説明

有機性廃棄物の処理方法および処理装置

【課題】熱可溶化汚泥による圧力調整弁の閉塞を抑制し、安定して連続方式の熱可溶化処理を可能とする有機性廃棄物の処理方法および処理装置を提供する。
【解決手段】有機性廃棄物W1を嫌気性消化処理する消化槽2と、消化槽2で嫌気性消化処理された消化処理汚泥を脱水処理する脱水装置7と、消化槽2から連続して投入される有機性廃棄物W2を圧力調整弁3Aにより圧力調整をしたうえで熱可溶化処理し、その処理した熱可溶化汚泥Mを消化槽2に戻す熱可溶化槽3と、を有する有機性廃棄物の処理装置1であって、第1流路S1および第2流路S2のうちの少なくとも一方の流路において、脱水処理が行われずに流入する有機性廃棄物の固形物のうち圧力調整弁3Aの最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物のみを下流に流す小固形物通過手段8を設ける。小固形物通過手段8は例えばストレーナ9から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物を嫌気性消化処理する処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生ごみ(食品廃棄物)、畜産糞尿、下水汚泥等の有機性廃棄物を処理する方法として、嫌気性生物を用いた嫌気性消化処理が挙げられる。この嫌気性消化処理は、概ね嫌気性消化槽に投入された有機性廃棄物を所定温度まで加温するとともに、有機性廃棄物における水素イオン指数(pH)を所定のpH値に調整することにより行われる。これにより、有機性廃棄物は、可溶化、加水分解及び酸発酵を経てメタン発酵し、有機性廃棄物における固形分がメタンガスと二酸化炭素とに分解してその固形分が減容化される。
【0003】
従来より、熱可溶化槽(熱可溶化リアクタともいう)にて有機性廃棄物を所定温度に加熱し固形分を加水分解する、いわゆる熱可溶化処理を行い、この熱可溶化処理された熱可溶化汚泥を嫌気性消化槽に投入する方法が知られている。例えば特許文献1には、圧力を調整するための圧力調整弁を有する熱可溶化槽内に高温のスチームを供給し、高温・高圧となった熱可溶化槽内に有機性廃棄物を供給して熱可溶化する技術が記載されている。また、特許文献2には、熱可溶化槽内に熱交換器を設け、熱可溶化槽内に投入された有機性廃棄物を熱交換器により加熱して熱可溶化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−500208号
【特許文献2】特開2008−296192号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の処理方法は、熱可溶化槽内から熱可溶化汚泥を排出するとともに熱可溶化槽内の高温のスチームを排出するバッチ方式であるため、次の有機性廃棄物を熱可溶化処理するために熱可溶化槽内に改めて高温のスチームを供給する必要がある。つまりこのバッチ方式によれば、熱可溶化槽内に有機性廃棄物が投入される度に高温のスチームを必要とし相当量の熱エネルギーを要することとなる。
【0006】
そこで、熱可溶化処理における熱エネルギーの低減を図る方策として、バッチ方式でなく、熱可溶化槽内に供給されたスチームを滞留させた状態で破砕固形物の供給及び熱可溶化汚泥の排出を行なう連続方式の熱可溶化処理が考えられる。しかしながら、連続方式の熱可溶化処理では、有機性廃棄物の固形物が熱可溶化槽の圧力調整弁を閉塞するおそれがあり、この場合熱可溶化槽内を所定の圧力にコントロールすることが困難となる。このような理由から、従来の熱可溶化処理においては、熱可溶化槽の圧力調整弁内に詰まった汚泥を除去できるように、専ら解放可能なバッチ方式の熱可溶化槽を用いているのが実状である。
【0007】
他方、特許文献2に記載された高温のスチームの代わりに熱交換器を用いる技術では、有機性廃棄物の固形分が熱交換器の表面で焦げつき、熱交換率が低下しやすいという問題がある。また、熱交換率の低下を回避するためには熱交換器表面のスケールを除去するなどの作業が必要となり、管理に手間がかかりやすくなる。
【0008】
本発明はこれらの問題を解決するために創案されたものであり、熱可溶化汚泥による圧力調整弁の閉塞を抑制し、安定して連続方式の熱可溶化処理を可能とする有機性廃棄物の処理方法および処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、有機性廃棄物を嫌気性消化処理する消化工程と、前記消化工程で嫌気性消化処理された消化処理汚泥を脱水処理する脱水工程と、前記消化工程で消化処理して得られた有機性廃棄物を、下流側に介設した圧力調整弁により圧力調整をしたうえで連続して投入して熱可溶化処理し、その処理した熱可溶化汚泥を前記消化工程に戻す熱可溶化工程と、を有する有機性廃棄物の処理方法であって、有機性廃棄物を前記消化工程に投入するまでの第1流路および前記消化工程から送出された有機性廃棄物を前記熱可溶化工程に投入するまでの第2流路のうちの少なくとも一方の流路において、有機性廃棄物の固形物のうち前記圧力調整弁の最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物のみを下流に流す小固形物通過手段を設け、有機性廃棄物を脱水処理を行うことなく前記小固形物通過手段に流入させることを特徴とする。
また、有機性廃棄物を嫌気性消化処理する消化槽と、前記消化槽で嫌気性消化処理された消化処理汚泥を脱水処理する脱水装置と、前記消化槽または前記消化槽から引き抜かれた消化汚泥を一旦貯える消化汚泥貯槽から連続して投入される有機性廃棄物を、下流側に介設した圧力調整弁により圧力調整をしたうえで熱可溶化処理し、その処理した熱可溶化汚泥を前記消化槽に戻す熱可溶化槽と、を有する有機性廃棄物の処理装置であって、有機性廃棄物を前記消化槽に投入するまでの第1流路および前記消化槽から送出された有機性廃棄物を前記熱可溶化槽に投入するまでの第2流路のうちの少なくとも一方の流路において、第1流路または第2流路での脱水処理が行われることなく流入する有機性廃棄物の固形物のうち前記圧力調整弁の最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物のみを下流に流す小固形物通過手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
スラリー状態で流入する有機性廃棄物の固形物のうちで、熱可溶化槽の圧力調整弁の最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物のみを下流に流す小固形物通過手段を設けたことにより、圧力調整弁における目詰まりを抑制できる。したがって、熱可溶化槽において、高温のスチームを滞留させたまま有機性廃棄物を連続的に安定して熱可溶化処理することができる。高温のスチームを滞留させたまま熱可溶化処理するため、従来の熱可溶化処理のように、間欠的に熱可溶化汚泥を排出し、熱可溶化汚泥の排出と同時に熱可溶化槽内のスチームをほぼ全量排出し、改めて、熱可溶化槽内に熱可溶化する有機性廃棄物を張り込んでから高温スチームを熱可溶化槽内に供給する必要がなく、従来消費されていた膨大な熱エネルギーを削減でき、熱効率を向上させることができる。また、熱可溶化処理にあたって、熱交換器を用いていないので、有機性廃棄物が熱交換器の表面に焦げ付くことがないため、スケール除去が不要となり、維持管理の容易化を図れる。
【0011】
小固形物のみを熱可溶化槽に流す他の方法としては、例えば有機性廃棄物を脱水処理して一旦固形化し、これを破砕装置により小固形物となるように破砕して熱可溶化槽に流す方法が考えられる。しかし、この方法は、高濃縮された固形分を破砕することになるため破砕装置における破砕抵抗が大きくなり、駆動力の大きい高価な破砕装置が必要となる。これに対し、本発明は有機性廃棄物をスラリー状態のまま、小固形物通過手段に流入させて小固形物を得るため、構造が簡単で経済的な処理装置となる。
【0012】
また、本発明は、前記小固形物通過手段が破砕ポンプからなることを特徴とする。
【0013】
小固形物通過手段を破砕ポンプから構成することにより、有機性廃棄物の固形物を、圧力調整弁の最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物に破砕することができる。破砕ポンプはスラリー状態の有機性廃棄物に含まれる固形物を破砕する構造のため、破砕抵抗が小さくて済む。したがって、駆動力の小さい比較的安価な破砕ポンプで処理装置を実現できる。
【0014】
また、本発明は、前記小固形物通過手段がストレーナまたはスクリーンからなることを特徴とする。
【0015】
小固形物通過手段をストレーナまたはスクリーンから構成することにより、スラリー状態の有機性廃棄物をストレーナまたはスクリーンによりろ過するだけの簡単な構造となり、経済的な処理装置を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱可溶化槽の圧力調整弁における閉塞が抑制され、安定した連続方式の熱可溶化処理が可能な有機性廃棄物の処理方法および処理装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る処理装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る処理装置の全体構成を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る処理装置の全体構成を示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る処理装置の全体構成を示す図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る処理装置の全体構成を示す図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る処理装置の全体構成を示す図である。
【図7】本発明で用いる破砕ポンプの一例を示す図であり、要部の側断面図である。
【図8】本発明で用いる破砕ポンプの一例を示す図であり、要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「第1実施形態」
図1において、処理装置1は、有機性廃棄物W1を嫌気性消化処理する消化槽2と、消化槽2で嫌気性消化処理された消化処理汚泥を脱水処理する脱水装置7と、消化槽2または消化槽2から引き抜かれた消化汚泥を一旦貯える消化汚泥貯槽(図示せず)から連続して投入される有機性廃棄物W2を、下流側に介設した圧力調整弁3Aにより圧力調整をしたうえで熱可溶化処理し、その処理した熱可溶化汚泥Mを消化槽2に戻す熱可溶化槽(熱可溶化リアクタともいう)3と、を備えて構成される。ここで、有機性廃棄物W1が消化槽2に投入されるまでの流路を第1流路S1、消化槽2から送出された有機性廃棄物W2が熱可溶化槽3に投入されるまでの流路を第2流路S2というものとする。第2流路S2にあっては、前記消化汚泥貯槽(図示せず)を途中に設けた場合であっても、消化槽2から熱可溶化槽3までの有機性廃棄物W2の流路を第2流路S2というものとする。有機性廃棄物W1は、例えば下水汚泥や浄化槽汚泥等の有機性汚泥、食品廃棄物、生ごみ、畜産糞尿等である。
【0019】
消化槽2は、有機性廃棄物W1を嫌気性消化処理する消化工程を構成する。消化槽2は、嫌気性のメタン発酵菌により有機性廃棄物W1をメタン発酵(消化処理)させる。メタン発酵菌はHをCHに転換する水素資化性メタン生成菌を含む。メタン発酵に伴い、消化槽2から主にCH、COからなる消化ガスGが発生し、その全てまたは一部がボイラ4に送出される。ボイラ4はこの消化ガスGを燃料として高温のスチームを発生し、後述するように熱可溶化槽3に供給する。
【0020】
消化槽2の運転温度はメタン発酵菌の種類やダブリングタイム等を考慮して適宜に設定されるものであるが、本発明者が試験した範囲では30〜42℃又は50〜60℃の運転温度にするとメタンの発生量等の点で良好な結果が得られている。特に前者の温度範囲では35〜38℃に、後者の温度範囲では52〜56℃にすると一層良好な結果が得られている。
【0021】
消化槽2は、例えば槽内の有機性廃棄物を攪拌する攪拌装置5を備えており、この攪拌装置5により有機性廃棄物の温度分布が均一化され消化処理が促進される。攪拌装置5の構造は特に限定されるものではなく、図1では、円筒状であって消化槽2内の中央部を囲んで配置されるドラフトチューブ5Aと、駆動装置(図示せず)により回転駆動される攪拌翼5Bと、を備えた構造のものを例示してある。この攪拌装置5によれば、攪拌翼5Bが回転すると、ドラフトチューブ5Aの内部においては例えば上方から下方に向かう下降流が発生し、ドラフトチューブ5Aの外部においては下方から上方に向かう上昇流が発生することにより、消化槽2内全体で有機性廃棄物が効果的に攪拌され、有機性廃棄物の温度分布の均一化が促進される。
【0022】
消化槽2の底部には、有機性廃棄物を嫌気性消化処理済みとして排出する排出路S4が接続され、この排出路S4に脱水装置7が介設され、脱水装置7の上流側に圧送ポンプP2が介設される。脱水装置7は、消化槽2で嫌気性消化処理された消化処理汚泥を脱水処理する脱水工程を構成する。脱水装置7は例えば遠心脱水機(デカンター)、スクリュー圧搾式脱水機等から構成される。消化処理汚泥は脱水装置7により脱水処理され、脱水ケーキとして別工程で処理される。脱水ろ液は図示しない水処理系に送られる。
【0023】
熱可溶化槽3は、消化槽2または図示しない消化汚泥貯槽から連続して投入される有機性廃棄物W2を熱可溶化処理し、その処理した熱可溶化汚泥Mを還流路S3を介して消化槽2からなる消化工程に戻す熱可溶化工程を構成する。熱可溶化槽3は、有機性廃棄物W2を高温・高圧の条件化で熱可溶化する装置であって、有機性廃棄物W2の供給及び熱可溶化汚泥Mの排出の際にスチームを無駄に排出しないで滞留させる連続方式の熱可溶化装置である。熱可溶化槽3は、有機性廃棄物W2が投入される容器3Bと、容器3Bの下流側の流路に介設されて容器3B内の圧力を制御する圧力調整弁3Aとを備える。圧力調整弁3Aは、容器3B内の気圧を調整する目的でその開度が制御される。
【0024】
ここで、熱可溶化槽3(容器3B)において設定される圧力は概ね0.2MPa〜1.0MPa、好ましくは0.5MPa〜0.8MPaであり、設定される温度は120℃〜180℃、好ましくは150℃〜170℃である。熱可溶化槽3の制御部(図示せず)は、温度センサおよび圧力センサ(共に図示せず)により測定された容器3B内の温度及び圧力に基づいて、前記設定圧力及び設定温度となるように、ボイラ4との流路に介設されたスチームバルブ(図示せず)と前記圧力調整弁3Aとを開閉制御する。
【0025】
第2流路S2には、消化槽2で嫌気性消化処理された有機性廃棄物W2を脱水したうえで熱可溶化槽3に流すための脱水装置6が介設され、脱水装置6の上流側に圧送ポンプP1が介設される。脱水装置6も脱水装置7と同様に遠心脱水機(デカンター)、スクリュー圧搾式脱水機等から構成される。脱水装置6から排出された脱水ろ液は図示しない水処理系に送られる。
【0026】
以上の処理装置1において、本発明は、第1流路S1および第2流路S2のうちの少なくとも一方の流路において、スラリー状態で流入する有機性廃棄物(第1流路S1の場合にはW1を指し、第2流路S2の場合にはW2を指す)の固形物のうち圧力調整弁3Aの最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物のみを下流に流す小固形物通過手段8を設け、有機性廃棄物W1またはW2を脱水処理を行うことなく小固形物通過手段8に流入させることを主な特徴とする。つまり、有機性廃棄物W1については第1流路S1に設けた小固形物通過手段8よりも上流側において脱水処理を行わず、有機性廃棄物W2については消化槽2から第2流路S2に設けた小固形物通過手段8までの間において脱水処理を行わないものである。勿論、脱水装置6は小固形物通過手段8よりも下流側に位置しているから、消化槽2から小固形物通過手段8までの間の脱水処理に相当しない。
【0027】
前記小固形物の大きさは、熱可溶化槽3の圧力調整弁3Aが有する弁体と該弁体が着座可能な弁座との間の間隔により形成される絞り通路の幅に関連する。具体的には、小固形物の大きさは、最大開度時の圧力調整弁3Aの前記弁体と前記弁座との間の最大間隔未満の値である。なお、この最大間隔は、例えば、前記弁体と前記弁座とにより円環状の絞り通路が形成される場合に、前記弁体と前記弁座との間の円環状の前記絞り通路の幅に相当する。さらに好ましくは、圧力調整弁3Aの開度を、熱可溶化槽3内に供給されたスチームを滞留させた状態で、熱可溶化槽3への有機性廃棄物W2の供給及び熱可溶化槽3からの熱可溶化汚泥Mの排出を行なうことができる開度としたときの前記絞り通路の幅以下とする。そのために、小固形物通過手段8は、固形物のうちで例えば2mm以下、より好ましくは1mm以下の大きさの小固形物のみを下流側に流す。
【0028】
本実施形態は、小固形物通過手段8を第2流路S2に設けたストレーナ9から構成している。ストレーナ9は脱水装置6よりも上流側に設けられる。また、第2流路S2に設けたストレーナ9に加えて、第1流路S1にも小固形物通過手段8としてスクリーン10を設けてもよい。ストレーナ9は、例えば、ろ過孔がメッシュ状や格子状などに形成された筒状の濾材を備え、この濾材により大きな固形物を捕捉してろ過孔未満の小さな固形物のみを下流に流すバケット型ストレーナ等、公知構造のものが適用される。第2流路S2を流れるスラリー状の有機性廃棄物W2は、ストレーナ9により圧力調整弁3Aの最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔以上の大きさの固形物が除去されたうえで脱水装置6に流れる。ストレーナ9により捕捉された大きな固形物は例えば排出路S4に送られて脱水装置7により処理される。
なお、遠心脱水機(デカンター)やスクリュー圧搾式脱水機等からなる脱水装置6は、大小の固形物のうちで小固形物のみを流す機能や固形物の大きさを小さくする機能等を有しておらず、小固形物通過手段8には相当しない。
【0029】
有機性廃棄物W1、W2は、その固形物濃度が2〜15Wt%(wt/wt)、好ましくは2〜10Wt%(wt/wt)のスラリー状態として小固形物通過手段8に流すことが好ましい。特に第2流路S2を流れる有機性廃棄物W2について着目すると、小固形物通過手段8の下流には脱水装置6が位置している。この脱水装置6は脱水固形物における固形物濃度が10〜35Wt%(wt/wt)、好ましくは、15〜25Wt%(wt/wt)となるように設定されている。固形物濃度を少なくとも10Wt%以上と設定するのは、下流の熱可溶化槽3において有機性廃棄物の固形分を熱可溶化する際に、有機性廃棄物中の水分に熱エネルギーが奪われることを低減して、熱可溶化工程で使用する熱エネルギーを低減させるためである。一方、流路における有機性廃棄物のスムーズな流れ等の点から固形物濃度の上限側は35Wt%としている。このように、脱水装置6において脱水固形物における固形物濃度が容易に10〜35Wt%となるようにするため、脱水装置6の上流側に設けられる小固形物通過手段8においては、有機性廃棄物W2の固形物濃度が2〜15Wt%(wt/wt)、好ましくは2〜10Wt%(wt/wt)のスラリー状態として流入することが望ましい。
【0030】
次に第1流路S1に設けられるスクリーン10としては、例えば複数のバーを縦方向あるいは横方向に並設した公知のバースクリーンを適用できる。このバースクリーンにより、第1流路S1を流れる有機性廃棄物W1のうちで大きな固形物が捕捉され、液状成分と小さな固形物のみがバー間の目開部から下流側に流れ消化槽2に投入される。目開部の幅は例えば4〜15mmである。
【0031】
本実施形態の処理装置1によれば、少なくともストレーナ9からなる小固形物通過手段8により、圧力調整弁3Aの最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物のみが熱可溶化槽3に流れるため、圧力調整弁3Aにおける有機性廃棄物(具体的には熱可溶化汚泥M)による目詰まりを抑制できる。したがって、熱可溶化槽3において、高温のスチームを滞留させたまま有機性廃棄物W2を連続的に安定して熱可溶化処理することができる。高温のスチームを滞留させたまま熱可溶化処理するため、従来の熱可溶化処理のように、間欠的に熱可溶化汚泥を排出し、熱可溶化汚泥の排出と同時に熱可溶化槽内のスチームをほぼ全量排出し、改めて、熱可溶化槽内に熱可溶化する有機性廃棄物を張り込んでから高温スチームを熱可溶化槽内に供給する必要がなく、従来消費されていた膨大な熱エネルギーを削減でき、熱効率を向上させることができる。また、熱可溶化処理にあたって、熱交換器を用いていないので、有機性廃棄物が熱交換器の表面に焦げ付くことがないため、スケール除去が不要となり、維持管理の容易化を図れる。
【0032】
ここで、圧力調整弁3Aの最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物のみを熱可溶化槽3に流す他の方法としては、例えば有機性廃棄物W1あるいはW2を脱水処理して一旦固形化し、これを破砕装置により小固形物となるように破砕する方法が考えられる。しかし、この方法は、高濃縮された固形分を破砕することになるため破砕装置における破砕抵抗が大きくなり、駆動力の大きい高価な破砕装置が必要となってしまう。これに対し、本実施形態の処理装置1によれば、スラリー状態の有機性廃棄物W2をストレーナ9によりろ過するだけの構成となるため、構造が簡単で経済的な処理装置1を実現できる。
【0033】
「第2実施形態」
第2実施形態の処理装置1について図2を参照して説明する。この第2実施形態において第1実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する。
第2実施形態の処理装置1は、第1流路S1に小固形物通過手段8としての破砕ポンプ11が設けられるとともに、第2流路S2に小固形物通過手段8としてのストレーナ9またはスクリーン10が設けられている。
【0034】
第1流路S1において、有機性廃棄物W1は先ず原料貯槽12に投入される。原料貯槽12の底部寄りと破砕ポンプ11の流入口とは流路T1を介して接続する。破砕ポンプ11の吐出口に接続した流路は途中で二股分岐し、一方の流路T2は原料貯槽12の上部寄りに接続し、他方の流路T3は消化槽2に接続する。流路T2、T3にはそれぞれ開閉バルブV1、V2が介設される。
【0035】
破砕ポンプ11は、例えば図7、図8に示すように、先端(下端)が直線状の刃に形成された固定式の切刃13と、軸流型の破砕羽根車14と、破砕羽根車14の外側に取り付けられるシュラウドリング15と、破砕羽根車14の下流側に取り付けられる格子状部材16と、格子状部材16の下流側に設けられる加圧羽根車17とを備えて構成される。図2において原料貯槽12から流路T1を介して破砕ポンプ11に流入した有機性廃棄物W1の固形物は、図7、図8において、先ず切刃13と回転する破砕羽根車14の上流側のエッジとによって荒切りされる。次いで固形物は破砕羽根車14により撹拌圧送され、このとき遠心力によって一部がシュラウドリング15の刃部に当たって切断される。さらに破砕羽根車14と格子状部材16との間で固形物がさらに細かく破砕(摺砕)され、加圧羽根車17により加圧されたうえで吐出口から外部に吐出される。吐出口から吐出される固形物の大きさについては、例えば破砕羽根車14の刃の枚数、格子状部材16の格子目の大きさ、流速等を適宜に設定してこれらを組み合わせることにより、図2に示す圧力調整弁3Aの最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさに設定することができる。
【0036】
有機性廃棄物W1は、その固形物濃度が2〜15Wt%(wt/wt)、好ましくは2〜10Wt%(wt/wt)のスラリー状態として原料貯槽12から破砕ポンプ11に流入する。破砕ポンプ11により有機性廃棄物W1を破砕するときは、開閉バルブV1を開にして流路T2を連通状態、開閉バルブV2を閉にして流路T3を閉止状態とし、原料貯槽12と破砕ポンプ11との間で有機性廃棄物W1を所定時間循環させて破砕処理する。そして、破砕処理後、開閉バルブV1を閉にして流路T2を閉止状態、開閉バルブV2を開にして流路T3を連通状態にすることで、小固形物のみを含むスラリー状の有機性廃棄物W1が消化槽2に投入される。したがって、消化槽2から送出される有機性廃棄物W2においても小固形物のみを含むスラリー状態として熱可溶化槽3に投入される。
【0037】
本実施形態の処理装置1によれば、破砕ポンプ11からなる小固形物通過手段8により有機性廃棄物W1における固形物を、圧力調整弁3Aの最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物に破砕することができる。また、第2流路S2にはストレーナ9またはスクリーン10が設けられることから、これらの相乗効果により圧力調整弁3Aにおける目詰まりを一層抑制できる。したがって、熱可溶化槽3において、高温のスチームを滞留させたまま有機性廃棄物W2を連続的に安定して熱可溶化処理することができる。
【0038】
また本実施形態の処理装置1によれば、破砕ポンプ11はスラリー状態の有機性廃棄物W1に含まれる固形物を破砕する構造のため、破砕抵抗が小さくて済む。したがって、駆動力の小さい比較的安価な破砕ポンプ11で処理装置1を実現できる。
【0039】
「第3実施形態」
第3実施形態の処理装置1について図3を参照して説明する。この第3実施形態において第2実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する。
第3実施形態の処理装置1は、第1流路S1において小固形物通過手段8として破砕ポンプ11と、ストレーナ9またはスクリーン10とが設けられている。図3では破砕ポンプ11を上流側、ストレーナ9またはスクリーン10を下流側に配した例を示している。
【0040】
本実施形態の処理装置1によれば、破砕ポンプ11により有機性廃棄物W1における固形物を、圧力調整弁3Aの最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物に破砕することができ、ストレーナ9またはスクリーン10との相乗効果により圧力調整弁3Aにおける目詰まりを一層抑制できる。したがって、熱可溶化槽3において、高温のスチームを滞留させたまま有機性廃棄物W2を連続的に安定して熱可溶化処理することができる。
【0041】
「第4実施形態」
第4実施形態の処理装置1について図4を参照して説明する。この第4実施形態において第3実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する。
第4実施形態の処理装置1は、第1流路S1において小固形物通過手段8としてストレーナ9またはスクリーン10が設けられている。ストレーナ9またはスクリーン10の上流側には原料貯槽12が設けられる。ストレーナ9またはスクリーン10と原料貯槽12との間には圧送ポンプP3が設けられる。
【0042】
本実施形態の処理装置1によれば、ストレーナ9またはスクリーン10により、圧力調整弁3Aの最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物のみが熱可溶化槽3に流れるため、圧力調整弁3Aにおける目詰まりを抑制できる。したがって、熱可溶化槽3において、高温のスチームを滞留させたまま有機性廃棄物W2を連続的に安定して熱可溶化処理することができる。
【0043】
「第5実施形態」
第5実施形態の処理装置1について図5を参照して説明する。この第5実施形態において第2実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する。
第5実施形態の処理装置1は、第2流路S2において脱水装置6の上流側に小固形物通過手段8としての破砕ポンプ11が設けられる。
【0044】
本実施形態の処理装置1によれば、破砕ポンプ11により、圧力調整弁3Aの最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物のみが熱可溶化槽3に流れるため、圧力調整弁3Aにおける目詰まりを抑制できる。したがって、熱可溶化槽3において、高温のスチームを滞留させたまま有機性廃棄物W2を連続的に安定して熱可溶化処理することができる。
【0045】
「第6実施形態」
第6実施形態の処理装置1について図6を参照して説明する。この第6実施形態において第5実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する。
第6実施形態の処理装置1は、第2流路S2において脱水装置6の上流側に小固形物通過手段8として破砕ポンプ11と、ストレーナ9またはスクリーン10とが設けられる。図6では破砕ポンプ11をストレーナ9またはスクリーン10よりも上流側に設けた例を示している。
【0046】
本実施形態の処理装置1によれば、破砕ポンプ11により有機性廃棄物W2における固形物を、圧力調整弁3Aの最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物に破砕することができ、ストレーナ9またはスクリーン10との相乗効果により圧力調整弁3Aにおける目詰まりを一層抑制できる。したがって、熱可溶化槽3において、高温のスチームを滞留させたまま有機性廃棄物W2を連続的に安定して熱可溶化処理することができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。小固形物通過手段8を第1流路S1のみに設けた場合、小固形物通過手段8により小型化された固形物が再び消化槽2で絡み合って大きな固形物となり、これを含んだ有機性廃棄物W2が熱可溶化槽3に流れるおそれがあることを鑑みると、小固形物通過手段8は少なくとも第2流路S2に設ける態様とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
1 処理装置
2 消化槽(消化工程)
3 熱可溶化槽(熱可溶化工程)
3A 圧力調整弁
7 脱水装置(脱水工程)
8 小固形物通過手段
9 ストレーナ
10 スクリーン
11 破砕ポンプ
12 原料貯槽
M 熱可溶化汚泥
S1 第1流路
S2 第2流路
W1、W2 有機性廃棄物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を嫌気性消化処理する消化工程と、
前記消化工程で嫌気性消化処理された消化処理汚泥を脱水処理する脱水工程と、
前記消化工程で消化処理して得られた有機性廃棄物を、下流側に介設した圧力調整弁により圧力調整をしたうえで連続して投入して熱可溶化処理し、その処理した熱可溶化汚泥を前記消化工程に戻す熱可溶化工程と、
を有する有機性廃棄物の処理方法であって、
有機性廃棄物を前記消化工程に投入するまでの第1流路および前記消化工程から送出された有機性廃棄物を前記熱可溶化工程に投入するまでの第2流路のうちの少なくとも一方の流路において、
有機性廃棄物の固形物のうち前記圧力調整弁の最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物のみを下流に流す小固形物通過手段を設け、
有機性廃棄物を脱水処理を行うことなく前記小固形物通過手段に流入させることを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記小固形物通過手段が破砕ポンプからなることを特徴とする請求項1に記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記小固形物通過手段がストレーナまたはスクリーンからなることを特徴とする請求項1に記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
有機性廃棄物を嫌気性消化処理する消化槽と、
前記消化槽で嫌気性消化処理された消化処理汚泥を脱水処理する脱水装置と、
前記消化槽または前記消化槽から引き抜かれた消化汚泥を一旦貯える消化汚泥貯槽から連続して投入される有機性廃棄物を、下流側に介設した圧力調整弁により圧力調整をしたうえで熱可溶化処理し、その処理した熱可溶化汚泥を前記消化槽に戻す熱可溶化槽と、
を有する有機性廃棄物の処理装置であって、
有機性廃棄物を前記消化槽に投入するまでの第1流路および前記消化槽から送出された有機性廃棄物を前記熱可溶化槽に投入するまでの第2流路のうちの少なくとも一方の流路において、
第1流路または第2流路での脱水処理が行われることなく流入する有機性廃棄物の固形物のうち前記圧力調整弁の最大開度時における弁体と弁座との間の最大間隔未満の大きさの小固形物のみを下流に流す小固形物通過手段を設けたことを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。
【請求項5】
前記小固形物通過手段が破砕ポンプからなることを特徴とする請求項4に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項6】
前記小固形物通過手段がストレーナまたはスクリーンからなることを特徴とする請求項4に記載の有機性廃棄物の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10072(P2013−10072A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144043(P2011−144043)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000176752)三菱化工機株式会社 (48)
【Fターム(参考)】