説明

有機半導体

構造:
【化1】


(式中、R1〜R4は独立に、それだけに限らないが、2〜20個(例えば2〜12個)の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分岐、もしくは環状のアルキル鎖、アルコキシ、アミノ、アミド、シリル、アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールを含み、X1およびX2は独立に、S、O、NR5またはSiR67を含み、R5〜R7は独立に、C1〜C5の分岐、直鎖、または環状のアルキル鎖を含み、Ar1は、複素環を含み、nは、1〜4の間の整数である)
を含む半導体化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、有機半導体、特に、薄膜トランジスタの一部を形成するための有機半導体に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタは、2つの主な種類、すなわち、バイポーラ接合トランジスタおよび電界効果トランジスタに分類することができる。両種類は、3つの電極を含み、チャネル領域内でこれらの間に半導体材料が配置された一般的な構造を共有する。バイポーラ接合トランジスタの3つの電極は、エミッター、コレクター、およびベースとして知られ、一方、電界効果トランジスタでは、3つの電極は、ソース、ドレイン、およびゲートとして知られる。バイポーラ接合トランジスタは、エミッターとコレクターとの間の電流が、ベースとエミッターとの間を流れる電流によって制御されるので、電流動作型デバイスとして記述することができる。対照的に、電界効果トランジスタは、ソースとドレインとの間を流れる電流が、ゲートとソースとの間の電圧によって制御されるので、電圧動作型デバイスとして記述することができる。
【0003】
トランジスタは、これらが、それぞれ、正電荷キャリア(ホール)または負電荷キャリア(電子)を伝導する半導体材料を含むかどうかによって、p型およびn型として分類される場合もある。半導体材料は、電荷を受容、伝導、および供与するその能力によって選択することができる。半導体材料が、ホールまたは電子を受容、伝導、および供与する能力は、物質をドープすることによって増強され得る。
【0004】
例えば、p型トランジスタデバイスは、ホールを受容、伝導、および供与することに効率的である半導体材料を選択し、半導体材料からホールを注入および受容することに効率的である、ソース電極およびドレイン電極用の材料を選択することによって形成することができる。電極中のフェルミ準位と半導体材料のHOMO準位の良好なエネルギー準位マッチングにより、ホールの注入および受容を増強することができる。対照的に、n型トランジスタデバイスは、電子を受容、伝導、および供与することに効率的である半導体材料を選択し、半導体材料中に電子を注入し、半導体材料から電子を受容することに効率的である、ソース電極およびドレイン電極用の材料を選択することによって形成することができる。電極中のフェルミ準位と半導体材料のLUMO準位の良好なエネルギー準位マッチングにより、電子の注入および受容を増強することができる。トランジスタは、薄膜トランジスタ(TFT)を形成するために、薄膜中に構成要素を堆積させることによって形成することができる。そのようなデバイス中の半導体材料として有機材料が使用される場合、これは、有機薄膜トランジスタ(OTFT)として知られる。
【0005】
OTFTは、溶液処理などの低費用、低温度の方法によって製造することができる。さらに、OTFTは、フレキシブルプラスチック基板と適合性があり、ロールトゥロールプロセスでフレキシブル基板上にOTFTを大規模製造することの展望を提供する。
【0006】
図2を参照すると、ボトムゲート有機薄膜トランジスタ(OTFT)の一般的な構造は、基板10の上に堆積されたゲート電極12を備える。誘電材料の絶縁層11がゲート電極12の上に堆積され、ソース電極およびドレイン電極13、14が、誘電材料の絶縁層11の上に堆積される。ソース電極およびドレイン電極13、14は、間隔が空けられていることによって、ゲート電極12の上に位置した、これらの間のチャネル領域を画定する。有機半導体(OSC)材料15は、ソース電極およびドレイン電極13、14を接続するために、チャネル領域中に堆積される。OSC材料15は、ソース電極およびドレイン電極13、14の上に少なくとも部分的に延在する場合がある。
【0007】
あるいは、いわゆるトップゲート有機薄膜トランジスタを形成するために、有機薄膜トランジスタの頂部にゲート電極を設けることが知られている。そのような構造において、ソース電極およびドレイン電極は、基板上に堆積され、間隔が空けられていることによって、これらの間にチャネル領域を画定する。有機半導体材料の層が、ソース電極およびドレイン電極を接続するためにチャネル領域中に堆積され、ソース電極およびドレイン電極の上に少なくとも部分的に延在する場合がある。誘電材料の絶縁層が有機半導体材料の上に堆積され、やはり、ソース電極およびドレイン電極の上に少なくとも部分的に延在する場合がある。ゲート電極は、絶縁層の上に堆積され、チャネル領域の上に位置される。
【0008】
有機薄膜トランジスタは、剛性基板またはフレキシブル基板上に作製することができる。剛性基板は、ガラスまたはケイ素から選択することができ、フレキシブル基板は、薄いガラス、またはプラスチック、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリカーボネート、およびポリイミドなどを含むことができる。
【0009】
有機半導体材料は、適当な溶媒を使用することによって溶液処理可能にすることができる。例示的な溶媒には、モノアルキルベンゼンまたはポリアルキルベンゼン、例えば、トルエン、およびキシレンなど、テトラリン、ならびにクロロホルムが含まれる。好適な溶液堆積技法には、スピンコーティングおよびインクジェット印刷が含まれる。他の溶液堆積技法として、ディップコーティング、ロール印刷、およびスクリーン印刷が挙げられる。
【0010】
ソース電極とドレイン電極の間で画定されるチャネルの長さは、最大500ミクロンであってもよいが、好ましくは、長さは、200ミクロン未満、より好ましくは100ミクロン未満、最も好ましくは20ミクロン未満である。
【0011】
ゲート電極は、広範囲の導電性材料、例えば、金属(例えば、金)または金属化合物(例えば、インジウムスズ酸化物)から選択することができる。あるいは、導電性ポリマーを、ゲート電極として堆積させることができる。そのような導電性ポリマーは、例えば、スピンコーティング、またはインクジェット印刷技法、および上述した他の溶液堆積技法を使用して、溶液から堆積させることができる。
【0012】
絶縁層は、高抵抗率を有する絶縁材料から選択される誘電材料を含む。誘電体の誘電率kは一般に、約2〜3であるが、高い値のkを有する材料が望ましく、その理由は、OTFTで達成可能な電気容量は、kに直接比例し、ドレイン電流IDは、電気容量に直接比例するためである。したがって、低動作電圧で高いドレイン電流を実現するために、チャネル領域内に薄い誘電体層を有するOTFTが好適である。
【0013】
誘電材料は、有機物であっても無機物であってもよい。好適な無機材料として、SiO2、SiNX、およびスピンオンガラス(SOG)が挙げられる。好適な有機材料は一般にポリマーであり、これらには、絶縁ポリマー、例えば、Dow Corningから入手可能な、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリジン(PVP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリレート、フッ化ポリマー、およびベンゾシクロブタン(BCB)などが含まれる。絶縁層は、材料のブレンドから形成し、または多層構造を含むことができる。
【0014】
誘電材料は、当技術分野で公知であるような熱蒸発、真空処理、または積層技法によって堆積させることができる。あるいは、誘電材料は、例えば、スピンコーティングまたはインクジェット印刷技法、および上述した他の溶液堆積技法を使用して、溶液から堆積させることができる。
【0015】
誘電材料が有機半導体上に溶液から堆積される場合、これは、有機半導体の溶解を招くべきでない。同様に、誘電材料は、有機半導体が溶液から誘電材料上に堆積される場合、溶解するべきでない。そのような溶解を回避するための技法には、直交溶媒(orthogonal solvent)の使用、例えば、下にある層を溶解しない、最上層を堆積させるための溶媒の使用、および下にある層の架橋が含まれる。
【0016】
絶縁層の厚さは、2μm未満であることが好ましく、500nm未満であることがより好ましい。
【0017】
有機半導体は、電子の移動を可能にする共役π系を広範に有する有機分子のクラスである。
【0018】
これらの分子を調製するための好適な方法は、例えば、WO2000/53656に記載されているようなSuzuki反応(カップリングまたは重合反応)、および例えば、T.Yamamoto、「Electrically Conducting And Thermally Stable pi−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes」、Progress in Polymer Science 1993年、17巻、1153〜1205頁に記載されているようなYamamoto重合である。これらの技法はともに、金属錯体触媒の金属原子が、モノマーのアリール基と脱離基との間に挿入される、「金属挿入」を介して機能する。Yamamoto重合の場合では、ニッケル錯体触媒が使用され、Suzuki反応の場合では、パラジウム錯体触媒が使用される。
【0019】
例えば、Yamamoto重合による線状ポリマーの合成では、2つの反応性ハロゲン基を有するモノマーが使用される。同様に、Suzuki反応の方法によれば、少なくとも1つの反応基は、ボロン酸またはボロン酸エステルなどのホウ素誘導体基であり、他の反応基は、ハロゲンである。好適なハロゲンは、塩素、臭素、およびヨウ素であり、最も好ましくは、臭素である。
【0020】
あるいは、スタンニル基を、重合またはカップリング反応において反応基として使用することができる(Stille反応)。
【0021】
有機半導体の性能は一般に、その「電荷移動度」(cm2-1-1)の測定によって評価され、これは、ホールまたは電子の移動度に関連づけることができる。この測定は、材料にわたって印加される電場に対する電荷担体のドリフト速度に関係する。
【0022】
比較的高い移動度を有する有機半導体は、固体状態において効率的で有効なπ−πスタッキングを可能にする、広範な共役を伴った堅固な平面構造を有する化合物を含むものである傾向がある。
【0023】
WO2007/068618には様々な有機半導体が記載されており、それぞれは、アセチレン基で置換された中心ベンゼン環を有する縮合芳香環のアレイを含む。
【0024】
JP2007/088222およびWO2007/116660には、有機半導体として、小分子、オリゴマー形態およびポリマー形態で、ベンゾジチオフェンおよびその誘導体を使用することが記載されている。
【0025】
Journal of Polymer Science A:Polymer Chemistry 46巻(22号)7342〜7353頁においてScherfらは、構造:
【0026】
【化1】

を有するポリマーを記載している。
【0027】
しかし、化合物がπ−πスタックを形成することを可能にするのに必要とされる共役のレベルの増大は、半導体のバンドギャップおよび安定性の減少をもたらす場合があり、芳しくない性能および短い寿命につながる。さらに、これらの化合物は、共役の拡張を実現するのに必要とされる分子のサイズのために、高い不溶性を有する場合があり、これは、合成において特定の問題を提起し、インクジェット印刷などの効率的なトランジスタ生産方法におけるその使用を困難にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、高い移動度、良好な溶解度、および良好な環境安定性を有する有機半導体を提供することを追及する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
第1の態様では、本発明は、請求項1から11に規定されたような半導体化合物を提供する。化合物は好ましくは、構造:
【0030】
【化2】

(式中、R1〜R4は独立に、それだけに限らないが、2〜20個の間の炭素原子(好ましくは、2〜12個の炭素原子、または2〜6個の炭素原子)を有する、場合により置換された直鎖、分岐、もしくは環状のアルキル鎖、アルコキシ、アミノ、アミド、シリル、アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールを含み;
1およびX2は独立に、S、O、NR5またはSiR67を含み、R5〜R7は独立に、C1〜C5の分岐、直鎖、または環状のアルキル鎖を含み、
Ar1は、複素環式芳香環を含み、nは、1〜4の間の整数である)
を含む。
【0031】
可溶化基は、この構造上のどこにでも配置することができるが、本発明者らは、1つまたは複数の中心環に隣接した5員環上の「橋頭」位における可溶化基の好ましい位置決めは、分子の末梢に位置された場合より大きい可溶化効果をもたらすことを見出した。
【0032】
したがって、より短い、かつ/またはより小さい可溶化基を、橋頭位で使用することができる。これらのより短い、かつ/またはより小さい可溶化基は、π−πスタッキングを妨害する能力がより低く、それによって、溶液処理性の改善に加えて移動度の改善を潜在的にもたらす。
【0033】
さらに、可溶化基の位置決めによってもたらされる溶解度の改善は、半導体化学種の平面共役構造が、この化学種が可溶性のままでありながら、さらに拡張されることを可能にする。
【0034】
好ましくは、半導体化合物は、構造:
【0035】
【化3】

(式中、Ar2は、同素環式または複素環式芳香環である)を含む。Ar2が複素環式芳香環である場合、これは、S、O、NR5、またはSiR67の群から選択される、少なくとも1つのヘテロ原子を含むことが好ましい。
【0036】
化合物は、Ar1および/または、存在する場合にはAr2と連続して縮合された1つまたは複数のさらなる芳香族基を含むことが好ましい。前記さらなる芳香族基の1つ、いくつか、またはすべては、S、O、NR5、またはSiR67の群から選択される、少なくとも1つのヘテロ原子を含有する複素環基であってもよく、いくつかの実施形態ではそのような複素環基である。
【0037】
好ましくは、化合物の末端アリールまたはヘテロアリール基の一方または両方は、1つまたは複数の置換基Tで置換されており、これらの基の少なくとも1つは、反応基もしくは重合可能基、または1〜20個(例えば、1〜12個)の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分岐、もしくは環状のアルキル鎖、アルコキシ、アミノ、アミド、シリル、アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールを含み、残りの基は、もしあれば、独立に、水素、または1〜20個(例えば、1〜12個)の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分岐、もしくは環状のアルキル鎖、アルコキシ、アミノ、アミノ、アミド、シリル、アルキル、またはアルケニルを含む。
【0038】
1つまたは複数の反応性ポリマー基は、好ましくは独立に、ハロゲン、ボロン酸、ジボロン酸、ボロン酸およびジボロン酸のエステル、アルキレン基、またはスタンニル基などの部分を含む。
【0039】
末端アリール基は、ただ1つの他のアリール基またはヘテロアリール基に縮合したアリール基、例えば、構造Iにおける基Ar1およびヘテロ原子X1を含有する基、ならびに構造IIにおける基Ar1およびAr2を表す。
【0040】
化合物は、
【0041】
【化4】

(式中、X3〜X6は独立に、S、O、NR5またはSiR67を含むことができ、X3〜X6のいずれかが末端アリール基の一部である場合、X3〜X6は、存在する場合、C22を含むことができる)
の群から選択される構造を含むことが好ましい。
【0042】
あるいは、化合物は、構造:
【0043】
【化5】

(式中、任意選択のアリール基Ar1〜Ar6の1つまたは複数は独立に、S、O、NR5、またはSiR67の群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環を含む)
を含むことができる。
【0044】
末端アリール基の1つまたは両方は、同素環を含むことが好ましい。
【0045】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載される化合物を含む半導体部分を含む電子デバイスを提供する。
【0046】
別の態様では、本発明は、基板上に半導体部分を形成するために基板の表面に塗布するための溶液を提供し、この溶液は、本明細書に記載されるような化合物を含む。
【0047】
さらなる態様では、本発明は、基板上に本明細書に記載されるような溶液を塗布するステップを含む、電子デバイスを製造する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による化合物の合成を示す図である。
【図2】先行技術によるボトムゲート有機薄膜トランジスタの一般的構造の模式図である。
【図3】本発明の実施形態によって、一般的な基板上に作製される有機薄膜トランジスタおよび隣接する有機発光デバイスを含むピクセル(pixel)の模式図である。
【図4】本発明の実施形態によって、有機発光デバイスと積層関係で作製される有機薄膜トランジスタの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下の説明全体にわたって、同様の参照数字は、同様の部分を特定するのに使用されるものとする。
【0050】
本発明の有機半導体は、Pd(PPh34およびK2CO3の存在下で、チエノチオフェンのピナコールボロネートをジエチル−2,5−ジブロモテレフタレートとSuzuki型クロスカップリング反応させて、ジケト化合物を得ることによって製造することができる。メチルリチウムとのさらなる反応と、その後のBF3・Et2O媒介環化により、図1に示されるような本発明の化合物を得る。
【0051】
本方法によって製造することができる他の化合物を以下に示す:
【0052】
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【0053】
得られる化合物は、はるかに可溶性であり、したがって基板上にインクジェット印刷または他の適当な溶液堆積技法が適用されることによって、図2に示されているものなどの薄膜トランジスタ中に半導体層15をもたらすことができる。
【0054】
そのような有機薄膜トランジスタ(OTFT)の用途は、光学デバイス、好ましくは、有機光学デバイス中のピクセルを駆動することである場合がある。そのような光学デバイスの例には、光応答性デバイス、特に、光検出器、および発光性デバイス、特に、有機発光デバイスが含まれる。OTFTは、例えば、ディスプレイ用途において使用するためのアクティブマトリックス式有機発光デバイスとともに使用するのに特に適している。
【0055】
図3は、一般的な基板104上に作製された有機薄膜トランジスタ100および隣接する有機発光デバイス(OLED)102を備えるピクセルを示す。OTFT 100は、ゲート電極106、誘電体層108、それぞれソース電極およびドレイン電極110および112、ならびにOSC層114を備える。OLED 102は、アノード116、カソード118、およびアノード116とカソード118の間に設けられたエレクトロルミネッセント層120を備える。電荷輸送層、電荷注入層、または電荷ブロッキング層などのさらなる層を、アノード116とカソード118の間に配置することができる。図3の実施形態において、カソード材料118の層は、OTFT 100およびOLED 102の両方にわたって延在し、絶縁層122が、カソード層118をOSC層122から電気的に隔離するために設けられている。OTFT 100およびOLED 102の活性領域は、基板104上にフォトレジストの層124を堆積し、これをパターン形成して基板上にOTFT 100およびOLED 102の領域を画定することによって形成される一般的なバンク材によって画定される。
【0056】
図3において、ドレイン電極112は、有機発光デバイス102の発光状態と非発光状態とを切り換えるために、有機発光デバイス102のアノード116に直接接続されている。
【0057】
図4で例示された代替の配置では、有機薄膜トランジスタ200は、有機発光デバイス202と積層関係で作製することができる。そのような実施形態では、有機薄膜トランジスタ202は、上述したように、トップゲート構成またはボトムゲート構成で構築される。図3の実施形態と同様に、OTFT 200およびOLED 202の活性領域は、フォトレジストのパターン層124によって画定されるが、この積層配置では、2つの別個のバンク層124、すなわちOLED 202用に1つ、およびOTFT 200用に1つが存在する。平坦化層204(保護層としても知られる)がOTFT 200の上に堆積される。例示的な保護層204には、BCBおよびパリレンが含まれる。有機発光デバイス202は、保護層204の上に作製され、有機発光デバイス202のアノード116は、保護層204およびバンク層124を通り抜ける導電性ビア206によって、OTFT 200のドレイン電極112に電気的に接続される。
【0058】
OTFTおよび光学的に活性な領域(例えば、発光領域または光感知領域)を備えるピクセル回路は、さらなる構成要素を備えることができることが理解されるであろう。特に、図3および4のOLEDピクセル回路は一般に、示されている駆動トランジスタに加えて、少なくとも1つのさらなるトランジスタ、および少なくとも1つのコンデンサーを備えることになる。本明細書に記載される有機発光デバイスは、トップ発光デバイスまたはボトム発光デバイスとすることができることが理解されるであろう。すなわち、デバイスは、デバイスのアノード側またはカソード側を通じて発光することができる。透明なデバイスでは、アノードおよびカソードの両方が透明である。透明なカソードデバイスは、透明なアノードを有する必要はなく(もちろん、完全に透明なデバイスが望まれない限り)、したがって、ボトム発光デバイスに使用される透明なアノードは、アルミニウムの層などの反射性材料の層で置き換え、または補うことができることが理解されるであろう。
【0059】
透明なカソードは、アクティブマトリックスデバイスにとって特に有利であり、その理由は、そのようなデバイス中の透明なアノードを通じた発光は、図4に例示された実施形態から分かるように、発光ピクセルの下に位置したOTFT駆動回路によって少なくともある程度遮断され得るためである。
【0060】
ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極の厚さは、5〜200nmの領域内とすることができるが、一般に、例えば、原子間力顕微鏡法(AFM)によって測定される場合、50nmである。
【0061】
他の層をデバイス構造中に含めることができる。例えば、自己組織化単分子層(SAM)を、ゲート、ソース、またはドレイン電極上に設けることができ、かつ/または自己組織化単分子層を、必要とされる場合に、結晶化度を促進し、接触抵抗を低減し、表面特性を修復し、接着を促進するために、基板、絶縁層、および有機半導体材料上に設けることができる。特に、チャネル領域中の誘電体表面に、例えば、特に、高kの誘電体表面用に、有機半導体の形態(特に、高分子配列および結晶化度)を改善し、電荷トラップを覆うことによってデバイス性能を改善するために、結合領域および有機領域を含む単層を設けることができる。そのような単層のための例示的な材料には、長いアルキル鎖を有するクロロシランまたはアルコキシシラン、例えば、オクタデシルトリクロロシランが含まれる。
【0062】
おそらく、多くの他の有効な代替案が、当業者に思いつくであろう。本発明は、記載した実施形態に限定されず、本明細書に添付した特許請求の範囲内にある、当業者に明らかな改変を包含することが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
【化1】

(式中、R1〜R4は独立に、それだけに限らないが、2〜20個の間の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分岐、もしくは環状のアルキル鎖、アルコキシ、アミノ、アミド、シリル、アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールを含み、
1およびX2は独立に、S、O、NR5またはSiR67を含み、R5〜R7は独立に、C1〜C5の分岐、直鎖、または環状のアルキル鎖を含み、
Ar1は、S、O、NR5またはSiR67の群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を好ましくは含む複素環式芳香環を含み、
nは、1〜4の間の整数である)
を含む半導体化合物。
【請求項2】
構造:
【化2】

(式中、Ar2は、同素環式または複素環式芳香環である)
を含む、請求項1に記載の半導体化合物。
【請求項3】
Ar2が、好ましくは、S、O、NR5またはSiR67の群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環式芳香環である、請求項2に記載の半導体化合物。
【請求項4】
Ar1および/または存在する場合、Ar2と連続して縮合された1つまたは複数のさらなる芳香族基を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体化合物。
【請求項5】
前記さらなる芳香族基の1つ、いくつか、またはすべてが、S、O、NR5、またはSiR67の群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を好ましくは含有する複素環基を含む、請求項4に記載の半導体化合物。
【請求項6】
化合物の末端アリール基の一方または両方が、1つまたは複数の置換基Tで置換されており、これらの基の少なくとも1つは、1〜20個(例えば、1〜12個)の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分岐、もしくは環状のアルキル鎖、アルコキシ、アミノ、アミド、シリル、アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールを含み、残りの基は独立に、水素、または1〜20個(例えば、1〜12個)の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分岐、もしくは環状のアルキル鎖、アルコキシ、アミノ、アミノ、アミド、シリル、アルキル、またはアルケニルを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体化合物。
【請求項7】
前記化合物が、群:
【化3】

(式中、X3〜X6は独立に、S、O、NR5またはSiR67を含むことができ、X3〜X6のいずれかが末端アリール基の一部である場合、X3〜X6は、存在する場合、C22を含むことが好ましい)
から選択される構造を含む、請求項6に記載の半導体化合物。
【請求項8】
構造:
【化4】

(式中、R1〜R4は独立に、それだけに限らないが、1〜20個(例えば、1〜12個)の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分岐、もしくは環状のアルキル鎖、アルコキシ、アミノ、アミド、シリル、アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールを含み、
1およびX2は独立に、S、O、NR5またはSiR67を含み、R5〜R7は独立に、C1〜C5の分岐、直鎖、または環状のアルキル鎖を含み、
1およびT2は独立に、1〜20個(例えば、1〜12個)の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分岐、もしくは環状のアルキル鎖、アルコキシ、アミノ、アミド、シリル、アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールを含み、
任意選択のアリール基Ar1〜Ar6の1つまたは複数は独立に、S、O、NR5またはSiR67の群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環を含む)
を含む半導体化合物。
【請求項9】
末端アリール基の一方または両方が同素環を含む、請求項8に記載の半導体化合物。
【請求項10】
1〜R4が同じであるか、または異なっており、独立に、2〜12個の間の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分岐、または環状のアルキル鎖を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の半導体化合物。
【請求項11】
1〜R4が同じであるか、または異なっており、独立に、2〜6個の間の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖、分岐、または環状のアルキル鎖を含む、請求項10に記載の半導体化合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の半導体化合物を含む半導体部分を備える電子デバイス。
【請求項13】
基板上に半導体部分を形成するために基板の表面に塗布するための溶液であって、請求項1から11のいずれかに記載の半導体化合物を含む溶液。
【請求項14】
基板に請求項13に記載の溶液を塗布するステップを含む、電子デバイスを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−501076(P2013−501076A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527375(P2012−527375)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001485
【国際公開番号】WO2012/017184
【国際公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】