説明

有機排水の処理方法

【課題】有機排水を浄化処理する際に、オゾンガスの注入量を減らしてランニングコストを抑制する。
【解決手段】オゾンガスの注入量に対するBODの変化量が減少して所定の目標値に達するまで有機排水にオゾンガスを注入する。処理された有機排水を好気的条件下で生物処理する。これら一連の処理を繰り返し行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン処理と生物処理とを組み合わせた有機排水の浄化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の有機排水の処理方法については、各種提案されている(特許文献1〜3等)。例えば、特許文献1には、オゾン処理した後、嫌気的条件と好気的条件の下で生物処理し、最後に過酸化水素の存在下でオゾン処理する方法が開示されている。また、特許文献2には、生物処理した後にコンパクトなオゾン処理を行って生物処理に有利な低分子の有機物を増加させ、その後更に生物処理を行う3段の排水処理方法が開示されている。
【0003】
特許文献3には、オゾン処理と生物処理との間に紫外線照射を行うことが開示されている。紫外線の照射によってオゾンの酸化が促進され、オゾンが残ることなく酸素に分解されるので、後段の生物処理を効率よく行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−96286号公報
【特許文献2】特開2001−191093号公報
【特許文献3】特開平11−33592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オゾンには強力な有機物の分解能力があるため、オゾン処理は有機排水の処理に関して極めて有効な手段となっている。しかし、オゾン処理の場合、多量のオゾンガスを生成する必要があるため、生物処理等に比べてランニングコストが高くつくことが大きな障害となっている。
【0006】
上述したように、経済性を考慮して、オゾン処理と生物処理等とを組み合わせた様々な処理方法が提案されてはいるが、ランニングコストの観点から見ると未だ不十分である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、処理全体で用いられるオゾン量をよりいっそう減らすことができ、ランニングコストを効果的に抑制できる有機排水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、所定の条件の下でオゾン処理と生物処理とを繰り返し行うようにした。
【0009】
具体的には、本発明の有機排水の処理方法は、オゾンガスの注入量に対するBODの変化量が所定の目標値に達するまで有機排水にオゾンガスを注入する前処理工程と、前記前処理工程で処理された前記有機排水を好気的条件下で生物処理する本処理工程と、を含み、前記前処理工程及び前記本処理工程を繰り返し行うことを内容としている。
【0010】
なお、ここでいう有機排水とは、少なくとも有機物の汚れを含む排水を意味し、本方法では、その有機物の汚れを浄化することを目的としている。特に生物処理では処理が難しく十分に浄化できない有機排水に好適であり、その一例としては、例えば、ゴミ浸出水や工場排水などがある。浄化とは、例えば、有機排水のCOD(化学的酸素要求量)が所定値以下に達するまで低下させることをいう。BODとは、生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand)である。生物処理とは、微生物による有機物の分解作用を利用して有機排水中の有機物を除去する処理である。
【0011】
この処理方法によれば、まず、前処理工程で有機排水にオゾンガスを注入することで、有機排水中に含まれる有機物を生物処理で分解し易い形態に変化させ、その有機物(易分解有機物)量を増やすことができる。その易分解有機物の増加はBODの増加と相関が認められるため、BODを測定することで易分解有機物の生成効率を評価することができる。
【0012】
さらに、オゾンガスの注入量を増やすと、経時的に易分解有機物の生成効率は低下する。すなわち、易分解有機物量が増加する反面、オゾンが易分解有機物を分解する量も増加するため、易分解有機物量は頭打ちになり、その後は減少傾向に転じる。そこで、易分解有機物の生成効率が大幅に低下する前にオゾンガスの注入を終了させる。換言すれば、オゾンの注入による易分解有機物の生成が効率よく行われている段階でオゾンガスの注入を終了させる。
【0013】
この処理方法では、オゾンの注入は繰り返し行うことを前提としているので、例えば、最初のオゾン処理を途中で終了させても、以降のオゾン処理で補完できる。従って、オゾンガスの注入は、易分解有機物の生成効率等が大幅に低下する前であれば、特に厳密な時間管理を要さずに終了させることができる。
【0014】
そうすることで、注入するオゾンガスをほとんど無駄なく有機排水に作用させることができ、結果としてランニングコストを抑制することができる。オゾンガスの易分解有機物の生成効率の低下に伴い、オゾンガスの注入量に対するBODの変化量も減少するので、目標値はそのBODの変化量を利用して設定すればよい。
【0015】
前処理工程によって有機排水中の酸素や易分解有機物の濃度が増加するため、続いて好気的条件の下で生物処理を行うことで、生物処理を促進させることができる。なお、生物処理は、オゾン処理に比べてランニングコストは低額であるので、必要に応じてその処理方法や処理時間を選択すればよい。
【0016】
本処理工程で有機排水の浄化が進むと易分解有機物量が減少するので、再度、前処理工程を行い、易分解有機物の高い生成効率が維持されている間に、具体的にはBODが所定の目標値に達するまでオゾンガスを注入する。そうすると、残存する有機物が分解され、新たに易分解有機物が生成されてその量が増加する。オゾン処理によって生物処理では分解できない有機物も易分解有機物に分解されるし、オゾンガスもほとんど無駄なく有機排水に作用させることができる。
【0017】
そうして、生物処理を行えば、先と同様に増加した酸素や易分解有機物量によって効率のよい生物処理を行うことができる。後は、求める有機排水の浄化レベルに達するまで、前処理工程と本処理工程とを繰り返し実行すればよい。
【0018】
このように、これら一連の処理を繰り返し行うことで、オゾンガスを無駄なく使用しながら、生物処理を促進させることができるので、処理全体で用いられるオゾン量を限界近くまで減らすことができ、ランニングコストを効果的に抑制することが可能になる。また、一連の処理を繰り返し行うことで、設備全体のサイズを小さくできる利点もある。
【0019】
特に、前記目標値は、オゾンガスの注入初期における前記変化量の50〜20%の範囲内に設定するのが好ましい。
【0020】
オゾンガスの注入初期における前記変化量の50〜20%の範囲内に目標値を設定すれば、安定的に、オゾンによる高い分解効率が維持されている状態でオゾンガスの注入を終わらせることができるので、注入したオゾンガスのほとんどを無駄なく有機排水に作用させることができる。
【0021】
更には、前記前処理工程では、前記有機排水にオゾンガスを注入する処理とともに、前記有機排水中に水酸基ラジカルを生成する強化処理が行われ、これら処理が繰り返し行われるようにするのが好ましい。
【0022】
そうすれば、水酸基ラジカルはオゾンガスよりも酸化力が強いので、有機物の分解をよりいっそう促進させることができる。その結果、オゾンガスの注入量を減らすことができ、処理全体としてのランニングコストをよりいっそう抑制できる。強化処理としては、例えば、紫外線の照射や過酸化水素の添加等の水酸基ラジカルを発生させる処理が挙げられる。
【0023】
更には、前記前処理工程及び前記本処理工程と組み合わせて、少なくとも次亜塩素酸及び過酸化水素のいずれか1つを前記有機排水に添加する工程を含むのが好ましい。特に、前処理工程の予備工程とするのがより好ましい。
【0024】
次亜塩素酸や過酸化水素は、オゾンガスに比べて有機物の分解力は弱いものの、ランニングコストはオゾンガスに比べて少ない。従って、有機排水に含まれる比較的分解され易い有機物を次亜塩素酸等で事前に分解、除去しておくことで、オゾンガスの分解負担を軽減できるので、オゾンガスの注入量を減らすことができ、処理全体としてのランニングコストを抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の有機排水の処理方法によれば、処理全体で用いられるオゾン量を効率よく減らすことができるので、ランニングコストを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態における処理装置の構成を示す模式図である。
【図2】処理の過程を示す模式図である。
【図3】BODとオゾンガスの注入量との関係を模式的に示すグラフである。
【図4】一連の処理でのオゾンガスの注入量とCODとの関係を模式的に示すグラフである。
【図5】実施例におけるオゾン処理の試験装置を示す模式図である。
【図6】実施例における一連の処理でのオゾンガスの注入量とCODとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0028】
図1に、本実施形態におけるバッチ式の処理装置を示す。この処理装置には、オゾン処理を行うオゾン処理槽1と、生物処理を行う生物処理槽2とが備えられている。
【0029】
オゾン処理槽1は、有機排水を貯留することができ、上面に開閉可能な蓋を有する密閉容器である。オゾン処理槽1の内部における底側には、オゾンガスを気泡状にして有機排水中に放出するガス注入装置3が設けられている。このガス注入装置3にはPSA型のオゾン発生装置4が接続されていて、オゾン発生装置4によって所定濃度に調整されたオゾンガスが所定流量でガス注入装置3に供給される。オゾン処理槽1の上部には、ヘッドスペースに溜まるオゾン含有ガスを安全に排気する排気装置5が備えられている。
【0030】
オゾン処理槽1の下端には排水口が形成されており、この排水口に循環配管6の一端が接続されている。循環配管6の他端はオゾン処理槽1の内部における上側に導入されている。循環配管6の途中には、循環ポンプ7とUV装置8が設置されている。循環配管6の下端部には外部に通じる排水配管9が接続されている。
【0031】
循環配管6の上端部には2方切替弁11が設けられている。その2方切替弁11の一方の流路に循環配管6が接続され、他方の流路に生物処理槽2に送水する送水配管12が接続されている。なお、符号13は電磁開閉弁を示し、符号14はサンプリングポートを示している。
【0032】
生物処理槽2は、上面が開放された開放容器であり、その内部の底側には、空気を気泡状にして貯留された有機排水に放出する第2ガス注入装置15が設けられている。この第2ガス注入装置15には空気供給装置16が接続されていて、この空気供給装置16によって所定流量の空気が第2ガス注入装置15に供給される。
【0033】
生物処理槽2の下端にも排水口が形成されており、この排水口にリターン配管17の一端が接続されている。リターン配管17の他端はオゾン処理槽1の内部における上側に導入されている。リターン配管17の途中には第2循環ポンプ18が設置されている。リターン配管17の下端部にも外部に通じる第2排水配管19が接続されている。
【0034】
この処理装置は、制御装置21によって制御されている。例えば、オゾン発生装置4やUV装置8、循環ポンプ7、第2循環ポンプ18,2方切替弁11、電磁開閉弁13等の作動タイミングはこの制御装置21によって総合的に制御されている。また、制御装置21には、所定のデータを入力することができ、それによってこれら各機器の作動タイミングを設定することができる。
【0035】
次に、この処理装置を用いた場合における有機排水の処理方法について説明する。
【0036】
(予備工程)
本工程では、次亜塩素酸や過酸化水素を有機排水に添加する。例えば、図1に示すように、オゾン処理槽1に有機排水を導入し、貯留する。そこに所定量の次亜塩素酸等を添加した後、循環ポンプ7を作動させ、有機排水と次亜塩素酸等を混合する。
【0037】
そうすることで、有機排水中に含まれる比較的分解し易い有機物を分解することができるので、次の前処理工程におけるオゾンの処理負担を軽減することができる。
【0038】
(前処理工程)
本工程では、オゾンによる易分解有機物の生成効率が大幅に低下する前まで、有機排水にオゾンガスを注入する。具体的には、オゾンガスの注入量に対するBODの変化量が減少して所定の目標値に達するまで有機排水にオゾンガスを注入することができる。なお、本工程の目的は有機物の浄化ではなく、有機排水に含まれる易分解有機物量を増加させることにある。
【0039】
有機排水が循環している状態で、オゾン発生装置4を作動させ、ガス注入装置3を通じて有機排水中にオゾンガスを放出させる。そうすることで、有機排水中にオゾンガスが満遍なく分散され、有機排水に含まれる有機物はオゾンガスの作用によって分解(変化)する。その際、生物処理では分解され難い有機物が易分解有機物に変化するため、微生物の栄養源が増加して生物処理に有利になるとともにBODが増加する。
【0040】
また、オゾンガスの注入と同時にUV装置8も作動させる(強化処理)。オゾンガスが含まれる有機排水に対して紫外線を照射することで、有機排水に水酸基ラジカルが生成される。水酸基ラジカルの酸化力はオゾンよりも強力であるため、よりいっそう有機物の分解を促進することができる。前処理工程の期間中は、有機排水に対してオゾンガスの注入と紫外線の照射とが繰り返し行われる。
【0041】
オゾンガスの注入開始から定期的に有機排水をサンプリングしてそのBODを測定する。ただし、BODの正確な測定には時間を要する。簡易な測定方法も存在するが、それでも結果が得られるまでに30分程度は必要である。従って、最初の前処理工程では、例えば、BODの結果に基づかず、易分解有機物の高い生成効率が維持されている間にBODを測定すればよい。最初の前処理工程で有機排水の有機物の分解が不十分であっても、その後に繰り返す前処理工程で分解できるからである。例えば、後述する試験結果に基づけば、最初の前処理工程でのオゾンガスの注入量は暫定的に400mg/Lに設定することができる。
【0042】
(本処理工程)
本工程では、前処理工程で処理された有機排水を好気的条件下で生物処理する。まず、制御装置21によって2方切替弁11が送水配管12側に切り替えられ、有機排水が生物処理槽2に送水される。
【0043】
図2に示すように、生物処理槽2に有機排水が貯留された後、空気供給装置16が作動し、第2ガス注入装置15を通じて有機排水中に空気が放出され、曝気処理が行われる。そして、生物処理を促進させるために、有機排水に微生物製剤等を添加する。有機排水中には、前処理工程によって溶存酸素や易分解有機物量が増加しているので、微生物による有機物の分解作用を効果的に発揮させることができ、有機排水の浄化をよりいっそう促進することができる。
【0044】
生物処理の場合、オゾン処理に比べてランニングコストはほとんどかからないので、例えば、数日等、長期間実施することができる。従って、この生物処理の期間を利用すれば、有機排水のBODも正確に求めることができる。
【0045】
図3に、BODとオゾンガスの注入量(累積値)との関係を示す。同図に示すように、BODは、オゾンガスの注入量初期は、ほぼ直線状に増加するが、その後は注入量が増加するに従って逓減する。すなわち、オゾンガスの注入量がある程度を超えると、BODの変化量(Δy/Δx、グラフの傾き)が減少し、それと共に、オゾンガスによる易分解有機物の生成効率も低下する。
【0046】
そこで、同図に示すように、オゾンによる易分解有機物の生成効率が大幅に低下する前の所定の段階でオゾンガスの注入を終了させる。具体的には、オゾンガスの注入量に対するBODの変化量を求め、その値がオゾンによる高い分解効率が維持されている間の所定の目標値に到達した時点でオゾンガスの注入を終了すればよい。
【0047】
目標値としては、例えば、オゾンガスの注入初期における変化量から減少し、その変化量に対して50〜20%の変化量となる範囲内で設定するのが好ましい。変化量が減少しても注入初期から半減していない状態では、生成される易分解有機物量が少なくて生物処理を効果的に行うことができないおそれがあり、変化量が減少して注入初期の20%の値を下回るようになると、易分解有機物量が頭打ちあるいは減少傾向に転じることによって非効率となるおそれがある。それに対し、変化量が注入初期の50〜20%の値の範囲内であれば、オゾンによる高い易分解有機物の生成効率が維持されている適切なタイミングで安定してオゾンガスの注入を終了させることができる。
【0048】
(第2の前処理工程等)
生物処理が十分に行われた後、第2循環ポンプ18を作動させ、リターン配管17を通じて有機排水を再度、オゾン処理槽1に返水する。そして、上述した前処理工程と同様にオゾン処理を行い、設定した所定の目標値に達するまで有機排水にオゾンガスを注入する。続いて上述した本処理工程と同様に生物処理を行う。
【0049】
後は、目標とする浄化レベルに達するまで、これら一連の処理を繰り返し実行する。そうして、目標の浄化レベルに達した時に、排水配管9か第2排水配管19のいずれかから浄化した有機排水を排水すればよい。
【0050】
図4に、これら一連の処理を繰り返し行った場合における、オゾンガスの注入量(累積値)と浄化レベルを示すCOD(化学的酸素要求量)との関係を示す(実線)。2点鎖線は、その比較例としてオゾン処理のみを行った場合を示している。同図中、Aの部分が前処理工程、Bの部分が本処理工程である。
【0051】
同図に示すように、本実施形態の処理方法によれば、各前処理工程で同程度に高いオゾンの浄化効率が得られ(CODの変化量がほぼ一定)、本処理工程でも効率のよい生物処理を行うことができるので、処理全体でのオゾンガスの注入量を減少させることができ、ランニングコストを効果的に抑制することができる。
【0052】
<実施例>
図5に示すようなオゾン処理の試験装置を構成した。同図中、31はオゾン処理槽、32はUV装置、33はガス注入装置、34は循環ポンプ、35はPSA型のオゾン発生装置、36はオゾン濃度計、37はオゾン分解器、38は流量計、39はオゾンガス用の配管、40は有機排水用の配管である。オゾン処理はこの試験装置を用いて上述した前処理工程と同様の処理を行った。生物処理は、エアレーションができる処理槽を別途設け、有機排水を移し替えることによって上述した本処理工程と同様の処理を行った。
【0053】
試験では、オゾンガスを400mg/Lまで注入して生物処理を行う場合(実施例)、オゾンガスを800mg/Lまで注入して生物処理を行う場合(比較例1)、オゾン処理のみを行う場合(比較例2)の3条件により、それぞれ有機排水を処理した。その他の条件は同じであり、処理する有機排水量は6Lとし、オゾンガスの濃度は120g/m3とした。有機排水の初期のCODは約340(mg/L)であり、これを100(mg/L)まで浄化することとした。
【0054】
その結果を、次の表1及び図6に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例や比較例1は、比較例2と比べて浄化効率が高く、処理全体でのオゾンガスの注入量も少なかった。これは、生物処理を併用したこと等の相乗効果によると思われる。
【0057】
また、実施例は、比較例1と比べても浄化効率は高く、処理全体でのオゾンガスの注入量も少なかった。詳しくは、実施例の方が比較例1に比べて生物処理での浄化効率が高かった。表1に示すように、オゾン処理終了時のBODは実施例よりも比較例1の方が小さかったことから、比較例1では、オゾンによる分解が進み過ぎて生物処理に有効な易分解有機物まで分解されてしまったものと思われる。
【0058】
また、オゾンガスの注入量が400〜800mg/Lの間での浄化効率は、実施例の方が比較例1よりも優れていた。すなわち、比較例1では、オゾンによる分解が進み過ぎて、頭打ちあるいは減少傾向に転じているのに対し、実施例では、生物処理によって易分解有機物が分解され、有機排水が前処理工程の前と同じような状態に戻るため、そのグラフの傾きが示すように、2度目のオゾン処理の分解効率は1度目のオゾン処理の分解効率とほとんど違いはなく、効率よく浄化できている。
【0059】
このように、オゾン処理と生物処理とを所定の条件の下で繰り返し行うことで、処理全体としてのオゾンガスの注入量を減らすことができ、ランニングコストを効果的に抑制することができるようになる。
【0060】
なお、本発明にかかる有機排水の処理方法は、前記の実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0061】
上記実施形態ではバッチ式の処理装置を例に説明したが、連続式の処理装置であってもよい。例えば、オゾン処理槽1と生物処理槽2とが繰り返し連続的に多段に接続された処理装置を設ければ、有機排水を連続的に処理することができる。
【0062】
処理する有機排水の品質が安定している場合には、事前にその有機排水のBODの変化量を評価できるので、その場合には、最初の前処理工程から所定の目標値を用いてオゾン処理を行えばよい。
【0063】
強化処理は、繰り返し行われる前処理工程の全てで行ってもよいし、部分的に行ってよい。
【符号の説明】
【0064】
1 オゾン処理槽
2 生物処理槽
3 ガス注入装置
4 オゾン発生装置
5 排気装置
6 循環配管
7 循環ポンプ
8 UV装置
9 排水配管
12 送水配管
15 第2ガス注入装置
16 空気供給装置
17 リターン配管
18 第2循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンガスの注入量に対するBODの変化量が減少して所定の目標値に達するまで有機排水にオゾンガスを注入する前処理工程と、
前記前処理工程で処理された前記有機排水を好気的条件下で生物処理する本処理工程と、を含み、
前記前処理工程及び前記本処理工程を繰り返し行う有機排水の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機排水の処理方法において、
前記目標値が、オゾンガスの注入初期における前記変化量の50〜20%の範囲内に設定されている有機排水の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の有機排水の処理方法において、
前記前処理工程では、前記有機排水にオゾンガスを注入する処理とともに、前記有機排水中に水酸基ラジカルを生成する強化処理が行われ、これら処理が繰り返し行われる有機排水の処理方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の有機排水の処理方法において、
前記前処理工程及び前記本処理工程と組み合わせて、少なくとも次亜塩素酸及び過酸化水素のいずれか1つを前記有機排水に添加する工程を更に含む有機排水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−212562(P2011−212562A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82199(P2010−82199)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】