説明

有機合成装置

【課題】撹拌子を反応容器に接触させることなく、反応容器内の試薬を撹拌することが可能な有機合成装置を提供する。
【解決手段】支持される反応容器8と整合する位置に設けられるとともに、前記支持される反応容器内に試料とともに収容される撹拌子58を磁場の変位により回転させることによって、前記支持される反応容器8内の試料を撹拌する撹拌手段14を備えた有機合成装置において、該撹拌手段14は、上下方向に延びる棒状に形成された撹拌部材36を備え、撹拌部材36は、その上端が反応容器8上方に回動可能に支持され、その下端が前記反応容器8内の試薬に浸された状態で前記撹拌子58を把持可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器内の試料を撹拌することによって、反応容器に収容された試料の合成を行なう有機合成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一度に、同一条件又は異なる条件で多種類の試料の合成を行い、その合成された試料について一斉に検定を行なうものとして、有機合成装置が使用されている。この有機合成装置としては、常圧で反応容器内の試料を撹拌・加熱することによって、反応容器内に収容された試料を合成する常圧タイプの有機合成装置(特許文献1参照)の他、試料の撹拌・加熱に加えて、加圧及び減圧など反応容器内の圧力の調整を行なうことが可能な圧力調整タイプの有機合成装置がある。この圧力調整タイプの有機合成装置は、主として、図11に示すように、複数の反応容器106を支持可能な反応容器支持部100と、その反応容器支持部100に支持された反応容器内の圧力を調整する圧力調整部102と、反応容器内の試料を撹拌する撹拌部104と、を備える。
【0003】
反応容器支持部100は、反応容器106毎に設けられ、4つの反応容器106をそれぞれ収容する4つの耐圧用容器108と、それら耐圧用容器108を支持する4つの支持部本体110と、これら耐圧用容器108及び支持部本体110を囲むカバー部材112と、を備えている。耐圧用容器108は、上方に開口を有する有底円筒状に形成され、反応容器を収容可能な耐圧用容器本体108aと、その耐圧用容器本体108aの開口を密閉状態で閉口可能な耐圧用容器蓋108bと、を備えており、耐圧用容器蓋108bの上面には、後述するガス供給排出管116が接続されている。
【0004】
圧力調整部102は、反応容器支持部110によって支持される反応容器106に水素又は窒素ガスを供給及び排出することによって、反応容器内の圧力を調整するよう構成されており、圧力調整部筐体114から延び、耐圧用容器108に接続されているガス供給排出管116を備えている。
【0005】
撹拌部104は、マグネットを回転可能に構成した回転マグネット部120を筐体118内の各支持部本体110と整合する位置それぞれに、備えている。各反応容器106内には、図12に示すように、磁性体からなる撹拌子122が試料と共に入れられており、上記回転マグネット部120の回転による磁場の変位を利用し、撹拌子122を回転運動させ、試料の撹拌を行うよう構成されている。このように、磁場の変位により撹拌子122を遊動させる方法は、マグネチックスターラー方式と呼ばれ、有機合成装置において、一般的に試料の撹拌に広く利用されている。
【特許文献1】特開平11−137990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の有機合成装置は、図12に示すように、撹拌子をそのままの状態で反応容器に入れているので、撹拌している試料が顆粒の場合、撹拌子と容器との間に顆粒が挟まれることによって試料が砕けて、試料の状態を変化させるという問題が生じる。また、撹拌子の回転運動の際に、容器との摩擦により撹拌子が磨耗するという問題が生じる。さらには、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)製の反応容器を使用した場合、反応容器も磨耗するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、撹拌子を反応容器に接触させることなく、反応容器内の試薬を撹拌することが可能な有機合成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、支持される反応容器と整合する位置に設けられるとともに、前記支持される反応容器内に試料とともに収容される撹拌子を磁場の変位により回転させることによって、前記支持される反応容器内の試料を撹拌する撹拌手段を備えた有機合成装置において、該撹拌手段は、上下方向に延びる棒状に形成された撹拌部材を備え、該撹拌部材は、その上端が反応容器上方に回動可能に支持され、その下端が前記反応容器内の試薬に浸された状態で前記撹拌子を把持可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
このように本発明に係る有機合成装置によれば、撹拌部材を設けることにより、撹拌子を反応容器に接することがないように回転可能な状態で吊り下げることができ、撹拌している試料が顆粒の場合であっても、撹拌子と容器との間に顆粒が挟まれることによって試料が砕けて、試料の状態を変化させてしまうことを防止することができ、また、撹拌子や反応容器が磨耗するのを防止することができる。さらに、本発明のように撹拌部材によって反応容器内の試薬を撹拌するように構成することにより、量産方式と同様の撹拌方式を再現することができるので、量産現場と同様の実験データを得ることができる。またさらには、本発明に係る有機合成装置は、従来のマグネチックスターラー方式と同様の撹拌部を用いているので、安価に、汎用性の高い有機合成装置を提供することが可能とされる。
【0010】
本発明に係る有機合成装置は、前記反応容器を密閉状態で収容可能な耐圧用容器を有するとともに、該耐圧用容器内に収容された反応容器内の圧力を調整する圧力調整手段をさらに備え、前記撹拌部材の上端は、前記耐圧用容器の上面内側に支持されていることが好ましく、このように撹拌部材の上端を耐圧用容器の上面内側に支持させることによって、密閉された容器内であっても撹拌部材を設けることができる。
【0011】
また、前記撹拌部材は、該撹拌部材の側方又は接線方向に突出した羽部を備えることが好ましく、このように羽部を備えることによって、撹拌子の近傍だけでなく、広範囲を撹拌することができるので、試薬の粘度が高い場合や多層に分離した場合であっても容易に撹拌を行なうことができる。
【0012】
さらに、前記撹拌部材には、前記撹拌子を挿入可能な開口が形成され、前記撹拌部材は、前記開口に挿入された撹拌子を上方又は下方から押圧することによって撹拌子を固定することが可能な撹拌子固定部材を備えていることが好ましく、このような構成とすることにより、例え、開口の大きさが撹拌子の外径よりも大きく形成されたとしても、撹拌子を撹拌部材に固定することができる。前記撹拌子固定部材は、リング状に形成され、前記撹拌部材の開口の上方又は下方に螺着可能に構成され、前記撹拌子固定部材の前記開口への螺進により、撹拌子を押圧するように構成されていることが好ましい。
【0013】
またさらに、前記反応容器に対して回転不能に装着される撹拌部材支持部をさらに備え、前記撹拌部材の上端には、下方に所定の深さを有する空洞部が形成され、前記撹拌部材支持部は、その下端を前記撹拌部材の空洞部内に位置させた状態で、前記撹拌部材を回転可能に支持するように構成されていることが好ましく、このような構成とすることにより、撹拌部材の回転により生じる削りカスや摩擦片が、空洞部に内において蓄積されるので、反応容器内に混入することを可及的に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、撹拌子を反応容器に接触させることなく、反応容器内の試薬を撹拌することが可能な有機合成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施例)
次に、本発明に係る有機合成装置の第1実施例について図面に基づいて説明する。図1は、第1実施例に係る有機合成装置を示す一部切欠正面概念図であり、図2は、図1に示す耐圧用容器の側面断面図である。
【0016】
本発明の第1実施例に係る有機合成装置は、4つの反応容器内の試料の撹拌、加熱及び圧力調整などを行なうことによって、その試料の化学反応を一斉に行なうものであって、4つの反応容器8を支持可能な反応容器支持部10と、4つの反応容器8内の圧力を調整する圧力調整部12と、反応容器8内の試薬の撹拌を行なう撹拌部14と、を主として備えている。
【0017】
反応容器支持部10は、後述する耐圧用容器16をそれぞれ支持する4つの支持部本体18と、これら支持部本体18の左右正背面を囲むカバー部材20と、このカバー部材20の上面に配置され、各耐圧用容器16に分割されて設けられた第1天板22と、を備えている。また、支持部本体18は、アルミなど熱伝達に優れた素材によって構成されており、ヒータ等の加熱部材からの熱を耐圧用容器16を介してその中に収容された反応容器8に伝えるように構成されている。さらに、第1天板22は、第1天板22よりも小さな開口を有し、第1天板22の開口縁部に嵌合する第2天版22aと、第1天板22をカバー部材20に固定する固定ねじ22bとが設けられており、カバー部材20の上面の左右端近傍には、カバー部材20を把持するための把持部20aが設けられている。
【0018】
圧力調整部12は、4つの反応容器8それぞれを密閉された状態で収容する4つの耐圧用容器16と、耐圧用容器16に収容された反応容器8内にガスを供給・排出して、反応容器8内の圧力を調整するガス流量調整部(図示略)と、このガス流量調整部の筐体24に形成された4つの開口26から下方にのびるとともに耐圧用容器16に接続可能なガス供給排出管28と、を備える。
【0019】
耐圧用容器16は、図2に示すように、上方が開口された有底円筒状に形成され、反応容器8を収容可能な耐圧用容器本体30と、耐圧用容器本体30の開口に着脱可能な耐圧用容器蓋32と、を備えており、これら耐圧用容器本体30と耐圧用容器蓋32は、耐圧性素材、例えばSUS(Steel Use Stainless)などによって形成されている。耐圧用容器蓋32は、耐圧用容器本体30の開口を塞ぐように螺着され、耐圧用容器本体30の外周面と耐圧用容器蓋32の内周面の間に円状のシールド部材30aを介在させることによって、耐圧用容器16内を密閉状態とすることができる。耐圧用容器蓋32の上面には、ガス供給排出管28が固定ナット32bによって密な状態で接合される孔32aが形成されている。
【0020】
撹拌部14は、図1に示すように、上部に支持部本体18を有する筐体38と、筐体38内の各支持部本体18と整合する位置それぞれに設けられた回転マグネット部40と、上下方向に延びる棒状に形成され、その上端が反応容器上方に回動可能に支持され、その下端が反応容器内の試薬に浸された状態で撹拌子58を把持可能に構成された撹拌部材36と、を備えている。
【0021】
回転マグネット部40は、図1及び図3に示すように、モータ42と、モータ42の軸心を中心に接続した円盤状の回転盤44と、回転盤44上の対向する位置に配置されたN極とS極のマグネット46、46と、回転盤44を囲うように配置された鉄製のリング部材48と、を備えおり、モータ42の軸心の回転により、回転盤44上のマグネット46、46を回転させるよう構成されている。このような構成は、従来のマグネチックスターラー方式と同様の駆動方式である。
【0022】
撹拌部材36は、図4に示すように、後述する耐圧用容器内蓋34の固定部34bに固定された第1シャフト50と、第1シャフト50の下方に設けられ、第1シャフト50の下端が挿入可能な円筒状に形成された接続部材52と、接続部材52の下方に接合され、下端に磁性体材料からなる撹拌子58を把持可能な把持部が設けられた第2シャフト56と、第2シャフト56に設けられた一対の羽部60、60と、を備えている。
【0023】
第1シャフト50は、上端外周にねじ山が形成されたねじ部50aと、第1シャフト50の下端内周の全周に亘って径方向に突出したフランジ部50bと、ねじ部50aとフランジ部50bの間に形成された第1シャフト本体50cと、から成り、SUSによって構成されている。
【0024】
接続部材52は、円筒状に形成されており、フランジ部50bの外径よりも小さいが、第1シャフト本体50cの外径よりも大きい内径を有する上端部52aと、内周面にねじ溝が形成された下端部52bと、フランジ部50bの外径より大きい内径を有する中間部52cと、から成り、SUSによって構成されている。
【0025】
第1シャフト50及び接続部材52は、以上のように構成されているので、接続部材52の下端部52b側から第1シャフト50のねじ部50aを挿入して、ねじ部50aを接続部材52の上端部52aから突出させることにより、第1シャフト50を接続部材52に対して回転可能に接続することができる。この第1シャフト50を接続部材52に接続させた際の第1シャフト50のフランジ部50bと接続部材52の上端部52aの間には、カラー54が設けられている。このカラー54は、その内径が、第1シャフト50の本体50cよりも大きく、その外径が、接続部材52の中間部52cの内径よりも小さい円筒状に形成されており、樹脂製の耐熱性、耐薬品性、耐摩擦性に優れている素材、例えばPEEK材などで構成されている。したがって、このカラー54によって、第1シャフト50と接続部材52の相対的な回転をよりスムーズに行なうことができる。また、このカラー54によって、接続部材52が、第1シャフト50から抜け落ちることを防止することができる。
【0026】
第2シャフト56は、円柱状に形成されており、PTFEから構成されている。また、第2シャフト56の上端には、接続部材52の下端部52bの内周面に形成されたねじ溝に螺合可能なねじ山56aが形成されており、下端には、円柱状の撹拌子58が挿入されて把持可能な挿入孔56bが形成されている。この挿入孔56bの径は、撹拌子58の外径よりも若干小さく構成されており、第2シャフト56を構成するPTFEの弾性力により撹拌子58を強固に把持することができる。また、第2シャフト56の挿入孔56bの上方の軸心を中心として対称になる位置には、一対の羽部60、60がねじ62によって固定されている。この羽部60、60は、長方形状に形成され、その一の側辺からV字の切欠60a、60aが形成され、他の側辺側をねじ62によって固定することによって、それら一の側辺側を第2シャフト56の側方の異なる方向に突出させている。
【0027】
この撹拌部材36は、耐圧用容器本体30と耐圧用容器蓋32の間に設けられた耐圧用容器内蓋34に第1シャフト50が固定されることによって、耐圧用容器16に固定されている。この耐圧用容器内蓋34は、耐圧用容器本体30に収容された反応容器8の開口を覆うように装着され、耐圧用容器蓋32の孔32aに整合する孔34aが形成されている。また、耐圧用容器内蓋34の内面側の中心には、第1シャフト50のねじ部50aが螺合可能なねじ溝が形成された接続孔34bが形成されており、ねじ部50aに螺着されている固定ナット35を締め付けることによって、第1シャフト50を耐圧用容器内蓋34に固定することができる。撹拌部材36の長さは、撹拌部材36を耐圧用容器内蓋34に固定し、耐圧用容器内蓋34を反応容器8に設置した際に、挿入孔56bに挿入され把持された撹拌子58が反応容器8に接することがない長さに調整されている。
【0028】
以上のように、本実施例に係る有機合成装置によれば、撹拌子58は、撹拌部材36によって、反応容器8に接することがないように吊り下げられており、撹拌部材36は、耐圧用容器内蓋34に対して回転可能に支持されているので、回転マグネット部40を稼動することによって、撹拌子58を反応容器8に接することなく、回転させて、反応容器8内の試薬を回転することができる。また、撹拌部36に側方に突出する羽部60を備えることにより、試料の粘度が高かったり、多層に分離している等の場合であっても、均一に撹拌することができる。
(第2実施例)
次に、本発明に係る有機合成装置の第2施例について説明する。本発明の第2実施例に係る有機合成装置は、主として、第1実施例と同様に、反応容器を支持可能な反応容器支持部と、反応容器内の圧力を調整する圧力調整部と、反応容器内の試薬の撹拌を行う撹拌部と、を備えている(図示略)。
【0029】
第2実施例と第1実施例は、特に、反応容器64をそれぞれ密閉された状態で収容する耐圧用容器66の構成、及び反応容器64上方に回動可能に支持され、その下端が反応容器内の試薬に浸された状態で撹拌子58を把持可能に構成された撹拌部材68の構成が異なる。以下、これら耐圧用容器66及び撹拌部材68の構成を中心として説明する。
【0030】
図5は、第2実施例に係る有機合成装置の耐圧用容器66の切断側面図である。耐圧用容器66は、図5に示すように、上方が開口された有底円筒状に形成され、反応容器64を収容可能な耐圧用容器本体70と、耐圧用容器本体70の開口に着脱可能な耐圧用容器蓋72と、を備えている。これら耐圧用容器本体70及び耐圧用容器蓋72は、耐圧性素材、例えばSUSなどによって形成されている。また、耐圧用容器本体72に収容された反応容器64には、その開口を塞ぐ耐圧用容器内蓋76が装着されている。図6は、図5の耐圧用容器66の耐圧用容器蓋72を開けた状態の切断側面図である。
【0031】
耐圧用容器本体70は、その開口付近の内周面から径方向外側に窪んだ凹部70aが周方向全域に亘って形成されており、図5〜図7に示すように、その凹部70aに弾性変形可能な環状六角形に形成された六角バネ74が配置されている。この六角バネ74は、φ≒0.3〜0.7mmのステンレスから構成されており、その角が、凹部70aの内壁に当接し、その辺が、収容された反応容器64の外壁を押圧するように形成されている。すなわち、六角バネ74は、図8に示すように、反応容器64が耐圧用容器本体70に収容されていない状態において、六角バネ74の角が、凹部70aに当接することにより、その辺が僅かに内側に湾曲して、辺の一部が凹部70aから内側に突出するように形成されている。
【0032】
六角バネ74がこのように形成されているので、図7に示すように、反応容器64を耐圧用容器本体70に収容すれば、弾性変形により六角バネ74の各辺は外側に湾曲し、反応容器64は、湾曲による六角バネ74の付勢力により押圧され、耐圧用容器本体70の中央に配置されることとなる。このため、加工工程のばらつきにより、耐圧用容器本体70の内周面と反応容器64の外周面の間に隙間が形成されたとしても、反応容器64の中心線を耐圧用容器本体70の中心線、及び回転マグネット部40による回転の中心に一致させることができるので、画一的な試料の撹拌を提供することができる。また、六角バネ74の反応容器64に対する付勢により、反応容器64を反応容器本体74に固定することができ、撹拌子58が高速回転しても反応容器64が回転するのを防止することができる。
【0033】
耐圧用容器蓋72は、耐圧用容器本体70の開口を塞ぐようにその外周に螺着され、耐圧用容器本体70の外周面と耐圧用容器蓋72の内周面の間にリング状のシールド部材71を介在させることによって、耐圧用容器66内を密閉状態とすることができる。耐圧用容器蓋72の上面には、ガス供給排出管28が固定ナット32bによって密な状態で接合される孔72a,72aが形成されている。これら2つの孔72a,72aのいずれか一方は、ガス供給配管28に固定され、他方は、栓等により封止される。また、第1実施例とは異なりガス供給管とガス排出管とを備える圧力調整部を設ければ、2つの孔72a,72aを加圧用の孔と、減圧用の孔とに使い分けて使用することも可能である。
【0034】
耐圧用容器内蓋76は、反応容器64の開口を塞ぐ栓型形状の耐圧用容器内蓋本体78と、撹拌部材68の上端を回転可能な状態で支持するシャフト支持部材80と、から構成されている。
【0035】
耐圧用容器内蓋本体78は、反応容器64よりも大きな外径を有する円盤状の上面部78aと、上面部78aの下方に設けられ、反応容器64の内径よりも小さな外径を有する円柱状に形成された円柱部78bと、から構成されている。上面部78aには、反応容器66内にガスを供給するための開口81が形成されている。円柱部78bには、上下方向に貫通する円柱状の孔79がその中央に形成されており、その外周面には、周方向全域に亘って外側に突出する弾性変形可能な突出部83,83が上下2箇所に形成されており、これら突出部83、83の外径は、反応容器64の内径よりも大きく形成されている。また、これら突出部83、83の上面には、ゴムなどの弾性素材で構成されたOリング85が配置されている。なお、突出部83、83は、PTFE等など弾性に優れた樹脂により構成されている。このように円柱部78bの外周面に形成された突出部83、83の外径を反応容器64の内径よりも大きくし、その上面に弾性素材で構成されたOリング85を設けているので、反応容器64の開口から耐圧用容器内蓋76を挿入すると、突出部83、83は、それらの先端が上方を向くように湾曲するが、Oリング85の弾性力により、突出部83、83の先端は、反応容器64の内周面を押圧して、耐圧用容器内蓋76を反応容器64に対して固着し、撹拌部材68の回転によって耐圧用容器内蓋76が回転するのを防止することができる。
【0036】
また、シャフト支持部材80は、六角筒状又は円筒状に形成され、上面部78aの中心にネジ87によって固着されることによって、円柱部78bの孔79の中心に位置するように配置されている。
【0037】
撹拌部材68は、主として、略円柱状のシャフト部84と、シャフト部84の開口部84bに挿入される撹拌子58を固定する撹拌子固定部材88と、から構成されている。
【0038】
シャフト部84の上端には、下方に所定深さ形成された円柱状の空洞部89が形成されており、この空洞部89の内径は、シャフト支持部材84の外径よりも大きく形成されている。また、シャフト部84の下端近傍には、横方向に貫通する開口部84bが形成されており、シャフト部84の開口部84bよりも上方の外周面には、ネジ溝84cが形成されている。撹拌子固定部材88は、リング状に形成されており、ネジ溝84cに螺合可能なネジ山88aが内周面に形成されている。したがって、撹拌子固定部材88は、シャフト部84の開口部84bの上方に、上下方向に螺進可能に装着され、図9に示す状態から、下方に螺進して、開口部84に挿入された撹拌子58を押圧することによって、撹拌子58を撹拌部材68に固定することができ、例え、開口部84bの内径が撹拌子58の外径よりも大きく形成されたとしても、撹拌子58を撹拌部材68に固定することができる。
【0039】
撹拌部材68は、ボールベアリング82を介してシャフト支持部材84の下端に装着されている。すなわち、シャフト部84の空洞部89の内周面に上端から下方にネジ溝89aが形成されており、またその内周面のネジ溝89aよりも下方には、下方側の内径を小さくする段差89bが形成されている。空洞部89の段差89bよりも上方側の内径は、ボールベアリング82の外径と同径に形成されている。よって、ボールベアリング82を段差89b上に配置することができ、ネジ溝89aに螺合可能で、内径がシャフト支持部材84の外形よりも大きく形成されたナット86を空洞部89の上方から螺着することによって、ナット86と段差89bによってボールベアリング82を挟持することができる。そして、ボールベアリング82は、ネジ80aによってシャフト支持部材80の下端に装着される。
【0040】
このように撹拌部材68は、ボールベアリング82を介して、シャフト支持部材84の下端に装着されているので、撹拌部材68が高速回転しても、磨耗によって撹拌部材68などが削れることを可及的に防止することができる。なお、ボールベアリング82は、その内輪及び外輪を例えば、PTFE(4フッ化エチレン)やPPS(ポリフェニレン・サリファイド)、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)材のようなスーパーエンジニアリングプラスチックなどで形成し、その転動体をセラミック材(アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア等)などの材質で形成した混合ベアリングである。
【0041】
さらに、シャフト部84の上端に空洞部89を設け、その内側にボールベアリング82、シャフト支持部材80を配置しているので、例え、回転により生じたボールベアリング82及びその他の部材の削りカスが生じたとしても、それらは、シャフト部84の空洞部89に蓄積される。したがって、その削りカスが、反応容器64に入れられた溶液に混入し、コンタミネーションが生じる虞はない。
【0042】
以上、発明の一実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、追加、置換等が可能である。例えば、第1実施例において羽部60の代わりに、図10(a)に示すような、矩形の開口を有する矩形の羽部90、又は、図10(b)に示すような、台形の羽部92や、図10(c)に示すような、Eの字型の羽部94であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施例に係る有機合成装置の切断正面図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る有機合成装置の図1に示す耐圧用容器の切断側面図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る有機合成装置の図1に示すA−A’断面図である。
【図4】本発明の第1実施例に係る有機合成装置の図2に示す撹拌部の一部切断正面図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る有機合成装置の耐圧用容器の切断側面図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る有機合成装置の耐圧用容器の耐圧用容器蓋を開けた状態の切断側面図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る有機合成装置の図6に示すB−B’断面図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る有機合成装置の反応容器を抜いた状態の図6に示すC−C’断面図である。
【図9】本発明の第2実施例に係る有機合成装置の耐圧用容器のシャフトにおいて撹拌子を取り外した状態を示す要部拡大断面図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る有機合成装置の撹拌部材を示す正面図である。
【図11】従来の有機合成装置を示す正面概念図である。
【図12】従来の有機合成装置の耐圧用容器を示す切断側面図である。
【符号の説明】
【0044】
8,64…反応容器、10…反応容器把持部、12…圧力調整部、14…撹拌部、16,66…耐圧用容器、18…支持部本体、20…カバー部材、22…第1天板、24…筐体、26…開口、28…ガス供給排出管、30,70…耐圧用容器本体、32,72…耐圧用容器蓋、34,76…耐圧用容器内蓋、36,68…撹拌部材、38…筐体、40…回転マグネット部、42…モータ、44…回転盤、46…マグネット、48…リング部材、50…第1シャフト、52…接続部材、54…カラー、56…第2シャフト、58…撹拌子、60,90,92,94…羽部、74…六角バネ、78…耐圧用容器内蓋本体、80…シャフト支持部材、82…ボールベアリング、84…シャフト、86…ナット、88…撹拌子固定リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持される反応容器と整合する位置に設けられるとともに、前記支持される反応容器内に試料とともに収容される撹拌子を磁場の変位により回転させることによって、前記支持される反応容器内の試料を撹拌する撹拌手段を備えた有機合成装置において、
撹拌手段は、上下方向に延びる棒状に形成された撹拌部材を備え、
該撹拌部材は、その上端が反応容器上方に回動可能に支持され、その下端が前記反応容器内の試薬に浸された状態で前記撹拌子を把持可能に構成されていることを特徴とする有機合成装置。
【請求項2】
前記反応容器を密閉状態で収容可能な耐圧用容器を有するとともに、該耐圧用容器内に収容された反応容器内の圧力を調整する圧力調整手段をさらに備え、前記撹拌部材の上端は、前記耐圧用容器の上面内側に支持されていることを特徴とする請求項1記載の有機合成装置。
【請求項3】
記撹拌部材は、該撹拌部材の側方又は接線方向に突出した羽部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の有機合成装置。
【請求項4】
前記撹拌部材には、前記撹拌子を挿入可能な開口が形成され、
前記撹拌部材は、前記開口に挿入された撹拌子を上方又は下方から押圧することによって撹拌子を固定することが可能な撹拌子固定部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の有機合成装置。
【請求項5】
前記反応容器に対して回転不能に装着される撹拌部材支持部をさらに備え、
前記撹拌部材の上端には、下方に所定の深さを有する空洞部が形成され、
前記撹拌部材支持部は、その下端を前記撹拌部材の空洞部内に位置させた状態で、前記撹拌部材を回転可能に支持するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の有機合成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−83223(P2007−83223A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80200(P2006−80200)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000181767)柴田科学株式会社 (32)
【Fターム(参考)】