説明

有機導電性ポリマー組成物、それを用いた透明導電膜及び透明導電体、並びに、該透明導電体を用いた入力装置及びその製造方法

本発明は、透明性、導電性に優れた有機導電性ポリマー組成物、透明導電膜及び透明導電体、並びに、長期間の繰返し使用にも抵抗劣化せず信頼性及び寿命を飛躍的に向上させた入力装置及びその効率的な製造方法の提供を目的とする。 前記有機導電性ポリマー組成物は、ポリチオフェン誘導体ポリマーと、水溶性有機化合物(窒素含有有機化合物を除く)と、ドーパントとを少なくとも含む。前記入力装置の製造方法は、透明基体上に前記有機導電性ポリマー組成物を用いて透明導電膜を形成し、該透明導電膜における対向する端部に、一対の第一電極を該透明導電膜に電気を導通可能に対向配置させて第一導電体を製造する第一導電体製造工程と、基体上に導電膜を形成し、該導電膜における対向する端部に、一対の第二電極を該導電膜に電気を導通可能に対向配置させて第二導電体を製造する第二導電体製造工程と、該第一導電体と該第二導電体とを互いに直交する方向に配置して貼り合わせる貼り合せ工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、タッチパネル型入力装置に好適に使用可能な有機導電性ポリマー組成物、該有機導電性ポリマー組成物を用いて形成した透明導電膜、及び該透明導電膜を用いた透明導電体、並びに、該透明導電体を用いた入力装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
タッチパネルは、液晶表示器、ブラウン管、EL(エレクトロルミネッセンス)表示器などの表示装置の前面に配置され、そのタッチ面における任意の座標が指又はペンの先端などで押圧されるとその座標位置を電気信号としてコンピュータ応用機器に出力可能な二次元情報入力装置である。近年、該タッチパネルは、携帯型情報端末などの普及・進展に伴い、そのデータ入力における優れたマン−マシンインターフェイス性能が評価されて、電子手帳やPDAなどをはじめ、携帯電話、PHS、電卓、時計、GPS、銀行ATMシステム、自動販売機、POSシステム、など多方面への応用が広がっている。該タッチパネルの中でも特に抵抗式アナログタッチパネルは、一般に、導電性を有する透明フィルムと導電性を有する透明基板とを絶縁性スペーサーを介して対向配置させてなり、該透明フィルムにおける任意の座標が指又はペンの先端などで押圧されると該透明フィルムが撓んで前記透明基板に部分的に接触して電位を出力可能であり、各種の入力装置等として応用可能である。
従来、前記透明フィルムとしては、ITO(インジウム錫酸化物)導電層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが多く用いられてきた。しかしながら、この場合、前記ITO(インジウム錫酸化物)自体は、セラミックスの一種であることから、前記ITO導電層は、前記PETフィルムが変形する度に応力を受け、長期間に亘る繰り返しの使用により、脆性破壊し、抵抗劣化が生じてしまう。また、前記ITO導電層は、スパッタリングなどにより前記PETフィルム上の全面に形成されるのが通常であり、そのパターニングにはフォトリソグラフィー等の煩雑な手法が必要である。更に、配線パターンが形成される部分を、フォトレジスト、ソルダーレジスト、絶縁ペースト、絶縁フィルム等により絶縁させなければならない、という問題がある。
このため、前記ITO導電層上に、導電性ポリマーと非導電性ポリマーとの混合物からなる被覆層を更に形成し、長期間に亘る繰り返しの使用の結果、前記ITO導電層が脆性破壊しても、該被覆層により前記ITO導電層の不連続性をカバーし抵抗劣化が生じないようにする提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この場合、前記被覆層の形成に多大なコストを要してしまうという問題がある。
また、前記ITO導電層に代えて、有機導電性高分子化合物及びp型無機半導体を含む膜を用いることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この場合、該膜の繰返し使用時の耐久性が十分でなく、タッチパネル等の用途には向かないという問題がある。
【特許文献1】 特表平11−506849号公報
【特許文献2】 特開2002−93242号公報
本発明は、従来における問題を解決し、透明性及び導電性に優れ、低コストで容易に所望の形状の透明導電膜を形成可能な有機導電性ポリマー組成物、低コストで所望の形状に量産可能であり、透明性、導電性、可撓性等に優れ、タッチパネル型入力装置に特に好適な透明導電膜及び透明導電体、並びに、タッチパネル型入力装置等として低コストで量産可能であり、長期間に亘って繰り返し使用しても抵抗劣化せず、信頼性及び寿命を飛躍的に向上させた入力装置及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明の有機導電性ポリマー組成物は、下記一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体ポリマーと、水溶性有機化合物(窒素含有有機化合物を除く)と、ドーパントとを少なくとも含むことを特徴とする。
一般式(1)

該有機導電性ポリマー組成物においては、該ポリチオフェン誘導体ポリマーと、該水溶性有機化合物(窒素含有有機化合物を除く)と、該ドーパントとを少なくとも含むことにより、透明性及び導電性に優れ、低コストで容易に所望の形状の透明導電膜を形成可能である。
本発明の透明導電膜は、本発明の有機導電性ポリマー組成物を用いて形成され、かつ表面抵抗率が10,000Ω/□以下であることを特徴とする。
該透明導電膜は、低コストで所望の形状に量産可能であり、透明性、導電性、可撓性等に優れ、タッチパネル型入力装置に特に好適である。
本発明の透明導電体は、本発明の前記透明導電膜を透明基体上に有してなることを特徴とする。
該透明導電体は、低コストで所望の形状に量産可能であり、透明性、導電性、可撓性等に優れ、タッチパネル型入力装置に特に好適である。
本発明の入力装置は、第一導電体と、該第一導電体に対し絶縁性0スペーサーを介して対向配置された第二導電体とを有してなり、該第一導電体が、本発明の前記透明導電体であり、かつ押圧により変形して前記第二導電体に部分的に接触可能であることを特徴とする。
該入力装置においては、前記第一導電体における任意の位置で押圧されると該第一導電体が変形し、前記第二導電体に部分的に接触する。押圧された該第一電極における座標位置が電気信号として出力され検知される。該入力装置を長期間に亘って繰返し使用しても、前記第一導電体が本発明の前記透明導電体であるので、抵抗劣化が生じない。このため、該入力装置においては、信頼性及び寿命が飛躍的に向上し、耐久性が要求されるタッチパネル型入力装置等に特に好適である。
本発明の入力装置の製造方法は、透明基体上に本発明の前記有機導電性ポリマー組成物を用いて透明導電膜を形成し、該透明導電膜における対向する端部に、一対の第一電極を該透明導電膜に電気を導通可能に対向配置させて第一導電体を製造する第一導電体製造工程と、基体上に導電膜を形成し、該導電膜における対向する端部に、一対の第二電極を該導電膜に電気を導通可能に対向配置させて第二導電体を製造する第二導電体製造工程と、該第一導電体と該第二導電体とを、前記第一電極と前記第二電極とが互いに直交する方向に配置して貼り合わせる貼り合せ工程とを含むことを特徴とする。
該入力装置の製造方法では、前記第一導電体製造工程において、透明基体上に本発明の前記有機導電性ポリマー組成物を用いて透明導電膜が形成され、該透明導電膜における対向する端部に、一対の第一電極を該透明導電膜に電気を導通可能に対向配置させて第一導電体が製造される。前記第二導電体製造工程において、基体上に導電膜が形成され、該導電膜における対向する端部に、一対の第二電極を該導電膜に電気を導通可能に対向配置させて第二導電体が製造される。前記貼り合せ工程において、前記第一導電体における前記第一電極と、前記第二導電体における前記第二電極とが互いに直交する方向に配置されて貼り合わせられる。その結果、本発明の入力装置が製造される。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の入力装置の一例を示す断面概略説明図である。
図2は、本発明の入力装置の一例を示す概略平面図である。
図3は、本発明の入力装置の製造方法における工程を示す概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
(入力装置)
本発明の入力装置は、第一導電体と第二導電体とを有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有してなる。
−第一導電体−
前記第一導電体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、可撓性を有し透明であるのが好ましく、透明導電体が特に好適に挙げられる。該第一導電体は、押圧されると変形して前記第二導電体に部分的に接触可能である。
なお、前記透明には、無色透明のほか、有色透明、半透明、有色半透明などが含まれる。
前記透明導電体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、本発明の透明導電体が特に好適に挙げられる。
前記本発明の透明導電体は、以下の透明基体上に以下の透明導電膜を有してなる。
該本発明の透明導電体の用途としては、例えば、タッチパネル型入力装置、コンデンサー、二次電池、接続用部材、高分子半導体素子、帯電防止フィルム、ディスプレイ、エネルギー変換素子、レジスト、などが挙げられる。
該本発明の透明導電体は、低コストで所望の形状に量産可能であり、透明性、導電性、可撓性等に優れ、前記本発明の透明導電体に好適であり、長期間に亘り繰り返し使用しても抵抗劣化せず、信頼性及び寿命を飛躍的に向上可能な点で特にタッチパネル型入力装置等の入力装置に好適である。
−−透明基体−−
前記透明基体としては、特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。
前記材料としては、例えば、樹脂などが好適に挙げられる。該樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリオレフィンポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、酢酸セルロース、硝酸セルロース、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性及び可撓性に優れる点で、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
前記形状としては、例えば、タッチパネル型入力装置などに応用される場合には板状が好適に挙げられる。
前記構造としては、1種単独の部材等で形成された構造であってもよいし、2以上の部材等が組合された構造であってもよい。
前記厚みとしては、例えば、タッチパネル型入力装置などに応用される場合には、機械的強度が十分でありかつ適度な可撓性を示す程度の厚みが好ましい。
−−透明導電膜−−
前記透明導電膜としては、透明であり、導電性を有していればよく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、本発明の透明導電膜が特に好適に挙げられる。
前記本発明の透明導電膜における電気抵抗値としては、表面抵抗率として、10,000Ω/□以下であることが必要であり、5000Ω/□以下が好ましく、2500Ω/□以下がより好ましい。
前記表面抵抗率が10,000Ω/□を超えると、入力時の応答性が低下することがある。
前記表面抵抗率は、例えば、JIS K6911、ASTM D257、などに準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
前記本発明の透明導電膜における厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.01〜10μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。
前記厚みが、0.01μm未満であると、前記透明導電膜の抵抗が不安定化することがあり、10μmを超えると、前記透明基体との密着性が低下することがある。
前記本発明の透明導電膜の形成方法としては、特に制限はなく公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、塗布法、印刷法、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記塗布法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、グラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、などが挙げられる。
前記印刷法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、スクリーン印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、などが挙げられる。
前記本発明の透明導電膜は、前記透明基体上の全面に形成されていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。後者の場合、タッチパネル型入力装置等の入力装置において、電極や配線パターンなどを形成するスペースを確保する必要がある場合に有利である。即ちタッチパネル型入力装置等の入力装置においては、一般に前記透明基体上の全面に形成したITO導電層をエッチングによる除去又は絶縁フィルムによる被覆等する必要があり、処理が複雑で高コストであるが、この場合にはその必要がなく処理が簡便で低コストである点で有利である。
前記本発明の透明導電膜は、低コストで所望の形状に量産可能であり、透明性、導電性、可撓性等に優れ、前記本発明の透明導電体に好適であり、長期間に亘り繰り返し使用しても抵抗劣化せず、信頼性及び寿命を飛躍的に向上可能な点で特にタッチパネル型入力装置等の入力装置に好適である。
前記本発明の透明導電膜は、本発明の有機導電性ポリマー組成物を用いて形成されること以外には、特に制限はなく、その形状、構造、大きさ等については目的に応じて適宜選択することができる。
前記本発明の有機導電性ポリマー組成物は、ポリチオフェン誘導体ポリマーと、水溶性有機化合物(窒素含有有機化合物を除く)と、ドーパントとを少なくとも含んでなり、更に必要に応じて、分散溶媒、その他の成分を含む。
−−−ポリチオフェン誘導体ポリマー−−−
前記ポリチオフェン誘導体ポリマーは、下記一般式(1)で表され、市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。
一般式(1)

前記ポリチオフェン誘導体ポリマーの合成の方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、以下の方法などが好適に挙げられる。
即ち、まず、該スキームに示す通り、チオジグリコール酸を出発物質とした5段階の合成により、3,4−エチレンジオキシチオフェン(モノマー)を合成する。

なお、前記3,4−エチレンジオキシチオフェン(モノマー)は、バイエル社よりBAYTRON M(登録商標)の商品名にて市販もされている。
次に、該3,4−エチレンジオキシチオフェン(モノマー)と、酸化剤としてp−トルエンスルホン酸第二鉄と、溶媒としてブタノールとを、混合攪拌し、20〜180℃で30分以上重合反応させることにより、前記ポリチオフェン誘導体ポリマーを合成する。
なお、このとき、前記p−トルエンスルホン酸第二鉄の前記ブタノール中の濃度は、30〜60質量%であることが好ましく、また、前記3,4−エチレンジオキシチオフェンと前記p−トルエンスルホン酸との質量混合比(3,4−エチレンジオキシチオフェン:p−トルエンスルホン酸)は、1:0.2〜1:5が好ましい。
前記ポリチオフェン誘導体ポリマーの前記有機導電性ポリマー組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1〜10質量%が好ましい。
前記含有量が、0.1質量%未満であっても10質量%を超えても、該有機導電性ポリマー組成物の電気抵抗値が十分に低下しないことがある。
−−−水溶性有機化合物−−−
前記水溶性有機化合物(窒素含有有機化合物を除く)としては、水溶性の有機化合物であれば特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。なお、本発明においては、前記窒素含有化合物を有する有機導電性ポリマー組成物で形成した膜は表面抵抗率が高く、高性能なタッチパネル型入力装置等には不向きであるため、該水溶性有機化合物から前記窒素含有化合物は除かれる。一方、前記酸素含有化合物を有する有機導電性ポリマー組成物で形成した膜は表面抵抗率が低く、高性能なタッチパネル型入力装置等に好適である。
なお、前記水溶性の程度としては、例えば、25℃の水に対し、1質量%以上溶解するものが好ましく、5質量%以上溶解するものがより好ましい。
前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、水酸基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物、などが挙げられる。
前記水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどが挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。
前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、などが挙げられる。
前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、などが挙げられる。
前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが好ましい。
前記水溶性有機化合物の沸点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、120℃以上であることが好ましい。
前記沸点が120℃未満であると、前記水溶性有機化合物が揮発し易く、前記有機導電性ポリマー組成物の電気抵抗値が十分に低下しないことがある。
前記水溶性有機化合物の前記有機導電性ポリマー組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜50質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
前記含有量が、0.1質量%未満であっても50質量%を超えても、該有機導電性ポリマー組成物の抵抗値が十分に低下しないことがある。
−−−ドーパント−−−
前記ドーパントとしては、電気抵抗値を低下させることができる限り特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、電子吸引性物質(エレクトロン・アクセプタ)などが好適に挙げられる。
前記電子吸引性物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ルイス酸、などが挙げられる。
前記ルイス酸としては、電子を収容可能である限り特に制限はなく、例えば、スルホン酸化合物、ホウ酸化合物、リン酸化合物、塩素酸化合物、などが挙げられる。
前記スルホン酸化合物としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ショウ脳スルホン酸、ポリビニルナフタレンスルホン酸、などが挙げられる。
前記ホウ酸化合物としては、例えば、テトラフルオロホウ酸、などが挙げられる。
前記リン酸化合物としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸、などが挙げられる。
前記塩素酸化合物としては、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸が好ましい。
前記ドーパントの前記有機導電性ポリマー組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
前記含有量が、10質量%未満であっても50質量%を超えても、前記有機導電性ポリマー組成物の抵抗値が十分に低下しないことがある。
なお、前記ドーパントの前記有機導電性ポリマー組成物中の含有量を制御することにより、該有機導電性ポリマー組成物を用いて形成した前記本発明の透明導電膜の電気抵抗値を所望の程度に制御することができる。
−−−分散溶媒−−−
前記分散溶媒としては、前記ポリチオフェン誘導体ポリマー、前記水溶性有機化合物及び前記ドーパントを溶解可能である限り特に制限はなく、例えば、極性溶媒、などが挙げられる。
前記極性溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への悪影響が少ない点で水が好ましい。
−−−その他の成分−−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、公知の添加剤等の中から適宜選択することができ、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、表面改質剤、脱泡剤、可塑剤、抗菌剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記本発明の有機導電性ポリマー組成物の用途としては、タッチパネル型入力装置、各種導電膜、コンデンサー、二次電池、接続用部材、高分子半導体素子、帯電防止フィルム、ディスプレイ、エネルギー変換素子、レジスト、などの各種分野が挙げられる。
前記本発明の有機導電性ポリマー組成物は、前記本発明の透明導電膜、前記本発明の透明導電体、前記本発明の入力装置等に好適に使用することができる。
−第二導電体−
前記第二導電体は、前記第一導電体に対し絶縁性スペーサーを介して対向配置される。
前記第二導電体としては、導電性を有する限り特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、基体上に導電膜を有するものなどが挙げられる。
−−基体−−
前記基体としては、特に制限はなく、その材料、色、形状、構造、大きさ等については適宜選択することができる。
前記材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基材としての硬度に優れ、またその表面への導電層の形成のし易さ等の点で、ガラス、樹脂などが好適に挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、硬質樹脂、などが挙げられる。該硬質樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、硬質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、などが挙げられる。
前記色としては、有色であってもよいし、無色であってもよく、用途等に応じて適宜選択することができるが、前記無色の場合、有色透明、無色透明、半透明などが挙げられる。
前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、液晶表示器などに配置される観点から板状のものが好適に挙げられる。
−−導電膜−−
前記導電膜としては、特に制限はなく、公知の導電膜の中から適宜選択することができ、例えば、ITO導電膜、前記透明導電膜、などが挙げられる。
前記ITO導電膜は、蒸着法やスパッタリング法、などの公知の薄膜形成方法により形成することができる。
なお、前記第二導電体として、上述した本発明の透明導電体を用いてもよい。この場合、前記第一導電体及び該第二導電体の双方が可撓性を有する結果、該入力装置を曲面状に配置でき、設置場所、デザインの選択の自由度を向上でき、ガラスなどの硬質材料を使用しないため小型軽量化が可能で携帯性に優れた装置等にできる点で有利である。
前記絶縁性スペーサーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、その材料としては、例えば、アクリル系樹脂、などが挙げられる。
前記絶縁性スペーサーの形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、フォトリソグラフィー、などが挙げられる。
−その他の部材−
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電極、ランドパターン、配線パターン、ドットスペーサー、などが挙げられる。
前記電極、前記ランドパターン及び前記配線パターンとしては、電気を導通可能である限り特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエステル系銀ペースト、などが挙げられる。
前記電極、前記ランドパターン及び前記配線パターンの形成方法としては、特に制限はなく、公知の電極形成方法の中から適宜選択することができ、例えば、塗布方法、印刷方法、などの方法が挙げられる。
前記ドットスペーサーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、その材料としては、例えば、アクリル系樹脂、などが挙げられ、その形状としては、例えば、ドット状などが挙げられる。
前記ドットスペーサーの形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、フォトリソグラフィー、などが挙げられる。
以下に、本発明の入力装置の一例について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の入力装置の一例を示す断面概略説明図である。
該入力装置は、タッチパネル型入力装置であり、該入力装置においては、指先等による入力が行われるタッチ面となる前記第一導電体としての前記本発明の透明導電体と、前記第二導電体とが、絶縁性スペーサー50を介して対向配置されている。前記本発明の透明導電体は、透明基体1上に、前記本発明の透明導電膜である透明導電膜2を有してなる。前記第二導電体は、基体11上に導電膜10を有してなる。導電膜10上にはドットスペーサー40が形成されている。
該入力装置においては、前記第一導電体が、前記本発明の透明導電体であり、可撓性を有するため、該透明導電体が外部から押圧されると、該透明導電体が変形し、透明導電膜2が導電膜10に部分的に接触する。その結果、電位が出力可能となり入力装置が駆動する。
図1に示す本発明の入力装置について、図2を参照しながら更に説明する。図2は、図1に示す入力装置の概略平面図である。
図2に示す通り、前記第一導電体には、透明導電膜2が部分的に形成され、一対の第一電極5が透明導電膜2と接した状態で対向配置されている。第一電極5における一端部には、透明導電膜2と接していない絶縁部において、ランドパターン7が対向形成され、また、配線パターン20が形成されている。
一方、前記第二導電体には、導電膜10が部分的に形成され、一対の第二電極15が導電膜10と接した状態で対向配置されている。導電膜10と接していない絶縁部において配線パターン20が形成されている。
このため、該入力装置においては、前記第一導電体と前記第二導電体とが接触していない場合には、電流が生じないが、両者が一部接触すると、その箇所において電流が生じ、入力が行われる。
本発明の入力装置は、長期間に亘って繰返し使用しても、前記第一導電体が本発明の前記透明導電体であるので、抵抗劣化が生じない。このため、該入力装置においては、信頼性及び寿命が飛躍的に向上し、各種の機器に好適に使用することができるが、耐久性が要求されるタッチパネル型入力装置等に特に好適に使用することができる。
本発明の入力装置は、公知の製造方法の中から適宜選択した方法により製造することができるが、以下の本発明の入力装置の製造方法により、好適に製造することができる。
(入力装置の製造方法)
本発明の入力装置の製造方法は、第一導電体製造工程と、第二導電体製造工程と、貼り合せ工程とを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程とを含む。
−第一導電体製造工程−
前記第一導電体製造工程は、前記透明基体上に前記本発明の有機導電性ポリマー組成物を用いて前記透明導電膜を形成し、該透明導電膜における対向する端部に、一対の第一電極を該透明導電膜に電気を導通可能に対向配置させて前記第一導電体を製造する工程である。
前記透明基体、前記有機導電性ポリマー組成物、前記透明導電膜、前記透明導電膜等の詳細、これらの形成方法等については、上述した通りである。
前記第一電極としては、特に制限はなく、公知の電極の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル系銀ペーストを用いて形成した電極、などが挙げられる。
前記第一電極の形成方法としては、特に制限はなく公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、上述の塗布法、上述の印刷法、などの方法が挙げられる。
前記第一電極は、例えば、前記透明導電膜の両端部に対向して、かつ該透明導電膜に対し電気を導通可能にその一部が接触した状態で配置される。
前記第一電極の一端には、ランドパターンが対向して設けられていることが好ましい。該ランドパターンは、例えば、導電性樹脂を介して配線パターンと接続されて、前記第一電極へ電気を導通可能とする部分であり、前記透明導電膜と接触しない絶縁部に形成されることが好ましい。
−第二導電体製造工程−
前記第二導電体製造工程は、前記基体上に前記導電膜を形成し、該導電膜における対向する端部に、一対の前記第二電極を該導電膜に電気を導通可能に対向配置させて第二導電体を製造する工程である。
前記基体、前記導電体等の詳細、これらの形成方法等については、上述した通りである。
前記第二電極としては、特に制限はなく、公知の電極の中から適宜選択した電極が挙げられ、例えば、ポリエステル系銀ペーストを用いて形成した電極、などが挙げられる。
前記第二電極の形成方法としては、特に制限はなく公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、上述の塗布法、上述の印刷法、などの方法が挙げられる。
前記第二電極は、例えば、前記導電膜の両端部に、かつ該導電膜に対し電気を導通可能にその一部が接触した状態で配置される。
前記第二電極の一端には、配線パターンが対向して設けられていることが好ましい。該配線パターンは、前記第一電極及び前記第二電極へ電気を導通可能とする部分であり、前記導電膜と接触しない絶縁部に形成されることが好ましい。
−貼り合せ工程−
前記貼り合せ工程は、前記第一導電体と前記第二導電体とを、前記第一電極及び前記第二電極とが互いに直交する方向に配置して貼り合わせる工程である。
前記貼り合せ工程における貼合せの方法としては、前記第一導電体と前記第二導電体とを貼り合わせることができる限り特に制限はなく、公知の貼合方法等の中から適宜選択することができ、例えば、両面テープを用いる方法、接着剤を用いる方法、加熱する方法、加圧する方法、これらの併用法、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、以下の前記両面テープを用いる方法が好ましい。即ち、前記第二導電体の外周部に両面テープを額縁状に貼付し、該両面テープ1辺の両端部に孔を設け、該孔に導電性樹脂を滴下した後、該第二導電体に前記第一導電体を貼合せる方法が好ましい。この場合、貼合せ後においても該第一導電体と該第二導電体とを簡便に電気を導通可能にすることができる。
前記導電性樹脂としては、導電性を有する限り特に制限はなく、公知の導電性樹脂の中から適宜選択することができ、例えば、エポキシ系導電性樹脂、などが挙げられる。
ここで、本発明の入力装置の製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。
まず、図3中段に示すように、前記透明基体としての透明導電膜形成用フィルム上に、前記本発明の有機導電性ポリマー組成物を部分的に印刷することにより前記透明導電膜(本発明の透明導電膜)(図示せず)を形成する。その後、該透明導電膜に一対の第一電極を対向配置させ、該透明導電膜と接しない絶縁部(前記透明導電膜形成用フィルム)上に、所定のパターンマスクを介して銀ペーストにより印刷してランドパターン7を形成し、前記第一導電体を製造する。以上が前記第一導電体製造工程である。
一方、図3上段に示すように、前記基体としての透明導電膜形成用基板上に、例えばITO導電膜である前記導電膜(図示せず)を全面に形成する。その後、該導電膜の周辺部を、定法によりレジストを塗布し、エッチングすることにより除去して、前記絶縁部を形成する。なお、前記導電膜の周辺部に、定法により絶縁ペーストを印刷することにより前記絶縁部を形成してもよい。そして、一対の第二電極15及び配線パターン20を前記絶縁部上に形成する。なお、配線パターン20は、所定のパターンマスクを介して銀ペーストを印刷することにより形成することができる。こうして前記第二導電体を製造する。以上が、前記第二導電体製造工程である。
次に、図3上段に示すように、前記第二導電体上に、両面テープを額縁状に貼り付け、該額縁状の両面テープにおける一辺の両端に、一対の孔が設けられており、該孔には導電性樹脂が充填される。その後、前記第一電極と前記第二電極とを直交方向に配置するようにして前記第一導電体と前記第二導電体とを貼り合わせる。なお、このとき、ランドパターン7と前記導電性樹脂とが接触するようにしておくと、貼合せ後においても前記第一電極に電気を導通可能にすることができる。以上が、前記貼り合せ工程である。
本発明の入力装置の製造方法によると、前記本発明の入力装置を簡便にかつ効率的に製造することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例は、前記本発明の有機導電性ポリマー組成物により形成した前記本発明の透明導電膜を用いた前記本発明の透明導電体を備えた前記本発明の入力装置を、前記本発明の入力装置の製造方法により製造する内容である。
【実施例1】
−有機導電性ポリマー組成物の調製−
前記ポリチオフェン誘導体として下記の一般式(1)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)に前記ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を30質量%ドープした物質を、前記分散溶媒としての水に、2質量%含有させた溶液(長瀬産業社製、DENATRON #5002T)に、前記水溶性有機化合物としてエチレングリコール(沸点=197.2℃、和光純薬社製)を添加してその含有量を5質量%とし、各成分が均一になるまで1時間攪拌混合し、実施例1の有機導電性ポリマー組成物を調製した。
一般式(1)

【実施例2】
−有機導電性ポリマー組成物の調製−
実施例1において、エチレングリコールをジエチレングリコール(沸点=244.3℃、和光純薬社製)に替えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の有機導電性ポリマー組成物を調製した。
【実施例3】
−有機導電性ポリマー組成物の調製−
実施例1において、エチレングリコールをジメチルスルホキシド(沸点=189.0℃、和光純薬社製)に替えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の有機導電性ポリマー組成物を調製した。
【実施例4】
−有機導電性ポリマー組成物の調製−
実施例1において、エチレングリコールをプロピレングリコール(沸点=187.4℃、和光純薬社製)に替えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の有機導電性ポリマー組成物を調製した。
【実施例5】
−有機導電性ポリマー組成物の調製−
実施例1において、エチレングリコールをトリメチレングリコール(沸点=213.5℃、和光純薬社製)に替えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の有機導電性ポリマー組成物を調製した。
【実施例6】
−有機導電性ポリマー組成物の調製−
実施例1において、エチレングリコールを1,4−ブタンジオール(沸点=235.0℃、和光純薬社製)に替えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の有機導電性ポリマー組成物を調製した。
【実施例7】
−有機導電性ポリマー組成物の調製−
実施例1において、エチレングリコールをグリセリン(沸点=290.0℃、和光純薬社製)に替えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の有機導電性ポリマー組成物を調製した。
(比較例1)
−有機導電性ポリマー組成物の調製−
実施例1において、エチレングリコールをN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬社製)に替えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の有機導電性ポリマー組成物を調製した。
(比較例2)
−有機導電性ポリマー組成物の調製−
実施例1において、エチレングリコールをN−メチル−2−ピロリドン(和光純薬社製)に替えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の有機導電性ポリマー組成物を調製した。
【実施例8】
−第一導電膜(透明導電膜)及び第一導電体の作製−
前記透明基体としてのポリエチレンテレフタレート樹脂(厚さ188μm、297mm×210mm、東レ社製)による透明基板上に、実施例1で調製した有機導電性ポリマー組成物をバーコーター(No.9、ウエット膜圧20μm)を用いてバーコート法により塗布した。なお、該塗布は、該透明基板の外周部を除く部分について行った。その結果、該透明基板の外周部には絶縁部が形成された。その後、120℃の環境下で10分間加熱乾燥することにより、前記本発明の透明導電膜である前記第一導電膜(厚み:約0.4μm)を前記透明基体上に形成した。なお、該透明導電膜の表面抵抗率をJIS K6911に準拠して測定した。結果を表1に示した。
次に、図3中段に示すように、該第一導電膜の両端に対向配置させる一対の第一電極と、前記絶縁部に位置させるランドパターン7とを、それぞれ所定のパターンマスクを介してポリエステル系銀ペースト(東洋紡社製、DW−250−H5)により印刷して形成し、前記本発明の透明導電体としての前記第一導電体を作製した。
【実施例9〜14】
−第一導電膜(透明導電膜)及び第一導電体の作製−
実施例8において、実施例1で調製した有機導電性ポリマー組成物を、それぞれ順に実施例2〜7で調製した有機導電性ポリマー組成物に替えた以外は、実施例8と同様にして、それぞれ実施例9〜14の第一導電膜(透明導電膜)(厚み:約0.4μm)及び第一導電体を作製し、該第一導電膜の表面抵抗率を測定した。結果を表1に示した。
(比較例3)
−第一導電膜(透明導電膜)及び第一導電体の作製−
前記透明基体としてのポリエチレンテレフタレート樹脂(厚み:188μm、297mm×210mm、東レ社製)による透明基板上の全面に、真空蒸着法により第一導電膜(透明導電膜)としてのITO導電膜(厚み:約0.02μm)を形成した。その後、定法により該ITO導電膜にレジストを塗布し、該ITO導電膜の外周部をエッチングすることにより、ITO導電膜を除去した絶縁部を形成した。なお、実施例8と同様にして前記第一導電膜(ITO導電膜)の表面抵抗率を測定した。結果を表1に示した。
次に、図3中段に示すように、該第一導電膜(透明導電膜)上に、対向配置させる一対の第一電極と、前記絶縁部に配置させるランドパターン7とを、所定のパターンマスクを介してポリエステル系銀ペースト(東洋紡社製、DW−250−H5)により印刷して、比較例1の第一導電体を作製した。
(比較例4〜5)
−第一導電体(透明導電膜)及び第一導電体の作製−
実施例8において、実施例1で調製した有機導電性ポリマー組成物をそれぞれ比較例1〜2で調製した有機導電性ポリマー組成物に替えた以外は、実施例8と同様にして比較例4〜5の第一導電体(透明導電膜)(厚さ約0.4μm)及び第一導電体を作製し、表面抵抗率を測定した。結果を表1に示した。
【実施例15】
−タッチパネル型入力装置の製造−
タッチパネル型入力装置を図3に示すような工程により製造した。
まず、図3上段に示すように、前記基体としてのガラス板(厚み:1.1mm、400mm×300mm)上の全面に、真空蒸着法により前記導電膜としてのITO導電膜を形成し、定法により該ITO導電膜上にレジストを塗布しエッチングすることにより、配線パターン20が形成される部分のITO導電膜を除去して絶縁部を形成した。次に、該ITO導電膜上に、アクリル系樹脂を用いてフォトリソグラフィーにより、厚み5μmのドットスペーサーの形成を行った。次に、前記ITO導電膜の両端に配置させる一対の第二電極15と、前記ITO導電膜を除去した絶縁部に配置させる配線パターン20とを、所定のパターンマスクを介してポリエステル系銀ペースト(東洋紡社製、DW−250−H5)により印刷して第二導電体を作製した。次に、図3の上段に示すように、作製した第二導電体上に額縁上の両面テープを貼り付け、該額縁上の両面テープに予め設けられた一対の孔にエポキシ系導電性樹脂(藤倉化成社製、XA−910)を滴下し充填した。
次に、前記第一導電体として、実施例8の第一導電体を用い、該第一導電体における前記第一電極と、前記第二導電体における前記第二電極とが互いに直交するように、かつ、ランドパターン7と前記導電性樹脂とが互いに接触するようにして、前記第一導電体と前記第二導電体とを貼り合わせた。その後、配線引き出し用のタブ電極を前記配線パターンと接触するように圧着させてタッチパネル型入力装置を製造した。
製造したタッチパネル型入力装置について、以下のリニアリティー変化の測定を行った。結果を表2に示した。
−リニアリティー変化の測定−
製造したタッチパネル型入力装置におけるタッチ面に文字入力を行い、文字入力後の前記第一電極及び前記第二電極における電圧を測定し、リニアリティーからのずれである抵抗率変化(ΔE)を求めた。そして、同じ文字について該抵抗率変化(ΔE)の最大値が1.5%を超えるまで文字入力を繰り返し行い、該抵抗率変化(ΔE)の最大値が1.5%を超えたときの文字入力数を測定した。
【実施例16】
−タッチパネル型入力装置の製造−
タッチパネル型入力装置の製造について図3を参照しながら説明する。
図3上段に示すように、実施例2で調製した有機導電性ポリマー組成物を用いて、前記基体としてのガラス板(厚み:1.1mm、400mm×300mm)上にバーコーター(No.9、ウエット膜圧20μm)を用いて塗布を行った。該塗布は、該ガラス板の外周部を除く部分についてのみ行った。該外周部には絶縁部を形成した。その後、120℃の環境下で10分間加熱乾燥することにより前記導電膜(厚み:約0.4μm)を形成した。次に、該導電膜上に、アクリル系樹脂を用いてフォトリソグラフィーにより、厚み5μmのドットスペーサーの形成を行った。なお、前記導電膜は、実施例9で作製した透明導電膜と同じである。
次に、前記導電膜の両端に配置させる一対の第二電極15と、前記絶縁部に配置させる配線パターン20とを、所定のパターンマスクを介してポリエステル系銀ペースト(東洋紡社製、DW−250−H5)により印刷して、第二導電体を作製した。
次に、図3の上段に示すように、前記第二導電体上に額縁上の両面テープを貼り付け、該額縁上の両面テープに予め設けられた一対の孔にエポキシ系導電性樹脂(藤倉化成社製、XA−910)を滴下し充填させた。
次に、前記第一導電体として、実施例9の第一導電体を用い、前記第一電極と前記第二電極とが互いに直交するように、かつ、ランドパターン7と前記導電性樹脂とが互いに接触するようにして、前記第一導電体と前記第二導電体とを貼り合わせた。その後、配線引き出し用のタブ電極を前記配線パターンと接触するように圧着してタッチパネル型入力装置を製造し、実施例15と同様にしてリニアリティー変化を測定した。結果を表2に示した。
【実施例17】
−タッチパネル型入力装置の製造−
実施例15において、前記第一導電体として、実施例8の第一導電体を実施例10の第一導電体に替え、及び、前記第二導電体の作製において、実施例2の有機導電性ポリマー組成物を実施例3の有機導電性ポリマー組成物に替えた以外は、実施例15と同様にしてタッチパネル型入力装置を製造し、リニアリティー変化を測定した。結果を表2に示した。
(比較例6)
−タッチパネル用入力装置の製造−
実施例15において、前記第一導電体として、実施例8の第一導電体を比較例3の第一導電体に替えた以外は、実施15と同様にしてタッチパネル型入力装置を製造し、リニアリティー変化を測定した。結果を表2に示した。


表1の結果から、前記水溶性有機化合物として、沸点が120℃以上のものを使用し、かつ窒素含有化合物を使用しなかった実施例8〜14における前記透明導電膜は、比較例3におけるITO導電膜、比較例4〜5における導電膜と比較して表面抵抗率が小さく、極めて導電性に優れていた。

表2の結果から、実施例15〜17のタッチパネル型入力装置は、比較例6のタッチパネル型入力装置と比較して、2倍以上の入力を繰り返した場合であっても抵抗劣化が抑制され、リニアリティー変化が許容範囲(ΔEが1.5%以下)であり、飛躍的に信頼性及び寿命が向上した。
【産業上の利用可能性】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、透明性及び導電性に優れ、低コストで容易に所望の形状の透明導電膜を形成可能な有機導電性ポリーマー組成物、低コストで所望の形状に量産可能であり、透明性、導電性、可撓性等に優れ、タッチパネル型入力装置に特に好適な透明導電膜及び透明導電体、並びに、タッチパネル型入力装置等として低コストで量産可能であり、長期間に亘って繰り返し使用しても抵抗劣化せず、信頼性及び寿命を飛躍的に向上させた入力装置及びその効率的な製造方法を提供することができる。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体ポリマーと、水溶性有機化合物(窒素含有有機化合物を除く)と、ドーパントとを少なくとも含むことを特徴とする有機導電性ポリマー組成物。
一般式(1)

【請求項2】
水溶性有機化合物(窒素含有有機化合物を除く)の沸点が、120℃以上である請求の範囲第1項に記載の有機導電性ポリマー組成物。
【請求項3】
水溶性有機化合物(窒素含有有機化合物を除く)が、酸素含有化合物から選択される請求の範囲第1項から第2項のいずれかに記載の有機導電性ポリマー組成物。
【請求項4】
酸素含有化合物が、水酸基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物及びスルホキシド基含有化合物から選択される少なくとも1種である請求の範囲第3項に記載の有機導電性ポリマー組成物。
【請求項5】
ドーパントが、ルイス酸から選択される請求の範囲第1項から第4項のいずれかに記載の有機導電性ポリマー組成物。
【請求項6】
ルイス酸が、スルホン酸化合物、ホウ酸化合物、リン酸化合物及び塩素酸化合物から選択される少なくとも1種である請求の範囲第5項に記載の有機導電性ポリマー組成物。
【請求項7】
水を更に含有する請求の範囲第1項から第6項のいずれかに記載の有機導電性ポリマー組成物。
【請求項8】
タッチパネル型入力装置に用いられる請求の範囲第1項から第7項のいずれかに記載の有機導電性ポリマー組成物。
【請求項9】
請求の範囲第1項から第8項のいずれかに記載の有機導電性ポリマー組成物を用いて形成され、かつ表面抵抗率が10,000Ω/□以下であることを特徴とする透明導電膜。
【請求項10】
請求の範囲第9項に記載の透明導電膜を透明基体上に有してなることを特徴とする透明導電体。
【請求項11】
透明導電膜が透明基体上に部分的に形成された請求の範囲第10項に記載の透明導電体。
【請求項12】
透明基体が可撓性であり樹脂で形成された請求の範囲第10項から第11項のいずれかに記載の透明導電体。
【請求項13】
タッチパネル型入力装置に用いられる請求の範囲第10項から第12項のいずれかに記載の透明導電体。
【請求項14】
第一導電体と、該第一導電体に対し絶縁性スペーサーを介して対向配置された第二導電体とを有してなり、該第一導電体が、請求の範囲第10項から第13項のいずれかに記載の透明導電体であり、かつ押圧により変形して前記第二導電体に部分的に接触可能であることを特徴とする入力装置。
【請求項15】
第二導電体が、基体上に導電膜を有してなり、該導電膜が、ITO(インジウム錫酸化物)膜、及び、請求の範囲第9項に記載の透明導電膜の少なくともいずれかである請求の範囲第14項に記載の入力装置。
【請求項16】
第二導電体が、請求の範囲第10項から第13項のいずれかに記載の透明導電体である請求の範囲第14項から第15項のいずれかに記載の入力装置。
【請求項17】
タッチパネル型入力装置である請求の範囲第14項から第16項のいずれかに記載の入力装置。
【請求項18】
透明基体上に、請求の範囲第1項から第8項のいずれかに記載の有機導電性ポリマー組成物を用いて透明導電膜を形成し、該透明導電膜における対向する端部に、一対の第一電極を該透明導電膜に電気を導通可能に対向配置させて第一導電体を製造する第一導電体製造工程と、
基体上に導電膜を形成し、該導電膜における対向する端部に、一対の第二電極を該導電膜に電気を導通可能に対向配置させて第二導電体を製造する第二導電体製造工程と、
該第一導電体と該第二導電体とを、前記第一電極と前記第二電極とが互いに直交する方向に配置して貼り合わせる貼り合せ工程と
を含むことを特徴とする入力装置の製造方法。
【請求項19】
透明導電膜が透明基体上に部分的に形成される請求の範囲第18項に記載の入力装置の製造方法。
【請求項20】
透明導電膜が塗布法及び印刷法の少なくともいずれかにより形成される請求の範囲第18項から第19項のいずれかに記載の入力装置の製造方法。
【請求項21】
塗布法が、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、グラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法及びドクターコート法から選択される請求の範囲第20項に記載の入力装置の製造方法。
【請求項22】
印刷法が、スクリーン印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法及び平版印刷法から選択される請求の範囲第20項から第21項のいずれかに記載の入力装置の製造方法。
【請求項23】
透明基体が可撓性であり透明樹脂で形成された請求の範囲第18項から第22項のいずれかに記載の入力装置の製造方法。
【請求項24】
入力装置がタッチパネル型入力装置である請求の範囲第18項から第23項のいずれかに記載の入力装置の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/106404
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−500196(P2005−500196)
【国際出願番号】PCT/JP2003/006591
【国際出願日】平成15年5月27日(2003.5.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】