説明

有機合成装置

【課題】一台の有機合成装置によって加圧状態及び常圧状態の反応を行なうことが可能であって、ガス供給排出管に負荷を与えずに、反応容器の有機合成装置への脱着を行なうことが可能な有機合成装置を提供する。
【解決手段】二以上の反応容器を支持可能な反応容器支持部10と、該反応容器支持部10によって支持される反応容器毎に二以上設けられ、ガスを供給・排出することにより、前記反応容器支持部10によって支持される反応容器内の圧力を調整する圧力調整手段14と、を備えた有機合成装置において、前記二以上の圧力調整手段14のうち、一以上の圧力調整手段14Aが他の圧力調整手段14Bに対して脱着可能に構成され、前記圧力調整手段14は、先端近傍が上下及び左右に撓むことが可能に構成され、前記ガスの供給及び排出のために前記支持される反応容器に接続されるガス供給排出管、及び該ガス供給排出管を支持するガス供給排出管支持部60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器内の試薬の撹拌、加熱及び圧力調整などを行なうことによって、反応容器に収容された試薬の合成を行なう有機合成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一度に、同一条件又は異なる条件で多種類の試薬の合成を行い、その合成された試薬について一斉に検定を行なうものとして、有機合成装置が使用されている。この有機合成装置としては、常圧で反応容器内の試薬を撹拌・加熱することによって、反応容器内に収容された試薬を合成する常圧タイプの有機合成装置(特許文献1参照)の他、試薬の撹拌・加熱に加えて、加圧及び減圧など反応容器内の圧力の調整を行なうことが可能な圧力調整タイプの有機合成装置がある。この圧力調整タイプの有機合成装置は、図11又は図12に示すように、複数の反応容器を支持可能な反応容器支持部100と、その反応容器支持部100に支持された反応容器内の圧力を調整する圧力調整部102と、を備える。
【0003】
反応容器支持部100は、反応容器毎に設けられ、4つの反応容器をそれぞれ収容する4つの耐圧用容器104と、それら耐圧用容器104を支持する4つの支持部本体106と、これら耐圧用容器104及び支持部本体106を囲むカバー部材108と、を備えている。耐圧用容器104は、上方に開口を有する有底円筒状に形成され、反応容器を収容可能な耐圧用容器本体104aと、その耐圧用容器本体104aの開口を閉口可能な耐圧用容器蓋104bと、を備えており、耐圧用容器蓋104bの上面には、後述するガス供給排出管112が接続されている。
【0004】
圧力調整部102は、反応容器支持部100によって支持される反応容器に水素又は窒素を供給及び排出することによって、反応容器内の圧力を調整するよう構成されており、各反応容器と圧力調整部本体110を接続するガス供給排出管112を備えている。このガス供給排出管112は、高圧なガスを供給するため、例えば、SUS等、比較的硬質な耐圧材料により形成されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−137990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有機合成装置において、圧力調整した状態の反応と常圧における一般的な反応を同時に行なう場合、支持可能な全ての反応容器を使用しない場合であっても、圧力調整タイプと常圧タイプの有機合成装置をそれぞれ別々に用意して使用する必要があるが、このように圧力調整タイプと常圧タイプを別々に用意して使用する場合、いずれか一つのみを使用する場合に比べて場所をとり、また両者の間で撹拌条件や加熱条件など反応圧力以外の反応条件に誤差が生ずる場合がある。
【0007】
また、上述の圧力調整タイプの有機合成装置において、有機合成装置から反応容器を取り外す場合、図12の(a)及び(b)に示すように、ガス供給排出管112の先端を耐圧用容器蓋104bから取り外して、反応容器の上下方向からずらす必要があるが、ガス供給排出管112は、比較的硬質な材料によって構成されているため、上方や左右にずらす際、接合箇所などに負荷がかかり破損し、ガス漏れなどが生じる虞がある。特に、この有機合成装置においては、反応容器の取り外しが終わるまでの間、ガス供給排出管112に上方や左右のずらした方向に押圧しなければならず、接合箇所に負荷がかかり易い。これは、反応容器を有機合成装置に取り付ける場合も同様である。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決するものであり、一台の有機合成装置によって加圧状態及び常圧状態の反応を行なうことが可能な有機合成装置を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、ガス供給排出管に負荷を与えずに、反応容器の有機合成装置への脱着を行なうことが可能な有機合成装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するために、本発明に係る有機合成装置は、二以上の反応容器を支持可能な反応容器支持部と、該反応容器支持部によって支持される反応容器毎に二以上設けられ、ガスを供給・排出することにより、前記反応容器支持部によって支持される反応容器内の圧力を調整する圧力調整手段と、を備えた有機合成装置において、前記二以上の圧力調整手段のうち、一以上の圧力調整手段が他の圧力調整手段に対して脱着可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
このように本発明に係る有機合成装置によれば、二以上の圧力調整手段のうち一以上の圧力調整手段を他の圧力調整手段から取り外すことができるので、取り外した一以上の圧力調整手段に対応する反応容器を常圧の反応に用いることができ、加圧状態での反応と常圧状態での反応を一つの有機合成装置によって行なうことができる。
【0011】
上記第2の目的を達成するために、本発明に係る有機合成装置は、反応容器を支持可能な反応容器支持部と、ガスの供給及び排出を行なうことにより、前記反応容器支持部によって支持される反応容器内の圧力を調整する圧力調整手段と、を備えた有機合成装置において、前記圧力調整手段は、先端近傍が上下及び左右に撓むことが可能に構成され、前記ガスの供給及び排出のために前記支持される反応容器に接続されるガス供給排出管、及び該ガス供給排出管を支持するガス供給排出管支持部を備え、該ガス供給排出管支持部は、前記ガス供給排出管の先端近傍が前記反応容器に接続された位置から上方に移動し、その上方の位置から反応容器の上下方向からずれた左右いずれかの位置まで移動し、さらにその位置で静置することが可能に構成されていることを特徴とし、この有機合成装置において、前記ガス供給排出管の一部は、螺旋状に形成されていることが好ましい。
【0012】
このように本発明に係る有機合成装置によれば、ガス供給排出管支持部は、前記ガス供給排出管の先端近傍が前記反応容器に接続された位置から上方に移動し、その上方の位置から反応容器の上下方向からずれた左右いずれかの位置まで移動し、さらにその位置で静置することが可能に構成されているので、反応容器の有機合成装置に対する脱着を容易に行なうことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る有機合成装置によれば、一台の有機合成装置によって加圧状態及び常圧状態の反応を行なうことが可能な有機合成装置を提供することができ、また、ガス供給排出管に負荷を与えずに、反応容器に対する脱着を行なうことが可能な有機合成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施例)
次に、本発明の第1実施例に係る有機合成装置ついて図面に基づいて説明する。図1は、第1実施例に係る有機合成装置の正面概念図であり、図2は、その平面図であり、図3は、第1実施例に係る有機合成装置の圧力調整部を示す背面断面概略図である。本実施例に係る有機合成装置は、4つの反応容器内の試薬の撹拌、加熱及び圧力調整などを行なうことによって、その試薬の化学反応を一斉に行なうものであって、4つの反応容器を支持可能な反応容器支持部10と、反応容器支持部10に支持された反応容器内の反応条件を制御する反応制御部12と、反応容器内の圧力を調整する圧力調整部14と、を主として備えている。
【0015】
反応容器支持部10は、4つの反応容器をそれぞれ収容する4つの耐圧用容器16と、これら耐圧用容器16をそれぞれ支持する4つの支持部本体17と、これら支持部本体17の左右正背面を囲むカバー部材18と、このカバー部材18の上面に配置され、各耐圧用容器16毎に分割されて設けられた天板22と、を備えている。耐圧用容器16は、上方が開口された有底円筒状に形成され、反応容器を収容可能な耐圧用容器本体16aと、耐圧用容器本体16aの開口に着脱可能な耐圧用容器蓋16bと、を備えており、耐圧用容器蓋16bによって耐圧用容器本体16aを閉口することにより、耐圧用容器16内を密閉することができる。また、耐圧用容器蓋16bの上面には、反応容器内にガスを供給可能な第1乃至第4ガス供給排出管19a乃至19dが接続されている接続部16cが設けられている。この接続部16cは、固定ナット16dにより第1乃至第4ガス供給排出管19a乃至19dと密に固定されている。また、支持部本体17は、アルミなど熱伝達に優れた素材によって構成されており、後述する加熱部から伝えられる熱を耐圧用容器16を介してその中に収容された反応容器に伝えるように構成されている。さらに、天板22には、天板22をカバー部材18に固定する固定ねじ22aが設けられており、カバー部材18の上面の左右端近傍には、カバー部材18を把持とするための把持部18aが設けられている。
【0016】
反応制御部12は、図1及び図2に示すように、支持部本体17の下方のハウジング24内に設けられており、そのハウジング24内に設けられ、支持部本体17及び耐圧用容器16を介して反応容器を加熱する加熱部(図示省略)、ハウジング24内に設けられ、回転マグネットによって反応容器内に入れられたチップを回転させることにより反応容器内の試薬の撹拌を行なう撹拌部(図示省略)、及び圧力調整部14を制御するように構成されている。また、ハウジング24の表面には、反応制御部12への制御命令を入力する入力部26、並びに制御命令及び計測情報が表示される表示部28が設けられている。
【0017】
圧力調整部14は、耐圧用容器16に収容された反応容器内にガスを供給し、また、その反応容器内のガスを排出し、反応容器内の圧力の増減を行なうことによって、圧力を調整するように構成されており、図1乃至図3に示すように、図1に示す右側の二つの反応容器内の圧力を調整する第1圧力調整部14Aと、図1に示す左側の二つの反応容器内の圧力を調整し、第1圧力調整部14Aに対して着脱可能に構成された第2圧力調整部14Bと、から構成されている。これら第1及び第2加圧部14A及び14Bは、第1及び第2筐体30A及び30Bと、第1及び第2筐体30A及び30B内に設けられ、反応容器内に供給し、また反応容器から排出されるガスを制御する第1及び第2ガス制御部32A及び32Bと、第1及び第2ガス制御部32A及び32Bと4つの反応容器と接続する第1乃至第4ガス供給排出管19a乃至19dと、を備える。第1筐体30Aは、図3に示すように正面L字状に形成されており、第2筐体30Bは、第1筐体30AのL字の角に嵌って、第1筐体30Aとともに正面四角状を構成するように形成されている。この第2筐体30Bは、ねじなど図示しない固定部材によって第1筐体30Aに対して固定できるように構成されている。
【0018】
第1ガス制御部32Aは、水素ガスを導入するための水素ガス導入口36Aと、窒素ガスを導入するための窒素ガス導入口36Bと、を備えており(図3の左下)、これら水素ガス導入口36Aと窒素ガス導入口36Bは、それぞれ第1及び第2パイプ40a及び40bを介して三又の三方バルブ38に接続されている。三方バルブ38は、第3パイプ40cを介して三又の第1分岐部42aに接続されており、この第1分岐部42aの一方は、第4パイプ40dを介して第2分岐部42bに接続されている。第2分岐部42bの一方は、第5パイプ40eを介して四又の第3分岐部42cに接続されており、第2分岐部42bの他方は、第6パイプ40fを介して四又の第4分岐部42dに接続されている。これら第5及び第6パイプ40e及び40fそれぞれには、第1及び第2ガス導入用バルブ48a及び48bが設けられている。
【0019】
第3分岐部42cの一方は、第7パイプ40gを介して第1接続部19aに接続されており、第4分岐部42dの一方は、第8パイプ40hを介して第2ガス供給排出管19bに接続されている。これら第7及び第8パイプ40g及び40hは、図1乃至3に示すように、後述する第1筐体30Aの開口60a及び60b近傍において、螺旋状の螺旋部62a及び62bを形成している。また、第3分岐部42cの他方は、第9パイプ40iを介して合流部43に接続されており、第4分岐部42dの他方は、第10パイプ40jを介して同様に合流部43に接続されている。これら第9及び第10パイプ40i及び40jには、第1及び第2排気用バルブ50a及び50bが設けられている。この合流部43は、第11パイプ40kを介して、第5分岐部42eに接続されており、この第5分岐部42eの一方は、第12パイプ40lを介して、ガス排気口52に接続されている。
【0020】
さらに、第3分岐部42cのさらに他方は、第13パイプ40mを介して第1圧力逃し口58Aに接続されており、第4分岐部42dのさらに他方は、第14パイプ40nを介して同様に第2圧力逃し口58Bに接続されている。これら第13及び第14パイプ40m及び40nそれぞれには、第1及び第2圧力逃がしバルブ56a及び56bが設けられており、これら第1及び第2圧力逃がしバルブ56a及び56bと第3及び第4分岐部42c及び42dのそれぞれ間には、第1及び第2圧力計54a及び54bが設けられている。
【0021】
第1分岐部42aの他方は、第15パイプ40oを介して第1ガス導入用カプラ46aに接続されており、第5分岐部42eの他方は、第16パイプ40pを介して第1排気用カプラ46bに接続されている。これら第15及び第16パイプ40o及び40pには、第1及び第2接続用バルブ44a及び44bが設けられている。
【0022】
第2ガス制御部32Bは、第1ガス制御部32Aの水素ガス導入口36A及び窒素ガス導入口36Bに相当するものとして、第1ガス導入用カプラ46aと接合可能な第2ガス導入用カプラ46’aを備え、第1ガス制御部32Aのガス排気口52に相当するものとして、第1ガス排気用カプラ46bと接合可能な第2ガス排気用カプラ46’bを備え、第1ガス制御部32Aの第1及び第2圧力逃し口58A及び58Bに相当するものとして、第1及び第2圧力逃し口58’A及び58’Bを備えている。また、第2ガス制御部32Bは、第1ガス制御部32Aの第4乃至第11パイプ40d乃至40k、第13及び第14パイプ40m及び40n、第2乃至第4分岐部42b乃至42d、合流部43、第1及び第2ガス導入用バルブ48a及び48b、第1及び第2ガス排気用バルブ50a及び50b、第1及び第2圧力逃し用バルブ56a及び56b、並びに第1及び第2圧力計54a及び54bに相当するものとして、第4乃至第11パイプ40’d乃至40’k、第13及び第14パイプ40’m及び40’n、第2乃至第4分岐部42’b乃至42’d、合流部43’、第1及び第2ガス導入用バルブ48’a及び48’b、第1及び第2ガス排気用バルブ50’a及び50’b、第1及び第2圧力逃し用バルブ56’a及び56’b、並びに第1及び第2圧力計54’a及び54’bを備えており、第4パイプ40’dは、第2ガス導入用カプラ46’a、第11パイプ40’kは、第2ガス排気用カプラ46’bにそれぞれ接続されている。また、第7パイプ40’gは、第3ガス供給排出管19cに接続されており、第8パイプ40’hは、第4ガス供給排出管19dに接続されている。これら第7及び第8パイプ40’g及び40’hは、図1乃至図3に示すように、後述する第2筐体30Bの開口60c及び60d近傍において、螺旋状の螺旋部62c及び62dを形成している。
【0023】
第2ガス導入用カプラ46’a及び第2ガス排気用カプラ46’bは、いずれも先端が第2筐体30Bの底面から突出しており、第1筐体30AのL字の対応する箇所に挿入して、第1ガス導入用カプラ46a及び第1ガス排気用カプラ46bに接合することができるよう構成されている。本実施例に係る有機合成装置においては、第1パイプ乃至第19パイプ40a乃至40sなど第1ガス制御部32Aや第2ガス制御部32Bの構成部品は、SUS等の耐圧材料で形成されている。
【0024】
以上のような構成により、第2圧力調整部14Bを第1圧力調整部14Aに取り付けた状態で反応容器内の加圧や減圧などを行なう場合、第1ガス導入用カプラ46aと第2ガス導入用カプラ46’a、第1ガス排気用カプラ46b及び第2ガス排気用カプラ46’bそれぞれを接合することによって、第2圧力調整部14Bを第1圧力調整部14Aに接続し、さらに第1及び第2接続用バルブ44a及び44bを開く必要がある。そして、反応容器内の加圧は、第1及び第2圧力調整部14A及び14Bの第1及び第2ガス導入用バルブ48a、48b、48’a及び48’bを開き、第1及び第2ガス排気用バルブ50a、50b、50’a及び50’bを閉じておくことによって行なうことができる。また、この加圧状態において、所定値以上の圧力が加わった場合、その圧力により第1及び第2圧力逃し用バルブ56a、56b、56’a及び56’bは、開かれるので、過度の圧力供給によるパイプ及びバルブ等の破損を防ぐことができる。一方、その加圧状態から、反応容器内のガスの減圧は、第1及び第2ガス導入用バルブ48a、48b、48’a及び48’bを閉じ、第1及び第2ガス排気用バルブ50a、50b、50’a及び50’bを開くことによって、行なうことができる。
【0025】
また、図4に示す第2圧力調整部14Bの取外しは、第1乃至第3接続用バルブ44a、44b及び44cを閉じた後、第1ガス導入用カプラ46a、及び第1ガス排気用カプラ46bそれぞれを第2ガス導入用カプラ46’a、及び第2ガス排気用カプラ46’bから取り外すことによって行なうことができる。
【0026】
このような第2圧力調整部14Bを取り外した状態で、上記の動作を行なうことによって、第1圧力調整部14Aによって圧力調整される反応容器内のみ圧力調整を行なうことができる。すなわち、図5及び図6に示すように、第2圧力調整部14Bを取り外し、第2圧力調整部14Bを取り外した反応容器において、常圧の反応を行ない、第1圧力調整部14Aによってのみ圧力調整を行なうことができる。第2圧力調整部14Bを取り外して、常圧の反応を行なう場合、耐圧用容器16の代わりに常圧用容器64が使用される。この場合、常圧用容器64の上方には、天板22の下方に設けられ、常圧用容器64内において気化した物質を冷却して再び液体に戻す還流用ブロック66と、反応容器内に試薬を添加する試薬添加部68と、が設けられている。
【0027】
第1及び第2筐体30A及び30Bの正面の反応容器支持部10の天板22の上方には、支持される各反応容器に対応させて逆L字状に形成された4つの開口60a乃至60dが形成されている。これら開口60a乃至60dは、図1に示すように上下方向に延びる第1開口部60a乃至60d、この第1開口部60a乃至60dの上端から左方向に延びる第2開口部60a乃至60d、及びこの第2開口部60a乃至60dの左端から下方に若干延びる第3開口部60a乃至60dによって逆L字状が形成されている。この第3開口部60a乃至60dは、反応容器が収容された耐圧用容器16の上下方向と重ならない位置に形成されている。第7及び第8パイプ40g、40h、40’g及び40’hの螺旋部62a乃至62dよりも先端は、これら開口60a乃至60dから第1及び第2筐体30A及び30Bの外側に延在しており、これら第1及び第2筐体30A及び30Bの外側で第1乃至第4ガス供給排出管19a乃至19dに接続されている。すなわち、図1及び図2に示すように、第7及び第8パイプ40g、40h、40’g及び40’hは、それぞれ下方から開口60a乃至60dの上方まで延びて最高の位置に達し、その最高の位置から下方に向かって螺旋部62a乃至62dを形成し、開口60a乃至60dの第2開口部60a乃至60dよりも下方の位置に達すると、これら開口60a乃至60dから外側に延び、さらに垂直下向きに湾曲して、第1乃至第4ガス供給排出管19a乃至19dに接続されている。
【0028】
このような構成により、本実施例に係る有機合成装置は、反応容器を取り外す場合、図7に示すように、先ず、図7(a)で、第1開口部60a乃至60dに位置するガス供給排出管19a乃至19dをそれぞれの螺旋部62a乃至62dのバネ力に抗して第1開口60a乃至60dに沿って上方に移動させた後、第2開口60a乃至60dに沿って左方向に移動させる。ガス供給排出管19a乃至19dは、第2開口60a乃至60dの左端に達すると、それぞれの螺旋部62a乃至62dの復帰力によって、第3開口部60a乃至60dに沿って、下方に移動して、第3開口部60a乃至60dの下端の位置で静置される。ガス供給排出管19a乃至19dが静置される第3開口部60a乃至60dの下端の位置は、反応容器が収容された耐圧用容器16の上下方向と重ならない位置なので、スムーズに耐圧用容器16の着脱を行なうことができる。この際、第7及び第8パイプ40g、40h、40’g及び40’hは、螺旋部62a乃至62dを形成しているので、第1乃至第4ガス供給排出管19a乃至19dを耐圧用容器16から取り外す際に生じる縦及び横方向に歪む応力が、第7及び第8パイプ40g、40h、40’g及び40’hの螺旋部62a乃至62dに吸収される。従って、使用者は、反応容器を有機合成装置に対して着脱する際、先ず、第1乃至第4ガス供給排出管19a乃至19dを持ち、開口60a乃至60dの形状に沿って、容易に移動させることが可能である。また、その移動により、第1乃至第4ガス供給排出管19a乃至19d及びそれらを固定している部位などに負荷を与えることもない。
【0029】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例に係る有機合成装置について、図8及び図9に基づいて説明する。第2実施例に係る有機合成装置は、図8に示すように、第1乃至第4ガス供給排出管19a乃至19dの代わりに、ガス供給とガス排出とにそれぞれ異なる2種類の管を使用する。すなわち、第2実施例に係る有機合成装置は、第1及び第2筐体30A’及び30B’に形成された開口部60a’乃至60d’から導かれる第1乃至第4ガス供給管19a’乃至19d’によりガス供給が行われ、その上方に設けられた開口部60a’’乃至60d’’から導かれる第1乃至第4ガス排出管19a’’乃至19d’’によりガス排出が行われる。耐圧用容器16’は、その耐圧用容器蓋16b’に第1乃至第4ガス供給管19a’乃至19d’と第1乃至第4ガス供給管19a’’乃至19d’’をそれぞれ接続可能な2つの接続部16c’、16c’を有している。この2つの接続部16c’、16c’は、固定ナット16d’、16d’により第1乃至第4ガス供給管19a’乃至19d’と、一本の第1乃至第4ガス排出管19a’’乃至19d’’と密に固定されている。
【0030】
上記のような第1乃至第4ガス供給管19a’乃至19d’及び第1乃至第4ガス排出管19a’’乃至19d’’は、図9に示すように、第1及び第2筐体30A’及び30B’内に備えられた第1実施例と異なる第1及び第2ガス制御部32’A及び32’Bに接続されている。すなわち、第3及び第4分岐部42c及び42d、42’c及び42’dには、第6及び第7パイプ40g、40h、40’g、40’hの代わりに、螺旋部62a’乃至62d’を有する第17及び第18パイプ40q及び40r、40q’及び40’rが接続されており、これら第17及び第18パイプ40q及び40r、40q’及び40’rを介し第1乃至第4ガス供給管19a’乃至19d’が接続されている。一方、合流部43及び43’には、第9及び第10パイプ40i及び40j、40’i及び40’jの代わりに、螺旋部62a’’乃至62d’’を有する第19及び第20パイプ40s及び40t、40’s及び40’tが接続されており、これら第19及び第20パイプ40s及び40t、40’s及び40’tを介し、第1乃至第4ガス排出管19a’’乃至19d’’が接続されている。また、螺旋部62a’’乃至62d’’と合流部43及び43’の間には、第1及び第2ガス排気用バルブ50a及び50b、50’a及び50’bが設けられている。なお、上記の構成以外、第1及び第2ガス制御部32’A及び32’Bは、第1実施例の第1及び第2ガス制御部32A及び32Bと同様の構成であり、その他、反応容器支持部10及び反応制御部12も、第1実施例と同様の構成である。
【0031】
(第3実施例)
次に、本発明の第3実施例に係る有機合成装置について、図10に基づいて説明する。第3実施例に係る有機合成装置は、同図(a)に示すように、第1実施例と異なる特徴は、逆L字型の開口60a乃至60dの代わりに、第1乃至第4ガス供給排出管19a乃至19dを支持するものとして、矩形の開口80a乃至80dと、回転可能なL字型のフック82a乃至82dと、を備えていることである。この構成から、同図(b)に示すように、第1乃至第4ガス供給排出管19a乃至19dを矩形の開口80a乃至80dの左上方に移動させた後、それをフック82a乃至82dに掛けて定位置に静置させることが可能である。すなわち、第3実施例に係る有機合成装置は、耐圧用容器16に接続された位置から上方に移動し、その上方の位置から耐圧用容器16の上下方向からずれた位置まで左右いずれかの方向に移動可能であり、第1実施例と同様な効果を奏する。また、第2実施例の構成においても、第3実施例に係る矩形の開口80a乃至80d及びフック82a乃至82dを使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施例に係る有機合成装置の正面概念図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る有機合成装置の平面図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る有機合成装置の圧力調整部の背面断面概略図である。
【図4】本発明の第1実施例に係る有機合成装置の第2圧力調整部を第1圧力調整部から取り外した状態を示す図3に対応する図である。
【図5】本発明の第1実施例に係る有機合成装置の第2圧力調整部を取り外して、常圧用容器を取り付けた状態を示す図1に対応する図である。
【図6】本発明の第1実施例に係る有機合成装置の第2圧力調整部を取り外して、常圧用容器を取り付けた状態を示す図2に対応する図である。
【図7】本発明の第1実施例に係る有機合成装置の反応容器を取り外す際の動作の一部を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る有機合成装置の正面概念図である。
【図9】本発明の第2実施例に係る有機合成装置の圧力調整部の背面断面概略図である。
【図10】本発明の第3実施例に係る有機合成装置の反応容器を取り外す際の動作の一部を示す斜視図である。
【図11】従来の有機合成装置を示す正面概念図である。
【図12】従来の有機合成装置の反応容器を取り外す際の動作の一部を示す側面概念図である。
【符号の説明】
【0033】
10 反応容器支持部
14 圧力調整部
14A 第1圧力調整部
14B 第2圧力調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二以上の反応容器を支持可能な反応容器支持部と、
該反応容器支持部によって支持される反応容器毎に二以上設けられ、ガスを供給・排出することにより、前記反応容器支持部によって支持される反応容器内の圧力を調整する圧力調整手段と、
を備えた有機合成装置において、
前記二以上の圧力調整手段のうち、一以上の圧力調整手段が他の圧力調整手段に対して脱着可能に構成されていることを特徴とする有機合成装置。
【請求項2】
反応容器を支持可能な反応容器支持部と、
ガスの供給及び排出を行なうことにより、前記反応容器支持部によって支持される反応容器内の圧力を調整する圧力調整手段と、
を備えた有機合成装置において、
前記圧力調整手段は、先端近傍が上下及び左右に撓むことが可能に構成され、前記ガスの供給及び排出のために前記支持される反応容器に接続されるガス供給排出管、及び該ガス供給排出管を支持するガス供給排出管支持部を備え、
該ガス供給排出管支持部は、前記ガス供給排出管の先端近傍が前記反応容器に接続された位置から上方に移動し、その上方の位置から反応容器の上下方向からずれた左右いずれかの位置まで移動し、さらにその位置で静置することが可能に構成されていることを特徴とする有機合成装置。
【請求項3】
前記ガス供給排出管の一部は、螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の有機合成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−50338(P2007−50338A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236894(P2005−236894)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000181767)柴田科学株式会社 (32)
【Fターム(参考)】