実施形態におけるPBTTT薄膜トランジスタの概略構成を示す断面図である。
【図3】(a)は、本発明の一実施形態における電界誘起電子スピン共鳴法の評価対象となるDNTT薄膜トランジスタの概略構成を示す斜視図であり、(b)は、本発明の一実施形態における電界誘起電子スピン共鳴法での評価対象物の設置状態を示す説明図であり、(c)・(d)は、本発明の一実施形態における電界誘起電子スピン共鳴法での評価対象物に対する磁場方向を示す説明図である。
【図4】(a)は、低温において静磁場方向を変化させながら得られたPBTTT薄膜トランジスタの電子スピン共鳴スペクトルの測定結果を示すグラフであり、(b)は、PBTTTの分子構造を示す模式図であり、(c)は、室温および低温におけるg値の静磁場印加方向による角度依存性の測定結果を示すグラフである。
【図5】(a)は、微結晶毎のg値が同一の値となる方向に静磁場を固定して得られたPBTTT薄膜トランジスタの電子スピン共鳴スペクトルを各温度で測定した結果を示すグラフであり、(b)は、微結晶毎のg値が異なる値となる方向に静磁場を固定して得られたPBTTT薄膜トランジスタの電子スピン共鳴スペクトルを各温度で測定した結果を示すグラフである。
【図6】微結晶毎のg値が同一の値となる方向に静磁場を固定して得られた電子スピン共鳴スペクトルの温度変化の解析により得られた運動頻度と、微結晶毎のg値が異なる値となる方向に静磁場を固定して得られた電子スピン共鳴スペクトルの温度変化の解析より得られた運動頻度とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態について、以下に詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施し得るものである。なお、本明細書において、「結晶」には「微結晶」が含まれ、「磁場」には「静磁場」が含まれ、「キャリア移動頻度」には「電子移動度、正孔移動度、運動頻度等」が含まれる。また、「微結晶」とは、微小な単結晶であり部分的にアモルファスを含有するものも含む。
【0033】
(I)本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法の構成
本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法は、多結晶性の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度等の電子移動性を評価する方法であって、上記有機半導体薄膜において、結晶内および結晶間の少なくとも一方における上記キャリア移動頻度を評価する方法である。
【0034】
また、本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法は、上記有機半導体薄膜に配線を施し、該配線に通電した後、電界誘起電子スピン共鳴法によって上記キャリア移動頻度を評価することが好ましい。また、本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法は、上記有機半導体薄膜に用いられる薄膜面に平行な方向、および薄膜面に垂直な方向に、磁場を印加することが好ましい。また、本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法は、上記結晶間の障壁ポテンシャルを分析することが好ましい。
【0035】
具体的には、図1〜3を参照しながら説明する。
【0036】
<評価対象物>
本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法は、有機半導体薄膜のキャリア移動頻度を評価する方法である。
【0037】
本実施形態にて評価される有機半導体薄膜は、当該有機半導体薄膜を構成する有機半導体が、磁場方向に対し異方性を発現する化学構造を有しているものである。当該有機半導体としては、例えば、後述する実施例に示す、ポリマー材料であるPBTTT、低分子材料であるDNTT等が挙げられる。また、本明細書において、有機半導体薄膜とは、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット印刷法等の各種の製膜プロセスによって製造される有機半導体をいう。
【0038】
本実施形態にて評価される有機半導体薄膜は、多結晶性の薄膜である。本明細書において、多結晶性とは、微結晶が集合して形成されたものをいう。
【0039】
本実施形態にて評価される有機半導体薄膜において、結晶内および結晶間の少なくとも一方における上記キャリア移動頻度が評価される。ここで、図1(a)は、有機分子による微結晶が互いに密に接触して形成された多結晶性の有機半導体薄膜において、微結晶内のキャリア移動性と微結晶間のキャリア移動性とを示す模式図であり、図1(b)は、微結晶内の価電子バンドと微結晶間の障壁ポテンシャルとを示す模式図であり、図1(c)は、微結晶毎にg値が異なる向きへと静磁場を固定した測定条件のもとで、低温にて微結晶間のホッピングが遅い場合と高温にて微結晶間のホッピングが速い場合とに予想される電子スピン共鳴スペクトルを示す模式図である。
【0040】
図1(a)に示すように、矢印Aが結晶内の移動を表しており、矢印Bが結晶間の移動を表している。なお、図1(a)において、電子、正孔等は、ポリマー主鎖または低分子の配列構造2を形成した結晶において、移動を阻害する要因となるトラップ3に頻繁に捉えられながら結晶内・結晶間を移動する。
【0041】
図1(c)に示すように、ホッピングが遅い場合(図1(c)の(1)の場合)には、有機半導体の異方性が顕著に現れ、一方、ホッピングが速い場合(図1(c)の(2)の場合)には、有機半導体の異方性が消えて見えなくなる。
【0042】
図2(a)は、本実施形態におけるDNTT薄膜トランジスタの概略構成を示す断面図であり、図2(b)は、本実施形態におけるPBTTT薄膜トランジスタの概略構成を示す断面図である。
【0043】
図2(a)に示すように、本実施形態におけるDNTT薄膜トランジスタ20は、例えば、ポリエチレンナフタレート基板(基板)11(例えば、100μmの厚さのもの)、金(電極)12(例えば、30nmの厚さのもの)、パリレンC(絶縁体)13(例えば、1μmの厚さのもの)、DNTT(有機半導体)14、金(電極)15(例えば、30nmの厚さのもの)を備えている。
【0044】
また、図2(b)に示すように、本実施形態におけるPBTTT薄膜トランジスタ30は、例えば、SiO(シリコンウエハ)21(例えば、200μmの厚さのもの)、n−Si(シリコンウエハ)22(例えば、300nmの厚さのもの)、PBTTT(有機半導体)24、金(電極)25(例えば、30nmの厚さのもの)を備えている。
【0045】
本実施形態における有機半導体薄膜トランジスタ(DNTT薄膜トランジスタ20、PBTTT薄膜トランジスタ30等)は、上記以外の他の部材を備えていてもよい。また、本実施形態における有機半導体薄膜トランジスタの製造方法は、特に限定されない。
【0046】
なお、図2(a)・(b)に示す有機半導体薄膜トランジスタに静磁場を印加する場合、θ=0°のときは上記各部材の積層面に沿う方向に印加し、θ=90°のときは上記各部材の積層面に垂直な方向に印加する。
【0047】
<具体的な評価方法>
本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法について、以下に具体的に説明する。
【0048】
本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法は、結晶の向きによりg値が異なる値となる方向に磁場を印加すること以外は、従来公知の電界誘起電子スピン共鳴法を用いて実施する。電界誘起電子スピン共鳴法の測定条件も、従来公知の条件とする。
【0049】
《配線への通電》
本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法は、有機半導体薄膜に配線を施し、該配線に通電した後、電界誘起電子スピン共鳴法によって上記キャリア移動頻度を評価することが好ましい。
【0050】
本明細書において、配線の状態は特に限定されず、有機半導体薄膜に通電することができる状態であればよい。また、通電の量は特に限定されず、当該配線内にキャリアを蓄積することができる量であればよい。
【0051】
《磁場の印加》
本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法は、結晶の向きによりg値が異なる値となる方向に磁場を印加する。また、本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法は、上記有機半導体薄膜の薄膜面に平行な方向、および該薄膜面に垂直な方向に、磁場を印加することが好ましい。
【0052】
本実施形態における磁場の印加について、図3を参照しながら具体的に説明する。なお、本実施形態では、図3(a)に示すDNTT薄膜トランジスタ20を用いて説明するが、これに限定されない。ここで、図3(a)は、本実施形態における電界誘起電子スピン共鳴法の評価対象となるDNTT薄膜トランジスタの概略構成を示す斜視図であり、図3(b)は、本実施形態における電界誘起電子スピン共鳴法での評価対象物の設置状態を示す説明図であり、図3(c)・(d)は、本実施形態における電界誘起電子スピン共鳴法での評価対象物に対する磁場方向を示す説明図である。
【0053】
図3(b)に示すように、DNTT薄膜トランジスタ20に導線31を配線し、石英管32等の容器に入れる。基板に対して平行な方向に静磁場を印加した場合をθ=0°とし(図3(d)を参照)、これより基板を回転させて、静磁場と基板とがなす角をθとする(図3(c)を参照、図3(c)はθ=90°の場合を示す)。図3(c)・(d)において、矢印C及びDは、磁場方向を表す。
【0054】
本実施形態における磁場印加方向以外の磁場印加条件は、電界誘起電子スピン共鳴法における従来公知の条件とする。
【0055】
《磁場印加後の処理》
有機半導体薄膜トランジスタに磁場を印加した後、各結晶に由来した電子スピン共鳴スペクトルを、結晶の配向方向によって分離して測定し、これらのスペクトルが温度上昇による結晶間のホッピングによって一本に収束する挙動をもとに、結晶間の障壁ポテンシャルを解析する。
【0056】
本実施形態における上述の測定手法および上述の解析手法は、電界誘起電子スピン共鳴法における従来公知の手法とする。
【0057】
本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法では、上述の測定によって得られた電子スピン共鳴スペクトル、上述の解析によって得られた障壁ポテンシャル等を用いて、キャリア移動頻度を評価する。キャリア移動頻度を評価する手法については、後述する実施例に具体的に記載する。
【0058】
本実施形態におけるキャリア移動頻度を評価する手法は、電界誘起電子スピン共鳴法における従来公知の手法とする。
【0059】
(II)本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価装置
本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価装置としては、結晶の向きによりg値が異なる値となる方向に磁場を印加する部材を備えていればよく、それ以外は特に限定されず、従来公知の電界誘起電子スピン共鳴法を実施する装置を用いることができる。
【0060】
(III)本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法の用途
本実施形態における有機半導体薄膜のキャリア移動頻度の評価方法は、有機EL、有機薄膜太陽電池および有機半導体薄膜電界効果トランジスタからなる群より選択される少なくとも1つに使用される上記有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度を評価するために用いられることが好ましい。
【実施例】
【0061】
本発明の実施例について以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0062】
有機半導体層を構成する有機材料として、有機半導体薄膜トランジスタの形成が報告されている高分子系材料である、ポリ[2,5−ビス(3−ヘキサデシルチオフェン−2−イル)チエノ(3,2−b)チオフェン](以下、「PBTTT」と略称する。)、及びジナフト[2,3−b:2’,3’−f]チエノ[3,2−b]チオフェン(以下、「DNTT」と略称する。)を用いた実施例について説明する。
【0063】
PBTTTのトルエン溶液を調整し、シリコンウエハ(SiO/n−Si)上にスピンコートすることによって、PBTTT薄膜トランジスタを作製した(図2(b)を参照)。PBTTT薄膜の厚さは20nmであった。一方、DNTT薄膜トランジスタは、パリレンC/金/ポリエチレンナフタレート基板上に真空蒸着法によって作製した(図2(a)及び図3(a)を参照)。DNTT薄膜の厚さは50nm、グレインのサイズは約200nmであった。ここで、パリレンCは、絶縁性に優れたポリマーであり、化学気相成長法により膜を形成させる。
【0064】
これらの薄膜トランジスタを1〜10枚積層させ、各ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極を銀ペーストにより接続し、それぞれの電極に直径50〜100μmの導線を配線した。内径3.5mmのESRチューブ内に配線したトランジスタを入れ、導線の一方はESR管の外になるように封管した(図3(b)を参照)。この際、ESR管内部は、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスにて置換した。
【0065】
電子スピン共鳴測定は、Xバンド帯のマイクロ波を用いて実施した。典型的な磁場の掃引範囲は320.9〜321.5mT、温度範囲は300〜4Kで行った。基板に対して平行な方向に静磁場を印加した場合をθ=0°とし(図3(d)を参照)、これより基板を回転させて、静磁場と基板とがなす角をθとした(図3(c)を参照、図3(c)はθ=90°の場合を示す)。薄膜デバイスに印加するゲート電圧は、−200V〜200Vの範囲で行った。
【0066】
図4に、PBTTTによる有機薄膜トランジスタについて、静磁場と基板の成す角θとを変化させながら測定した電子スピン共鳴スペクトルを示す。具体的には、図4(a)は、低温において静磁場方向を変化させながら得られたPBTTT薄膜トランジスタの電子スピン共鳴スペクトルの測定結果を示すグラフであり、図4(b)は、PBTTTの分子構造を示す模式図であり、図4(c)は、室温および低温におけるg値の静磁場印加方向による角度依存性の測定結果を示すグラフである。ここで、図4(a)では、電子スピン共鳴スペクトルの実測値とシミュレーションによって得られた値とをいずれも実線で示している。図4(a)に示すように、実測値とシミュレーションによって得られた値とは、ほぼ同じ値であることが分かる。
【0067】
図4(c)に示すように、低温160Kにおいて、θ=90°のときには吸収線は1本(g=2.0031)であるが、θ=0°のときには吸収線が2本(g=2.0020,2.0009)に分裂したスペクトルが観測された。
【0068】
X線回折の測定結果によれば、PBTTTは、分子面を基板に対して垂直に立てた「エッジ・オン(edge−on)」配向を示すことが報告されている。分子軌道法によるg値のシミュレーションを行ったところ、gx(ポリマーの主鎖方向)=2.0004、gy(主鎖に対して垂直で分子面に平行な方向)=2.0027、gz(主鎖および分子面に対して垂直な方向)=2.0021であるとの計算結果が得られた。これらは、分裂幅も含めて実験値とよく一致することから、以上のスペクトルは、PBTTTの微結晶(ドメイン)のポリマーの主鎖方向、及びこれと垂直な方向に静磁場を印加したことに由来したスペクトル構造であると考えられる。実際、θ=0°のときの吸収線が2本(g=2.0020,2.0009)に分裂した実測のスペクトルは、微結晶の配向方向がランダムで角度分布があることで、それらのローレンツ型スペクトルの足し合わせを仮定したシミュレーションによって再現させることができた。
【0069】
図5に、θ=0°とθ=90°との2つの測定配置において、PBTTT−TFTの電子スピン共鳴スペクトルの温度依存性を測定した結果を示す。具体的には、図5(a)は、微結晶毎のg値が同一の値となる方向に静磁場を固定して得られたPBTTT薄膜トランジスタの電子スピン共鳴スペクトルを各温度で測定した結果を示しており、図5(b)は、微結晶毎のg値が異なる値となる方向に静磁場を固定して得られたPBTTT薄膜トランジスタの電子スピン共鳴スペクトルを各温度で測定した結果を示している。ここで、図5(a)・(b)では、電子スピン共鳴スペクトルの実測値、およびシミュレーションによって得られた値をいずれも実線で示している。図5(a)・(b)に示すように、実測値とシミュレーションによって得られた値とは、ほぼ同じ値であることが分かる。
【0070】
なお、表1に、各種パラメータ一の数値例(PBTTT、235Kの場合)を示している。
【0071】
【表1】

【0072】
図5(a)に示すように、θ=90°のときの電子スピン共鳴スペクトルを見てみると、全ての温度において1本の吸収線のみが観測された。T>100Kにおけるスペクトル形状は、単一のローレンツ関数とよく一致した。線幅は、温度の上昇とともに先鋭化しており、基本的にはペンタセン有機薄膜トランジスタについて報告された挙動とのよい一致が見られた。
【0073】
次に、図5(b)に示すように、θ=0°の場合を見てみると、室温付近では吸収線は1本であるが、低温においては吸収線が2本観測された。この2本の吸収線は、上述した角度依存性で見られていたものと同一である。このような2本から1本への吸収線の変化は、単純に線幅が増大したために見られたものではなく、微結晶間のキャリア移動頻度の増大によって各微結晶における局所磁場が微結晶同士で平均化されることにより、電子スピン共鳴スペクトルが1本の吸収線として観測されるようになったものと考えられる。これと全く同様な挙動が、DNTT多結晶性薄膜においても観測された。
【0074】
以上のように、印加する静磁場の方向によって、2つの異なった運動による先鋭化が観測される。このような運動による先鋭化が起こる前の不均一な線幅の原因(局所磁場の原因)は、上記の2つの場合で異なっている。すなわち、θ=90°の場合には、全ての微結晶でg値が等しく、分子内の超微細相互作用が線幅の原因となっている。一方、θ=0°の場合には、微結晶毎のg値が異なるために、スペクトルが分裂している。従って、前者は微結晶内のキャリア移動頻度を反映している。一方、後者の場合は、キャリアが微結晶間を運動することによって初めて平均化が起こるため、θ=0°の場合のスペクトル変化を解析することによって微結晶間のキャリア移動頻度を評価することが可能になる。
【0075】
以上の定量的解析には、キャリア移動頻度をパラメータとするスペクトルシミュレーションのフィッティング解析が必要である。共鳴周波数の異なるN個のサイトをスピンが飛び移っているときの電子スピン共鳴スペクトルは、以下にように与えられる。各サイトは、それぞれラーモア周波数ωi (i = 1, ..., N) をもち、任意の与えられた時刻でサイトi にいる確率をWiとする。また、スピンが単位時間にサイトi からサイトj へ移る確率をπijとする。ここで、πiiは、単位時間にサイトi から出て行く確率として定義される。このとき、電子スピン共鳴スペクトルは、以下の式(1)、(2)及び(3)によって表される。
【0076】
【数1】

【0077】
【数2】

【0078】
各ベクトルおよび行列は、それぞれ、W :Wiを各成分とするベクトル、ω:対角成分がωi でその他の成分が0 の対角行列、E :単位行列、π:πijを各成分とする行列、1 :全ての成分が1 に等しいベクトル、である。本発明にて考えたいのは、面内でランダムに配向した微結晶間をキャリアが飛び移っていく状況であるから、結晶の向きを(0, π/2) の区間でN 等分とする。任意の時刻にスピンが各サイトにいる確率は均等であり、キャリア移動頻度をf とすれば、各ベクトルや行列の要素は、以下の式(4)、(5)及び(6)によって表される。
【0079】
【数3】

【0080】
このままでは、その他の要因による線幅の寄与(スピン−格子緩和や先鋭化された超微細相互作用など)が考慮されないので、ωテンソルを、減衰項を含む複素数へと拡張する。a 軸方向での線幅をT-1a、b 軸方向での線幅をT-1bとして、ωテンソルを改めて以下の式(7)ように定義する。
【0081】
【数4】

【0082】
これにより、微結晶間のキャリア移動よってg値の異方性が平均化されたときのスペクトルを厳密にシミュレーションすることができる。
【0083】
フィッティング解析では、g値の分裂幅をまず最低温度の結果から決定し、それ以外の温度ではg値の分裂幅を固定して解析した。よって、フィッティングパラメータとして用いたのは、信号強度、共鳴磁場の平均値、2つの線幅、キャリア移動頻度である。図4及び図5において、実測の電子スピン共鳴スペクトル(実線部分を参照)にフィッティング曲線(実線部分を参照)を示したが、それらは実験スペクトルをよく再現している。キャリア移動頻度は、スペクトルが2本から1本へと遷移する中間温度領域において特に精度よく求めることができる。一方、極端に先鋭化された高温領域や、先鋭化がほとんどない低温領域では、キャリア移動頻度を精度よく評価することは困難であった。
【0084】
見積もった微結晶内と微結晶間とのキャリア移動頻度を図6に示す。具体的には、図6は、微結晶毎のg値が同一の値となる方向(薄膜面に垂直な方向)に静磁場を固定して得られた電子スピン共鳴スペクトルの温度変化の解析により得られたキャリア移動頻度と、微結晶毎のg値が異なる値となる方向(薄膜面に平行な方向)に静磁場を固定して得られた電子スピン共鳴スペクトルの温度変化の解析より得られたキャリア移動頻度とを示している。
【0085】
PBTTTとDNTTとに関しては、微結晶内および微結晶間の両方のキャリア移動頻度を見積もった。図6から、どちらのデバイスにおいても、微結晶内のキャリア移動頻度は微結晶間に比べて3〜30倍程度大きいことが分かる。熱活性型の直線の傾きから、微結晶内キャリア移動の活性化エネルギーは5〜21meVであり、微結晶間キャリア移動の活性化エネルギーは45〜86meVであると評価された。表2に、各有機半導体について、微結晶内および微結晶間の活性化エネルギーを電子スピン共鳴法により求めた結果、及びデバイスのキャリア移動頻度から活性化エネルギーを求めた結果を示す。
【0086】
【表2】

【0087】
以上より、微結晶内では熱エネルギー(kBT=25meV)よりも浅いトラップが支配的であるのに対し、微結晶間では熱エネルギーの数倍に相当するような大きめのエネルギー障壁があると結論付けられる。また、キャリア移動頻度の活性化エネルギーは、微結晶間キャリア移動の活性化エネルギーとよく一致している。このことから、微結晶間の電子移動性が、薄膜全体の電子移動性を律速していることが結論付けられる。
【0088】
以上のように、有機薄膜内のキャリア輸送が微結晶間の障壁ポテンシャルによって律速される様子は、低分子系材料とポリマー材料とで共通しており、微結晶間の電子移動性を向上させることが実際のトランジスタ特性の向上につながると考えられる。よって、本発明は、今後のプラスチックエレクトロニクスの応用を考える上で、材料、プロセス、界面、膜質などの諸性質と素子特性とを結びつけるための重要な評価分析方法になることが考えられる。
【0089】
なお、上記の実施例は、あくまでも本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明はこの実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく変形、他の態様は、当然本発明に包含されるものである。例えば、有機半導体としては、PBTTTとDNTTとに関する結果について例示したが、これ以外の有機半導体であって、静磁場の印加方向によって微結晶毎に異なるg値を示すものであれば、どのような有機半導体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、有機EL、有機薄膜太陽電池、有機半導体薄膜電界効果トランジスタ等の広範な分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 微結晶(結晶)
2 ポリマー主鎖または低分子の配列構造
3 トラップ
11 ポリエチレンナフタレート基板(基板)
12 金(電極)
13 パリレンC(絶縁体)
14 DNTT(有機半導体)
15 金(電極)
20 DNTT薄膜トランジスタ(有機半導体薄膜トランジスタ)
21 SiO(シリコンウエハ)
22 n−Si(シリコンウエハ)
24 PBTTT(有機半導体)
25 金(電極)
30 PBTTT薄膜トランジスタ(有機半導体薄膜トランジスタ)
31 導線
32 石英管
A 結晶内の移動を表す矢印
B 結晶間の移動を表す矢印
C 磁場方向を表す矢印
D 磁場方向を表す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶性の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度を評価する方法であって、
上記有機半導体薄膜において、結晶内および結晶間の少なくとも一方における上記キャリア移動頻度を評価することを特徴とする、有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法。
【請求項2】
上記有機半導体薄膜に配線を施し、該配線に通電した後、電界誘起電子スピン共鳴法によって上記キャリア移動頻度を評価することを特徴とする、請求項1に記載の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法。
【請求項3】
上記有機半導体薄膜を構成する有機半導体が、磁場方向に対し異方性を発現する化学構造を有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法。
【請求項4】
上記有機半導体薄膜に用いられる、有機半導体の薄膜面に平行な方向、および該薄膜面に垂直な方向に、磁場を印加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法。
【請求項5】
上記結晶間の障壁ポテンシャルを分析することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法。
【請求項6】
有機EL、有機薄膜太陽電池および有機半導体薄膜電界効果トランジスタからなる群より選択される少なくとも1つに使用される上記有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度を評価するために用いられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機半導体薄膜におけるキャリア移動頻度の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−181059(P2012−181059A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43164(P2011−43164)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)
【Fターム(参考)】