説明

有機感光層を有する電子写真感光体の中間層用塗工液、電子写真感光体および画像形成装置ならびに画像形成方法

【課題】最も環境負荷が小さい水を溶剤として用い、かつ生産においても液物性の経時安定性に優れた、有機感光層を有する感光体の中間層用塗工液、それを用いて形成された中間層を有する、繰り返し特性および環境安定性に優れた感光体およびそれを備えた画像形成装置ならびにそれを用いた画像形性方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ブロックイソシアネート化合物と、前記ブロックイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂と、針状酸化チタン微粒子と、水性媒体とを含み、前記針状酸化チタン微粒子が、前記ブロックイソシアネート化合物、前記樹脂および前記針状酸化チタン微粒子の合計量に対して30〜90重量%の割合で含有され、前記針状酸化チタン微粒子が、0.5μm以下の短軸長、10μm以下の長軸長および1.5以上300以下の平均アスペクト比を有することを特徴とする有機感光層を有する電子写真感光体の中間層用塗工液により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機感光層を有する電子写真感光体の中間層用塗工液、それを用いて形成された中間層を有する電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置ならびにそれを用いた画像形性方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル複合機、プリンタなどに多用されている電子写真方式の画像形成装置(「電子写真装置」ともいう)に用いられる電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)は、導電性支持体上に光導電性材料を含む感光層が積層されてなり、光導電性材料として、従来からセレンなどの無機光導電性材料が用いられてきた。
一方、有機光導電性材料は、無機光導電性材料に比べて、感度、耐久性および環境に対する安定性などの点で若干劣るものの、毒性、製造コスト、材料設計の自由度などの観点から、近年では広く用いられている。
【0003】
また、感光体の構成は、電荷発生物質と電荷輸送物質とをバインダ樹脂中に分散した単層型から、電荷発生層と電荷輸送層とを分離した機能分離型へと変遷し、その性能も向上してきている。
現在では、導電性支持体上に、中間層と、電荷発生層と電荷輸送層とがこの順で積層された積層型(機能分離型)感光層とがこの順で積層された構成が主流となっている。
中間層は、導電性支持体上の欠陥被覆などによる感光層の接着性向上や成膜性(塗工性)改善、導電性支持体からの不要な電荷注入の阻止、それに伴う帯電性改善などの機能を有する。
【0004】
中間層は、樹脂単独からなるものと、顔料を含有させた樹脂からなるものに大別される。
中間層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼインなどの水溶性樹脂、共重合ナイロン樹脂などのアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シロキサン樹脂など三次元網目構造を形成する熱硬化型樹脂などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、水溶性樹脂やアルコール可溶性樹脂は、水分の吸着性、親和性に富むため、物性の環境依存性が非常に高くなり、湿度によって感光体特性が変化してしまうという問題がある。特に高湿では中間層が大量の水分を吸収するために、感光体を高温高湿や低温低湿で繰り返し使用するとその特性が大きく変動し、黒ポチや濃度低下などの異常画像が引き起こされる。
そこで、耐溶剤性、環境安定性に優れた三次元網目構造を形成する熱硬化型樹脂が採用された。
【0006】
しかしながら、例えば、特許第3657138号公報(特許文献1)に開示されているメラミン樹脂、例えば、特許第2707341号公報(特許文献2)に開示されているフェノール樹脂およびメトキシメチル化ナイロンなどの樹脂は、樹脂製造時にシックハウス症候群の原因物質の一つといわれ、現在大気汚染防止法における対象物質に挙げられているホルムアルデヒドが大量に使用される。そのため、樹脂内に製造時の未反応物が吸蔵され、感光体の中間層形成後の熱架橋処理過程においてホルムアルデヒドが発生するという問題がある。発生したホルムアルデヒドの大気放出を防ぐためには回収設備が必要であり、明らかに設備導入にはコストが掛かる。
【0007】
また、例えば、特許第2790380号公報(特許文献3)に開示されているウレタン樹脂は、ポリオール化合物などの活性水素含有基と硬化剤であるイソシアネート化合物のイソシアネート基とが3次元網目状の架橋反応を開始して硬化膜が形成されるので、ホルムアルデヒドの発生はない。しかし、イソシアネート基の反応性が非常に高いために、これらを用いた塗工液のポットライフが非常に短いという問題がある。
そこで、イソシアネート基がオキシムなどのブロック剤で保護されたブロックイソシアネート化合物を用いる方法が報告され、有機溶剤を用いた塗工液のポットライフはかなり改善されている(例えば、特開2005-115351号公報(特許文献4)参照)。
【0008】
一方、従来から、導電性支持体の影響による画像欠陥の防止や残留電位の改善の目的で、中間層に金属微粒子や金属酸化物微粒子を添加する技術が提案されている。金属酸化物微粒子としては、例えば表面未処理の酸化チタン粉末や表面にアルミナなどを被覆した酸化チタン微粒子などが挙げられる。
このような酸化チタン粉末は粒状であり、粒子同士の接触が点接触に近く、接触面積が小さいために、金属酸化物の含有量がある一定量を超えなければ、中間層の抵抗値が非常に高い値を示し、感光体特性、特に感度および残留電位が悪化する。したがって、粒状の金属酸化物を中間層に用いる場合には、その含有量を非常に高くする必要がある。
【0009】
しかしながら、金属酸化物の含有量を増加して特性を向上させても、粒子同士の接触が弱いために、感光体の長期間の繰り返し使用によって徐々に特性劣化が発生することは避けられない。
また、このような金属酸化物の含有量が多くなると、金属酸化物の樹脂に対する分散性と安定性が悪くなり、塗液の保存性が悪くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3657138号公報
【特許文献2】特許第2707341号公報
【特許文献3】特許第2790380号公報
【特許文献4】特開2005-115351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、最も環境負荷が小さい水を溶剤として用い、かつ生産においても液物性の経時安定性に優れた、有機感光層を有する感光体の中間層用塗工液、それを用いて形成された中間層を有する、繰り返し特性および環境安定性に優れた感光体およびそれを備えた画像形成装置ならびにそれを用いた画像形性方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記のように揮発性有機化合物(VOC)が生じず、かつ火災の危険のない水を溶剤とした中間層用塗工液を実現するために、特定量のブロックイソシアネート化合物およびイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を有する樹脂と、特定量の針状酸化チタン微粒子と、水性媒体とを含む中間層用塗工液を考案した。
【0013】
本発明によれば、ブロックイソシアネート化合物と、前記ブロックイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂と、針状酸化チタン微粒子と、水性媒体とを含み、
前記針状酸化チタン微粒子が、前記ブロックイソシアネート化合物、前記樹脂および前記針状酸化チタン微粒子の合計量に対して30〜90重量%の割合で含有され、
前記針状酸化チタン微粒子が、0.5μm以下の短軸長、10μm以下の長軸長および1.5以上300以下の平均アスペクト比を有する
ことを特徴とする有機感光層を有する感光体の中間層用塗工液が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、導電性支持体上に、少なくとも中間層と有機感光層とがこの順で積層されてなり、前記中間層が、上記の中間層用塗工液から熱硬化を経て形成された層であることを特徴とする感光体が提供される。
【0015】
さらに、本発明によれば、上記の感光体と、前記感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、上記の感光体を帯電させる帯電工程と、帯電された前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光工程と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着工程と、前記感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング工程と、前記感光体に残留する表面電荷を除電する除電工程を含むことを特徴とする画像形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、最も環境負荷が小さい水を溶剤として用い、かつ生産においても液物性の経時安定性に優れた、有機感光層を有する感光体の中間層用塗工液、それを用いて形成された中間層を有する、繰り返し特性および環境安定性に優れた感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【0018】
すなわち、本発明によれば、中間層用塗工液の溶剤として水性媒体を用いることにより、製造過程におけるVOCによる大気汚染の問題がなくなるだけでなく、従来使用されている石油系溶剤のようなCO2排出の問題がないため、地球温暖化の防止にも寄与し、さらに火災の危険性がないため、製造システムを簡略化でき、製造コストを低減することができる。
【0019】
中間層用塗工液の溶剤として水性媒体を用いる場合には、水に親和性の高い樹脂を使用しなければならず、このような中間層用塗工液を用いて形成された中間層を有する感光体は耐湿特性に劣る。しかし、本発明では、樹脂をイソシアネート化合物と熱硬化反応させ、樹脂における親水性の官能基を減少させ、かつ硬化膜として塗膜を緻密化させるので、感光体の耐湿性が改善され、優れた環境安定性を得ることができる。
【0020】
イソシアネート化合物のイソシアネート基は水と容易に反応する。しかし、本発明では、水中でも安定な保護基でイソシアネート基を保護したブロックイソシアネート化合物を用いるので、従来の有機溶剤系の塗工液と同等以上のポットライフを実現することができる。
また、水酸基やアミド基などのイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂を用いることにより、イソシアネート化合物と容易に熱硬化反応させることができる。
さらに、本発明では、イソシアネート基が、樹脂中の活性水素含有基に対して0.5以上1.5以下のモル比でブロックイソシアネート化合物中に存在することにより、緻密な硬化膜を形成することができ、感光体として優れた環境特性を実現することができる。
【0021】
中間層用塗工液に、針状酸化チタン微粒子を含有させることにより、分散性や保存安定性に優れた塗工液が得られ、塗布ムラなしに中間層を作製できる。したがって、繰り返し使用しても、残留電位の蓄積が少なく、光感度劣化の少ない感光体を作製できる。
また、針状酸化チタン微粒子は、粒子が細長いために、粒子同士が接触し易く、接触面積が大きくなるので、粒状の酸化チタン微粒子を使用する場合よりも、中間層の抵抗値を低くできる。したがって、中間層中の酸化チタン微粒子の含有量が同量であっても、より感度特性を良好な中間層が容易に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
【図3】本発明の感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の有機感光層を有する感光体の中間層用塗工液は、ブロックイソシアネート化合物と、前記ブロックイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂と、針状酸化チタン微粒子と、水性媒体とを含み、前記針状酸化チタン微粒子が、前記ブロックイソシアネート化合物、前記樹脂および前記針状酸化チタン微粒子の合計量に対して30〜90重量%の割合で含有され、前記針状酸化チタン微粒子が、0.5μm以下の短軸長、10μm以下の長軸長および1.5以上300以下の平均アスペクト比を有することを特徴とする。
【0024】
(ブロックイソシアネート化合物および樹脂)
ブロックイソシアネート化合物は、水に溶解あるいは分散可能な水性イソシアネート化合物のイソシアネート基が、例えばオキシムなどのブロック剤で保護された化合物で、加熱により水酸基やアミド基などのイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を有する樹脂と付加反応を開始し、ブロック剤が外れて架橋反応が進む。すなわち、ブロックイソシアネート化合物は、樹脂の架橋剤となる。
【0025】
水性イソシアネート化合物は、一分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートを、ポリエチレンオキサイド、カルボキシル基またはスルホン酸基等の各種親水性基によって変性して溶解あるいは自己乳化型にした形態、または界面活性剤などによって強制乳化して水分散可能にした形態の化合物である。
【0026】
上記有機ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート;および前記イソシアネートのビウレット変成体、ウレトジオン変成体、カルボジイミド変成体、イソシアヌレート変成体およびウレトンイミン変成体などが挙げられる。これらの有機ポリイソシアネートは1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
これらの有機ポリイソシアネートの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートベースの有機ポリイソシアネートは、水との親和性を持たせやすく、そのため水への溶解・分散が容易で、また架橋密度を高めることも容易なことから特に好ましい。
【0027】
また、有機ポリイソシアネートから誘導される種々のプレポリマー類など、さらには、これらの有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基をブロック化するブロック剤としては、酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドなどの酸アミド系化合物;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;コハク酸イミド、マレイン酸イミドなどの酸イミド系化合物;イミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素などの尿素系化合物;ホルムアミドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;ジフェニルアニリン、アニリン、カルバゾール、エチレンイミン、ポリエチレンイミンなどのアミン系化合物が挙げられ、これらのブロック剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのブロック剤の中でも、汎用性、製造の簡易さ、作業性の点から、メチルエチルケトオキシムなどのオキシム系化合物およびε−カプロラクタムなどのラクタム系化合物は特に好ましい。
【0028】
また、イソシアネート基は水とも容易に反応するため、塗膜中の水が揮発した後にブロック剤の解離が起こるように、解離温度が110℃以上のブロック剤を使用することが好ましい。
したがって、ブロックイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートをオキシム系またはラクタム系のブロック剤でブロック化した構造を有するものが好ましい。
【0029】
ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、
住化バイエルウレタン株式会社製、製品名:バイヒジュールBL5140、BL5235およびVPLS2310;
三井化学ポリウレタン株式会社製、製品名:タケネートWB−700WB−820およびWB−920;
日本ポリウレタン工業株式会社製、開発品名:BWD−102
旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1238、X1248およびX1258
などが挙げられる。
【0030】
ブロックイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂における活性水素含有基は、イソシアネート基と高収率で反応可能な水酸基またはアミド基であるのが好ましい。
すなわち、硬化剤であるブロックイソシアネートと架橋構造を形成するために2つ以上の水酸基またはアミド基を有する(1つの官能基しか有さない場合には架橋構造とはならず、高分子量となる)ポリオール樹脂やポリアミド樹脂が好適である。また、これらポリオール樹脂やポリアミド樹脂の構造を制御することにより、良好に水に分散および溶解させることができ、さらにこれらの樹脂は基板との接着性が高く。感光体とした時の基板との接触不良による画像欠陥も効果的に防止できる。
【0031】
これらポリオール樹脂やポリアミド樹脂としては、例えば、
日本ポリウレタン工業株式会社製、製品名:AQD−457およびAQD−473、旭硝子株式会社製、製品名:エクセノール420および720、三洋化成工業株式会社製、製品名:サンニックスGP−400、GP−700およびSP−750などのポリエーテルポリオール系樹脂;
日立化成工業株式会社製、製品名:フタルキッドW2343、DIC株式会社製、製品名:ウォーターゾールS−118、CD−520およびBCD−3040、ハリマ化成株式会社製、製品名:ハリディップWH−1188などのポリエステルポリオール系樹脂;
DIC株式会社製、製品名:バーノックWE−300、WE−304およびWE−306、亜細亜工業株式会社製、製品名:WAP−473−FDおよびWAP−548などのポリアクリルポリオール系樹脂;
【0032】
株式会社クラレ製、製品名:クラレポバールPVA−203およびPVA−205などのポリビニルアルコール変性体のようなポリビニルアルコール系樹脂;
積水化学工業株式会社製、製品名:エスレックK KW−1およびKW−3などのポリビニルアセタール系樹脂;
信越化学工業株式会社製、製品名:メトローズ65SH−50および65SH−400などの水溶性セルロースエーテルのようなセルロース;
ナガセケムテックス株式会社製、製品名:トレジンFS−350およびFS−500などの水溶性ナイロン(ポリアミド化合物系樹脂)
などが挙げられる。
【0033】
ブロックイソシアネート化合物は、樹脂中の活性水素含有基に対して0.5以上1.5以下のモル比でイソシアネート基を有する割合で含有されるのが好ましい。すなわち、ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して0.5以上1.5以下のモル比でブロックイソシアネート化合物中に存在するのが好ましい。そのモル比は、好ましくは0.5以上1.2以下、より好ましくは0.6以上1.1以下である。
このモル比(H/B)が0.5未満の場合または1.5を超える場合には、未反応の官能基が多く残存して、架橋密度が低くなり、形成された中間層を有する感光体の環境安定性が低下するおそれがある。
【0034】
(針状酸化チタン微粒子)
針状酸化チタン微粒子は、感光体としたときの中間層の体積抵抗値を調節し、導電性支持体から感光層へのキャリアの注入を防止すると共に、各種環境下での感光体の電気特性を維持する機能を有する。
「針状」とは、棒状、柱状や紡錘上などを含む細長く、かつ枝分かれしていない形状で、粒子の長軸の長さ(L)と短軸の長さ(S)の比率L/S、すなわちアスペクト比が1.5以上のものを意味する。したがって、必ずしも極端に細長い形状でなくてもよく、先端が鋭く尖っている必要もない。
【0035】
針状酸化チタン微粒子は、粒子が細長いために、粒子同士が接触し易く、接触面積が大きくなるので、粒状の酸化チタン微粒子を使用する場合よりも、中間層の抵抗値を低くでき、かつ抵抗を制御し易い。
したがって、粒状の酸化チタン微粒子を使用する場合よりも、中間層中の酸化チタン微粒子の含有量を低下させても、同等の性能を有する中間層を容易に作製できる。酸化チタン微粒子の含有量を少なくできることは、中間層の膜強度および導電性支持体との接着性の向上に役立つ。また、酸化チタン微粒子同士の接触が強固であるので、長期間の繰り返し使用によっても特性劣化が発生せず、優れた安定性が得られる。
また、酸化チタン微粒子の含有量が同じである場合には、粒状よりも針状の酸化チタン微粒子を用いた方が中間層の抵抗値を低くできるので、その分中間層の膜厚を厚くすることができ、中間層表面に導電性支持体の表面欠陥が現れず、平滑な中間層表面を得る上で有利である。
さらに、針状の酸化チタン微粒子の場合、特に表面処理を施さなくても、中間層用塗工液において非常に安定な分散性を示し、長時間にわたってその安定性が持続する。
【0036】
本発明の針状酸化チタン微粒子は、1μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.2μm以下の短軸長、100μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下の長軸長、および1.5以上300以下、好ましくは2以上20以下、より好ましくは2以上10以下の平均アスペクト比を有する。
針状酸化チタン微粒子の短軸長および長軸長が上記の範囲内にない場合には、分散性および保存安定性に優れた中間層用塗工液が得られ難い。
また、針状酸化チタン微粒子の平均アスペクト比が上記の範囲より小さい場合には、酸化チタン微粒子同士が接触し難く、接触面積が小さくなるので、抵抗値を低下させることができず、針状としての効果が発現し難くなる。一方、針状酸化チタン微粒子の平均アスペクト比が上記の範囲より大きい場合には、酸化チタン微粒子同士の接触面積が大きくなり、針状としての効果の向上が期待できない。
【0037】
本発明において、短軸長(S)、長軸長(L)および平均アスペクト比(A=L/S)は、例えば、次のような値を取り得る。
S=0.01μm、 L=0.015μm、A=1.5
S=0.01μm、 L=3μm、 A=300
S=0.1μm、 L=0.15μm、 A=1.5
S=0.2μm、 L=0.3μm、 A=1.5
S=0.033μm、L=10μm、 A=300
S=0.5μm、 L=0.75μm、 A=1.5
【0038】
S=0.01μm、 L=0.02μm、 A=2
S=0.01μm、 L=0.2μm、 A=20
S=0.1μm、 L=0.2μm、 A=2
S=0.1μm、 L=2μm、 A=20
S=0.2μm、 L=0.4μm、 A=2
S=0.2μm、 L=4μm、 A=20
S=0.25μm、 L=5μm、 A=20
S=2.5μm、 L=5μm、 A=2
【0039】
針状酸化チタン微粒子の粒径(短軸長と長軸長)およびアスペクト比は、重量沈降法や光透過式粒度分布測定法などの公知の方法により測定することができるが、針状であることから、電子顕微鏡で観察し、直接測定するのが好ましい。
【0040】
針状酸化チタン微粒子の結晶形は、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型の3種類のいずれであってもよく、またこれらの混合であってもよい。
針状酸化チタン微粒子の体積抵抗値は、プレス圧力100kg/cm2の圧粉体における体積抵抗値(以下「粉体抵抗値」ともいう)で105Ω・cm以上1010Ω・cm以下の範囲の高抵抗であるのが好ましい。
酸化チタン微粒子の粉体抵抗値が105Ω・cm未満では、中間層としての抵抗値が低下し、電荷ブロッキング層として機能しなくなることがある。例えば、アンチモンドープした酸化錫導電層などの導電処理を施した酸化チタンの粉体抵抗値は100〜101Ω・cmであり、これを用いた中間層は電気ブロッキング層として機能せず、感光体特性としての帯電性が悪化するので、使用することはできない。
また、酸化チタン微粒子の粉体抵抗値が1010Ω・cmを超えると、樹脂の体積抵抗値と同等あるいはそれ以上になり、これを用いた中間層の抵抗値が高くなり過ぎて、光照射時に生成したキャリア輸送が抑制阻止され、残留電位が上昇するので好ましくない。
【0041】
また、酸化チタン微粒子の粉体抵抗値が上記の範囲であって、かつその表面がアルミナ、シリカ、ジルコニアによって被覆されると、黒ポチ防止効果、中間層用塗工液の分散性の向上が記載できる。さらに、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどで表面処理を施すと、黒ポチ防止効果がさらに期待できる。
【0042】
針状酸化チタン微粒子は、例えば、四塩化チタン溶液の中和および硫酸チタニル溶液の熱加水分解などの公知の方法により製造することができる。
原料の選択や製造条件の設定により、針状酸化チタン微粒子の短軸長、長軸長および平均アスペクト比を調整することができる。
また、生成された針状酸化チタン微粒子は、アルカリ処理や酸処理により精製するのが好ましい。
【0043】
針状酸化チタン微粒子として市販品を用いることができ、例えば、
石原産業株式会社製、製品名:FTL−100(短軸長0.13μm、長軸長1.68μm、平均アスペクト比13)、FTL−200(短軸長0.21μm、長軸長2.86μm、平均アスペクト比5)、FTL−300(短軸長0.27μm、長軸長5.15μm、平均アスペクト比19)
【0044】
堺化学工業株式会社製、製品名:STR−60A(短軸長0.01μm、長軸長0.05μm、平均アスペクト比5、アルミナ、シリカ表面処理)、STR−60N(短軸長0.01μm、長軸長0.05μm、平均アスペクト比5)
テイカ株式会社製、製品名:MT−150A(短軸長0.01μm、長軸長0.1μm、平均アスペクト比10)、MT−100S(短軸長0.01μm、長軸長0.02μm、平均アスペクト比2)
などが挙げられる。
【0045】
針状酸化チタン微粒子は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂)と針状酸化チタン微粒子との合計量に対して30〜90重量%の割合で含有する。その下限は好ましくは35重量%であり、より好ましくは50重量%である。また、その上限は好ましくは80重量%であり、より好ましくは70重量%である。
この割合が30重量%未満の場合、低温低湿環境下で連続印字した際の感光体の感度変化が大きくなり、画像濃度の変化が大きくなるおそれがある。また、この割合が90重量%を超える場合、中間層用塗工液の保存安定性が悪くなり、酸化チタン粒子が沈降するおそれがある。
【0046】
本発明の中間層用塗工液は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の金属酸化物微粒子を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子としては、酸化亜鉛、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどが挙げられ、これらの中でも分散性、比抵抗の点で酸化亜鉛微粒子が特に好ましい。
【0047】
本発明の中間層用塗工液は、消泡剤をさらに含んでいてもよい。
消泡剤は、中間層用塗工液にごく微量添加することによって泡を抑えることを目的としている。
本発明の中間層用塗工液のように溶剤として水を使用し、また特に水溶性の樹脂を添加する場合には、調製時の分散や攪拌により発泡して分散や攪拌効率を低下させるだけでなく、塗布時に発泡して塗膜欠陥を引き起こすことがある。消泡剤はこれらの問題を抑制する。
【0048】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系、界面活性剤系、ポリエーテル系、高級アルコール系、エマルション系、オイルコンパウンド系などが挙げられる。これらの中でも、破泡性の強いシリカ粉を含有しているオイルコンパウンド系が特に好ましい。
消泡剤としては、例えば、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー444、470、485、PC(ポリエーテル系)、SNデフォーマー1311、1316(シリコーン系)、SNデフォーマー777、328、480、Hー2(オイルコンパウンド系)、日硝産業株式会社製、製品名:TSA750(オイルコンパウンド系)、TSA770(エマルション系)、東レ・ダウコーニング株式会社製:製品名:DK Q1−1247のようなシリコーン・エマルションなどが挙げられる。
【0049】
消泡剤は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)1重量部に対して0.05〜0.0005重量部であるのが好ましい。
消泡剤が0.05重量部を超える場合、感光体の電気特性を悪化させるおそれがあり、0.0005重量部未満の場合、有効な破泡効果が得られないおそれがある。
【0050】
本発明の中間層用塗工液は、本発明の効果を阻害しない範囲で、粘弾性調整剤、防腐剤、硬化触媒などの添加剤を含んでいてもよい。
【0051】
粘弾性調整剤としては、例えば、サンノプコ株式会社製、製品名:SNシックナー601、A816(ポリエーテル系)、SNシックナー607(ウレタン変性ポリエーテル系)、SNシックナー617(変性ポリアクリル酸系)、信越化学工業株式会社製、製品名:メトローズ65SH−4000のような水溶性セルロースエーテルなどが挙げられる。
【0052】
防腐剤としては、例えば、サンノプコ株式会社製、製品名:ノプコサイドSN−135Wのような有機窒素硫黄系化合物などが挙げられる。
【0053】
硬化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアミン系化合物;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートなどの有機スズ化合物が挙げられる。
【0054】
また、本発明の中間層用塗工液は、導電性を調節するために電子輸送物質を含んでいてもよい。
電子輸送物質としては、例えば、ペリレン系色素類、ジフェノキノンやナフトキノンの誘導体などのキノン類、テトラシアノエチレンやテレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノンやアリザリンなどのアントラキノン類が挙げられる。
【0055】
本発明の中間層用塗工液は、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂、針状酸化チタン微粒子および任意の添加剤を、水性媒体に溶解または分散させることにより調製することができる。
水性媒体は、水、水と低級アルコールなどの親水性有機溶剤との混合媒体を意味するが、本発明においては水のみが好ましい。
【0056】
中間層用塗工液の構成成分、特に無機酸化物微粒子を水に分散させるために、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミルなどの一般的な分散機、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機などの一般的な粉砕機を用いてもよい。
【0057】
また、この分散を安定させるために中間層用塗工液に分散安定剤を添加してもよい。
分散安定剤としては、例えば、株式会社三洋化成製、製品名:キャリボンL−400、エレスタットAP−130、サンスパールPS−8、PDN−173、イオネットS−85およびニューポールPE−61、サンノプコ株式会社製、製品名:ローマPWA−40、ノブコサントRFA、SNディスパーサント2060、5020、5029、5468、7347CおよびSNウェットP、日信化学工業株式会社製、製品名:サーフィノール104EおよびオルフィンPD−003、花王株式会社製、製品名:ポイズ520、530、ホモゲノールL 100、第一工業製薬株式会社製、シャロールAN−103P、AH−144P、ディスコートN−14、東邦化学工業株式会社製、製品名:ディブロジンA−100、ネオスコープ30などが挙げられる。
【0058】
本発明の感光体は、導電性支持体上に、少なくとも中間層と有機感光層とがこの順で積層されてなり、前記中間層が、本発明の中間層用塗工液から熱硬化を経て形成された層であることを特徴とする。
【0059】
次に本発明の感光体について図面を用いて具体的に説明する。
図1〜3は、本発明の感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図1は、感光層が電荷発生層と電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層(「機能分離型感光層」ともいう)である積層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図2は、感光層が電荷輸送層と電荷発生層とがこの順で積層された逆二層型の積層型感光層である積層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図3は、感光層が一層からなる単層型感光層である単層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図1および2の積層型感光層はいずれであってもよいが、図1の積層型感光層が好ましい。
【0060】
図1の感光体は、導電性支持体1の表面に、中間層2と、電荷発生物質を含有する電荷発生層3と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層4とがこの順で積層された積層型感光層5がこの順で形成されている。
図2の感光体は、導電性支持体1の表面に、中間層2と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層4と電荷発生物質を含有する電荷発生層3とがこの順で積層された逆二層型の積層型感光層5がこの順で形成されている。
図3の感光体は、導電性支持体1の表面に、中間層2と、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する単層型感光層5’がこの順で形成されている。
【0061】
[導電性支持体1]
導電性支持体は、感光体の電極としての役割を果たすとともに、他の各層の支持部材としても機能する。
導電性支持体の構成材料は、当該分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属および合金材料:ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、セルロース、ポリ乳酸などの高分子材料、硬質紙、ガラスなどからなる基体表面に金属箔をラミネートしたもの、金属材料または合金材料を蒸着したもの、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウム、カーボンブラックなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどが挙げられる。
【0062】
導電性支持体の形状としては、シート状、円筒状、円柱状、無端ベルト(シームレスベルト)状などが挙げられる。
導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
【0063】
乱反射処理は、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスにおいて本発明による感光体を用いる場合に特に有効である。すなわち、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体の表面で反射されたレーザ光と感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。そこで、導電性支持体の表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
【0064】
[中間層(「下引き層」ともいう)2]
中間層は、導電性支持体から単層型感光層または積層型感光層への電荷の注入を防止する機能を有する。すなわち、単層型感光層または積層型感光層の帯電性の低下が抑制され、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生するのが防止される。
【0065】
また、導電性支持体の表面を被覆する中間層は、導電性支持体の表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、単層型感光層または積層型感光層の成膜性を高め、導電性支持体と単層型感光層または積層型感光層との密着性(接着性)を向上させることができる。
【0066】
中間層は、例えば、前述の中間層用塗工液を導電性支持体上に形成された中間層表面に塗布し、得られた塗膜を硬化することにより得られる。
中間層用塗工液の塗布方法は、シートの場合にはベーカーアプリケーター法、バーコーター法(例えば、ワイヤーバーコーター法)、キャスティング法、スピンコート法、ロール法、ブレード法、ビード法、カーテン法など、ドラムの場合にはスプレー法、垂直リング法、浸漬塗工法などが挙げられる。
塗布方法は、塗工液の物性や生産性などを考慮して最適な方法を選択すればよく、浸漬塗布法、ブレードコーター法およびスプレー法が特に好ましい。
【0067】
浸漬塗布法は、塗工液を満たした塗工槽に導電性支持体1を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって導電性支持体1上に層を形成する方法である。この方法は比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、感光体を製造する場合に多く利用されている。なお、浸漬塗布法に用いる装置には、塗工液の分散性を安定させるために超音波発生装置に代表される塗工液分散装置を設けてもよい。
【0068】
塗膜の硬化は、ブロックイソシアネート化合物のブロック剤が外れて、ブロックイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂がイソシアネート化合物と付加反応を開始し、樹脂が架橋すればよく、熱硬化が好ましい。
熱硬化は、熱風乾燥炉および遠赤外線乾燥炉などの公知の装置を用いて行うことができ、その条件は、用いるブロックイソシアネート化合物や樹脂の種類、配合割合などにより適宜設定すればよく、通常、温度110〜150℃、好ましくは130〜150℃で、時間10分間〜1時間程度である。
【0069】
中間層の膜厚の膜厚は特に限定されないが、0.1〜20μmが好ましく、0.5〜10μmが特に好ましい。中間層の膜厚が0.1μm未満では、実質的に中間層として機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面性が得られず、導電性支持体からのキャリアの注入を防止することができなくなり、帯電性の低下が生じるおそれがある。一方、中間層の膜厚が20μmを超えると、均一な塗膜が形成し難くなり、感光体の感度が低下するおそれがある。
【0070】
本発明の感光体における中間層は、単層だけでなく、複数層であってもよい。
例えば、導電性の無機酸化物微粒子を含有する膜厚2〜20μmの第1中間層(導電層)と無機酸化物微粒子を含有しない膜厚0.2〜1μmの第2中間層(絶縁層)との組み合わせ、無機酸化物微粒子を含有しない膜厚0.2〜1μmの第1中間層(絶縁層またはブロックング層)と電性の無機酸化物微粒子を含有する膜厚3〜10μmの第2中間層(モアレ防止層)と組み合わせなどが挙げられる。
【0071】
[積層型感光層5]
積層型感光層5は、電荷発生層3と電荷輸送層4とからなる。このように電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることにより、各層を構成する最適な材料を独立して選択することができる。
以下の説明では、電荷発生層と電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層(図1)について説明するが、逆二層型の積層型感光層(図2)の場合には積層順が異なるだけで基本的に同様である。
【0072】
[電荷発生層3]
電荷発生層は、照射された光を吸収することにより電荷を発生する電荷発生能を有する電荷発生物質を主成分とし、任意に公知の添加剤およびバインダ樹脂(結合剤)を含有する。
【0073】
電荷発生物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、アゾ系顔料(カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有する、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料など)、ペリレン系顔料(ペリレンイミド、ペリレン酸無水物など)、多環キノン系顔料(キナクリドン、アントラキノン、ピレンキノンなど)、フタロシアニン系顔料(金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなど)、インジゴ系顔料(インジゴ、チオインジゴなど)、スクアリリウム色素、アズレニウム色素、チオピリリウム色素、ピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機顔料または染料、さらにセレン、非晶質シリコンなどの無機材料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの電荷発生物質の中でも、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ぺリレン系顔料は高感度を有することから特に好ましい。
【0074】
電荷発生層は、本発明の好ましい特性が損なわれない範囲内で、化学増感剤、光学増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散安定剤、増感剤、レベリング剤、可塑剤、無機化合物もしくは有機化合物の微粒子などから選ばれる1種または2種以上の公知の添加剤を適量含有していてもよい。これらの添加剤は、後述する電荷輸送層に含有されてもよく、電荷発生層および電荷輸送層の両方に含有されてもよい
【0075】
化学増感剤および光学増感剤は、感光体の感度を向上させ、繰返し使用による残留電位の上昇および疲労などを抑え、電気的耐久性を向上させる。
【0076】
化学増感剤としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物;テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類;アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物;ジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料およびこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどが挙げられる。
【0077】
光学増感剤としては、例えばキサンテン系色素、キノリン系顔料、銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料;エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料;メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料;カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料;シアニン染料;スチリル染料;ピリリウム塩染料およびチオピリリウム塩染料などが挙げられる。
【0078】
酸化防止剤は、長期にわたって感度安定性を維持させることができる。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:BHT)のようなヒンダードフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミンなどのアミン系酸化防止剤、ビタミンE、ハイドロキノン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄系化合物、有機燐系化合物などが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
酸化防止剤の添加量は、電荷発生物質100重量部に対して0.1〜40重量部が好ましく、0.5〜15重量部が特に好ましい。
酸化防止剤の添加量が0.1重量部未満であると、塗工液の安定性の向上および感光体の耐久性の向上に充分な効果が得られないおそれがある。また、酸化防止剤の添加量が40重量部を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0080】
レベリング剤および可塑剤は、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させることができる。
レベリング剤としては、例えばシリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
可塑剤としては、例えばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などが挙げられる。
【0081】
無機化合物または有機化合物の微粒子は、機械的強度を増強し、電気特性を向上させることができる。このような微粒子としては、例えば、後述する中間層において例示する微粒子が挙げられる。
【0082】
電荷発生層は、公知の乾式法および湿式法により形成することができる。
乾式法としては、例えば、電荷発生物質を導電性支持体の表面に真空蒸着する方法が挙げられる。
湿式法としては、例えば、電荷発生物質、必要に応じて添加剤およびバインダ樹脂を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷発生層形成用塗工液を調製し、この塗工液を導電性支持体上に形成された中間層表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去する方法が挙げられる。
【0083】
バインダ樹脂は、電荷発生層の機械的強度や耐久性、層間の結着性などを向上させることができ、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用できる。
具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリフェニレンオキサイドなどの熱可塑性樹脂;フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどの熱硬化性樹脂、これらの樹脂の部分架橋物、これらの樹脂に含まれる構成単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂)などが挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
【0084】
電荷発生物質とバインダ樹脂との配合比は特に限定されないが、通常、電荷発生物質が10〜99重量%程度である。
電荷発生物質が10重量%未満であると、感光体の感度が低下するおそれがある。
一方、電荷発生物質が99重量%を超えると、電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大することがある。そのため、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが多くなるおそれがある。
【0085】
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロプロパンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類;安息香酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶剤;ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられ、これらは単独または混合溶剤として使用できる。また、このような溶剤に、アルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンを加えた混合溶剤を使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
【0086】
構成物質を樹脂溶液に溶解または分散させるに先立ち、電荷発生物質を予備粉砕してもよい。
予備粉砕は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機などの一般的な粉砕機を用いて行うことができる。
構成物質の樹脂溶液への溶解または分散は、例えば、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミルなどの一般的な分散機を用いて行うことができる。このとき、容器および分散機を構成する部材から摩耗などによって不純物が発生し、塗工液中に混入しないように、分散条件を適宜設定するのが好ましい。
【0087】
電荷発生層形成用塗工液の塗布方法は、シートの場合にはベーカーアプリケーター法、バーコーター法、キャスティング法、スピンコート法、ロール法、ブレード法など、ドラムの場合にはスプレー法、垂直リング法、浸漬塗工法などが挙げられる。
【0088】
塗膜の乾燥工程における温度は、使用した有機溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50〜140℃が適当であり、80〜130℃が特に好ましい。
乾燥温度が50℃未満では、乾燥時間が長くなることがある。また、乾燥温度が140℃を超えると、感光体の繰返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化するおそれがある。
【0089】
電荷発生層の膜厚は特に限定されないが、0.05〜5μmが好ましく、0.1〜1μmが特に好ましい。電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感度が低下するおそれがある。一方、電荷発生層の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷輸送が感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感度が低下するおそれがある。
【0090】
[電荷輸送層4]
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受け入れ、それを輸送する能力を有する電荷輸送物質と、バインダ樹脂(結合剤)とを主成分として含有する。
【0091】
電荷輸送物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質;
【0092】
フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質
が挙げられる。これらの電荷輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
電荷輸送物質の重量Eとバインダ樹脂の重量Bとの比率E/Bは、10/12〜10/25、好ましくは10/16〜10/20である。
比率E/Bが10/25未満であると、電荷輸送物質に対するバインダ樹脂の相対量比が高くなり、十分な感度が得られないおそれがある。
一方、比率E/Bが10/12を超えると、電荷輸送層の耐刷性や感光体の耐久性が低下するおそれがある。
【0094】
バインダ樹脂は、電荷発生層に含まれるものと同様のバインダ樹脂の1種または2種以上を使用できる。
これらの樹脂の中でも、ポリカーボネートを主成分とする樹脂、ポリアリレート樹脂およびポリスチレン樹脂は、光化学的に安定で、電荷輸送物質との相溶性に優れ、さらに体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性などにも優れるので好ましい。
【0095】
電荷輸送層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で必要に応じて、電荷発生層に含まれるものと同様の添加剤を適量含有していてもよい。
【0096】
電荷輸送層は、電荷輸送物質、バインダ樹脂および必要に応じて他の添加剤を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷輸送層形成用塗工液を調製し、この塗工液を電荷発生層の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。より具体的には、例えば、バインダ樹脂を有機溶剤に溶解してなる樹脂溶液に電荷輸送物質および必要に応じて他の添加剤を溶解または分散させることにより、電荷輸送層形成用塗工液を調製する。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層の形成に準ずる。
【0097】
電荷輸送層の膜厚は特に限定されないが、10〜60μmが好ましく、10〜40μmが特に好ましい。電荷輸送層の膜厚が10μm未満であると、帯電保持能が低下するおそれがあり、逆に電荷輸送層の膜厚が60μmを超えると、鮮鋭性の低下や残留電位の上昇が発生し、著しく画像劣化が生じるおそれがある。
【0098】
[単層型感光層5’]
単層型感光層は、電荷発生物質と、電荷輸送物質と、バインダ樹脂(結合剤)とを主成分として含有する。
単層型感光層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で必要に応じて、電荷発生層に含まれるものと同様の添加剤を適量含有していてもよい。
【0099】
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質および必要に応じて他の添加剤を適当な有機溶剤に溶解および/または分散して単層型感光層形成用塗工液を調製し、この塗工液を導電性支持体上に形成された中間層の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層および電荷輸送層の形成に準ずる。
【0100】
単層型感光層の膜厚特に限定されないが、10〜100μmが好ましく、15〜50μmが特に好ましい。単層型感光層の膜厚が10μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがあり、単層型感光層の膜厚が100μmを超えると、生産性が低下するおそれがある。
【0101】
[保護層(図示せず)]
本発明の感光体は、積層型感光層5および単層型感光層5’の表面に保護層(図示せず)を有していてもよい。
保護層は、感光層の摩耗性の改善やオゾン、窒素酸化物などによる化学的悪影響の防止の機能を有する。
【0102】
保護層は、例えば、適当な有機溶剤にバインダ樹脂、必要に応じて酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤を溶解または分散させて保護層形成用塗工液を調製し、この保護層形成用塗工液を単層型感光層または積層型感光層の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層の形成に準ずる。
【0103】
保護層の膜厚は特に制限されないが、0.5〜10μmが好ましく、1〜5μmが特に好ましい。表面保護層5の膜厚が0.5μm未満では、感光体表面の耐擦過性が劣り、耐久性が不十分になるおそれがあり、逆に10μmを超えると、感光体の解像度が低下するおそれがある。
【0104】
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、前記感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0105】
図面を用いて本発明の画像形成装置について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
図4は、本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
図4の画像形成装置20は、本発明の感光体21(例えば、図1〜3の感光体のいずれか1つ)と、帯電手段(帯電器)24と、露光手段28と、現像手段(現像器)25と、転写手段(転写器)26と、クリーニング手段(クリーナ)27と、定着手段(定着器)31と、除電手段(図示せず、クリーニング手段27に併設される)を含んで構成される。図番30は記録媒体としての転写紙(「記録紙」ともいう)を示す。
【0106】
感光体21は、図示しない画像形成装置20本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線22回りに矢符23方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体21の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体21を所定の周速度で回転駆動させる。帯電器24、露光手段28、現像器25、転写器26およびクリーナ27は、この順序で、感光体21の外周面に沿って、矢符23で示される感光体21の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
【0107】
帯電器24は、感光体21の外周面を所定の電位に帯電させる帯電手段である。具体的には、例えば帯電器24は、接触式の帯電ローラ24aや帯電ブラシあるいはコロトロンやスコロトロンなどのチャージャーワイヤによって実現される。図番24bはバイアス電源を示す。
【0108】
露光手段28は、例えば半導体レーザなどを光源として備え、光源から出力されるレーザビームなどの光28aを、感光体21の帯電器24と現像器25との間に照射することによって、帯電された感光体21の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光28aは、主走査方向である感光体21の回転軸線22の延びる方向に繰返し走査され、これに伴って感光体21の表面に静電潜像が順次形成される。
【0109】
現像器25は、露光によって感光体21の表面に形成される静電潜像を、現像剤によって現像する現像手段であり、感光体21を臨んで設けられ、感光体21の外周面にトナーを供給する現像ローラ25aと、現像ローラ25aを感光体21の回転軸線22と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング25bとを備える。
【0110】
転写器26は、現像によって感光体21の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符29方向から感光体21と転写器26との間に供給される記録媒体である転写紙30上に転写させる転写手段である。転写器26は、例えば、帯電手段を備え、転写紙30にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙30上に転写させる非接触式の転写手段である。
【0111】
クリーナ27は、転写器26による転写動作後に感光体21の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体21の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード27aと、クリーニングブレード27aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング27bとを備える。また、このクリーナ27は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
【0112】
また、画像形成装置20には、感光体21と転写器26との間を通過した転写紙30が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器31が設けられる。定着器31は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ31aと、加熱ローラ31aに対向して設けられ、加熱ローラ31aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ31bとを備える。
【0113】
この画像形成装置20による画像形成動作は、次のようにして行われる。まず、感光体21が駆動手段によって矢符23方向に回転駆動されると、露光手段28による光28aの結像点よりも感光体21の回転方向上流側に設けられる帯電器24によって、感光体21の表面が正または負の所定電位に均一に帯電される。
【0114】
次いで、露光手段28から、感光体21の表面に対して画像情報に応じた光28aが照射される。感光体21は、この露光によって、光28aが照射された部分の表面電荷が除去され、光28aが照射された部分の表面電位と光28aが照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
【0115】
次いで、露光手段28による光28aの結像点よりも感光体21の回転方向下流側に設けられる現像器25から、静電潜像の形成された感光体21の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0116】
感光体21に対する露光と同期して、感光体21と転写器26との間に、転写紙30が供給される。転写器26によって、供給された転写紙30にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体21の表面に形成されたトナー像が、転写紙30上に転写される。
【0117】
次いで、トナー像の転写された転写紙30は、搬送手段によって定着器31に搬送され、定着器31の加熱ローラ31aと加圧ローラ31bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙30に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙30は、搬送手段によって画像形成装置20の外部へ排紙される。
【0118】
一方、転写器26によるトナー像の転写後も感光体21の表面上に残留するトナーは、クリーナ27によって感光体21の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体21の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体21の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体21はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰り返されて連続的に画像が形成される。
【0119】
上記のように、本発明の画像形成方法は、本発明の感光体を帯電させる帯電工程と、帯電された前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光工程と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着工程と、前記感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング工程と、前記感光体に残留する表面電荷を除電する除電工程を含むことを特徴とする。
【実施例】
【0120】
以下に実施例および比較例ならびに製造例および比較製造例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例および製造例により本発明が限定されるものではない。
【0121】
(製造例1)
濃度200g/Lの四塩化チタン水溶液(大阪チタニウムテクノロジーズ株式会社製)を温度30℃に保持しながら、水酸化ナトリウム水溶液(濃度200g/L)で中和してコロイド状の非晶質水酸化チタンを析出させた。得られたコロイド状の非晶質水酸化チタンを温度70℃で5時間熟成し、その後、温度120℃で2時間乾燥して微粒子含水二酸化チタンを得た。
次いで、得られた微粒子含水二酸化チタンをTiO2として4重量部、塩化ナトリウム4重量部およびリン酸水素ナトリウム(Na2HPO4・2H2O)1重量部を均一に混合して磁製のルツボに入れ、温度900℃に設定した電気炉で5時間焼成した。得られた焼成物を水中に投入して1時間煮沸した後、ろ過、水洗して可溶性塩類を除去し、針状酸化チタン微粒子を得た。
【0122】
(アルカリ処理)
得られた針状酸化チタン微粒子をアルカリ処理に付した。
すなわち、針状酸化チタンを水中に投入して、濃度200g/L程度の懸濁液を得、水酸化ナトリウム水溶液(濃度200g/L)を添加して、懸濁液のpHを13に調整した。次いで、懸濁液を温度90℃に加熱して2時間攪拌し、さらに塩酸水溶液(濃度100g/L)を添加して、懸濁液のpHを7に調整した。その後、懸濁液を濾過し、濾液の比抵抗値が50μSになるまで濾過ケーキを水洗した。
【0123】
(酸処理)
次いで、得られた針状酸化チタン微粒子の濾過ケーキを酸処理に付した。
すなわち、濾過ケーキを再び水中に投入して、濃度200g/L程度の懸濁液を得、塩酸水溶液(濃度100g/L)を添加して、懸濁液のpHを1に調整した。次いで、懸濁液を温度90℃に加熱して2時間攪拌した。その後、懸濁液を濾過し、濾液の比抵抗値が50μSになるまで濾過ケーキを水洗した。
次いで、得られた濾過ケーキを温度120℃で一昼夜乾燥し、温度600℃に設定した電気炉で1時間焼成して、短軸長0.01μm、長軸長2.5μm、平均アスペクト比250の針状酸化チタン微粒子A(微粒子A)100gを得た。
【0124】
(比較製造例1)
濃度200g/Lの硫酸チタン溶液を温度30℃に加熱して、硫酸チタンを熱加水分解させ、生成した二酸化チタン水和物を濾過した。得られた二酸化チタン水和物の濾過ケーキを水洗浄し、これにアンモニア水(濃度200g/L)を添加して含有硫酸分を中和して、懸濁液のpHを7に調整した。得られた水和物の懸濁液を濾過し、水和物中のH2SO4含有量が0.5重量%以下になるまで濾過ケーキを水洗した。得られた濾過ケーキを温度70℃で5時間、その後温度120℃で2時間乾燥して微粒子含水二酸化チタンを得た。
次いで、得られた微粒子含水二酸化チタンに対し、その含有チタン分のTiO2換算量基準でZnOを1.2重量%、K2Oを0.55重量%及びP25を0.5重量%添加したのち、900℃で3時間焼成した。その後焼成物を水中に投入して1時間煮沸した後濾過、洗浄して可溶性塩類を除去した。このようにして針状酸化チタン微粒子を得た。
次いで、製造例1と同様にして、得られた針状酸化チタン微粒子をアルカリ処理および酸処理に付し、得られた濾過ケーキを温度120℃で一昼夜乾燥し、温度600℃に設定した電気炉で1時間焼成して、短軸長0.3μm、長軸長11μm、平均アスペクト比37の針状酸化チタン微粒子B(微粒子B)100gを得た。
【0125】
(実施例1)
導電性支持体として、直径30mm×長さ300mm×厚さ0.8mmのアルミニウム製の円筒型導電性支持体を用いて、図1の感光体を作製した。
まず、水性ポリオールのポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3)6.3重量部と、ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248)9.6重量部と、針状酸化チタン(短軸長0.13μm、長軸長1.68μm、平均アスペクト比13、石原産業株式会社製、製品名:FTL−100)12重量部と、消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777)0.02重量部を、水72重量部に加え、ペイントシェーカを用いて6時間分散処理して中間層用塗工液(全量1kg)を調製した。
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
得られた中間層形成用塗工液を塗布槽に満たし、導電性支持体を浸漬した後引き上げ、得られた塗膜を温度150℃で30分間乾燥・硬化させて、膜厚1.0μmの中間層を形成した。
【0126】
次いで、電荷発生物質としての、Y型オキソチタニウムフタロシアニン(山陽色素株式会社製)2重量部と、バインダ樹脂としての、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製、製品名:エスレックB BM−S)1重量部と、有機溶剤としての、メチルエチルケトン97重量部とを混合し、ペイントシェーカを用いて分散処理して電荷発生層用塗工液(全量1kg)を調製した。この電荷発生層用塗工液を、中間層と同様の浸漬塗布法で、先に形成した中間層上に塗布し、自然乾燥して膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
【0127】
次いで、電荷輸送物質としての、下記構造式(1)で示されるトリフェニルアミン-ブタジエン誘導体10重量部と、バインダ樹脂としての、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、製品名:ユーピロンZ400)18重量部と、酸化防止剤としての、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.5重量部と、レベリング剤としての、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、製品名:KF−96)0.004重量部とを、有機溶剤としての、テトラヒドロフラン(THF)110重量部に溶解させて、電荷輸送層用塗工液(全量1kg)を調製した。この電荷輸送層用塗工液を、中間層と同様の浸漬塗布法で、先に形成した電荷発生層上に塗布し、温度130℃で1時間乾燥して膜厚23μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして、実施例1の感光体を作製した。
【0128】
【化1】

【0129】
(実施例2)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子(短軸長0.01μm、長軸長0.05μm、平均アスペクト比5、表面未処理、堺化学工業株式会社製、製品名:STR−60N):14重量部
樹脂としての、ポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3)4.7重量部、
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248)7.2重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:74重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して7/3の重量比(P/R)であった。
【0130】
(実施例3)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子(短軸長0.27μm、長軸長5.15μm、平均アスペクト比19、石原産業株式会社製、製品名:FTL−300):10重量部
樹脂としての、ポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):7.8重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):12重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:70重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して5/5の重量比(P/R)であった。
【0131】
(実施例4)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の感光体を作製した。
製造例1で作製した針状酸化チタン微粒子A(短軸長0.01μm、長軸長2.5μm、平均アスペクト比250):6重量部
樹脂としての、ポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3:11重量部
ブロックイソシアネート化合物((固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):16.9重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:66重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して3/7の重量比(P/R)であった。
【0132】
(実施例5)
導電性支持体として、直径30mm×長さ300mm×厚さ0.8mmのアルミニウム製の円筒型導電性支持体を用いて、図1の感光体を作製した。
まず、ポリエーテルポリオール(固形分:35%、OH価:60、日本ポリウレタン工業株式会社製、製品名:AQD−473)14.3重量部と、ブロックイソシアネート化合物(固形分:42%、NCO含有率:7.5%、日本ポリウレタン工業株式会社製、開発品名:BWD−102)7.1重量部と、針状酸化チタン微粒子(短軸長0.21μm、長軸長2.86μm、平均アスペクト比14、石原産業株式会社製、製品名:FTL−200)12重量部と、消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー470)0.5重量部を、水67重量部に加え、ペイントシェーカを用いて6時間分散処理して中間層用塗工液(全量1kg)を調製した。
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
得られた中間層形成用塗工液を塗布槽に満たし、導電性支持体を浸漬した後引き上げ、得られた塗膜を温度150℃で30分間乾燥・硬化させて、膜厚1.0μmの中間層を形成した。
次いで、実施例1と同様にして、電荷発生層および電荷輸送層を形成して、実施例5の感光体を作製した。
【0133】
(実施例6)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子(短軸長0.01μm、長軸長0.05μm、平均アスペクト比5、表面未処理、堺化学工業株式会社製、製品名:STR−60N):12重量部
樹脂としての、水性ポリアクリルポリオール(固形分:45%、OH価:80、DIC株式会社製、製品名:バーノックWE−300):8.4重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:40%、NCO含有率:5.4%、三井化学ポリウレタン株式会社製、製品名:タケネートWB−920):10.5重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:69重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
【0134】
(実施例7)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例7の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子(短軸長0.21μm、長軸長2.86μm、平均アスペクト比14、石原産業株式会社製、製品名:FTL−200):12重量部
樹脂としての、水溶性セルロース(OH価:360、信越化学工業株式会社製、製品名:メトローズ65SH−50):0.9重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:37.5%、NCO含有率:3.7%、住化バイエルウレタン株式会社製、製品名:バイヒジュールVPLS2310):18.8重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:68重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
【0135】
(実施例8)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子(短軸長0.01μm、長軸長0.1μm、平均アスペクト比10、テイカ株式会社製、製品名:MT−150A):12重量部
樹脂としての、水溶性ナイロン(固形分:20%、NH含有率:10%、ナガセケムテックス株式会社製、製品名:トレジンFS−350):6.0重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:39.5%、NCO含有率:4.4%、住化バイエルウレタン株式会社製、開発品名:BL−5140):17.2重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:65重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
【0136】
(実施例9)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例9の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子(短軸長0.01μm、長軸長0.02μm、平均アスペクト比2、テイカ株式会社製、製品名:MT100S):12重量部
樹脂としての、ポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:960、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−1):2.3重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:4.3%、旭旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1458):10.8重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:75重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
【0137】
(実施例10)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例10の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子針状酸化チタン(短軸長0.13μm、長軸長1.68μm、平均アスペクト比13、石原産業株式会社製、製品名:FTL−100):8重量部
樹脂としての、水性ポリオールのポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):9.4重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):14.5重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:68重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して4/6の重量比(P/R)であった。
【0138】
(実施例11)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例11の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子針状酸化チタン(短軸長0.13μm、長軸長1.68μm、平均アスペクト比13、石原産業株式会社製、製品名:FTL−100):16重量部
樹脂としての、水性ポリオールのポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):3.1重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):4.8重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:76重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して8/2の重量比(P/R)であった。
【0139】
(実施例12)
中間層の膜厚を5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例12の感光体を作製した。
【0140】
(実施例13)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例13の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子針状酸化チタン(短軸長0.13μm、長軸長1.68μm、平均アスペクト比13、石原産業株式会社製、製品名:FTL−100):12重量部
樹脂としての、水性ポリオールのポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):9.5重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):8.7重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:70重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して0.6のモル比で、針状酸化チタン微粒(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
【0141】
(実施例14)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例14の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子針状酸化チタン(短軸長0.13μm、長軸長1.68μm、平均アスペクト比13、石原産業株式会社製、製品名:FTL−100):12重量部
樹脂としての、水性ポリオールのポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):5重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):10重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:73重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.3のモル比で、針状酸化チタン微粒(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
【0142】
(実施例15)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例15の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子針状酸化チタン(短軸長0.13μm、長軸長1.68μm、平均アスペクト比13、石原産業株式会社製、製品名:FTL−100):12重量部
樹脂としての、水性ポリオールのポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):13重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):7.8重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:68重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して0.4のモル比で、針状酸化チタン微粒(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
【0143】
(実施例16)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例16の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子針状酸化チタン(短軸長0.13μm、長軸長1.68μm、平均アスペクト比13、石原産業株式会社製、製品名:FTL−100):12重量部
樹脂としての、水性ポリオールのポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):4.1重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):10.2重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:74重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.6のモル比で、針状酸化チタン微粒(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して6/4の重量比(P/R)であった。
【0144】
(比較例1)
中間層用塗工液(水系、硬化なし)を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子(短軸長0.13μm、長軸長1.68μm、平均アスペクト比13、石原産業株式会社製、製品名:FTL−100):6重量部
樹脂としての、ポリビニルアセタール(固形分:20%、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):20重量部
水:64重量部
【0145】
(比較例2)
中間層用塗工液(有機溶剤系、硬化なし)を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子(短軸長0.13μm、長軸長1.68μm、平均アスペクト比13、石原産業株式会社製、製品名:FTL−100):6重量部
樹脂としての、共重合ナイロン(東レ株式会社製、製品名:アミランCM8000):4重量部
【0146】
(比較例3)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子粒状酸化チタン微粒子(平均一次粒径:250nm、石原産業株式会社製、製品名:CR−EL):16重量部
樹脂としての、水性ポリオールのポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):3.1重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):4.8重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:76重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して8/2の重量比(P/R)であった。
【0147】
(比較例4)
中間層用塗工液を下記成分で調製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例4の感光体を作製した。
針状酸化チタン微粒子(短軸長0.05〜0.1μm、長軸長3〜6μm、平均アスペクト比30〜120、石原産業株式会社製、製品名:FTL−100):4重量部
樹脂としての、水性ポリオールのポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):13重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):19重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:64重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して2/8の重量比(P/R)であった。
【0148】
(比較例5)
下記成分を用いたこと以外は、実施例1と同様にして中間層用塗工液を調製したが、分散して間もなく酸化チタンが沈降を開始し、感光体を作製することができなかった。
針状酸化チタン微粒子(短軸長0.05〜0.1μm、長軸長3〜6μm、平均アスペクト比30〜120、石原産業株式会社製、製品名:FTL−100):19重量部
樹脂としての、水性ポリオールのポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):0.78重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):1.2重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:79重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して9.5/0.5の重量比(P/R)であった。
【0149】
(比較例6)
下記成分を用いたこと以外は、実施例1と同様にして中間層用塗工液を調製したが、分散して間もなく酸化チタンが沈降を開始し、感光体を作製することができなかった。
比較製造例1で作製した針状酸化チタン微粒子B(短軸長0.3μm、長軸長11μm、平均アスペクト比37):8重量部
樹脂としての、水性ポリオールのポリビニルアセタール(固形分:20%、OH価:570、積水化学工業株式会社製、製品名:KW−3):9.4重量部
ブロックイソシアネート化合物(固形分:70%、NCO含有率:7.9%、旭化成ケミカルズ株式会社製、開発品名:X1248):14.5重量部
消泡剤(ポリエーテル系抑泡剤、サンノプコ株式会社製、製品名:SNデフォーマー777):0.02重量部
水:68重量部
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基は、樹脂の活性水素含有基に対して1.0のモル比で、針状酸化チタン微粒子(P)は、架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂の合計:R)に対して40/60の重量比(P/R)であった。
実施例8〜23および比較例6〜11において用いた材料および重量比P/Rを表1に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
(評価)
(1)感光体の電気特性および環境安定性
実施例1〜16および比較例1〜4において得られた感光体を、画像形成工程における現像部での感光体の表面電位を測定できるように現像器の代わりに表面電位計(トレック・ジャパン株式会社製、型式:model344)を設けた、試験用デジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:AR−625S)にそれぞれ搭載し、各感光体の電気特性および環境安定性を評価した。
まず、帯電性を見るために、温度5℃、相対湿度10%の低温/低湿(L/L)環境下において、露光プロセスを除いた暗中で露光を行った時の黒地部分の表面電位VL(V)を、1枚目および1000枚目のコピー直後について測定し、それらの差を電位変動ΔVL1-1000(V)として求めた。併せて、L/L環境下で1枚目、1000枚目のコピー直後に画像濃度評価も行った。また、同様にして温度25℃、相対湿度5%の常温/低湿(N/L)環境下および温度25℃、相対湿度35%の常温/高湿(N/H)環境下において、1枚目のコピー直後の表面電位VL(V)を測定し、両環境のVLの差を電位変動ΔVL(V)として求めた。この電位変動ΔVLが小さい程、環境安定性(環境特性)に優れると評価できる。
得られた結果を表2に示す。
【0152】
(2)ポットライフ(3ヶ月放置後塗工液のVL変動)
実施例1〜16および比較例1〜4において調製した中間層用塗工液を常温常湿(温度20℃、湿度50%)環境下で3ヶ月間保存した後、同様にして感光体を作成し、得られた感光体について、L/L環境下での1枚目のコピー直後の表面電位VL(V)を測定し、上記(1)の1枚目のコピー直後の表面電位VL(V)の値との差を、ポットライフの指標となる電位変動ΔVLP(V)として求めた。
得られた結果を表2に示す。
【0153】
(3)中間層の硬化度
実施例1〜16および比較例1〜4において調製した中間層用塗工液0.5gを、それぞれ寸法50mm×50mm×厚さ1.5mmのガラス板の表面に、ワイヤーバー法により均一に塗布し、得られた塗膜を温度150℃で30分間乾燥・硬化させてサンプルを得た。
得られたサンプルを、それぞれ温度20℃のアセトン中に回転数30rpmで攪拌しながら1日間浸漬し、下式により浸漬前の初期重量と浸漬後重量との重量差から硬化度(%)を求めた。
硬化度(%)=(1−(初期重量−浸漬後重量)/(初期重量))×100
また、(2)ポットライフ検討で作成した3ヶ月間保存した中間層用塗工液も上記と同様にサンプルを作成し、硬化度(%)を求めた。
得られた結果を表2に示す。
【0154】
(4)画像濃度
実施例1〜16および比較例1〜4において得られた感光体について、L/L環境下で1枚目、1000枚目のコピー直後における黒ベタ画像の反射濃度を、マクベス反射濃度計(サカタインクス株式会社製、型式:Machbes RD918)を用いて測定し、下記の基準で画像濃度を判定した。
(評価基準)
◎:1枚目と1000枚目の画像濃度の差が0.3以下で良好
○:1枚目と1000枚目の画像濃度の差が0.3以上0.6未満で、実用上問題なし
×:1枚目と1000枚目の画像濃度の差が0.6以上で実使用不可
得られた結果を表2に示す。
なお、比較例5および6では、中間層用塗工液中の酸化チタン微粒子が沈降し、それを用いた感光体が作製できなかったことから、上記(1)〜(4)について評価しなかった。
【0155】
【表2】

【0156】
表2の結果から次のことがわかる。
(1)本発明の感光体(実施例1〜16)は、中間層用塗工液の溶剤として水を用いているにもかかわらず、現在の感光体で多く用いられているポリアミド系のバインダ樹脂を用いた有機溶剤系の感光体(比較例2)と比較して、電気特性、環境安定性、疲労特性、塗液安定性(ポットライフ)および画像特性の全てにおいて同等以上の性能を有している。
【0157】
(2)針状酸化チタン微粒子を含有する中間層を有する本発明の感光体(実施例1)は、粒状酸化チタン微粒子を含有する中間層を有する感光体(比較例3)より、L/L環境下での連続印字における感度変化が小さい。これは、針状酸化チタン微粒子がその細長い形状のために、粒状酸化チタン微粒子よりも連続印字における感度変化の抑制効果が大きいためと考えられる。また、針状酸化チタン微粒子を含有する中間層用塗工液は、粒状酸化チタン微粒子を含有する中間層用塗工液よりも、P/Rが低くても十分な感度が得られるため、P/Rが低い分、塗液安定性が良好である。
【0158】
(3)針状酸化チタン微粒子が架橋樹脂(ブロックイソシアネート化合物および樹脂)と針状酸化チタン微粒子との合計量に対して30〜90重量%である本発明の感光体(実施例1〜14)は、良好なL/L環境下での連続印字における感度および良好な中間層用塗工液の塗液安定性が得られる。一方、針状酸化チタン微粒子の配合割合が30重量%未満の場合(比較例4)には、L/L環境下での連続印字における感度の悪化が著しくなり、画像濃度も悪化する。90重量%以上の場合(比較例5)には、中間層用塗工液の保存安定性が悪化し、酸化チタンが沈降してしまう。
【0159】
(4)樹脂に対するブロックイソシアネート化合物の量が0.5のモル比より少ない場合、すなわち樹脂中のOH基に対するNCO基が少ない場合(実施例13)には、硬化度が低下し、中間層の膜中のOH基(親水基)の割合が高くなり、感光体の環境安定性が低下する。
一方、樹脂に対するブロックイソシアネート化合物の量が1.5のモル比より多い場合、すなわち樹脂中のOH基に対するNCO基が多い場合には、環境特性はそれほど低下しないが、疲労特性が低下する(モル比1.6の実施例16参照)。これは、過剰に存在するイソシアネート基が水分と反応し電気特性に影響を及ぼすような不純物が生成したためと考えられる。
【0160】
(5)硬化しない水系バインダ樹脂を含有する中間層用塗工液を用いた感光体(比較例2)は、環境特性が極めて悪化する。
【符号の説明】
【0161】
1 導電性支持体
2 中間層(下引き層)
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 積層型感光層
5’ 単層型感光層
【0162】
20 画像形成装置
22 回転軸線
23、29 矢符
24 帯電手段(帯電器)
24a 帯電ローラ
24b バイアス電源
25 現像手段(現像器)
25a 現像ローラ
25b ケーシング
26 転写手段(転写器)
27 クリーニング手段(クリーナ)
27a クリーニングブレード
27b 回収用ケーシング
28 露光手段
28a 光
30 記録媒体(転写紙または記録紙)
31 定着手段(定着器)
31a 加熱ローラ
31b 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックイソシアネート化合物と、前記ブロックイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2つ以上有する樹脂と、針状酸化チタン微粒子と、水性媒体とを含み、
前記針状酸化チタン微粒子が、前記ブロックイソシアネート化合物、前記樹脂および前記針状酸化チタン微粒子の合計量に対して30〜90重量%の割合で含有され、
前記針状酸化チタン微粒子が、0.5μm以下の短軸長、10μm以下の長軸長および1.5以上300以下の平均アスペクト比を有する
ことを特徴とする有機感光層を有する電子写真感光体の中間層用塗工液。
【請求項2】
前記針状酸化チタン微粒子が、0.2μm以下の短軸長、5μm以下の長軸長および2以上20以下の平均アスペクト比を有する請求項1に記載の中間層用塗工液。
【請求項3】
前記活性水素含有基が、水酸基またはアミド基である請求項1または2に記載の中間層用塗工液。
【請求項4】
前記ブロックイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートをオキシム系またはラクタム系のブロック剤でブロック化した構造を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の中間層用塗工液。
【請求項5】
前記樹脂が、ポリエーテルポリオール系樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂、ポリアクリルポリオール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロースおよびポリアミド系樹脂から選択される請求項1〜4のいずれか1つに記載の中間層用塗工液。
【請求項6】
前記ブロックイソシアネート化合物が、前記樹脂中の前記活性水素含有基に対して0.5以上1.5以下のモル比で前記イソシアネート基を有する割合で含有される請求項1〜5のいずれか1つに記載の中間層用塗工液。
【請求項7】
導電性支持体上に、少なくとも中間層と有機感光層とがこの順で積層されてなり、
前記中間層が、請求項1〜6のいずれか1つに記載の中間層用塗工液から熱硬化を経て形成された層であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項8】
請求項7に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7に記載の電子写真感光体を帯電させる帯電工程と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光工程と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着工程と、前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング工程と、前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電工程を含むことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−170083(P2010−170083A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227541(P2009−227541)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】