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有機塩素化合物の測定方法
説明

有機塩素化合物の測定方法

【課題】試料中の有機塩素化合物を溶媒抽出した後、該抽出溶媒に含まれる有機塩素化合物中の塩素、とりわけダイオキシン類やPCB等を定量する方法を格段に効率化する。
【解決手段】試料中の有機塩素化合物を溶媒抽出した後、該抽出溶媒に含まれる有機塩素化合物中の塩素を定量する方法であって、前記有機塩素化合物を加熱下に金属と反応させて金属塩化物を生成する工程、該金属塩化物を水素ガスと接触させて塩化水素を生成する工程、及び、この塩化水素を水素イオン濃度測定系へ導入する工程、を含む有機塩素化合物の測定方法。及び、同上の様にして調製した金属塩化物が水素ガスと接触して反応する際の反応熱を測定して、この結果から試料中の有機塩素化合物量を算出する有機塩素化合物の測定方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機塩素化合物の測定方法に関する。更に詳しくは、本発明は、各種試料中に含まれる有機塩素化合物、特にいわゆるダイオキシン類やPCB(ポリクロロビフェニル)等の不揮発性あるいは難揮発性の有害な有機塩素化合物を低コストで迅速に分析するための有機塩素化合物の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、土壌,水,あるいは各種の動植物等がダイオキシンやPCB等の有害な有機塩素化合物で汚染されている可能性が、大きな問題となっている。我々は、日常生活において土壌や水に不断に接触しており、又、各種の動植物は、例えば食材として我々が日常的に摂食している。従って、これらの土壌,水,動植物等の試料中における有機塩素化合物濃度を簡易、迅速かつ正確に分析できる測定方法が強く求められている。例えば、JIS(日本工業規格)では、土壌,水,動植物組織等の試料から有機塩素化合物を抽出する方法や、抽出した有機塩素化合物を分析する方法について各種スタンダードを規定している。
【0003】
これらの中で、有機塩素化合物の有力な抽出・測定方法として、試料中の有機塩素化合物を有機溶媒を用いて抽出し、この抽出溶媒に含まれる有機塩素化合物全体(又は、ダイオキシンやPCB等の不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物)の塩素を無機化して適宜な方法により定量し、定量された塩素量とダイオキシン等の量との既知の相関を利用して試料中のダイオキシン等の量を算出する、と言う測定方法を例示することができる。
【0004】
更に、発生源の測定は比較的高濃度である点から、有機塩素化合物の他の有力な抽出・測定方法として、試薬を用いない熱測定法も有用である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記測定方法において、有機塩素化合物の塩素を無機化する方法や、無機化した塩素を定量する方法については、多様な選択肢が提案されている。しかし、▲1▼有機溶媒で抽出した有機塩素化合物の塩素を迅速に無機化して簡易な測定系に持ち込むプロセス、▲2▼不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物のみを定量したい場合における、抽出溶媒中のこれらの有機塩素化合物の濃縮プロセス、等については、実質的に不可欠の重要なプロセスであるにも関わらず、従来、その効率化がほとんど検討されていない。
【0006】
例えば、上記▲1▼に関して、有機塩素化合物の塩素を無機化する反応操作、無機化塩素を測定系に持込む操作、測定系に持込んだ無機化塩素を定量する操作等は、通常、プロセス上もデバイス上も互いに独立した操作としてバラバラに行われており、非常に効率が悪い。
【0007】
又、上記▲2▼に関しては、通常はロータリーエバポレーター等を用いて、非常にのんびりと非効率に行われている。又、このエバポレーションと、次工程である塩素の無機化反応系とは、工程的に全く切り離されて構成されているため、分析方法全体が非効率化している。
【0008】
更に、上記した熱測定法についても、有用であるにも関わらず、従来、その原理を利用した簡易かつ実用的な測定方法は、具体的には提案されていない。
そこで本発明は、試料中の有機塩素化合物を溶媒抽出した後、該抽出溶媒に含まれる有機塩素化合物中の塩素、とりわけ不揮発性あるいは難揮発性の有機塩素化合物中の塩素を定量する方法において、上記▲1▼及び▲2▼のプロセスを簡易な手段によって格段に効率化することにより、有機塩素化合物、とりわけダイオキシン類やPCB等の迅速な分析を可能にすることを目的とする。
【0009】
又、本発明は、前記熱測定法の原理を利用した簡易かつ実用的な有機塩素化合物の測定方法を提供することをも目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明(請求項1に記載の発明)の構成は、試料中の有機塩素化合物を溶媒抽出した後、該抽出溶媒に含まれる有機塩素化合物中の塩素を定量する方法であって、前記有機塩素化合物を加熱下に金属と反応させて金属塩化物を生成する工程、該金属塩化物を水素ガスと接触させて塩化水素を生成する工程、及び、この塩化水素を水素イオン濃度測定系へ導入する工程、を含む有機塩素化合物の測定方法である。
【0011】
以上の第1発明の構成において、試料の種類は全く限定されない。例えば、住宅地,農地,工場地等から採取された土壌、家庭用水道水や井戸水,地下水,工業用水あるいは工場排水から採取された水、河川,湖沼あるいは沿岸海洋水から採取された水、家畜,実験動物,植物性もしくは動物性の食材もしくは廃棄物等から採取された生物組織等を限定なく含む。
【0012】
これらの試料から有機溶媒を用いて有機塩素化合物を抽出する方法も、JISに規定する方法を含めて、目的に応じて任意に採用すれば良く、特段に限定されない。有機溶媒の種類も限定されない。例えば、トルエン,アルコール,アセトン等を目的に応じて任意に選択すれば良い。
【0013】
金属塩化物を生成するために用いる金属の種類は、非昇華性ないしは難昇華性の金属塩化物を生成する金属が特に好ましいが、基本的には限定されず、例えば銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)その他の任意の種類の金属を選択して使用することができる。比較的昇華し易い金属塩化物を生成する銅、鉄等を使用する場合には、後述の第6発明のように、一旦昇華した金属塩化物を凝縮させるための適宜なデバイスと組合わせて使用することが好ましい。金属の充填形態も、通気可能な形態である限りにおいて限定されないが、例えば、金属粒子を充填する形態とすることができる。
【0014】
(第1発明の作用・効果)
第1発明の有機塩素化合物の測定方法は、試料中の有機塩素化合物を抽出溶媒を用いて抽出し、該抽出溶媒に含まれる有機塩素化合物の塩素を無機化し、更に水素ガスによって塩化水素に変換し、これを適宜な水素イオン濃度測定系へ導入することにより、水素イオン濃度の測定に基づいて前記有機塩素化合物中の塩素量を算出し、ひいては定量された塩素量と有機塩素化合物量との既知の相関を利用して試料中の有機塩素化合物量を算出する方法である。
【0015】
このような第1発明における各工程を単独に分離した場合、それらの操作自体としては、いずれも公知又は周知のものである。しかしながら第1発明は、試料中の有機塩素化合物を簡易・迅速に定量すると言う目的の下に、これらが一連の工程として組立てられた方法であり、従来の技術に比較して十分に新規性及び進歩性を備える。
【0016】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明(請求項2に記載の発明)の構成は、下記(a)の担体を下記(b)の反応管の上流側に充填して、必要な加熱、送気及び水素ガスの供給により前記第1発明に係る各工程を行う、有機塩素化合物の測定方法である。
(a)試料中の有機塩素化合物を抽出した溶媒を含浸させた通気性の担体。
(b)上流側から下流側への送気手段と、所定部を加熱する加熱手段とを備え、その中流域には前記金属を通気可能に充填すると共に、上流端を前記水素ガスの給源に、下流端を前記水素イオン濃度測定系に連絡した反応管。
【0017】
以上の第2発明の構成において、通気性の担体は、空隙に富む担体である限りにおいて限定されない。通気性の担体は、材質の面では、耐熱性と有機溶媒に対する耐性を持つものがより好ましく、形態の面では、繊維が綿状に集合した空隙に富む綿状体が、特に好ましい。従って、ガラス繊維やセラミックウール等の耐熱、耐有機溶媒性の無機繊維からなる綿状体、とりわけセラミックウールからなる綿状体が好ましい。
【0018】
上記の反応管としては、例えば石英管等を好ましく利用できる。又、同一構成の反応管を2本準備し、一方の反応管には有機塩素化合物を抽出した有機溶媒を含浸させた通気性担体を充填すると共に、他方の反応管にはブランクとして有機塩素化合物を抽出していない有機溶媒を含浸させた通気性担体を充填し、両者の反応管における測定結果の対比により分析の精度を高めることも好ましい。
【0019】
加熱手段や送気手段の構成は限定されない。加熱手段としては、反応管における通気性担体の充填部に対しては、不揮発性ないしは難揮発性の有機塩素化合物も含めて十分に気化できる程度に加熱でき、反応管における金属の充填部に対しては、有機塩素化合物と金属とを十分に反応させて金属塩化物を生成できる程度に加熱できる構成のものが、好ましい。加熱手段の加熱形態は、例えば反応管の特定部分を外周全体から満遍なく加熱できるものが好ましい。
【0020】
送気手段としては、反応管の上流/下流のいずれか一端側に吸気エアポンプ及び/又は送気エアポンプを連結し、反応管の上流側から下流側へ気体を流通させ得るものが好ましい。
【0021】
(第2発明の作用・効果)
第2発明においては、抽出溶媒を含浸させた通気性の担体を反応管に充填するだけで、前記第1発明に係る金属塩化物の生成工程、塩化水素の生成工程、及び塩化水素の水素イオン濃度測定系への導入工程を、全て単一の反応管中で連続的に実行することができる。
【0022】
即ち、試料中の有機塩素化合物を抽出した有機溶媒を通気性担体に含浸させて反応管の上流側に充填した後、反応管における通気性担体の充填部を、不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物が十分に気化する程度に、又、反応管における金属の充填部を、有機塩素化合物と金属が十分に反応して金属塩化物を生成できる程度に、それぞれ加熱する。同時に、送気手段によって反応管内部の上流側から下流側への気流を生じさせる。
【0023】
そうすると、有機塩素化合物が気化して金属の充填部へ移動し、ここで金属塩化物を生成する。昇華し難い金属塩化物は金属の表面に止まる。比較的昇華し易い金属塩化物は昇華して反応管の下流側へ移動し、非加熱のため比較的低温の領域である反応管の下流域において凝縮する。
【0024】
次に、反応管の上流端に連絡した水素ガスの給源より、下流方向へ水素ガスを供給する。これにより、金属塩化物の塩素は塩化水素に変換され、反応管の下流端に連絡させた水素イオン濃度測定系に導入される。そしてここで水素イオン濃度の変化が測定され、その測定値に基づき、定量された塩素量と有機塩素化合物量との既知の相関を利用して、試料中における有機塩素化合物の濃度が算出されるのである。
【0025】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明(請求項3に記載の発明)の構成は、揮発性の有機溶媒である前記第2発明に係る抽出溶媒を含浸させた前記通気性の担体である綿状担体について、予め通気操作により不揮発性ないしは難揮発性の有機塩素化合物を濃縮すると言う濃縮工程を前置したもとで、前記反応管に充填する、有機塩素化合物の測定方法である。
【0026】
以上の第3発明の構成において、揮発性の有機溶媒としては、トルエン、アルコール、アセトン等が例示される。通気性の担体に含浸させた有機溶媒中の不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物を通気により濃縮する方法は任意であるが、例えばこの担体を開蓋したシャーレ状の容器上に載置して送風したり、通気路上に位置させたりする、と言う方法が、より好ましい。担体を非加熱状態の反応管に充填して反応管中を一定の時間送気状態に置く、と言う方法も可能であるが、一旦揮発した有機溶媒が反応管の下流側で凝縮・滞留する恐れがある点においては、必ずしも好ましくない。
【0027】
(第3発明の作用・効果)
抽出溶媒中には、1)検出標的とするダイオキシンやPCBのような不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物のみが含まれる場合もあるが、それら以外に、2)半揮発性の有機塩素化合物や、更に加えて3)揮発性の有機塩素化合物も含まれる場合がある。しかし、揮発性の有機溶媒を用い、かつ第3発明の通気操作を行うと、上記2)や3)の有機塩素化合物は有機溶媒と共に揮発するので、不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物のみが濃縮される。
【0028】
又、この通気操作においては、綿状担体の極めて大きな表面積を利用して揮発性の有機溶媒が蒸発するので、例えばロータリーエバポレーター等を用いる場合に比較して、非常に迅速に濃縮が行われる。
【0029】
この濃縮の後、綿状担体を反応管に充填して、ガス移動方式により塩素無機化反応を行わせる。即ち、濃縮手段である綿状担体がそのまま次工程である有機塩素の無機化反応系の構成要素として利用され、しかも綿状担体は反応管に充填し易く、かつ充填後において塩素無機化反応を効率良く行うためのガス移動を許す綿状体と言う形態を持っている。このため、濃縮プロセスから塩素無機化反応プロセスへの移行が、非常に迅速かつスムーズに行われる。
【0030】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明(請求項4に記載の発明)の構成は、測定対象たる前記第1発明〜第3発明に係る有機塩素化合物が、少なくともダイオキシン及び/又はPCBを包含する不揮発性ないしは難揮発性の有機塩素化合物である、有機塩素化合物の測定方法である。
【0031】
以上の第4発明の構成において、「ダイオキシン」とは、JIS K 0312に規定された「ダイオキシン類」の全てを含み、かつ社会通念上「ダイオキシン」と認識される全ての化合物を含む。「PCB」とは、JIS K 0312に規定された「コプラナーPCB」の全てを含み、かつ社会通念上「PCB」と認識される全ての化合物を含む。
【0032】
(第4発明の作用・効果)
本発明に係る有機塩素化合物の測定方法は、その対象たる有機塩素化合物の種類を特段に限定するものではない。しかし第4発明のように、近年特に大きな問題となっているダイオキシン及び/又はPCBに対して本発明を適用することが、とりわけ強く求められている。
【0033】
又、前記第3発明に係る有機塩素化合物の測定方法は、測定対象外の塩素を有効に排除して測定精度を高めると言う見地から、第4発明の場合に適用することがとりわけ好ましい。この場合、塩素量の測定値に基づき、定量された塩素量と不揮発性ないしは難揮発性の有機塩素化合物量との既知の相関を利用して、試料中における不揮発性ないしは難揮発性の有機塩素化合物の濃度が算出されるのである。
【0034】
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明(請求項5に記載の発明)の構成は、前記第1発明〜第4発明に係る金属が、少なくとも銀(Ag)を包含する、非昇華性ないしは難昇華性の金属塩化物を生成する金属である、有機塩素化合物の測定方法である。
【0035】
以上の第5発明の構成において、「非昇華性ないしは難昇華性の金属塩化物を生成する金属」の種類は限定されないが、とりわけ銀が好ましい。
【0036】
(第5発明の作用・効果)
金属として非昇華性ないしは難昇華性の金属塩化物を生成する金属を用いると、前記したように、金属の表面に金属塩化物を生成するが、水素ガスの供給により、金属塩化物は金属に戻る。この場合、実際にはごく少量の金属塩化物が昇華して失われる可能性があるが、実質的には金属量は減少せず、そのまま繰返し使用することができる。従って、反応管の長期にわたる繰返し使用において、反応管又はその充填物を更新する必要がない。
【0037】
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための本願第6発明(請求項6に記載の発明)の構成は、前記第2発明〜第5発明に係る反応管における前記金属充填部の下流側には、昇華した金属塩化物を凝縮させるための通気性の担体を充填している、有機塩素化合物の測定方法である。
【0038】
以上の第6発明の構成において、「通気性の担体」としては、第2発明に述べた通気性の担体と同様の基準で選択することができる。但し、第6発明の通気性の担体においては、必ずしも高度の耐熱性は要求されない。
【0039】
(第6発明の作用・効果)
一定の金属を用いた場合、比較的昇華し易い金属塩化物を生成する。このような金属塩化物でも、通常は反応管の下流域である非加熱領域で凝縮するため、金属塩化物態のまま水素イオン濃度測定系へ導入されてしまい測定精度を損なう、と言う恐れは余りない。しかし第6発明のように、金属充填部の下流側に昇華した金属塩化物を凝縮させるための通気性担体を充填しておくと、このような懸念が一層低減される。
【0040】
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための本願第7発明(請求項7に記載の発明)の構成は、前記第1発明〜第6発明に係る水素イオン濃度測定系が、水素イオン濃度測定手段と、水又はアルカリ水溶液とを構成要素として含む、有機塩素化合物の測定方法である。即ち、「水素イオン濃度測定系」としては、要するに塩化水素を捕捉する手段と、捕捉した塩化水素の量を測定する手段とを備えていれば足りる。
【0041】
(第7発明の作用・効果)
水素イオン濃度測定系の種類あるいは構成は、目的に適う限りにおいて限定されないが、反応管から送気されたガスを水又はアルカリ水溶液中に導入して塩化水素をトラップし、この水又はアルカリ水溶液のpH変化をpH計等で測定する方法が、特に簡易かつ低コストである。
【0042】
(第8発明の構成)
上記課題を解決するための本願第8発明(請求項8に記載の発明)の構成は、試料中の有機塩素化合物を溶媒抽出した後、該抽出溶媒に含まれる有機塩素化合物中の塩素を定量する方法であって、前記有機塩素化合物を加熱下に金属と反応させて金属塩化物を生成する工程、該金属塩化物を水素ガスと接触させて塩化水素を生成する工程、及び、この金属塩化物と水素ガスとの反応熱を測定して塩素量を定量する工程、を含む有機塩素化合物の測定方法である。
【0043】
以上の第8発明の構成において、前記第1発明の場合と同様に、試料の種類は限定されず、住宅地,農地,工場地等から採取された土壌、家庭用水道水や井戸水,地下水,工業用水あるいは工場排水から採取された水、河川,湖沼あるいは沿岸海洋水から採取された水、家畜,実験動物,植物性もしくは動物性の食材もしくは廃棄物等から採取された生物組織等を限定なく含む。
【0044】
これらの試料から有機溶媒を用いて有機塩素化合物を抽出する方法も、JISに規定する方法を含めて、目的に応じて任意に採用すれば良く、特段に限定されない。有機溶媒の種類も限定されない。例えば、トルエン,アルコール,アセトン等を目的に応じて任意に選択すれば良い。
【0045】
金属塩化物を生成するために用いる金属の種類は限定されないが、例えば銀を好ましく使用することができる。金属の充填形態も、通気可能な形態である限りにおいて限定されないが、例えば、金属粒子や金属線等を充填する形態とすることができる。
【0046】
なお、第8発明において、抽出溶媒として揮発性の有機溶媒を用い、試料から有機塩素化合物を抽出したこのような抽出溶媒を綿状担体等の通気性の担体に含浸させ、前記第3発明と同様の通気操作により不揮発性ないしは難揮発性の有機塩素化合物を濃縮すると言う濃縮工程を前置することも好ましい。通気性の担体に含浸させた有機溶媒中の不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物を通気により濃縮する方法は任意であるが、例えばこの担体を開蓋したシャーレ状の容器上に載置して送風したり、通気路上に位置させたりする、と言う方法が、より好ましい。このように濃縮工程を前置する場合には、第3発明と同様の作用・効果が得られる。揮発性の有機溶媒としては、トルエン、アルコール、アセトン等が例示される。
【0047】
測定対象たる有機塩素化合物としては、少なくともダイオキシン及び/又はPCBを包含する不揮発性ないしは難揮発性の有機塩素化合物が特に重要である。「ダイオキシン」とはJIS K 0312に規定された「ダイオキシン類」の全てを含み、かつ社会通念上「ダイオキシン」と認識される全ての化合物を含む。「PCB」とはJIS K 0312に規定された「コプラナーPCB」の全てを含み、かつ社会通念上「PCB」と認識される全ての化合物を含む。これらの不揮発性ないしは難揮発性の有機塩素化合物を測定対象とする場合に、前記の濃縮工程を前置することが特に有効である。
【0048】
(第8発明の作用・効果)
第8発明の有機塩素化合物の測定方法は、試料中の有機塩素化合物を抽出溶媒を用いて抽出し、該抽出溶媒に含まれる有機塩素化合物の塩素を金属と反応させて金属塩化物を生成し、更に該金属塩化物を水素ガスと接触させて、この金属塩化物と水素ガスとの吸熱反応の反応熱を測定して塩素量を定量することにより、定量された塩素量と有機塩素化合物量との既知の相関を利用して試料中の有機塩素化合物量を算出する方法である。
【0049】
このような第1発明における各工程を単独に分離した場合、それらの操作自体としては、いずれも公知又は周知のものである。しかしながら第1発明は、試料中の有機塩素化合物を簡易・迅速に定量すると言う目的の下に、これらが一連の工程として組立てられた方法であり、従来の技術に比較して十分に新規性及び進歩性を備える。
【0050】
第8発明に係る有機塩素化合物の測定方法は、発生源の測定が比較的高濃度であるところから、検出感度よりも、連続測定の際の操作の簡便性が求められる。化学分析を行う代わりに金属塩化物と水素との反応熱を測定して塩素量を定量する第8発明の方法は、このような要求に対して好適である。更に第8発明に係る熱測定法は、定量用の試薬を用いない点においても、有利性がある。
【0051】
(第9発明の構成)
上記課題を解決するための本願第9発明(請求項9に記載の発明)の構成は、前記第8発明に係る吸熱反応の反応熱の測定を示唆フロー熱量計を用いて行う、有機塩素化合物の測定方法である。
【0052】
(第9発明の作用・効果)
例えば、使用する金属が銀である場合、塩化銀と水素ガスとの反応は吸熱反応であるため、測定系を、反応が十分な速度で進行する適当な高温度に保って水素ガスを通じ、その反応熱を示差法で検出することが好ましい。反応熱は約35KJ/molであり、この方法には水素ガスを用いた高温の示差フロー熱量計を用いることが好ましい。検出感度を良好に保つためには、熱量計のベースラインの安定性が重要である。
【0053】
なお、金属として、非昇華性ないしは難昇華性の金属塩化物を生成する銀等の金属を用いると、金属の表面に金属塩化物を生成しても昇華せず、水素ガスの供給により、金属塩化物は金属に戻る。従って実質的には金属量は減少せず繰返し測定を行い得る点が、連続測定に好適である。
【0054】
【実施例】
次に、第1発明〜第7発明に係る実施例について説明する。第1発明〜第7発明の技術的範囲は、この実施例によって制約されない。
【0055】
まず、ダイオキシン、PCB等の有機塩素化合物の含有量を調査したい任意の試料について、JISに規定する方法、環境庁や厚生省等の関係当局が推奨する調査マニュアル等に定める方法、またはこれらに準ずる信頼性ある方法で、試料中の有機塩素化合物をトルエンその他の適宜な有機溶媒を用いて抽出する。有機溶媒の使用量は、例えば、100mLとする。
【0056】
この抽出溶媒の全量又は特定された一部量を、適量のセラミックウール等からなる綿状担体に含浸させる。そしてこの綿状担体を前記した通気処理に供して、有機溶媒及び揮発性又は半揮発性の有機塩素化合物を十分に揮発させることにより、不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物を濃縮しておく。この通気処理は、綿状担体を後述の反応管の充填域に充填した後に、反応管全体を非加熱状態で一定時間通気することにより行っても良い。
【0057】
次に図1に示すように、反応管1の上流側(図の右側)の試料域2に、上記の綿状担体3を充填する。この反応管1としては、例えば太さ1cm程度、長さ30cm程度の石英管を用いることができる。反応管1には予め、その中流の反応域4に粒状の銀5を通気可能な程度に充填し、その下流の冷却域6にセラミックウール等からなる凝縮用担体7を充填している。使用する金属種が銀であることから、凝縮用担体7は省いても構わない。
【0058】
この反応管1を、図2に示すように、筒状の前処理装置8に対して位置合わせして挿通する。あるいは、予め銀5と凝縮用担体7とを充填し前処理装置8に対して位置合わせして挿通してある反応管1に対して、その試料域2に綿状担体3を充填する。
【0059】
この際、冷却域6と反応域4に関して同一の構成を備えたブランク試験用の石英管1を更に前処理装置8に挿通し、こちらの試料域2には有機塩素化合物を抽出していない有機溶媒を含浸させた綿状担体3を充填しておいても良い。
【0060】
筒状の前処理装置8の内周壁には、反応管1の試料域2に対応する部分と、反応域4に対応する部分とに、それぞれ別々にON−OFFでき、かつ異なる必要な温度域に加熱可能な二つのヒータが埋め込まれている。
【0061】
次いで、反応管1の下流側端部と上流側端部とを、通気管9を挿通したゴム製(例えばシリコンゴム製)の栓10で密封する。これによって外部からの妨害物質のコンタミネーションを有効に防止することができる。そして、ヒータによって、まず反応域4の銀5を、有機塩素化合物との反応による塩化銀の生成に十分な所定の温度に加熱する。同時に、別のヒータによって試料域2を、不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物が気化するに十分な所定の温度に加熱する。次いで、上流側の通気管9に連通したエアポンプ11から空気を送る。
【0062】
そうすると、試料域2に充填された綿状担体3から不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物が気化し、エアの流れに乗って反応域4へ移動して来る。そして反応域4において、この有機塩素化合物が加熱された銀と反応し、塩化銀を生成する。塩化銀は昇華し難い化合物であるため、粒状の銀の表面に止まる。
【0063】
次に、反応管1の上流側端部に連絡された図示省略の水素ガス給源のコックを開き、水素ガスを反応管1の下流側へ向かって送り込む。そして上記の塩化銀をこの水素ガスと十分に反応させ、塩素を銀塩態から塩化水素態に変換する。この塩化水素は反応管1の下流側の端部を経て、水素イオン濃度測定系12のアルカリ水溶液13中へ導入される。
【0064】
アルカリ水溶液13中へ導入された塩化水素は定量的にアルカリを中和するため、アルカリ水溶液のpH値が変化する。このpH値の変化を図示省略のpHメーター等で測定することにより、アルカリ水溶液中へ導入された塩化水素量が定量され、そこから綿状担体3に含浸されていた不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物量が算出され、ひいては試料中の不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物量(ダイオキシン及び/又はPCB量)が算出されるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における反応管に対する試料等の充填状態を示す図である。
【図2】実施例における有機塩素化合物の測定方法の実施状態を示す図である。
【符号の説明】
1       反応管
2       試料域
3       綿状担体
4       反応域
5       銀
6       冷却域
7       凝縮用担体
8       前処理装置
11      エアポンプ
12      水素イオン濃度測定系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の有機塩素化合物を溶媒抽出した後、該抽出溶媒に含まれる有機塩素化合物中の塩素を定量する方法であって、
前記有機塩素化合物を加熱下に金属と反応させて金属塩化物を生成する工程、該金属塩化物を水素ガスと接触させて塩化水素を生成する工程、及び、この塩化水素を水素イオン濃度測定系へ導入する工程、を含むことを特徴とする有機塩素化合物の測定方法。
【請求項2】
下記(a)の担体を下記(b)の反応管の上流側に充填して、必要な加熱、送気及び水素ガスの供給により前記各工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の有機塩素化合物の測定方法。
(a)試料中の有機塩素化合物を抽出した溶媒を含浸させた通気性の担体。
(b)上流側から下流側への送気手段と、所定部を加熱する加熱手段とを備え、その中流域には前記金属を通気可能に充填すると共に、上流端を前記水素ガスの給源に、下流端を前記水素イオン濃度測定系に連絡した反応管。
【請求項3】
揮発性の有機溶媒である前記抽出溶媒を含浸させた前記通気性の担体である綿状担体について、予め通気操作により不揮発性あるいは難揮発性の有機塩素化合物を濃縮すると言う濃縮工程を前置したもとで、前記反応管に充填することを特徴とする請求項2に記載の有機塩素化合物の測定方法。
【請求項4】
測定対象たる前記有機塩素化合物が、少なくともダイオキシン及び/又はPCBを包含する不揮発性ないし難揮発性の有機塩素化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の有機塩素化合物の測定方法。
【請求項5】
前記金属が、少なくとも銀(Ag)を包含する、非昇華性ないしは難昇華性の金属塩化物を生成する金属であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の有機塩素化合物の測定方法。
【請求項6】
前記反応管における前記金属充填部の下流側には、昇華した金属塩化物を凝縮させるための通気性の担体を充填していることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載の有機塩素化合物の測定方法。
【請求項7】
前記水素イオン濃度測定系が、水素イオン濃度測定手段と、水又はアルカリ水溶液とを構成要素として含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の有機塩素化合物の測定方法。
【請求項8】
試料中の有機塩素化合物を溶媒抽出した後、該抽出溶媒に含まれる有機塩素化合物中の塩素を定量する方法であって、
前記有機塩素化合物を加熱下に金属と反応させて金属塩化物を生成する工程、該金属塩化物を水素ガスと接触させて塩化水素を生成する工程、及び、この金属塩化物と水素ガスとの反応熱を測定して塩素量を定量する工程、を含むことを特徴とする有機塩素化合物の測定方法。
【請求項9】
前記反応熱の測定を示唆フロー熱量計を用いて行うことを特徴とする請求項8に記載の有機塩素化合物の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2004−117146(P2004−117146A)
【公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−280654(P2002−280654)
【出願日】平成14年9月26日(2002.9.26)
【出願人】(392022282)日陶科学株式会社 (3)
【出願人】(593000764)
【Fターム(参考)】