説明

有機性廃棄物の生物学的処理装置およびその方法

【課題】簡易な構成で、残渣を少なくしてエネルギー効率を高くすること。
【解決手段】草本バイオマス100を嫌気性条件下で生物学的処理を行う有機性廃棄物の生物学的処理装置において、草本バイオマス100を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行う高温消化槽10と、高温消化層10の内容物の少なくとも一部を固液分離する固液分離部11と、前記固液分離部11で分離された固形内容物を、嫌気性微生物が分泌する菌体外酵素の有効到達距離以下に機械的に粉砕する粉砕部13と、固液分離された固形内容物を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行う中温消化槽20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、草本バイオマスなどの有機性廃棄物を嫌気性条件下で生物学的処理を行って分解し、資源化する有機性廃棄物の生物学的処理装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、緑地や路側帯で生育した草本は定期的に刈り取られ、都市ごみと混合して焼却処理したり、コンポストとして処理されたりしていた。ここで、焼却処理する場合、刈り取った草本バイオマスには、多量の水分が含まれるため、焼却には外部からの熱エネルギーを加える必要がる。このため、草本バイオマスの焼却処理は、草本バイオマスをごみとして燃焼し発電するという処理手順をふむ資源化を行うが、実質的にエネルギーを回収することができない。一方、コンポスト処理は、草本に含まれる窒素やリンをはじめとする栄養塩を農地に還元することができるが、コンポスト処理時に有機物のほとんどがCOに分解してしまう。このため、コンポスト処理による有機物のエネルギー資源化は、実質的に試みられていないのが現実である。
【0003】
一方、下水汚泥をはじめとする有機汚泥の減量・資源化には、メタン発酵プロセスが従来から用いられている。このため、草本バイオマスなどの有機性廃棄物に対してメタン発酵プロセスを適用するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−212575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、メタン発酵プロセスは、嫌気性微生物を用いた生物学的処理によってバイオマスを分解し、有機性廃棄物を安定化、減量化するとともに、バイオガスエネルギー(メタン)を生産できるという、他の廃棄物処理にない優れた特徴を有する。しかしながら、メタン発酵プロセスは、原料となるバイオマスのうち、比較的生物分解されやすい成分しか対象にできないという制限もある。たとえば、下水の活性汚泥(余剰汚泥)は、せいぜい原料の50%程度しか分解されない。このため、従来のメタン発酵プロセスを用いた場合、かなりの残渣が排出され、この残渣の処理、最終処分の対処に苦慮していた。
【0006】
なお、特許文献1には、有機物及びその分解生成物の一部を陸上微生物によって分解する処理を、固相充填材としてPETフレーク等の非分解性充填材を混合して行う固相反応槽と、水中微生物によって分解する液相反応層とを有し、それぞれを順次通過させる固液2相循環法を利用して処理するものが記載されている。しかし、メタン発酵プロセスを前提としてバイオガスエネルギーを生産するものではない。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で、残渣を少なくしてエネルギー効率を高くすることができる有機性廃棄物の生物学的処理装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置は、草本バイオマスなどの有機性廃棄物を嫌気性条件下で生物学的処理を行う有機性廃棄物の生物学的処理装置において、前記有機性廃棄物を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行う第1消化槽と、前記第1消化槽の内容物の少なくとも一部を固液分離する固液分離部と、前記固液分離部で分離された固形内容物を、嫌気性微生物が分泌する菌体外酵素の有効到達距離以下に機械的に粉砕する粉砕部と、前記粉砕部で粉砕された固形内容物を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行う第2消化槽と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置は、上記の発明において、前記固液分離部によって固液分離された固形内容物の一部を前記第1消化槽に返送するとともに、前記固形内容物の残りを前記粉砕部に送出する分流部を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置は、上記の発明において、前記第1消化槽は、40〜60℃の高温消化槽であり、前記第2消化槽は、30〜40℃の中温消化槽であることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置は、上記の発明において、前記固液分離部は、前記第1消化槽の内容物を機械的に圧搾して固液分離することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置は、上記の発明において、前記第1消化槽の前段に設けられ、該第1消化槽に導入される有機性廃棄物に混入した不要物を該第1消化槽に導入される前に除去する除去部を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置は、上記の発明において、前記第1消化槽は、生物学的処理が行われない浮遊物および/または沈殿物を除去することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置は、上記の発明において、前記菌体外酵素の有効到達距離は、0.1〜1.0mmであることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置は、上記の発明において、前記草本バイオマスは、好塩性および/または耐塩性の植物であることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理方法は、草本バイオマスなどの有機性廃棄物を嫌気性条件下で生物学的処理を行う有機性廃棄物の生物学的処理方法において、前記有機性廃棄物を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行う第1消化ステップと、前記第1消化ステップによって処理された内容物の少なくとも一部を固液分離する固液分離ステップと、前記固液分離ステップで分離された固形内容物を、嫌気性微生物が分泌する菌体外酵素の有効到達距離以下に機械的に粉砕する粉砕ステップと、前記粉砕ステップで粉砕された固形内容物を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行う第2消化ステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理方法は、上記の発明において、前記固液分離ステップによって固液分離された固形内容物の一部を、前記第1消化ステップを行う第1消化槽に返送するとともに、前記固形内容物の残りを、前記粉砕ステップを行う粉砕部に送出する分流ステップを含むことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理方法は、上記の発明において、前記第1消化ステップは、40〜60℃の高温下で生物学的処理を行い、前記第2消化ステップは、30〜40℃の中温下で生物学的処理を行うことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理方法は、上記の発明において、前記固液分離ステップは、前記第1消化ステップによって処理された内容物を機械的に圧搾して固液分離することを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理方法は、上記の発明において、前記第1消化ステップの処理前に、前記有機性廃棄物に混入した不要物を除去する除去ステップを含むことを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理方法は、上記の発明において、前記第1消化ステップは、生物学的処理が行われない浮遊物および/または沈殿物を除去することを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理方法は、上記の発明において、前記菌体外酵素の有効到達距離は、0.1〜1.0mmであることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる有機性廃棄物の生物学的処理方法は、上記の発明において、前記草本バイオマスは、好塩性および/または耐塩性の植物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、草本バイオマスなどの有機性廃棄物を嫌気性条件下で生物学的処理を行う場合、第1消化槽が、前記有機性廃棄物を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行い、固液分離部が、前記第1消化層の内容物を固液分離し、粉砕部が、前記固液分離部で分離された固形内容物を、嫌気性微生物が分泌する菌体外酵素の有効到達距離以下に機械的に粉砕し、第2消化槽が、前記粉砕部で粉砕された固形内容物を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行うようにしているので、複雑かつ高コストの可溶化処理を行わなくても、簡易な構成で、残渣を少なくしてエネルギー効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、この発明の実施の形態にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示した装置を用いた有機性廃棄物の生物学的処理手順を示すフロー図である。
【図3】図3は、この発明の実施の形態の変形例にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置の概要構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、この発明の実施の形態の他の変形例にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置の概要構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、この発明の実施の形態の変形例にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0027】
図1は、この発明の実施の形態にかかる有機性廃棄物の生物学的処理装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、図1に示した装置を用いた有機性廃棄物の生物学的処理手順を示すフロー図である。この有機性廃棄物は、草本バイオマスであり、この草本バイオマスを生物分解する嫌気性微生物は、下水汚泥内の細菌を用いている。
【0028】
まず、この生物学的処理装置は、高温(40℃〜60℃)かつ嫌気性条件下で草本バイオマス100の生物学的処理を行う高温消化槽10と、中温(30℃〜40℃)かつ嫌気性条件下で草本バイオマスの生物学的処理を行う中温消化槽20とを有する。この高温消化槽10と中温消化槽20とは、それぞれ攪拌機能を有している。
【0029】
高温消化槽10には、除去部2、固体分離部11、および分流部2が接続されるとともに、メタンガス200の精製装置に接続される配管および下水汚泥101を供給する配管が接続される。一方、中温消化槽20には、粉砕部13、メタンガス200の精製装置に接続される配管、および下水汚泥101を供給する配管が接続される。
【0030】
上述した構成において、草本バイオマスに対する一連の生物学的処理は、図2に示したフローに従って行われる。なお、ここでいう生物学的処理は、メタン発酵であるが、嫌気性微生物による生物学的処理には、その他、水素発酵やメタノール発酵などがある。図2において、まず、刈り取られた草本バイオマス100は破砕部1に導入される。破砕部1は、たとえば、1〜2cm程度に機械的に破砕する(S1)。
【0031】
その後、破砕された草本バイオマス100は、除去部2に導入され、空き缶やペットボトルなどのごみを除去する(S2)。このごみが除去された草本バイオマス100は、高温消化槽10に導入される。高温消化槽10は、この草本バイオマス100に対する高温メタン発酵処理を行い、メタンガス200を生成する(S3)。
【0032】
この高温メタン発酵処理では、高温消化槽10内に下水汚泥101が供給され、高温40℃〜60℃)で、この下水汚泥101に含まれる嫌気性微生物によってメタン発酵を行わせる。なお、高温消化槽10内で浮遊するプラスチック類、沈殿する土砂や金属類などは、槽外に不要物201として排出される。
【0033】
この高温メタン発酵処理中あるいは処理後に、高温消化槽10内の内容物は固液分離部11に取り出され、固形物と液体とに分離される(S4)。分離された液体は、廃水として排出され、スラリー状の固形物(繊維)は、分流部12に送出される。この固体分離部11による固体分離処理は、凝集剤などを添加することなく、スリット・スクリーン・フィルタなどを用いて機械的に圧搾濃縮することによって行われる。
【0034】
分流部12は、分離された固形物の一部を高温消化槽10に返送し、その残りを破砕部13に送出する(S5)。固形物である繊維の表面には多量の細菌が付着しているため、この固形物の一部が高温消化槽10に返送されると、高温消化槽10でのメタン発酵処理が一層促進される。なお、固形物の返送量は、任意に設定できるが、返送量が多くなると、高温消化槽10内の固形物濃度が高くなって攪拌が困難になる。このため、高温消化槽10の固形物濃度は5〜10%とすることが好ましい。
【0035】
粉砕部13は、分流部12から送られた固形物を、ボールミルなどによって、中温消化槽20内の嫌気性微生物の菌体外酵素の有効到達距離以下に粉砕し、この粉砕した固形物を中温消化槽20内に送出する(S6)。この菌体外酵素の有効到達距離は、たとえば、0.1〜1.0mm(乾燥後の大きさ)である。
【0036】
中温消化槽20は、粉砕された固形物に対する中温メタン発酵処理を行い、メタンガス200を生成する(S7)。この中温メタン発酵処理では、中温消化槽20内に下水汚泥101が供給され、中温(30℃〜40℃)で、この下水汚泥101に含まれる嫌気性微生物によってメタン発酵を行わせる。なお、下水汚泥101には、高温および中温でそれぞれ反応する微生物種が存在する。
【0037】
ここで、中温メタン発酵処理の対象である固形物は、菌体外酵素の有効到達距離以下に粉砕されているため、嫌気性微生物が付着可能な表面積が増大し、固形物を高速に生物分解することができることはもちろん、菌体外酵素が固形物の深部まで到達できるため、ほぼ完全な生物分解が行われる。なお、中温メタン発酵処理後の残渣203はほとんど残らないが、槽外に排出され、廃水202も槽外に排出される。
【0038】
ところで、従来での有機性廃棄物に対する生物分解では、有機性廃棄物を改質するために可溶化処理を行っている。これは、細菌が溶解性の成分しか基質として摂取できないため、有機性廃棄物を高度に可溶化することで生物分解を促進していたものである。そして、この可溶化処理には、強力なミルによる粉砕処理、薬品処理、高温高圧処理などが試みられてきた。しかし、これらの処理には、多大な電力や薬品費用を必要とする。
【0039】
一方、嫌気性微生物は、基質となる固形物の表面に付着して、菌体外酵素を分泌することで固形物を可溶化し、固形物を摂取する能力を有する。ここで、従来は、上述したように、可溶化させることで、生物分解が促進すると考えられていた。しかし、本願発明者らは、消化槽に一定の固形物バイオマスを残存し、滞留させることで、これら嫌気性微生物の付着と菌体外酵素の分泌が促され、可溶化処理と同等以上のメタン変換性能が発揮できることを見出した。
【0040】
すなわち、上述した実施の形態では、固形物バイオマスの可溶化を必要とせず、高温消化槽10および中温消化槽20に、固形物バイオマスを残存し、滞留させることによって、高いメタン変換性能を発揮できる生物学的処理装置を、低コストかつ簡易な構成で実現している。
【0041】
このため、この実施の形態では、中温メタン発酵処理の対象である固形物が菌体外酵素の有効到達距離以下に機械的に粉砕され、菌体外酵素が固形物の深部まで到達することができるようにしている。この菌体外酵素によって、ほぼ完全な生物分解が可能となり、メタン転換率が80%程度以上(従来の1.5倍以上)という高効率の生物学的処理を実現している。また、メタン転換率が高いため、ほとんど残渣が残らず、残渣の処理あるいは最終処分の負担が軽減される。
【0042】
さらに、この実施の形態では、固液分離装置で分離された固形物の一部を高温消化槽10に返送するようにしている。この返送される固形物である繊維の表面には、多量の微生物が付着しており、この固形物を高温消化槽10に返送することによって生物分解が一層促進されることになる。結果として可溶化を必要としない簡易な生物学的処理装置が実現される。なお、この返送される固形物は、スラリー状となっているので、高温消化槽10への返送手段が容易である。
【0043】
なお、この実施の形態では、粉砕部13が、ある程度の大きさの繊維状のものに対して、ボールミルなどで、菌体外酵素の有効到達範囲という比較的粗い粉砕を行っているので、省電力かつ簡易な構成で可溶化処理を実現できる。なお、粉砕対象を湿式で粉砕していることからも構成を簡易にすることができる。
【0044】
さらに、破砕部1によっても、簡易な破砕手段によって機械的に粗く破砕しているため、粉砕部13での粉砕処理が一層容易になる。なお、上述した破砕部1は、この生物学的処理装置に設けなくてもよい。この場合、第1消化槽10自体が、高温メタン発酵処理で破砕処理と同等の処理を行うからである。
【0045】
また、この実施の形態では、高温消化槽10が高温でメタン発酵処理を行っているが、本願発明者らは、高温でのメタン発酵処理は、中温でのメタン発酵処理に比して処理速度が3倍程度速いことを見いだした。これは高温では、嫌気性微生物の酸素活性が高くなるためと考えられる。この高温消化槽10での高い処理速度によって、結果的に、高温消化槽10自体の容積を小さくすることができ、装置の小型化を実現することができる。具体的には、高温消化槽10と中温消化槽20との容積比は、0.5:1から2:1の範囲であることが好ましい。
【0046】
そして、高温消化槽10と中温消化槽20との組み合わせに、さらに上述した粉砕部13による粉砕、さらに上述した分流部12での固形物の返送を組み合わせることによって、簡易な構成で、高いメタン変換効率を実現し、残渣をほぼなくすことができる。
【0047】
なお、上述した実施の形態では、1つの高温消化槽10に1つの中温消化槽20を多段接続したものを説明したが、これに限らず、たとえば、図3に示すように、中温消化槽20をさらに多段に接続してもよい。また、中温消化槽20に導入される固形物は、圧搾されているため、図4に示すように、複数の高温消化槽10に1つの中温消化槽20を接続するようにしてもよい。
【0048】
また、固液分離部11で、圧縮した固形物を中間消化槽20に導入するようにしているので、中間消化槽20における固定の容積内に導入できる量を増大することができ、固定の容積内での滞留時間(反応時間)も長くすることができるので、メタン発酵処理を効率的に行うことができる。
【0049】
なお、上述した草本バイオマスは、好塩性や耐塩性の植物などが好ましい。このような好塩性や耐塩性の植物は、荒れた土地で生育し、肥えた土地での食用植物などとの競合を排除することができ、土地の有効利用を図ることができるからである。具体的に適用可能な好塩性・耐塩性の植物には一年生植物のKalidium capsicum, Climacoptera lanata, Salicornia europaeaなどがある。もちろん、これらの種に限定されないが、一年生植物の好塩性・耐塩性植物は多年生植物と比べてバイオマスに難分解性のリグニンをあまり含有しないことからメタン発酵の効率を高めることができるので特に好ましい。また、これらの好塩性・耐塩性の植物は通常の一年生植物(たとえば牧草の一種であるPanicum coloratum)よりも、微細化されやすくメタン発酵の効率が高いことから好ましい。
【0050】
また、草本バイオマスは、コバルトイオンなどの金属イオンがあると、嫌気性微生物が活発に活動することが知られているが、下水汚泥には、これらの金属イオンが含まれるので好ましく、返送による循環使用により、一層効率的な生物学的処理を実現することができる。なお、第1消化槽10および第2消化層20で用いられる嫌気性微生物は、下水汚泥101内のものを用いていたが、既に下水消化処理が施された下水消化汚泥を用いてもよい。
【0051】
なお、上述した実施の形態では、粉砕部13で粉砕された固形物をすべて中温消化槽20内に送出するようにしていたが、これに限らず、図5に示すように、粉砕部13で粉砕された固形物の一部を高温消化槽10に返送するようにしてよい。すなわち、分流部12による高温消化槽10への固形物の一部返送に加えて、粉砕部13による高温消化槽10への固形物の一部返送を行うようにしてもよい。この粉砕部13から高温消化槽10に一部返送される固形物は、細かく粉砕されていることから微生物との接触面積が広くなり、一層、生物学的処理反応が促進されることになる。なお、分流部12から高温消化槽10に一部返送される固形物は粉砕されていないことから、再度、固液分離部11に取り出された場合、固液分離部11において微生物が廃水として分離されず、固形物に付着した状態で残る。このため、この固液分離部11および分流部12を介して固形物に付着した微生物が高温消化槽10に一部返送され、外部からの微生物供給を行わなくても、高温消化槽10において一定の微生物を保持することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 破砕部
2 除去部
10 高温消化槽
11 固液分離部
12 分流部
13 粉砕部
20 中温消化槽
100 草本バイオマス
101 下水汚泥
200 メタンガス
201 不要物
202 廃水
203 残渣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
草本バイオマスなどの有機性廃棄物を嫌気性条件下で生物学的処理を行う有機性廃棄物の生物学的処理装置において、
前記有機性廃棄物を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行う第1消化槽と、
前記第1消化槽の内容物の少なくとも一部を固液分離する固液分離部と、
前記固液分離部で分離された固形内容物を、嫌気性微生物が分泌する菌体外酵素の有効到達距離以下に機械的に粉砕する粉砕部と、
前記粉砕部で粉砕された固形内容物を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行う第2消化槽と、
を備えたことを特徴とする有機性廃棄物の生物学的処理装置。
【請求項2】
前記固液分離部によって固液分離された固形内容物の一部を前記第1消化槽に返送するとともに、前記固形内容物の残りを前記粉砕部に送出する分流部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の有機性廃棄物の生物学的処理装置。
【請求項3】
前記第1消化槽は、40〜60℃の高温消化槽であり、
前記第2消化槽は、30〜40℃の中温消化槽であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機性廃棄物の生物学的処理装置。
【請求項4】
前記固液分離部は、前記第1消化槽の内容物を機械的に圧搾して固液分離することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の有機性廃棄物の生物学的処理装置。
【請求項5】
前記第1消化槽の前段に設けられ、該第1消化槽に導入される有機性廃棄物に混入した不要物を該第1消化槽に導入される前に除去する除去部を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の有機性廃棄物の生物学的処理装置。
【請求項6】
前記第1消化槽は、生物学的処理が行われない浮遊物および/または沈殿物を除去することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の有機性廃棄物の生物学的処理装置。
【請求項7】
前記菌体外酵素の有効到達距離は、0.1〜1.0mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の有機性廃棄物の生物学的処理装置。
【請求項8】
前記草本バイオマスは、好塩性および/または耐塩性の植物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の有機性廃棄物の生物学的処理装置。
【請求項9】
草本バイオマスなどの有機性廃棄物を嫌気性条件下で生物学的処理を行う有機性廃棄物の生物学的処理方法において、
前記有機性廃棄物を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行う第1消化ステップと、
前記第1消化ステップによって処理された内容物の少なくとも一部を固液分離する固液分離ステップと、
前記固液分離ステップで分離された固形内容物を、嫌気性微生物が分泌する菌体外酵素の有効到達距離以下に機械的に粉砕する粉砕ステップと、
前記粉砕ステップで粉砕された固形内容物を嫌気性条件下で嫌気性微生物を用いた生物学的処理を行う第2消化ステップと、
を含むことを特徴とする有機性廃棄物の生物学的処理方法。
【請求項10】
前記固液分離ステップによって固液分離された固形内容物の一部を、前記第1消化ステップを行う第1消化槽に返送するとともに、前記固形内容物の残りを、前記粉砕ステップを行う粉砕部に送出する分流ステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の有機性廃棄物の生物学的処理方法。
【請求項11】
前記第1消化ステップは、40〜60℃の高温下で生物学的処理を行い、
前記第2消化ステップは、30〜40℃の中温下で生物学的処理を行うことを特徴とする請求項10または11に記載の有機性廃棄物の生物学的処理方法。
【請求項12】
前記固液分離ステップは、前記第1消化ステップによって処理された内容物を機械的に圧搾して固液分離することを特徴とする請求項10〜12のいずれか一つに記載の有機性廃棄物の生物学的処理方法。
【請求項13】
前記第1消化ステップの処理前に、前記有機性廃棄物に混入した不要物を除去する除去ステップを含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれか一つに記載の有機性廃棄物の生物学的処理方法。
【請求項14】
前記第1消化ステップは、生物学的処理が行われない浮遊物および/または沈殿物を除去することを特徴とする請求項10〜14のいずれか一つに記載の有機性廃棄物の生物学的処理方法。
【請求項15】
前記菌体外酵素の有効到達距離は、0.1〜1.0mmであることを特徴とする請求項10〜15のいずれか一つに記載の有機性廃棄物の生物学的処理方法。
【請求項16】
前記草本バイオマスは、好塩性および/または耐塩性の植物であることを特徴とする請求項10〜16のいずれか一つに記載の有機性廃棄物の生物学的処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−239972(P2012−239972A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111587(P2011−111587)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【特許番号】特許第4903908号(P4903908)
【特許公報発行日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【出願人】(802000031)公益財団法人北九州産業学術推進機構 (187)
【Fターム(参考)】