説明

有機廃棄物の造粒物形成による堆肥化処理方法とそれに用いる装置

【課題】 有機汚泥や剪定枝を高次元で堆肥化処理するため、有機廃棄物のボール状造粒と自然発酵により、木材腐朽菌の繁殖条件を整え、悪臭を抑制し、省エネルギーで効率的な堆肥化処理方法とそれに用いる装置を提供すること。
可能にする。
【解決手段】 アルカリ処理によるリグニン等の分解抵抗を低める工程と、微生物活性液を浸潤させる工程を施した炭素源と、有機汚泥や食品残渣や畜糞等の窒素源とを造粒機によってボール状に造粒し、20℃〜30℃の常温域で低温発酵させて、木材腐朽菌の繁殖条件下で、常に理想的なC/N比率を確保し、窒素成分の流出を防止し、土壌的価値の高い肥料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機汚泥や食品残渣や畜糞等を無臭発酵させるため、チップ化又は綿くず化した木屑を利用し、堆積することなく良質な発酵を施し、悪臭の発生を抑制し、大規模な送気、脱臭装置を不要とした、エネルギーの消費を減少させた堆肥化処理方法及びその処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来堆肥製造を行う場合、積み重ね方法かスクープ式などの機械化装置による通気、攪拌方式が行われている。いずれも急速な発酵を期するためアンモニアガス、硫化水素等の臭気の発生を余儀なくされ、脱臭のためのエネルギー消費や送気のためのエネルギー消費が処理コストの大半を占めている。すでにEU諸国ではこうした発酵方法は大気環境の負荷が大きいものとして否定的な技術とされている。
【0003】
また、林業等の剪定枝や街路樹の剪定枝は、畜産分野では堆肥製造時の水分調整材として利用される場合があるが、半分は焼却処分され再利用が進んでいないバイオマス資源である。その大きな原因は、剪定枝にリグニンと呼ばれる分解しにくい成分が多く含まれ堆肥化に相当の長期間を要することが大きな障害となっている。
【0004】
このような分解抵抗が高い有機物は、土壌中においても分解は徐々に進行するはずであり、窒素飢餓その他の害も生じにくい特性を維持できる利点もある。しかし、分解性が低く、微生物の栄養源となりにくい材料の分解促進は従来の手法では困難で、畜糞、ワラ、ヌカなど易分解性有機物、化学肥料などの栄養源を多量に加えても、これらが分解微生物に消費しつくされれば発酵は終息し、剪定枝には作用が及びにくい。そして、リグニンのベンゼン環を完全分解できる細胞外酵素を生成する菌は、きのこの仲間の白色木材腐朽菌だけであり、細菌を含め他の微生物は環の外側部分を少し分解できるが、環そのものは分解できない。こうして土壌に残る難分解性の有機物は、リグニンを中心とした物質になってくる。土壌分解における長期の経過の中では多量のリグニンによる悪影響が起こる可能性もあり、基本的には熟成を進めてリグニンの総量を減少させておくべきである。
【0005】
特許文献1には、回転時に内部に収容の収容物を攪拌する回転ドラムを外周側から加熱する外部加熱機構を有してなり、このパネルヒータがスリップリングの配在下に接続の制御盤における制御で昇温調整を可能にしてなることを特徴とする発酵処理装置が提案されている。この方法は、コンクリートミキサー様の回転ドラム内に収容した生ゴミとバクテリアとを加熱下で攪拌することが可能になり、バクテリアによる生ゴミの分解を効果的に実現し得ることになる。しかし、回転ドラムの傾斜角は上端の開口から収容物Mを漏れさせないようにするのに十分である限り、原則として任意の傾斜角に固定されているため、ボール状造粒に用いる装置には向かない。また、パネルヒータに供給するためのエネルギーが必要である問題点がある。
【0006】
特許文献2には、処理物を予め団粒状に造粒して発酵槽31内に収容し、隣接する粒状物の表面間に相互に連通し合う通気空間を形成して発酵させるものである。そして造粒前の処理物の水分率を造粒及び好気性発酵である一次発酵が可能な水分率に調整するとともに、発酵槽31内に収容した処理物に対し、少なくとも当該処理物が目標温度下で一次発酵を継続する温度に至るまで温風を供給する。さらに一次発酵終了後の処理物を、一次発酵を行わしめた発酵槽(32)と同一の発酵槽32内で、嫌気性発酵である二次発酵を行わせる有機廃棄物の発酵処理方法及び装置が提案されている。この方法は、団粒状にすることによって通気性をよくすることがねらいであって、団粒状のまま発酵を待つと言うものではない。また、温風を供給するためのエネルギーや送気のためのエネルギーが必要である問題点がある。
【0007】
特許文献3には、砂礫質や粘土質等の粒径を異にする無機物質材3からなる粒体を有機植物繊維等からなる有機物質剤2に絡み付かせるとともに、結合剤4によって粒状に固結することにより多孔質の固粒構造を有してなる人工団粒体及びその製造方法が提案されている。この方法は、植物栽培用の人工土壌や汚濁水等の浄化媒体等として好適に用いられるともに資源の有効利用を図る人工団粒体及びその製造方法であり、加温や送気のためのエネルギーを必要としない優れた処理法であるが、樹枝チップ等が未処理のままであるため、土壌に残る難分解性の有機物リグニンが蓄積することとなる問題点がある。
【0008】
特許文献4には、堆肥材料堆積層3の底部に配設される吸引管4と、該吸引管4の吸引側端部に入口側が接続され、出口側にアンモニアトラップ8の入口側が接続される第1のドレイントラップ6と、該アンモニアトラップ8の出口側に入口側が接続され、出口側に吸引ファン12の吸引側が接続される第2のドレイントラップ10と、該第2のドレイントラップ10の排出側から残った気体を外部に排出する吸引ファン12とを備える。アンモニアトラップ8の充填材8aにより回収されたアンモニアは固形肥料として利用する。悪臭の揮散を低減する堆肥化処理方法及び装置が提案されている。しかし、臭気を発生させることは発酵条件が不備であり、かつ、それを除去するために複雑、過大な手間とエネルギーが必要である問題点がある。
【特許文献1】特開2001−79525号公報
【特許文献2】特開2001−170693号公報
【特許文献3】特開2001−204245号公報
【特許文献4】特開2005−35811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
静岡県内から産業廃棄物として、有機汚泥(下水汚泥として約180千m)や剪定枝(山林と街路樹で約60万トン)が排出されている。畜産分野では、堆肥製造時の窒素原料や水分調整材として利用される場合があるが、半分は焼却処分され、再利用が進んでいないバイオマス資源である。その大きな原因は、アンモニアガスや硫化水素等の発生、また、剪定枝にはリグニンと呼ばれる分解しにくい成分が多く含まれ、堆肥化には年単位の時間が必要なことがある。
本発明が解決しようとする課題は、リグニン分解を伴う常温自然発酵を行い、悪臭の発生を抑制するものであり、かつ、不要なエネルギーの使用を減じようとするものである。
【0010】
そこで本発明は、有機汚泥から悪臭の発生を抑制する発酵方式とするものであり、堆積させないから高温発酵しない。汚泥のみの発酵でなくチップ化又は綿くず化した木屑をアルカリ処理によって分解の障壁となるフェノール性物質の被覆を緩め、またセルロースを膨潤させて分解抵抗を低める処理を施し、C/N比のバランスを長期にわたり維持させ、そして微生物が必要とするミネラルを補給して良好な発酵を促すこと、さらに団粒化させた形状とすることによる低温発酵で悪臭の発生を防ぎ、団粒化した形状により外部から乾燥させ内部の臭気を外部に出さない、有機廃棄物のボール状造粒による無臭発酵処理とそれに用いる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために請求項1に記載した造粒物形成方法は、有機汚泥や食品残渣や畜糞等を無臭発酵させる造粒物形成において、チップ化又は綿くず化した木屑をアルカリ処理により分解の障壁となるリグニン等の分解抵抗を低める工程と、微生物活性液を浸潤させる工程を施した炭素源と、有機汚泥や食品残渣や畜糞等の窒素源とを、造粒処理装置によって微生物資材と混練し、粘着力によりボール状に造粒することを特徴とする造粒物形成方法である。
【0012】
この発明は、フンコロガシ(甲虫;スカラベ)が動物の糞をボール玉にして運び、その中へ卵を産み付けることを知り、ボール玉を取ってみると外側は乾燥しているため臭気はなく、中は水分が残されており幼虫が餌としていることを知った。こうした自然界で行われていることを応用して、簡易で、臭気の発生を抑制した有機廃棄物の造粒物形成方法を構築し、畜産排泄物の堆肥化の実用性の検証を行ってきたところである。
【0013】
課題の有機汚泥と剪定枝を高次元で堆肥化処理する場合、難分解性のリグニンの分解が非常に重要な要素であり、分解性が低く、微生物栄養となりにくい材料の分解促進は、在来の手法では困難であるため薬品による前処理を試みた結果、苛性ソーダが持続性のある効果を示し、アルカリ処理が適していることがわかった。苛性ソーダ濃度は2%〜4%で効果が顕著となる。
【0014】
また発明者らは、先に提案した特開2006−28406号公報の微生物活性液を原液の500倍程度に希釈して、アルカリ処理後の乾燥させたチップ化又は綿くず化した木屑に浸潤させ、低温発酵におけるリグニンの分解促進を図った結果、30日〜45日の発酵期間を経てから農地へ施肥するのが効果的である見解を得た。
【0015】
請求項2に記載の堆肥化処理方法は、ボール状に造粒された請求項1の炭素源と窒素源を、20℃〜30℃の常温域で低温発酵させて、木材腐朽菌の繁殖条件下で、常に理想的なC/N比率を確保し、窒素成分の流出を防止し、土壌的価値の高い肥料とすることを特徴とする堆肥化処理方法である。
【0016】
この発明は、木材腐朽菌の繁殖条件である適度の水分、温度、酸素、栄養分で木材含水率が20%以上、温度は20〜30℃で酸素を必要とし、栄養分は木材に含まれるリグニン、セルロース、ヘミセルロースである木材腐朽菌の繁殖条件に適合させるため、ボール状に造粒された形成物の中で木材腐朽菌を活性させ、常に理想的なC/N比率を確保し、窒素成分の流出を防止することを実現しているのである。
【0017】
請求項3に記載の造粒処理装置は、ミキサーの回転ドラム部の傾斜角が回転動作中に変更可能な機構を有し、水分率の変動に対し傾斜角を変更することで、造粒径の大きさを制御することを特徴とする造粒処理装置である。
【0018】
この発明は、請求項1で使用する造粒処理装置であるため、コンポスト化装置のように発酵物を長期間滞留する必要はない。そこで、ミキサーの回転ドラム部の傾斜角が回転動作中に変更可能な機構とし、投入初期には傾斜角を高くし、積極的に団子化状態を誘発させて造粒物の径の拡大を図り造粒を促進させる。一部の発酵物が規定の造粒径に達した場合、径の大きい物は上層に上がるため、ミキサーの回転ドラム部の傾斜角を低くし、外部に移送すると共に等量の新規発酵物を投入する。この様にミキサーの回転ドラム部の傾斜角が回転動作中に変更可能な機構とすることにより、流動的造粒動作を可能とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように請求項1の発明によれば、自然界で行われている現象を応用して再現し、有機汚泥と剪定枝を高次元で堆肥化処理するための造粒物形成が可能となる。
【0020】
請求項2の発明によれば、ボール状に造粒された形成物の中で木材腐朽菌の繁殖条件が整うため、常に理想的なC/N比率を確保し、窒素成分の流出を防止することを実現し、リグニンの総量を減少させ、土壌的価値の高い肥料とすることが可能となる。
【0021】
請求項3の発明によれば、ミキサーの回転ドラム部の傾斜角が回転動作中に変更可能な機構とすることにより、造粒径の大きさを制御することに加え、回転方向を変えずに造粒物を取り出すことが可能となり、作業時間の短縮ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図1〜図2を参照して詳細に説明する。図1は本発明のボール状に造粒された有機物の断面図、図2は本発明の有機廃棄物をボール状に造粒する造粒処理装置の構造を示す内部透視線を付加した斜視図である。
【0023】
産業廃棄物として、有機汚泥2や食品残渣3や畜糞4等の窒素源や剪定枝等5(6)の炭素源がある。これらの廃棄物を図1のボール状の造粒物1として常温自然発酵を行い、土壌的価値の高い肥料とすることにより、産業廃棄物から有機肥料に造り替えることができる。
【0024】
有機汚泥2や食品残渣3や畜糞4等の窒素源を利用する場合、十分に水分を除去した有機汚泥2に、3mm程度に破砕した食品残渣3や畜糞4等を混ぜ、先に提案した特開2006−28406号公報の微生物活性液を原液の500倍程度に希釈して、重量比0.5%程度混入する。この微生物活性液により有機汚泥に含まれる金属とリン、イオウなどをキレート錯体化して微生物が利用しやすくさせるものである。
【0025】
剪定枝5(6)を炭素源として利用する場合、衝撃力を主な破砕成分とするハンマータイプの破砕機によって、長さ60mm〜120mm、幅1mm〜2mm厚み0.2mm〜0.8mmの綿くず化した状態の破砕物A(10mm×5mm×0.5mm程度の圧縮破砕物Bを含む)にする。破砕物の形態や寸法は破砕機によって変化するため、有機肥料の使用用途に合わせて選択すればよい。この破砕の目的は、微生物が分解作用を発揮し易いように粗く砕くのが目的であり、破砕機の構造や破砕物の形態や寸法を特定するものではない。
【0026】
破砕された炭素源は、アルカリ処理によって分解の障壁となるフェノール性物質の被覆を緩め、またセルロースを膨潤させて分解抵抗を低めるため、種々の濃度の苛性ソーダを用いて分解持続性の特性を調べた結果、濃度が2%〜4%で10日〜15日浸潤後、硫酸でPH7に中和し、減圧下で乾燥処理した物が持続性のある効果を示し、アルカリ処理が適していることがわかった。従来は石灰処理が行われていたが、添加量は1%以下であり、樹体の酸性を中和し、微生物の生育環境を整えることが主目的であったため、難分解性のリグニンに対して持続性のある効果が発揮できなかったものと思われる。作用として、苛性ソーダによるアルカリ処理により、ポリフェノール、リグニン、ヘミセルロースなどが溶解し、微生物の分解作用が向上すると共に、セルロースも膨潤して分解作用が向上するものと思われる。上記のアルカリ処理は、苛性ソーダを用いた例であるが、濃度が15%〜22%の消石灰を用いても有効性を示す。しかし、処理温度や樹種で有効性が大きく変化するため、条件を配慮した運用が望まれる。
【0027】
アルカリ処理された炭素源は、先に提案した特開2006−28406号公報の微生物活性液を原液の500倍程度に希釈して、アルカリ処理後の乾燥させたチップ化又は綿くず化した木屑に浸潤させ、低温発酵におけるリグニンの分解促進を図る。この微生物活性液を木屑に浸潤させた処理における作用は解明に至っていないが、一定の効果は確認されている。
【0028】
各処理工程を経た窒素源と炭素源は、図2に示す造粒処理装置9に微生物資材と共に投入される。この発明による造粒処理装置9は、回転時に内部に投入された窒素源と炭素源を攪拌する回転ドラム10と、駆動モーター11と、投入排出機構12とそれらを固定する可動板13と、地面に設置する固定版14と、可動板13の角度を変化させる可変機構15により構成されている。
【0029】
尚、可動板13と固定版14とは回転体16を経由して接続されているため、可変機構15の先端が伸びたり縮んだりすることにより、可動板13に固定されている回転ドラム10の傾斜角が変化する。この傾斜角の変更は、回転ドラム10の回転中も自由にコントロールできる。この傾斜角を変化させる目的は、造粒径の大きさを制御することに加え、回転方向を変えずに造粒物を取り出すことを可能にするのが目的であり、可変機構15がパンタグラフ式、歯車方式、シリンダー方式等の構造を有する機構であればよく、機構を特定するものではない。
【0030】
回転ドラム10は、周知のスクリュー付のコンクリートミキサー機構である。回転ドラム10内部に付設されたブレード17は、回転ドラム10本体が軸芯線を中心にして回転するときに併せて旋回するが、周知のように回転ドラム10本体の回転方向によって、回転ドラム10本体内の投入物(窒素源や炭素源)を、回転ドラム10本体の底部側18に押し込むように、あるいは、開口部側19に排出するように機能する。回転ドラム10本体の底部側18に押し込むように回転するとき、行き場がなくなった投入物を回転ドラム10本体の軸線方向に直行する方向に攪拌することになる。
【0031】
攪拌に伴う傾斜角は、攪拌効率から水平線に対して5度〜12度に設定されるのが好ましい。攪拌動作進行に伴い、一部の投入物が丸まり小径の造粒物を形成し、次第に成長し大型化していく。造粒径の大きさを強制的に制御する場合、進行状況に合わせて傾斜角が15度〜25度に設定される。
【0032】
そして、ボール状の造粒物1が外形で30mm〜50mmの大きさに達したら、造粒物を取り出す動作に移行する。ボール状の造粒物1は、投入物全般の上部に浮上滞留するため、傾斜角を水平線に対して5度以下に設定すれば、回転方向を反転しなくても、完成したボール状の造粒物1は、オーバーフローして開口部側19の下端部を通過して、排出口21に排出される。
【0033】
ボール状の造粒物1の排出動作により、回転ドラム10内部の投入物総量が減少するため、傾斜角を水平線に対して5度〜12度に戻し、排出量に相当する投入物を投入口20に投入すれば、回転方向を反転しなくても連続運転動作が可能となる。
【0034】
投入排出機構12は、回転ドラム10の開口部側19を横方向から覆うように配設されており、上部に投入口20と下部に排出口21を有し、投入口20に投入物を投入すると受け板22上に落下する。落下してきた投入物は、送りブレード23により回転ドラム10本体の底部側18に押し込むように送り込まれる。また、回転ドラム10内の投入物を全て排出する場合は回転方向を逆転すれば、開口部側19の下端部を通過して投入排出機構12の排出口21に排出するように機能する。
【0035】
排出されたボール状の造粒物1は、ボール状に造粒された有機物の断面図の図1に示す如く、有機汚泥と蓄糞の混合物7と食品残渣A3−1や食品残渣B3−2から溶出した物質と混ざり合った粘着力を持つ物質を作り出し、投入物全体を覆う粘着層8を形成する。このボール状の造粒物1の形成により、有機汚泥2や食品残渣3や畜糞4等の窒素源と剪定枝5(6)の炭素源が混然一体となり理想的な形状になる。
【0036】
ボール状の造粒物1として完成した有機廃棄物は、平コンテナーで表面乾燥後、コンテナーへ移して通気性の良い所で貯蔵熟成を行う。2〜3日程度で表面が固まり、約1週間で内部に白いものが確認される。この時期は、糖やアミノ酸などの易分解性物質が好気的に分解され、生育の早い糸状菌や好気細菌が主として活動する。このとき積み込み処理していれば、呼吸熱によって発熱が起こり温度が60〜70℃に上昇しますが、ボール状の造粒物1を重ねないで貯蔵熟成を行うことにより、20℃〜30℃の常温域で糸状菌優先のまま推移し、約2週間でボール状の造粒物1の内部は真っ白となる。この状態を過ぎればやがて菌層が変化して、酸素を盛んに消費するためボール状の造粒物1の内部が酸素不足となり、そこに嫌気性のセルロース分解菌が働き、好気性菌と嫌気性菌の役割分担が成り立ち、繊維質の分解が進む。こうして、食べるエサが少なくなる頃、分解されて軟らかくなった繊維組織を食べるいろいろな細菌が増えてくる。このころ木材腐朽菌の繁殖条件となるため、リグニンの分解が始まり温度も低下して、先に活動した菌体の死骸や排泄した酵素により他の微生物も繁殖し、さらにリグニンの分解が促進される。この段階で臭気はなく約45日〜90日貯蔵熟成が行われて完成品となる。
【0037】
有機栄養微生物にとって有機物さえあればよいのだろうか。有機物のなかには、ブドウ糖(グルコース)、砂糖、でん粉、セルロースなどの糖のように、炭素、水素、酸素しかないものがある。こうした糖だけをエサにしたときは、エネルギー源としてのATPは合成されるが、菌体の増殖はほとんど起きない。これは細胞成分のうちの糖、有機酸、脂肪などしかつくれないからである。細胞成分のアミノ酸やタンパク質をつくるには窒素とイオウ、核酸をつくるにはリンも必要である。したがって糖をエサにしたときには、窒素、リン、イオウなどを無機物で与える必要がある。
【0038】
炭素以外の元素を無機物からとることは、すべての微生物に共通することである。ただし、有機栄養微生物は、もしも有機物中にこれらの元素が含まれていれば、それも利用する。有機物中の元素だけで不足なら、無機物中の元素で補充して細胞成分を合成(有機化)し、有機物中の元素が必要量以上にあれば、無機態として元素を放出(無機化)する。しかし有機炭素源だけでは、やがて無機態窒素が枯渇する。この状態で約45日〜90日貯蔵熟成が行われてボール状の造粒物1の完成となる。
【0039】
完成されたボール状の造粒物1を粉砕して農地に鋤き込ませれば、土壌中で無機態窒素を補給し、微生物はまた増加しいわゆる芳香的な匂いがする状態となる。植物が吸収するのは窒素、燐酸、カリの三大要素だけでなく、土壌中のミネラルや微生物が作り出すアミノ酸、ホルモン、ビタミン、核酸等が供給されることに現代農業では重要な意義付けがなされている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のボール状に造粒された有機物の断面図である。
【図2】本発明の有機廃棄物をボール状に造粒する造粒処理装置の構造を示す内部透視線を付加した斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ボール状の造粒物
2 有機汚泥
3−1 食品残渣A
3−2 食品残渣B
4 蓄糞
5 破砕物A
6 圧縮破砕物B
7 有機汚泥と蓄糞の混合物
8 粘着層
9 造粒処理装置
10 回転ドラム
11 駆動モーター
12 投入排出機構
13 可動板
14 固定板
15 可変機構
16 回転体
17 ブレード
18 底部側
19 開口部側
20 投入口
21 排出口
22 受け板
23 送りブレード



【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機汚泥や食品残渣や畜糞等を無臭発酵させる造粒物形成において、チップ化又は綿くず化した木屑を、アルカリ処理により分解の障壁となるリグニン等の分解抵抗を低める工程と、微生物活性液を浸潤させる工程を施した炭素源と、有機汚泥や食品残渣や畜糞等の窒素源とを、造粒処理装置によって微生物資材と混練し、粘着力によりボール状に造粒することを特徴とする造粒物形成方法。
【請求項2】
ボール状に造粒された請求項1の炭素源と窒素源を、20℃〜30℃の常温域で低温発酵させて、木材腐朽菌の繁殖条件下で、常に理想的なC/N比率を確保し、窒素成分の流出を防止し、土壌的価値の高い肥料とすることを特徴とする堆肥化処理方法。
【請求項3】
請求項1で使用する造粒処理装置は、ミキサーの回転ドラム部の傾斜角が回転動作中に変更可能な機構を有し、水分率の変動に対し傾斜角を変更することで、造粒径の大きさを制御することを特徴とする造粒処理装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−106828(P2009−106828A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279981(P2007−279981)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【特許番号】特許第4153974号(P4153974)
【特許公報発行日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(502437540)株式会社サイエンス (1)
【出願人】(307038551)
【Fターム(参考)】