説明

有機導体および半導体と架橋したポリマーからなる中間バッファー層とを備えた電子デバイス

本発明は、導電性のドープされたポリマーと有機半導体層との間に少なくとも1つの架橋可能なポリマーバッファー層、好ましくはカチオン架橋可能なポリマーバッファー層を挿入することにより、電子特性をかなりの程度まで改善することができる電子デバイスに関する。架橋が熱的に誘起されるバッファー層により、特に良好な特性が得られる。代わりに、フォトアシッドを添加することにより、架橋を放射により誘起することができる。さらに、このようなバッファー層は、印刷法、特にインクジェット印刷により好都合に塗布することができる。熱処理のための理想的な温度が材料のガラス転移温度から独立しているからである。次の層(有機半導体層)も異なる印刷法、特にインクジェット印刷により塗布することができる。バッファー層が架橋プロセスにより不溶にされ、このため、その後にバッファー層が溶解するのを防止するからである。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
有機半導体、有機金属半導体および/またはポリマー半導体を含む電子デバイスは市販製品として今までしばしば用いられているかまたは市場にまさに導入されようとしている。本明細書で言及されている例は、フォトコピー機の有機系の電荷輸送材料(一般的にはトリアリールアミンをベースとする正孔輸送体)およびディスプレー装置の有機またはポリマー発光ダイオード(OLEDまたはPLED)である。有機太陽電池(O−SC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC)、有機光増幅器または有機レーザーダイオード(O−レーザー)は、研究段階では非常に進歩しており、将来は非常に重要になるであろう。
【0002】
これらのデバイスの多くは、用途に関係なく、以下の一般的な層構造を有し、それは個々の用途に相応して合わされる。
【0003】
(1)基板
(2)電極、しばしば金属または無機であるが有機またはポリマーの導電材料でもよい
(3)電荷注入層、または電極の凹凸を平坦にするための中間層(「平坦化層」)、しばしば導電性のドープされたポリマーからなる
(4)有機半導体
(5)任意に絶縁層
(6)第2の電極、(2)で言及した材料
(7)回路
(8)封止材。
【0004】
これらの有機デバイスの多く、特にポリマー半導体をベースとするものが有する利点は、これらを溶液から製造できることであり、これは低分子量化合物で一般的に行われる真空プロセスよりも技術が複雑でなく資源の消費も少なくなることに関連している。フルカラーのディスプレーについては、個々の画素において高解像度で三原色(赤、緑、青)を互いに並べて塗布しなければならない。類似する状況は、異なるスイッチング素子をもつ電子回路にも当てはまる。気相成長できる低分子量分子の場合には、個々の画素はシャドウマスクを通しての個々の色の気相成長によって形成できるのに反して、これはポリマー材料および溶液から処理される材料にとっては不可能である。ここでの1つの解決策は、構造化された仕方で直接的に活性層を塗布することからなる(たとえば、OLED/PLEDの発光層、類似の状況はレーザーまたはすべての用途における電荷輸送層にあてはまる)。最近では、たとえば特にインクジェット印刷(たとえばEP0880303)、オフセット印刷、などのようなさまざまの印刷技術がこの目的のために検討されている。現在、特にインクジェット印刷法の開発について集中的な研究が行われており、最近この点でかなりの進歩が達成されており、その結果、この方式で製造される最初の市販製品が近い将来に期待できる。
【0005】
有機電子工学のためのデバイスにおいて、導電性のドープされたポリマーからなる中間層は、しばしば電極(特にアノード)と有機半導体との間に導入され、電荷注入層として機能する(Appl.Phys.Lett.1997,70,2067〜2069)。これらのポリマーのうち最も一般的なのは、ポリチオフェン誘導体(たとえば、ポリ(3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン),PEDOT)およびポリアニリン(PANI)であり、これらは一般的にポリスチレンスルホン酸または他のポリマーに結合したブレンステッド酸でドープされており、こうして導電性の状態にされている。以下の発明において特定の理論の正確さに拘束されることを望むわけではないが、我々は、デバイスの動作時に、プロトンまたは他の不純物が酸性基から機能層へ拡散すると推定しており、そこでこれらがデバイスの機能をかなり阻害すると考えられる。したがって、これらの不純物はデバイスの効率と耐用寿命を減少させると推定される。
【0006】
より最近の結果は(M.リードビーター、N.パーテル、B.ティアーニー、S.オコーナー、I.グリッツィ、C.タウンズ、ブック・オブ・アブストラクツ、SIDシアトル、2004)、導電性のドープされたポリマーからなる電荷注入層と有機半導体との間に正孔伝導性のバッファー層を導入することは、かなり向上したデバイス特性、特にかなり長い耐用寿命をもたらすことを示している。実際には、これまでの一般的な操作は、表面コーティング法によりバッファー層を塗布し、続いてこれをアニーリングすることであった。理想的には、バッファー層に、ガラス転移温度が導電性のドープされたポリマーより低い材料を選択し、バッファー層のガラス転移温度より高いが導電性のドープされたポリマーのガラス転移温度より低い温度でアニーリングを行い、アニーリングプロセスによって後者が損傷を受けるのを回避している。一般的に、このことは、バッファー層の薄い部分(一般的に約1から25nmにある)を不溶にする。バッファー層の比較的低いガラス転移温度のために、比較的低分子量を有する材料が必要とされる。しかし、そのような材料はインクジェット印刷により塗布することができない。というのは、良好な印刷特性のためには分子量が高いほうがよいためである。
【0007】
次いで、バッファー層の可溶部分をスピンコーティングによる有機半導体の塗布によりリンス落とし、有機半導体層をバッファー層の不溶部分の上に作る。したがって、ここで多層構造を比較的容易に作ることができる。しかし、印刷法によるバッファー層への有機半導体の塗布はこの方式ではできない。というのは、このとき溶媒がバッファー層の可溶部分を部分的に溶解し、バッファー層の材料と有機半導体の混合物が形成されるからである。このように、構造化された多層デバイスの製造は、この方式ではできない。
【0008】
したがって、もっぱらインクジェット印刷による、バッファー層をもつデバイスの製造はこれまでのところまだできない。というのは、一方でバッファー層は低分子量のために印刷法により塗布することができず、他方で有機半導体の溶液は印刷法による塗布時にバッファー層を部分的に溶解するからである。しかし、印刷法、特にインクジェット印刷は構造化されたデバイスの製造のためのきわめて重要な方法とみなされているが、他方でバッファー層の使用もさらなる開発のためにはかなりの重要性を有するので、この点でまだ改善のための明らかな必要性がある。
【0009】
EP0637899は、少なくとも1層が架橋され、加えて少なくとも1層の発光層と1層あたり少なくとも1つの電荷輸送単位を含む1以上の層を有する電界発光を提案している。ここでの架橋は、フリーラジカルによるか、アニオン的に、カチオン的に、または光誘起の閉環反応を介して進行することができる。したがって、1つの層が他の層の上にある複数の層を構築することができ、これらの層を照射により誘起して構造化することもできる。しかし、多くの架橋反応のうちどれにより好適なデバイスを製造でき、どのように架橋反応を行うのが最もよいのかについての教示はない。単に、フリーラジカルにより架橋可能な単位または光環状付加が可能な基が好ましく、たとえば開始剤のようなさまざまのタイプの補助物質があってもよく、化学放射線により膜を架橋することが好ましいことが言及されている。好適なデバイスの形態も記載していない。したがって、デバイスがどのくらいの数の層を有するのが好ましく、これらはどのくらいの厚さがよく、どの種類の材料を含むのが好ましく、そのうちどれを架橋すべきであるかは明確でない。したがって、当業者にとっても、記載された発明が実際にどのくらいうまく実施できるか理解できない。
【0010】
ChemPhysChem2000,207は、導電性のドープされたポリマーと有機ルミネセンス半導体との間の中間層として、オキセタン基を介して架橋した低分子量化合物をベースとするトリアリールアミンを記載している。ここでは比較的高い効率が得られた。このタイプのデバイスは印刷プロセス、特にインクジェット印刷により作ることができない。というのは、低分子量のトリアリールアミン誘導体は架橋の前に十分に粘度の高い溶液を作らないからである。
【0011】
驚くべきことに、今や、少なくとも1つの架橋可能なポリマーバッファー層、好ましくはカチオン架橋可能なポリマーバッファー層を導電性のドープされたポリマーと有機半導体層との間に導入すれば、デバイスの電子的特性をかなり改善できることがわかった。架橋を熱的にすなわち温度を50〜250℃へ上昇することにより誘起したバッファー層の場合には、特に良好な特性が得られる。しかし、たとえばフォトアシッドを添加して照射することによっても、架橋を開始することができる。加えて、このタイプのバッファー層は、好都合なことに、印刷法、特にインクジェット印刷によって塗布することもできる。というのは、ここでの熱処理のための理想的な温度は、材料のガラス転移温度とは独立しているからである。このことは必ずしも低分子量の材料に依存する必要はないことを意味し、これは翻って印刷法による層の塗布を容易にする。バッファー層は架橋により不溶になるので、次の層(有機半導体層)もさまざまの印刷法、特にインクジェット印刷により塗布することができる。というのは、このときにはバッファー層の部分溶解と混合物形成のリスクがないからである。
【0012】
したがって、本発明は、カソードと、アノードと、少なくとも1層の導電性のドープされたポリマーと、少なくとも1層の有機半導体とを備えた有機電子デバイスであって、少なくとも1層の導電性または半導体性の、好ましくは半導体性の架橋可能なポリマーバッファー層、好ましくはカチオン架橋可能なバッファー層が、これらの2つの相の間に導入されていることを特徴とする有機電子デバイスに関する。
【0013】
架橋のために、半導体ポリマーバッファー層は、好ましくは3重量%未満、特に好ましくは1重量%未満のフォトアシッドと混合し、非常に好ましくはフォトアシッドと混合しない。
【0014】
対応するデバイス配置における架橋を、熱的に、すなわち、たとえばフォトアシッドのような補助物質の添加なしに温度を上昇させることにより誘起できるポリマーの架橋可能なバッファー層がさらに好ましい。
【0015】
フォトアシッドは、熱放射を伴う照射の際の光化学反応を通してプロトン酸を遊離させる化合物である。フォトアシッドの例は、4−(チオフェンオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、{4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル}フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートおよびたとえばEP1308781において記載されている他のものである。フォトアシッドは、架橋反応のために添加することができ、好ましくは約0.5から3重量%の比が選択されるが、しかし、必ず添加されなければならないわけではない。
【0016】
本発明の目的のためには、電子デバイスは、有機またはポリマー発光ダイオード(OLED、PLED、たとえばEP0676461、WO98/27136)、有機太陽電池(O−SC、たとえば、WO98/48433、WO94/05045)、有機電界効果トランジスタ(O−FET、たとえば、US5705826、US5596208、WO00/42668)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC、たとえば、WO95/31833、WO99/10939)、有機電界クエンチ素子(FQD、たとえば、US2004/017148)、有機光増幅器または有機レーザーダイオード(O−レーザー、たとえば、WO98/03566)である。本発明の目的のためには、有機とは、少なくとも1つの有機の導電性のドープされたポリマーの層、少なくとも1つの導電性または半導体ポリマーバッファー層および少なくとも1つの有機半導体を含む少なくとも1つの層が存在することを意味する。さらなる有機層(たとえば電極など)が存在することも可能である。しかし、有機材料をベースとしない層、たとえば、さらなる中間層または電極が存在することも可能である。
【0017】
最も単純な場合には、電子デバイスは、基板(通常はガラスまたはプラスチックフィルム)、電極、導電性のドープされたポリマーの中間層、本発明による架橋可能なバッファー層、有機半導体および対向電極から構築される。このデバイスは、(用途に応じて)相応して構造化され、コンタクトを備え、最終的に気密封止される。というのは、このタイプのデバイスの耐用寿命は、水および/または空気の存在下で劇的に短縮されるからである。また、ここでは、一方または両方の電極のための電極材料として導電性のドープされたポリマーを用い、導電性のドープされたポリマーの中間層を導入しないことも好ましいであろう。O−FETおよびO−TFTにおける適用のために電極と対向電極(ソースとドレン)に加えて、その構造がさらなる電極(ゲート)も含むことも必要であり、そのゲートは一般的に高い(またはまれに低い)誘電定数を有する絶縁層により有機半導体から分離されている。加えて、デバイスにさらなる層を導入することは適切であろう。
【0018】
電極は、その電位が最も効率的な電子または正孔の注入を可能にするように隣接する有機層の電位に対して可能な限り対応するように選択される。カソードは、好ましくは、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属またはランタノイド(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Smなど)のような、低い仕事関数の金属、金属合金、または様々な金属の多層構造である。多層構造の場合には、たとえば、Agのような比較的高い仕事関数を有するさらなる金属も前記金属に加えて用いることができ、その場合には、たとえば、Ca/AgまたはBa/Agのような金属の組み合わせが一般的に用いられる。
【0019】
金属カソードと有機半導体との間に高い誘電定数を有する材料の薄い中間層を導入することも好ましいであろう。たとえば、フッ化アルカリ金属またはフッ化アルカリ土類金属だけでなく、対応する酸化物(たとえば、LiF、Li2O、BaF2、MgO、NaFなど)もこの目的のために適切である。この誘電層の層厚は、好ましくは1ないし10nmである。
【0020】
アノードは、好ましくは、高い仕事関数を有する材料である。アノードは、好ましくは、真空に対して4.5eVを超える電位を有する。一方で、たとえばAg、Pt、またはAuのような高い酸化還元電位を有する金属がこの目的のために適切である。金属/金属酸化物電極(たとえばAl/Ni/NiOx、Al/Pt/PtOx)も好ましいであろう。
【0021】
一部の用途のためには、電極の少なくとも1つは、有機材料の照射(O−SC)または光によるカップリング(OLED/PLED、O−LASER)のいずれかを容易にするために透明でなければならない。好ましい構造は透明なアノードを用いる。ここでの好ましいアノード材料は、導電性の混合金属酸化物である。インジウム錫酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)は特に好ましい。導電性のドープされた有機材料、特に導電性のドープされたポリマーはさらに好ましい。
【0022】
さまざまのドープされた導電性のポリマーがアノード上の電荷注入層として適切である。用途によっては、>10-8S/cmの伝導度を有するポリマーが好ましい。層の電位は、好ましくは真空に対して4から6eVである。層厚さは好ましくは10ないし500nmであり、特に好ましくは20ないし250nmである。ポリチオフェンの誘導体(特にポリ(3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン)、PEDOT)およびポリアニリン(PANI)の使用が特に好ましい。ドーピングは、一般的に、酸またはオキシダントにより行われる。ドーピングは、好ましくは、ポリマーに結合したプレンステッド酸により行われる。この目的のためには、ポリマーに結合したスルホン酸、特に、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)およびPAMPSA(ポリ−(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸))が特に好ましい。導電性ポリマーは、一般的に水溶液または分散液から塗布され、有機溶媒に不溶である。このことは、次の層を有機溶媒による問題なしに塗布することを可能にする。
【0023】
有機半導体は、好ましくは、少なくとも1種のポリマー化合物を含む。これは、単一のポリマー化合物または2以上のポリマー化合物の混合物または1以上のポリマー化合物と1以上の低分子量有機化合物の混合物でありうる。有機半導体層は、好ましくは、さまざまの印刷プロセスにより、特にインクジェット印刷プロセスにより塗布することができる。本発明の目的のためには、有機材料とは、純粋な有機化合物のみならず、有機金属化合物および有機配位子を有する金属錯体化合物も意味するものとみなす。ルミネセンス化合物の場合には、これらは、蛍光または燐光を発することができる、即ち、1重項状態または3重項状態から光を発することができる。ここでのポリマー材料は、共役しているか、部分的に共役しているか、または共役していなくてもよい。
【0024】
共役している材料が好ましい。本発明の目的のためには、共役ポリマーは、主鎖に主としてsp2−混成炭素原子(これは対応するヘテロ原子で置換されていてもよい)を含むポリマーである。さらに、共役という用語は、たとえばアリールアミン単位および/またはある種のヘテロ環(すなわち、N、OまたはS原子を介しての共役)および/または有機金属錯体(すなわち、金属原子を介しての共役)が主鎖に存在するならば、この出願のテキストにおいて同様に用いられる。たとえば、PLEDまたはO−SCに用いることができる共役ポリマーの典型例は、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、ポリスピロビフルオレン、ポリジヒドロフェナントレン、ポリインデノフルオレン、最も広い意味でポリ−p−フェニレン(PPP)をベースとする系、およびこれらの構造の誘導体である。O−FETに用いるのに特に興味があるものは、高い電荷担体移動度を有する材料である。これらはたとえば、オリゴまたはポリ(トリアリールアミン)、オリゴまたはポリ(チオフェン)および高い比率のこれらの単位を含むコポリマーである。有機半導体の層厚は、用途に応じて、好ましくは、10ないし500nm、特に好ましくは20ないし250nmである。
【0025】
ある種の理論に拘束されることを望むわけではないが、我々は、導電性のドープされたポリマー中に存在するプロトンまたは他のカチオン不純物が問題になり、ドープされたポリマーからのその拡散が電子デバイスの耐用寿命に関する制限要因である疑いがあると仮定している。加えて、ドープされたポリマーから有機半導体への正孔注入はしばしば不満足である。
【0026】
したがって、導電性のドープされたポリマーと、架橋可能な単位、特にカチオン架橋可能な単位を有する有機半導体との間にポリマーバッファー層を導入し、その結果、低分子量のカチオン種および導電性のドープされたポリマーから拡散できる内在性のカチオン電荷担体を収容することができる。しかし、たとえば、アニオン性、またはフリーラジカルにより架橋可能な官能基のような他の架橋可能な官能基も可能であり、本発明によるものである。さらに、この層は、高い正孔注入のためおよび電子阻止層としての役割も果たす。バッファー層には、共役した架橋可能なポリマーを使用することが好ましい。架橋の前のバッファー層に用いられるポリマーの分子量は、好ましくは50から500kg/molの範囲、特に好ましくは200から250g/molの範囲にある。この分子量範囲は、インクジェット印刷による塗布に特に好適であることがわかっている。しかし、他の印刷法には、他の分子量範囲も好ましいであろう。バッファー層の層厚は、好ましくは、1ないし300nmの範囲、特に好ましくは15ないし200nmの範囲、非常に好ましくは40ないし100nmの範囲にある。バッファー層の電位は、電荷注入を改善するために、好ましくは、導電性のドープされたポリマーの電位と有機半導体の電位の間にある。これは、バッファー層の材料の好適な選択および材料の好適な置換により達成することができる。さらに架橋可能な低分子量化合物をバッファー層のポリマー材料と混合することも好ましいであろう。これは、たとえば混合物のガラス転移温度を低下させ、したがって低温での架橋を容易にするために適切であろう。
【0027】
バッファー層に好ましい材料は、正孔伝導性の材料から誘導される。この目的のために特に好ましい好適なものは、トリアリールアミン、チオフェン、トリアリールホスフィンまたはこれらの系の組み合わせをベースとするカチオン架橋可能な材料であり、この場合、他の構造をもつこれらのコポリマー、たとえばフルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、インデノフルオレンも、適度に高い比率の上述した正孔伝導性の単位を用いるのであれば、好適な材料である。ポリマー中の正孔伝導性の単位の比率は、特に好ましくは少なくとも10mol%である。これらの化合物の電位は、好適な置換により調節することができる。したがって、低いHOMO(=最高被占分子軌道)を有する化合物が電子吸引置換基(たとえば、F、Cl、CNなど)の導入によって得られ、一方、高いHOMOが電子供与置換基(たとえば、アルコキシ基、アミノ基など)によって達成される。
【0028】
ある種の理論に拘束されることを望むわけではないが、我々は、カチオン架橋可能なバッファー層は、拡散するカチオン種、特にプロトン(それによって架橋反応が開始される)を収容することができ;他方、架橋は同時にバッファー層を不溶にし、その結果、その後の通常の有機溶媒からの有機半導体の塗布がまったく問題を引き起こすことがない、と仮定している。架橋されたバッファー層は、拡散に対してさらなるバリアになる。したがって、好ましい重合可能な基は、カチオン架橋可能な基である。特に、
1)電子リッチなオレフィン誘導体、
2)ヘテロ原子またはヘテロ基を有するヘテロ核多重結合および
3)カチオン開環重合により反応するヘテロ原子(たとえば、O、S、N、P、Siなど)を含む環である。
【0029】
電子リッチなオレフィン誘導体およびヘテロ原子またはヘテロ基を有するヘテロ核多重結合を含む化合物は、好ましくは、H.G.エリアス、高分子[Macromolecules]、第1巻、基礎:構造−合成−特性、ヒューティッヒ&ウェップ・ファーラック、バーゼル、第5版、1990、392〜404ページに記載されているものであるが、それによって、様々な可能な化合物を限定することを望むものではない。
【0030】
少なくとも1つのH原子が、カチオン開環重合により反応する官能基で置換された有機材料が好ましい。カチオン開環重合の一般的概説は、たとえば、E.J.ゲータルズら、「カチオン開環重合」(New Methods Polym.Synth.1992、67〜109)によって示されている。この目的に一般的に適しているのは、1以上の環原子が、同一または異なり、O、S、N、P、Siなどである非芳香族環構造である。ここでは、3から7個の環原子を有し、1から3個の環原子が、同一または異なり、O、SまたはNである環構造が好ましい。このような系の例は、置換されていないか置換されている、環状アミン(たとえばアジリジン、アゼチシン、テトラヒドロピロール、ピペリジン)、環状エーテル(たとえばオキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン)、および対応する硫黄誘導体、環状アセタール(たとえば1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキセパン、トリオキサン)、ラクトン、環状カーボネートのみならず、環中に異なるヘテロ原子を含む環状構造(たとえば、オキサゾリン、ジヒドロオキサジン、オキサゾロン)である。さらに、4から8個の環原子を有する環状シロキサンが好ましい。
【0031】
極めて特に好ましいのは、少なくとも1個のH原子が式(I)、式(II)または式(III)の官能基で置換されたポリマー有機材料である。)
【化2】

【0032】
(式中、
1はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、これらにおいて、1以上の水素原子はハロゲンたとえばClおよびF、またはCNで置換されていてもよく、1以上の非隣接C原子は−O−、−S−、−CO−、−COO−または−O−CO−で置換されていてもよく;複数の基R1は互いにまたはR2、R3および/またはR4とともに単環式または多環式の脂肪族または芳香族の環構造を形成してもよく、
2はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、これらにおいて、1以上の水素原子はハロゲンたとえばClおよびF、またはCNで置換されていてもよく、1以上の非隣接C原子は、−O−、−S−、−CO−、−COO−または−O−CO−で置換されていてもよく;複数の基R2は互いにまたはR1、R3および/またはR4とともに単環式または多環式の脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよく、
Xはそれぞれの場合に、同一または異なり、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−O−CO−または二価の基−(CR34n−であり、
Zはそれぞれの場合に、同一または異なり、二価の基−(CR34n−であり、
3、R4はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルもしくはチオアルコキシ基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、これらにおいて、1個以上の水素原子はハロゲンたとえばClもしくはF、またはCNで置換されていてもよく;2以上の基R3またはR4は互いにまたはR1もしくはR2とともに環構造を形成していてもよく、
nはそれぞれの場合に、同一または異なり、0ないし20、好ましくは1ないし10、特に1ないし6の整数であり;
ただし、式(I)または式(II)または式(III)のこれらの基の数は利用可能なすなわち置換可能なH原子の最大数によって制限される)。
【0033】
これらの単位の架橋は、たとえば、この段階でのデバイスの熱処理により行うことができる。架橋のためのフォトアシッドも任意に加えることができる。フォトアシッドの添加なしの熱的架橋が好ましい。たとえば、塩または酸のようなさらなる補助物質を同様に任意に加えてもよく、これらはバッファー層および導電性ポリマー層の両方に加えられる。この架橋は、好ましくは、不活性雰囲気中において80から200℃の温度で0.1から60分の期間のあいだ行われる。この架橋は、特に好ましくは、不活性雰囲気中において100から180℃の温度で1から30分の期間のあいだ行われる。
【0034】
本発明はさらに、上述した本発明によるバッファー層の製造のための架橋可能なポリマーの使用方法に関する。
【0035】
デバイスの製造のためには、以下の一般的方法(これらはさらなる進歩性なしに個々の場合に相応して合わせることができるであろう)が一般的に用いられる。
【0036】
・基板(たとえばガラスまたはプラスチック)をアノード(たとえばインジウム錫酸化物、ITOなど)で被覆する。続いて、アノードを構造化し(たとえば、フォトリソグラフィーにより)、所望の用途に従って接続する。アノードで被覆し、予備洗浄した基板を、オゾンもしくは酸素プラズマにより処理するか、またはエクシマランプで短時間照射する。
【0037】
・続いて、導電性ポリマー、たとえば、ドープされたポリチオフェン(PEDOT)またはポリアニリン誘導体(PANI)を、スピンコーティングまたは他のコーティング法によりITO基板に薄層の形態で塗布する。
【0038】
・本発明による架橋可能なバッファー層をこの層に塗布する。この目的のために、対応する化合物を、まず、好ましくは保護ガス下で溶媒または溶媒混合物に溶解し、ろ過する。好適な溶媒は、芳香族液体(たとえばトルエン、キシレン、アニゾール、クロロベンゼン)、環状エーテル(たとえば、ジオキサン、メチルジオキサン、THF)、またはアミド(たとえばNMP、DMF)のみならず、WO02/072714に記載されている溶媒混合物である。上述した支持体を、たとえばスピンコーティング方法によりこれらの溶液を用いて表面全体にわたってコーティングするか、または印刷法、特にインクジェット印刷により構造化された仕方でコーティングすることができる。このとき、この段階で不活性雰囲気中においてデバイスを加熱することにより、架橋を行うことができる(カチオン架橋可能な基を使用した場合)。フォトアシッドを添加し架橋を照射により開始してもよく、これも構造化を達成することを可能にする。架橋可能な基のタイプに応じて、さまざまの方式で架橋を開始することができる。続いて、たとえばTHFのような溶媒によるリンスを任意に行ってもよい。最後に乾燥を行う。
【0039】
・これに有機半導体の溶液を塗布する。ここで、構造化されたデバイスの製造に好適なのは、特に印刷法、たとえばインクジェット印刷である。バッファー層の架橋は、バッファー層がプロセス中に溶解する問題なしに、溶液からの有機半導体の塗布を可能にする。
【0040】
・たとえば電荷注入層または電荷輸送層または正孔阻止層のようなさらなる機能性層を、任意に、たとえば溶液からのみならず気相成長によりこれらのポリマー層に塗布してもよい。
【0041】
・続いてカソードを塗布する。これは、真空プロセスによる先行技術に従って行われ、たとえば、熱的気相成長によりまたはプラズマスプレー(スパッタリング)により行うことができる。
【0042】
・用途の多くは水、酸素または大気の他の成分に敏感に反応するので、デバイスの有効な封止が極めて重要である。
【0043】
・上述した構造を、さらなる進歩性なしに、個々の用途に相応して適合させ最適化し、一般にさまざまな用途、たとえば有機およびポリマー発光ダイオード、有機太陽電池、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機集積回路、有機光増幅器または有機レーザーダイオードに用いることができる。
【0044】
驚くべきことに、導電性のドープされたポリマーと有機半導体との間に導入されるこの架橋可能なバッファー層は、以下の利点を提供する。
【0045】
1)本発明による架橋可能なバッファー層の導入は、このタイプのバッファー層のないデバイスと比較して、電子デバイスの光電子特性を改善する。したがって、より高い効率とより長い耐用寿命が認められる。
【0046】
2)バッファー層の架橋は、架橋不能なバッファー層(これはアニーリングとリンスにより薄い不溶層を形成するだけである)で可能であるより厚いバッファー層を製造することを可能にする。これらのより厚い架橋したバッファー層では、先行技術による架橋していないより薄いバッファー層よりも、良好なデバイスの結果が得られる。
【0047】
3)バッファー層のカチオン架橋は、低いガラス転移温度、したがってアニーリングのための低分子量材料への依存を克服する。今や、この目的のために高分子量材料も用いることができるという事実は、バッファー層をインクジェット印刷により塗布することを可能にする。
【0048】
4)バッファー層の架橋は、不溶な層を与える。このことは、バッファー層を溶解することなく、かつバッファー層材料と有機半導体との混合物を形成することなく、印刷法たとえばインクジェット印刷により、次の有機半導体の層を塗布することを可能にする。これは、先行技術によるバッファー層では可能でなく、構造化されたデバイスの製造にとって非常に重要なことである。
【0049】
本発明を以下の例によってより詳細に説明するが、これらに限定されることを望むものではない。これらの例においては、有機およびポリマー発光ダイオードのみを論じる。しかし、当業者は、進歩性なしに、列挙した例から、たとえば、O−SC、O−FET、O−TFT、O−IC、有機光増幅器およびO−レーザーのようなさらなる電子デバイスを製造し、多くのさらなる用途に言及することが可能であろう。
【0050】

例1:架橋可能なバッファー層の層厚
60nmの厚さを有する架橋可能なバッファー層Aの層(構造Aを有するポリマー)を、以下の層構造を有するデバイスにスピンコーティングにより塗布した:ガラス//150nmITO//80nmPEDOT(200℃で10分間アニーリングした)。続いて、デバイスを、180℃で1時間加熱した。PEDOTはポリチオフェン誘導体である(ゴスラーのH.C.StarckからのBaytron P4083)。デバイスをスピニングによりトルエンで洗浄し、得られた層厚を測定した。バッファー層について60nm(±2nm)の層厚が測定された。
【0051】
例2(比較):架橋不能なバッファー層の層厚
60nmの厚さを有する架橋不能なバッファー層B(構造Bを有するポリマー)の層を、以下の層構造を有するデバイスにスピンコーティングにより塗布した:ガラス//150nmITO//80nmPEDOT(10分間200℃でアニーリングした)。続いて、デバイスを180℃で1時間加熱した。デバイスをスピニングによりトルエンで洗浄し、得られた層厚さを測定した。バッファー層について10nm(±1nm)の層厚が測定された。
【0052】
例3:架橋可能なバッファー層を有するOLED
80nmの青色発光ポリマーCを、60nmバッファー層Aを有するデバイスに、スピンコーティングにより塗布した。測定された全体(PEDOT+バッファー層+発光ポリマー)の層厚は、220nm(±4nm)であった。用いたカソードは、すべての場合に、アルドリッチからのBaおよびアルドリッチからのAgであった。PLEDを一般的に製造できる方法は、たとえば、WO04/037887およびその中に引用されている文献に詳細に記載されている。
【0053】
このデバイスについて4.1cd/Aの最大効率および640hの耐用寿命(800cd/m2から開始)が測定された。
【0054】
例4(比較):架橋不能なバッファー層を有するOLED
80nmの青色発光ポリマーCを、60nmバッファー層B(トルエンでリンスしていない)を有するデバイスに、スピンコーティングにより塗布した。測定された全体(PEDOT+バッファー層+発光ポリマー)の層厚は、170nm(±3nm)であった。
【0055】
このデバイスについて3.5cd/Aの最大効率および420hの耐用寿命(800cd/m2から開始)が測定された。
【0056】
例5(比較):バッファー層のないOLED
80nmの青色発光ポリマーCを、ガラス//150nmITO//80nmPEDOT(200℃で10分間アニーリングした)からなるデバイスに、スピンコーティングにより塗布した。測定された全体(PEDOT+バッファー層+発光ポリマー)の層厚は、160nm(±3nm)であった。
【0057】
このデバイスについて3.1cd/Aの最大効率および180hの耐用寿命(800cd/m2から開始)が測定された。
【0058】
ポリマーA、BおよびCならびに対応するモノマーは、WO02/10129、WO03/020790およびWO03/048225に記載されているように合成した。ポリマーA、BおよびCの組成と構造を、明確にするために、以下に示す。
【化3】

【0059】
このように、例1および比較例2から明らかなように、架橋可能なバッファー層は、その後に発光ポリマーを塗布することができる、より厚い不溶な層の製造を可能にする。特に、印刷法によって、ポリマーCを架橋されたポリマーAに塗布することも可能である。というのは、後者はもはや溶媒に溶けないからである。一方、ポリマーCを架橋していないポリマーBに塗布することはできない。というのは、後者はそのことによって溶解するからである。同様に、例3および比較例4から、ポリマーCは、バッファー層とともに用いれば、バッファー層なしにそれをPEDOTに直接塗布した比較例5と対照的に、より高い効率とより長い耐用寿命を示すことが明らかである。ここで、架橋可能なバッファー層の使用は、架橋不能なバッファー層の使用よりも、かなり良好な結果(高い効率、長い耐用寿命)をもたらすことが目立つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、アノードと、少なくとも1層の導電性のドープされたポリマーと、少なくとも1層の有機半導体とを備えた有機電子デバイスであって、少なくとも1層の導電性または半導体性の架橋可能なポリマーバッファー層が、ドープされたポリマーと有機半導体との間に導入されていることを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項2】
有機またはポリマー発光ダイオード(OLED、PLED)、有機太陽電池(O−SC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC)、有機電界クエンチ素子(FQD)、有機光増幅器または有機レーザーダイオード(O−レーザー)であることを特徴とする請求項1記載の有機電子デバイス。
【請求項3】
用いられる導電性のドープされたポリマーは、ポリチオフェンまたはポリアニリンの誘導体であり、ポリマーに結合した酸によりまたはオキシダントによりドーピングが行われることを特徴とする請求項1または2記載の有機電子デバイス。
【請求項4】
有機半導体が少なくとも1つのポリマー化合物を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項5】
ポリマー化合物が共役ポリマーであることを特徴とする請求項4記載の有機電子デバイス。
【請求項6】
用いられる有機半導体が、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、ポリスピロビフルオレン、ポリジヒドロフェナントレン、ポリインデノフルオレン、最も広い意味でのポリ−p−フェニレン(PPP)をベースとする系、およびこれらの構造の誘導体の集合からの共役ポリマーである請求項5記載の有機電子デバイス。
【請求項7】
前記有機半導体が印刷法により塗布されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項8】
ポリマーの架橋可能なバッファー層が、架橋前に、50から500kg/molの範囲の分子量を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項9】
前記ポリマーの架橋可能なバッファー層が印刷法、特にインクジェット印刷により塗布されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項10】
前記ポリマーの架橋可能なバッファー層の層厚が1ないし300nmの範囲にあることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項11】
前記バッファー層が共役ポリマーにより構築されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項12】
前記バッファー層の材料が、トリアリールアミン、チオフェンもしくはトリアリールホスフィンのポリマーまたはこれらの系の組み合わせであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項13】
前記バッファー層の材料が、トリアリールアミン、チオフェンおよび/またはトリアリールホスフィンの誘導体と、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレンおよび/またはインデノフルオレンとのコポリマーであることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項14】
前記バッファー層がカチオン架橋可能であることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項15】
架橋可能な基が、電子リッチのオレフィン誘導体、ヘテロ原子またはヘテロ基を有するヘテロ核多重結合、またはカチオン開環重合により反応するヘテロ原子を含む環から選択されることを特徴とする請求項14記載の有機電子デバイス。
【請求項16】
前記バッファー層の材料の少なくとも1つのH原子がカチオン開環重合により反応するヘテロ環化合物で置換されていることを特徴とする請求項15記載の有機電子デバイス。
【請求項17】
前記バッファー層の材料の少なくとも1つのH原子が式(I)、式(II)または式(III)の基
【化1】

(式中、
1はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、これらにおいて、1以上の水素原子はハロゲンたとえばClおよびF、またはCNで置換されていてもよく、1以上の非隣接C原子は−O−、−S−、−CO−、−COO−または−O−CO−で置換されていてもよく;複数の基R1は互いにまたはR2、R3および/またはR4とともに単環式または多環式の脂肪族または芳香族の環構造を形成してもよく、
2はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、これらにおいて、1以上の水素原子はハロゲンたとえばClおよびF、またはCNで置換されていてもよく、1以上の非隣接C原子は、−O−、−S−、−CO−、−COO−または−O−CO−で置換されていてもよく;複数の基R2は互いにまたはR1、R3および/またはR4とともに単環式または多環式の脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよく、
Xはそれぞれの場合に、同一または異なり、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−O−CO−または二価の基−(CR34n−であり、
Zはそれぞれの場合に、同一または異なり、二価の基−(CR34n−であり、
3、R4はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルもしくはチオアルコキシ基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、これらにおいて、1個以上の水素原子はハロゲンたとえばClもしくはF、またはCNで置換されていてもよく;2以上の基R3またはR4は互いにまたはR1もしくはR2とともに環構造を形成していてもよく、
nはそれぞれの場合に、同一または異なり、0ないし20、好ましくは1ないし10、特に1ないし6の整数であり;
ただし、式(I)または式(II)または式(III)のこれらの基の数は利用可能なすなわち置換可能なH原子の最大数によって制限される。)
によって置換されていることを特徴とする請求項16記載の有機電子デバイス。
【請求項18】
前記バッファー層の架橋がフォトアシッドの添加によって開始されることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項19】
前記バッファー層の架橋がフォトアシッドの添加なしに熱処理により行われることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項20】
前記架橋が不活性雰囲気中において80から200℃の温度で0.1から60分の期間のあいだ行われることを特徴とする請求項19記載の有機電子デバイス。
【請求項21】
請求項1ないし20の1以上で規定された、バッファー層の製造のための架橋可能なポリマーの使用方法。

【公表番号】特表2007−504657(P2007−504657A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525129(P2006−525129)
【出願日】平成16年9月4日(2004.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009903
【国際公開番号】WO2005/024971
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】