説明

有機廃棄物の処理システム及び処理方法

【課題】有機物を含む排水を有機物濃度に応じて区分して処理し、燃料資源又は水資源として活用できる有機廃棄物処理システムを提供する。
【解決手段】構造物の適所に設置したディスポーザ4にて有機廃棄物を細断して高濃度の有機排水を調製し、これを第1の固液分離手段8にて、小さい固形成分及び液状成分の混合物、及び大きい固形成分とに分離する。次に、小さい固形成分及び液状成分の混合物、及び厨房排水を混合し、第2の固液分離手段22にて、小さい固形成分と液状成分とに分離する。次にメタン発酵槽28にて、第1の固液分離手段及び第2の固液分離手段で抽出した固形成分を発酵させて、可燃ガスを得る。また、第2の固液分離手段から排出される液状成分を生物処理し、再利用水を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物の処理システム及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事業所や家庭で発生する生ごみをディスポーザ(DSP)で粉砕し、砕かれた生ゴミを生活排水に混合したもの(DSP排水)を処理設備へ搬送し、設備内でメタンガスを生成する処理を行い、生成したガスを電力発生のための燃料として、処理後の残水をトイレ用などの中水として利用するシステムが知られている(特許文献1)。
【0003】
同様のシステムにおいて、DSPとガス回収処理設備との間に粉砕した生ゴミから水分を分離するために浮上分離装置を配置することも行われている(特許文献2)。
【0004】
またDSP排水から水を再生するシステムとして、DSP排水をスクリーン分離機で大きいゴミと分離し、分離された水を浮上分離装置で小さいゴミから分離するシステムが知られている(特許文献3)。
【0005】
なお、ガス回収処理の手法として、メタン発酵の温度を40℃〜60℃とする高温発酵技術が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−181295
【特許文献2】特開2003−200197
【特許文献3】特開2003−211142
【特許文献4】特開2008−178827
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のシステムは、砕いた生ごみと生活排水とを混合するものであり、高層ビルなどの大きな対象物に適用すると排水量も膨大となり、処理能力を超えてしまう。
【0008】
そこで特許文献2〜3のように予め排水を分離することが必要となるが、全ての排水と生ごみとを一括して混合してしまうと分離装置の負担が過剰となる。
【0009】
排水と言っても、例えば残飯などの水気の多い有機廃棄物の破砕物と、大規模な厨房で食材の調理や食器の洗浄のために発生する排水(厨房排水という)とを比べると、厨房排水の有機物濃度が低く、また厨房排水と、風呂・洗面台・洗濯機・小規模の厨房などから出る雑排水とを比べると、一般的には雑排水の有機物濃度が低い。
【0010】
本出願人は、こうした事情に着目して、有機物濃度の異なる排水を別々に燃料資源・水資源として回収することを想起した。しかしながら、有機廃棄物の濃度別の排水にそれぞれ特許文献2又は特許文献3の分離技術を適用すると非常に効率が悪い。
【0011】
DSP排水は、排水の中では有機物の占める割合が大きい。槽内に水に浮かぶ異物を抽出する浮上分離技術には大量の水が必要であり、DSP排水に含まれる水分では足りない。この技術を適用するためにトイレ用水などの中水を使うのは不経済である。
【0012】
雑排水及び厨房排水に特許文献2のシステムを適用することは不可能ではないが、排水中に占める有機物の量が少ないので、やはり不経済である。
【0013】
本発明の第1の目的は、有機物を含む排水を有機物濃度に応じて区分して処理し、燃料資源又は水資源として活用できる有機廃棄物処理システムを提供することである。
【0014】
本発明の第2の目的は、排水を少なくともDSP排水と厨房排水とに分けて処理を行う有機廃棄物処理システムを提供することである。
【0015】
本発明の第3の目的は、DSP排水を大きいゴミと残りの排水とに分ける第1の段階と、その残りの排水を小さいゴミと水とに分離する第2の段階と、その分離水を再使用のために処理する第3の段階とを含み、これら第2、第3の段階を厨房排水などの処理が兼ねるようにしたシステムを提供することである。
【0016】
本発明の第4の目的は、ビルディングなどの構造物の内部で発生した有機廃棄物を構造物の内部で処理し、外部への廃棄物・排水の量を低減することが可能な有機廃棄物の処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の手段は、
構造物内に構築され、少なくとも、有機廃棄物を燃料に再生する再生機構を具備する有機廃棄物の処理システムであって、
上記再生機構は、
上記構造物の適所に設置した有機廃棄物細断用のディスポーザと、
このディスポーザから排出される高濃度の有機排水を回収するための第1取水管と、
この第1取水管を介して回収した高濃度の有機排水を、大きい固形成分と小さい固形成分及び液状成分の混合物とに分離する第1の固液分離手段と、
第1の固液分離手段から送られた小さい固形成分及び液状成分の混合物を、小さい固形成分と液状成分とに分離する第2の固液分離手段と、
第1の固液分離手段及び第2の固液分離手段で抽出した固形成分を発酵させて、可燃ガスを供給する発酵槽と、
第2の固液分離手段で分離された液体成分及び発酵槽から回収する余剰液体を構造物の外へ排出する排液手段と、
構造物内の所定の設備から厨房排水などの低濃度の有機排水を回収して第2の固液分離手段に導く第2取水管とを含む。
【0018】
本手段は、高濃度の有機排水に対して2段階の固液分離を行い、2段目に低濃度の有機排水を入れるようにすることを提案する(図1の機構A参照)。高濃度の有機排水を、低濃度の有機排水と混合する前に1段目の分離処理を行うから、効率的に有機物を取り出すことができ、2段目に低濃度の有機排水を入れるから、2種類の有機排水を別々に処理・再利用する場合に比べて、設備コスト及び運用コストを低減できる。
【0019】
前段落及び前々段落において、「2段階の」とは、3段以上の多段階の分離を排除するものではない。「構造物」とは、例えば地下構造物を含み、また単一の構造物に限定されない。「固形成分」とは、固体(定型物)より広く、泥状のものを含む。「第1の固液分離手段」は、一定の寸法以上の固形成分を抽出する機能を有する(スクリーン式など)。スクリーンの目は、第2の固液分離手段で拾える固形成分のサイズより大きい必要はない。「第2の固液分離手段」は、液体中の比較的小さい固形成分を抽出することが可能な機能を有する(スクリーン式・遠心分離式など)。
【0020】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ第2の固液分離手段は、浮上分離装置であり、第1の固液分離手段から小さい固形成分及び液状成分の混合物として抽出される少量かつ高濃度の有機排水と、厨房設備から回収機構を経て回収される大量かつ低濃度の有機排水との混合液から固形分を分離し、固形分と処理水を別々に排出する機構を有し、
第1の固形成分離手段は、スクリーン式の分離装置であることを特徴とする。
【0021】
本手段では、2段目の分離技術を浮上分離装置とすることを提案している(図1の22参照)。低濃度の有機排水を浮上分離装置の浮上槽に蓄える水として利用するので、中水などを利用する場合と比べて経済的である。
【0022】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、
かつ上記発酵槽は、槽内温度を測定するための温度センサを有し、槽内温度をメタン発酵に適した温度とするための熱の受け入れを調整できるように構成しており、
上記再生機構は、第1の固液分離手段乃至第2の固液分離手段と発酵槽との間に設けた、有機廃棄物の固形成分を一時的に蓄えるための中継槽を有し、かつ、メタン発酵に適した発酵槽内の温度環境を維持できるように中継槽から発酵槽への固形成分の移送を制御する制御装置を有している。
【0023】
本手段では、第1の固液分離手段又は第2の固液分離手段からの固形成分の移送を総合的に制御することを提案している(図1の制御装置42参照)。メタン発酵を効率的に行うためには、槽内の温度・湿度条件をコントロールすることが重要である。特に特許文献4のメタン高温発酵の技術は、有機廃棄物を高速で処理でき、有機廃棄物が所定の営業時間に多量に発生するレストランなどを構えた建物に好適である。しかし発酵条件が一度崩れると、大きく処理効率が落ちる。そこで本手段では、複数種の排水を多段階で処理する過程で各段階からの固形物の移送を全体として制御している。
【0024】
第4の手段は、第1の手段から第3の手段のいずれかを有し、かつ上記再生機構の他に補助機構を有し、この補助機構は、雑排水を一時的に蓄える堆積槽を含み、この堆積槽で中水と汚泥成分とに分離し、中水を構造物の各階層の中水使用設備に戻すとともに堆積槽内の汚泥を吸引して、第2の固液分離手段へ送るように構成している。
【0025】
本手段では、DSP排水、厨房排水の他に、雑排水を取水し、有機成分を除去するための補助機構Cを設けることを提案する(図2C参照)。前述の通り、DSP排水及び厨房排水は、逐次、有機物及び水に分離するのに対して、雑排水は、堆積槽に溜めて槽の底に汚泥が堆積するのを待って、第2の固液分離手段に送るようにしている。
【0026】
第5の手段は、第1の手段から第4の手段のいずれかを有し、かつ複数階に区画した構造物の下層側に第1の固液分離手段を配置するとともに、構造物の上層側にディスポーザを設置し、ディスポーザと第1の固液分離手段とをつなぐ第1取水管の全部又は一部を垂直に形成している。
【0027】
本手段では、複数階の構造物内で重力を利用して有機廃棄物を集め、処理することを提案している(図1の取水管6参照)。
【0028】
第6の手段は、有機廃棄物の処理方法であって、
有機廃棄物の回収対象エリアの各所に配置したディスポーザから第1取水管を介して高濃度の有機排水を回収する第1の工程と、
上記有機廃棄物の回収対象エリア内の厨房設備から第2取水管を介して低濃度の有機排水を回収する第2の工程と、
第1の取水管を介して回収した高濃度の有機排水を、大きい固形成分と、小さい固形成分及び液状成分の混合物とに分離する第3の工程と、
第1の固液分離工程で分離された小さい固形成分及び液状成分の混合物と、上記第2取水管を介して回収した低濃度の有機排水とを混合し、この混合液を小さい固形成分と液状成分とに分離する第4の工程と、
第3の工程で分離された大きな固形成分及び第4の工程で分離された小さな固形成分とを同じ発酵槽内に入れて発酵させる第5の工程と、
第5の工程の発酵により生成されたバイオガスを発酵槽から取り出す第6の工程とからなる。
【0029】
本手段は、先のシステムの運用に適した有機廃棄物の処理方法を提案する。発明の要点は、高濃度の有機排水を、より高濃度の部分(大きい固形成分)と低濃度の部分(小さい固形成分及び液状成分)とに分離し、後者を、厨房排水などの低濃度の有機排水と混合させ、この混合液に対して第2の固液分離工程を行うことである。後述の図3実施例で説明するように、厨房排水などは、ディスポーザ排水に比べて非常に膨大に発生し、しかも有機物濃度が低い。従って厨房排水の処理だけに第2の固液分離装置を稼動させることは、エネルギー効率が良くない場合があるからである。高濃度の有機排水の発生量と低濃度の有機排水の発生量とを監視し、その発生量に応じて第1の固液分離手段と第2の固液分離手段との動作を制御装置で制御するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0030】
第1の手段に係る発明によれば、高濃度の有機排水から、第1の固液分離手段で大きい固形成分を、また第2の固液分離手段で小さい固形成分をそれぞれ抽出して発酵槽に取り入れるとともに、低濃度の有機排水を第2の固液分離手段に供給したから、発酵槽への水分の流入を抑制し、発酵槽の容量を小さくすることができる。
【0031】
第2の手段に係る発明によれば、大量の低濃度の厨房排水を、少量かつ高濃度の有機排水の2段階分離の2段目に使用するから、固形成分を効率的に回収できる。
【0032】
第3の手段に係る発明によれば、第1の固液分離手段乃至第2の固液分離手段と発酵槽との間に中継槽を設け、中継槽から発酵槽への固形成分の移送を制御するから、メタンを効率良く発酵することができる。
【0033】
第4の手段に係る発明によれば、堆積槽の汚泥を第2の固液分離手段を経由して発酵槽へ送るから、第2の固液分離手段の分離性能に応じて、発酵槽の液体濃度をコントロールすることができる。
【0034】
第5の手段に係る発明によれば、構造物の上層側にディスポーザを設置し、ディスポーザと第1の固液分離手段とをつなぐ第1取水管の全部又は一部を垂直に形成したから、搬送労力ないし搬送動力を軽減できる。
【0035】
第6の手段に係る発明によれば、高濃度の有機排水を、より高濃度の部分と低濃度の部分とに分離し、後者を低濃度の有機排水と混合した後に2回目の固液分離を行うからエネルギー効率がよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機廃棄物の処理システムの全体図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る有機廃棄物の処理システムの全体図である。
【図3】本発明方法の実施例の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機廃棄物の処理システムを示している。
【0038】
本実施形態のシステムは、図1に示すように、再生機構Aと、エネルギー供給機構Bとを有している。このシステムは、一つの構造物100の内部に構築されている。
【0039】
再生機構Aは、ディスポーザ4と、第1取水管6と、第1の固液分離手段8と、中継槽16と、第2の固液分離手段22と、第2取水管26と、発酵槽28と、排水手段34と、制御装置42とで構成している。
【0040】
上記ディスポーザ4は、構造物100の処理対象物が発生する各階、もしくは複数階毎に設置している。ディスポーザの構成に限定はないが、一般なタイプは、厨房の流し台の下に粉砕手段をセットし、流し台のじゃ口からの流水により、有機廃棄物の粉砕物を第1取水管6内へ流せるように構成されている。ディスポーザは、対象物の発生源毎に設置してもよいし、複数の発生源で共有してもよい。
【0041】
上記第1取水管6は、各階のディスポーザから垂直下方へ第1の固液分離手段8へ延びている。第1取水管6は、ディスポーザから排出された高濃度の有機排水を第1の固液分離手段へ導く。
【0042】
上記第1の固液分離手段8は、スクリーン式分離装置として構成されている。これは、一定の大きさの間隙を有するスクリーン10で、間隙よりも大きい固形成分Dと、間隙よりも小さい固形成分D及び液体を分離することができるようにすればよい。上記スクリーン式分離装置は、大きい固形成分用の第1取出し口12と、小さい固形成分及び液体用の第2取出し口14とを有する。
【0043】
好適な一例として、上記のスクリーン10は、断面三角形状のロッドを、各三角形の底面が同一平面上に並ぶように一定間隔を存して配列することで形成することができる。
【0044】
上記中継槽16は、第1の固液分離手段の第1取出し口12から後述の発酵槽へ至る大径の固形成分移送管18の途中に挿入されている。有機廃棄物の量が過剰になったときに、一時的に発酵槽への供給を中断するためである。その供給量の制御は弁20で行う。中継槽は省略することができる。
【0045】
上記第2の固液分離手段22は、図示例では、浮上分離装置として構成されており、この装置は、浮上槽22aと、この浮上槽の水面近傍に設置した吸上げ口22bと、吸上げ口を介して浮遊物を吸い上げるための吸引ポンプ22cとで構成されている。
【0046】
上記吸上げ口22b及び吸引ポンプ22cは、小径の固形成分移送管24の端部及び端部近くに形成されている。また浮上槽22a内の液体は排水管25を介して後述の水処理槽に送られる。
【0047】
ここで、図示例では第2の固液分離手段を自然浮上を模した図で表しているが、加圧浮上装置や沈殿槽、またはその他の固液分離手段を用いることが可能である。なお本実施形態では第2の固液分離手段と発酵槽との間の中継槽を省略している。第2の固液分離手段の浮上槽22aが中継槽の代りの機能を果たすからである。
【0048】
上記第2取水管26は、構造物内の厨房施設の洗い場などに設置された排水口27から厨房排水を回収して上記第2の固液分離手段の浮上槽22a内へ供給する。
【0049】
上記発酵槽28は、第1の固液分離手段8及び第2の固液分離手段22から固形成分移送管18、24を介して固形成分を取り込み、発酵させ、メタンを含む可燃ガス(以下バイオガスと称する)を後述の発電装置へ送るように構成している。また発酵後に残る水(残渣水)は排水弁30を経由して後述の排水手段に送るようにしている。発酵槽の槽内は、図示しない加熱手段により高温発酵の場合50℃〜60℃、中温発酵の場合30℃〜40℃の発酵に適した温度条件に保つようにすることが望ましい。発酵槽28内には、温度などの計測手段32が設けられている。
【0050】
なお、図面では省略しているが、発酵槽28と発電装置52の中間には、発電装置の仕様に応じて、必要な流量安定化設備およびガス処理装置を設けるとよい。流量安定化設備の例としてはガスホルダー、ガス処理装置の例としては脱硫装置やシロキサン除去装置が挙げられる。
【0051】
上記排水手段34は、発酵槽から構造物の外部に至る排水管36と、この排水管の途中に設けた水処理槽38とで形成している。
【0052】
上記制御装置42は、計測手段32により発酵槽28の内部を監視し、内部の状況に応じて、第1の固液分離手段8及び第2の固液分離手段22からの固形成分の移送量を調整することができる。
【0053】
エネルギー供給機構Bは、発電装置52と給電線54と有する。
【0054】
上記発電装置52は、発酵槽28から供給されたバイオガスを燃焼し、発電をする機能を有する。発電装置は上記バイオガスのみで運転する必要はなく、ガス供給ライン53から供給された市販ガスとともに燃焼することも可能である。上記給電線54は、発電装置から構造物100内の各階へ電力を供給する。
【0055】
なお、エネルギー供給機構Bは、必ずしも電力を供給するものに限られず、例えばメタンガスを燃焼して得た熱を構造物の各部に供給するもの、あるいはエンジンないしタービンを駆動して機器に動力を供給するものでもよい。
【0056】
上記構成において、構造物内の厨房設備などで業務が開始されると、不要になった生ゴミがディスポーザ4に投棄され、調理に使用された厨房排水が排水口27に捨てられる。各ディスポーザ4から回収されたDSP排水は、第1取水管6内部を落下し、ほぼ無動力で第1の固液分離手段8に到達する。同様に厨房排水は第2取水管26内を流れ落ち、第2の固液分離手段の浮上槽22a内へ入る。
【0057】
第1の固液分離手段8内では、スクリーン10によって、DSP排水が、大きい固形成分Dと、小さい固形成分D及び水とに分離される。
【0058】
大きい固形成分Dは、中継槽16を経由して発酵槽28内に入る。但し発酵槽が一杯であったり、発酵条件を好適に維持するために新たな固形成分を受け入れることができないときには、中継槽16内に固形成分が貯蔵される。
【0059】
また小さな固形成分D及び液体は、第2の固液分離手段の浮上槽22a内に入る。この浮上槽内には、主として厨房排水として排出された水が蓄えられている。小さな固形成分Dはこの水の中を浮遊し、吸上げ口22bから吸い上げられ、発酵槽28に送られる。
【0060】
有機物の固形成分は発酵槽28内で発酵してバイオガスを生ずる。バイオガスはエネルギー供給機構Bに送られ、発電に利用される。また発酵槽から流出した処理液は、前記水処理槽で処理された後、外部に排水される。
【0061】
以下、本発明の他の実施形態を説明する。これらの説明において第1実施形態と同じ構成については同一の符号を付することで解説を省略する。
【0062】
図2は、本発明の第2実施形態に係る有機廃棄物処理システムを示している。本実施形態では、さらに雑排水を処理するための補助機構Cを有する。
【0063】
補助機構Cは、第3取水管62と、堆積槽64と、給水管66と、堆積物圧送管68と、圧送ポンプ70とで構成している。
【0064】
上記第3取水管62は、構造物100の各所の洗面台などから回収した雑排水を堆積槽に供給する。
【0065】
上記堆積槽64は、雑排水を貯水して有機成分を堆積させる。堆積槽は、図示のように構造物の下部に配置する必要はない。高層建築物の場合には、揚水のエネルギーロスを低減するために高さ方向の適所に所要数の堆積槽64を設けることができる。
【0066】
上記給水管66は、図示しない揚水手段により堆積槽64の上側の澄んだ水を中水として構造物の上層階に戻す。
【0067】
上記堆積物圧送管68は、堆積槽64の下部から第2の固液分離手段の浮上槽22aへ延びている。堆積物圧送管68の先部を、浮上槽22aではなく発酵槽に連結することも考えられる。しかしながら、その場合には、堆積槽64内の堆積物を発酵槽へ強制的に引きこむことで発酵槽内の環境が過剰に変わってしまうおそれがある。
【0068】
上記構成において、雑排水の取水及び中水の供給は日常的に随時行う。そして、堆積槽64内に堆積物が溜まったときには、圧送ポンプにより一気に堆積槽内の堆積物を浮上槽22a内へ引き出す。
【実施例】
【0069】
図3は、本発明の有機廃棄物の処理方法の手順を簡単に示すものである。
【0070】
本発明方法の主たる手順は次の通りである。この動作は有機排水の発生に応じて随時行うことができる。
(1)高濃度の有機排水を回収する第1の工程
高濃度の有機排水の回収は、各ディスポーザにゴミを投棄した後、第1の取水管を介して自動的に行われる。必ずしもシステムの一部が能動的な動作を採ることは必須ではない。もっとも本工程及び次の工程において、各有機排水の排出量を適当な検出手段で検知し、制御装置に送信してシステムの各手段の制御に使用することは可能である。
(2)低濃度の有機排水を回収する第2の工程
低濃度の有機排水の回収も、第2の取水管を介して自動的に行われる。
(3)高濃度の有機排水を、より高濃度の成分と低濃度の成分とに分離する第3の工程
この工程は、高濃度の有機排水が投入される度に逐次行うことが望ましい。一時的に発酵槽への原料を中継槽内に貯めておく必要がある場合でも、予め低濃度の成分を分離しておく方が有利だからである。
(4)上記低濃度の成分を低濃度の有機排水とを混合し、混合液を分離する第4の工程
ディスポーザ排水よりも先に多量の厨房排水が投棄された場合には、ディスポーザ排水の回収を待って、加圧浮上装置を作動させるように制御装置を構成することができる。
(5)第3〜第4の工程で分離された固形成分を発酵させる第5の工程
高効率の発酵状態を維持するために、制御装置により、第1、第2の固液分離手段からの固形成分の供給、外部からの取水量、加熱量などを制御するとよい。
(6)上記の発酵により生成されたバイオガスを発酵槽から取り出す第6の工程
(7)固液分離工程で生じた分離水及び発酵工程の残滓水を処理し、排水する第7の工程
【0071】
本発明の補助的な手順は次の通りである。適用対象エリアで発生した雑排水を第3取水管を介して堆積槽に取り込むとともに、中水用水を戻し、そして堆積槽内の堆積物を浮上槽に吸引する。吸引の動作は、一定間隔で行ってもよく、例えば浮上槽に設置したセンサで堆積層の厚さを検出して適宜行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
さらに図3を用いて、DSP排水(生ゴミ)、厨房排水、雑排水の3つを処理するときの作用のシミュレーションの一例を説明する。高層建築物は、建物自体が一つの街区といってよいほどの規模を持ち、そこから発生する生ごみや排水も多量となる。
【0073】
出願人が事業所(レストランなどを含む)用の大規模オフィスビルを計画したところ、厨芥類(いわゆる生ゴミ)が3トン、厨房排水700m、雑排水550mが毎日発生することが判った。
【0074】
これだけの厨芥類を人が荷車などに入れてエレベータで搬送すると、エレベータの搬送能力のうちかなりの部分を割かなければならない。そこで厨芥類の搬送方法としてディスポーザで砕き、配管を経由して落下させるという方法が有望となる。厨芥類は約90%がディスポーザにより破砕可能なので落下させるのに有利である。
【0075】
生ゴミを落下移動させるためにある程度の水を加えることが必要であるが、本発明では、基本的に、厨芥類を、厨房排水、雑排水とは別の構造物下部の処理エリアに移動し、2段階の分離工程を経て、発酵槽の原料とする。
【0076】
この様に本発明は、厨芥類の粉砕・加水→落下→水分の分離・除去という過程を含む。これによれば大量の水の中に厨芥類の破砕物を流してしまう場合と比べて、分離工程に要する労力が少なくてすみ、かつ環境負荷も小さい。
【0077】
また、第1の分離段階で、大きい固形成分を除去したあとの排水(小さい固形成分及び液体の混合物)は、有機成分の濃度では厨房排水に近づく。従って、この段階では両者を一つの分離装置で分離することが合理的である。
【0078】
第1の分離過程のスクリーンなどの間隙の大きさは任意であるが、好適な一例として数ミリ程度(例えば2〜5mm)程度とすることができる。食器の洗い水などでは、その程度の大きさの食材のカス(米粒など)が含まれていることがあり、そして同じ程度の大きさのカスであれば、同一の分離技術で取り除くことが容易だからである。
【符号の説明】
【0079】
A…再生機構 4…ディスポーザ 6…第1取水管 8…第1の固液分離手段
10…スクリーン 12…第1取出し口 14…第2取出し口 16…中継槽
18…固形成分移送管 20…弁 22…第2の固液分離手段 22a…浮上槽
22b…吸上げ口 22c…吸引ポンプ 24…固形成分移送管 25…排水管
26…第2取水管 27…排水口 28…発酵槽 30…排水弁
32…計測手段
34…排水手段 36…排水管 38…水処理槽 42…制御装置
B…エネルギー供給機構 52…発電装置 53…ガス供給ライン 54…給電線
C…補助機構 62…第3取水管 64…堆積槽 66…給水管
68…堆積物圧送管 70…圧送ポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物内に構築され、少なくとも、有機廃棄物を燃料に再生する再生機構を具備する有機廃棄物の処理システムであって、
上記再生機構は、
上記構造物の適所に設置した有機廃棄物細断用のディスポーザと、
このディスポーザから排出される高濃度の有機排水を回収するための第1取水管と、
この第1取水管を介して回収した高濃度の有機排水を、大きい固形成分と小さい固形成分及び液状成分の混合物とに分離する第1の固液分離手段と、
第1の固液分離手段から送られた小さい固形成分及び液状成分の混合物を、小さい固形成分と液状成分とに分離する第2の固液分離手段と、
第1の固液分離手段及び第2の固液分離手段で抽出した固形成分を発酵させて、可燃ガスを供給する発酵槽と、
第2の固液分離手段で分離された液体成分及び発酵槽から回収する余剰液体を構造物の外へ排出する排液手段と、
構造物内の所定の設備から厨房排水などの低濃度の有機排水を回収して第2の固液分離手段に導く第2取水管とを含むことを特徴とする、有機廃棄物の処理システム。
【請求項2】
第2の固液分離手段は、浮上分離装置であり、第1の固液分離手段から小さい固形成分及び液状成分の混合物として抽出される少量かつ高濃度の有機排水と、厨房設備から回収機構を経て回収される大量かつ低濃度の有機排水との混合液から固形分を分離し、固形分と処理水を別々に排出する機構を有し、
第1の固形成分離手段は、スクリーン式の分離装置であることを特徴とする、請求項1記載の有機廃棄物の処理システム。
【請求項3】
上記発酵槽は、槽内温度を測定するための温度センサを有し、槽内温度をメタン発酵に適した温度とするための熱の受け入れを調整できるように構成しており、
上記再生機構は、第1の固液分離手段乃至第2の固液分離手段と発酵槽との間に設けた、有機廃棄物の固形成分を一時的に蓄えるための中継槽を有し、かつ、メタン発酵に適した発酵槽内の温度環境を維持できるように中継槽から発酵槽への固形成分の移送を制御する制御装置を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の有機廃棄物の処理システム。
【請求項4】
上記再生機構の他に補助機構を有し、この補助機構は、雑排水を一時的に蓄える堆積槽を含み、この堆積槽で中水と汚泥成分とに分離し、中水を構造物の各階層の中水使用設備に戻すとともに堆積槽内の汚泥を吸引して、第2の固液分離手段へ送るように構成していることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の有機廃棄物の処理システム。
【請求項5】
複数階に区画した構造物の下層側に第1の固液分離手段を配置するとともに、構造物の上層側にディスポーザを設置し、ディスポーザと第1の固液分離手段とをつなぐ第1取水管の全部又は一部を垂直に形成したことを特徴とする、請求項1から請求項4の何れかに記載の有機廃棄物の処理システム。
【請求項6】
有機廃棄物の回収対象エリアの各所に配置したディスポーザから第1取水管を介して高濃度の有機排水を回収する第1の工程と、
上記有機廃棄物の回収対象エリア内の厨房設備から第2取水管を介して低濃度の有機排水を回収する第2の工程と、
第1の取水管を介して回収した高濃度の有機排水を、大きい固形成分と、小さい固形成分及び液状成分の混合物とに分離する第3の工程と、
第1の固液分離工程で分離された小さい固形成分及び液状成分の混合物と、上記第2取水管を介して回収した低濃度の有機排水とを混合し、この混合液を小さい固形成分と液状成分とに分離する第4の工程と、
第3の工程で分離された大きな固形成分及び第4の工程で分離された小さな固形成分とを同じ発酵槽内に入れて発酵させる第5の工程と、
第5の工程の発酵により生成されたバイオガスを発酵槽から取り出す第6の工程とからなる、有機廃棄物の処理方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−177637(P2011−177637A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43588(P2010−43588)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】