説明

有機圧電材料、有機圧電膜、超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置

【課題】圧電特性および取扱性に優れた有機圧電材料及び有機圧電膜を提供する。更に、それらを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供する。
【解決手段】一般式(UP1)で表される構造を有する有機高分子材料を含有する有機圧電材料あって、電気機械結合定数が0.2以上であることを特徴とする有機圧電材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電特性および取扱性に優れた有機圧電材料及び有機圧電膜、それらを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探触子は非破壊検査装置の他、医療用の超音波診断装置として急速に利用が高まっている。例えば超音波内視鏡等の探触子は、超音波トランスデューサから高周波の音響振動を被検体内に放射し、反射して戻ってきた超音波を超音波トランスデューサで受信し、わずかな界面特性の違いによって異なる情報を処理することにより、生体内部の断面像を得るものである。
【0003】
近年では、この超音波探触子から被検体内へ送信された超音波の周波数(基本周波数)成分ではなく、その高調波周波数成分によって被検体内の内部状態の画像を形成するハーモニックイメージング(Harmonic Imaging)技術が研究、開発されている。このハーモニックイメージング技術は、(1)基本周波数成分のレベルに比較してサイドローブレベルが小さく、S/N比(signal to noise ratio)が良くなってコントラスト分解能が向上すること、(2)周波数が高くなることによってビーム幅が細くなって横方向分解能が向上すること、(3)近距離では音圧が小さくて音圧の変動が少ないために多重反射が抑制されること、および、(4)焦点以遠の減衰が基本波並みであり高周波を基本波とする場合に較べて深速度を大きく取れることなどの様々な利点を有しており、高精度な診断を可能としている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このような超音波探触子には超音波を発生させる圧電体が使われている。従来、圧電体としては、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbOなどの単結晶、ZnO、AlNなどの薄膜、Pb(Zr,Ti)O系などの焼結体を分極処理した、いわゆる無機材質の圧電セラミックスが広く利用されている。
【0005】
これに対して、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリ尿素のような有機系高分子物質を利用した有機圧電体(「圧電高分子材料」、「ポリマー圧電物質」ともいう。)も開発されている(例えば特許文献2参照)。この有機圧電体は、セラミックス圧電体と比較して、可撓性が大きく、薄膜化、大面積化、長尺化が容易で任意の形状、形態のものを作ることができる、誘電率εが小さく、静水圧電圧出力係数(g定数)は極めて大となるので感度特性に優れる、さらに低密度、低弾性であるため、効率のよいエネルギー伝播が可能である、等の特性を有する。
【0006】
しかしながら、ポリ尿素の場合、ウレア基の水素結合が強固であるため、溶解性は非常に悪く、また剛直性が高いため、取り扱い性が極端に悪く、有機圧電膜を製造するにはその製造方法が、蒸着重合法に限られる欠点があった。
【特許文献1】特開平11−276478号公報
【特許文献2】特開平6−216422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、圧電特性及び取扱性に優れた有機圧電材料及び有機圧電膜を提供することである。更に、それらを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0009】
1.下記一般式(UP1)で表される構造を有する有機高分子材料を含有する有機圧電材料であって、電気機械結合定数が0.2以上であることを特徴とする有機圧電材料。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R及びRは、各々独立に、アルキレン基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表すが、RとRが同時に水素原子となる場合は除く。)
2.前記一般式(UP1)が、下記一般式(UP2)で表されることを特徴とする前記1に記載の有機圧電材料。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R及びRは、各々独立に、アルキレン基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Rは、メチル基、エチル基、又はプロピル基である。)
3.前記有機圧電材料が、分子量が400〜10,000であるマクロモノマーを原料として形成された有機高分子材料を含有することを特徴とする前記1又は2に記載の有機圧電材料。
【0014】
4.前記1〜3のいずれか一項に記載の有機圧電材料を用いて形成されたことを特徴とする有機圧電膜。
【0015】
5.前記1〜3のいずれか一項に記載の有機圧電材料を用いて形成された有機圧電膜を具備した超音波振動子であって、当該有機圧電膜は、その両面に電極を有し、かつ当該有機圧電膜の両面に設置される電極の形成前、片側のみ電極形成後、又は両側に電極形成後のいずれかで、分極処理されて製造された有機圧電膜であることを特徴とする超音波振動子。
【0016】
6.前記5に記載の超音波振動子であって、前記分極処理が、電圧印加処理又はコロナ放電処理であることを特徴とする超音波振動子。
【0017】
7.超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波探触子であって、前記1〜3のいずれか一項に記載の有機圧電材料により形成された有機圧電膜を具備した超音波振動子を超音波受信用振動子として用いたことを特徴とする超音波探触子。
【0018】
8.電気信号を発生する手段と、前記電気信号を受けて超音波を被検体に向けて送信し、前記被検体から受けた反射波に応じた受信信号を生成する複数の振動子が配置された超音波探触子と、前記超音波探触子が生成した前記受信信号に応じて、前記被検体の画像を生成する画像処理手段とを有する超音波医用画像診断装置において、前記超音波探触子が、前記7に記載の超音波探触子であることを特徴とする超音波医用画像診断装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記手段により、圧電特性および取扱性に優れた有機圧電材料及び有機圧電膜を提供することができる。更に、それらを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供することができる。
【0020】
すなわち、作用機構的観点から説明するならば、有機圧電材料より有機圧電膜を製造する際、有機圧電材料を溶媒に溶解させ、キャスト後、乾燥することが必要なのだが、有機圧電材料が有する強固な水素結合性のため、溶解性が非常に悪く、また分子の高い剛直性のために、乾燥後、脆くなり、取扱性が悪く、また工程内の搬送が難しく、ローラーとの摩擦や接触時に、膜が損傷し、歩留まりが低下するという問題があり、有機圧電材料の利点を生かすことができない。
【0021】
しかし、本発明においては、有機高分子材料内で形成される水素結合を適度に緩和させる分子構造により、材料の溶解性を向上させ、かつ有機圧電膜の取扱性、生産性を改善することができるものと推測される。また材料の柔軟性が向上するため、圧電材料にとって必須な双極子配向処理、すなわち分極処理も効果的に行うことができる。
【0022】
従って、これにより本来の特徴を活かした有機圧電材料、有機圧電膜、超音波振動子、超音波探触子、及び超音波医用画像診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の有機圧電材料は、前記一般式(UP1)で表される構造を有する有機高分子材料を含有する有機圧電材料あって、電気機械結合定数が0.2以上であることを特徴とする。この特徴は、請求項1〜8に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0024】
本発明の実施態様としては、前記一般式(UP1)が、前記一般式(UP2)で表される態様であることが好ましい。また、当該有機圧電材料が、分子量が400〜10,000であるマクロモノマーを原料として形成された有機高分子材料を含有する態様であることが好ましい。
【0025】
本発明の有機圧電材料は、圧電特性及び柔軟性に優れているという特徴を有することから、有機圧電膜を形成する材料として適している。また、当該有機圧電膜は、超音波振動子に好適に用いることができる。超音波振動子とする場合、当該有機圧電膜の両面に設置される電極の形成前、片側のみ電極形成後又は両側に電極形成後のいずれかで分極処理することが好ましい。また、当該分極処理が、電圧印加処理又はコロナ放電処理であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る超音波振動子は、特に、超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波探触子において、超音波受信用振動子に好適に用いることができる。更に、この超音波探触子は、超音波医用画像診断装置に用いることができる。例えば、電気信号を発生する手段と、前記電気信号を受けて超音波を被検体に向けて送信し、前記被検体から受けた反射波に応じた受信信号を生成する複数の振動子が配置された超音波探触子と、前記超音波探触子が生成した前記受信信号に応じて、前記被検体の画像を生成する画像処理手段とを有する超音波医用画像診断装置において、前記超音波探触子として好適に用いることができる。
【0027】
以下、本発明とその構成要素、及び発明を実施するための最良の形態・態様等について詳細な説明をする。
【0028】
(有機圧電材料を構成する有機高分子材料)
本発明の有機圧電材料においては、種々の有機高分子材料を構成材料として用いることができるが、当該有機圧電材料は、前記一般式(UP1)で表される構造を有する有機高分子材料を含有する有機圧電材料あって、電気機械結合定数が0.2以上であることを特徴とする。以下において、有機圧電材料を構成する有機高分子材料について説明する。
【0029】
〈一般式(UP1)で表される構造を有する有機高分子材料〉
前記一般式(UP1)において、R及びRは、各々独立に、アルキレン基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表すが、RとRが同時に水素原子となる場合は除く。
【0030】
アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、シクロヘキシレン基(例えば、1,6−シクロヘキサンジイル基等)、シクロペンチレン基(例えば、1,5−シクロペンタンジイル基など)等が挙げられる。
【0031】
アリーレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ナフタセンジイル基、ピレンジイル基、ナフチルナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基(例えば、3,3′−ビフェニルジイル基、3,6−ビフェニルジイル基等)、テルフェニルジイル基、クアテルフェニルジイル基、キンクフェニルジイル基、セキシフェニルジイル基、セプチフェニルジイル基、オクチフェニルジイル基、ノビフェニルジイル基、デシフェニルジイル基、メチレンビスフェニル基、フルオレニル基、等が挙げられる。
【0032】
ヘテロアリーレン基としては、例えば、カルバゾール環、トリアジン環、トリアゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、チオフェン環、オキサジアゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インドール環からなる群から導出される、2価の基等が挙げられる。
【0033】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0034】
アリール基としては、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
【0035】
ヘテロアリール基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等が挙げられる。
【0036】
nは、10〜30であることが好ましい。
【0037】
本発明においては、前記一般式(UP1)が、前記一般式(UP2)で表される態様であることが好ましい。当該一般式(UP2)において、R及びRは、各々独立に、アルキレン基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Rは、メチル基、エチル基、又はプロピル基である。なお、R及びRは、一般式(UP1)におけるR及びRと同義である。
【0038】
《有機高分子材料の合成》
一般式(UP1)で表される構造を有する有機高分子材料は、RとRを備えた2置換アミン化合物とRとRを備えた2置換アミン化合物にカルボニル基、またはチオカルボニル基を導入するカップリング剤を反応させる方法、RとRを備えた2置換アミン化合物に、Rを有するイソシアネート化合物もしくはRを有するイソチオシアネート化合物を反応させる方法、RとRを備えた2置換アミン化合物に、Rを有するイソシアネート化合物もしくはRを有するイソチオシアネート化合物を反応させる方法により合成することができる。
【0039】
出発原料は、前述で挙げた、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基により置換されたアミン化合物、イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物である。
【0040】
とRを備えた2置換アミン化合物とRとRを備えた2置換アミン化合物にカルボニル基、またはチオカルボニル基を導入するカップリング剤を反応させる方法で合成する場合、RとRを備えた2置換アミノ基を2つ有する化合物とRとRを備えた2置換アミノ基を2つ有する化合物のカップリングでもよいし、RとRを備えた2置換アミノ基とRとRを備えた2置換アミノ基を1つずつ有する化合物のカップリングでも構わない。
【0041】
使用できるカップリング剤としては、カルボニル基またはチオカルボニル基を導入できる化合物であり、具体的にはホスゲン、チオホスゲン、1,1′−カルボニルジイミダゾール、1,1′−チオカルボニルジイミダゾール、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカルボノチオエート、ジフェニルカルボノチオエート、炭酸ビス(トリクロロメチル)、チオ炭酸ビス(トリクロロメチル)、等を挙げることができる。
【0042】
カップリング剤の使用量は、アミン化合物1当量に対し、1.1〜1.5当量使用することが好ましい。更に好ましくは、1.1〜1.2当量である。
【0043】
カップリングさせる反応温度は、使用するカップリング剤にもよるが、できるだけ低い方が好ましく、−40〜60℃、好ましくは−20〜30℃であり、より好ましくは−10〜10℃である。また、反応温度は、反応開始から終了まで一定の温度で行ってもよく、初期に低温で行いその後、温度上げてもよい。
【0044】
一方、RとRを備えた2置換アミン化合物に、Rを有するイソシアネート化合物もしくはRを有するイソチオシアネート化合物を反応させる方法、RとRを備えた2置換アミン化合物に、Rを有するイソシアネート化合物もしくはRを有するイソチオシアネート化合物を反応させる方法する場合、アミン化合物は、RとRを備えた2置換アミノ基を2つ有する化合物、RとRを備えた2置換アミノ基を2つ有する化合物、RとRを備えた2置換アミノ基とRとRを備えた2置換アミノ基を1つずつ有する化合物が使用できる。またイソシアネート化合物は、Rを有するジイソシアネート化合物もしくはRを有するジイソチオシアネート化合物、Rを有するジイソシアネート化合物もしくはRを有するジイソチオシアネート化合物が使用できる。
【0045】
重付加させる反応温度は、使用する化合物にもよるが、できるだけ低い方が好ましく、−40〜60℃、好ましくは−20〜30℃であり、より好ましくは−10〜10℃である。また、反応温度は、反応開始から終了まで一定の温度で行ってもよく、初期に低温で行いその後、温度上げてもよい。
【0046】
反応に用いる溶媒は、目的の樹脂組成物が高極性であることと、重合を効率的に進行させるため、高極性溶媒を用いる必要がある。例えば、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチルピロリドン)等の高極性非プロトン溶媒を選択することが好ましいが、反応基質及び目的物が良好に溶解しさえすればシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの溶媒であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
【0047】
有機高分子材料の精製は、如何なる手段を用いても良いが、再沈による精製が好ましい。再沈の方法は、特に限定されないが、有機高分子材料を良溶媒に溶解した後、貧溶媒に滴下して析出させる方法が好ましい。
【0048】
ここで言う「良溶媒」とは、マクロモノマーが溶解する溶媒であれば、如何なる溶媒でも構わないが、好ましくは極性溶媒であり、具体的には、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチルピロリドン)等の高極性非プロトン溶媒を挙げることができる。
【0049】
又、「貧溶媒」とは、マクロモノマーが溶解しない溶媒であれば、如何なる溶媒でも構わないが、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を挙げることができる。
【0050】
以下に、有機高分子材料の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されない。
【0051】
【化3】

【0052】
一般式(UP1)で表される構造を有する有機高分子材料を含有する有機圧電材料における当該高分子材料の含有率は、質量比で50〜100%であり、より好ましくは70〜100%である。
【0053】
使用条件は、前述の質量比の範囲において混合する材料と相分離を起こさない当該高分子材料を選択する。
【0054】
電気機械結合定数が0.2以上である用にするための調整方法は、当該高分子材料を含有する有機圧電材料からフィルムを作製し、そのフィルムに対し、延伸処理、アニール処理、分極処理などを施すことで得られる。アニール処理と分極処理を併用してもよい。
【0055】
延伸処理の場合、2〜5倍に延伸することが望ましい。延伸時の温度は、有機圧電材料の物性にもよるが、20〜150℃で延伸することが好ましく、40〜120℃がより好ましい。
【0056】
アニール処理の場合、有機圧電材料が強誘電性を示す材料であれば、キュリー温度以下で行う必要がある。一方、強誘電性を示さない材料であれば、融点以下で行う必要がある。
【0057】
分極処理の場合、直流コロナ放電処理、交流印加処理など公知の種々の方法を用いることができる。
【0058】
〈その他併用可能な有機高分子材料〉
本発明においては、種々の有機高分子材料を用いることができるが、当該有機高分子材料の双極子モーメント量を増加させる作用を有する電子吸引性基を持つ重合性化合物により形成した有機高分子材料であることが好ましい。このような有機高分子材料であれば、双極子モーメント量を増加させる作用を有することから、有機圧電材料(膜)として用いた場合、優れた圧電特性を得ることができる。
【0059】
なお、本願において、「電子吸引性基」とは、電子吸引性の度合いを示す指標としてハメット置換基定数(σp)が0.10以上である置換基をいう。ここでいうハメットの置換基定数σpの値としては、Hansch,C.Leoらの報告(例えば、J.Med.Chem.16、1207(1973);ibid.20、304(1977))に記載の値を用いるのが好ましい。
【0060】
例えば、σpの値が0.10以上の置換基または原子としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン置換アルキル基(例えばトリクロロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、トリフルオロメチルチオメチル、トリフルオロメタンスルホニルメチル、パーフルオロブチル)、脂肪族、芳香族もしくは芳香族複素環アシル基(例えばホルミル、アセチル、ベンゾイル)、脂肪族・芳香族もしくは芳香族複素環スルホニル基(例えばトリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、カルバモイル基(例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、2−クロロ−フェニルカルバモイル)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル)、置換アリール基(例えばペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル)、芳香族複素環基(例えば2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンズチアゾリル、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル、1−テトラゾリル)、アゾ基(例えばフェニルアゾ)、ジトリフルオロメチルアミノ基、トリフルオロメトキシ基、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アシロキシ基(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えばジメトキシホスホニル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−(2−ドデシルオキシエチル)スルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)などが挙げられる。
【0061】
本発明に用いることができる化合物の具体例としては、以下の化合物、もしくはその誘導体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4′−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジシクロヘキシルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2−t−ブチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2−シクロヘキシルアニリン)、4,4′−メチレンビス(3,5−ジメチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,3−ジメチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,5−ジメチルアニリン)、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)トルエン、4,4′−メチレンビス(2−クロロアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジクロロアニリン)、4,4′−メチレンビス(2,3−ジブロモアニリン)、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノオクタフルオロジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルジスルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,5−ビス(4−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ネオペンチルグリコールビス(4−アミノフェニル)エーテル、4,4′−ジアミノスチルベン、α,α′−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、ベンジジン、4,4′−ジアミノオクタフルオロビフェニル、3,3′−ジアミノベンジジン、3,3′−ジメチルベンジジン、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジン、3,3′−ジヒドロキシベンジジン、3,3′−ジメチルベンジジン、3,3′−ジヒドロキシ−5,5′−ジメチルベンジジン、4,4″−ジアミノ−p−ターフェニル、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、3,3′−ジメチルナフチジン、2,7−ジアミノカルバゾール、3,6−ジアミノカルバゾール、3,4−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、1,5−ジアミノペンタン、1.6−ジアミノヘキサン、1,7−ジミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,5−ジメチルヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−1:4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジメチルアミノ−3,3′−ジクロロベンゾフェノン、4,4′−ジアミノ−5,5′−ジエチル−3,3′−ジフルオロベンゾフェノン、4,4′−ジアミノ−3,3′,5,5′−テトラフルオロベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4′−ジアミノ−3,3′,5,5′−テトラクロロジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジブロモジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルジスルフィド、4,4′−ジアミノ−3,3′,5,5′−テトラフルオロジフェニルジスルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−クロロ−5−メチルフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノ−3−ブロモフェニル)スルホキシド、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロプロパン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノ−3,5−ジフルオロフェニル)シクロヘキサン、4,4′−(シクロヘキシルメチレン)ジアニリン、4,4′−(シクロヘキシルメチレン)ビス(2,6−ジクロロアニリン)、2,2−ビス(4−アミノフェニル)マロン酸ジエチル、2,2−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)マロン酸ジエチル、4−(ジp−アミノフェニルメチル)ピリジン、1−(ジp−アミノフェニルメチル)−1H−ピロール、1−(ジp−アミノフェニルメチル)−1H−イミダゾール、2−(ジp−アミノフェニルメチル)オキサゾール等のジアミン化合物とそれら誘導体と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジシクロヘキシルフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(2−エチルフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(2−t−ブチルフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(2−シクロヘキシルフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(3,5−ジメチルフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(2,3−ジメチルフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(2,5−ジメチルフェニルイソシアナート)、2,2−ビス(4−イソシアナートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−イソシアナートフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−イソシアナートフェニル)シクロヘキサン、α,α−ビス(4−イソシアナートフェニル)トルエン、4,4′−メチレンビス(2,6−ジクロロフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(2−クロロフェニルイソシアナート)、4,4′−メチレンビス(2,3−ジブロモフェニルイソシアナート)、m−キシリレンジイソシアナート、4,4′−ジイソシアナート−3,3′−ジメチルビフェニル、1,5−ジイソシアナトナフタレン、1,3−フェニレンジイソシアナート、1,4−フェニレンジイソシアナート、2,4−トルエンジイソシアナート(2,4−TDI)、2,6−トルエンジイソシアナート(2,6−TDI)、1,3−ビス(2−イソシアナート−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,7−フルオレンジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4′−ジイソシアン酸、3,3′−ジクロロベンゾフェノン−4,4′−ジイソシアン酸、5,5′−ジエチル−3,3′−ジフルオロベンゾフェノン−4,4′−ジイソシアン酸、2,2−ビス(4−イソシアネートフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−イソシアネートフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−イソシアネートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−イソシアネートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−イソシアネートフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジフルオロ−4−イソシアネートフェニル)エーテル、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジブロモ−4−イソシアネートフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアネートフェニル)ジスルフィド、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホン、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジフルオロ−4−イソシアネートフェニル)スルホキシド、1,1−ビス(4−イソシアネートフェニル)シクロプロパン、1,1−ビス(4−イソシアネートフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス(4−イソシアネートフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−イソシアネートフェニル)シクロヘキサン、4,4′−(シクロヘキシルメチレン)ビス(イソシアネートベンゼン)、4,4′−(シクロヘキシルメチレン)ビス(1−イソシアネート−2−クロロベンゼン)、2,2−ビス(4−イソシアネートフェニル)マロン酸ジエチル、2,2−ビス(3−クロロ−4−イソシアネートフェニル)マロン酸ジエチル、4−(ジp−イソシアネートフェニルメチル)ピリジン、1−(ジp−イソシアネートフェニルメチル)−1H−ピロール、1−(ジp−イソシアネートフェニルメチル)−1H−イミダゾール、2−(ジp−イソシアネートフェニルメチル)オキサゾール等のジイソシアネート化合物とそれら誘導体と、4,4′−ジフェニルメタンジイソチオシアナート、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルフェニルイソチオシアナート)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルイソチオシアナート)、1,3−ビス(イソチオシアナートメチル)シクロヘキサン、ベンゾフェノン−4,4′−ジイソチオシアン酸、3,3′−ジフルオロベンゾフェノン−4,4′−ジイソチオシアン酸、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−イソチオシアネートフェニル)プロパン、ビス(4−イソチオシアネートフェニル)エーテル、ビス(4−イソチオシアネートフェニル)スルホン、ビス(4−イソチオシアネートフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジフルオロ−4−イソチオシアネートフェニル)スルホキシド、1,1−ビス(4−イソチオシアネートフェニル)シクロプロパン、1,1−ビス(4−イソチオシアネートフェニル)シクロオクタン、4,4′−(シクロヘキシルメチレン)ビス(イソチオシアネートベンゼン)、2,2−ビス(4−イソチオシアネートフェニル)マロン酸ジエチル、1−(ジp−イソチオシアネートフェニルメチル)−1H−ピロール、2−(ジp−イソチオシアネートフェニルメチル)オキサゾール等のジイソチオシアネート化合物とそれら誘導体である。
【0063】
以下、本発明において用いることができる有機高分子材料について更に詳細な説明をする。
【0064】
本発明においては、有機圧電材料を構成する有機高分子材料が、ウレア結合もしくはチオウレア結合を有する化合物を構成成分として含有することが好ましく、当該化合物が、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物もしくはこれらの化合物の誘導体を原料として形成されものであることも好ましい。
【0065】
【化4】

【0066】
(式中、R11及びR12は、各々独立に水素原子、アルキル基、3〜10員の非芳香族環基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、これらの基は更に置換基を有しても良い。R21〜R26は、各々独立に水素原子、アルキル基、電子吸引性基を表す。)
【0067】
【化5】

【0068】
(式中、R13は、各々独立にカルボキシル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基を表し、これらの活性水素は、更にアルキル基、3〜10員の非芳香族環基、アリール基、またはヘテロアリール基等で置換されてもよく、また、R13は、カルボニル基、スルホニル基、チオカルボニル基、スルホン基を表し、これらの置換基は、水素原子、アリール基、またはヘテロアリール基を結合する。R21〜R26は上記一般式(5)のR21〜R26と同義の基を表す。)
【0069】
【化6】

【0070】
(式中、Yは、各々独立にケト基、オキシム基、置換ビニリデン基を表し、R21〜R26は、上記一般式(1)のR21〜R26と同義の置換基を表す。)
好ましい例としては、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物若しくはこれらの化合物の誘導体を挙げることができる。
【0071】
《一般式(1)で表される化合物》
一般式(1)で表される化合物としては、2,7−ジアミノフルオレン、2,7−ジアミノ−4,5−ジニトロフルオレン、2,7−ジアミノ−3,4,5、6−テトラクロロフルオレン、2,7−ジアミノ−3,6−ジフルオロフルオレン、2,7−ジアミノ−9−(n−ヘキシル)フルオレン、9、9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレン、2,7−ジアミノ−9−ベンジルフルオレン、9,9−ビスフェニル−2,7−ジアミノフルオレン、2,7−ジアミノ−9−メチルフルオレン、9,9−ビス(3,4−ジクロロフェニル)−2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−クロロフェニル)−2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(メチルオキシエチル)−2,7−ジアミノフルオレン、2,7−ジアミノ−3,6−ジメチル−9−アミノメチルフルオレン、などが挙げられるがこの限りではない。
【0072】
《一般式(2)で表される化合物》
一般式(2)で表される化合物としては、2,7−ジアミノ−9−フルオレンカルボン酸、2,7−ジアミノ−9−フルオレンカルボキシアルデヒド、2,7−ジアミノ−9−ヒドロキシフルオレン、2,7−ジアミノ−3,6−ジフルオロ−9−ヒドロキシフルオレン、2,7−ジアミノ−4,5−ジブロモ−9−メルカプトフルオレン、2,7,9−トリアミノフルオレン、2,7−ジアミノ−9−ヒドロキシメチルフルオレン、2,7−ジアミノ−9−(メチルオキシ)フルオレン、2,7−ジアミノ−9−アセトキシフルオレン、2,7−ジアミノ−3,6−ジエチル−9−(パーフルオロフェニルオキシ)フルオレン、2,7−ジアミノ−4,5−ジフルオロ−9−(アセトアミド)フルオレン、2,7−ジアミノ−N−イソプロピルフルオレン−9−カルボキシアミド、2,7−ジアミノ−4,5−ジブロモ−9−メチルスルフィニルフルオレン、などが挙げられるがこの限りではない。
【0073】
《一般式(3)で表される化合物》
一般式(3)で表される化合物としては、9,9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレノン、2,7−ジアミノ−9−ベンジルフルオレノン、9,9−ビスフェニル−2,7−ジアミノフルオレノン、2,7−ジアミノ−9−メチルフルオレノン、9,9−ビス(3,4−ジクロロフェニル)−2,7−ジアミノフルオレノン、9,9−ビス(3−メチル−4−クロロフェニル)−2,7−ジアミノフルオレノン、9−ヘキシリデン−2,7−ジアミノ−4,5−ジクロロフルオレン、1−(2,7−ジアミノ−9−フルオレニリデン)−2−フェニルヒドラジン、2−((2,7−ジアミノ−1,8−ジメチル−9−フルオレニリデン)メチル)ピリジン、などが挙げられるがこの限りではない。
【0074】
本発明においては、例えば、上記フルオレン例示化合物を脂肪族若しくは芳香族のジオール、ジアミン、ジイソシアネート、ジイソチオシアネートなどと反応させてポリウレア若しくはポリウレタン構造等を形成してから下記一般式(4)〜(6)で表される化合物、もしくはそれらより形成される高分子量体と混ぜて複合材料とすることもできる。
【0075】
【化7】

【0076】
(式中、Raは、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、電子吸引性基を含むアルキル基、電子吸引性基を含むアリール基もしくはヘテロアリール基を表す。Xは、結合しうる炭素以外の原子、もしくはなくてもよい。nはXの原子価−1以下の整数を表す。)
一般式(4)で表される化合物で表される化合物としては、p−アセトキシスチレン、p−アセチルスチレン、p−ベンゾイルスチレン、p−トリフルオロアセチルスチレン、p−モノクロロアセチルスチレン、p−(パーフルオロブチリルオキシ)スチレン、p−(パーフルオロベンゾイルオキシ)スチレン、S−4−ビニルフェニルピリジン−2−カルボチオエート、及びN−(4−ビニルフェニル)ピコリナミド、などが挙げられるがこの限りではない。
【0077】
【化8】

【0078】
(式中、Rbは、各々独立に電子吸引性基を含むアルキル基、電子吸引性基を含むアリール基もしくはヘテロアリール基を表す。Xは結合しうる炭素以外の原子、又はなくてもよい。nはXの原子価−1以下。)
一般式(5)で表される化合物としては、p−トリフルオロメチルスチレン、p−ジブロモメチルスチレン、p−トリフルオロメトキシスチレン、p−パーフルオロフェノキシスチレン、p−ビス(トリフルオロメチル)アミノスチレン、及びp−(1H−イミダゾリルオキシ)スチレン、などが挙げられるがこの限りではない。
【0079】
【化9】

【0080】
(式中、Rcは、各々独立に電子吸引性基を含むアルキル基、電子吸引性基を含むアリール基もしくはヘテロアリール基を表す。Xは結合しうる炭素以外の原子、又はなくてもよい。nはXの原子価−1以下の整数を表す。)
一般式(6)で表される化合物としては、p−(メタンスルホニルオキシ)スチレン、p−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スチレン、p−トルエンスルホニルスチレン、p−(パーフルオロプロピルスルホニルオキシ)スチレン、p−(パーフルオロベンゼンスルホニルオキシ)スチレン、及び(4−ビニルフェニル)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、などが挙げられるがこの限りではない。
【0081】
なお、本発明においては、エチレングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、4,4−メチレンビスフェノールなどのアルコール化合物等、さらにアミノ基と水酸基の両方を有するエターノルアミン、アミノブチルフェノール、4−(4−アミノベンジル)フェノール(ABP)などのアミノアルコール類、アミノフェノール類等も用いることができる。
【0082】
《マクロモノマー》
本発明においては、前記ウレア結合もしくはチオウレア結合を有する化合物が、分子量が400〜10,000であるマクロモノマーを原料として形成されたものであることも好ましい態様である。
【0083】
本願において、「マクロモノマー」とは、分子鎖の末端の少なくとも一箇所に、イソシアネート基、活性水素を有する基又はビニル基等の重合可能な官能基を有し、ウレア結合(−NRCONR−)、チオウレア結合(−NRCSNR−)、ウレタン結合(−OCONR−)、アミド結合(−CONR−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−CO−)及びカーボネート結合(−CO−)から選ばれる2個以上の結合を有する化合物のことをいう。
【0084】
なお、本願においては、「ウレタン結合」におけるRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)を表し、好ましくは、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基であり、更に好ましくは、水素原子又はメチル基である。また、「アミド結合」におけるRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)を表し、好ましくは、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基であり、更に好ましくは、水素原子又はメチル基である。
【0085】
本発明に係るマクロモノマーは、双極子モーメントを有するウレア結合又はチオウレア結合を有していることが好ましい。すなわち、本発明に係るマクロモノマーは、反応性基を有するモノマーを逐次縮合させることにより、双極子モーメントを有する複数の結合及び連結基を導入することができるため、従来では困難だった樹脂組成物の溶解性や剛直性の調整が原料の選択により可能となる。又、マクロモノマーを原料とすることで、残モノマーの影響を排除できるため、圧電材料としての耐熱性及び圧電特性を著しく向上させることができる。
【0086】
なお、「ウレア結合」は、一般式:−NRCONR−で表される。又、「チオウレア結合」は、一般式:−NRCSNR−で表される。
【0087】
ここで、R及びRは、各々独立に水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)を表し、好ましくは、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基であり、更に好ましくは、水素原子又はメチル基である。
【0088】
ウレア結合又はチオウレア結合は、如何なる手段を用いて形成されても良いが、イソシアネートとアミン、イソチオシアネートとアミンとの反応で得ることができる。又、1,3−ビス(2−アミノエチル)ウレア、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)ウレア、1,3−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ウレア、1,3−ビス(2−ヒドロキシメチル)チオウレア、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)チオウレア、1,3−ビス(2−ヒドロキシプロピル)チオウレア等の様に、末端にヒドロキシル基又はアミノ基を有するアルキル基で置換されたウレア化合物を原料としてマクロモノマーを合成しても良い。
【0089】
原料として使用するイソシアネートは、分子内にイソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネートであれば特に構わないが、アルキルポリイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートが好ましく、アルキルジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートが更に好ましい。又、原料として、非対称ジイソシアネート(例えば、p−イソシアネートベンジルイソシアネート等)を併用しても良い。
【0090】
アルキルポリイソシアネートとは、複数のイソシアネート基が全てアルキル鎖を介して存在している化合物であり、例えば、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0091】
芳香族ポリイソシアネートとは、複数のイソシアネート基が全て芳香族環と直接結合している化合物であり、例えば、9H−フルオレン−2,7−ジイソシアネート、9H−フルオレン−9−オン−2,7−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート、1,3−フェニレンジイソシアナート、トリレン−2,4−ジイソシアナート、トリレン−2,6−ジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−イソシアナートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5−ジイソシアナトナフタレン等が挙げられる。
【0092】
原料として使用するアミンは、分子内にアミノ基を2つ以上有するポリアミンが好ましく、ジアミンが最も好ましい。ポリアミンとして、例えば、2,7−ジアミノ−9H−フルオレン、3,6−ジアミノアクリジン、アクリフラビン、アクリジンイエロー、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、4−(フェニルジアゼニル)ベンゼン−1,3−ジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、1,8−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1,7−ジアミノヘプタン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、m−キシリレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ベンゾグアナミン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン、6−クロロ−2,4−ジアミノピリミジン、2−クロロ−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。これらのポリアミンにホスゲン、トリホスゲン又はチオホスゲンを反応させて、ポリイソシアネート又はポリイソチオシアネート(以下、ポリイソ(チオ)シアネートと称す)を合成し、マクロモノマーの原料として用いても良く、これらのポリアミンを鎖伸長剤として用いても良い。
【0093】
マクロモノマーを合成する際、アミノ基とヒドロキシル基の反応性の差を利用することにより、定序性の高いマクロモノマー合成することが出来る。このため、マクロモノマーは少なくとも1つのウレタン結合を有することが好ましい。ウレタン結合は、ヒドロキシル基とイソシアネート基との反応で得ることが出来るが、ヒドロキシル基を有する化合物としては、ポリオール、アミノアルコール、アミノフェノール、アルキルアミノフェノール等を挙げることができる。好ましくはポリオール又はアミノアルコールであり、更に好ましくはアミノアルコールである。
【0094】
ポリオールは、分子内に少なくとも2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物であり、好ましくはジオールである。ポリオールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)等を挙げることができる。
【0095】
アミノアルコールは、分子内にアミノ基とヒドロキシル基を有する化合物であり、例えば、アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ジアミノ−2−プロパノール等を挙げることができる。又、これらのヒドロキシル基を有する化合物は、鎖伸長剤として用いても良い。
【0096】
マクロモノマーは、ウレア結合、チオウレア結合、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合の他に、アミド結合、カーボネート結合等を有していても良い。
【0097】
マクロモノマーは、分子量として400〜10,000を有するが、逐次合成の段階で2量体や3量体が生成するため、分子量分布を有していても良い。分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と称す。)の測定によって得られる重量平均分子量であり、好ましくは400〜5000であり、更に好ましくは400〜3000である。分子量分布は、1.0〜6.0が好ましく、更に好ましくは1.0〜4.0であり、特に好ましくは1.0〜3.0である。
【0098】
なお、分子量及び分子量分布の測定は、下記の方法・条件等に準拠して行うことができる。
【0099】
溶媒 :30mM LiBr in N−メチルピロリドン
装置 :HLC−8220GPC(東ソー(株)製)
カラム :TSKgel SuperAWM−H×2本(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
試料濃度 :1.0g/L
注入量 :40μl
流量 :0.5ml/min
校正曲線 :標準ポリスチレン:PS−1(Polymer Laboratories社製)Mw=580〜2,560,000までの9サンプルによる校正曲線を使用した。
【0100】
本発明においては、マクロモノマーを重合することにより、圧電特性を有する樹脂組成物が得られるため、マクロモノマー末端の少なくとも一方が、イソシアナート基、活性水素を有する基、ビニル基、アクリロイル基又はメタアクリロイル基であることが好ましい。活性水素を有する基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イミノ基又はチオール基が挙げられるが、好ましくは、アミノ基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基であり、更に好ましくは、アミノ基又はヒドロキシル基である。
【0101】
マクロモノマー又は重合した樹脂組成物の配向性を向上させるために、前記一般式4〜6のように分子内に大きな双極子モーメントを有する化合物と重合させることが好ましい。
【0102】
マクロモノマー又は重合した樹脂組成物の配向性を向上させるために、マクロモノマーの部分構造として、少なくとも1つの芳香族縮環構造を有することが好ましい。芳香族縮環構造としては、例えば、ナフタレン構造、キノリン構造、アントラセン構造、フェナンスレン構造、ピレン構造、トリフェニレン構造、ペリレン構造、フルオランテン構造、インダセン構造、アセナフチレン構造、フルオレン構造、フルオレン−9−オン構造、カルバゾール構造、テトラフェニレン構造、及び、これらの構造にさらに縮環した構造(例えば、アクリジン構造、ベンゾアントラセン構造、ベンゾピレン構造、ペンタセン構造、コロネン構造、クリセン構造等)等が挙げられる。
【0103】
好ましい芳香族縮環構造としては、下記一般式(ACR1)〜(ASR4)の構造が挙げられる。
【0104】
【化10】

【0105】
一般式(ACR1)において、R11及びR12は、各々独立に水素原子、又は置換基を表し、置換基としては、例えば炭素数1〜25のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アリール基(フェニル基等)、複素環基(ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、カルバモイル基(アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、カルボキシル基、ヒドロキシル基等を挙げることができる。好ましくは、水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基又はアルキル基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基又アシルオキシ基であり、特に好ましくは水素原子又はアルキル基である。
【0106】
なお、アスタリスク(*)は、結合点を表す。
【0107】
一般式(ACR2)において、Xは、酸素原子、N−R23、C−R24を表し、R23としては、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基を表し、好ましくはヒドロキシル基又はアルコキシ基である。R24は、アルキル基、アリール基又は複素環基を表すが、好ましくはアルキル基又はアリール基であり、特に好ましくは、アルキル基である。
【0108】
なお、アスタリスク(*)は、結合点を表す。
【0109】
一般式(ACR3)において、Xは、窒素原子又はN+−R33を表し、R33は、アルキル基又はアリール基を表す。XがN+の場合は、電荷を中和するためのカウンターイオンを有していても良く、カウンターイオンとしては、Cl−、Br−、I−、BF−等が挙げられる。
【0110】
なお、アスタリスク(*)は、結合点を表す。
【0111】
一般式(ACR4)において、アスタリスク(*)は、結合点を表す。
【0112】
これらの芳香族縮環構造は、置換基を有しても良く、置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜25のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、ハロゲン化アルキル基(トリフルオロメチル基、パーフルオロオクチル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルキニル基(プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリール基(フェニル基等)、複素環基(ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アミド基(アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブタンアミド基、ヘキサンアミド基、ベンズアミド基等)、スルホニル基(メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等を挙げることができる。又これらの基は更にこれらの基で置換されていてもよい。又、置換基が複数ある場合、同じでも異なっていても良く、互いに結合して縮環構造を形成しても良い。好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミド基、アルキル基又はアリール基であり、更に好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミド基又はアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。
【0113】
以下に、好ましい芳香族縮環構造の具他例を挙げるが、本発明はこれに限定されない。
【0114】
【化11】

【0115】
【化12】

【0116】
《マクロモノマーの合成》
マクロモノマーは、活性水素を有する化合物を出発原料とし、ポリイソ(チオ)シアネートと活性水素を有する化合物を交互に縮合させていく方法、ポリイソ(チオ)シアネートを出発原料とし、活性水素を有する化合物とポリイソ(チオ)シアネートを交互に縮合させていく方法で合成することができる。
【0117】
活性水素を有する化合物は、前述で挙げた、末端にヒドロキシル基又はアミノ基を有するアルキル基で置換されたウレア化合物、ポリアミン、ポリオール、アミノアルコール、アミノフェノール、アルキルアミノフェノール等が挙げられる。出発原料としては、末端にヒドロキシル基又はアミノ基を有するアルキル基で置換されたウレア化合物又はポリアミンが好ましく、芳香族縮環構造を有するポリアミンが更に好ましい。交互に縮合させていく工程に用いる場合は、アミノアルコール又はポリオールが好ましい。
【0118】
ポリイソ(チオ)シアネートを出発原料とした場合、出発原料としては、芳香族縮環構造を有するポリイソ(チオ)シアネートが好ましい。活性水素を有する化合物と縮合させて、末端に活性水素を有する化合物合成しても良く、特開平5−115841号公報に記載の方法で、ジアミンを形成させても良い。
【0119】
又、末端に活性水素を有するマクロモノマーに、3−クロロ−1−ブテン、アリルクロライド、塩化アクリロイル又は塩化メタアクリロイル等を反応させることにより、末端にビニル基、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を有するマクロモノマーを合成することが出来る。
【0120】
ポリイソ(チオ)シアネートと活性水素を有する化合物の反応において、末端の少なくとも一方をイソシアネート基とする場合、ポリイソ(チオ)シアネートは活性水素を有する化合物に対する使用量は、1倍モル〜10倍モルが好ましく、更に好ましくは1倍モル〜5倍モルであり、更に好ましくは1〜3倍モルである。
【0121】
ポリイソ(チオ)シアネートと活性水素を有する化合物の反応において、末端の少なくとも一方を活性水素とする場合、活性水素を有する化合物はポリイソ(チオ)シアネートに対する使用量は、1倍モル〜10倍モルが好ましく、更に好ましくは1倍モル〜5倍モルであり、更に好ましくは1〜3倍モルである。
【0122】
縮合させる反応温度は、できるだけ低い方が好ましく、−40〜60℃、好ましくは−20〜30℃であり、より好ましくは−10〜10℃である。また、反応温度は、反応開始から終了まで一定の温度で行ってもよく、初期に低温で行いその後、温度上げてもよい。
【0123】
反応に用いる溶媒は、目的の樹脂組成物が高極性であることと、重合を効率的に進行させるため、高極性溶媒を用いる必要がある。例えば、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチルピロリドン)等の高極性非プロトン溶媒を選択することが好ましいが、反応基質及び目的物が良好に溶解しさえすればシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの溶媒であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
【0124】
ウレタン結合生成を効率よく進行させるため、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アルキルアミン類、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−エンなどの縮環アミン類、DBTL、テトラブチルスズ、トリブチルスズ酢酸エステルなどのアルキルスズ類等、公知のウレタン結合生成触媒を用いることができる。
【0125】
触媒の使用量は、効率のよい反応及び反応操作を考慮して、モノマー基質に対して0.1〜30mol%用いるのが好ましい。
【0126】
マクロモノマーは、縮合工程毎に単離を行っても良く、ワンポットで合成しても良いが、末端が活性水素を有する化合物を形成時に単離精製を行うことが好ましい。
【0127】
マクロモノマーの精製は、如何なる手段を用いても良いが、再沈による精製が好ましい。再沈の方法は、特に限定されないが、マクロモノマーを良溶媒に溶解した後、貧溶媒に滴下して析出させる方法が好ましい。
【0128】
ここで言う「良溶媒」とは、マクロモノマーが溶解する溶媒であれば、如何なる溶媒でも構わないが、好ましくは極性溶媒であり、具体的には、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチルピロリドン)等の高極性非プロトン溶媒を挙げることができる。
【0129】
又、「貧溶媒」とは、マクロモノマーが溶解しない溶媒であれば、如何なる溶媒でも構わないが、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を挙げることができる。
【0130】
以下に、マクロモノマーの具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されない。
【0131】
【化13】

【0132】
【化14】

【0133】
【化15】

【0134】
【化16】

【0135】
【化17】

【0136】
【化18】

【0137】
【化19】

【0138】
【化20】

【0139】
【化21】

【0140】
【化22】

【0141】
【化23】

【0142】
【化24】

【0143】
【化25】

【0144】
【化26】

【0145】
【化27】

【0146】
【化28】

【0147】
【化29】

【0148】
《マクロモノマーの合成例》
〔合成例1:マクロモノマー(M−8)の合成〕
窒素雰囲気下、9H−フルオレン−2,7−ジイソシアネート 85.27gをTHF850mlに溶解し、0℃で2−クロロ−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン 5.0gをTHF50mlに溶解し、ゆっくりと滴下した。滴下終了後、0℃で1時間攪拌した後、室温で更に2時間攪拌を行った。反応溶液中の溶媒を減圧濃縮で2/3留去した後、酢酸エチル−ヘプタンの混合溶媒を用いて再沈し、上澄みをデカントで除去した後、減圧乾燥を行うことにより、マクロモノマー(M−8)を20.0g得た。1H−NMRにより、目的物であることを確認した。
【0149】
〔合成例2:マクロモノマー(M−15)の合成〕
ジエチルアミン40gとTHF50mlを混合し、THF50mlに溶解した9H−フルオレン−2,7−ジイソシアネート 20gを室温で滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌した後、析出物をろ取し、THFで洗浄を行った。
【0150】
続いて、得られた化合物 30gと2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン 180gを混合し、120℃で加熱を行った。留出物を除去し、留出物が無くなったところで、減圧条件下で留出物が無くなるまで減圧留去を行った。得られた残渣をTHFで洗浄し、十分に乾燥させることにより、1,1′−(9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(3−(3−アミノ−2,2−ジメチルプロピル)ウレア)を得た。
【0151】
窒素雰囲気下、p−イソシアネートベンジルイソシアネート 7gをジメチルスルホキシド70mlに溶解し、反応溶液を0℃に冷却した。ジメチルスルホキシド30mlに溶解した1,1′−(9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(3−(3−アミノ−2,2−ジメチルプロピル)ウレア) 3gをゆっくりと滴下し、滴下終了後、0℃で1時間攪拌を行った。徐々に温度を上昇させ、室温で1時間反応を行った後、酢酸エチルを用いて再沈を行った。上澄みをデカントで除去した後、減圧乾燥を行うことにより、マクロモノマー(M−15)を6.5g得た。GPC測定による重量平均分子量は810であり、分子量分布は1.6であった。
【0152】
〔合成例3:マクロモノマー(M−31)の合成〕
窒素雰囲気下、9H−フルオレン−2,7−ジイソシアネート5.0gをTHF50mlに溶解し、0℃でTHF30mlに溶解した3−アミノプロパノール3.2gをゆっくりと滴下した。滴下終了後、0℃で1時間攪拌し、溶液(A)を得た。
【0153】
1,3−フェニレンジイソシアネート13.0gをTHF65mlに溶解し、反応溶液を70℃に加温しながら、溶液(A)を滴下した。滴下終了後、70℃で5時間攪拌した後、反応液の溶媒量を減圧下で3/2まで濃縮した。残渣に酢酸エチル−ヘプタンの混合液を加えて攪拌し、デカントで上澄みを除去し、減圧乾燥させることにより、マクロモノマー(M−31)を12.5g得た。GPC測定による重量平均分子量は750であり、分子量分布は2.0であった。
【0154】
〔合成例4:マクロモノマー(M−35)の合成〕
窒素雰囲気下、9H−フルオレン−2,7−ジイソシアネート5.0gをTHF50mlに溶解し、室温でTHF30mlに溶解した2−(2−アミノエトキシ)エタノール10.0gをゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温で3時間攪拌した。残渣を濃縮後、再結晶を行うことにより、マクロモノマー(M−35)を9.2g得た。1H−NMRにより、目的物であることを確認した。
【0155】
本発明の有機圧電材料の構成材料としての有機高分子材料(以下「高分子材料」ともいう。)としては、従来、圧電材料として用いられている種々の有機高分子材料をも用いることができる。すなわち、本発明の有機圧電材料が、ポリフッ化ビニリデンを主成分とする高分子材料又はポリフッ化ビニリデンを主成分とする高分子材料を含有する複合材料により形成される態様も好ましい。
【0156】
例えば、典型的な材料として、良好な圧電特性、入手容易性等の観点から、フッ化ビニリデンを主成分とする有機高分子材料を用いることができる。
【0157】
具体的には、大きい双極子モーメントをもつCF基を有する、ポリフッ化ビニリデンの単独重合体又はフッ化ビニリデンを主成分とする共重合体であることが好ましい。
【0158】
なお、共重合体における第二組成分としては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロパン、クロロフルオロエチレン等を用いることができる。
【0159】
例えば、フッ化ビニリデン/3フッ化エチレン共重合体の場合、共重合比によって厚さ方向の電気機械結合定数(圧電効果)が変化すので、前者の共重合比が60〜99モル%であること、更には、70〜95モル%であることが好ましい。
【0160】
なお、フッ化ビニリデンを70〜95モル%にして、パーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロアルコキシエチレン、パーフルオロヘキサエチレン等を5〜30モル%にしたポリマーは、送信用無機圧電素子と受信用有機圧電素子との組み合わせにおいて、送信基本波を抑制して、高調波受信の感度を高めることができる。
【0161】
上記高分子圧電材料は、セラミックスからなる無機圧電材料に比べ、薄膜化できることからより高周波の送受信に対応した振動子にすることができる点が特徴である。
【0162】
《溶媒》
本発明で重合時に使用し得る溶媒としては、一般的に高分子材料合成に使用されている溶媒が使用でき、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、ヘキサンなどを挙げることができるがこの限りではない。
【0163】
(有機圧電材料の製造方法)
本発明の有機圧電材料は、当該技術分野において従来公知の種々の方法を用いてできるが、本発明に係る微粒子を含む層を流延支持体に直接接するように流延することが、接着性の点で好ましいことが、我々の研究で明らかになった。以下、この流延による方法について説明をする。
【0164】
(製造工程)
本発明の有機圧電材料の製造方法を図1で示される工程図を参照しながら説明する。
【0165】
図1は、本発明の有機圧電材料の製造装置の一例を示す工程図である。有機圧電材料有機圧電材料液を調液する有機圧電材料液タンク1には、有機圧電材料液1aが投入されており、微粒子添加液タンク2には、微粒子添加液2aが投入されている。有機圧電材料液1aは送液ポンプ4b、4cにより、インラインミキサー5a、5bまで送られ、微粒子添加液2aはポンプ4aによってインラインミキサー5aまで送られる。インラインミキサー5aで有機圧電材料液1aと微粒子添加液2aは充分混合され、スリットダイ6のスリットに送られる。
【0166】
同様に、インラインミキサー5bで、有機圧電材料液1aと添加剤液3aは充分混合され、スリットダイ6のスリットに送られる。スリットダイ6から上下表面の層は、有機圧電材料液1aと微粒子添加液2aの混合液で構成され、真ん中の層は、有機圧電材料液1aと添加剤液3aの混合液の状態で流延口から共流延され、ドラム7より連続的に移動する流延ベルト8上に流延される。流延された3層からなる有機圧電材料液層は、乾燥後、有機圧電材料の積層フィルム10として、ローラ9により流延ベルトから、剥離される。
【0167】
以下、本発明の有機圧電材料の製造方法に係る共流延の方法について、更に詳細な説明をする。
【0168】
「共流延」とは、異なったダイを通じて2層または3層構成にする逐次多層流延方法、2つまたは3つのスリットを有するダイ内で合流させ2層または3層構成にする同時多層流延方法、逐次多層流延と同時多層流延を組み合わせた多層流延方法のいずれであっても良い。
【0169】
本発明において、「有機圧電材料が溶解している液」とは、有機圧電材料が溶剤(溶媒)に溶解している状態であり、前記有機圧電材料液には、硬膜剤、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤を加えてもよく、勿論、必要によりこの他の添加剤を加えることもできる。有機圧電材料液中の固形分濃度としては、5〜30質量%が好ましく、更に好ましくは、10〜25質量%である。
【0170】
本発明で用いられる溶剤は、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、更に好ましくは、良溶剤と貧溶剤の混合比率は良溶剤が70〜99質量%であり、貧溶剤が30〜1質量%である。本発明に用いられる「良溶剤」及び「貧溶剤」とは、使用する有機圧電材料を単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。
【0171】
そのため、有機圧電材料の種類、構造により良溶剤、貧溶剤が変わる。
【0172】
本発明に用いられる良溶剤としては、メチルエチルケトンの様な溶媒やジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0173】
また、本発明に用いられる貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
【0174】
有機圧電材料液を調製する時の、有機圧電材料の溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、好ましい方法としては、有機圧電材料を貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させ、さらに良溶剤と混合する方法が好ましく用いられる。このとき、加圧下で溶剤の常温での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、撹拌しながら溶解する方法を、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するために用いても良い。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えば、ジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0175】
溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば40℃以上、50〜100℃の範囲に設定するのが好適である。又、圧力は設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
【0176】
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。このときの冷却温度は常温まで冷却してもよいが、沸点より5〜10℃低い温度まで冷却し、その温度のままキャスティングを行うほうが、有機圧電材料液の粘度を低減できるためより好ましい。
【0177】
例えば、本発明に係る2層以上の有機圧電材料の製造においては、有機圧電材料を溶剤に溶解させた有機圧電材料液と微粒子と少量の有機圧電材料が溶解している溶液とをインラインミキサーで混合、分散して作製した有機圧電材料液Aと有機圧電材料が溶解している有機圧電材料液B(必要に応じて、別途、インラインで架橋剤等、その他の添加剤を添加される。)とを複数のスリットを有するダイスリットを用いて、微粒子を含有している有機圧電材料液Aが直接、流延ベルト上に流延されるようにして、共流延(キャスト工程)し、次いで、加熱して溶剤の一部を除去(流延ベルト上の乾燥工程)した後、流延ベルトから剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)することにより、本発明の2層以上の有機圧電材料が得られる。
【0178】
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が好ましく用いられる。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、0〜60℃の支持体上に流延するほうが、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため好ましく、5〜40℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。剥離限界時間とは透明で平面性の良好なフィルムを連続的に得られる流延速度の限界において、流延された有機圧電材料液が支持体上にある時間をいう。剥離限界時間は短い方が生産性に優れていて好ましい。
【0179】
流延(キャスト)される側の支持体の表面温度は、10〜80℃、溶液の温度は、15〜60℃、更に溶液の温度を支持体の温度より0℃以上高くするのが好ましく、5℃以上に設定するのが更に好ましい。溶液温度、支持体温度は、高いほど溶媒の乾燥速度が速くできるので好ましいが、あまり高すぎると発泡したり、平面性が劣化したりする場合がある。
【0180】
支持体の温度の更に好ましい範囲は、20〜40℃、溶液温度の更に好ましい範囲は、35〜45℃である。また、剥離する際の支持体温度を10〜40℃、更に好ましくは、15〜30℃にすることで有機圧電材料と支持体との密着力を低減できるので、好ましい。製造時の有機圧電材料が良好な平面性を示すためには、支持体から剥離する際の残留溶媒量は、10〜80%が好ましく、更に好ましくは、20〜40%または60〜80%であり、特に好ましくは、20〜30%である。
【0181】
本願においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
【0182】
残留溶媒量=(加熱処理前質量−加熱処理後の質量)/(加熱処理後質量)×100%
尚、残留溶媒量を測定する際の、加熱処理とは、有機圧電材料を100から200℃のいずれかの温度で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0183】
支持体と有機圧電材料を剥離する際の剥離張力は、通常20〜25kg/mで剥離が行われるが、薄膜である本発明の有機圧電材料は、剥離の際にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましく、更に好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。また、有機圧電材料の乾燥工程においては、支持体より剥離した有機圧電材料を更に乾燥し、残留溶媒量を3質量%以下にすることが好ましい、更に好ましくは、0.1質量%以下である。
【0184】
乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式で有機圧電材料を搬送しながら乾燥する方式が採られる。有機圧電材料としては、ピンテンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。特に支持体より剥離した直後の残留溶剤量の多いところで幅保持を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため特に好ましい。乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は30〜200℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、50〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
【0185】
(有機圧電膜)
本発明に係る有機圧電膜は、上記圧電材料を用いて、溶融法、流延法など従来公知の種々の方法で作製することができる。
【0186】
本発明においては、有機圧電膜の作製方法として、基本的には、上記高分子材料等の溶液を基板上に塗布し、乾燥して得る方法、又は上記高分子材料の原料化合物を用いて従来公知の溶液重合塗布法などにより高分子膜を形成する方法を採用することができる。
【0187】
溶液重合塗布法の具体的方法・条件については、従来公知の種々の方法等に従って行うことができる。例えば、原料の混合溶液を基板上に塗布し、減圧条件下である程度乾燥後(溶媒を除去した後)、加熱し、熱重合し、その後又は同時に分極処理をして有機圧電膜を形成する方法が好ましい。
【0188】
なお、圧電特性を上げるには、分子配列を揃える処理を加えることが有用である。手段としては、延伸製膜、分極処理などが挙げられる。
【0189】
延伸製膜の方法については、種々の公知の方法を採用することができる。例えば、上記有機高分子材料をエチルメチルケトン(MEK)などの有機溶媒に溶解した液をガラス板などの基板上に流延し、常温にて溶媒を乾燥させ、所望の厚さのフィルムを得て、このフィルムを室温で所定の倍率の長さに延伸する。当該延伸は、所定形状の有機圧電膜が破壊されない程度に一軸・ニ軸方向に延伸することができる。延伸倍率は2〜10倍、好ましくは2〜6倍である。
【0190】
(分極処理)
本発明に係る分極処理における分極処理方法としては、従来公知の直流電圧印加処理、交流電圧印加処理又はコロナ放電処理等の方法が適用され得る。
【0191】
例えば、コロナ放電処理法による場合には、コロナ放電処理は、市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して処理することができる。
【0192】
放電条件は、機器や処理環境により異なるので適宜条件を選択することが好ましい。高電圧電源の電圧としては−1〜−20kV、電流としては1〜80mA、電極間距離としては、1〜10cmが好ましく、印加電圧は、0.5〜2.0MV/mであることが好ましい。
【0193】
電極としては、従来から用いられている針状電極、線状電極(ワイヤー電極)、網状電極が好ましいが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0194】
本発明の有機圧電材料は、コロナ放電により分極処理を施す場合においては、当該有機圧電材料の第1の面上に接するように平面電極を設置し、かつ前記第1の面に対向する第2の面側に円柱状のコロナ放電用電極を設置して、コロナ放電による分極処理が施されることが好ましい。
【0195】
当該分極処理は、水・酸素に起因する材料表面の酸化を防ぎ、圧電性を損なわないため等の理由から、窒素もしくは希ガス(ヘリウム、アルゴン等)気流下、質量絶対湿度が0.004以下の環境中で施される態様が好ましい。特に窒素気流下が好ましい。
【0196】
また、前記第1面上に接するように設置された平面電極を含む有機圧電材料、もしくは第2の面側に設けられた円柱状のコロナ放電用電極の少なくとも一方が、一定の速度で移動しながらコロナ放電が施されることが好ましい。
【0197】
なお、本願において、「質量絶対湿度」とは、乾き空気の質量mDA[kg]に対して湿り空気中に含まれる水蒸気(water vapor)の質量がm[kg]であるとき、下記式で定義される比SH(Specific humidity)をいい、単位は[kg/kg(DA)]で表される(DAはdry air の略)。但し、本願においては、当該単位を省略して表現する。
【0198】
(式):SH=m/mDA[kg/kg(DA)]
ここで、水蒸気を含む空気を「湿り空気」といい、湿り空気から水蒸気を除いた空気を「乾き空気(dry air)」という。
【0199】
なお、窒素もしくは希ガス(ヘリウム、アルゴン等)気流下での質量絶対湿度の定義は、上記の空気の場合に準じ、乾き気体の質量mDG[kg]に対して湿り気体に含まれる水蒸気の質量がm[kg]であるとき、上記式に準じて定義される比SHをいい、単位は[kg/kg(DG)]で表される(DGはdry gasの略)。但し、本願においては、当該単位を省略して表現する。
【0200】
また、「設置」とは、予め別途作製された既存の電極を有機圧電材料面上に接するように設け置くこと、又は電極構成材料を有機圧電材料面上に蒸着法等により付着させ、当該面上において電極を形成することをいう。
【0201】
なお、本発明の有機圧電材料により形成される有機圧電膜は、その形成過程において電場中で形成されること、すなわち、当該形成過程において分極処理を施すことが好ましい。このとき磁場を併用しても良い。
【0202】
本発明に係るコロナ放電処理法では、市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して処理することができる。
【0203】
放電条件は、機器や処理環境により異なるので適宜条件を選択することが好ましいが、高電圧電源の電圧としては正電圧・負電圧ともに1〜20kV、電流としては1〜80mA、電極間距離としては、0.5〜10cmが好ましく、印加電界は、0.5〜2.0MV/mであることが好ましい。分極処理中の有機圧電材料もしくは有機圧電膜は、50〜250℃が好ましく、70〜180℃がより好ましい。
【0204】
コロナ放電に使用する電極としては、分極処理を均一に施すために、上記のように円柱状の電極を用いることを要する。
【0205】
なお、本願において、円柱状の電極の円の直径は、0.1mm〜2cmであることが好ましい。当該円柱の長さは、分極処理を施す有機圧電材料の大きさに応じて適切な長さにすることが好ましい。例えば、一般的には、分極処理を均一に施す観点から、5cm以下であることが好ましい。
【0206】
これらの電極は、コロナ放電を行う部分では張っていることが好ましく、それらの両端に一定の加重をかける、もしくは一定の加重をかけた状態で固定するなどの方法で実現できる。また、これらの電極の構成材料としては、一般的な金属材料が使用可能だが、特に金、銀、銅が好ましい。
【0207】
前記第1の面上に接するように設置する平面電極は、均一な分極処理を行うためには有機圧電材料に均一に密着していることが好ましい。すなわち平面電極が施された基板上に有機高分子膜または有機圧電膜を形成した後にコロナ放電を行うことが好ましい。
【0208】
なお、本発明に係る超音波振動子の製造方法としては、有機圧電(体)膜の両面に設置される電極の形成前、片側のみ電極形成後又は両側に電極形成後のいずれかで分極処理する態様の製造方法であることが好ましい。また、当該分極処理が、電圧印加処理であることが好ましい。
【0209】
(基板)
基板としては、本発明に係る有機圧電体膜の用途・使用方法等により基板の選択は異なる。本発明においては、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマーのようなプラスチック板又はフィルムを用いることができる。また、これらの素材の表面をアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素等で覆ったものでもよい。またアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素単体、希土類のハロゲン化物の単結晶の板又はフィルムでもかまわない。また基板自体使用しないこともある。
【0210】
(超音波振動子)
本発明に係る超音波振動子は、本発明の有機圧電材料を用いて形成した有機圧電膜を用いたことを特徴とする。当該超音波振動子は、超音波送信用振動子と超音波送信用振動子を具備する超音波医用画像診断装置用探触子(プローブ)に用いられる超音波受信用振動子とすることが好ましい。
【0211】
なお、一般に、超音波振動子は膜状の圧電材料からなる層(又は膜)(「圧電膜」、「圧電体膜」、又は「圧電体層」ともいう。)を挟んで一対の電極を配設して構成され、複数の振動子を例えば1次元配列して超音波探触子が構成される。
【0212】
そして、複数の振動子が配列された長軸方向の所定数の振動子を口径として設定し、その口径に属する複数の振動子を駆動して被検体内の計測部位に超音波ビームを収束させて照射すると共に、その口径に属する複数の振動子により被検体から発する超音波の反射エコー等を受信して電気信号に変換する機能を有している。
【0213】
以下、本発明に係る超音波受信用振動子と超音波送信用振動子それぞれについて詳細に説明する。
【0214】
〈超音波受信用振動子〉
本発明に係る超音波受信用振動子は、超音波医用画像診断装置用探触子に用いられる超音波受信用圧電材料を有する振動子であって、それを構成する圧電材料が、本発明の有機圧電材料を用いて形成した有機圧電膜を用いた態様であることが好ましい。
【0215】
なお、超音波受信用振動子に用いる有機圧電材料ないし有機圧電膜は、厚み共振周波数における比誘電率が10〜50であることが好ましい。比誘電率の調整は、当該有機圧電材料を構成する化合物が有する前記置換基R、CF基、CN基のような極性官能基の数量、組成、重合度等の調整、及び上記の分極処理によって行うことができる。
【0216】
なお、本発明の受信用振動子を構成する有機圧電体膜は、複数の高分子材料を積層させた構成とすることもできる。この場合、積層する高分子材料としては、上記の高分子材料の他に下記の比誘電率の比較的低い高分子材料を併用することができる。
【0217】
なお、下記の例示において、括弧内の数値は、高分子材料(樹脂)の比誘電率を示す。
【0218】
例えば、メタクリル酸メチル樹脂(3.0)、アクリルニトリル樹脂(4.0)、アセテート樹脂(3.4)、アニリン樹脂(3.5)、アニリンホルムアルデヒド樹脂(4.0)、アミノアルキル樹脂(4.0)、アルキッド樹脂(5.0)、ナイロン−6−6(3.4)、エチレン樹脂(2.2)、エポキシ樹脂(2.5)、塩化ビニル樹脂(3.3)、塩化ビニリデン樹脂(3.0)、尿素ホルムアルデヒド樹脂(7.0)、ポリアセタール樹脂(3.6)、ポリウレタン(5.0)、ポリエステル樹脂(2.8)、ポリエチレン(低圧)(2.3)、ポリエチレンテレフタレート(2.9)、ポリカーポネート樹脂(2.9)、メラミン樹脂(5.1)、メラミンホルムアルデヒド樹脂(8.0)、酢酸セルロース(3.2)、酢酸ビニル樹脂(2.7)、スチレン樹脂(2.3)、スチレンブタジェンゴム(3.0)、スチロール樹脂(2.4)、フッ化エチレン樹脂(2.0)等を用いることができる。
【0219】
なお、上記比誘電率の低い高分子材料は、圧電特性を調整するため、或いは有機圧電体膜の物理的強度を付与するため等の種々の目的に応じて適切なものを選択することが好ましい。
【0220】
〈超音波送信用振動子〉
本発明に係る超音波送信用振動子は、上記受信用圧電材料を有する振動子との関係で適切な比誘電率を有する圧電体材料により構成されることが好ましい。また、耐熱性・耐電圧性に優れた圧電材料を用いることが好ましい。
【0221】
超音波送信用振動子構成用材料としては、公知の種々の有機圧電材料及び無機圧電材料を用いることができる。
【0222】
有機圧電材料としては、上記超音波受信用振動子構成用有機圧電材料と同様の高分子材料を用いることできる。
【0223】
無機材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸タンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O]、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、又はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)等を用いることができる。尚、PZTはPb(Zr1−nTi)O(0.47≦n≦1)が好ましい。
【0224】
〈電極〉
本発明に係る圧電(体)振動子は、圧電体膜(層)の両面上又は片面上に電極を形成し、その圧電体膜を分極処理することによって作製されるものである。有機圧電材料を使用した超音波受信用振動子を作製する際には、分極処理を行う際に使用した前記第1面の電極をそのまま使用してもよい。当該電極は、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などを主体とした電極材料を用いて形成する。
【0225】
電極の形成に際しては、まず、チタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成した後、上記金属元素を主体とする金属及びそれらの合金からなる金属材料、さらには必要に応じ一部絶縁材料をスパッタ法、蒸着法その他の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成する。これらの電極形成はスパッタ法以外でも微粉末の金属粉末と低融点ガラスを混合した導電ペーストをスクリーン印刷やディッピング法、溶射法で形成することもできる。
【0226】
さらに、圧電体膜の両面に形成した電極間に、所定の電圧を供給し、圧電体膜を分極することで圧電素子が得られる。
【0227】
(超音波探触子)
本発明に係る超音波探触子は、超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波医用画像診断装置用探触子(プローブ)であり、受信用振動子として、本発明に係る上記超音波受信用振動子を用いることを特徴とする。
【0228】
本発明においては、超音波の送受信の両方をひとつの振動子で担ってもよいが、より好ましくは、送信用と受信用で振動子は分けて探触子内に構成される。
【0229】
送信用振動子を構成する圧電材料としては、従来公知のセラミックス無機圧電材料でも、有機圧電材料でもよい。
【0230】
本発明に係る超音波探触子においては、送信用振動子の上もしくは並列に本発明の超音波受信用振動子を配置することができる。
【0231】
より好ましい実施形態としては、超音波送信用振動子の上に本発明の超音波受信用振動子を積層する構造が良く、その際には、本発明の超音波受信用振動子は他の高分子材料(支持体として上記の比誘電率が比較的低い高分子(樹脂)フィルム、例えば、ポリエステルフィルム)の上に添合した形で送信用振動子の上に積層してもよい。その際の受信用振動子と他の高分子材料と合わせた膜厚は、探触子の設計上好ましい受信周波数帯域に合わせることが好ましい。実用的な超音波医用画像診断装置および生体情報収集に現実的な周波数帯から鑑みると、その膜厚は、40〜150μmであることが好ましい。
【0232】
なお、当該探触子には、バッキング層、音響整合層、音響レンズなどを設けても良い。また、多数の圧電材料を有する振動子を2次元に並べた探触子とすることもできる。複数の2次元配列した探触子を順次走査して、画像化するスキャナーとして構成させることもできる。
【0233】
(超音波医用画像診断装置)
本発明に係る上記超音波探触子は、種々の態様の超音波診断装置に用いることができる。例えば、図2及び図3に示すような超音波医用画像診断装置において好適に使用することができる。
【0234】
図2は、本発明の実施形態の超音波医用画像診断装置の主要部の構成を示す概念図である。この超音波医用画像診断装置は、患者などの被検体に対して超音波を送信し、被検体で反射した超音波をエコー信号として受信する圧電体振動子が配列されている超音波探触子(プローブ)を備えている。また当該超音波探触子に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、当該超音波探触子の各圧電体振動子が受信したエコー信号を受信する送受信回路と、送受信回路の送受信制御を行う送受信制御回路を備えている。
【0235】
更に、送受信回路が受信したエコー信号を被検体の超音波画像データに変換する画像データ変換回路を備えている。また当該画像データ変換回路によって変換された超音波画像データでモニタを制御して表示する表示制御回路と、超音波医用画像診断装置全体の制御を行う制御回路を備えている。
【0236】
制御回路には、送受信制御回路、画像データ変換回路、表示制御回路が接続されており、制御回路はこれら各部の動作を制御している。そして、超音波探触子の各圧電体振動子に電気信号を印加して被検体に対して超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波探触子で受信する。
【0237】
なお、上記送受信回路が「電気信号を発生する手段」に相当し、画像データ変換回路が「画像処理手段」に相当する。
【0238】
上記のような超音波診断装置によれば、本発明の圧電特性及び耐熱性に優れかつ高周波・広帯域に適した超音波受信用振動子の特徴を生かして、従来技術と比較して画質とその再現・安定性が向上した超音波像を得ることができる。
【実施例】
【0239】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0240】
実施例1
(有機圧電材料1〜7の調製)
0.5Lの四つ口セパラブルフラスコに、滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却管を付し、モノマーとして4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート25.0gと脱水した0℃のテトラヒドロフラン100gを添加し溶解させた(グランド)。またN,N′−ジメチルヘキサメチレンジアミン17.2gと脱水した0℃のテトラヒドロフラン100gを混合、溶解し、氷浴下、2g/分の速度でグランドに滴下し、滴下後から続けて1時間攪拌した。その後殿物を濾取し、0℃に調温したアセトンで洗浄した。濾物を減圧乾燥して有機圧電材料1を30.4g得た。他の有機圧電材料2〜7についても表1に記載の材料を用いて、有機圧電材料1と同様に作製した。
【0241】
(比較例1〜3の調製)
0.5Lの四つ口セパラブルフラスコに、滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却管を付し、モノマーとして4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート25.0gと脱水した0℃のテトラヒドロフラン100gを添加し溶解させた(グランド)。また4,4′−メチレンジアニリン20.0gと脱水した0℃のテトラヒドロフラン100gを混合、溶解し、氷浴下、2g/分の速度でグランドに滴下し、滴下後から続けて1時間攪拌した。その後殿物を濾取し、0℃に調温したアセトンで洗浄した。濾物を減圧乾燥して比較例1を38.7g得た。他の比較例2〜3についても表1に記載の材料を用いて、比較例1と同様に作製した。
【0242】
(作製した有機圧電材料の溶解度評価)
作製した有機圧電材料1〜7、比較例1〜3を用いて、N−メチルピロリドン100gに対する溶解度を評価した。25℃に調温、攪拌したN−メチルピロリドンに材料を0.5gずつ添加し、溶解したならさらに0.5g追加、未溶解ならそこで添加をやめるという方法で、各有機圧電材料1〜7、及び比較例1〜3、それぞれを評価した。
【0243】
上記評価結果は表1に示した。
【0244】
表1に示した結果から明らかなように、本発明に係る実施例では、溶解性が比較例に比べ優れていることが分かる。
【0245】
実施例2
(有機圧電膜1の作製)
実施例1で作製した有機圧電材料1をNMPを溶媒として質量比で10%の溶液を調製し、キャスト後、150℃にて2時間減圧乾燥し、膜厚が40μmの有機圧電膜1を作製した。作製した有機圧電膜1を長さ50mm、幅5mmにカットし、テンシロンRTA−100型(オリエンテック社製)を用い、クロスヘッド速度50mm/min、室温で測定し、弾性率を求めた。その他の有機圧電材料2〜7、比較例1〜3も同様に、有機圧電膜として、それぞれ評価した。
【0246】
上記評価結果は表1に示した。
【0247】
表1に示した結果から明らかなように、本発明に係る実施例では、弾性率が比較例に比べ小さく、柔軟性に優れていることが分かる。
【0248】
実施例3
(超音波振動子1の作製)
実施例2で作製した有機圧電膜1を、室温で3倍に延伸した後、延伸した長さを保ったまま、120℃まで5℃/分の割合で昇温し、5分間停滞した後、自然冷却し、25℃にした。その後、得られた膜の両面に、蒸着によりアルミニウム電極を施し、高圧電源装置 HARb−20R60(松定プレシジョン(株)製)と針状電極を用い、2.0MV/mの電界でコロナ放電分極処理を行い、有機圧電膜1を用いた超音波振動子を作製した。また有機圧電膜2〜7についても同様に超音波振動子2〜7を作製した。
【0249】
(比較振動子1の作製)
実施例2で作製した比較膜1を、180℃まで5℃/分の割合で昇温し、5分間停滞した後、自然冷却し、25℃にした。その後、得られた膜の両面に、蒸着によりアルミニウム電極を施し、高圧電源装置 HARb−20R60(松定プレシジョン(株)製)と針状電極を用い、2.0MV/mの電界でコロナ放電分極処理を行い、比較膜1を用いた比較振動子1を作製した。また比較膜2、3についても同様に比較振動子2、3を作製した。
【0250】
(電気機械結合定数の評価)
得られた超音波振動子1〜7、比較振動子1〜3にアルミ箔で作製したリード線を接着し、4294A PRECISION IMPEDANCE ANALYZER(Agilent社製)を使用し、電気機械結合定数を求めた。
【0251】
上記評価結果は表1に示した。
【0252】
表1に示した結果から明らかなように、本発明に係る実施例では、電気機械結合定数が比較例に比べ大きく、電気機械変換効率が大きいことが分かる。
【0253】
実施例4
《作製した超音波振動子の圧電性評価》
得られた超音波振動子1〜7、比較振動子1〜3の評価は、Nano−R2/I2クローズドループ・リニアスキャナ搭載多機能AFM(PACIFIC NANOTECHNOLOGY社製)とFCE−1型強誘電体特性評価システム(東陽テクニカ社製)で圧電性を測定した。
【0254】
上記評価結果を表1に示す。
【0255】
【表1】

【0256】
表1に示した結果から明らかなように、本発明に係る実施例では、圧電性が比較例に比べ優れていることが分かる。
【0257】
実施例5
(探触子の作製と評価)
〈送信用圧電材料の作製〉
成分原料であるCaCO、La、BiとTiO、及び副成分原料であるMnOを準備し、成分原料については、成分の最終組成が(Ca0.97La0.03)Bi4.01Ti15となるように秤量した。次に、純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて8時間混合し、十分に乾燥を行い、混合粉体を得た。得られた混合粉体を、仮成形し、空気中、800℃で2時間仮焼を行い仮焼物を作製した。次に、得られた仮焼物に純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて微粉砕を行い、乾燥することにより圧電セラミックス原料粉末を作製した。微粉砕においては、微粉砕を行う時間および粉砕条件を変えることにより、それぞれ粒子径100nmの圧電セラミックス原料粉末を得た。それぞれ粒子径の異なる各圧電セラミックス原料粉末にバインダーとして純水を6質量%添加し、プレス成形して、厚み100μmの板状仮成形体とし、この板状仮成形体を真空パックした後、235MPaの圧力でプレスにより成形した。次に、上記の成形体を焼成した。最終焼結体の厚さは20μmの焼結体を得た。なお、焼成温度は、それぞれ1100℃であった。1.5×Ec(MV/m)以上の電界を1分間印加して分極処理を施した。
【0258】
〈受信用積層振動子の作製〉
前記実施例1において作製した有機圧電体膜1と厚さ50μmのポリエステルフィルムをエポキシ系接着剤にて貼り合わせた積層振動子を作製した。その後、上記と同様に分極処理をした。
【0259】
次に、常法に従って、上記の送信用圧電材料の上に受信用積層振動子を積層し、かつバッキング層と音響整合層を設置し超音波探触子を試作した。
【0260】
なお、比較例として、上記受信用積層振動子の代わりに、ポリフッ化ビニリデン共重合体のフィルム(有機圧電体膜)のみを用いた受信用積層振動子を上記受信用積層振動子に積層した以外、上記超音波探触子と同様の探触子を作製した。
【0261】
次いで、上記2種の超音波探触子について受信感度と絶縁破壊強度の測定をして評価した。
【0262】
なお、受信感度については、5MHzの基本周波数fを発信させ、受信2次高調波fとして10MHz、3次高調波として15MHz、4次高調波として20MHzの受信相対感度を求めた。受信相対感度は、ソノーラメディカルシステム社(Sonora Medical System,Inc:2021Miller Drive Longmont,Colorado(0501 USA))の音響強度測定システムModel805(1〜50MHz)を使用した。
【0263】
絶縁破壊強度の測定は、負荷電力Pを5倍にして、10時間試験した後、負荷電力を基準に戻して、相対受信感度を評価した。感度の低下が負荷試験前の1%以内のときを良、1%を超え10%未満を可、10%以上を不良として評価した。
【0264】
上記評価において、本発明に係る受信用圧電(体)積層振動子を具備した探触子は、比較例に対して約1.2倍の相対受信感度を有しており、かつ絶縁破壊強度は良好であることを確認した。すなわち、本発明の超音波受信用振動子は、図1に示したような超音波医用画像診断装置に用いる探触子にも好適に使用できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0265】
【図1】本発明の有機圧電材料の製造装置の一例を示す工程図
【図2】超音波医用画像診断装置の主要部の構成を示す概念図
【図3】超音波医用画像診断装置の外観構成図
【符号の説明】
【0266】
1 有機圧電材料液タンク
1a 有機圧電材料液
2 微粒子添加液タンク
2a 微粒子添加液
3 添加剤液タンク
3a 添加剤液
4a、4b、4c、4d ポンプ
5a、5b インラインミキサー
6 スリットダイ
7 ドラム
8 流延ベルト
9 ローラ
10 有機圧電材料
P1 受信用圧電材料(膜)
P2 支持体
P3 送信用圧電材料(膜)
P4 バッキング層
P5 電極
P6 音響レンズ
S 超音波医用画像診断装置
S1 超音波医用画像診断装置の本体
S2 超音波探触子
S3 操作入力部
S4 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(UP1)で表される構造を有する有機高分子材料を含有する有機圧電材料であって、電気機械結合定数が0.2以上であることを特徴とする有機圧電材料。
【化1】

(式中、R及びRは、各々独立に、アルキレン基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表すが、RとRが同時に水素原子となる場合は除く。)
【請求項2】
前記一般式(UP1)が、下記一般式(UP2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の有機圧電材料。
【化2】

(式中、R及びRは、各々独立に、アルキレン基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Rは、メチル基、エチル基、又はプロピル基である。)
【請求項3】
前記有機圧電材料が、分子量が400〜10,000であるマクロモノマーを原料として形成された有機高分子材料を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機圧電材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機圧電材料を用いて形成されたことを特徴とする有機圧電膜。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機圧電材料を用いて形成された有機圧電膜を具備した超音波振動子であって、当該有機圧電膜は、その両面に電極を有し、かつ当該有機圧電膜の両面に設置される電極の形成前、片側のみ電極形成後、又は両側に電極形成後のいずれかで、分極処理されて製造された有機圧電膜であることを特徴とする超音波振動子。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波振動子であって、前記分極処理が、電圧印加処理又はコロナ放電処理であることを特徴とする超音波振動子。
【請求項7】
超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波探触子であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機圧電材料により形成された有機圧電膜を具備した超音波振動子を超音波受信用振動子として用いたことを特徴とする超音波探触子。
【請求項8】
電気信号を発生する手段と、前記電気信号を受けて超音波を被検体に向けて送信し、前記被検体から受けた反射波に応じた受信信号を生成する複数の振動子が配置された超音波探触子と、前記超音波探触子が生成した前記受信信号に応じて、前記被検体の画像を生成する画像処理手段とを有する超音波医用画像診断装置において、前記超音波探触子が、請求項7に記載の超音波探触子であることを特徴とする超音波医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−18726(P2010−18726A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181204(P2008−181204)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】