説明

有機性廃棄物の嫌気性処理方法及び装置

【課題】嫌気性微生物の反応特性を利用して有機性固形分を短時間で簡便に効率良く可溶化・低分子化する生物処理プロセスを、生ごみ系有機性廃棄物の水素・メタン二段発酵処理プロセスに最適化する。
【解決手段】糖質系廃棄物が主体の生ごみ系有機性廃棄物処理もしくはセルロース性固形物を含む生ごみ系有機性廃棄物処理において、前処理工程で微細化、均質化されると共に濃度がVS 5〜15wt%の原料に対して、前段に30〜70℃、pH5〜8.5、水理学的滞留時間2〜3日の生物反応で処理する完全混合型の嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程、続く後段に完全混合型のメタン発酵工程からなる二段発酵法を行い、メタン発酵工程からの流出成分の一部を前記嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程に返送する生物学的に水素とメタンを回収する嫌気性処理方法及び装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥、余剰汚泥、家畜糞尿、生ごみ、食品製造廃棄物などの有機性廃棄物を水素発酵とメタン発酵の二段発酵法により嫌気性処理する方法及び装置に関し、特に、嫌気性微生物の反応特性を利用して、有機性固形分を短時間で簡便に効率良く可溶化・低分子化する、生物処理プロセスと水素発酵プロセスを併せ持つことを特徴とする有機性廃棄物の嫌気性処理方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、資源循環型社会の構築を目指して、有機性廃水・廃棄物(バイオマス)を対象とした嫌気性処理法(メタン発酵法)が注目されてきている。これは、廃水・廃棄物からメタンガスや水素ガスなどのバイオマスエネルギーを生物学的に変換できる点、液体肥料やコンポスト資源を回収できる点、温和な生物反応を利用する点、焼却処理に依存しない点、化石燃料由来のCO削減に寄与できる点などの特徴を有するためである。
【0003】
一方、メタン発酵技術においては、有機性廃水系では高速化と廃水種類の適用拡大が研究開発課題であり、有機性廃棄物においては固形物可溶化とメタンガス転換率の向上が研究開発課題として挙げられ、種々の技術が提案されている。現段階においては、UASB(上向流式嫌気性スラッジブランケット)法による有機性廃水の高速処理、有機性廃棄物の高温メタン発酵法の適用によって技術革新は進歩しつつあるものの、固形物の可溶化技術に関しては依然として十分な解決には到っていない。特に、資源循環の中で将来的に最も重要となる未利用のバイオマス資源に関して、その多くを占めるセルロース成分や汚泥に対する可溶化・低分子化技術については未確立な状況にある。
【0004】
また、水素発酵技術における研究開発課題としては、Clostridium属細菌、Enterobacter属細菌、Bacillus属細菌、嫌気性集積培養菌を用いてグルコースやデンプン、ショ糖などの可溶性の糖質から水素発酵する技術は種々提案されている。また、有機性固形廃棄物を対象とした水素発酵技術が未確立である点、水素ガスに変換できる対象有機物がグルコースやデンプンに限定されている点、有機性固形廃棄物を対象とした水素発酵の制御技術が未確立である点など多くの研究開発課題を残している。
【0005】
更に、有機性廃液を対象として、水素発酵とメタン発酵を配管を介して組合わせたバイオガス発生装置によって、水素ガスとメタンガスを嫌気的に回収する方法が提案されているが、有機性固形廃棄物を対象とした場合の効率的な技術提案はなされていない(例えば、特許文献1参照)。
また、濃厚な有機性排水や汚泥、下水汚泥等を嫌気性処理して無機安定化する際に、水素とメタンとを別々に生産回収してエネルギーの有効利用を図ると共に、処理効率の改善及び運転の安定化を可能とする嫌気性処理装置に関する技術が特許登録されている(特許第3191400号)。これは、有機性排水を受け入れ酸生成するための酸生成槽と、酸生成槽の流出液の一部を受け入れメタン生成を行なうためのメタン生成槽と、酸生成槽の流出液の一部を受け入れ、減圧して溶存ガスを気相に移行させるための減圧槽と、減圧槽内の液を酸生成槽に戻す手段と、減圧槽から排出される気相から、水系吸蔵合金により水素を回収する手段とを備えたことを特徴とする嫌気性処理装置を特徴としているが、本発明の1つの主題である可溶化・水素発酵技術に関する提案ではない。
【0006】
このような有機性廃棄物を対象とした場合において、従来から知られている有機性固形物の可溶化・低分子化技術(以下、前処理と呼ぶ)方法としては、物理化学的処理として爆砕法、超音波破砕法、湿式酸化法、湿式ミル法、熱処理法、アルカリ処理法、熱アルカリ処理法、オゾン処理法など多数知られている。また、生物学的処理法としては、微生物処理法、酵素処理法などが知られている。
【0007】
これらの内、物理化学的な前処理は、投入エネルギー量が多いこと、酸・アルカリなどの薬品の消費が多いこと、設備面でコスト負担や維持管理負担が大きいことなどから、廃棄物処理での水素発酵・メタン発酵システムとして見た場合、費用対効果としては十分満足するものでないのが現状である。一方、生物学的な前処理としては、代表的なものに酵素処理法と微生物処理法が挙げられる。前者は、近年の遺伝子組換技術等の駆使によって、各種工業用酵素は高活性・低廉化になりつつあるものの、その使用に際しては、(1)対象固形物が限定されること、(2)固形物の性状によって作用効果が異なること、(3)比較的易分解牲の固形物には作用が進行し易い反面、難分解性の固形物には依然として問題点も残されている。微生物処理法では、先に挙げたようなClostridium属細菌、Enterobacter属細菌、Bacillus属細菌、嫌気性集積培養菌等の特定の有用な微生物種または微生物群を添加する方法(バイオオーグメンテーション)、有用微生物群の栄養要求や生育環境を整えることで増殖を活発化する方法(バイオスティムレーション)が知られているが、実用的に適用される技術にまでは到っていないのが現状である。
【0008】
更には、分解槽(反応槽)内の嫌気性の汚泥又は微生物の濃度を分離膜を用いて高濃度に保持することにより、固形物の可溶化・低分子化を促進する手法もある。これは、工学的には、HRT(水理学的滞留時間)を変えずに、SRT(汚泥滞留時間)を長くとることによって微生物分解を促進することを狙うものである。しかしながら、有機性廃棄物を対象として分離膜技術を適用した場合、分離膜の閉塞や発泡間題などの実用上のトラブルが多く、初期コスト、ランニングコストも高いことから、汎用性のある技術とはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−149983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、有機性廃棄物の水素発酵・メタン発酵の二段発酵処理においては、固形物の水素ガス・メタンガスヘの効率的変換がポイントであるが、その変換工程では、固形物の可溶化・低分子化の技術が発酵処理性能を制する最大の鍵となっている。したがって、より効率的な可溶化・低分子化工程を備えた、水素・メタン二段発酵処理プロセスの構築が求められている。
【0011】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて、下水汚泥、余剰汚泥、家畜糞尿、生ごみ、食品製造廃棄物などの固形分を含む有機性廃棄物を水素発酵・メタン発酵処理する方法において、特に、嫌気性微生物の反応特性を利用して有機性固形物を短時間で簡便に効率良く可溶化・低分子化する生物処理プロセスを、水素・メタン二段発酵処理プロセスに最適化する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、有機性固形物に焦点を当て、その効率的な可溶化方法と水素発酵手法について鋭意検討を行った。先ず、有機性廃棄物の高温メタン発酵法の研究事例を基に、そこでの有機物分解反応と微生物的特性を解析・考察した。そして、その嫌気的微生物的特性を活用した可溶化・水素発酵プロセスを考案して本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は下記の構成により上記の目的を達成するものである。
(1)糖質系廃棄物が主体の生ごみ系有機性廃棄物処理もしくはセルロース性固形物を含む生ごみ系有機性廃棄物処理において、前処理工程で微細化、均質化されると共に濃度がVS 5〜15wt%の原料に対して、前段に30〜70℃、pH5〜8.5、水理学的滞留時間2〜3日の生物反応で処理する完全混合型の嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程、それに引き続く後段に完全混合型のメタン発酵工程からなる二段発酵法を行い、メタン発酵工程からの流出成分の一部を前記嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程に返送することを特徴とする生物学的に水素とメタンを回収する嫌気性処理方法。
【0014】
(2)糖質系糖質系廃棄物が主体の生ごみ系有機性廃棄物処理もしくはセルロース性固形物を含む生ごみ系有機性廃棄物処理装置において、前処理工程で微細化、均質化されると共に濃度をVS 5〜15wt%に調整した原料を置く原料槽、前段に30〜70℃、pH5〜8.5、水理学的滞留時間2〜3日の生物反応で処理する嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程を行う完全混合型の嫌気性可溶化・水素発酵槽、それに引き続いた後段に完全混合型のメタン発酵工程を行うメタン発酵槽を設けてなる二段発酵法を行う装置であって、メタン発酵槽からの流出成分の一部を前記嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程を行う前記嫌気性可溶化・水素発酵槽に返送する返送管を設けることを特徴とする生物学的に水素とメタンを回収する嫌気性処理装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法及び装置によれば、有機性廃棄物の処理の前段に嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程、それに引き続く後段にメタン発酵工程からなる二段発酵法によって、生物学的に水素とメタンを回収するようにしたので、有機性固形物を短時間で簡便に効率良く可溶化・低分子化することができ、有機性廃棄物処理に伴い生じる有機性廃液のBODやCODを低減させるとともに、バイオガスとして水素及びメタンを生成することができる。原水中の有機物の大部分が糖質系有機性廃棄物、あるいはセルロース等の固形物であっても、嫌気性可溶化・水素発酵工程での水理学的滞留時間が2〜3日で同様に処理可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以降、便宜的に可溶化・水素発酵方法及びメタン発酵方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
(1)前処理条件
本発明に係わる有機性廃棄物処理方法では、嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程(簡便のために以下「可溶化・水素発酵工程」ともいう)の前段には物理的破砕によって原料を微細化、均質化することが、後段の可溶化・水素発酵工程やメタン発酵工程での生物反応に非常に効果的である。特に、生ごみ、食品加工廃棄物、調理加工残渣、紙ごみのような固形状で大きさが種々異なる有機性廃棄物に対しては、石臼式破砕、ミンチ破砕、シュレッダー破砕、カッターポンプ破砕などを設けて固形物形状を微細化しておくことが好ましい。破砕工程としては、原料を粗破砕後、水中攪拌機を備えた原料調整槽で下水、排水、水道水、水素・メタン発酵プロセス処理水などを用いて有機物濃度(VS濃度、Volatile Solids)1〜20wt%、好ましくは5〜15wt%にスラリー化して微細化、均質化しておくことが好ましい。更には、そのスラリーを石臼式摩砕機などで微細化、均質化しておくことが好ましい。こういった破砕工程に用いる機械装置としては、例えば、粗破砕機しては高速粉砕機RSCシリーズ(日本イーリング(株)製)で粒径5〜20mmに粗破砕でき、水中ミキサSMシリーズ(新明和工業(株)製)でVS濃度1〜15%にスラリー化と均質化ができ、石臼式摩砕機セレンディピターMKCAシリーズ(増幸産業(株)製)を使用して、高速に粒径1〜0.1mmに湿式微細化ができる。
【0018】
(2)可溶化・水素発酵条件
本発明に係わる有機性廃棄物処理の可溶化・水素発酵工程では、反応温度30〜70℃、pH5〜8.5、水理学的滞留時間(HRT)0.2〜5日で行うことが好ましい。特に、有機性廃棄物の種類によっては可溶化段階が反応律速となりやすいことから、反応温度45〜70℃の高温反応でHRTを3〜5日で行うことが好ましい。これは、高温反応による熱処理と好熱性生物による可溶化が同時に達成され、さらには、この工程をHRT制御することによって通常は高い増殖速度能を有する水素生産微生物を選択的に優占化することができ、嫌気的な可溶化・水素発酵工程が可能となる。
【0019】
この可溶化・水素発酵工程においては、有機性廃棄物の可溶化物は速やかに加水分解や酸発酵へと進んでいくことから、乳酸発酵、酸発酵、水素発酵などの嫌気性発酵がほぼ同時に進行する形となる。したがって、可溶化・水素発酵工程では可溶化菌と水素生産菌とが優占的に共存した発酵環境条件が必要となる。しかしながら、有機性廃棄物の種類によっては、乳酸発酵菌が優占化したり、プロピオン酸生成菌が作用してしまうことが多い。こういった環境下で嫌気的水素生産菌を優占化させて水素ガス回収を促進するためには、多くの嫌気的水素生産菌の倍加時間が4〜24hと非常に早い増殖速度を有することを応用して、可溶化・水素発酵槽内部をHRT制御条件に基づいて可溶化相と水素発酵相の2室に分けて発酵運転することが最適となる。この場合、有機性廃棄物の種類によって、可溶化・水素発酵槽内部の可溶化相と水素発酵相の設定条件が異なってくるが、糖質系廃棄物が主体の可溶化・水素発酵槽では水素発酵工程のHRTを0.2〜2日、好ましくは0.2〜1日、可溶化工程のHRTを3〜4.8日、好ましくは1.5〜2.5日として運転することが好適である。
【0020】
さらに水素発酵菌を優占化するために、クロストリジウム属の嫌気性水素生成微生物を可溶化・水素発酵槽に導入する方法も有効である。例えば、嫌気性水素生産菌クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)SC−E1株(受託番号 菌寄第FERM P−14790)を用いることが有効である。嫌気性水素発酵菌を発酵槽に導入する場合、当該菌体を液状又は粉末状で添加するのが良い。添加率は有機性廃棄物の種類や当該菌体濃度によっても異なるが、目安として水素発酵の反応容積部分に対して0.01〜0.5vol%、好ましくは0.02〜0.2vol%である
【0021】
(3)メタン発酵条件
本発発明に係わる有機性廃棄物処理のメタン発酵工程では、反応処理形式として、浮遊床型、固定床型、流動床型、UASB(上向流式嫌気性スラッジブランケット)型のいずれにおいても適用可能であるが、可溶化・水素発酵工程から供給される原料性状に応じて選択する必要がある。この選択に際しては、特にSS濃度(Suspended Solids)、油脂濃度に注意を払う必要がある。具体的には、SS濃度2,000mg/リットル以上の場合には浮遊床型メタン発酵を適用することが好ましい。また、油脂濃度としては、1,000mg/リットル以上の場合には浮遊床型メタン発酵を適用することが好ましい。
【0022】
メタン発酵工程での運転方法に関しては、発酵温度は30〜70℃、好ましくは50〜65℃の高温性メタン発酵領域であり、最も好ましくは50〜60℃で行う。これは、多くの高温性メタン生成微生物群やその他の嫌気性細菌群の生育至適温度がこれらの範囲内にあるためである。なお、発酵槽内においては中性脂肪や高級脂肪酸は温度が高いほうが分散性が増すため、油脂成分が多く含まれる廃棄物原料を適用する場合には、50〜65℃の高温メタン発酵方法を選択することが好ましい。また、メタン発酵時の好適なpHはpH5〜8.5、最も好ましくはpH6.5〜8.5である。
【0023】
固定床型、流動床型といった微生物保持担体を充填したメタン発酵方法では、微生物を担体に結合する方法として結合法や包括法を適用できるが、本発明でのメタン発酵工程における微生物反応においては砂、珪砂、活性炭、セラミックス、合成樹脂、プラスチックビーズ、ガラスビーズ、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリプロピレン、汚泥焼却灰、木炭粉末、石炭灰フライアッシュのような粒子表面に微生物群を付着させて生物膜を形成させることが有利である。これらの保持担体の嫌気性処理槽内での存在形態、流動状態によって固定床と流動床に大別されるが、本発明ではどちらのタイプも適用が可能である。ただし、固定床タイプでは油脂分の過剰付着による固定化担体の閉塞や汚泥の浮上が、流動床タイプでは担体同士のぶつかり合いによる付着した汚泥微生物群の剥離が問題となりやすいため、発酵原料中の油脂分濃度や固形物濃度などの性状、発酵槽運転時の原水供給方法や有機物負荷、汚泥濃度や汚泥性状などに注意が必要である。これらの操作条件を決めるに際しては、原水性状、水量変動、目標処理水質を加味した上で決定されるものである。
【0024】
(4)返送方法
メタン発酵工程からの流出成分の一部を可溶化・水素発酵工程に返送する方法は、嫌気性処理工程より流出した可溶化・水素発酵汚泥もしくはメタン発酵汚泥などの嫌気汚泥をそのまま返送する方法、流出した嫌気汚泥を重力沈降濃縮あるいは機械濃縮により濃縮し、その濃縮汚泥を可溶化・水素発酵槽に返送する方法が適用される。この汚泥濃縮工程においては、流出汚泥にSS当たり0.1〜1.0wt%の高分子凝集剤等の汚泥凝集用薬剤を添加することで、汚泥濃縮・凝集を促進する手法も有効である。また、機械濃縮の手法としては、遠心脱水機、スクリュープレス式脱水機などの汚泥用脱水機として使用されるものを適用できる。また、脱水汚泥を可溶化・水素発酵槽に返送する場合、これらの脱水機で脱水された汚泥を投入することも何ら問題はない。
【0025】
更には、余剰活性汚泥などの様な好気性汚泥を外部から導入することも有効である。これは、余剰活性汚泥などの微生物体が主体の汚泥は、嫌気性処理での微生物の栄養源としても作用することから、有機物分解反応の効率化、消化促進にも効果的となる。この場合、微生物体の導入において、汚泥を超音波破砕、湿式ミル破砕、ボールミル破砕、ホモジナイズ破砕、熱処理、高温高圧処理、水熱処理、超臨界もしくは亜臨界域での水熱処理、酸やアルカリ処理、オゾン酸化などに代表とされる物理的、化学的破砕処理を施した後に可溶化・水素発酵工程に導入することが一層効果的である。
【0026】
一方、可溶化・水素発酵工程にアルカリ補給するという目的で、メタン発酵工程からの流出成分の一部を可溶化・水素発酵工程に返送する場合には、上記の濃縮汚泥、脱水汚泥の他に、濃縮分離水(上澄液)や脱水ろ液を返送することも効果がある。特に、可溶化・水素発酵工程では大量の低級脂肪酸(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸など)が生成されるために、pH3〜5程度に低下する場合が大半であるため、メタン発酵工程からの濃縮分離水(上澄液)や脱水ろ液を返送する効果は大きい。
【0027】
次に、本発明の実施の形態を図面について説明する。
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を用いて示す。
【0028】
図8は、従来の有機性廃棄物メタン発酵を示すブロック図である。
すなわち、図8は、従来の一段発酵法であるメタン発酵法を説明するブロック図であって、生ごみ10t/日の処理例の物質収支も併せて示すブロック図でもある。
一段発酵法では、生ごみ4を希釈水8とともにメタン発酵槽2に導入し、メタン生成菌によってバイオガス9を発生させるとともに、発酵残渣10を系外へ排出する。生ごみを10t/日処理する場合を例にとって説明すると、生ごみ4はメタン発酵槽2中でメタン生成菌を用いて、55℃の高温メタン発酵を水理学的滞留時間(HRT)20〜25日でメタン発酵されて、バイオガス9を850〜1000m/日発生する。バイオガス9中のメタンの割合は60%であった。
【0029】
図1は、本発明に係わる有機性廃棄物の水素・メタン二段発酵装置の一つの実施形態を示すブロック図である。
図1において、有機性廃棄物処理の前段として可溶化・水素発酵槽1が、それに引き続く後段としてメタン発酵槽2が設けられていることが特徴である。
【0030】
水素・メタン二段発酵法では、生ごみ4を希釈水8とともに先ず可溶化・水素発酵槽1に導入し、嫌気性発酵されて有機物を分解して、水素とメタン原料有機物、例えば有機酸やアルコールを生成する。可溶化・水素発酵槽1で生成したメタン原料有機物をメタン発酵槽2に導入して、メタン生成菌によってメタン原料有機物を分解してメタンと二酸化炭素を生成し、発酵残渣10を系外に排出する。生ごみを10t/日を処理する場合を例に説明すると、生ごみ4は温度30℃の可溶化・水素発酵槽1でHRT1〜3日嫌気性処理され、水素とメタン原料有機物を生成する。可溶化・水素発酵槽1で生成したメタン原料有機物をメタン発酵槽2に導入し、55℃の高温メタン発酵をHRT10〜15日間行い、バイオガス9を1,100〜1,300m/日発生する。バイオガス9中のメタンの割合は60%で、水素の割合は2〜3%であった。
【0031】
図2は、本発明の参考例に係わる有機性廃棄物の可溶化・水素発酵装置の実施形態を示すブロック図である。
水素・メタン二段発酵装置は、可溶化発酵部1Aと水素発酵部1Bに区分された可溶化・水素リアクタ1とメタン発酵を行うメタンリアクタ2で構成されている。有機性廃棄物7は可溶化・水素リアクタ1に導入されるが、易分解性廃棄物5は水素発酵部1Bに、難分解性廃棄物6は可溶化部1Aに導入することもできる。なお、メタンリアクタ2の後段に更に物理化学的リアクタを設け、発生する水素をバイオガスとして利用するとともに、一部を水素発酵部1B及びメタンリアクタ2に返送し、それぞれ水素発酵及びメタン発酵に利用するように構成することもできる。なお、発酵残渣10は発酵残渣処理工程で更なる処理を受けても良いことは言うまでもない。
【0032】
図3は、本発明に係わる有機性廃棄物の可溶化・水素発酵装置の別の実施形態を示す概略図である。
図3に示す実施形態は、上記の生ごみ4の代わりに有機性廃棄物7を含有する原水4Aを処理するプロセスのブロック図である。原水4A中の有機性廃棄物を破砕してから可溶化・水素発酵槽1へ導入し、水素発酵槽1内の処理を効率化するために、メタン発酵槽2の嫌気汚泥12を可溶化・水素発酵槽1へ返送する手段を有することが特徴である。なお、可溶化・水素発酵槽1での可溶化及び水素生成菌等による水素発酵を効率的に行うために、槽1のpHを5.5〜7程度に維持するのが一般的である。
【0033】
図4は、本発明に係わる有機性廃棄物の水素・メタン二段発酵装置を用いた室内実験の第一の実施形態を示す概略図である。
図4に示す実施形態は、図3に示したメタン発酵槽2を高温メタン発酵槽2Aに変え、処理日数すなわちHRTの短縮を計ったもので、高温メタン発酵槽2Aからの嫌気汚泥12を汚泥液13と固形分14に分けて、それぞれ可溶化・水素発酵槽1へ別々に返戻するとともに、槽1のpHをpH6程度に維持し、上澄液11だけを高温メタン発酵槽2へ導入し、二段発酵の効率の一層の向上を計ったものである。
【0034】
図5は、本発明の参考例に係わる有機性廃棄物の水素・メタン二段発酵装置を用いた室内実験の第二の実施形態を示す概略図である。
図5に示す実施形態は、図4に示す工程において、可溶化・水素発酵槽1の処理効率の一層の向上を計るために、水素生成菌としてClostridium butyrium SC−El株を用いた例を説明するためのプロセス概要図である。
図6は、本発明に係わる有機性廃棄物の水素・メタン二段発酵装置を用いた屋外実験の実施形態を示す概略図である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等制限されるものではない。
【0036】
実施例1
模擬生ごみ(第1表)および食堂残飯(A工場 3,000人規模、第2表)を使って、水素・メタン二段発酵の連続実験を行った。実験材料の調整は、模擬生ごみまたは食堂残飯:水道水=1:1(重量比)で混合し、ブレンダー(Model LBC-10型; ワーリング社)でHighモード約3分間破砕処理した。第3表に破砕処理で調整した原料の水質性状を示す。
実験装置は、完全混合型の可溶化・水素発酵槽(東京理化器械(株)製ジャーファーメンターMBF、総容積2.5L、運転時の容積1.0L、ジャケット温水循環式)およびメタン発酵槽(円筒型、塩化ビニル製、総容積4.5L、有効容積3.5L、ジャケット温水循環式)を用いた。実験では、55℃高温発酵条件で可溶化・水素発酵およびメタン発酵の連続運転を行った。実験装置の運転条件は、可溶化・水素発酵槽、メタン発酵槽ともに55℃で行った。原水投入量は300mL/日で、水理学的滞留時間(HRT)は可溶化・水素発酵は2.5-3日、メタン発酵は12日で行った。
なお、比較実験として、模擬生ごみおよび食堂残飯を1段の高温メタン発酵でHRT18日での連続運転を行った。
【0037】
分析は下記の方法で行った。
・ TS(Total Solids、全蒸発残留物):105℃蒸発残留物重量(JIS K 0102)
・ VS(Volatile Solids、強熱減量):600℃強熱減量(JIS K 0102)
・ CODCr(化学的酸素要求量):重クロム酸カリウム法(JIS K 0102)
・ BOD(生物化学的酸素要求量):ウインクラー・アジ化ナトリウム変法(JIS K 0102)
・ TOC(Total Organic Carbon、全有機性炭素):島津TOC-500計
・ タンパク質:(ケルダール窒素−アンモニア性窒素)×6.25
・ 全還元糖類:フェノール-硫酸法(吸光度488nm)
【0038】
・ セルロース性物質:エタノール・ベンゼン抽出法による重量測定
・ 脂質:ヘキサン:イソプロパノール(5:3)混合溶媒による抽出法(ヘキサン抽出液80℃乾燥後の抽出物質重量からヘキサン抽出物質濃度を算出)
・ 揮発性有機酸(VFA):高速液体クロマトグラフ(エルマ光学ERC-8710、検出器 RI、カラムShodex Ionpack KC-811、カラム温度60℃、移動相0.1%りん酸 0.7ml/min)
・ メタンガス・炭酸ガス:ガスクロマトグラフ(GLサイエンスGC-320、検出器TCD、TCD電流値120mA、分離カラム Active Carbon 30/60、カラム温度 95℃、キャリアガス He 35ml/min)
・ 水素ガス:ガスクロマトグラフ(GLサイエンスGC-320、検出器TCD、TCD電流値70mA、分離カラム Molecular sieve 13X、カラム温度 40℃、キャリアガス Ar 25ml/min)
・ 硫化水素、アンモニア:ガス検知管法((株)ガステック製)
・ 溶解性画分:GF/B(1μm)でのろ液
【0039】
模擬生ごみ及び食堂残飯を水素・メタン二段発酵した実験結果を第4表に示す。また、比較実験として、模擬生ごみ及び食堂残飯を1段式の高温メタン発酵で連続実験した結果を第5表に示す。これらの結果より、本発明による水素・メタン二段発酵法によれば模擬生ごみや食堂残飯から水素ガスとメタンガスとを回収できることが明らかであり、さらに、水素・メタン二段発酵法によってこれらの有機性廃棄物を安定かつ高速に処理可能なことも明らかである。すなわち、本発明に基づく可溶化・水素発酵工程の効果が示されている。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
実施例2
セルロース性の固形物に対する水素・メタン二段発酵プロセスの処理性能を調べた。
模擬生ごみのスラリー1リットルにトイレットペーパー20.6gを混合した実験材料を使って水素・メタン二段発酵の連続実験を行った。
実験材料は、模擬生ごみ(第1表)とトイレットペーパー(丸富製紙株式会社製ペンギン(登録商標)トイレットペーパー)(以下、T.P.と略す)を用いた。T.Pの前処理として、T.P.を鋏で適度な大きさに切断し、ステレンレス製バット上に重ならないように広げ、アルミホイルで覆い、実験器具乾燥機で1日以上65℃乾燥した。
【0046】
本実験で用いた生ごみ+T.P.原水は、以下の手順で作成した。
・模擬生ごみ: 水=1:3(重量比)で混合
・ブレンダー(Model LBC-10型; ワーリング社)でHighモード約3分間破砕処理
・模擬生ごみスラリーに乾燥T.P.20.6g(セルロース当量18.8g)/L(生ごみスラリー)添加
・ブレンダーのHighモードで約3分間破砕処理
【0047】
実験装置は完全混合型の可溶化・水素発酵槽(東京理化器械(株)製ジャーファーメンターMBF、総容積5.0L、有効容積4.0L、ジャケット式温水循環、温水循環装置HS-1)およびメタン発酵槽(円筒型、塩化ビニル製、総容積30L、有効容積25L、ジャケット温水循環式)を用いた。実験装置の運転条件は、可溶化・水素発酵槽は55-70℃、攪拌速度100r/min、メタン発酵槽は55℃、攪拌速度80r/minで行った。原水投入量は2L/日で、水理学的滞留時間は可溶化・水素発酵は2-2.5日、メタン発酵は13日で行った(第6表)。原水性状を第7表に示す。なお、本実験ではメタン発酵槽からのオーバーフロー液の一部1.0-2.0L/日を可溶化・水素発酵槽に返送ながら連続運転した。返送操作にはローラーポンプ(東京理化器械(株)製RP-1000型)を用い、1日4回に分割してタイマー運転で行った。
【0048】
模擬生ごみ+T.P.を実験材料として水素・メタン二段発酵した実験結果を第8表と第9表に示す。これらの結果より、本発明による水素・メタン二段発酵法によればセルロース性物質を多量に含む有機性廃棄物であっても水素ガスおよびメタンガスを回収できることが明らかである。特に、メタン発酵槽からの流出成分の一部を可溶化・水素発酵工程に返送しながら二段発酵することで、原水中の有機物の大部分がセルロース等の固形物であっても、実施例1で実験した水理学的滞留時間(可溶化・水素発酵2.5-3日、メタン発酵12日)とほぼ同等条件にて処理可能であることが示された。すなわち、本発明に基づく可溶化・水素発酵工程の効果が明確に示されている。なお、本発明による水素・メタン二段発酵法でのセルロース性物質の分解率は91%以上であった(フェノール・硫酸法による全糖量基準)。
【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
【表9】

【0053】
参考例1
食品系廃棄物としてコーヒー粕を実験原料に水素・メタン二段発酵試験を行った。この際、可溶化・水素発酵槽での水素発酵反応を促進するため、可溶化・水素発酵槽に嫌気性水素生成微生物を導入してその性能効果も調べた。
実験では、工場事務所から排出されたコーヒー抽出残渣(以下、コーヒー粕と称す)を回収し、固形物濃度(TS濃度)10%となるように水道水で濃度調整後、石臼式の湿式粉砕機(高速摩砕機セレンディピター(登録商標)MKCA6-3型(増幸産業株式会社製))で粉砕処理した。この水質性状を第10表に示す。実験には、原水pHの調整のために粉砕処理した原水1リットルに対してNaHCO310gを添加して連続実験に供した。また、メタン生成活性を安定に保持するために、必要に応じてFe/Ni/Co混合液〔FeCl3(29g/L)、NiCl2・6H2O(4.4g/L)、CoSO4・7H2O(4.7g/L)〕1.0mlを原水1Lに対して添加した。
【0054】
実験装置は図5に示される2相仕切り型の可溶化・水素発酵槽(塩化ビニル製、総容積5.5L、有効容積5.0L、ジャケット式温水循環)および完全混合型のメタン発酵槽(円筒型、塩化ビニル製、総容積30L、有効容積25L、ジャケット温水循環式)を用いた。可溶化・水素発酵槽の内部構成は、槽内下方部が可溶化相、上方部が水素発酵相となり、容積比で水素発酵相40%、可溶化相60%とした。実験装置の運転条件は、可溶化・水素発酵槽は37-55℃、メタン発酵槽は55℃、攪拌速度80r/minで行った。可溶化・水素発酵槽の攪拌についてはチューブポンプRP-60型(東京理化器械株式会社製)を使った液循環による攪拌方式とし、発酵槽下部液1.2Lを引抜いて槽上部から注入する操作を1日2回、タイマー運転で行った。原水投入量は1.2L/日、水理学的滞留時間は可溶化・水素発酵は約4日、メタン発酵は約20日で行った。可溶化・水素発酵槽への原水投入はチューブポンプRP-60型で発酵槽側面の下部から注入し、可溶化・水素発酵槽からのオーバーフロー液をメタン発酵槽に流入する送液フローとした。また、メタン発酵槽からのオーバーフロー液の一部0.6-1.2L/日を可溶化・水素発酵槽に返送ながら連続運転した。返送操作にはローラーポンプ(東京理化器械株式会社製RP-1000型)を用い、1日4回に分割してタイマー運転で可溶化・水素発酵槽に発酵槽底部から上向流式に注入した。
【0055】
さらに本実験では、水素発酵反応を促進するために嫌気性水素生成微生物Clostridium butyricum SC-E1株(菌寄第FERM P−14790)を導入した。SC-E1株の菌液導入には培養菌液の遠心濃縮液を調整し(3,000r/min、5min)、ローラーポンプ(東京理化器械株式会社製RP-1000型)を用いて1日4回に分割してタイマー運転で可溶化・水素発酵槽に発酵槽上部から下向流式に導入した。菌液導入量は20-40mL/日とした。SC-E1株の培養菌液作成には、無機塩類溶液1.0Lにグルコース5.0g; ポリペプトン(日本製薬株式会社) 5.0g; 酵母エキス(Difco)0.1g; l-cysteine・HCl・H2O 0.5g; Na2S・9H2O 0.5 g; レサズリン1.0 を調整した水素発酵用培地を用いた(pH6.7-6.8)。また、無機塩類の組成は以下の通りである。(NH4)2SO43.0g/L; KH2PO4 0.2g/L; K2HPO4 1.6g/L; MgSO4・7H2O 0.2/L g; NaCl 0.1g/L; CaCl2・2H2O 0.02g/L; FeSO4・7H2O 0.01g/L; MnCl2・4H2O 0.5mg/L; l-cysteine・HCl・H2O 0.25g/L; Na2S・9H2O 0.25g/L; レサズリン1mg/L; pH 7.0。SC-E1株の培養は東京理化器械株式会社製ジャーファーメンターMBFを用い(総容積5.0L、有効容積4.0L、ジャケット式温水循環)、培養開始時の発酵槽気相部は窒素ガス100%、水素発酵温度37℃、HRT40hで行った。
【0056】
コーヒー粕粉砕液を実験材料として水素・メタン二段発酵した実験結果を第11表に示す。本発明での水素・メタン二段発酵法によれば、難分解性の有機性廃棄物であっても水素ガスおよびメタンガスを回収でき、可溶化・水素発酵工程の処理効果が示された。特に、可溶化・水素発酵槽に嫌気性水素生成微生物を導入することで水素発酵は促進され、メタン発酵工程でも有機酸を蓄積することなく安定処理が可能であった。なお、本発明による水素・メタン二段発酵法でのコーヒー粕のVS分解率は59%であった。
【0057】
【表10】

【0058】
【表11】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、有機性固形物を短時間で簡便に効率良く可溶化・低分子化することができるので、下水汚泥、余剰汚泥、家畜糞尿、生ごみ、食品製造廃棄物などの有機性廃棄物の処理産業など、環境保護産業に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係わる有機性廃棄物の水素・メタン二段発酵装置の一つの実施形態を示すブロック図。
【図2】本発明の参考例に当たる有機性廃棄物の可溶化・水素発酵装置の実施形態を示すブロック図。
【図3】本発明に係わる有機性廃棄物の可溶化・水素発酵装置の別の実施形態を示す概略図。
【図4】本発明に係わる有機性廃棄物の水素・メタン二段発酵装置を用いた室内実験の第一の実施形態を示す概略図。
【図5】本発明の参考例に係わる有機性廃棄物の水素・メタン二段発酵装置を用いた室内実験の第二の実施形態を示す概略図。
【図6】本発明に係わる有機性廃棄物の水素・メタン二段発酵装置を用いた屋外実験の実施形態を示す概略図。
【図7】水素・メタン二段発酵プロセスの物質収支を示す。
【図8】従来の有機性廃棄物メタン発酵を示すブロック図。
【符号の説明】
【0061】
1 可溶化・水素発酵槽(可溶化・水素発酵リアクタ)
1A 可溶化発酵部
1B 水素発酵部
2 メタン発酵槽(メタン発酵リアクタ)
2A 高温メタン発酵槽
3 物理化学的リアクタ
4 生ごみ
4A 原水
5 易分解性廃棄物
6 難分解性廃棄物
7 有機性廃棄物
8 希釈水
9 バイオガス
10 発酵残渣
11 上澄液
12 嫌気汚泥
13 汚泥液
14 固形分
15 水素
16 メタン
17 前処理槽
18 原料貯留槽
19 可溶化・水素発酵リアクタ
20 完全混合型メタン発酵リアクタ
21 発酵残渣貯留槽
22 水素タンク
23 メタンタンク
24、25 脱硫塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質系廃棄物が主体の生ごみ系有機性廃棄物処理もしくはセルロース性固形物を含む生ごみ系有機性廃棄物処理において、前処理工程で微細化、均質化されると共に濃度がVS 5〜15wt%の原料に対して、前段に30〜70℃、pH5〜8.5、水理学的滞留時間2〜3日の生物反応で処理する完全混合型の嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程、それに引き続く後段に完全混合型のメタン発酵工程からなる二段発酵法を行い、メタン発酵工程からの流出成分の一部を前記嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程に返送することを特徴とする生物学的に水素とメタンを回収する嫌気性処理方法。
【請求項2】
糖質系廃棄物が主体の生ごみ系有機性廃棄物処理もしくはセルロース性固形物を含む生ごみ系有機性廃棄物処理装置において、前処理工程で微細化、均質化されると共に濃度をVS 5〜15wt%に調整した原料を置く原料槽、前段に30〜70℃、pH5〜8.5、水理学的滞留時間2〜3日の生物反応で処理する嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程を行う完全混合型の嫌気性可溶化・水素発酵槽、それに引き続いた後段に完全混合型のメタン発酵工程を行うメタン発酵槽を設けてなる二段発酵法を行う装置であって、メタン発酵槽からの流出成分の一部を前記嫌気性可溶化と水素発酵とを併せ持つ工程を行う前記嫌気性可溶化・水素発酵槽に返送する返送管を設けることを特徴とする生物学的に水素とメタンを回収する嫌気性処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−13896(P2013−13896A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207186(P2012−207186)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【分割の表示】特願2003−360718(P2003−360718)の分割
【原出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【出願人】(591030651)水ing株式会社 (94)
【Fターム(参考)】