説明

有機性廃棄物の発酵処理装置

【課題】処理物に対して確実に空気の供給を行うことが可能な有機性廃棄物の発酵処理装置を提供する。
【解決手段】投入部16に発酵処理がされるべき有機性廃棄物12が順次投入される処理槽15と、処理槽15の底部15Cに設けられ、空気供給源52Aから供給された空気を有機性廃棄物12へ噴出させる空気噴出孔57と、処理槽15の底部15Cに、上下移動可能に設けられた押し上げ部材70と、処理槽15に沿って投入部16側と、その反対側との間を往復移動可能な自走移動体17と、自走移動体17に設けられ、押し上げ部材70に接触しない領域で回転することで有機性廃棄物12を攪拌する攪拌ロータ19と、押し上げ部材70を処理槽15の底面15Dよりも高い押し上げ位置に上昇させる油圧シリンダ60とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物の発酵処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畜糞や食品残渣物などの処理物を発酵させて堆肥とする発酵処理は、例えば、幅が数m、長さが数十mの細長い処理槽内で行われ、この処理槽の上を自走する攪拌装置によって処理物の切り返し(耕耘)及び処理槽内での処理物の移動が行われている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、処理物を処理槽の後端(上流端)から順次投入し、処理槽上を往復動可能な攪拌装置の攪拌ロータを、攪拌装置が処理槽の前端(下流端)から後端(上流端)に後進する際に駆動し、処理槽内の原料を攪拌しながら掻き上げて前に落とすことにより切り返しを行うと共に、処理槽内の処理物を前方(下流側)に移動させる。これにより処理槽の後端に投入した処理物は数日から数十日程度かけて、処理槽内を前に移動する間に発酵し、処理槽の前端に到達した時点で取り出される。
【0003】
また、処理物の発酵処理を促進するためには、その処理量に対して一定量の空気が必要である。このため、処理槽の床の内部(処理物の下方)にパイプを埋設し、このパイプを通じて、処理物に空気を供給する構成のものが知られている。パイプには空気噴出孔が形成され、この空気噴出孔から空気を噴出させることで、処理物に空気を供給する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−47013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した攪拌装置の攪拌ロータに設けられた攪拌爪は、処理槽の床面との間に一定の隙間を有する形で配されている。これは、攪拌爪の先端が処理槽の床面に接触することを防止するためである。このため、処理物のうち、この隙間に存在する部分は、攪拌されにくく、攪拌ロータによって処理槽の床面側へ押圧されることとなる。この結果、床面側へ押圧された処理物は硬い板状の層(硬板層)を形成する。この硬板層が上述したパイプの空気噴出孔を塞いでしまうと、パイプから処理物への空気の供給を妨げるおそれがあった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、処理物に対して確実に空気の供給を行うことが可能な有機性廃棄物の発酵処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の有機性廃棄物の発酵処理装置は、投入部に発酵処理がされるべき有機性廃棄物が順次投入される処理槽と、前記処理槽の底部に設けられ、空気供給源から供給された空気を前記有機性廃棄物へ噴出させる空気噴出孔と、前記処理槽の底部に、上下移動可能に設けられた押し上げ部材と、前記処理槽に沿って前記投入部側と、その反対側との間を往復移動可能な移動体と、前記移動体に設けられ、前記押し上げ部材に接触しない領域で回転することで前記有機性廃棄物を攪拌する攪拌ロータと、前記押し上げ部材を前記処理槽の底面よりも高い押し上げ位置に上昇させる押し上げ部材駆動装置とを備えてなることに特徴を有する。
【0008】
攪拌ロータによって有機性廃棄物を攪拌する場合、攪拌ロータと処理槽の底部との間にある有機性廃棄物は、攪拌ロータによって、底部側へ押圧される。これにより、底部には有機性廃棄物が圧縮された硬板層が形成される。本発明においては、押し上げ部材駆動装置によって、押し上げ部材を処理槽の底面より高い位置へ突き出させると、硬板層は押し上げ部材によって部分的に押し上げられる。これにより、硬板層のうち、押し上げ部材によって押し上げられた箇所には、応力が作用し、亀裂が生じる。この結果、空気噴出孔から噴出された空気は、硬板層に生じた亀裂を通じて、有機性廃棄物に供給される。以上のことから、本発明においては、仮に、処理槽の底部に硬板層が形成されている場合であっても、有機性廃棄物へ供給される空気が、この硬板層によって遮られることない。これにより、有機性廃棄物へ確実に空気を供給することができ、有機性廃棄物の発酵を促進できる。また、押し上げ部材によって、押し上げられた硬板層の一部は、押し上げられた分だけ攪拌ロータに攪拌されやすくなる。これにより、硬板層の形成自体を抑制することができる。
【0009】
上記構成において、前記処理槽の底部に埋設され、前記空気供給源から空気が供給される箱部を備え、前記箱部の上壁は前記底部の一部を構成し、前記空気噴出孔は、前記上壁の一部を貫通することで形成され、前記押し上げ部材及び前記押し上げ部材駆動装置は、前記箱部内に収容され、前記押し上げ部材は、前記空気噴出孔を挿通可能な形状をなし、前記押し上げ部材駆動装置は、前記押し上げ部材を、前記箱部に収容された待機位置から、前記空気噴出孔を通って、前記押し上げ位置へ上昇させるものとすることができる。
【0010】
このような構成とすれば、押し上げ部材が空気噴出孔を通って上昇される。これにより、押し上げ部材によって形成される硬板層の亀裂は、空気噴出孔の直上に形成される。これにより、空気噴出孔からの空気が亀裂を通過しやすくなり、有機性廃棄物へ、より効果的に空気を供給できる。
【0011】
また、前記押し上げ部材は、平面視において、長手状をなすものとすることができる。押し上げ部材を長手状とすれば、硬板層を押し上げる箇所を比較的大きくすることができ、硬板層に、より大きな亀裂を生じさせることができる。これにより、空気噴出孔からの空気が亀裂を通過しやすくなり、より効果的に空気を供給できる。
【0012】
また、前記箱部の上壁における前記空気噴出孔の孔縁部からは、前記待機位置における前記押し上げ部材を挟んで対向配置される一対の側壁部が下方に延出され、前記一対の側壁部のうち、少なくとも一方の側壁部には、その一部を貫通することで通気部が形成され、前記通気部は、前記押し上げ部材が前記待機位置にある場合に、前記箱部内の空気を前記空気噴出孔側へ挿通可能とするものとすることができる。
【0013】
このような構成とすれば、押し上げ部材が待機位置にある場合には、押し上げ部材と両側壁部によって、有機性廃棄物の落下が規制され、箱部内へ侵入することを抑制できる。また、側壁部の一部には、通気部が形成されているため、有機性廃棄物への空気の供給が妨げられることがない。
【0014】
また、前記押し上げ部材の上部は、前記待機位置において、前記通気部の少なくとも一部を塞ぐ閉塞部とされ、前記閉塞部は中空で形成され、前記閉塞部の前記通気部側の壁部及び前記空気噴出孔側の壁部には、通気孔がそれぞれ形成されているものとすることができる。
【0015】
閉塞部によって、通気部を塞ぐことで、有機性廃棄物の箱部内への侵入を一層確実に抑制できる。一方、箱部内の空気は通気部を通じて、通気部側の通気孔から、閉塞部内に入る。その後、空気噴出孔側の通気孔から、空気噴出孔側へと噴出される。これにより、有機性廃棄物の箱部内への侵入を抑制しつつも、有機性廃棄物への空気の供給を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、処理物に対して確実に空気の供給を行うことが可能な有機性廃棄物の発酵処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る発酵処理装置の概略構成を示す平面図。
【図2】本発明の実施形態に係る攪拌装置及び空気供給装置を示す側面図。
【図3】本発明の実施形態に係る攪拌装置及び空気供給装置を示す正面図。
【図4】空気供給装置を示す正断面図(待機位置)。
【図5】空気供給装置を示す正断面図(押し上げ位置)。
【図6】空気供給装置を示す平面図。
【図7】空気供給装置を示す平面図(カバー部56を取り外した状態)。
【図8】空気供給装置を示す側断面図(待機位置)。
【図9】空気供給装置を示す側断面図(押し上げ位置)。
【図10】本発明の実施形態2に係る空気供給装置を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図9によって説明する。本実施形態の発酵処理装置10は、有機性廃棄物の発酵処理を行うためのもので、発酵処理がされる有機性廃棄物が収容される処理槽15と、処理槽15に対して、往復移動可能な攪拌装置11と、処理槽15の底部15Cに埋設され、有機性廃棄物12に空気を供給する複数の空気供給装置50とを備えている。
【0019】
処理槽15は、上部が開放された略長方形の箱形であり、例えばコンクリートにより、その側壁15B及び底部15Cが形成されている。処理槽15の各寸法は、例えば幅約4m、深さ約0.5m、長さ約数十mで設定されている。なお、以下の説明では、有機性廃棄物12の投入部16を上流側(図1において右端側)、発酵後の有機性廃棄物12の回収部18を下流側(図1において左端側)とする。
【0020】
処理槽15の投入部16には、鶏糞等の有機性廃棄物12(発酵処理がされるべき有機性廃棄物)が順次投入される。処理槽15内において、投入された有機性廃棄物12が下流に移動していく間に発酵され、下流の回収部18において発酵後の有機性廃棄物12(堆肥)が回収される構成となっている。
【0021】
図3に示すように、攪拌装置11は、処理槽15の両側壁15Bに、上流側から下流側に向かって敷設された一対のレール15A上に沿って往復走行する自走移動体17(移動体)と、この自走移動体17に設けられた攪拌ロータ19と、を備えてなる。例えば、ダンプカー(図示せず)によって山状に投入された有機性廃棄物12は攪拌ロータ19によって攪拌されながら掬い上げられ、上流側から下流側へ移動する構成となっている。
【0022】
自走移動体17は、例えば、鋼材からなる堅牢な略直方形状のフレーム23と、このフレーム23の下方四隅に回動可能に支持され、モータ25により駆動される4つの走行車輪27とを備える。なお、モータ25の動力はチェーン29により走行車輪27に伝達される。そして、自走移動体17は、図示しない制御装置によってモータ25を駆動制御することによって、上流方向、及び下流方向に往復移動可能とされている。すなわち、自走移動体17は、処理槽15に沿って、投入部16側と回収部18側(投入部16の反対側)との間を往復移動可能な構成となっている。
【0023】
図2に示すように、フレーム23には、台部23Aが設けられている。台部23Aには、アーム部材31が、その基端部を軸として上下に回動するように取り付けられている。詳細にはアーム部材31は、台部23Aから下流方向に向かって平行となるように延び、ヒンジ24を介して取り付けられている。これにより、アーム部材31は、ヒンジ24を中心として回動し、攪拌ロータ19がやや上方に位置する上昇位置(図2の2点鎖線で図示)と、図2の実線にて示すような下降位置との間で上下に変位するようにされている。
【0024】
図3に示すように、攪拌ロータ19の回転軸19Aは、自走移動体17の移動方向と直交する方向で回転可能に軸支されている。また、アーム部材31の上面には取付台32が固定されており、この取付台32にはモータ33が設置されている。モータ33はチェーン34を介して回転軸19Aに接続されており、図示しない制御装置によってモータ25を回転駆動させることで、回転軸19Aを回転駆動させることが可能となっている(例えば、約150rpmで回転する)。
【0025】
攪拌ロータ19の回転軸19Aには、耕耘爪19Bが回転軸19Aに対して略垂直となるように多数配設されている。耕耘爪19Bの先端は、回転軸19Aの軸線の長さ方向の中央に向けて屈曲している。このような耕耘爪19Bは一般的に、なた爪と呼ばれているものである。
【0026】
攪拌ロータ19は、アーム部材31に取り付けられた油圧シリンダ35によって昇降可能とされている。すなわち、油圧シリンダ35は、その両端部を回動可能に軸受けされつつ、アーム部材31とフレーム23とを結ぶように取り付けられている(図2参照)。
【0027】
図2に示すように、油圧シリンダ35が伸びた状態では、攪拌ロータ19の耕耘爪19Bが、処理槽15の底部15C付近から離間するようにされている(この状態のアーム部材31を図2の二点鎖線で示す)。また、油圧シリンダ35が縮んだ状態では、攪拌ロータ19の耕耘爪19Bの先端が処理槽15の底面15D付近まで下がり、底面15Dとの間にわずかに隙間を空けた状態で配される構成となっている(図8も参照)。
【0028】
なお、攪拌ロータ19は図2の実線で示す下降位置で回転駆動するように制御されている。また、台部23Aには、その上面に油圧シリンダ35を駆動するための油圧ポンプユニット(図示せず)が備えられている。なお、フレーム23には、各駆動装置に接続される配線コード(図示せず)が取り付けられており、この配線コードは、処理槽15の上方に設けられたレール(図示せず)に対して移動可能に吊るされ、外部の制御装置に接続されている。
【0029】
攪拌ロータ19が図2の矢印(矢線A1)方向に回転すると、耕耘爪19Bの先端が有機性廃棄物を攪拌しながら掬い上げ、処理槽15の内側斜め下流側に落とす。これにより、処理槽15の長手方向に延び、発酵処理に適した高さの断面略台形の畝が形成されるとともに、攪拌ロータ19が畝を攪拌する毎に畝が下流側に所定距離ずつ移動するようになっている。これにより、処理槽15の投入部16(上流端)に投入された有機性廃棄物12は数日から数十日程度かけて、処理槽15内を下流側に移動する間に発酵し、処理槽15の回収部18(下流端)から回収される。
【0030】
続いて、空気供給装置50について詳しく説明をしてゆく。空気供給装置50は、処理槽15に収容された有機性廃棄物12へ空気を供給するためのもので、図2に示すように、処理槽15の底部15Cに埋設された箱部51と、この箱部51内に収容された押し上げ部材70及び油圧シリンダ60(押し上げ部材駆動装置)とを備えている。この空気供給装置50は、図1に示すように、例えば、処理槽15の短辺方向(図1の上下方向)に2つ配列されたものが、長辺方向(図1の左右方向)において4セット配列されている。つまり、本実施形態の発酵処理装置10には、空気供給装置50が計8基設けられている。
【0031】
図1に示すように、各空気供給装置50の各箱部51には、底部15Cに埋設されたエア配管52及び油圧配管53がそれぞれ接続されている。エア配管52には、ブローモータなどの空気供給源52Aが接続され、これにより、空気供給源52Aから、エア配管52を介して、箱部51内に空気が供給される構成となっている。油圧配管53には油圧供給源53Aが接続され、これにより、箱部51内の油圧シリンダ60へ作動油を供給することで、油圧シリンダ60を駆動可能な構成となっている。また、各箱部51と油圧供給源53Aとの間には電磁弁54がそれぞれ介在されている。不図示の制御装置から電磁弁54の開閉を行うことで、油圧シリンダ60への作動油の供給/遮断を制御可能な構成となっている。
【0032】
図6及び図7に示すように箱部51は、自走移動体17の往復方向(図6の左右方向)に長い直方体をなし、上方が開口された箱部本体55と、箱部本体55を上方から覆う形で取り付けられた板状のカバー部56と、を備えている。より具体的には、図4に示すように箱部本体55の各側壁55Bの上部を直角に折り曲げることで形成された載置部55Dにカバー部56の周縁部が載置される形で取り付けられている(図7参照)。なお、図7においてはカバー部56を省略してある。図4に示すように、カバー部56は、その上面56Aが、処理槽15の底面15Dとほぼ同じ高さに配されている。これにより、カバー部56は、箱部51の上壁を構成すると共に、処理槽15における底部15Cの一部を構成している。
【0033】
カバー部56には、その一部を上下に貫通することで、空気噴出孔57が形成されている。図6に示すように、空気噴出孔57は、(自走移動体17の往復方向、図6の左右方向)に沿って延びる長手形状をなしており、カバー部56において、箱部51の短辺方向(図6の上下方向)に、複数列(本実施形態では3列)並ぶ形で形成されている。この構成により、空気供給源52Aから、箱部51内に供給された空気は、空気噴出孔57を通じて、有機性廃棄物12へ噴出される構成となっている。
【0034】
図5に示すように、箱部本体55の底壁55Aには、上述した油圧シリンダ60が設置されている。図7及び図8に示すように油圧シリンダ60は、箱部51の長辺方向に沿って、例えば2基配列されている。両油圧シリンダ60のロッド61の上端には、箱部51の短辺方向に延び、直方体状をなす支持部材62がブラケット63を介して、それぞれ取り付けられている。
【0035】
図8に示すように、押し上げ部材70は、両支持部材62に跨る形で支持されている。押し上げ部材70は、有機性廃棄物12によって形成される硬板層12A(後述)を下方から押し上げる機能を担っている。押し上げ部材70は、平面視において、箱部51の長辺方向に沿って延びる長手状の直方体部材であって、複数列(本実施形態では3列)並ぶ形で配されている。
【0036】
より具体的に説明すると、押し上げ部材70は、平面視において、空気噴出孔57よりも一回り小さい形状をなしている。そして、箱部51の短辺方向における各押し上げ部材70の配列間隔は、同方向における空気噴出孔57の配列間隔とほぼ同じとされる。すなわち、各押し上げ部材70は、各空気噴出孔57の下方に設けられ、対応する空気噴出孔57を挿通可能な構成となっている。
【0037】
また、押し上げ部材70の下部には、箱部51の短辺方向に延びた直方体形状をなす補強部材64が、各押し上げ部材70に跨る形で、複数本(本実施形態では2本)取り付けられている。本実施形態においては、箱部51の短辺方向に延びる2本の支持部材62及び2本の補強部材64、箱部51の長辺方向に延びる3本の押し上げ部材70を格子状に組み合わせることで、強度を高くし、各部材の変形を抑制する構造となっている。
【0038】
以上の構成により、電磁弁54を開閉させ、油圧供給源53Aから作動油を供給することで、両油圧シリンダ60を同期させつつ上昇及び下降させることで、3本の押し上げ部材70を同時に上昇及び下降させることが可能な構成となっている。言い換えると、各押し上げ部材70は、処理槽15の底部15Cに上下移動可能に設けられている。
【0039】
より具体的には、図4で示すように油圧シリンダ60が下降した状態においては、押し上げ部材70は、箱部51に収容された状態となる(待機位置)。そして、待機位置から、油圧シリンダ60を上昇させると、押し上げ部材70は、空気噴出孔57を通り、押し上げ部材70の上側が処理槽15の底面15Dよりも高くなる位置(押し上げ位置、図5の状態)へ上昇する構成となっている。
【0040】
また、油圧シリンダ60には、図示しないリミットスイッチが付設されている。このリミットスイッチは、油圧シリンダ60のロッド61が下降した状態(待機位置)にあることを検知するもので、例えば、上述した攪拌ロータ19の回転軸19Aを駆動させるモータ25の制御装置と電気的に接続されている。これにより、制御装置は、油圧シリンダ60が下降した状態の時のみ(つまり、押し上げ部材70が待機位置にある時)モータ25を駆動させて、攪拌ロータ19を回転させる構成となっている。このような構成とすれば、押し上げ部材70が押し上げ位置にある時に、攪拌ロータ19が回転することを防止でき、押し上げ部材70の上部と攪拌ロータ19の耕耘爪19Bとが干渉する事態を防止できる。言い換えると、攪拌ロータ19は押し上げ部材70に接触しない領域で回転する構成となっている。
【0041】
図4及び図8に示すように、カバー部56における空気噴出孔57の孔縁部からは、一対の側壁部58が下方に延出されている。一対の側壁部58は、空気噴出孔57から箱部51内へ有機性廃棄物12が侵入することを抑制するためのもので、待機位置にある押し上げ部材70を、その短辺方向両側から挟む形で対向配置されている。
【0042】
そして、両側壁部58には、その下端を上方に凹ませることで(言い換えると側壁部58の一部を貫通することで)、通気部58Aが形成されている。通気部58Aは、図8に示すように、空気噴出孔57の長辺方向に沿って複数箇所形成されている。通気部58Aは、側面視にて略長方形状をなしており、その上端が、待機位置にある押し上げ部材70の上面より、高くなるように形成されている。これにより、押し上げ部材70が待機位置にある時には、側面視において、押し上げ部材70の上方と側壁部58との間に隙間が生じ、通気部58Aを通じて箱部51内の空気を空気噴出孔57側へ挿通可能な構成となっている(図4及び図8において、挿通される空気を矢線A2で示す)。
【0043】
一方、押し上げ部材70が上昇した押し上げ位置においては、図5及び図9に示すように、押し上げ部材70は、空気噴出孔57を塞ぐと同時に、通気部58Aより上方に位置する構成(通気部58Aを側方から塞ぐ構成)となっている。これにより、空気噴出孔57及び通気部58Aを通じて、有機性廃棄物12が箱部51内に侵入することを抑制可能となっている。
【0044】
次に、本実施形態における発酵処理装置10の作用及び効果について説明する。初期状態では、図1に示すように、例えば、攪拌装置11は処理槽15の下流端に待機する。この状態で処理槽15の投入部16(上流端)にダンプカーなどで一定量の有機性廃棄物12を投入する。続いて、攪拌装置11は、油圧シリンダ35を縮め攪拌ロータ19を下げた状態で、攪拌ロータ19を回転させながら処理槽15の上流端まで移動する。なお、このとき、押し上げ部材70は待機位置にあり、箱部51内に収容されている。
【0045】
すると、山状に積み上げられた有機性廃棄物12は、攪拌ロータ19により攪拌されて下流側へ所定距離(例えば約50cm)移動するとともに、所定高さ(例えば約50cm)の畝とされる。処理槽15の上流端まで移動した攪拌装置11は、攪拌ロータ19の回転を停止させ、かつ油圧シリンダ35を伸ばして攪拌ロータ19を上げる。この状態で処理槽15の下流端まで移動する。次に、有機性廃棄物12が移動して空いたスペース(投入部16)に再びダンプカーで一定量の有機性廃棄物12を投入する。そして、再び攪拌装置11によって、有機性廃棄物12の攪拌作業を行う。以上の動作を繰り返し行うことにより処理槽15の上流端に投入した有機性廃棄物12は数日から数十日程度かけて、処理槽15内を下流側に移動する間に発酵し、処理槽15の下流端から回収される。
【0046】
上記した攪拌装置11による攪拌作業の過程においては、有機性廃棄物12の発酵を促進するために、空気供給装置50による有機性廃棄物12への空気供給が併せて実施される。次に、空気供給装置50の作用及び効果について説明する。上記した攪拌作業を実施する際には、攪拌ロータ19の耕耘爪19Bと処理槽15の底部15Cとの間にある有機性廃棄物12は、耕耘爪19Bによって、底部15C側へ押圧される。これにより、処理槽15の底部15Cには有機性廃棄物12が圧縮された硬板層12Aが形成される場合がある(図5)。なお、図5においては、硬板層12Aのみを図示してあり、硬板層12Aの上方に堆積された通常の有機性廃棄物12(圧縮されていない部分)は図示を省略してある。
【0047】
本実施形態においては、電磁弁54を開くことで、空気供給装置50の両油圧シリンダ60を上昇駆動させると、押し上げ部材70が待機位置から、空気噴出孔57を通じて上昇され、処理槽15の底面15Dより高い位置(押し上げ位置)へ突き出される。このとき、仮に、硬板層12Aが底部15Cに形成されている場合、図5に示すように、硬板層12Aは、押し上げ部材70によって、部分的に押し上げられる。これにより、硬板層12Aの押し上げられた箇所には応力(主に上下方向のせん断力)が作用し、硬板層12Aには、押し上げ部材70の長辺方向に沿った亀裂12Bが生じる。
【0048】
なお、押し上げ部材70が押し上げ位置にある状態では、押し上げ部材70によって空気噴出孔57は塞がれている。このため、硬板層12Aに亀裂が生じる際に発生しやすい硬板層12Aの破片(有機性廃棄物12の一部)が、空気噴出孔57から、箱部51内へ侵入することを抑制できる。これにより、例えば、有機性廃棄物12が箱部51内へ侵入し、油圧シリンダ60に降りかかるなどの事態を抑制でき、油圧シリンダ60の動作を妨げることを抑制できる。
【0049】
その後、押し上げ部材70を待機位置まで下降させ、次に、空気供給源52Aから箱部51内に空気を供給する。すると、箱部51内の空気は、側壁部58の通気部58Aを通過し、空気噴出孔57から噴出される。そして、硬板層12Aにおいて、空気噴出孔57の上方の箇所は、押し上げ部材70によって、亀裂12Bが形成されている。このため、空気噴出孔57から噴出された空気は亀裂12Bを通じて有機性廃棄物12へ供給される。以上のことから、本実施形態においては、仮に、処理槽15の底部15Cに硬板層12Aが形成されている場合であっても、硬板層12Aに亀裂12Bを形成することができる。このため、有機性廃棄物12へ供給される空気が、硬板層12Aによって遮られることない。これにより、有機性廃棄物12へ、確実に空気の供給を行うことができ、有機性廃棄物12の発酵を促進できる。また、押し上げ部材70によって、押し上げられた硬板層12Aの一部は、押し上げられた分だけ、攪拌ロータ19側へ近づくこととなり、攪拌ロータ19に攪拌されやすくなる。これにより、硬板層12Aの形成自体を抑制する効果も期待できる。
【0050】
また、本実施形態の発酵処理装置10においては、処理槽15の底部15Cに埋設され、空気供給源52Aから空気が供給される箱部51を備え、箱部51の上壁をなすカバー部56が底部15Cの一部を構成し、空気噴出孔57は、カバー部56の一部を貫通することで形成され、押し上げ部材70及び油圧シリンダ60は、箱部51内に収容され、押し上げ部材70は、空気噴出孔57を挿通可能な形状をなし、油圧シリンダ60は、押し上げ部材70を、箱部51に収容された待機位置から、空気噴出孔57を通って、押し上げ位置へ上昇させる構成としてある。
【0051】
このような構成とすれば、押し上げ部材70が空気噴出孔57を通って上昇される。これにより、押し上げ部材70によって形成される硬板層12Aの亀裂12Bは、空気噴出孔57の直上に形成される。これにより、空気噴出孔57からの空気が亀裂12Bを通過しやすくなり、より効果的に有機性廃棄物12に対して空気を供給できる。
【0052】
また、押し上げ部材70は、平面視において、長手状をなしている。押し上げ部材70を長手状とすれば、硬板層12Aを押し上げる箇所を比較的大きくすることができ、硬板層12Aに、より大きな亀裂12Bを生じさせることができる。これにより、空気噴出孔57からの空気が亀裂を通過しやすくなり、より効果的に空気を供給できる。
【0053】
また、箱部51の上壁(カバー部56)における空気噴出孔57の孔縁部からは、待機位置における押し上げ部材70を挟んで対向配置される一対の側壁部58が下方に延出され、側壁部58には、その一部を貫通することで通気部58Aが形成され、通気部58Aは、押し上げ部材70が待機位置にある場合に、箱部51内の空気を空気噴出孔57側へ挿通可能としている。
【0054】
このような構成とすれば、押し上げ部材70が待機位置にある場合には、押し上げ部材70と両側壁部58によって、有機性廃棄物12の落下が規制され、箱部51内へ侵入することを抑制できる。また、側壁部58の一部には、通気部58Aが形成されているため、箱部51内から有機性廃棄物12への空気の供給が妨げられることがない。
【0055】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図10によって説明する。実施形態1と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態の空気供給装置150においては、押し上げ部材170の構成が実施形態1と異なる。押し上げ部材170は、実施形態1の押し上げ部材70と同様の形状をなす部材(平面視長手状をなす直方体部材)であって、支持部材62に直接支持される基端部171と、基端部171の上部に、例えば、ボルトなどによって取り付けられた閉塞部172から分割構成されている。
【0056】
基端部171及び閉塞部172は、箱部51の長辺方向に沿って延びる長手状の直方体部材であって、基端部171及び閉塞部172の長さ及び幅は、ほぼ同じ値で設定されている。閉塞部172は、その内部に閉塞部172より一回り小さい通気路172A(長手状の直方体形状)が形成された中空の部材である。図10に示すように、押し上げ部材170が待機位置にある状態においては、閉塞部172の上部が、通気部58Aの上端より高い位置に配されている。これにより、閉塞部172は、通気部58Aの少なくとも一部を側方から塞ぐ構成となっている。
【0057】
また、閉塞部172を構成する壁部のうち、通気部58A側の側壁部173Cを貫通して、通気孔173Aが複数箇所形成され、空気噴出孔57側の上壁部173Dを貫通して、通気孔173Bがそれぞれ形成されている。つまり、通気孔173A、通気路172A、通気孔173Bを通じて、箱部51の内部空間と、カバー部56の上方の空間とが連通される構成となっている。
【0058】
閉塞部172によって、通気部58Aの一部を塞ぐことで、有機性廃棄物12の箱部51内への異物(例えば有機性廃棄物12の粒など)侵入を一層確実に抑制できる。一方、箱部51内の空気は通気部58Aを通じて、通気部58A側の通気孔173Aから、閉塞部172内に入る。そして、その空気は、空気噴出孔57側の通気孔173Bから、空気噴出孔57側(つまり、有機性廃棄物12側)へと噴出される(空気の流れを矢線A3で図示)。これにより、有機性廃棄物12の箱部51内への異物の侵入を抑制しつつも、有機性廃棄物12への空気の供給を行うことができる。また、通気孔173A及び通気孔173Bの大きさは、適宜設定可能であるが、例えば、有機性廃棄物12の粒径より小さく設定しておけば、各通気孔173A,173Bを通じて箱部51内に有機性廃棄物12が侵入することも防止でき、より効果的である。
【0059】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0060】
(1)空気供給装置50、150の設置数および設置箇所は上記実施形態の構成に限定されず、適宜変更可能である。
【0061】
(2)上記実施形態においては、押し上げ部材70、170として長手状の直方体部材を例示したが、これに限定されない。押し上げ部材70、170は、硬板層12Aを部分的に押し上げ可能な形状であればよく、例えば、上方に向かうにつれて先細りする断面三角形状をなしていてもよい。
【0062】
(3)上記実施形態においては、カバー部56の側壁部58において、その下端を上方に凹ませることで、通気部58Aを形成する構成を例示したが、これに限定されない。通気部58Aの形状は、例えば、側壁部58の内側部分のみを貫通させて形成された孔(閉じた孔)の形態をなしていてもよい。また、通気部58Aは、両側壁部58のうち、いずれか一方の側壁部58のみに形成されていてもよい。
【0063】
(4)上記実施形態において、空気供給源52Aを、例えばボイラや電気ヒータなどを備えた構成とすることで、空気供給装置50に温風を供給するようにしてもよい。このような構成とすれば、有機性廃棄物12に温風を供給することができ、例えば冬場などの外気温が低い場所においても、有機性廃棄物12の発酵を促進することができる。
【0064】
(5)上記実施形態において、攪拌ロータ19の耕耘爪19Bは、なた状としたが、耕耘爪19Bの形状はこれに限定されない。また、攪拌ロータ19に取り付けられる耕耘爪19Bを全て同一形状とする必要はなく、形状の異なる複数種類の耕耘爪19Bを取り付けてもよい。
【0065】
(6)上記実施形態において、有機性廃棄物12を発酵処理する場合について説明したが、有機性廃棄物にわら等の混合物を混合したものでも同様に処理することができる。なお、有機性廃棄物12は、蓄糞に限らず生ゴミであってもよい。
【0066】
(7)上記実施形態においては、押し上げ部材駆動装置として油圧シリンダ60を例示したが、これに限定されない。押し上げ部材駆動装置は、押し上げ部材70を上下に移動可能な装置であればよく、例えば、空気圧シリンダや、電気モータなど他の駆動装置によって押し上げ部材70を上下移動させる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…発酵処理装置
12…有機性廃棄物
15…処理槽
15C…底部
15D…処理槽の底面
16…投入部
17…自走移動体(移動体)
19…攪拌ロータ
51…箱部
52A…空気供給源
56…カバー部(箱部の上壁)
57…空気噴出孔
58…側壁部
58A…通気部
60…油圧シリンダ(押し上げ部材駆動装置)
70,170…押し上げ部材
172…閉塞部
173A,173B…通気孔
173C…側壁部(通気部側の壁部)
173D…上壁部(空気噴出孔側の壁部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入部に発酵処理がされるべき有機性廃棄物が順次投入される処理槽と、
前記処理槽の底部に設けられ、空気供給源から供給された空気を前記有機性廃棄物へ噴出させる空気噴出孔と、
前記処理槽の底部に、上下移動可能に設けられた押し上げ部材と、
前記処理槽に沿って、前記投入部側と、その反対側との間を往復移動可能な移動体と、
前記移動体に設けられ、前記押し上げ部材に接触しない領域で回転することで前記有機性廃棄物を攪拌する攪拌ロータと、
前記押し上げ部材を前記処理槽の底面よりも高い押し上げ位置に上昇させる押し上げ部材駆動装置とを備えてなる有機性廃棄物の発酵処理装置。
【請求項2】
前記処理槽の底部に埋設され、前記空気供給源から空気が供給される箱部を備え、
前記箱部の上壁は前記底部の一部を構成し、前記空気噴出孔は、前記上壁の一部を貫通することで形成され、
前記押し上げ部材及び前記押し上げ部材駆動装置は、前記箱部内に収容され、
前記押し上げ部材は、前記空気噴出孔を挿通可能な形状をなし、
前記押し上げ部材駆動装置は、前記押し上げ部材を、前記箱部に収容された待機位置から、前記空気噴出孔を通って、前記押し上げ位置へ上昇させることを特徴とする請求項1に記載の有機性廃棄物の発酵処理装置。
【請求項3】
前記箱部の上壁における前記空気噴出孔の孔縁部からは、前記待機位置における前記押し上げ部材を挟んで対向配置される一対の側壁部が下方に延出され、
前記一対の側壁部のうち、少なくとも一方の側壁部には、その一部を貫通することで通気部が形成され、
前記通気部は、前記押し上げ部材が前記待機位置にある場合に、前記箱部内の空気を前記空気噴出孔側へ挿通可能とすることを特徴とする請求項2に記載の有機性廃棄物の発酵処理装置。
【請求項4】
前記押し上げ部材の上部は、前記待機位置において、前記通気部の少なくとも一部を塞ぐ閉塞部とされ、
前記閉塞部は中空で形成され、前記閉塞部の前記通気部側の壁部及び前記空気噴出孔側の壁部には、通気孔がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項3に記載の有機性廃棄物の発酵処理装置。
【請求項5】
前記押し上げ部材は、平面視において、長手状をなすことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の有機性廃棄物の発酵処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−139983(P2011−139983A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1416(P2010−1416)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(591196625)株式会社晃伸製機 (7)
【Fターム(参考)】