有機機能性素子の製造方法及び製造装置
【課題】有機層の性能の変動が抑制された、高品質な有機機能性素子を効率的に製造し得る有機機能性素子の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】気化された有機層形成材料をノズルから吐出させることにより、該ノズルに対して相対的に移動する基材21上に有機層を形成する蒸着工程を含む有機機能性素子の製造方法であって、前記ノズルの開口部9aaと前記基材との間に介在され、互いに並列し且つ前記基材の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材31を有する蒸着量調整部材を用い、基材移動方向と垂直な開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部へ向かう程、前記線部材同士の間隔が大きくなるように前記線部材を配置し、前記線部材間において前記開口部から吐出された有機層形成材料を通過させつつ、前記蒸着工程を行う。
【解決手段】気化された有機層形成材料をノズルから吐出させることにより、該ノズルに対して相対的に移動する基材21上に有機層を形成する蒸着工程を含む有機機能性素子の製造方法であって、前記ノズルの開口部9aaと前記基材との間に介在され、互いに並列し且つ前記基材の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材31を有する蒸着量調整部材を用い、基材移動方向と垂直な開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部へ向かう程、前記線部材同士の間隔が大きくなるように前記線部材を配置し、前記線部材間において前記開口部から吐出された有機層形成材料を通過させつつ、前記蒸着工程を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に有機層が形成された有機機能性素子の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球への環境負荷等の観点から、有機機能性素子に注目が集まっている。かかる有機機能性素子は、基材上に有機層を有しており、該有機層を形成する材料(有機層形成材料)の性質等に応じて、発光機能や光電変換機能等の機能を発揮するようになっている。
【0003】
例えば、発光機能を有する有機機能性素子としては、有機発光材料から形成された有機発光層(有機層)を有する有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子等が挙げられ、光電変換機能を有する有機機能性素子としては、有機光電変換材料から形成された有機光電変換層(有機層)を有する有機太陽電池素子等が挙げられる。
【0004】
このような有機機能性素子の製造方法において、基材上に有機層を形成する方法としては、一般的に真空蒸着法や塗布法が知られているが、これらのうち、有機層形成材料の純度を高めることができ、高寿命が得られ易いことから、真空蒸着法が主として用いられている。
【0005】
上記した真空蒸着法では、蒸着装置の真空チャンバー内において基材と対向する位置に設けられた蒸着源を用いて蒸着を行うことで有機層を薄膜として形成するようになっており、かかる有機層に対応する蒸着源が設けられている。具体的には、蒸着源に配置された加熱部で有機層形成材料を加熱してこれを気化させ、気化された有機層形成材料(気化材料)を上記蒸着源に設けられたノズルから吐出して、基材上に有機層形成材料を蒸着する。
【0006】
かかる真空蒸着法においては、いわゆるバッチプロセスやロールプロセスが採用されている。バッチプロセスとは、基材1枚ごとに基材上に有機層を蒸着するプロセスである。また、ロールプロセスとは、ロール状に巻き取られた帯状の基材を連続的に(いわゆるロールトゥロールで)繰り出し、繰り出された基材を回転駆動するキャンロールの表面で支持してその回転と共に移動させつつ、基材上に連続的に有機層を蒸着し、該有機層が蒸着された基材をロール状に巻き取るプロセスである。これらのうち、低コスト化を図る観点から、ロールプロセスを用いて有機機能性素子を製造することが望ましい。
【0007】
しかし、このように真空蒸着法においてロールプロセスを採用した場合には、有機機能性素子内において有機層が本来発揮すべき機能(例えば上記発光機能や光電変換機能等)の変動(バラツキ)が生じてしまい、低品質の有機機能性素子が製造される場合がある。
【0008】
一方、真空蒸着法では長寿命化の観点から有機層に取り込まれる水分量を少なくすべく、蒸着源と基材との間の距離を小さくする技術が提案されているが(特許文献1参照)、このように蒸着源と基材との距離を小さくすると、基材の幅方向において中央部から両端部に向かう程、有機層形成材料の付着量(蒸着量)が少なくなり、これに伴って有機層の膜厚も該中央部よりも両端部が小さくなる。このため、上記した発光機能や光電変換機能等が特に幅方向において所望の性能から変動した低品質の有機機能性素子が、より一層製造され易くなる。
【0009】
そこで、ロールプロセスにおいて、蒸着源のノズルの開口部を、基材の移動方向と平行な流量補正部材により基材の幅方向に2以上の領域に分割し、該流量補正部材によって形成されたスリットを通して有機層形成材料を吐出することによって、基材の幅方向における中央部と両端部との間で有機層形成材料の蒸着量の差を小さくする技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−287996号公報
【特許文献2】特開2009−302045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記流量補正部材を設けると、該流量補正部材によって遮蔽される分だけノズルの開口面積が実質的に小さくなるため、有機層の形成速度が遅延し、有機機能性素子の生産効率の低下を招くおそれがある。また、流量補正部材によって、有機層形成材料が基材の移動方向に沿って遮蔽されるため、基材の幅方向において有機層形成材料の蒸着量が小さくなり過ぎる領域が形成され、これに起因して有機層の膜厚が変動するおそれもある。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、有機層によって発揮される機能の変動が抑制された、高品質な有機機能性素子を効率的に製造し得る有機機能性素子の製造方法及び製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討したところ、ノズルの開口部と基材との間に、互いに並列し且つ基材の移動方向に対して交差する方向に配置した複数の線部材を有する蒸着量調整部材を介在させ、基材移動方向と垂直なノズル開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部に向かう程、線部材の間隔が大きくなるように線部材を配置しつつ、基材上に有機層を蒸着することによって、有機層における基材の幅方向中央部と両端部との膜厚の差を小さくすることができ、有機層によって発揮される機能の変動が抑制された有機層を製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係る有機機能性素子の製造方法は、
気化された有機層形成材料をノズルから吐出させることにより、該ノズルに対して相対的に移動する基材上に有機層を形成する蒸着工程を含む有機機能性素子の製造方法であって、
前記ノズルの開口部と前記基材との間に介在され、互いに並列し且つ前記基材の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材を有する蒸着量調整部材を用い、
基材移動方向と垂直な開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部へ向かう程、前記線部材同士の間隔が大きくなるように前記線部材を配置し、
前記線部材間において前記開口部から吐出された有機層形成材料を通過させつつ、前記蒸着工程を行うことを特徴とする。
【0015】
これにより、基材上での蒸着量における基材の幅方向中央部と両端部との差、すなわち、有機層における上記幅方向中央部と両端部との膜厚の差を小さくし、該膜厚を上記幅方向において均一に近づけることができるため、有機層によって発揮される機能の変動が抑制された、高品質な有機機能性素子を効率的に製造することが可能となる。
【0016】
また、本発明は、前記線部材における少なくとも前記開口部の中央部を通過するように配置された1つが、前記開口部における前記移動方向両端辺と交差するように前記線部材を配置することが好ましい。
【0017】
これにより、有機層における上記幅方向中央部と両端部との膜厚の差を、より小さくすることができるため、有機機能性素子によって発揮される機能の変動がより抑制された、より高品質な有機機能性素子を製造することができる。
【0018】
また、本発明は、前記開口部の基材移動方向の長さをL(mm)、基材幅方向の長さをW(mm)とし、前記基材移動方向に対する前記線部材の交差角度をθ(°)とするとき、式0<θ≦arctan(W/L)を満たすように構成されたことが好ましい。
【0019】
これにより、有機機能性材層における上記幅方向中央部と両端部との膜厚の差を、より小さくすることができるため、有機機能性素子によって発揮される機能の変動がより抑制された、より高品質な有機機能性素子を製造することができる。
【0020】
また、本発明に係る有機機能性素子の製造装置は、
気化された有機層形成材料をノズルから吐出することにより、該ノズルに対して相対的に移動する基材上に有機層を形成する蒸着源を備えた有機機能性素子の製造装置であって、
前記ノズルの開口部と前記基材との間に介在され、互いに並列し且つ前記基材の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材を有する蒸着量調整部材が設けられ、
基材移動方向と垂直な開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部へ向かう程、前記線部材同士の間隔が大きくなるように前記線部材が配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上の通り、本発明によれば、有機層によって発揮される機能の変動が抑制された、高品質な有機機能性素子を効率的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造装置を模式的に示す概略側面断面図
【図2】図1の蒸着量調整部材近傍の斜視図
【図3】蒸着量調整部材の上面図
【図4】蒸着量調整部材と基材及び開口部との配置関係を示す模式的な平面図
【図5】基材の移動方向に対する線部材の交差角度が30°のときの開口部と線部材との配置関係を示す図
【図6】基材の移動方向に対する線部材の交差角度が45°のときの開口部と線部材との配置関係を示す図
【図7】基材の移動方向に対する線部材の交差角度が60°のときの開口部と線部材との配置関係を示す図
【図8】基材の移動方向に対する線部材の交差角度が75°のときの開口部と線部材との配置関係を示す図
【図9】線部材が、開口部の対角線上に配置された状態と、基材移動方向と平行に配置された状態とを示す図
【図10】有機EL素子の層構成を模式的に示す概略側面断面図であって、図10(a)は、有機層が1層の場合、図10(b)は、有機層が3層の場合、図10(c)は、有機層が5層の場合を示す図
【図11】真空チャンバー内に蒸着源が複数設けられた状態を模式的に示す概略側面断面図
【図12】本発明の第2実施形態に係る有機EL素子の製造装置に用いられる線部材と、開口部と、の配置関係を示す模式的な平面図
【図13】本発明の第3実施形態に係る有機EL素子の製造装置に用いられる蒸着量調整部材と、基材及び開口部と、の配置関係を示す模式的な平面図
【図14】本発明の第4実施形態に係る有機EL素子の製造装置に用いられる蒸着量調整部材と、基材及び開口部と、の蒸着開始時における配置関係を模式的に示す平面図
【図15】本発明の第4実施形態に係る有機EL素子の製造装置に用いられる蒸着量調整部材と、基材及び開口部と、の蒸着開始時から所定時間経過後の配置関係を模式的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係る有機機能性素子の製造方法及び有機機能性素子の製造装置について、有機機能性素子が、発光機能を有する有機EL素子である場合について例を挙げて図面を参照しつつ説明する。
【0024】
まず、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造装置及び製造方法について説明する。図1に示すように、有機EL素子の製造装置1は、真空チャンバー3を有する蒸着装置であり、真空チャンバー3内には、大まかには、基材供給手段たる基材供給装置5と、キャンロール7と、蒸着源9と、基材回収装置6とが配置されている。
【0025】
真空チャンバー3は、不図示の真空発生装置により、その内部が減圧状態にされ、内部に真空領域を形成することができるようになっている。かかる真空チャンバー内の真空度は、有機層を形成するための材料(有機層形成材料)22の種類等に応じて適宜設計することができ、例えば、10-5Pa以上10-3Pa以下とすることが好ましい。
【0026】
基材供給装置5としては、ロール状に巻き取られた帯状の基材21を繰り出す供給ローラ5が備えられている。前記基材回収装置6としては、繰り出された基材21を巻き取る巻取ローラ6が備えられている。即ち、供給ローラ5から繰り出した基材21はキャンロール7に供給された後、巻取ローラ6によって巻き取られる、所謂ロールトゥロール方式となっている。
【0027】
キャンロール7は、円筒状のステンレスから形成されており、回転駆動するようになっている。かかるキャンロール7は、供給ローラ5から繰り出され(供給され)、巻取ローラ6に巻き取られる基材21が所定の張力で巻き架けられるような位置に配置されており、キャンロール7の周面(表面)で基材21の非電極層側(一面側、具体的には、陽極層の設けられた側と反対の側)を支持するようになっている。また、キャンロール7が回転(図1の反時計回りに回転)することにより、巻き掛けられた(支持された)基材21をキャンロール7と共に回転方向に移動させることができるようになっている。
【0028】
かかるキャンロール7は、内部に冷却機構等の温度調整機構を有していることが好ましく、これにより、後述する基材21上での有機層の成膜中において、基材21の温度を安定させることができる。キャンロール7の外径は、例えば、300〜2000mmに設定することができる。
【0029】
そして、キャンロール7が回転すると、その回転に応じて供給ローラ5から基材21が順次繰り出され、繰り出された基材21がキャンロール7の周面に当接して支持されつつその回転方向に移動すると共に、キャンロール7から離れた基材21が巻取ローラ6によって巻き取られる。
【0030】
基材21の形成材料としては、キャンローラ7に巻き架けられても損傷しないような可撓性を有する材料が用いられ、このような材料として、例えば、金属材料、非金属無機材料や樹脂材料を挙げることができる。
【0031】
上記金属材料としては、例えば、ステンレス、鉄−ニッケル合金等の合金、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、チタン等を挙げることができる。また、上記した鉄−ニッケル合金としては、例えば36アロイや42アロイ等を挙げることができる。これらのうち、ロールプロセスに適用し易いという観点から、上記金属材料は、ステンレス、銅、アルミニウムまたはチタンであることが好ましい。また、かかる金属材料から形成された基材の膜厚は、取り扱い性や基材の巻き取り性の観点から、5〜200μmであることが好ましい。
【0032】
上記非金属無機材料としては、例えば、ガラスを挙げることができ、かかるガラスから形成された基材として、例えば、フレキシブル性を持たせた薄膜ガラスを挙げることができる。また、非金属無機材料から形成された基材の厚みは、十分な機械的強度および適度な可塑性の観点から、5〜500μmであることが好ましい。
【0033】
上記樹脂材料としては、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂などの合成樹脂を挙げることができ、かかる合成樹脂として、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、樹脂材料から形成された基材として、例えば、上記合成樹脂のフィルムを用いることができる。また、該基材の膜厚は、十分な機械的強度および適度な可塑性の観点から、5〜500μmであることが好ましい。
【0034】
基材21の幅は、形成される有機EL素子の大きさに応じて適宜設計され、特に限定されるものではないが、例えば、5mm〜1000mmであることが好ましい。
【0035】
基材21として具体的には、スパッタリングによって予め陽極層23(図10参照)を形成したものを用いることができる。
陽極層23を形成するための材料としては、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、インジウム−錫酸化物(ITO)等の各種透明導電材料や、金、銀、白金などの金属や合金材料を用いることができる。
【0036】
蒸着源9は、発光層(有機層25a)を含む少なくとも1層の有機層(図10参照)を形成するためのものであり、形成すべき有機層に対応して1つ以上設けられている。本実施形態では、1層の有機層25aを形成するために蒸着源9が1つ設けられている。蒸着源9は、キャンロール7の周面における基材21の支持領域と対向する位置に配置されており、基材21上に形成された陽極層23上に有機層形成材料22を蒸着させることにより、該基材21上に形成された陽極層23上に有機層(図10参照)を形成するようになっている。
【0037】
かかる蒸着源9の構成は、加熱等により気化された有機層形成材料22を基材21に向けて吐出可能なノズルを有していれば、特に限定されるものではない。例えば、蒸着源9は、有機層形成材料22を収容することができるようになっており、図2に示すように、ノズル9aと、加熱部(不図示)とを有している。ノズル9aは、キャンロール7における基材21の支持領域と、対向するように配置されている。上記加熱部は、有機層形成材料22を加熱して気化させるようになっており、気化された有機層形成材料22は、ノズル9aから外部に吐出されているようになっている。加熱時の蒸着源9内の温度は、有機層形成材料22の種類等に応じて適宜設計することができ、例えば、250℃以上320℃以下であることが好ましい。
【0038】
また、蒸着源9のノズル9aの開口部9aaと基材21との間には、蒸着量調整部材30が配置されている。該蒸着量調整部材30の詳細については後述する。
【0039】
そして、蒸着源9内で有機層形成材料22が加熱されると、該有機層形成材料22が気化され、気化された有機層形成材料22が、ノズル9aから基材21に向かって吐出されて、基材21上に蒸着される。このように気化された有機層形成材料22が基材21に蒸着されることにより、図2及び図10(a)に示すように、基材21上に形成された陽極層23上に有機層25aが形成される。
【0040】
発光機能を有する有機層は、少なくとも発光層(有機層25a)を有していれば特に限定されるものではなく、また、必要に応じて、複数の有機層が形成されるようにすることができる。例えば図10(b)に示すように、正孔注入層(有機層25b)、発光層(有機層25a)及び電子注入層(有機層25c)をこの順に積層して、有機層を3層積層することもできる。その他、必要に応じて、上記図10(b)に示す発光層(有機層25a)と正孔注入層(有機層25b)の間に正孔輸送層(有機層25d、図10(c)参照)を挟むことによって、または、発光層(有機層25a)と電子注入層(有機層25c)との間に電子輸送層(有機層25e、図10(c)参照)を挟むことによって、有機層を4層積層することもできる。
【0041】
さらに、図10(c)に示すように、正孔注入層(有機層25b)と発光層(有機層25a)との間に正孔輸送層(有機層25d)、発光層(有機層25a)と電子注入層(有機層25c)との間に電子輸送層(有機層25e)を挟むことによって、有機層を5層積層することもできる。また、各有機層の膜厚は、通常、数nm〜300nm程度までの間で設計されるが、かかる膜厚は、有機層形成材料22や、発光特性等に応じて適宜設計されるものであり、特に限定されない。
【0042】
上記発光層を形成するための材料としては、例えば、トリス(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、イリジウム錯体(Ir(ppy)3)をドープした4,4’−N,N’−ジカルバゾニルビフェニル(CBP)等を用いることができる。
【0043】
上記正孔注入層を形成するための材料としては、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4’−ビス[N−4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ]ビフェニル(DNTPD)等を用いることができる。
【0044】
上記正孔輸送層を形成するための材料としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’ビフェニル−4,4’ジアミン(TPD)等を用いることができる。
【0045】
上記電子注入層を形成するための材料としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li2O)等を用いることができる。
【0046】
上記電子輸送層を形成するための材料としては、例えば、トリス(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(BAlq)、OXD−7(1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル])ベンゼン等を用いることができる。
【0047】
また、蒸着源9は、上記したような基材21の陽極層23上に形成される有機層の積層構成や積層数量に応じて1つ以上配置されることができる。例えば、図10(b)に示すように有機層を3層積層する場合には、図11に示すように、キャンローラ7の回転方向に沿って3つの蒸着源を配置することができる。このようにキャンロール7の回転方向に沿って複数の蒸着源9が設けられた場合、該回転方向に対し最も上流側に配置された蒸着源9によって陽極層23上に1層目の有機層が蒸着された後、下流側の蒸着源9によって1層目の有機層上に順次2層目以降の有機層が蒸着されて、積層されるようになっている。
【0048】
上記したように基材21上に形成された陽極層23上に有機層を蒸着した後、有機層の最上面に陰極層27を不図示のスパッタ装置等の真空成膜装置を用いて形成することによって、図10に示すように、基材21上に、陽極層23、有機層25a及び陰極層27がこの順に積層された有機EL素子20が形成(製造)されるようになっている。陰極層27としては、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ITO、アルカリ金属、または、アルカリ土類金属を含む合金等を用いることができる。
【0049】
なお、真空チャンバー3内のキャンロール7における基材21の支持領域と対向する位置において、キャンロール7の回転方向に対し有機層25aを形成するための蒸着源9の上流側に陽極層23を形成するための真空成膜装置、下流側に陰極層27を形成するための真空成膜装置を配置し、キャンロール7に支持されつつ移動する基材21に陽極層23を成膜した後、有機層25aを蒸着し、さらに陰極層27を成膜することもできる。
【0050】
また、その他、陽極層23及び陰極層27の材料として、蒸着源によって蒸着可能な材料を用いた場合には、真空チャンバー3内に陽極層23及び陰極層27用の蒸着源を配置し、基材21上に、陽極層23、有機層25a、陰極層27をこの順に連続して蒸着することによって、有機EL素子20を形成することもできる。
【0051】
このようにして形成された有機EL素子20において、陽極層23及び陰極層27にそれぞれ陽極及び陰極の電圧を印加することにより、有機層25aたる発光層が発光し、発光機能を発揮する。
【0052】
次に、蒸着量調整部材30について説明する。
【0053】
図2〜図4に示すように、蒸着量調整部材30は、ノズル9aの開口部9aaと基材21との間に介在され、互いに並列し且つ基材21の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材31を有しており、該線部材31間において開口部9aaから吐出された有機層形成材料22を通過させるようになっている。
【0054】
具体的には、図2に示すように、本実施形態では、蒸着量調整部材30の線部材31は、開口部9aaと基材21との間において、開口部9aaと平行な平面上に配置されている。なお、線部材31は、必ずしも該平面上に配置される必要はない。
【0055】
図3に示すように、本実施形態では、複数の線部材31は、互いに平行に配置されており、また、該線部材31は、14本設けられている。かかる線部材31は、互いに同じ外径を有している。また、線部材31同士の間隔は、線部材31の長手方向と垂直方向(図3の左右方向)に対し中央部から両端部に向かう程大きくなるように設定されている。すなわち、開口部9aaにおいて線部材31によって遮蔽される領域は、上記垂直方向中央部では比較的密に分布しているのに対し、両端部に向かう程(外側に向かう程)、比較的疎に分布している。
【0056】
さらに、このように分布した遮蔽領域分布を有する線部材31は、図4に示すように、基材21の移動方向(基材移動方向、白抜き矢印)に対して交差して配置されている。すなわち、基材移動方向と垂直な開口部9aa幅方向(図4の左右方向)において、該開口部9aaの中央部から両端部に向かう程、線部材31同士の間隔が大きくなるように線部材31が配置されている。これにより、有機層形成材料22の蒸着量を、基材21の幅方向(基材幅方向、図4の左右方向)中央部の方が、両端部よりも小さくなるようにすることができる。なお、開口部9aaの幅方向と基材幅方向とは、同じ方向である。
【0057】
加えて、基材21の基材移動方向への移動に伴って、基材21上の蒸着されるべき幅方向全域がそれぞれ、開口部9aaにおける線部材31によって遮蔽されない領域(線部材31間の隙間)を、必ず通過することができる。これにより、線部材31による遮蔽に起因して有機層形成材料22の蒸着量が基材幅方向において部分的に減少することを、抑制することができる。
【0058】
このように、線部材31が基材移動方向に対して交差し、開口部9aa幅方向において、該開口部9aaの中央部から両端部に向かう程、線部材31同士の間隔が大きくなるように線部材31が配置されていることにより、基材21上への有機層形成材料22の蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることができる。すなわち、有機層の基材幅方向中央部と両端部との膜厚の差を小さくすることができる。従って、該膜厚を幅方向に均一に近づけることができるため、膜厚の変動に起因する有機層の発揮する機能の変動を、抑制することができる。
【0059】
また、図2〜4に示すように、蒸着量調整部材30は、さらに、繰り出し部33、巻き取り部35及びガイド部材37を有している。
【0060】
繰り出し部材33は、ローラ状に形成されており、かかる繰り出し部材33の周面には、上記した線部材31の数量及び間隔に対応した溝部33aが設けられている。かかる溝部33aには、各線部材31が巻回されて収容されており、また、繰り出し部材33が回転することにより、巻回された線部材31を繰り出すようになっている。
【0061】
巻き取り部材35は、上記繰り出し部材33と同様、ローラ状に形成されており、かかる巻き取り部材35の周面には、上記した線部材31の数量及び間隔に対応した溝部35aが設けられている。巻き取り部材35が回転することにより、繰り出し部材33から繰り出された各線部材31を巻き取って収容するようになっている。
【0062】
また、繰り出し部材33及び巻き取り部材35の配置は、開口部9aaに対する線部材31の上記配置関係を維持したまま、線部材31を繰り出し及び巻き取りすることができるように設定されている。また、本実施形態では、1つの繰り出し部材33から全ての線部材31が一斉に繰り出され、1つの巻き取り部材35によって一斉に巻き取られるようになっている。そして、かかる繰り出し部材33及び巻き取り部材35によって、線部材31が順次連続して開口部9aaと対向する領域(蒸着領域)を通過するようになっている。
【0063】
ガイド部材37は、繰り出し部材33と巻き取り部材35との間において、開口部9aaよりも外側に一対設けられている。かかるガイド部材37は、繰り出し部材33から繰り出された線部材31を、上記の配置関係を維持しながら巻き取り部材35へと案内するためのものであり、該ガイド部材37には、各線部材31に対応した溝部37aが形成されている。また、ガイド部材37は、開口部9aaから吐出された有機層形成材料22の基材21側への飛翔を妨げないような位置において、真空チャンバー3内に支持されている。
【0064】
次に、上記製造装置を用いた本実施形態の有機機能性素子の製造方法について説明する。
【0065】
本実施形態に係る有機EL素子(有機機能性素子)の製造方法は、気化された有機層形成材料22をノズル9aから吐出させることにより、該ノズル9aに対して相対的に移動する基材21上に有機層25aを形成する蒸着工程を含む有機機能性素子の製造方法であって、ノズル9aの開口部9aaと基材21との間に介在され、互いに並列し且つ基材21の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材31を有する蒸着量調整部材30を用い、基材移動方向と垂直な開口部9aa幅方向において、該開口部9aaの中央部から両端部へ向かう程、線部材31同士の間隔が大きくなるように線部材31を配置し、線部材31間において開口部9aaから吐出された有機層形成材料22を通過させつつ、蒸着工程を行う。
【0066】
具体的には、蒸着に先立って、上記の通り線部材31の配置等を設定し、基材21と蒸着源9のノズル9aとの間に、かかる線部材31が備えられた蒸着量調整部材30を介在させておく。
【0067】
そして、かかる蒸着量調整部材30を設置後、減圧雰囲気下、スパッタリング等によって一面側に予め陽極層23が形成され、ロール状に巻き取られた基材21を供給ローラ5から繰り出す。また、開口部9aaと基材21との間に介在された蒸着量調整部材30において、繰り出し部材33から線部材31を、順次繰り出して蒸着領域を通過させつつ、巻き取り部材35によって順次巻き取る。
【0068】
次に、上記した供給ローラ5から繰り出された基材21を、陽極層23が形成された側と反対の側をキャンロール7の表面に当接させて移動させつつ、キャンロール7と対向して配置された蒸着源9によって有機層25a(図3参照)を含む有機層形成材料22を気化させ、気化された有機層形成材料22を、ノズル9aからキャンロール7に支持された基材21上の陽極層23上に、蒸着領域を順次通過する線部材31を介して蒸着させる。
【0069】
そして、基材21上に有機層25aを形成した後、有機層25aが蒸着された基材21を巻取ローラ6によって巻き取る。さらに、巻き取られた基材21上に形成された有機層25a上に、不図示のスパッタ装置によって陰極層27を形成することにより、基材21に、陽極層23、有機層25a及び陰極層27がこの順に積層された有機EL素子20を形成することができる。
【0070】
このようにして有機EL素子を製造することにより、上記した様に、基材21上における有機層25aの膜厚の、基材21の幅方向中央部と両端部との差を小さくすることができる。従って、有機層25aの発揮する機能の変動が抑制された、高品質な有機EL素子を効率的に製造することが可能となる。
【0071】
上記した線部材31の形状は、特に限定されるものでなく、例えば円柱状や矩形柱状等とすることができるが、円柱状であることが好ましい。これにより、線部材31に対する有機層形成材料22の付着量を少なくすることができる。
【0072】
また、上記したように、本実施形態では、線部材31の外径が同じであることにより、線部材31を加工することが容易となるため、効果的である。また、線部材31の数量や間隔は、上記蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0073】
これら線部材31の形状、外径、数量や間隔は、有機層形成材料22の種類、開口部9aaの大きさや形状等に応じて適宜設計することができる。例えば、これら形状、外径、数量や間隔は、蒸着量調整部材30を設けることなく基材21上に有機層25aを形成し、形成された有機層25aにおける基材21の幅方向の膜厚分布を測定し、得られた膜厚分布の実測値に基づいて、補正に必要な開口率、すなわち、開口部の面積に対する開口部が線部材31によって遮蔽されない面積の比率を計算することにより、設計することができる。
【0074】
例えば、開口部9aaは、幅5mm〜1000mmの矩形状とすることができ、線部材31の形状は、円柱状、外径は、10μm〜500μm、数量は、2〜40本、とすることができる。また、線部材31の間隔は、例えば、上記開口部幅方向中央部から外側に向かう程広くなる(線部材が疎になる)ように設定することができる。また、線部材31の長さは、開口部9aaから吐出される有機層形成材料22の基材21側への通過量を調整して、基材21上での蒸着量を調整可能であれば、特に限定されるものではない。
【0075】
また、基材移動方向に対する線部材31の交差の程度は、基材21上への有機層形成材料22の蒸着量における、基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが可能であれば、特に限定されるものではなく、上記した線部材31の形状、外径、数量や間隔と同様、例えば膜厚分布の実測値に基づいて設計することができる。
【0076】
但し、図5〜図8に示すように、交差の程度が、例えば交差角度θとして30°から75°へと大きくなる程、線部材31の配置が基材幅方向(開口部幅方向)に対して平行に近づき、有機層形成材料22の蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが困難となる傾向にある。一方、交差角度が小さくなる程、線部材31による遮蔽に起因する、部分的な膜厚の減少が生じ易くなる傾向にある。
【0077】
また、基材移動方向に対する線部材31の交差角度については、開口部9aaの形状が基材幅方向に比較的長い長辺を有する矩形状の場合には、比較的大きな交差角度でも、線部材31における少なくとも上記開口部9aaの中央部を通過する1つが、開口部9aaにおける上記移動方向両端辺と交差し易くなって、上記蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくし易くなる。一方、開口部9aaの形状が基材移動方向に比較的長い長辺を有する矩形状の場合には、比較的小さな交差角度で、上記線部材31の少なくとも1つが上記両端部と交差し難くなって、上記蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくし難くなる。
【0078】
従って、例えば上記観点を考慮して、線部材31の基材移動方向に対する配置を適宜設計することができ、例えば、本実施形態のように開口部9aaが矩形状のとき、線部材31における少なくとも開口部9aaの中央部を通過するように配置された1つが、開口部9aaにおける基材移動方向(図4の上下方向)両端辺と交差することが好ましい。これにより、基材幅方向における線部材31による蒸着量の調整作用を、より有効に発揮させることができる。
【0079】
また、例えば、図9に示すように、開口部9aaの基材移動方向の長さをL(mm)、基材幅方向の長さをW(mm)とし、線部材31が、ノズル9aの開口部9aaの対角線R上に配置されたとする。このとき、交差角度θは、開口部9aaの基材移動方向に沿った辺と対角線との角度Φと等しくなる。また、角度Φは、Φ=arctan(W/L)で表される。そして、線部材31が、かかる対角線よりも基材21の幅方向(図9の左右方向)に傾斜する、すなわち、交差角度θが角度Φよりも大きい場合には、有機層形成材料22の蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが困難となる。従って、交差角度θ(°)は、式θ≦arctan(W/L)を満たすことが好ましい。一方、線部材31が基材移動方向と交差するため、交差角度θは、θ>0°である。なお、arctanの計算結果として得られる角度の単位はラジアンであるため、従来公知の換算方法、すなわち得られた角度に(180°/π)を掛けることにより、該角度の単位を度(°)に換算する。
【0080】
開口部9aaに対する各線部材31の配置については、上記した膜厚分布の実測値に応じて設計されるものであり、有機層の基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが可能であれば特に限定されるものではない。例えば、線部材31が、開口部9aaの中心R(図5参照)に対し点対称に配置されていることが好ましい。これにより、基材21上における基材幅方向中央部を挟んだ両側において、同様にして蒸着量を調整することができる。
【0081】
基材21と開口部9aaとの間における線部材31の配置については、例えば、線部材31は、基材21よりも開口部9aaに近い位置に配置されることが好ましく、線部材31が開口部9aaと近接するように配置されることがより好ましい。また、線部材31を開口部9aaと当接させることもできる。線部材31が基材21よりも開口部9aaに近い位置に配置されることにより、線部材31間を通過後において、有機層形成材料22が拡散するための空間領域が確保され易くなるため、線部材31による遮蔽に起因する、部分的な膜厚の減少を防止することができる。
【0082】
また、線部材31が介在される、基材21と開口部9aaとの間の距離については、15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが好ましい。かかる距離が小さい程、有機層の膜厚が基材幅方向に変動し易い傾向にある。従って、上記距離を15mm以下とすることにより、有機層の膜厚が基材幅方向に変動し易い条件下であっても、該膜厚の基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることができるため、より効果的である。
【0083】
線部材31の材質については、線部材31が、有機層形成材料22を気化させるための加熱によって蒸着源9の内部が温度上昇した際の蒸着源9内の温度に対して、耐久性を有することが好ましい。かかる耐熱性を有することにより、開口部9aa周辺の温度や加熱された有機層形成材料22との接触によって線部材31が破損等することを防止することができる。また、線部材31は、蒸着源9と同じ熱伝導性を有していることが好ましい。これにより、開口部9aa周辺よりも線部材31の温度が低下することを防止し、かかる温度低下に起因して有機層形成材料22が線部材31に付着し易くなることを、防止することができる。
【0084】
このように蒸着源9と同じ熱伝導性を有する、という観点からすれば、線部材31は、蒸着源9と同じ材質から形成されていることがより好ましい。このような耐久性及び熱伝導性を有する線部材31として、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、金、ニクロム、タングステン、タンタル、モリブデン等が挙げられる。
【0085】
また、図10の有機EL素子20内部において有機層の膜厚の変動を抑制する程、電気特性の差や光学特性の差に基づく該素子の発光面における輝度ムラ(機能の変動)を抑制することができる。かかる観点を考慮すれば、有機層の幅方向における膜厚誤差を、膜厚誤差=(各測定位置での膜厚−中央部での膜厚)/中央部での膜厚×100によって算出するとき、該膜厚誤差≦5%となる領域が、有機層の幅方向全域に対して65%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。このように、膜厚誤差≦5%となる領域が65%以上であることにより、上記発光色(発光機能)の変動をより確実に抑制することができるため、より高品質な有機EL素子を製造することが可能となる。
【0086】
本実施形態では、上記のように、繰り出し部材33及び巻き取り部材35が設けられているため、有機層形成材料22が付着していないフレッシュな線部材31が、蒸着源9と基材21との間に順次連続して介在される。これにより、線部材31上に有機層形成材料22が蓄積されることを防止できるため、線部材31上に蓄積された有機層形成材料22が基材21上へと落下して不測の不具合が発生することを防止することができる。また、ガイド部材37が設けられているため、開口部9aaと対向する位置を通過する線部材31の配置の変動を防止することができる。
【0087】
しかし、これら繰り出し部材33、巻き取り部材35及びガイド部材37は、本発明の必須構成要素ではなく、これらを設けない構成とすることもできる。
【0088】
次に、本発明の第2実施形態に係る有機EL素子の製造装置及び製造方法について説明する。
【0089】
図12に示すように、本実施形態では、開口部9aa幅方向において、開口部9aaの中央部から両端部に向かう程、線部材31の外径が小さくなるように構成されている。また、線部材31における断面の中心同士の間隔が、一定となるように配置されている。これにより、上記幅方向中央部から両端部に向かう程、線部材31の間隔が大きくなっている。また、かかる線部材31の外径は、上記第1実施形態と同様に、例えば、蒸着量調整部材30を用いることなく有機層25aを形成したときの、膜厚分布の実測値に基づいて設計することができる。その他の構成については第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0090】
本実施形態によれば、線部材31の外径を調整することによって、線部材31の中心同士の間隔を一定に保つことができるため、線部材31の位置決めが容易となる。また、本実施形態で示すように線部材31の外径を調整することに加え、線部材31の間隔を調整すれば、線部材31の径と線部材31の中心間間隔との両方で線部材31同士の間隔を調整できるため、該線部材31の間隔のより詳細な調整が可能となり、一層効果的である。
【0091】
次に、本発明の第3実施形態に係る有機EL素子の製造装置及び製造方法について説明する。
【0092】
本実施形態では、図13に示すように、蒸着量調整部材30に繰り出し部33及び巻き取り部35が設けられておらず、線部材31の長手方向両端部が一対の支持部材39に支持されている。その他の構成については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
本実施形態に示すように、線部材31が固定され、開口部9aaに対して移動しない場合であっても、上記第1実施形態と同様、基材21上での有機層における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが可能である。
【0094】
次に、本発明の第4実施形態に係る有機EL素子の製造装置及び製造方法について説明する。
【0095】
図14に示すように、本実施形態では、線部材31が一対の支持部材39に支持されている。また、線部材31は、該線部材31の長手方向において開口部9aaの2倍以上の長さを有している。さらに、支持部材39は、線部材31の長手方向に沿って、線部材31を伴って移動できるようになっている。
【0096】
そして、14に示すように、蒸着開始から所定時間が経過するまでは、例えば線部材31の長手方向一端部側が蒸着領域に配置されており、蒸着開始から所定時間経過後に、図15に示すように、線部材31における有機層形成材料22が未だ付着されていない領域が蒸着領域に配置されるように、支持部材39と線部材31とが移動する。また、かかる線部材31及び支持部材39の移動前後で、開口部9aaに対する各線部材31の配置関係が維持されるようになっている。その他の構成は、第3実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0097】
本実施形態により、所定時間経過後に、線部材31のうち有機層形成材料22が未だ付着していないフレッシュな部分が蒸着領域に配置されるため、線部材31上への有機層形成材料22の蓄積を防止することが可能となる。なお、蒸着開始から、支持部材39及び線部材31が、線部材31の長手方向に沿って順次移動するような構成とすることもできる。
【0098】
本発明の有機機能性素子の製造方法及び製造装置は、有機EL素子を例として説明した上記の通りであるが、本発明は上記各実施形態に限定されず本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。例えば、上記各実施形態では、蒸着源9内で有機層形成材料22を気化させたが、別途の装置で気化された有機層形成材料22を蒸着源9内に導入し、該蒸着源9のノズル9aから吐出することもできる。
【0099】
また、上記各実施形態では、基材供給装置5を真空チャンバー3内に配置したが、基材21をキャンローラ7へと繰り出すことが可能であれば、キャンローラ7への供給方法は特に限定されるものではない。また、上記実施形態では、蒸着工程が終了した基材21を巻き取ったが、かかる基材21を巻き取ることなく、裁断等の工程に供することもできる。
【0100】
また、上記各実施形態では、線部材31が互いに平行に配置されているが、線部材31は、互いに並列しており、有機層の膜厚における基材21の幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが可能であれば、必ずしも平行に配列される必要はない。
【0101】
また、上記各実施形態では、本発明の有機機能性素子を有機EL素子に適用したが、本発明が適用される有機機能性素子は、その他、有機太陽電池素子等、それぞれの機能を発揮させるための有機層を形成する材料を基材上に有する素子であれば、特に限定されることなく適用することができる。かかる場合において、それぞれの機能を発揮させることが可能な有機層形成材料を蒸着源から上記した蒸着量調整部材を介して、それぞれの機能を発揮させるのに適した基材上に付着させばよい。
【0102】
例えば、有機太陽電池素子に適用する場合には、フラーレン、銅フタロシアニン等の有機層形成材料を、ガラス、プラスチック、メタルフォイル(金属箔)等の基材上に蒸着することによって、光電変換機能を有する有機層を形成すればよい。
【0103】
また、上記第1及び第2実施形態では、全ての線部材31が1つの繰り出し部材33及び1つの巻き取り部材35によって移動可能に構成しているが、その他、各線部材31に対してそれぞれ、繰り出し部及び巻き取り部を設けることもできる。また、全ての線部材31を2つや3つのグループに分け、それぞれのグループごとに繰り出し部材及び巻き取り部材を設けること等もできる。
【実施例】
【0104】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
実施例1
第1実施形態と同様の有機EL製造装置を用い、基材21上に有機層を形成し、膜厚変動を測定した。有機層の膜厚変動を精度良く測定するために、基材上に直接、有機層を形成し、形成された有機層の膜厚分布を測定した。
【0106】
すなわち、上記した第1実施形態に係る製造装置1において蒸着源9を1つ配置し、発光層たる有機層を形成するための材料としてトリス(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、基材21として幅20mm、全長130mのフレキシブルガラス基板(基材)を用いた。材質がステンレスのノズル9aを用い、ノズル9aの開口部9aaを、幅が20mm、長さが35mmの矩形状とした。また、蒸着量調整部材として、材質がステンレス、外径が50μm、形状が円柱形状、長さが40mmの線部材が、40本、基材移動方向に対する交差角度が30°となるように配置されたものを用いた。
【0107】
そして、蒸着源9内に1gのAlq3を添加し、チャンバー3内を、真空度が5.0×10-5Paとなるように真空排気した後、蒸着源9内が300℃に達するまで加熱し、上記の通り線部材が順次連続して移動する蒸着量調整部材30を介して、ノズル9aの開口部9aaからフレキシブルガラス基板上に、Alq3を吐出して、基材21と同じ幅(20mm)となるように、また、膜厚が200nmとなるように蒸着して、有機層を形成した。
【0108】
形成された有機層の膜厚について、ULVAC社製の触針式表面形状測定器Dektakを用い、該測定器を形成された有機層の表面に接触させて、有機層における基材21の長手方向中央において、幅方向に1mmおきに測定し、各測定位置について膜厚誤差=(各測定位置での膜厚−中央部での膜厚)/中央部での膜厚×100(%)によって、膜厚誤差を算出し、幅方向における膜厚誤差分布を得た。得られた膜厚誤差分布から、中央部との膜厚誤差Sが、|S|≦10%となる領域、|S|≦5%となる領域、|S|≦3%となる領域を、各領域が占める幅方向長さ(mm)として求めた。さらに、それぞれ求めた幅方向長さの、有機層の幅方向全域(基材長さ、20mm)に対する百分率(%)を算出した。そして、|S|≦5%となる領域に相当する幅方向長さが、基材の幅方向長さに対して80%以上である場合を◎、80%未満65%以上である場合を○、65%未満である場合を△として、膜厚誤差の小ささを評価した。結果を表1に示す。
【0109】
実施例2
【0110】
第3実施形態と同様の製造装置を用い、蒸着量調整部材の線部材を移動させることなく固定して蒸着を行うこと以外は実施例1と同様にして有機層を形成し、幅方向における膜厚誤差を算出した。結果を表1に示す。
【0111】
比較例1
【0112】
蒸着量調整部材を用いなることなく蒸着を行うこと以外は実施例1と同様にして有機層を形成し、幅方向における膜厚誤差を算出した。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1に示すように、蒸着量調整部材を用いた実施例1、2は、蒸着量調整部材を用いない比較例1よりも、膜厚誤差が小さいことが認められた。また、実施例1と2では、線部材を順次連続して繰り出し及び巻き取る実施例1の方が、膜厚誤差が小さいことが認められた。これにより、開口部と基材との間に常に新鮮な線部材が介在することにより、有機層形成材料の付着による影響を回避することができるため、膜厚誤差を小さくできることが示された。
【0115】
上記の結果、本発明に係る有機機能性素子の製造方法及び有機機能性素子の製造装置により、基材上に形成される有機層の膜厚の変動を幅方向に抑制でき、有機層が発揮する性能の変動を抑制できることがわかった。
【符号の説明】
【0116】
1:有機EL素子(有機機能性素子)の製造装置、3:真空チャンバー、5:基材供給装置、7:キャンロール、9:蒸着源、9a:ノズル、9aa:開口部、20:有機EL素子、21:基材、22:有機層形成材料、25a:有機層、30:蒸着量調整部材、31:線部材、33:繰り出し部材、35:巻き取り部材、37:ガイド部材、39:支持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に有機層が形成された有機機能性素子の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球への環境負荷等の観点から、有機機能性素子に注目が集まっている。かかる有機機能性素子は、基材上に有機層を有しており、該有機層を形成する材料(有機層形成材料)の性質等に応じて、発光機能や光電変換機能等の機能を発揮するようになっている。
【0003】
例えば、発光機能を有する有機機能性素子としては、有機発光材料から形成された有機発光層(有機層)を有する有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子等が挙げられ、光電変換機能を有する有機機能性素子としては、有機光電変換材料から形成された有機光電変換層(有機層)を有する有機太陽電池素子等が挙げられる。
【0004】
このような有機機能性素子の製造方法において、基材上に有機層を形成する方法としては、一般的に真空蒸着法や塗布法が知られているが、これらのうち、有機層形成材料の純度を高めることができ、高寿命が得られ易いことから、真空蒸着法が主として用いられている。
【0005】
上記した真空蒸着法では、蒸着装置の真空チャンバー内において基材と対向する位置に設けられた蒸着源を用いて蒸着を行うことで有機層を薄膜として形成するようになっており、かかる有機層に対応する蒸着源が設けられている。具体的には、蒸着源に配置された加熱部で有機層形成材料を加熱してこれを気化させ、気化された有機層形成材料(気化材料)を上記蒸着源に設けられたノズルから吐出して、基材上に有機層形成材料を蒸着する。
【0006】
かかる真空蒸着法においては、いわゆるバッチプロセスやロールプロセスが採用されている。バッチプロセスとは、基材1枚ごとに基材上に有機層を蒸着するプロセスである。また、ロールプロセスとは、ロール状に巻き取られた帯状の基材を連続的に(いわゆるロールトゥロールで)繰り出し、繰り出された基材を回転駆動するキャンロールの表面で支持してその回転と共に移動させつつ、基材上に連続的に有機層を蒸着し、該有機層が蒸着された基材をロール状に巻き取るプロセスである。これらのうち、低コスト化を図る観点から、ロールプロセスを用いて有機機能性素子を製造することが望ましい。
【0007】
しかし、このように真空蒸着法においてロールプロセスを採用した場合には、有機機能性素子内において有機層が本来発揮すべき機能(例えば上記発光機能や光電変換機能等)の変動(バラツキ)が生じてしまい、低品質の有機機能性素子が製造される場合がある。
【0008】
一方、真空蒸着法では長寿命化の観点から有機層に取り込まれる水分量を少なくすべく、蒸着源と基材との間の距離を小さくする技術が提案されているが(特許文献1参照)、このように蒸着源と基材との距離を小さくすると、基材の幅方向において中央部から両端部に向かう程、有機層形成材料の付着量(蒸着量)が少なくなり、これに伴って有機層の膜厚も該中央部よりも両端部が小さくなる。このため、上記した発光機能や光電変換機能等が特に幅方向において所望の性能から変動した低品質の有機機能性素子が、より一層製造され易くなる。
【0009】
そこで、ロールプロセスにおいて、蒸着源のノズルの開口部を、基材の移動方向と平行な流量補正部材により基材の幅方向に2以上の領域に分割し、該流量補正部材によって形成されたスリットを通して有機層形成材料を吐出することによって、基材の幅方向における中央部と両端部との間で有機層形成材料の蒸着量の差を小さくする技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−287996号公報
【特許文献2】特開2009−302045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記流量補正部材を設けると、該流量補正部材によって遮蔽される分だけノズルの開口面積が実質的に小さくなるため、有機層の形成速度が遅延し、有機機能性素子の生産効率の低下を招くおそれがある。また、流量補正部材によって、有機層形成材料が基材の移動方向に沿って遮蔽されるため、基材の幅方向において有機層形成材料の蒸着量が小さくなり過ぎる領域が形成され、これに起因して有機層の膜厚が変動するおそれもある。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、有機層によって発揮される機能の変動が抑制された、高品質な有機機能性素子を効率的に製造し得る有機機能性素子の製造方法及び製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討したところ、ノズルの開口部と基材との間に、互いに並列し且つ基材の移動方向に対して交差する方向に配置した複数の線部材を有する蒸着量調整部材を介在させ、基材移動方向と垂直なノズル開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部に向かう程、線部材の間隔が大きくなるように線部材を配置しつつ、基材上に有機層を蒸着することによって、有機層における基材の幅方向中央部と両端部との膜厚の差を小さくすることができ、有機層によって発揮される機能の変動が抑制された有機層を製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係る有機機能性素子の製造方法は、
気化された有機層形成材料をノズルから吐出させることにより、該ノズルに対して相対的に移動する基材上に有機層を形成する蒸着工程を含む有機機能性素子の製造方法であって、
前記ノズルの開口部と前記基材との間に介在され、互いに並列し且つ前記基材の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材を有する蒸着量調整部材を用い、
基材移動方向と垂直な開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部へ向かう程、前記線部材同士の間隔が大きくなるように前記線部材を配置し、
前記線部材間において前記開口部から吐出された有機層形成材料を通過させつつ、前記蒸着工程を行うことを特徴とする。
【0015】
これにより、基材上での蒸着量における基材の幅方向中央部と両端部との差、すなわち、有機層における上記幅方向中央部と両端部との膜厚の差を小さくし、該膜厚を上記幅方向において均一に近づけることができるため、有機層によって発揮される機能の変動が抑制された、高品質な有機機能性素子を効率的に製造することが可能となる。
【0016】
また、本発明は、前記線部材における少なくとも前記開口部の中央部を通過するように配置された1つが、前記開口部における前記移動方向両端辺と交差するように前記線部材を配置することが好ましい。
【0017】
これにより、有機層における上記幅方向中央部と両端部との膜厚の差を、より小さくすることができるため、有機機能性素子によって発揮される機能の変動がより抑制された、より高品質な有機機能性素子を製造することができる。
【0018】
また、本発明は、前記開口部の基材移動方向の長さをL(mm)、基材幅方向の長さをW(mm)とし、前記基材移動方向に対する前記線部材の交差角度をθ(°)とするとき、式0<θ≦arctan(W/L)を満たすように構成されたことが好ましい。
【0019】
これにより、有機機能性材層における上記幅方向中央部と両端部との膜厚の差を、より小さくすることができるため、有機機能性素子によって発揮される機能の変動がより抑制された、より高品質な有機機能性素子を製造することができる。
【0020】
また、本発明に係る有機機能性素子の製造装置は、
気化された有機層形成材料をノズルから吐出することにより、該ノズルに対して相対的に移動する基材上に有機層を形成する蒸着源を備えた有機機能性素子の製造装置であって、
前記ノズルの開口部と前記基材との間に介在され、互いに並列し且つ前記基材の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材を有する蒸着量調整部材が設けられ、
基材移動方向と垂直な開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部へ向かう程、前記線部材同士の間隔が大きくなるように前記線部材が配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上の通り、本発明によれば、有機層によって発揮される機能の変動が抑制された、高品質な有機機能性素子を効率的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造装置を模式的に示す概略側面断面図
【図2】図1の蒸着量調整部材近傍の斜視図
【図3】蒸着量調整部材の上面図
【図4】蒸着量調整部材と基材及び開口部との配置関係を示す模式的な平面図
【図5】基材の移動方向に対する線部材の交差角度が30°のときの開口部と線部材との配置関係を示す図
【図6】基材の移動方向に対する線部材の交差角度が45°のときの開口部と線部材との配置関係を示す図
【図7】基材の移動方向に対する線部材の交差角度が60°のときの開口部と線部材との配置関係を示す図
【図8】基材の移動方向に対する線部材の交差角度が75°のときの開口部と線部材との配置関係を示す図
【図9】線部材が、開口部の対角線上に配置された状態と、基材移動方向と平行に配置された状態とを示す図
【図10】有機EL素子の層構成を模式的に示す概略側面断面図であって、図10(a)は、有機層が1層の場合、図10(b)は、有機層が3層の場合、図10(c)は、有機層が5層の場合を示す図
【図11】真空チャンバー内に蒸着源が複数設けられた状態を模式的に示す概略側面断面図
【図12】本発明の第2実施形態に係る有機EL素子の製造装置に用いられる線部材と、開口部と、の配置関係を示す模式的な平面図
【図13】本発明の第3実施形態に係る有機EL素子の製造装置に用いられる蒸着量調整部材と、基材及び開口部と、の配置関係を示す模式的な平面図
【図14】本発明の第4実施形態に係る有機EL素子の製造装置に用いられる蒸着量調整部材と、基材及び開口部と、の蒸着開始時における配置関係を模式的に示す平面図
【図15】本発明の第4実施形態に係る有機EL素子の製造装置に用いられる蒸着量調整部材と、基材及び開口部と、の蒸着開始時から所定時間経過後の配置関係を模式的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係る有機機能性素子の製造方法及び有機機能性素子の製造装置について、有機機能性素子が、発光機能を有する有機EL素子である場合について例を挙げて図面を参照しつつ説明する。
【0024】
まず、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造装置及び製造方法について説明する。図1に示すように、有機EL素子の製造装置1は、真空チャンバー3を有する蒸着装置であり、真空チャンバー3内には、大まかには、基材供給手段たる基材供給装置5と、キャンロール7と、蒸着源9と、基材回収装置6とが配置されている。
【0025】
真空チャンバー3は、不図示の真空発生装置により、その内部が減圧状態にされ、内部に真空領域を形成することができるようになっている。かかる真空チャンバー内の真空度は、有機層を形成するための材料(有機層形成材料)22の種類等に応じて適宜設計することができ、例えば、10-5Pa以上10-3Pa以下とすることが好ましい。
【0026】
基材供給装置5としては、ロール状に巻き取られた帯状の基材21を繰り出す供給ローラ5が備えられている。前記基材回収装置6としては、繰り出された基材21を巻き取る巻取ローラ6が備えられている。即ち、供給ローラ5から繰り出した基材21はキャンロール7に供給された後、巻取ローラ6によって巻き取られる、所謂ロールトゥロール方式となっている。
【0027】
キャンロール7は、円筒状のステンレスから形成されており、回転駆動するようになっている。かかるキャンロール7は、供給ローラ5から繰り出され(供給され)、巻取ローラ6に巻き取られる基材21が所定の張力で巻き架けられるような位置に配置されており、キャンロール7の周面(表面)で基材21の非電極層側(一面側、具体的には、陽極層の設けられた側と反対の側)を支持するようになっている。また、キャンロール7が回転(図1の反時計回りに回転)することにより、巻き掛けられた(支持された)基材21をキャンロール7と共に回転方向に移動させることができるようになっている。
【0028】
かかるキャンロール7は、内部に冷却機構等の温度調整機構を有していることが好ましく、これにより、後述する基材21上での有機層の成膜中において、基材21の温度を安定させることができる。キャンロール7の外径は、例えば、300〜2000mmに設定することができる。
【0029】
そして、キャンロール7が回転すると、その回転に応じて供給ローラ5から基材21が順次繰り出され、繰り出された基材21がキャンロール7の周面に当接して支持されつつその回転方向に移動すると共に、キャンロール7から離れた基材21が巻取ローラ6によって巻き取られる。
【0030】
基材21の形成材料としては、キャンローラ7に巻き架けられても損傷しないような可撓性を有する材料が用いられ、このような材料として、例えば、金属材料、非金属無機材料や樹脂材料を挙げることができる。
【0031】
上記金属材料としては、例えば、ステンレス、鉄−ニッケル合金等の合金、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、チタン等を挙げることができる。また、上記した鉄−ニッケル合金としては、例えば36アロイや42アロイ等を挙げることができる。これらのうち、ロールプロセスに適用し易いという観点から、上記金属材料は、ステンレス、銅、アルミニウムまたはチタンであることが好ましい。また、かかる金属材料から形成された基材の膜厚は、取り扱い性や基材の巻き取り性の観点から、5〜200μmであることが好ましい。
【0032】
上記非金属無機材料としては、例えば、ガラスを挙げることができ、かかるガラスから形成された基材として、例えば、フレキシブル性を持たせた薄膜ガラスを挙げることができる。また、非金属無機材料から形成された基材の厚みは、十分な機械的強度および適度な可塑性の観点から、5〜500μmであることが好ましい。
【0033】
上記樹脂材料としては、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂などの合成樹脂を挙げることができ、かかる合成樹脂として、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、樹脂材料から形成された基材として、例えば、上記合成樹脂のフィルムを用いることができる。また、該基材の膜厚は、十分な機械的強度および適度な可塑性の観点から、5〜500μmであることが好ましい。
【0034】
基材21の幅は、形成される有機EL素子の大きさに応じて適宜設計され、特に限定されるものではないが、例えば、5mm〜1000mmであることが好ましい。
【0035】
基材21として具体的には、スパッタリングによって予め陽極層23(図10参照)を形成したものを用いることができる。
陽極層23を形成するための材料としては、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、インジウム−錫酸化物(ITO)等の各種透明導電材料や、金、銀、白金などの金属や合金材料を用いることができる。
【0036】
蒸着源9は、発光層(有機層25a)を含む少なくとも1層の有機層(図10参照)を形成するためのものであり、形成すべき有機層に対応して1つ以上設けられている。本実施形態では、1層の有機層25aを形成するために蒸着源9が1つ設けられている。蒸着源9は、キャンロール7の周面における基材21の支持領域と対向する位置に配置されており、基材21上に形成された陽極層23上に有機層形成材料22を蒸着させることにより、該基材21上に形成された陽極層23上に有機層(図10参照)を形成するようになっている。
【0037】
かかる蒸着源9の構成は、加熱等により気化された有機層形成材料22を基材21に向けて吐出可能なノズルを有していれば、特に限定されるものではない。例えば、蒸着源9は、有機層形成材料22を収容することができるようになっており、図2に示すように、ノズル9aと、加熱部(不図示)とを有している。ノズル9aは、キャンロール7における基材21の支持領域と、対向するように配置されている。上記加熱部は、有機層形成材料22を加熱して気化させるようになっており、気化された有機層形成材料22は、ノズル9aから外部に吐出されているようになっている。加熱時の蒸着源9内の温度は、有機層形成材料22の種類等に応じて適宜設計することができ、例えば、250℃以上320℃以下であることが好ましい。
【0038】
また、蒸着源9のノズル9aの開口部9aaと基材21との間には、蒸着量調整部材30が配置されている。該蒸着量調整部材30の詳細については後述する。
【0039】
そして、蒸着源9内で有機層形成材料22が加熱されると、該有機層形成材料22が気化され、気化された有機層形成材料22が、ノズル9aから基材21に向かって吐出されて、基材21上に蒸着される。このように気化された有機層形成材料22が基材21に蒸着されることにより、図2及び図10(a)に示すように、基材21上に形成された陽極層23上に有機層25aが形成される。
【0040】
発光機能を有する有機層は、少なくとも発光層(有機層25a)を有していれば特に限定されるものではなく、また、必要に応じて、複数の有機層が形成されるようにすることができる。例えば図10(b)に示すように、正孔注入層(有機層25b)、発光層(有機層25a)及び電子注入層(有機層25c)をこの順に積層して、有機層を3層積層することもできる。その他、必要に応じて、上記図10(b)に示す発光層(有機層25a)と正孔注入層(有機層25b)の間に正孔輸送層(有機層25d、図10(c)参照)を挟むことによって、または、発光層(有機層25a)と電子注入層(有機層25c)との間に電子輸送層(有機層25e、図10(c)参照)を挟むことによって、有機層を4層積層することもできる。
【0041】
さらに、図10(c)に示すように、正孔注入層(有機層25b)と発光層(有機層25a)との間に正孔輸送層(有機層25d)、発光層(有機層25a)と電子注入層(有機層25c)との間に電子輸送層(有機層25e)を挟むことによって、有機層を5層積層することもできる。また、各有機層の膜厚は、通常、数nm〜300nm程度までの間で設計されるが、かかる膜厚は、有機層形成材料22や、発光特性等に応じて適宜設計されるものであり、特に限定されない。
【0042】
上記発光層を形成するための材料としては、例えば、トリス(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、イリジウム錯体(Ir(ppy)3)をドープした4,4’−N,N’−ジカルバゾニルビフェニル(CBP)等を用いることができる。
【0043】
上記正孔注入層を形成するための材料としては、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4’−ビス[N−4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ]ビフェニル(DNTPD)等を用いることができる。
【0044】
上記正孔輸送層を形成するための材料としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’ビフェニル−4,4’ジアミン(TPD)等を用いることができる。
【0045】
上記電子注入層を形成するための材料としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li2O)等を用いることができる。
【0046】
上記電子輸送層を形成するための材料としては、例えば、トリス(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(BAlq)、OXD−7(1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル])ベンゼン等を用いることができる。
【0047】
また、蒸着源9は、上記したような基材21の陽極層23上に形成される有機層の積層構成や積層数量に応じて1つ以上配置されることができる。例えば、図10(b)に示すように有機層を3層積層する場合には、図11に示すように、キャンローラ7の回転方向に沿って3つの蒸着源を配置することができる。このようにキャンロール7の回転方向に沿って複数の蒸着源9が設けられた場合、該回転方向に対し最も上流側に配置された蒸着源9によって陽極層23上に1層目の有機層が蒸着された後、下流側の蒸着源9によって1層目の有機層上に順次2層目以降の有機層が蒸着されて、積層されるようになっている。
【0048】
上記したように基材21上に形成された陽極層23上に有機層を蒸着した後、有機層の最上面に陰極層27を不図示のスパッタ装置等の真空成膜装置を用いて形成することによって、図10に示すように、基材21上に、陽極層23、有機層25a及び陰極層27がこの順に積層された有機EL素子20が形成(製造)されるようになっている。陰極層27としては、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ITO、アルカリ金属、または、アルカリ土類金属を含む合金等を用いることができる。
【0049】
なお、真空チャンバー3内のキャンロール7における基材21の支持領域と対向する位置において、キャンロール7の回転方向に対し有機層25aを形成するための蒸着源9の上流側に陽極層23を形成するための真空成膜装置、下流側に陰極層27を形成するための真空成膜装置を配置し、キャンロール7に支持されつつ移動する基材21に陽極層23を成膜した後、有機層25aを蒸着し、さらに陰極層27を成膜することもできる。
【0050】
また、その他、陽極層23及び陰極層27の材料として、蒸着源によって蒸着可能な材料を用いた場合には、真空チャンバー3内に陽極層23及び陰極層27用の蒸着源を配置し、基材21上に、陽極層23、有機層25a、陰極層27をこの順に連続して蒸着することによって、有機EL素子20を形成することもできる。
【0051】
このようにして形成された有機EL素子20において、陽極層23及び陰極層27にそれぞれ陽極及び陰極の電圧を印加することにより、有機層25aたる発光層が発光し、発光機能を発揮する。
【0052】
次に、蒸着量調整部材30について説明する。
【0053】
図2〜図4に示すように、蒸着量調整部材30は、ノズル9aの開口部9aaと基材21との間に介在され、互いに並列し且つ基材21の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材31を有しており、該線部材31間において開口部9aaから吐出された有機層形成材料22を通過させるようになっている。
【0054】
具体的には、図2に示すように、本実施形態では、蒸着量調整部材30の線部材31は、開口部9aaと基材21との間において、開口部9aaと平行な平面上に配置されている。なお、線部材31は、必ずしも該平面上に配置される必要はない。
【0055】
図3に示すように、本実施形態では、複数の線部材31は、互いに平行に配置されており、また、該線部材31は、14本設けられている。かかる線部材31は、互いに同じ外径を有している。また、線部材31同士の間隔は、線部材31の長手方向と垂直方向(図3の左右方向)に対し中央部から両端部に向かう程大きくなるように設定されている。すなわち、開口部9aaにおいて線部材31によって遮蔽される領域は、上記垂直方向中央部では比較的密に分布しているのに対し、両端部に向かう程(外側に向かう程)、比較的疎に分布している。
【0056】
さらに、このように分布した遮蔽領域分布を有する線部材31は、図4に示すように、基材21の移動方向(基材移動方向、白抜き矢印)に対して交差して配置されている。すなわち、基材移動方向と垂直な開口部9aa幅方向(図4の左右方向)において、該開口部9aaの中央部から両端部に向かう程、線部材31同士の間隔が大きくなるように線部材31が配置されている。これにより、有機層形成材料22の蒸着量を、基材21の幅方向(基材幅方向、図4の左右方向)中央部の方が、両端部よりも小さくなるようにすることができる。なお、開口部9aaの幅方向と基材幅方向とは、同じ方向である。
【0057】
加えて、基材21の基材移動方向への移動に伴って、基材21上の蒸着されるべき幅方向全域がそれぞれ、開口部9aaにおける線部材31によって遮蔽されない領域(線部材31間の隙間)を、必ず通過することができる。これにより、線部材31による遮蔽に起因して有機層形成材料22の蒸着量が基材幅方向において部分的に減少することを、抑制することができる。
【0058】
このように、線部材31が基材移動方向に対して交差し、開口部9aa幅方向において、該開口部9aaの中央部から両端部に向かう程、線部材31同士の間隔が大きくなるように線部材31が配置されていることにより、基材21上への有機層形成材料22の蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることができる。すなわち、有機層の基材幅方向中央部と両端部との膜厚の差を小さくすることができる。従って、該膜厚を幅方向に均一に近づけることができるため、膜厚の変動に起因する有機層の発揮する機能の変動を、抑制することができる。
【0059】
また、図2〜4に示すように、蒸着量調整部材30は、さらに、繰り出し部33、巻き取り部35及びガイド部材37を有している。
【0060】
繰り出し部材33は、ローラ状に形成されており、かかる繰り出し部材33の周面には、上記した線部材31の数量及び間隔に対応した溝部33aが設けられている。かかる溝部33aには、各線部材31が巻回されて収容されており、また、繰り出し部材33が回転することにより、巻回された線部材31を繰り出すようになっている。
【0061】
巻き取り部材35は、上記繰り出し部材33と同様、ローラ状に形成されており、かかる巻き取り部材35の周面には、上記した線部材31の数量及び間隔に対応した溝部35aが設けられている。巻き取り部材35が回転することにより、繰り出し部材33から繰り出された各線部材31を巻き取って収容するようになっている。
【0062】
また、繰り出し部材33及び巻き取り部材35の配置は、開口部9aaに対する線部材31の上記配置関係を維持したまま、線部材31を繰り出し及び巻き取りすることができるように設定されている。また、本実施形態では、1つの繰り出し部材33から全ての線部材31が一斉に繰り出され、1つの巻き取り部材35によって一斉に巻き取られるようになっている。そして、かかる繰り出し部材33及び巻き取り部材35によって、線部材31が順次連続して開口部9aaと対向する領域(蒸着領域)を通過するようになっている。
【0063】
ガイド部材37は、繰り出し部材33と巻き取り部材35との間において、開口部9aaよりも外側に一対設けられている。かかるガイド部材37は、繰り出し部材33から繰り出された線部材31を、上記の配置関係を維持しながら巻き取り部材35へと案内するためのものであり、該ガイド部材37には、各線部材31に対応した溝部37aが形成されている。また、ガイド部材37は、開口部9aaから吐出された有機層形成材料22の基材21側への飛翔を妨げないような位置において、真空チャンバー3内に支持されている。
【0064】
次に、上記製造装置を用いた本実施形態の有機機能性素子の製造方法について説明する。
【0065】
本実施形態に係る有機EL素子(有機機能性素子)の製造方法は、気化された有機層形成材料22をノズル9aから吐出させることにより、該ノズル9aに対して相対的に移動する基材21上に有機層25aを形成する蒸着工程を含む有機機能性素子の製造方法であって、ノズル9aの開口部9aaと基材21との間に介在され、互いに並列し且つ基材21の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材31を有する蒸着量調整部材30を用い、基材移動方向と垂直な開口部9aa幅方向において、該開口部9aaの中央部から両端部へ向かう程、線部材31同士の間隔が大きくなるように線部材31を配置し、線部材31間において開口部9aaから吐出された有機層形成材料22を通過させつつ、蒸着工程を行う。
【0066】
具体的には、蒸着に先立って、上記の通り線部材31の配置等を設定し、基材21と蒸着源9のノズル9aとの間に、かかる線部材31が備えられた蒸着量調整部材30を介在させておく。
【0067】
そして、かかる蒸着量調整部材30を設置後、減圧雰囲気下、スパッタリング等によって一面側に予め陽極層23が形成され、ロール状に巻き取られた基材21を供給ローラ5から繰り出す。また、開口部9aaと基材21との間に介在された蒸着量調整部材30において、繰り出し部材33から線部材31を、順次繰り出して蒸着領域を通過させつつ、巻き取り部材35によって順次巻き取る。
【0068】
次に、上記した供給ローラ5から繰り出された基材21を、陽極層23が形成された側と反対の側をキャンロール7の表面に当接させて移動させつつ、キャンロール7と対向して配置された蒸着源9によって有機層25a(図3参照)を含む有機層形成材料22を気化させ、気化された有機層形成材料22を、ノズル9aからキャンロール7に支持された基材21上の陽極層23上に、蒸着領域を順次通過する線部材31を介して蒸着させる。
【0069】
そして、基材21上に有機層25aを形成した後、有機層25aが蒸着された基材21を巻取ローラ6によって巻き取る。さらに、巻き取られた基材21上に形成された有機層25a上に、不図示のスパッタ装置によって陰極層27を形成することにより、基材21に、陽極層23、有機層25a及び陰極層27がこの順に積層された有機EL素子20を形成することができる。
【0070】
このようにして有機EL素子を製造することにより、上記した様に、基材21上における有機層25aの膜厚の、基材21の幅方向中央部と両端部との差を小さくすることができる。従って、有機層25aの発揮する機能の変動が抑制された、高品質な有機EL素子を効率的に製造することが可能となる。
【0071】
上記した線部材31の形状は、特に限定されるものでなく、例えば円柱状や矩形柱状等とすることができるが、円柱状であることが好ましい。これにより、線部材31に対する有機層形成材料22の付着量を少なくすることができる。
【0072】
また、上記したように、本実施形態では、線部材31の外径が同じであることにより、線部材31を加工することが容易となるため、効果的である。また、線部材31の数量や間隔は、上記蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0073】
これら線部材31の形状、外径、数量や間隔は、有機層形成材料22の種類、開口部9aaの大きさや形状等に応じて適宜設計することができる。例えば、これら形状、外径、数量や間隔は、蒸着量調整部材30を設けることなく基材21上に有機層25aを形成し、形成された有機層25aにおける基材21の幅方向の膜厚分布を測定し、得られた膜厚分布の実測値に基づいて、補正に必要な開口率、すなわち、開口部の面積に対する開口部が線部材31によって遮蔽されない面積の比率を計算することにより、設計することができる。
【0074】
例えば、開口部9aaは、幅5mm〜1000mmの矩形状とすることができ、線部材31の形状は、円柱状、外径は、10μm〜500μm、数量は、2〜40本、とすることができる。また、線部材31の間隔は、例えば、上記開口部幅方向中央部から外側に向かう程広くなる(線部材が疎になる)ように設定することができる。また、線部材31の長さは、開口部9aaから吐出される有機層形成材料22の基材21側への通過量を調整して、基材21上での蒸着量を調整可能であれば、特に限定されるものではない。
【0075】
また、基材移動方向に対する線部材31の交差の程度は、基材21上への有機層形成材料22の蒸着量における、基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが可能であれば、特に限定されるものではなく、上記した線部材31の形状、外径、数量や間隔と同様、例えば膜厚分布の実測値に基づいて設計することができる。
【0076】
但し、図5〜図8に示すように、交差の程度が、例えば交差角度θとして30°から75°へと大きくなる程、線部材31の配置が基材幅方向(開口部幅方向)に対して平行に近づき、有機層形成材料22の蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが困難となる傾向にある。一方、交差角度が小さくなる程、線部材31による遮蔽に起因する、部分的な膜厚の減少が生じ易くなる傾向にある。
【0077】
また、基材移動方向に対する線部材31の交差角度については、開口部9aaの形状が基材幅方向に比較的長い長辺を有する矩形状の場合には、比較的大きな交差角度でも、線部材31における少なくとも上記開口部9aaの中央部を通過する1つが、開口部9aaにおける上記移動方向両端辺と交差し易くなって、上記蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくし易くなる。一方、開口部9aaの形状が基材移動方向に比較的長い長辺を有する矩形状の場合には、比較的小さな交差角度で、上記線部材31の少なくとも1つが上記両端部と交差し難くなって、上記蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくし難くなる。
【0078】
従って、例えば上記観点を考慮して、線部材31の基材移動方向に対する配置を適宜設計することができ、例えば、本実施形態のように開口部9aaが矩形状のとき、線部材31における少なくとも開口部9aaの中央部を通過するように配置された1つが、開口部9aaにおける基材移動方向(図4の上下方向)両端辺と交差することが好ましい。これにより、基材幅方向における線部材31による蒸着量の調整作用を、より有効に発揮させることができる。
【0079】
また、例えば、図9に示すように、開口部9aaの基材移動方向の長さをL(mm)、基材幅方向の長さをW(mm)とし、線部材31が、ノズル9aの開口部9aaの対角線R上に配置されたとする。このとき、交差角度θは、開口部9aaの基材移動方向に沿った辺と対角線との角度Φと等しくなる。また、角度Φは、Φ=arctan(W/L)で表される。そして、線部材31が、かかる対角線よりも基材21の幅方向(図9の左右方向)に傾斜する、すなわち、交差角度θが角度Φよりも大きい場合には、有機層形成材料22の蒸着量における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが困難となる。従って、交差角度θ(°)は、式θ≦arctan(W/L)を満たすことが好ましい。一方、線部材31が基材移動方向と交差するため、交差角度θは、θ>0°である。なお、arctanの計算結果として得られる角度の単位はラジアンであるため、従来公知の換算方法、すなわち得られた角度に(180°/π)を掛けることにより、該角度の単位を度(°)に換算する。
【0080】
開口部9aaに対する各線部材31の配置については、上記した膜厚分布の実測値に応じて設計されるものであり、有機層の基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが可能であれば特に限定されるものではない。例えば、線部材31が、開口部9aaの中心R(図5参照)に対し点対称に配置されていることが好ましい。これにより、基材21上における基材幅方向中央部を挟んだ両側において、同様にして蒸着量を調整することができる。
【0081】
基材21と開口部9aaとの間における線部材31の配置については、例えば、線部材31は、基材21よりも開口部9aaに近い位置に配置されることが好ましく、線部材31が開口部9aaと近接するように配置されることがより好ましい。また、線部材31を開口部9aaと当接させることもできる。線部材31が基材21よりも開口部9aaに近い位置に配置されることにより、線部材31間を通過後において、有機層形成材料22が拡散するための空間領域が確保され易くなるため、線部材31による遮蔽に起因する、部分的な膜厚の減少を防止することができる。
【0082】
また、線部材31が介在される、基材21と開口部9aaとの間の距離については、15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが好ましい。かかる距離が小さい程、有機層の膜厚が基材幅方向に変動し易い傾向にある。従って、上記距離を15mm以下とすることにより、有機層の膜厚が基材幅方向に変動し易い条件下であっても、該膜厚の基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることができるため、より効果的である。
【0083】
線部材31の材質については、線部材31が、有機層形成材料22を気化させるための加熱によって蒸着源9の内部が温度上昇した際の蒸着源9内の温度に対して、耐久性を有することが好ましい。かかる耐熱性を有することにより、開口部9aa周辺の温度や加熱された有機層形成材料22との接触によって線部材31が破損等することを防止することができる。また、線部材31は、蒸着源9と同じ熱伝導性を有していることが好ましい。これにより、開口部9aa周辺よりも線部材31の温度が低下することを防止し、かかる温度低下に起因して有機層形成材料22が線部材31に付着し易くなることを、防止することができる。
【0084】
このように蒸着源9と同じ熱伝導性を有する、という観点からすれば、線部材31は、蒸着源9と同じ材質から形成されていることがより好ましい。このような耐久性及び熱伝導性を有する線部材31として、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、金、ニクロム、タングステン、タンタル、モリブデン等が挙げられる。
【0085】
また、図10の有機EL素子20内部において有機層の膜厚の変動を抑制する程、電気特性の差や光学特性の差に基づく該素子の発光面における輝度ムラ(機能の変動)を抑制することができる。かかる観点を考慮すれば、有機層の幅方向における膜厚誤差を、膜厚誤差=(各測定位置での膜厚−中央部での膜厚)/中央部での膜厚×100によって算出するとき、該膜厚誤差≦5%となる領域が、有機層の幅方向全域に対して65%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。このように、膜厚誤差≦5%となる領域が65%以上であることにより、上記発光色(発光機能)の変動をより確実に抑制することができるため、より高品質な有機EL素子を製造することが可能となる。
【0086】
本実施形態では、上記のように、繰り出し部材33及び巻き取り部材35が設けられているため、有機層形成材料22が付着していないフレッシュな線部材31が、蒸着源9と基材21との間に順次連続して介在される。これにより、線部材31上に有機層形成材料22が蓄積されることを防止できるため、線部材31上に蓄積された有機層形成材料22が基材21上へと落下して不測の不具合が発生することを防止することができる。また、ガイド部材37が設けられているため、開口部9aaと対向する位置を通過する線部材31の配置の変動を防止することができる。
【0087】
しかし、これら繰り出し部材33、巻き取り部材35及びガイド部材37は、本発明の必須構成要素ではなく、これらを設けない構成とすることもできる。
【0088】
次に、本発明の第2実施形態に係る有機EL素子の製造装置及び製造方法について説明する。
【0089】
図12に示すように、本実施形態では、開口部9aa幅方向において、開口部9aaの中央部から両端部に向かう程、線部材31の外径が小さくなるように構成されている。また、線部材31における断面の中心同士の間隔が、一定となるように配置されている。これにより、上記幅方向中央部から両端部に向かう程、線部材31の間隔が大きくなっている。また、かかる線部材31の外径は、上記第1実施形態と同様に、例えば、蒸着量調整部材30を用いることなく有機層25aを形成したときの、膜厚分布の実測値に基づいて設計することができる。その他の構成については第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0090】
本実施形態によれば、線部材31の外径を調整することによって、線部材31の中心同士の間隔を一定に保つことができるため、線部材31の位置決めが容易となる。また、本実施形態で示すように線部材31の外径を調整することに加え、線部材31の間隔を調整すれば、線部材31の径と線部材31の中心間間隔との両方で線部材31同士の間隔を調整できるため、該線部材31の間隔のより詳細な調整が可能となり、一層効果的である。
【0091】
次に、本発明の第3実施形態に係る有機EL素子の製造装置及び製造方法について説明する。
【0092】
本実施形態では、図13に示すように、蒸着量調整部材30に繰り出し部33及び巻き取り部35が設けられておらず、線部材31の長手方向両端部が一対の支持部材39に支持されている。その他の構成については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
本実施形態に示すように、線部材31が固定され、開口部9aaに対して移動しない場合であっても、上記第1実施形態と同様、基材21上での有機層における基材幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが可能である。
【0094】
次に、本発明の第4実施形態に係る有機EL素子の製造装置及び製造方法について説明する。
【0095】
図14に示すように、本実施形態では、線部材31が一対の支持部材39に支持されている。また、線部材31は、該線部材31の長手方向において開口部9aaの2倍以上の長さを有している。さらに、支持部材39は、線部材31の長手方向に沿って、線部材31を伴って移動できるようになっている。
【0096】
そして、14に示すように、蒸着開始から所定時間が経過するまでは、例えば線部材31の長手方向一端部側が蒸着領域に配置されており、蒸着開始から所定時間経過後に、図15に示すように、線部材31における有機層形成材料22が未だ付着されていない領域が蒸着領域に配置されるように、支持部材39と線部材31とが移動する。また、かかる線部材31及び支持部材39の移動前後で、開口部9aaに対する各線部材31の配置関係が維持されるようになっている。その他の構成は、第3実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0097】
本実施形態により、所定時間経過後に、線部材31のうち有機層形成材料22が未だ付着していないフレッシュな部分が蒸着領域に配置されるため、線部材31上への有機層形成材料22の蓄積を防止することが可能となる。なお、蒸着開始から、支持部材39及び線部材31が、線部材31の長手方向に沿って順次移動するような構成とすることもできる。
【0098】
本発明の有機機能性素子の製造方法及び製造装置は、有機EL素子を例として説明した上記の通りであるが、本発明は上記各実施形態に限定されず本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。例えば、上記各実施形態では、蒸着源9内で有機層形成材料22を気化させたが、別途の装置で気化された有機層形成材料22を蒸着源9内に導入し、該蒸着源9のノズル9aから吐出することもできる。
【0099】
また、上記各実施形態では、基材供給装置5を真空チャンバー3内に配置したが、基材21をキャンローラ7へと繰り出すことが可能であれば、キャンローラ7への供給方法は特に限定されるものではない。また、上記実施形態では、蒸着工程が終了した基材21を巻き取ったが、かかる基材21を巻き取ることなく、裁断等の工程に供することもできる。
【0100】
また、上記各実施形態では、線部材31が互いに平行に配置されているが、線部材31は、互いに並列しており、有機層の膜厚における基材21の幅方向中央部と両端部との差を小さくすることが可能であれば、必ずしも平行に配列される必要はない。
【0101】
また、上記各実施形態では、本発明の有機機能性素子を有機EL素子に適用したが、本発明が適用される有機機能性素子は、その他、有機太陽電池素子等、それぞれの機能を発揮させるための有機層を形成する材料を基材上に有する素子であれば、特に限定されることなく適用することができる。かかる場合において、それぞれの機能を発揮させることが可能な有機層形成材料を蒸着源から上記した蒸着量調整部材を介して、それぞれの機能を発揮させるのに適した基材上に付着させばよい。
【0102】
例えば、有機太陽電池素子に適用する場合には、フラーレン、銅フタロシアニン等の有機層形成材料を、ガラス、プラスチック、メタルフォイル(金属箔)等の基材上に蒸着することによって、光電変換機能を有する有機層を形成すればよい。
【0103】
また、上記第1及び第2実施形態では、全ての線部材31が1つの繰り出し部材33及び1つの巻き取り部材35によって移動可能に構成しているが、その他、各線部材31に対してそれぞれ、繰り出し部及び巻き取り部を設けることもできる。また、全ての線部材31を2つや3つのグループに分け、それぞれのグループごとに繰り出し部材及び巻き取り部材を設けること等もできる。
【実施例】
【0104】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
実施例1
第1実施形態と同様の有機EL製造装置を用い、基材21上に有機層を形成し、膜厚変動を測定した。有機層の膜厚変動を精度良く測定するために、基材上に直接、有機層を形成し、形成された有機層の膜厚分布を測定した。
【0106】
すなわち、上記した第1実施形態に係る製造装置1において蒸着源9を1つ配置し、発光層たる有機層を形成するための材料としてトリス(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、基材21として幅20mm、全長130mのフレキシブルガラス基板(基材)を用いた。材質がステンレスのノズル9aを用い、ノズル9aの開口部9aaを、幅が20mm、長さが35mmの矩形状とした。また、蒸着量調整部材として、材質がステンレス、外径が50μm、形状が円柱形状、長さが40mmの線部材が、40本、基材移動方向に対する交差角度が30°となるように配置されたものを用いた。
【0107】
そして、蒸着源9内に1gのAlq3を添加し、チャンバー3内を、真空度が5.0×10-5Paとなるように真空排気した後、蒸着源9内が300℃に達するまで加熱し、上記の通り線部材が順次連続して移動する蒸着量調整部材30を介して、ノズル9aの開口部9aaからフレキシブルガラス基板上に、Alq3を吐出して、基材21と同じ幅(20mm)となるように、また、膜厚が200nmとなるように蒸着して、有機層を形成した。
【0108】
形成された有機層の膜厚について、ULVAC社製の触針式表面形状測定器Dektakを用い、該測定器を形成された有機層の表面に接触させて、有機層における基材21の長手方向中央において、幅方向に1mmおきに測定し、各測定位置について膜厚誤差=(各測定位置での膜厚−中央部での膜厚)/中央部での膜厚×100(%)によって、膜厚誤差を算出し、幅方向における膜厚誤差分布を得た。得られた膜厚誤差分布から、中央部との膜厚誤差Sが、|S|≦10%となる領域、|S|≦5%となる領域、|S|≦3%となる領域を、各領域が占める幅方向長さ(mm)として求めた。さらに、それぞれ求めた幅方向長さの、有機層の幅方向全域(基材長さ、20mm)に対する百分率(%)を算出した。そして、|S|≦5%となる領域に相当する幅方向長さが、基材の幅方向長さに対して80%以上である場合を◎、80%未満65%以上である場合を○、65%未満である場合を△として、膜厚誤差の小ささを評価した。結果を表1に示す。
【0109】
実施例2
【0110】
第3実施形態と同様の製造装置を用い、蒸着量調整部材の線部材を移動させることなく固定して蒸着を行うこと以外は実施例1と同様にして有機層を形成し、幅方向における膜厚誤差を算出した。結果を表1に示す。
【0111】
比較例1
【0112】
蒸着量調整部材を用いなることなく蒸着を行うこと以外は実施例1と同様にして有機層を形成し、幅方向における膜厚誤差を算出した。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1に示すように、蒸着量調整部材を用いた実施例1、2は、蒸着量調整部材を用いない比較例1よりも、膜厚誤差が小さいことが認められた。また、実施例1と2では、線部材を順次連続して繰り出し及び巻き取る実施例1の方が、膜厚誤差が小さいことが認められた。これにより、開口部と基材との間に常に新鮮な線部材が介在することにより、有機層形成材料の付着による影響を回避することができるため、膜厚誤差を小さくできることが示された。
【0115】
上記の結果、本発明に係る有機機能性素子の製造方法及び有機機能性素子の製造装置により、基材上に形成される有機層の膜厚の変動を幅方向に抑制でき、有機層が発揮する性能の変動を抑制できることがわかった。
【符号の説明】
【0116】
1:有機EL素子(有機機能性素子)の製造装置、3:真空チャンバー、5:基材供給装置、7:キャンロール、9:蒸着源、9a:ノズル、9aa:開口部、20:有機EL素子、21:基材、22:有機層形成材料、25a:有機層、30:蒸着量調整部材、31:線部材、33:繰り出し部材、35:巻き取り部材、37:ガイド部材、39:支持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化された有機層形成材料をノズルから吐出させることにより、該ノズルに対して相対的に移動する基材上に有機層を形成する蒸着工程を含む有機機能性素子の製造方法であって、
前記ノズルの開口部と前記基材との間に介在され、互いに並列し且つ前記基材の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材を有する蒸着量調整部材を用い、
基材移動方向と垂直な開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部へ向かう程、前記線部材同士の間隔が大きくなるように前記線部材を配置し、
前記線部材間において前記開口部から吐出された有機層形成材料を通過させつつ、前記蒸着工程を行うことを特徴とする有機機能性素子の製造方法。
【請求項2】
前記線部材における少なくとも前記開口部の中央部を通過するように配置された1つが、前記開口部における前記基材移動方向両端辺と交差するように前記線部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の有機機能性素子の製造方法。
【請求項3】
前記開口部の基材移動方向の長さをL(mm)、基材幅方向の長さをW(mm)とし、前記基材移動方向に対する前記線部材の交差角度をθ(°)とするとき、式0<θ≦arctan(W/L)を満たすように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の有機機能性素子の製造方法。
【請求項4】
気化された有機層形成材料をノズルから吐出することにより、該ノズルに対して相対的に移動する基材上に有機層を形成する蒸着源を備えた有機機能性素子の製造装置であって、
前記ノズルの開口部と前記基材との間に介在され、互いに並列し且つ前記基材の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材を有する蒸着量調整部材が設けられ、
基材移動方向と垂直な開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部へ向かう程、前記線部材同士の間隔が大きくなるように前記線部材が配置されたことを特徴とする有機機能性素子の製造装置。
【請求項1】
気化された有機層形成材料をノズルから吐出させることにより、該ノズルに対して相対的に移動する基材上に有機層を形成する蒸着工程を含む有機機能性素子の製造方法であって、
前記ノズルの開口部と前記基材との間に介在され、互いに並列し且つ前記基材の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材を有する蒸着量調整部材を用い、
基材移動方向と垂直な開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部へ向かう程、前記線部材同士の間隔が大きくなるように前記線部材を配置し、
前記線部材間において前記開口部から吐出された有機層形成材料を通過させつつ、前記蒸着工程を行うことを特徴とする有機機能性素子の製造方法。
【請求項2】
前記線部材における少なくとも前記開口部の中央部を通過するように配置された1つが、前記開口部における前記基材移動方向両端辺と交差するように前記線部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の有機機能性素子の製造方法。
【請求項3】
前記開口部の基材移動方向の長さをL(mm)、基材幅方向の長さをW(mm)とし、前記基材移動方向に対する前記線部材の交差角度をθ(°)とするとき、式0<θ≦arctan(W/L)を満たすように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の有機機能性素子の製造方法。
【請求項4】
気化された有機層形成材料をノズルから吐出することにより、該ノズルに対して相対的に移動する基材上に有機層を形成する蒸着源を備えた有機機能性素子の製造装置であって、
前記ノズルの開口部と前記基材との間に介在され、互いに並列し且つ前記基材の移動方向に対して交差する方向に配置された複数の線部材を有する蒸着量調整部材が設けられ、
基材移動方向と垂直な開口部幅方向において、該開口部の中央部から両端部へ向かう程、前記線部材同士の間隔が大きくなるように前記線部材が配置されたことを特徴とする有機機能性素子の製造装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図11】
【公開番号】特開2012−233245(P2012−233245A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104233(P2011−104233)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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