説明

有機性廃棄物、特に、医療、外食産業および動物廃棄物を無害化する移動式装置

本発明は、廃棄物の生成のすぐ近くで炭化のプロセスを用いて廃棄物を無害化するために使用され、有害廃棄物を含む有機性廃棄物、特に、医療、外食産業および動物廃棄物を無害化する移動式装置に関する。少なくとも2つのチャンバーと熱回収装置とを有している、本発明による有機性廃棄物、特に、医療、外食産業および動物廃棄物を無害化する移動式装置は、排ガス後燃焼反応器(15)に出口が接続され、移動式容器(1)内に設置され、加熱装置としてマイクロ波発生器を有している炭化反応器(8)ユニットを構成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の生成のすぐ近くで炭化のプロセスを用いて廃棄物を無害化するために使用される、有害廃棄物を含む有機性廃棄物、特に、医療、外食産業および動物廃棄物を無害化する移動式装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中国特許出願第2877705号明細書(2007年3月14日付け発行)は、完全な設備一式に統合された、焼却ユニットと、滅菌装置と、汚物収集および処理装置と、給電システムとを具備した、感染症病原体を含有する危険物質の利用のための車両を開示している。焼却ユニットは、2パス焼却に基づいて機能する。滅菌装置は、焼却からの熱を使用して高圧蒸気を発生させ、2チャンバー構造を有している。車両は、運転中に完全に機能的であり、伝染病の場合に救助ユニットとして機能することができる。
【0003】
特開平10−19223号公報(1998年1月23日付け発行)は、廃棄物供給装置と、排気ファンと、回転炉などの他に、補助燃焼装置と、廃棄物焼却からの熱を回収する回収ボイラと、集塵機と、排気ファンなどとを有する燃焼ガスおよび排ガスの処理のための補助ユニットを備える焼却組立体を教示している。これらのユニットは、基部に接続されている移動式フレームに搭載され、ガス導管を用いて相互に接合されている。これらのユニットは、作業の現場で組み立てることができ、容器(container)中で輸送するために適している。
【0004】
特開平3−241217号公報(1991年10月28日付け発行)は、被焼却物の自動供給装置とスラグ(slug)除去のための自動装置とを有している廃棄物焼却用車両を教示している。被焼却物が自動供給装置によって焼却チャンバーへ押し込まれた後、被焼却物は、2つのバーナーを用いて二重焼却チャンバー内で焼却され、被焼却物の残り滓がスラグ除去のための自動装置へ送られる。
【0005】
さらに、米国特許出願公開第2006219139号明細書(2006年10月5日付け発行)は、容器と、少なくとも1つのガス化チャンバーと、生成された可燃ガスを燃焼する燃焼チャンバーとを備え、制御室を含むことができる移動式システムを開示している。廃材は、ガス化チャンバーの壁からオフセットさせられた吊り下げ式網かごに充填される。生成された燃料ガスは、ガス化チャンバーから生成燃料ガス燃焼チャンバーへ引き出される。生成燃料ガス燃焼チャンバーは、上記燃料ガスの点火用のメイズ(maze)点火チャンバーを備えることができる。
【0006】
有機性廃棄物、特に、医療廃棄物を無害化する既知の移動式装置は、監視、または、現場だけで組み立てられる燃焼させるための複雑かつ高価な燃焼ユニットなしでは済ませることができない、高価な車両を構成する。既知の燃焼システムは、経済的でないガス加熱または誘導電気加熱を利用する。既知の容器システムは、有害医療廃棄物を無害化するために適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願第2877705号
【特許文献2】特開平10−19223号
【特許文献3】特開平3−241217号
【特許文献4】米国特許出願公開第2006219139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、このタイプの既知の構造の欠点を持たない、廃棄物の生成のすぐ近くで炭化のプロセスを用いて廃棄物を無害化するために使用される、有害廃棄物を含む有機性廃棄物、特に、医療、外食産業および動物廃棄物を無害化する移動式装置を提供することである。特に、この装置は、経済的、単純、かつ、安価であるべきである。この装置は、監視なしで実際的に機能し、簡単に輸送でき、かつ、商用電源への接続後にはいつでも正しく機能する準備ができているべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、少なくとも2つのチャンバーと熱回収装置とを有する、有機性廃棄物、特に、医療、外食産業および動物廃棄物を無害化する移動式装置であって、排ガス後燃焼反応器(after−burning reactor)に出口が接続され、移動式容器内に設置され、加熱装置としてマイクロ波発生器を有している炭化反応器ユニットを構成することを特徴とする移動式装置によって達成された。
【0010】
有利には、炭化反応器は、300MHzから3GHzまでの周波数範囲内の電磁放射の吸収率が低いセラミック材料製の内壁を備えた金属チャンバーを有し、炭化反応器の金属チャンバーは、有利には、金属チャンバーの壁に固定され、300MHzから3GHzまでの動作範囲を有しているマイクロ波発生器に接続されている、少なくとも2つのマイクロ波放射器を含んでいる。
【0011】
金属チャンバー内で加熱された廃棄物は、基本的に600℃から850℃までの温度を有している。
【0012】
排ガス後燃焼反応器は、有利には、炭化反応器の金属チャンバーからの熱分解排ガスの排気装置を備える。
【0013】
排ガス後燃焼反応器は、有利には、排ガス後燃焼反応器の壁に搭載され、300MHzから3GHzまでの動作範囲を有しているマイクロ波発生器に接続されている、少なくとも2つのマイクロ波放射器をさらに備える。
【0014】
さらに、排ガス後燃焼反応器は、有利には、1000℃から1500℃までの温度を有し、300MHzから3GHzまでの周波数範囲内の電磁放射の吸収率が高い材料で作られ、1000℃から1500℃までの温度において10−1より大きい損失係数(loss tangent)δをもつ高温セラミックプロファイルの形態の土台部を備え、有利には、土台部は、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭化珪素(SiC)、三酸化アルミニウム(Al)、炭化バリウム(BaC)および炭化ハフニウム(HfC)よりなる群から選択された材料の粒からなるセラミックプロファイルで作られている。
【0015】
土台部内のガスの流れは、有利には、乱流である。
【0016】
以上の他に、排ガス後燃焼反応器は、300MHzから3GHzまでの周波数範囲内の電磁放射の吸収率が高い材料で作られ、1000℃から1500℃までの温度において損失係数δが10−2より小さい積層熱アイソレーション部(multilayer heat isolation)を含む。
【0017】
有利には、排ガス後燃焼反応器は、付加的な給気源をさらに含む。
【0018】
有利には、容器は、後燃焼処理された排ガスからの熱回収の回路に少なくとも1つの熱交換器を備える。
【0019】
有利には、容器は、マイクロプロセッサコントローラを有している制御ユニットをさらに備える。
【0020】
有利には、容器は、後燃焼処理された排ガスからの熱回収の回路からの、水または空気の形をした媒体のサービス配管をさらに備える。
【0021】
容器の前方部分において、容器は、有利には、廃棄物破砕ユニットを備える。
【0022】
有利には、容器の底部分に、破砕された廃棄物のための輸送装置が存在している。
【0023】
有利には、容器の底部分に、炭化の固体生成物のための引き出し部がさらに存在している。
【0024】
本発明は、添付図面を参照して、本発明の実施形態の有利な例において詳細に提示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による装置のブロック図である。
【図2】本装置の構造を概略的に示した軸測投影図である。
【図3】炭化反応器を概略的に示した縦断面図である。
【図4】排ガス後燃焼反応器を概略的に示した縦断面図である。
【図5】本発明による装置の外観を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1、図2、そして、図5にも示されるように、装置全体が典型的な輸送容器1の中に閉じ込められ、この装置は、排ガス後燃焼反応器に出口で接続され、加熱装置としてマイクロ波発生器を有している炭化反応器ユニットを構成する。プラスチック袋3(図5を参照)内の医療廃棄物2は、容器1の前方壁内の窓5を通してシュート部4の中に落とされ、そして、従来の構造を有し、容器の底で容器の前方部分に位置している廃棄物破砕ユニット6へ渡される。
【0027】
破砕された医療廃棄物は、スクリューコンベヤを構成することができる既知の破砕廃棄物用の輸送装置7を用いて、炭化反応器8へ運ばれる。
【0028】
図3に示されるように、炭化反応器8は、300MHzから3GHzまでの周波数範囲内の電磁放射の吸収率が低いセラミック材料製の内壁10を備えた金属チャンバー9を含み、炭化反応器8の金属チャンバー9は、有利には、金属チャンバーの壁に固定され、300MHzから3GHzまでの動作範囲を有しているマイクロ波発生器12に接続されている、少なくとも2つのマイクロ波放射器11を含む。
【0029】
金属チャンバー9内で加熱された医療廃棄物2は、基本的に600℃から850℃までの温度を有している。
【0030】
熱分解排ガスは、典型的な排気装置13(図2では見えない)を用いて、炭化反応器8の金属チャンバー9から排ガス後燃焼反応器15の金属チャンバー14まで通る。
【0031】
図4に示されるように、反応器15は、(炭化反応器8と同様に)多孔性材料製の土台部(bed)16を備えた金属チャンバー14と、排ガスの入口および出口を有している金属容器の形をしている。土台部16内のガスの流れは、乱流である。排ガス後燃焼反応器15は、実施形態の本例では、容器が円筒形状であるので、この排ガス後燃焼反応器の円筒側壁に搭載され、(水冷システム付きの)マイクロ波発生器18に接続された2つのマイクロ波放射器を有し、1000℃から1500℃までの温度を有し、300MHzから3GHzまでの周波数範囲内の電磁放射の吸収率が高い材料で作られ、1000℃から1500℃までの温度において10−1より大きい損失係数δをもつ高温セラミックプロファイル19の形態の土台部16を有している。さらに、排ガス後燃焼反応器は、付加的な給気源をさらに有している。
【0032】
排ガス後燃焼反応器は、300MHzから3GHzまでの周波数範囲内の電磁放射の吸収率が低い材料で作られ、1000℃から1500℃までの温度において10−2より小さい損失係数δをもつ積層熱アイソレーション部20を含み、マイクロ波放射器17は、熱アイソレーション部20を介して電磁エネルギーを放射するように位置している。
【0033】
土台部16は、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭化珪素(SiC)、三酸化アルミニウム(Al)、炭化バリウム(BaC)および炭化ハフニウム(HfC)よりなる群から選択された材料の粒からなるセラミックプロファイル19で作られている。
【0034】
本実施形態では、土台部16のセラミックプロファイル19は、2mmから20mmまでの直径をもつセラミックボールを構成する。土台部16は、ボールに代えて、または、ボールに加えて、4mmから30mmまでの寸法をもつ立方体、および/または、2mmから15mmまでの直径をもつ孔を含む多孔性立方体タイル、直径20mmおよび厚さ約6mmをもつ輪、および、他のプロファイルを備えることができる。
【0035】
排ガス後燃焼反応器15の機能は、後燃焼の工程中に、汚染ガスが、高温まで加熱されたセラミックボールまたは他のセラミックプロファイルを備えた土台部を通過することにある。主として炭化水素およびその他の化学化合物(例えば、一酸化炭素CO)などの不純物、および炭塵の後燃焼は、酸素の存在のために、ボールによって加熱されたガス中で行われる。酸素の含有量が不十分である場合、酸素は、空気のような、または、一部の場合に、オゾン(O)のような純粋な形で測定することができる。
【0036】
図1および図2に示されるように、容器の底部分には、炭化の固体生成物のための引き出し部がさらに存在し、炭化の固体生成物は、周期的に引き出し部から収集される。炭化の固体生成物は、1%未満の有機炭素を含有し、そして、廃棄物の種類に依存して、詰め込まれた医療廃棄物の4%から15%を構成する。
【0037】
排ガス後燃焼反応器15からのガスは、後燃焼処理された排ガスからの熱回収の回路に設置された熱交換器22の列に移る。この回路は、装置に隣接しているこの回路の側方で、後燃焼処理された排ガスからの熱回収の回路からの、水または空気の形をした媒体のサービス配管23で終る。
【0038】
工程全体は、容器1内に位置しているマイクロプロセッサコントローラを有している制御ユニット24によって制御される。容器1の前方壁に、制御ユニット24のダイアログウィンドウ25と押しボタンパネル26とが存在している(図5を参照)。
【0039】
毒性のダイオキシンとフランとの再結合を防止するために、触媒効果を有している金属イオンへの制限付きアクセスで、冷却器27におけるガスの急速冷却が採用された。その結果、何らかの特別に設計された吸収装置がイオンClを吸収するために使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのチャンバーと熱回収装置とを有し、第1のチャンバーが第2のチャンバーに出口で接続されている炭化反応器ユニットを備え、有機性廃棄物、特に、医療、外食産業および動物廃棄物を無害化する移動式装置であって、
前記第2のチャンバーが排ガスを燃焼する後燃焼反応器(15)を備え、すべてのチャンバーと、熱回収装置と、すべての補助装置とが、典型的には輸送容器である1つの移動容器(1)に設置されており、両チャンバーがそれぞれの加熱装置としてマイクロ波発生器を有していることを特徴とする、移動式装置。
【請求項2】
炭化反応器(8)は、300MHzから3GHzまでの周波数範囲内の電磁放射の吸収率が低いセラミック材料で作られた内壁(10)を備えた金属チャンバー(9)を有することを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。
【請求項3】
前記炭化反応器(8)の前記金属チャンバー(9)は、該金属チャンバーの壁に固定され、300MHzから3GHzまでの動作範囲を有している前記マイクロ波発生器(12)に接続されている少なくとも2つのマイクロ波放射器(11)を含むことを特徴とする、請求項2に記載の移動式装置。
【請求項4】
前記炭化反応器(8)の前記金属チャンバー(9)内で加熱された廃棄物は、600℃から850℃までの温度を有していることを特徴とする、請求項2に記載の移動式装置。
【請求項5】
前記排ガスを燃焼する後燃焼反応器(15)は、前記炭化反応器(8)の前記金属チャンバー(9)からの熱分解排ガスの排気装置(13)を有することを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。
【請求項6】
前記排ガスを燃焼する後燃焼反応器(15)は、該排ガスを燃焼する後燃焼反応器の壁に搭載され、300MHzから3GHzまでの動作範囲を有している前記マイクロ波発生器(18)に接続されている少なくとも2つのマイクロ波放射器(17)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。
【請求項7】
前記排ガスを燃焼する後燃焼反応器(15)は、1000℃から1500℃までの温度を有し、300MHzから3GHzまでの周波数範囲内の電磁放射の吸収率が高い材料で作られ、1000℃から1500℃までの温度において10−1より大きい損失係数δをもつ高温セラミックプロファイル(19)の形態の土台部(16)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。
【請求項8】
前記土台部(16)は、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭化珪素(SiC)、三酸化アルミニウム(Al)、炭化バリウム(BaC)および炭化ハフニウム(HfC)よりなる群から選択された材料の粒からなるセラミックプロファイル(19)で作られていることを特徴とする、請求項7に記載の移動式装置。
【請求項9】
前記土台部(16)内のガスの流れが乱流であることを特徴とする、請求項7に記載の移動式装置。
【請求項10】
前記排ガスを燃焼する後燃焼反応器(15)は、300MHzから3GHzまでの周波数範囲内の電磁放射の吸収率が低い材料で作られ、1000℃から1500℃までの温度において10−2より小さい損失係数δをもつ積層熱アイソレーション部(20)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。
【請求項11】
前記排ガスを燃焼する後燃焼反応器(15)は、付加的な給気源を含むことを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。
【請求項12】
前記移動容器(1)において、少なくとも1つの熱交換器(22)が後燃焼処理された排ガスからの熱回収の回路に存在していることを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。
【請求項13】
前記移動容器(1)において、マイクロプロセッサコントローラを有している制御ユニット(24)が存在していることを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。
【請求項14】
前記移動容器(1)において、後燃焼処理された排ガスからの熱回収の前記回路からの、水または空気の形をした媒体のサービス配管(23)が存在していることを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。
【請求項15】
前記移動容器(1)の前方部分において、廃棄物破砕ユニット(6)が存在していることを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。
【請求項16】
前記移動容器(1)の底部分において、破砕された廃棄物のための輸送装置(7)が存在していることを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。
【請求項17】
前記移動容器(1)の前記底部分において、炭化の固体生成物のための引き出し部(21)が存在していることを特徴とする、請求項1に記載の移動式装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−510285(P2013−510285A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537835(P2012−537835)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/PL2010/000111
【国際公開番号】WO2011/056083
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(508137350)アトン−エイチティー エス.エー. (2)
【Fターム(参考)】