説明

有機液体の保存法

【課題】食用油を揚げもの中に処理するための方法を提供する。
【解決手段】カルシウムもしくはマグネシウムを珪酸塩と組み合わせたものを用いて、濾されて油中へ実質的に浸出しないようにして、油をin situで処理すること、を含む。濾過処理材料としては、セメントクリンカー、OPC、珪酸石灰、ならびに混合物を用いることができる。濾過処理材料の形態は、油中に浸漬する、ばらのブリケットもしくはブロック、除染用もしくは濾過用のカートリッジを、油もしくは脂肪を用いるディープクッカーまたは揚げカゴに装着する。このカートリッジには、濾過もしくは除染をする材料を内包する、孔あき筐体が含まれる。このカートリッジを、冷却点を定める窪みを持たせるようにして成形された底部を有するディープフライヤーに使用してもよく、冷却点の中かもしくは上に収められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油または食用油脂(植物由来であってもよいしもしくは動物由来であってもよい)を、揚げもの途中にin situで処理する方法に関する。また本発明は、上述した方法にて用いるための、ばらのブロック、ブリケット(団塊; briquette)、およびカートリッジにも関する。
【背景技術】
【0002】
フライヤーで使用した食用油(植物油および動物性油脂を含む)の耐用期間を延ばすための処理については、多数の明細書に開示されている。
【0003】
食用油はトリグリセリドであり、その構造の例を以下に示す。
【0004】
【化1】

ここでは二個のオレイン酸誘導基と一個のパルミチン酸誘導基が、グリセロールに結合している。また別の油脂の例としては、複数の多価不飽和脂肪酸誘導基を置換基として有するものもある。そうした不飽和脂肪酸誘導基としては、以下の構造のリノール酸誘導基などがある。
-C(O)(CH2)7CH=CH(CH2)CH=CH(CH2)4CH3
【0005】
以下には、普通の食用油のいくつかに関して脂肪酸成分を示してある。ここでリノール酸誘導基は以下の構造式である。
-C(O)(CH2)7CH=CH(CH2)CH=CH(CH2)CH=CH(CH2)CH3
【0006】
【表1】

【0007】
油中の食品を充分に脱水する(deep drying)と、老廃物が生じて油を汚染し、宜しくない影響があらわれてしまう。
【0008】
調理時の蒸気によって加水分解が起こると、遊離脂肪酸が生じ、界面活性を発揮して油の表面張力を下げてしまう。すると、生地とパン粉が油を多めに吸ってしまい、揚がりが油っぽくべとついてしまう。さらには油の発煙温度も下がってしまうのである。
【0009】
油もしくは油中の脂肪酸の酸化による劣化により、遊離ラジカルが生じて、有機過酸化物、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、および高分子などといったさまざまな分解生成物をもたらす。こうした酸化過程は、熱した油もしくはその中の脂肪酸に空気が触れることでも開始するし、あるいは、 内の冷たい油に空気が触れることによってすら開始してしまう。そうして最終的には酸化された脂肪酸(OFA)ができる。加熱を続けると、OFAが二次的・三次的な副産物に転じてゆく。
【0010】
食用油に不純物があると、健康の見地からの懸念が増してくる。
【0011】
たとえば、Grootveld et al., Food Chemistry, 67 (1999) 211-213では、食用油を揚げものにくりかえし使うことで、細胞毒性アルデヒドが形成され、健康被害をもたらす可能性がある旨の警告をしている。
【0012】
食用油におけるさらなる望ましからざる不純物はtrans脂肪であって、これはディープフライヤーに入れた油中にて経時増加してくる成分である。このことは特に、ω-3脂肪酸に富む油(キャノーラ油もしくは菜種油など)を使っている場合にあてはまる。飽和脂肪、trans脂肪、および食餌性コレステロールを摂取すると、低密度リポ蛋白(LDL)、またの名を「悪玉コレステロール」の量が増えて、冠動脈心疾患(CHD)のリスクが上昇してしまうことが科学的な論証から示されている。NYCは、trans脂肪を持つ食用油を2007年07月から禁止し、またすべてのtrans脂肪添加物を2008年07月から禁止した。だが、ディープフライヤーを使って揚げものをすると、脂肪酸が他の毒物、変異誘発物質、および発癌性物質(アルデヒドなど)を含んだかたちで生じることが、試験から示されている。リノール酸優勢になるようにリノレン酸含量を減らしたGM組換え大豆油でさえも、やはり調理中にtrans脂肪が生じてしまうだろう。
【0013】
使用した調理器具から食用油を回収するための方法はいろいろと提案されており、そうした方法では、油を一回以上の精製処理にかけてから、処理済の油を調理器具へと戻している。US-A-3947602(Vlewell et al., Bernard)では、食用油を可食性の酸で処理し、できれば適切な吸着剤(活性炭など)でも処理することで、食用油の耐用期限を延ばせることを開示している。また、US-A-4112129(Duensing et al., Johns Manville)では、47〜59重量部の珪藻土(70〜80wt% SiO2)と、28〜36重量部の合成珪酸カルシウム水和物と、12〜24重量部の合成珪酸マグネシウム水和物と、を含んだ組成物を通して、油を濾過することが開示されている。US-A-4330564(Bernhard)では、フライヤーで使った食用油を処理する方法が開示されており、この方法には、多孔質担体(流紋岩など)と、水と、可食性の酸(枸櫞酸など)とを含んだ組成物を、温度約150〜200℃の使用済食用油に混ぜ合わせるステップと、その食用油から組成物の残渣を濾別するステップと、が含まれている。US-A-2005/0223909(Kuratu)には、油を花崗斑岩で濾過することが開示されている。
【0014】
使用済ヒマワリ種子油を精製するにあたっての、さまざまな吸着剤を用いた効果が、Maskan et al., Eur Food Res Technol (2003) 217:215-218で論じられている。使用済ヒマワリ種子油の精製は、さまざまな吸着処理を以って実施されてきた。CaO、MgO、Mg2CO3、珪酸マグネシウム、活性炭、およびベントナイトという六種の吸着剤に加えてさらに、利用可能な天然の土(すなわちpekmez earth、CaCO3を含有する特殊な天然白色土壌のことである)についても調査してある。pekmez earth、珪酸マグネシウム(フロリジル)、およびベントナイトはそれぞれ、粘度、遊離脂肪酸(FAAs)低減、および色の回復において、調査した吸着剤のなかでの最高の性能を呈した。そうして、2%のpekmez earth、3%のベントナイト、および3%の珪酸マグネシウムの混合物が最適な組み合わせとなるとされた。しかし、揚げものの最中に吸着剤を設置することについては開示されていない。
【0015】
調理器具内でin situに食用油を処理する別の方法も提案されている。US-A-4764384(Gyann, GyCor International)には、フライヤー内の使い古しの食用油に、物質の微粒子を含んだ濾過媒体を直接入れることにより、その物質の微粒子が食用油の液体部分全般に均一に懸濁し、濾過媒体物質の微粒子が効率的に不純物を吸着して、使い古しの食用油を脱色して耐用期限を延ばすことで、使い古しの食用油を再生できる旨が記載されている。この濾過媒体には、含水合成非晶質シリカと、合成非晶質珪酸マグネシウムと、珪藻土とが含まれる。US-A-5354570(Friedman, Oil Process Systems)では、調理用流体内で食品を揚げる方法を開示しており、この方法は、界面活性剤を含んだ分解生成物が流体内に生じ、食品の残渣が凝集しているところへ、使用済調理用流体中の界面活性剤の量を選択的に減らせるような粉末状の処理用化合物(多孔質流紋岩など)を添加して、この処理用化合物がフライヤー装置内に残って、揚げ調理を続けながらにして食品の残渣を安定化できる、というものである。US-A-5391385(Seybold, PQ Corporation)では、60〜80%の非晶質シリカと20〜40%のアルミナとの混合物を、油に足して加熱処理することが開示されている。この混合物を、油は通すが混合物は通さないような容器に収めてから油中に投じるため、吸着剤が油中に放出されることがなく、濾過の必要がない。混合物が消費されたら、混合物の容器を油中から取り出せる。JP-A-07-148073(Yoshihide)では、細かく砕いた沸石(ゼオライト)を、濾過物質の包袋内に収めたパッケージをつくり、調理容器にそのパッケージを油と食材とともに入れて、調理を行う、ということが開示されている。
【発明の概要】
【0016】
或る態様では、揚げもの中に食用油を処理する方法が提供される。この方法には、カルシウムもしくはマグネシウムの源を珪酸塩の源と組み合わせて誘導した、固体濾過処理材料を用いて、そのカルシウムもしくはマグネシウムが濾されて油中へ実質的に浸出しないようにして、油をin situで処理すること、が含まれる。
【0017】
本発明にはさらに、油が熱いときかもしくはディープフライヤーを用いて揚げものをしているときに脂肪酸のin situ形成を阻害する方法が含まれ、この阻害方法には、カルシウムもしくはマグネシウムの源を珪酸塩の源と組み合わせて誘導した、固体濾過処理材料を用いて、そのカルシウムもしくはマグネシウムが濾されて油中へ実質的に浸出しないようにして、油をin situで処理すること、を含んでもよい。
【0018】
実質的に固体である濾過処理材料とは、孔隙を有しているので油がその材料の本体内にひろがって、材料の本体上と内部に不純物を付着させられるような材料のことである。
【0019】
本発明はさらに、油が熱いときかもしくはディープフライヤーを用いて揚げものをしているときに、アルデヒドなどの酸化生成物のin situ形成を阻害する方法が含まれる。この阻害方法には、カルシウムもしくはマグネシウムの源を珪酸塩の源と組み合わせて誘導した、固体濾過処理材料を用いて、そのカルシウムもしくはマグネシウムが濾されて油中へ実質的に浸出しないようにして、油をin situで処理すること、が含まれる。
【0020】
本発明ではなおもさらに、油が熱いときかもしくはディープフライヤーを用いて揚げものをしているときにtrans脂肪のin situ形成を阻害する方法を提供する。この阻害方法には、カルシウムもしくはマグネシウムの源を珪酸塩の源と組み合わせて誘導した、固体濾過処理材料を用いて、そのカルシウムもしくはマグネシウムが濾されて油中へ実質的に浸出しないようにして、油をin situで処理すること、が含まれる。
【0021】
さらなる態様にて、本発明では、ディープフライヤー(油を用いるものでも脂肪を用いるものでもよい)への取付具、または揚げカゴのための、除染カートリッジもしくは濾過カートリッジを提供する。こうしたカートリッジには孔あき筐体が含まれ、その筐体には濾過材料もしくは除染材料が内包される。
【0022】
別の態様では、本発明は、冷却点(cool spot)を定める窪みのついた基部を持つディープフライヤーを提供する。この基部の冷却点の内部かもしくは上かに、除染カートリッジもしくは濾過カートリッジを装着する。こうしたカートリッジには孔あき筐体が含まれ、その筐体には濾過材料もしくは除染材料が内包される。
【0023】
なおも別の態様で、本発明は、カートリッジを自在に取り外しできるような揚げカゴも提供する。こうしたカートリッジには孔あき筐体が含まれ、その筐体には濾過材料もしくは除染材料が内包される。
【0024】
なおもさらなる態様において、本発明は、円形のカートリッジを基部に具えた調理容器を提供する。こうしたカートリッジには孔あき筐体が含まれ、その筐体には濾過材料もしくは除染材料が内包される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明がいかにして効果を発揮するのかについて、付図を参照しつつ以下に記載してゆく。
【図1】蓋を外した状態の濾過カートリッジの第一の実施形態についての斜視図である。
【図2】図1のカートリッジを装着したディープフライヤーの斜視図である。
【図3】ディープフライヤーおよびカートリッジの断面図である。
【図4】中身がカセットに入っているような別の形態をとった、図1のカートリッジの斜視図である。
【図5】濾過カートリッジの第二の実施形態についての、等角投影図(three-quarter view)である。
【図6】図5のカートリッジを装着したディープフライヤーの等角投影図である。
【図7】濾過カートリッジの第三の実施形態の斜視図である。
【図8a】図8a〜図8cはそれぞれ、図7の濾過カートリッジに装着した揚げカゴの、平面図、横断する方向に沿って切った断面図、そして長手方向に沿って切った断面図である。
【図8b】図8a〜図8cはそれぞれ、図7の濾過カートリッジに装着した揚げカゴの、平面図、横断する方向に沿って切った断面図、そして長手方向に沿って切った断面図である。
【図8c】図8a〜図8cはそれぞれ、図7の濾過カートリッジに装着した揚げカゴの、平面図、横断する方向に沿って切った断面図、そして長手方向に沿って切った断面図である。
【図8d】図8dおよび図8eはそれぞれ、カートリッジを装着した揚げカゴの斜視図、そしてカートリッジを部分的に外した揚げカゴの斜視図である。
【図8e】図8dおよび図8eはそれぞれ、カートリッジを装着した揚げカゴの斜視図、そしてカートリッジを部分的に外した揚げカゴの斜視図である。
【図9a】図9aおよび図9bは、濾過カートリッジの第四の実施形態についての、平面図と側面図である。
【図9b】図9aおよび図9bは、濾過カートリッジの第四の実施形態についての、平面図と側面図である。
【図9c】図9aのカートリッジを具えた、調理鍋の図である。
【図10】図10から図15はそれぞれ、ヒマワリ油の加熱により生じたtrans-2-アルケナール、trans,trans-アルカ-2,4-ジエナール、4,5-エポキシ-trans-2-アルケナール、4-ヒドロキシ-trans-2-アルケナール、cis,trans-アルカ-2,4-ジエナール、およびn-アルカナールの濃度を、時間の関数として示したグラフであり、対照の熱ヒマワリ油中のtrans-2-アルケナールの濃度を基準として正規化してある。
【図11】図10から図15はそれぞれ、ヒマワリ油の加熱により生じたtrans-2-アルケナール、trans,trans-アルカ-2,4-ジエナール、4,5-エポキシ-trans-2-アルケナール、4-ヒドロキシ-trans-2-アルケナール、cis,trans-アルカ-2,4-ジエナール、およびn-アルカナールの濃度を、時間の関数として示したグラフであり、対照の熱ヒマワリ油中のtrans-2-アルケナールの濃度を基準として正規化してある。
【図12】図10から図15はそれぞれ、ヒマワリ油の加熱により生じたtrans-2-アルケナール、trans,trans-アルカ-2,4-ジエナール、4,5-エポキシ-trans-2-アルケナール、4-ヒドロキシ-trans-2-アルケナール、cis,trans-アルカ-2,4-ジエナール、およびn-アルカナールの濃度を、時間の関数として示したグラフであり、対照の熱ヒマワリ油中のtrans-2-アルケナールの濃度を基準として正規化してある。
【図13】図10から図15はそれぞれ、ヒマワリ油の加熱により生じたtrans-2-アルケナール、trans,trans-アルカ-2,4-ジエナール、4,5-エポキシ-trans-2-アルケナール、4-ヒドロキシ-trans-2-アルケナール、cis,trans-アルカ-2,4-ジエナール、およびn-アルカナールの濃度を、時間の関数として示したグラフであり、対照の熱ヒマワリ油中のtrans-2-アルケナールの濃度を基準として正規化してある。
【図14】図10から図15はそれぞれ、ヒマワリ油の加熱により生じたtrans-2-アルケナール、trans,trans-アルカ-2,4-ジエナール、4,5-エポキシ-trans-2-アルケナール、4-ヒドロキシ-trans-2-アルケナール、cis,trans-アルカ-2,4-ジエナール、およびn-アルカナールの濃度を、時間の関数として示したグラフであり、対照の熱ヒマワリ油中のtrans-2-アルケナールの濃度を基準として正規化してある。
【図15】図10から図15はそれぞれ、ヒマワリ油の加熱により生じたtrans-2-アルケナール、trans,trans-アルカ-2,4-ジエナール、4,5-エポキシ-trans-2-アルケナール、4-ヒドロキシ-trans-2-アルケナール、cis,trans-アルカ-2,4-ジエナール、およびn-アルカナールの濃度を、時間の関数として示したグラフであり、対照の熱ヒマワリ油中のtrans-2-アルケナールの濃度を基準として正規化してある。
【図16】熱ヒマワリ油にチップスを加えて、さらにクリンカー、OPC、もしくはそれらの組み合わせを加えた試料についての、吸光度(A490)を時間の関数として示したグラフである。
【図17】後述する揚げ試験における、ヒマワリ油中の指標物質の濃度を、二週間にわたる時間の関数として示したものである。
【図18】図18は、二日間にわたる牛脂を使った実験での、主要四種のアルデヒドの濃度変化を示す棒グラフである。略語の説明:t2はtrans-2-アルケナール、tt24はtrans,trans-アルカ-2,4-ジエナール、ct24はcis,trans-アルカ-2,4-ジエナール、naはn-アルカナールをそれぞれ指す。 Δ[conc] (CHNF-CHF)-(DRCON-DRF) とは、各種実験のこと(主要五種の実験について三種の異なる組みあわせをとり、完全に正規化した値の平均をとったもの)を示している。ここで、CHNFは「牛脂/チップス/濾過材無し」(dripping/chips/no filter)、CHFは「牛脂/チップス/濾過材」(dripping/chips/filter)、DRCONは「牛脂/チップス無し/濾過材無し」(dripping/no chips/no filter)、DRFは「牛脂//濾過材」(dripping//filter)である。なおこれらはグラフのx軸に示してあるように、二日間の実験の各日についての値である。
【図19】図19および図20は、比率25/75のOPC/クリンカー処理板が有る場合と無い場合とについての、調理後のヒマワリ油中のアルデヒド成分を示した棒グラフである。
【図20】図19および図20は、比率25/75のOPC/クリンカー処理板が有る場合と無い場合とについての、調理後のヒマワリ油中のアルデヒド成分を示した棒グラフである。
【図21】図21から図26は、処理ブロックの実施形態群を示す斜視図である。
【図22】図21から図26は、処理ブロックの実施形態群を示す斜視図である。
【図23】図21から図26は、処理ブロックの実施形態群を示す斜視図である。
【図24】図21から図26は、処理ブロックの実施形態群を示す斜視図である。
【図25】図21から図26は、処理ブロックの実施形態群を示す斜視図である。
【図26】図21から図26は、処理ブロックの実施形態群を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔揚げかた〕
本発明は、家庭用ディープフライヤー中の油のin situ処理に適用可能である。そうした家庭用ディープフライヤーとしてはたとえば、油容量が2〜3.5リットルのものが想定され、また、油用のワイヤメッシュ濾過材を組み込んでもよい。また本発明を、調理台用の単カゴ式もしくは双カゴ式のディープフライヤー中の油のin situ処理に使ってもよい。そうした調理台用ディープフライヤーは、油容量がたとえば7〜16リットル、定格電力が3〜12KWで、単独の排油口を通常は具えていて、濾過は使用者にまかされている。また本発明は、中量自立式ディープフライヤーにも使用可能である。そうした中量自立式ディープフライヤーはたとえば油容量が12から24リットル、定格9から18kWであって、持ちあげて取り出すような形態をしている屑除去用濾し器のついた冷却帯(cool zone)を具えてもよく、そして排油弁が標準的な取付具として具わっている。標準的な商業用ディープフライヤーはたとえば、蓋つきの15リットルのカゴを二つ具えてもよく、電力約25kWであり、油を簡単にてばやく交換できるように冷却帯を具えていてもよい。本発明は、英国のフィッシュアンドチップ屋にあるようなレンジ式フライヤー中の油の処理にも使うことができる。
【0027】
〔材料〕
油の除染に使える本発明の実施形態群では、水性溶媒もしくは有機溶媒に、カルシウムの源(好ましい)、もしくはマグネシウムの源の反応生成物、またはそれらの混合物であるような何らかの物質を入れ、そして触媒(酸もしくは塩基など)を加えるかまたは加えずに、そしてさらにシリカの源を加えることで、生成物が得られる。この生成物は、熱油中で安定な有形の構造をなすことができ、そして油中に有害な量のイオン種を浸出させることがない。5ppm以下、好ましくは2ppm以下のカルシウムの浸出、および1ppm以下のナトリウムの浸出は有害ではない。また、他のイオン種(鉄、アルミニウム、亜鉛、もしくは銅など)の浸出は微量にとどめなくてはならない。カルシウムもしくはマグネシウムの源、ならびにシリカの源は、混合した際に、水硬性物質として機能するのが好ましい(不可欠というわけではない)。この水硬性物質とは、水と混ぜた後に、実質的に非水溶性な水和物を形成するなどして、固まって硬化するもののことである。
【0028】
本発明にて用いられる物質群のうちの一群のことを、概して水硬性セメントと呼ぶ。というのは、これらの物質が水と反応して、「糊」として機能するセメント質な反応生成物をつくりだし、セメント粒子同士を結合するようになっているからである。
【0029】
もっとも有名なセメントはポルトランドセメント(Portland cement)であるが、その他にも水硬性セメントは何種類もあり、たとえばアルミナセメント(high alumina cement)、火山灰混合セメント(pozzolanic cement)、および焼き石膏(ギプス)などがある。本明細書での説明では、ポルトランドセメントに絞って記載をするが、本特許はあらゆる水硬性セメントを包摂する。
【0030】
本発明で使用可能なポルトランドセメントおよびポルトランドセメントクリンカー(Portland cement clinker)は、石灰質(石灰岩や白亜など)からと、アルミナとシリカ(いずれも粘土や頁岩に含まれている)とから主に製造できる。泥灰土(石灰質と粘土質の混合物)も使用される。この製造工程には、こうした原材料を碾いて、或る比率を以って混合し、下記の表(AM Neville "Properties of Concrete", Pitman Publishing 2nd Ed.
1977を参照のこと)に示す組成物を得ることが含まれる。
【0031】
ポルトランドセメントのおおよその組成範囲
酸化物 成分パーセント
CaO 60-67
SiO2 17-25
Al2O3 3-8
Fe2O3 0.5-6.0
MgO 0.1-4.0
アルカリ 0.2-1.3
SO3 1-3
【0032】
これらの原材料は、大型回転炉内で温度約1400℃で碾かれる。このため原材料は部分的に焼結してくっつき、数ミリメートルから数センチメートルの大きさの粗い球状となる。この産物のことをクリンカーと呼ぶ。得られたクリンカーを、冷却してから焼き石膏を加えて細粒になるまで碾くと、最終産物としてポルトランドセメントが得られる。
【0033】
セメント粉末に水を足した際の水硬性反応は複雑である。上記の表に示した酸化物成分が組み合わさって、主に四種の化合物ができる。すなわち、
珪酸三石灰 3CaO.SiO2
珪酸二石灰 2CaO.SiO2
アルミン酸三石灰 3CaO.Al2O3
アルミン酸鉄(III)酸四石灰 4CaO.Al2O3.Fe2O3
【0034】
これらの化合物は水と反応し、おおざっぱにゲルと呼ばれる水和物と、水酸化カルシウムとができる。固化と強度増進をもたらす比較的高速な反応のひとつとして、ポルトランドセメントの主要かつ特徴的な無機成分である珪酸三石灰(ticalcium silicate)の水との反応がある。この反応により、セメントのいわゆるC-S-H相が以下の式のもとで得られる。
2Ca3SiO5+ 6H2O → 3CaO.2SiO2.3H2O + 3Ca(OH)2
強度を「あとから」得るためのさらなる反応としては、珪酸二石灰を水と反応させてセメントのC-S-H相を以下のように得るというものがある。
2Ca2SiO4+ 4H2O → 3CaO.2SiO2.3H2O + Ca(OH)2
【0035】
すべてのセメント粉末が完全に反応して、水和物がセメント的な反応をもたらす「糊」になるとはかぎらない。産物には水和されないままの芯が残っているのが普通である。固化過程により、実質的に流体状態であるセメントスラリーが固化して、硬化した産物が得られる。セメントの「硬化」とは、水和反応時間を進めることを述べるために用いる語である。なお、この反応は、適切な温度と湿度(50℃程度、相対湿度にして100%、など)により増進可能である。
【0036】
硬化により、食用油が浸透できる多孔質構造が生じて、油中の不純物とセメントとの反応が促進される。所望であれば、空気や他の気体を導入したり、または、水とクリンカーもしくはセメントとの混合物に発泡剤を適切に入れたりなどすることで、通気した構造をつくりだし、本発明で用いるセメント構造の浸透性を高めてもよい。こうした構造を切り出したブロックの表面には、室が口を開けており、液体の取り込みが容易にできるようになっている。また、水とクリンカーもしくはセメントとの混合物に、プラスチックもしくは発泡プラスチック(cellular plastics material)を加えて多孔質構造をつくりだしてもよい。なおこのプラスチックは、混合物が硬化したら、加熱もしくは焼灼して除去可能である。
【0037】
特に適切な濾過処理材料とは、白色の普通ポルトランドセメント(白セメント; white ordinary Portland cement; white OPC)、白セメントクリンカー、およびそれらの組み合わせ、である。こうしたセメントをつくるためのクリンカーでは、セメントの変色を避けるため、遷移金属(クロム、マンガン、鉄、銅、バナジウム、ニッケル、およびチタン
など)をできるだけ低く抑える。たとえばクリンカー中では、Cr2O3は0.003%以下に、Mn2O3は0.03%以下に、Fe2O3は0.35%以下に抑え、また、鉄はFe(II)へ還元する。セメント製造にて使われる石灰岩では通常0.3〜1%のFe2O3を含むが、白色OPC(white OPC)用の石灰岩では0.1%以下の量のものが求められる。製品が白色であると、審美的に魅力があり、食品工業と末端消費者の信頼を高めてくれるのだが、そのことをさておいたとしても、遷移金属成分を少なくすれば、好ましくないイオン種(特に鉄やアルミニウム)が油中に浸出するのを最小限にする一助となるのである。また、油中で酸化を促進してしまう可能性のある鉄部位と銅部位は、白色OPCおよび白セメントクリンカーでは比較的少ない。
【0038】
セメントクリンカーの使用可能な粒子径は、1μmから10mmの範囲である。これは入手時からこういう粒子であってもよいし、または、粒子を細かく粉砕して水和したもの(5〜100μmなど、通常は10〜50μm)からつくられたもっと小さな粒子もしくは固体であってもよい。水和したセメントクリンカーおよびOPCを用いる際には、クリンカーを約14.5μmの大きさにするとうまくいくことが発見されている。OPCは、製造業者から粉末として入手できる。
【0039】
白色OPCクリンカーと白色OPCとの混合物が好ましく、(OPC+クリンカー)のうちの20〜35wt%(たとえば約25wt%)がOPCで、(OPC+クリンカー)のうちの65〜80wt%(たとえば約75wt%)がクリンカーであるのが好ましい。特に、ヒマワリ油の処理においては、25/75%の混合物が能く機能することがわかっている。とはいえ上述したように、脂肪酸成分は油ごとに違う。このため、他の油または混合油に関しては、OPCとクリンカーとの最良の比率もまた上記した値から変わってくる可能性があり、試験によって最良の比率が得られるであろう。
【0040】
付随的な成分をOPCもしくはOPCクリンカーへ、または白色OPCもしくは白色OPCクリンカーへと加えてもよい。そうした付随的な成分としては、通常1〜2wt%の量で白さと強度を高められるチタニア(TiO2)、および/もしくは、通常1〜2wt%の量で強度を高められるシリカ(SiO2)が含まれる。使用時にOPCもしくはOPCクリンカーには、100wt%の処理材料(上述した付随的な成分を除く)を含めてもよく、あるいは、50wt%よりも多くの、典型的には75wt%よりも多くの、もっと典型的には90wt%の処理材料を含めてもかまわない。OPC、OPCクリンカー、もしくはそれらの混合物と組み合わせて使用可能な他の成分としては、珪酸石灰(珪酸カルシウム)、珪酸マグネシウム、(天然の)長石(曹長石)、(天然か合成の)沸石(Na形態やCa形態)、シリカ(非晶質や結晶質)/珪砂、珪灰石、水酸化カルシウム、アルミナ(水和したもの)、珪酸アルミニウム、粘土(ベントナイト、真珠岩)、柱状粘土、活性粘土/土壌、滑石/カオリナイト、他の珪酸塩鉱(角閃石、石英斑岩、流紋岩、蝋石、斑岩、アタパルジャイト)、などから選択できるものがある。
【0041】
本発明にしたがい、セメントクリンカーおよび/もしくはOPCと組み合わせてかまたは組み合わせずに処理材料として使用できる他の物質は、珪酸石灰である。
【0042】
セメントクリンカーおよび/もしくはOPCと組み合わせてかまたは組み合わせずに使用できるような、固体の濾過もしくは処理用の他の材料としては、珪酸マグネシウム、(天然の)長石(曹長石)、(天然か合成の)沸石(Na形態やCa形態)、シリカ(非晶質や結晶質)/珪砂、珪灰石、水酸化カルシウム、アルミナ(水和したもの)、珪酸アルミニウム、粘土(ベントナイト、真珠岩)、柱状粘土、活性粘土/土壌、滑石/カオリナイト、他の珪酸塩鉱(角閃石、石英斑岩、流紋岩、蝋石、斑岩、アタパルジャイト)、などから選択できるものがある。使用可能な結合剤その他の添加物としては、黒色炭素、セルロース繊維、珪藻土、酸化防止剤(アニオン)、凝集剤(カチオン)、可食性の酸(枸櫞酸、マレイン酸、燐酸、酢酸、酒石酸、もしくはそれらの混合物)、が含まれる。主要材料と、一種以上の結合剤その他の添加物とから、濾過媒体を粒状もしくは球状に成形できる。
そしてこの濾過媒体は、 (i) スラリー(押出と焼結をする)、 (ii) 圧搾した粉末、 (iii) セメント(水和工程)、もしくは (iv) 発泡セメント(粉砕とボールミル加工)として成形できる。上述した材料を、カルシウムの源(石灰岩もしくは硫酸カルシウムなど)と混ぜあわせると、水硬性を付与できる。
【0043】
処理媒体もしくは濾過媒体は、主要材料と一種以上の結合剤その他の添加物を選択して、粒状、球状、ブリケット、もしくは独立型の形態として成形できる。そしてこうした処理媒体もしくは濾過媒体を以下のうちのどれでも/どれにでも成形可能である。
(i) スラリー(押出と焼結をする)
(ii) 圧搾した粉末(焼結しても焼結しなくてもよい)
(iii) セメント水和工程(焼結しても焼結しなくてもよい)
(iv) 押し固め加工と加圧成形
(v) 発泡セメント(粉砕、ボールミル加工、再水和にかける。石灰岩が要る場合もある)
(vi) 網状の発泡体(reticulated foam)
(vii) シリカの添加による強度増強(粒度および形状)、および/もしくは、色づけ(白)と強度のためのTiO2
【0044】
濾過媒体もしくはカートリッジに収められる具体的な物質としては、以下が含まれる。
- 活性炭: 食用油を脱色し、臭いのもとになる成分を吸着する。
- 珪酸塩: 油が化学的に分解しだすと生じてくる脂肪酸を除去する。
- セルロース繊維: 支持母材となり、他の成分を結合できる。
- 樹脂結合剤: 焼結に先立ち、他の成分を併せて結合する。
- 珪藻土: 粒子状物質を除去し、粒子状物質を担持できる容量を増大する機能を有する。
【0045】
〔独立型の処理ブロックもしくは濾過ブロック〕
セメント質材料(白セメントクリンカーおよび白色OPCなど)を使用すると、それ自体から有形な物品が得られる。そうした有形な物品が、ブロック、ブリケット、もしくは他の複雑な形状といった、独立型の形態であってもよい。このような物品は単純であって、成形による製造が廉価で済む。しかも通常は、熱した食用油もしくは食用脂肪への浸漬に際して、割れを生じることなく耐えるに充分な強度と耐熱性をも有している。なお、油が冷たいときに物品を投じてから加熱をするのが普通の手順であることを申し添えておく。独立型の処理ブロック/処理ブリケットに、さまざまな形状の開口部を、成形、押出、網状発泡、もしくは他の手段によってつけることで、濾過ブロックもしくは処理ブロックの内部を油が通れるようにし、食用油と接触する活性表面積を増大して、濾過媒体もしくは処理媒体を油流が自由に通過するようにできる。
【0046】
図21には、小型家庭用フライヤー用に設計した葉状の濾過材(フィルター)を示している。この濾過材は、使用者が茎のところを持って、油中にゆっくりと降ろして投入できるようになっているので、油ハネしにくい。油流が濾過材を通過できるように濾過材は穿孔されているので、活性表面積が増えているが、それに加えてさらに、突き出た葉肋部によって、濾過材がフライヤーの基部から離れるようになっているため、油が循環できる。図22には、輪状の濾過材もしくは処理手段を示している。これを中芯に沿って積載して、濾過材の大きさをさらに増してもよいし、あるいは、小型の油溜めの同一平面内(基部など)に単にいくつも投じるようにしてもよい。星型の孔によって、油への活性表面積が増している。図23は、ほぼ全面にわたって孔があいた円板状濾過材を示しており、この濾過材では所定の大きさに比して大きな活性表面積が得られ、油流に対する抵抗が少ない。
【0047】
油の入出のために、濾過材または処理用のブロックもしくはカートリッジの外表面でのマクロ孔の大部分の向きを垂直面内に揃えることで、濾過材または処理用のブロックもしくはカートリッジを通って油が自由に流れるようにできる(図24)。とはいえ、水平方向の通路や他のところどころが垂直に向いていないような通路を形成し、油の渦流をつくりだして濾過材内での経路長や油の滞留時間を延ばすことで、目的の不純物の抽出と吸着を適切に行うこともまた可能である。外孔の大部分を、任意の特定の平面に沿って間接的に整列させたりもしくはばらつかせたりすることで、経路長と滞留時間をさらに延ばすこともできる。
【0048】
また、濾過ブロックを、規則的に反復するモジュールの基本単位(図25)から構築し、ブロック群を連結もしくは堆積(図26)できるようにして、食用油溜め内の油の量を処理するうえで必要な有効表面積および体積を、濾過材料に与えることもできる。このようにすると、所定時間内に調理される食料品の反復使用率および量に鑑みて濾過ブロックの寿命を延ばせる。しかも、大型の製造用成形装置も不要であり、そうした工程での需要とさまざまな大きさの油溜めに適合するように複数種の大きさの製品を生産する必要もないのである。こういった場合、もっとたくさんのモジュール部品を単純に連結すれば、濾過材の大きさを必要なだけ、小さな単独の濾過部品の複数倍程度に増して得られる。
【0049】
〔処理媒体もしくは濾過媒体を内包するカートリッジ〕
或る実施形態群では、さまざまな食材を調理するため油を160℃近傍にまで通常は加熱するような調理中に使う深型の食用油タンク (16) 内に設置される、処理ブロックもしくは処理カートリッジ 20 (図2)を提供する。
【0050】
タンクの容量が15L超となる商業用途では、タンクの下面に中央の窪み (18) をつけて、冷却点を定めるのが普通である。油を一定の位置で熱しかつ低温領域もしくは冷却点が得られるような加熱手段もしくはガス炎により生じる熱対流が、濾過媒体を通ることで、ディープフライヤーを用いた揚げものの際に生じた食材の焦げ滓や脂肪酸、さらには、臭い・色・外観に影響し特に消費者の健康に有害な可能性のある好ましくない他の副産物もしくは不純物を除去できるような箇所に、濾過材を設置する。
【0051】
ディープフライヤー内の冷却帯についての実施形態の持つ機能については、たとえばUS-A-5335776(Driskill, Daylight Corporation)にて説明されている。加熱器からの熱は、側壁の上のほうに在る油に集中し、その一方で、側壁の下のほうから油への熱の伝導はほぼ無い。こうした手法をとると、容器内の油は下部のV字型溝部位では低めの温度となる。すると、容器内の油が、上方の揚げ領域と、下方の冷却帯とに分かれることになる。V字型(溝型)の底部を、間隔をとって配置した加熱器に沿わせるように容器に設け、ただし加熱器が容器底部の溝部位の最下部は熱さないようにすることで、フライヤー内の食用油に対流が発生する。こうした対流は通常、食用油中で循環路をとる。この対流により、調理される食材から離れたかもしくは剥落した小さなカケラが、下方の食用油冷却帯へと移動しやすくなる。冷却帯に在る油の温度は、生じたカケラを実質的にこれ以上揚げてしまわない程度になっているので、カケラが炭化して黒ずんでしまいにくい。さらに、食材のカケラが下方の油"冷却帯"へと移動することで、カケラのうちの実質的な部分が、調理する食材にへばりつかないようにもできる。同様の配置を、本発明を適用できる圧力フライヤーに用いてもよい。US-A-6505546(Koether et al., Technology Licensing Corporation)を参照のこと。
【0052】
この種のフライヤーでは、本発明にかかる処理組成物を、上方の熱領域か、下方の冷却領域かのどちらかに置ける。
【0053】
冷却点内に処理ブロックもしくは濾過カートリッジ 20 を設置すると、ガス加熱点(冷
却点の窪みの両側につねに位置する)から離れた箇所が得られるか、あるいは、通常は油タンクの底に設置されるいずれかの電気式加熱手段に干渉することになる。このため、その冷却点の両側にて、濾過ブロックもしくは筐体ならびに媒体の過熱が抑止され、加熱手段の周囲で油が自由に流れられるようになり、しかも油が熱対流を介して自由に流れられるようになる。
【0054】
図1には、典型的な商業用ディープフライヤーの冷却点の口に収まるような形状をなしている、V字の断面を有する濾過材もしくは処理カートリッジの筐体を示してある。こうした冷却点は通常、油タンクからの排出を行って廃棄や他の外部濾過工程にかけたりする際に、排出コック(排出口)へと油を注ぎこむために使われている。筐体には、小孔を穿った金属(ステンレス鋼、もしくは劣化することなく200℃程度に達する作業温度に耐えうるような他の材料など)からつくった基部筐体 12 と、同様の材料でできた孔あきの着脱自在の蓋 14 とが含まれる。この蓋 14 の孔により、通常の熱対流を介して、油が外被を通って内部の処理媒体へと至るように自由に移動できる。筐体には、濾過処理材料のための敷床 10 が含まれる。油を自由に循環させるには、孔あき外被に関しての最小孔径と固体材料との比率を1:4、好ましくは1:2以上とする。
【0055】
図5および図6に示した処理カートリッジの第二の実施形態は、直方体の筐体 26 からできている。この筐体 26 は、上述したV字型断面の濾過材と同様のメッシュ状のもしくは孔あきの材料からできているものの、形態が平らであり、しかもツマミ 28 もしくは他の支持部が具わっているので、商業用フライヤーの冷却点 18 の上方に吊るせるようになっている。この処理カートリッジの断面積と体積は、上述したV字型断面の濾過材よりも小さくなっており、処理媒体(分散形態でもよいしカセット形態でもかまわない)を通る油の循環がさらに自由になっている。
【0056】
処理カートリッジの第三の実施形態(図7および図8aから図8e)では、ハンドル 32 のついた同様の直方体の筐体 30 を用いるが、この筐体 30 には支持ツマミが無く、改造を施した標準的なメッシュの揚げカゴ 34 の下部に収めることを企図している。ここでも濾過材は、既述の材料からできた孔あきの(メッシュ状の)保持具もしくは筐体 30 と、分散形態またはカセット形態をとった濾過材もしくは処理媒体のための穿孔性とから成り立っている。なおこうした濾過材もしくは処理媒体は通常、揚げカゴ 34 の底部に収まるようになっているので、熱対流によって油が媒体を通ってうまく流れられるようになっている。この実施形態にかかる一形態では、濾過材もしくは処理筐体が、スライドして受け部位に着脱できるようになっている。この受け部位は、メッシュ状のもしくは孔あきの仕切り 36 で食材から隔てられていて、食材が濾過材に直接接触しないように、そして調理後に食材をかんたんに取り出せ、しかも濾過媒体をかんたんに洗浄・交換できるようになっている。示した形態では、ハンドル 32 が、濾過筐体の外側の端に設置されているので、挿抜がしやすい。このようにして濾過材もしくは処理カートリッジを揚げカゴ中に設置することで、任意のディープフライヤー(冷却点となる窪みが具わっていてもなくてもよい)での使用が可能となり、たとえば、ほぼ直方体の油タンク(容量15L未満の場合あり)のついた小型の商業用フライヤーもしくは家庭用フライヤーでも使用できる。さらにいえば、揚げカゴ中に濾過材を設置することで、油タンク内に突き出した電気式加熱手段のどれかの頂部に濾過材が直接載ってしまうことがなくなるため、濾過筐体もしくは濾過媒体が過熱されてしまい熱対流を介した油の自由な循環が妨げられてしまうようなことがない。冷却点が無く、代替となる箇所もほとんど無く、油タンク内に突き出した加熱手段もほぼ無いような、小型の家庭用・商業用ディープフライヤーの場合には、直方体をした濾過材を、揚げカゴの下方、つまりタンクの底に、ばらまいて置いてもかまわない。
【0057】
濾過材もしくは処理筐体についての第四の実施形態(図9aから図9c)も想定されており、これは円形をしていて、鍋型のディープフライヤーもしくは他の円筒形タンク形態
(いくつかの商業ファストフード店で採用されている)の底に設置することを企図している。円形筐体 (90) もまた、200℃程度の温度に耐えうるような材料(ステンレス鋼など)から構築されており、第一の実施形態にて記載したものと同様の属性を有するような孔あき構成もしくはメッシュ状の構成をとっている。この筐体の直径と深さを変更して、さまざまなフライパン 92 、ディープフライヤー、ならびに、特製の円筒形状をとる商業用ディープフライヤーもしくは家庭用ディープフライヤーに合わせるようにできる。この際、フィルター媒体の容量を、特定の用途に沿って変更できる。
【0058】
上述の実施形態群では、濾過材もしくは処理媒体 (10) は、分散した材料でもよく、その形状は、粒状、または、球、星型断面、もしくは円筒に近くなるように成形したビーズ状、あるいは、大きな表面積を得られ且つ分散して充填された媒体中を油が流れやすいように設計された任意の他の形状、とすることができる。こうした媒体を、あらかじめ充填を済ませてある交換可能なカセット 24 (図4)内に収めて、清掃が簡単にし再充填がすぐにできるようにしてもよい。あるいは別の手法として好ましい実施形態群では、円板(図19)もしくはブロック(図20)の形態をとる自立式の処理媒体を用いてもよい。
【0059】
本発明をいかにして実施できるかについて、以下の実施例を参照しつつ説明をさらに加えてゆく。
【実施例1】
【0060】
〔セメントクリンカーおよびOPC〕
Aalborg White Cement ClinkerとAalborg White OPCは、デンマークのAalborg Portland Groupから購入できる材料である。Aalborg White OPCは、超高純度の石灰岩および細かく碾いた砂(samd)から製造される。Aalborg White OPCには、0.2〜0.3wt%の少量のアルカリ(Na2O)成分と、4〜5wtTの少量のアルミン酸三石灰(C3A)成分と、2 mg/kg以下のクロム酸成分が含まれている。
【0061】
この白セメントクリンカーは、出荷時には粒子径が8 mmであり、実測値ではSiO2 25.0%, Al2O3 2.0%, Fe2O3 0.3%, CaO 69.0%を有し、さらにBogue組成物を含みその内訳はC3S 65.0%, C2S 21.0%, C3A 5.0%, C4AF 1.0%であった。なお、C3Sは珪酸三石灰 Ca3SiO5、C2Sは珪酸二石灰 Ca2SiO4、C3Aはアルミン酸三石灰 Ca6Al2O6、C4AFはアルミン酸鉄(III)酸四石灰Ca4Al2Fe2O10を指す。白セメントクリンカーの表面積は0.43 m2/g、孔隙率は37%、密度は1.1であった。油から生じる遊離脂肪酸、アルデヒド、および他の不純物を、白セメントクリンカーにより効率的に除去でき、しかも以下に挙げるような効果が得られた。
- 食用油の有効な耐用期限を、40から70%、または100%以上にまでも増大
- 脂肪酸、酸化生成物(アルデヒド、過酸化物、および遊離ラジカルなどの発癌性物質)の生成を低減──健康
- 揚げものの味と外観の改善
- (酸化生成物から生じる)酸価と粘度の低減
- 廃棄しなくてはならない使用済食用油の量の低減
【0062】
このOPCは実測値でSiO3 2.03%, SiO2 24.4%, Al2O3 1.97%, Fe2O3 0.34%, CaO 68.6%, MgO 0.58%, Cl 0.01%, TiO2 0.09%, P2O5 0.30%, K2O 0.16%, Na2O 0.19%を有しており、さらにBogue組成物を含みその内訳はC3S 66.04%, C2S 20.1%, C3A 4.64%, C4AF 1.04%, CaSO4 3.45%であった。
【0063】
所望の粒子径(14.5 μmなど)になるように、両方の材料を適切に碾いた。
【0064】
〔円板の調製〕
水和OPC試料およびクリンカー試料を、以下のようにして調製した。直径50mmの型を用
いて円板を成形し、直径50mm、厚さほぼ10mmの円板を得た。円板の形成にあたっては、セメントのみの構成について30gのOPCおよび12gの水を用い、また50/50 OPC&クリンカー構成については15gのOPCと15gのクリンカーに12gの水を加えたものを使った。水をセメント/クリンカーに加えた混合物をスパチュラで攪拌して、どろりとした粥状の粘りを得た。その後、紙コップに混合物を流し入れてから、その紙コップを水浴させたプラスチック容器内に置いて、容器内の相対湿度がほぼ100%となるようにした。容器を五日間にわたって40から50℃で保存した。
【0065】
孔隙率は以下のようにして見積った。濾過板材料の試料を、水中に終夜浸漬し、軽く拭いて水を切り、秤量してから炉(約220℃)に入れてさらに終夜置いた。それから再度秤量した。水の吸収%は以下の式から推定した。 % = ((((舟形容器+濡れた円板の重量) - 舟形容器の重量) - ((舟形容器+乾いた円板の重量) - 舟形容器の重量)) / ((舟形容器+乾いた円板の重量) - 舟形容器の重量)) x 100 。典型的な五種の円板試料のそれぞれについて分析を行った。
【0066】
Instron 1122 universal testing machine、および間隔を調節できる標準的な三点式試験治具(これもInstron製)を使って、強度を試験した。試料に応じ、概して40〜50mmの間隔をとった。負荷を試料にかけるに際しては、引張り速度(crosshead speed)を5 mm/minとした。ピーク負荷は、両振りロードセル(引張・圧縮ロードセル; model A217-12)を使って測定した。このロードセルでは100N、200N、500N、1000N、2000N、および5000Nについてのフルスケール範囲で値の読みとりができる。そうして、試料の破壊係数を、 fmax = 6 W L / 4 bd2 で算出した。ここでbは試料の巾、dは試料の厚さ、Wはかけた負荷、Lは間隔である。
【0067】
水和した試料が有していた特性を以下に述べる。
【0068】
【表2】

【0069】
〔円板群の評価〕
上述した濾過板群(25% 水和OPC/75% 白クリンカーなどの構成。典型的な重量は35グラム。)を、400mlのヒマワリ油中に投じてから、電気式ホットプレートを使い、ヒマワリ油を適切な調理温度である180℃にした。そうしてから90gのポテトチップを熱い油に投じ、きつね色になるまで調理した。その後ポテトチップを取り出して、代わりに同重量の
新しいチップを投じた。この手順を、一日あたりの揚げものの総数が8になるまでくりかえした。合わせて五日間(5 days)にわたり揚げものを行った。各日の揚げものを了えた後に、油の試料を保存して、粘度、pH、色、および1H NMR分光についての測定を行った。これらの実験の結果を以下にまとめてゆく。
【0070】
〔浸出に関する性能〕
以下のように評価をした。ポテトチップを五日間揚げた後の10.0mlのヒマワリ油試料を、500℃の炉で五時間にわたり灰化して、10.0mlの濃硝酸に溶いてマイクロウェーブ加熱分解にかけ、その後に脱イオン水で最終体積が25.0mlになるまで希釈してから、ICP-AES (Thermo Jarrell Ash Trace Scan)を用いた分析(% Ca, Fe, Na, Al, Zn, Cu)を行った。元素分析の結果を下記のTable 1-2に示す。
【0071】
【表3】

a n.d.: 不検出(none detectable)。すべての値の単位はppmである。
【0072】
カルシウムおよびナトリウムは、生理学的に許容されるカチオンとしては油中への浸出量が<5ppm、好ましくは<2ppm、望ましくは<1ppmである。他のカチオン(Fe, Al, Zn, Cuなど)の浸出は最小限であるべきである。上述した試料のいずれについても、FeとAlの浸出は検出限界以下であった。OPC 25wt%/クリンカー 75wt%板では、カルシウムその他の物質の浸出が少なかったことに留意されたい。
【0073】
〔pH・粘度・色〕
pHの測定から、油中に在る酸化学種の量がわかる。粘度と色を測定すると、油中に生じた酸化による劣化生成物の量がわかる。
【0074】
pHは、Electric Instruments Ltd pH Meter model 7010を使って測定した。ポテトチップの揚げに使い種々の添加物で処理したヒマワリ油の、水性/上清試料(油/水 1:1混合物から抽出したもの)についてpH値を測った。
【0075】
粘度は、Brookfield model DV-1 digital viscometer, no. 4 rotorを使って測定した。ポテトチップの揚げに使い種々の添加物で処理したヒマワリ油試料について、粘度値(mPa.s)を測った。
【0076】
色は、Unicam UV-2 UV-VIS electronic spectrophotometerを、250〜700nm範囲で用いて測定した。油試料の吸光度は、国際的に認められている波長490nm、許容理論的範囲0.0〜1.0吸光度で測定した。
【0077】
種々の試験における円板をつくる際に使った材料の粒子径を、下記のTable 1-3にて報告する。
【0078】
【表4】



【0079】
pHの安定性は、白色ポルトランドセメントクリンカーを使った場合に良好であることが明らかだろう。これはつまり、白色ポルトランドセメントクリンカーが酸の低減に対してもっとも効果的であることを意味する。一方、OPCを用いたときには粘度と色の変化が少なく、このことは酸化生成物が低減されたことを意味する。つまり、これらの材料を組み合わせて使用すれば、良好な結果が得られると云えるだろう。粒子径については、クリンカーとOPCの双方を14.5μmにすると最良の結果が得られることがわかった。
【0080】
1H NMR分光測定〕
アルデヒド副産物は、油と揚げものの風味と匂いの大部分を損なってしまう。こうしたアルデヒドは、脂質の二次的酸化による生成物であって、食用油の一次酸化生成物(ヒドロペルオキシジエンなど)から生じる。こうしたアルデヒドには、以下に挙げる本明細書にて指標として研究した酸化生成物が含まれる。ただし、その他にも多数の酸化生成物が存在するのが普通であることは気に留めておいてほしい。
(a) trans-2-アルカナール(通常、一不飽和の程度が比較的高い油の酸化に関連する)
(b) trans,trans-アルカ-2,4-ジエナール
(c) 4,5-エポキシ-trans-2-アルケナール(trans,trans-アルカ-2,4-ジエナールの酸化からの主な酸化生成物; Guillen et al., Lipid Sci. Food Agric., 85 (2005): 2413-2420 を参照のこと)
(d) 4-ヒドロキシ-trans-2-アルケナール(4-ヒドロペルオキシ-trans-2-アルケナールの酸化から生じると考えられる酸化生成物; 上記のGuillen et al.を参照のこと)
(e) cis,trans-アルカ-2,4-ジエナール(trans,trans-アルカ-2,4-ジエナールの幾何異性体であり、trans,trans-アルカ-2,4-ジエナールの検出量の25%で見られるのが普通)
(f) n-アルカナール(通常、一不飽和の程度が比較的高い油の酸化に関連する)
【0081】
上述したリストを毒性の観点から捉えると、相対的な毒性は (c) と (d) > (a) と (b)
と (e) > (f) の順になると思われる。
【0082】
アルデヒド濃度は、既知の化学シフト(周波数スケール)の値を持った検出できたNMR信号を、電気的に積分して得た。Bruker Avance 600 MHz NMR spectrometerを周波数600.13MHzで使い、検査温度は298Kであった。各油から0.30mlのアリコートを採り、フィールド周波数にロックをかける重水素化クロロホルム(C2HCl3)で0.90mlにまで希釈した。試料は5mm径のNMR管に収めた。このC2HCl3溶媒には、 5 x 10-3 mol.dm-3 の1,3,5-トリクロロベンゼン(δ=7.227ppmでのsinglet共鳴から同定)を入れておいて、定量内部標準として使った。600MHz分光計についての典型的なパルス条件には、64の自由誘導減衰(FID)を含め、データ点 32,768、収集時間 3.4079s、掃引幅 9615.38Hzを用いた。化学シフトは、残留クロロホルム(δ=7.262ppm)を基準とした。アルデヒドはNMRスペクトルで測定した。すなわち、 (a) trans-2-アルケナール、 (b) trans,trans-アルカ-2,4-ジエナール、 (c) 4,5-エポキシ-trans-2-アルケナール、 (d) 4-OH-trans-2-アルケナール、 (e) cis,trans-アルカ-2,4-ジエナール、 (f) n-アルカナール、である。化学シフト値、カップリングパターン、およびカップリング定数を考慮して、各スペクトルに見られた共鳴を同定した。結果を以下のTable 1-3に示す。クリンカーがアルデヒドをもっともよく吸着したこと、そしてOPCがpH、粘度、および色について最良の結果を残したことがわかった。つまり、この二種の組み合わせこそが望ましいということになる。
【0083】
【表5】



【0084】
〔図で見る結果〕
NMR実験から得られたアルデヒド濃度のデータを、図10から図15に示し、また色測定の結果を図16に示した。図17には、OPCクリンカー 25/75を使った二週間にわたる揚げ性能を示してある(一週間につき五日間を揚げに使った)。ここで、cis,trans-アルカ-2,4-ジエナール、4-ヒドロキシ-trans-2-アルケナール、および4,5-エポキシ-trans-2-アルケナールの濃度が、試験期間全体にわたって低いままとなっており、そしてn-アルケナール、trans-2-アルケナール、およびtrans,trans-アルカ-2,4-ジエナールの濃度も、試験期間の大半を通じて比較的低いままであった、ということに留意されたい。
【実施例2】
【0085】
〔牛脂 beef dripping での実験〕
「アルデヒド・カクテル」("aldehyde cocktail")を、主な三種のアルデヒド(trans-2-アルケナール、およびtrans,trans-アルカ-2,4-ジエナール、およびn-アルカナール)を牛脂(500g)に加えてつくり、典型的なアルデヒドの濃度が 10 mmol/kg牛脂 になるようにした(trans,trans-アルカ-2,4-ジエナール試料中での典型的な分率を反映して、cis,trans-アルカ-2,4-ジエナールの場合は約 2 mmol/kg牛脂 にした)。
【0086】
濾過板(OPC(濾過材1)か、OPC/クリンカー 50/50(濾過材2)のいずれか、典型的な円板の重量は35g)を、牛脂中に投じてから、電気式ホットプレートを使い、牛脂を適切な調理温度である180℃にした。適切な場合(下記参照)に、90gのポテトチップを熱い脂
に入れ、きつね色になるまで調理した。そしてポテトチップを取り出してから、同重量の新しいチップに交換して、一日あたりの揚げものの総数が8になるまでくりかえした。合計二日間、揚げものを行った。各日の揚げ日程を了えた後、牛脂の試料を保存して、1H NMR分光測定を施した。すべてのありえるアルデヒド保持の組み合わせを踏まえ、二種の円板材料について以下のようにそれぞれ五回の実験を行った。
(a) 牛脂/濾過材1/チップ無し
(b) 牛脂/濾過材2/チップ無し
(c) 牛脂/チップ
(d) 牛脂/濾過材1/チップ
(e) 牛脂/濾過材2/チップ
この実験手順を二度にわたりくりかえした。また、牛脂にアルデヒド・カクテルを加えて、チップと濾過材を無くした対照実験についても行っている。これらの結果を図18に示した。
【実施例3】
【0087】
〔ヒマワリ油/エライジン酸を使った実験〕
少量のtrans脂肪酸(エライジン酸)の試料を直接加熱したところ、
重大な量のtrans-2-アルケナールおよびn-アルカナールのNMRスペクトルが得られた。このことは(熱でtransからcisへの転換が起こるような条件ならば)一不飽和脂肪では意外でもなんでもない。
【0088】
【化2】

【0089】
試験は、エライジン酸を加えてからポテトチップを揚げたヒマワリ油の試料で行った。実験手順は、前述の実施例で用いたものと同様ではあるが、0.5gのエライジン酸を400mlのヒマワリ油に加えた(濃度は約 4 mmol/kg油)ところが異なっていた。一組の試験をこの混合物だけで行い、そして残りの試験では比率25/75 OPC/クリンカー濾過板を投じたものなどを行った。ヒマワリ油試料のスペクトルの分析からは、trans-2-アルケナールとn-アルケナールの量が増えていることが強調された。このことは、エライジン酸がこれら二種のアルデヒド種に転換した程度に対応している。測定したアルデヒドの量は、Table 3-1とTable 3-2に示してある。
【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
Table 3-1とTable 3-2に示した対照値は、エライジン酸を加えて混合した直後の熱い油から採った試料での、アルデヒド測定値を表す。二組の対照値が(完全に同じではないに
しても)非常に似かよっているという事実をさておいても、trans-2-アルケナールとn-アルカナールの測定値が、trans,trans-アルカ-2,4-ジエナールの測定値と同じorderであることから、バルクの油とエライジン酸の双方の酸化が即座に起こるのだということがわかる。すべての値からは、対応する対照ヒマワリ油の値を差し引いてある。それらの差分値を図10と図11に示してある。
【0093】
trans-2-アルケナールとn-アルカナールの値が、ヒマワリ油/エライジン酸についての結果を支配するが、これらの値は混合物に円板状濾過材を投じることで大幅に削減できる、ということがわかるだろう。ゆえにこうした結果からは、間接的にではあるが、OPC/クリンカー濾過装置がtrans脂肪の酸化化学反応に干渉していることを示される。こうしたことを述べるのは、trans脂肪のin vivo有害性は、部分的には、調理中に生じる脂質酸化生成物としてのアルデヒドに因るものだろうという推定ができるためである。
【実施例4】
【0094】
〔珪酸石灰の網状発泡体〕
網状発泡試料を以下のように調製した。珪酸石灰のスラリーを、ヒドロキシプロピル-メチルセルロースを結合剤および湿潤剤として加え、ポリウレタンフォームの外被の助けとなるようにして調製した。所望の孔密度を有するポリウレタンフォーム切片をあらかじめ切り分けてから、セラミックスラリー混合物とともにミキサーに入れ、所定の時間にわたり混ぜた。混合が完了したら、余剰のスラリーをすべて圧搾ローラーで絞り出して、孔が実質的に塞がるようにした。切片を蓋つきの保存バットに入れ、空気乾燥してから、除湿機に終夜かけた。その後、乾いた切片を焼結して、ポリウレタンを制御して焼灼できるような外形になるようにし、珪酸石灰の網状発泡体の切片を得た。
【0095】
その後これらの切片に対し、上述した実施例と同様に、ヒマワリ油を試験用油として使い前述の内容と同じくポテトチップを揚げることで、評価を行った。
【0096】
【表8】

【0097】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディープフライヤーを用いて揚げものをしているときのフライヤー中の食用の油を保存するための方法であって、
水硬性の組み合わせ産物を用いて、前記ディープフライヤーで揚げものをしているときの前記フライヤー中でin situで前記油を処理するステップ、
を含み、
前記水硬性の組み合わせ産物は、
本質的に、50 wt%よりも多い、白色OPCクリンカー及び白色OPCの碾かれた混合物と、
随意に更に、シリカ 1〜2 wt%、チタニア(TiO2) 1〜2 wt%、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、天然の長石、天然のナトリウムゼオライト、天然のカルシウムゼオライト、合成のカルシウムゼオライト、合成のナトリウムゼオライト、珪灰石、水酸化カルシウム、粘土、柱状粘土、活性粘土/土壌、滑石/カオリナイト、角閃石、花崗斑岩、流紋岩、蝋石、斑岩、アタパルジャイト、黒色炭素、セルロース繊維、珪藻土、酸化防止剤、凝集剤、及び可食性の酸から選択される成分と、
から成り、
前記水硬性の組み合わせ産物は、処理カートリッジにおいて、自立式のブロック又はブリケットのいずれかであるか、或いは、粒状又は球状であり、
前記水硬性の組み合わせ産物は、カルシウム及びマグネシウムが前記油中へ実質的に浸出しない特性を有しており、また、前記水硬性の組み合わせ産物は油がその内部へとひろがって、不純物がその内部に付着させられるように、多孔質である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記混合物は、前記白色OPC及び前記白色OPCクリンカーの総重量あたりに、20 wt%〜35
wt%のOPCと、前記白色OPC及び前記白色OPCクリンカーの総重量あたりに、65 wt%〜80 wt%のOPCクリンカーと、を含むことを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
前記混合物は、前記白色OPC及び前記白色OPCクリンカーの総重量あたりに、約25 wt%のOPCと、前記白色OPC及び前記白色OPCクリンカーの総重量あたりに、約75 wt%のOPCクリンカーと、を含むことを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項4】
前記油が、冷却点を有するディープフライヤー内に収められ、
前記固体材料が、前記ディープフライヤーの上側の高温領域に位置する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
熱い前記油が、冷却点を有するディープフライヤー内に収められ、
前記源が、前記フライヤーの下側の低温領域に位置する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水硬性の組み合わせ産物は、食用油に浸漬するための自立式のブロックもしくはブリケットの形態をとることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水硬性の組み合わせ産物は、前記白色OPC及び前記白色OPCクリンカーの総重量あたりに、20 wt%〜35 wt%のOPCと、前記白色OPC及び前記白色OPCクリンカーの総重量あたりに、65 wt%〜80 wt%のOPCクリンカーと、を含む白色OPCクリンカー及び白色OPCの碾かれた混合物を、75 wt%よりも多く含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記水硬性の組み合わせ産物は、前記白色OPC及び前記白色OPCクリンカーの総重量あたりに、20 wt%〜35 wt%のOPCと、前記白色OPC及び前記白色OPCクリンカーの総重量あたり
に、65 wt%〜80 wt%のOPCクリンカーと、を含む白色OPCクリンカー及び白色OPCの碾かれた混合物を、90 wt%よりも多く含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記水硬性の組み合わせ産物は、前記白色OPC及び前記白色OPCクリンカーの総重量あたりに、約25 wt%のOPCと、前記白色OPC及び前記白色OPCクリンカーの総重量あたりに、約75 wt%のOPCクリンカーと、を含む白色OPCクリンカー及び白色OPCの碾かれた混合物の100 wt%から成ることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水硬性の組み合わせ産物は、白色OPC、及び粒子径が10〜50μmまで碾かれた白色OPCクリンカーから成ることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水硬性の組み合わせ産物は、白色OPC、及び粒子径が約14.5μmまで碾かれた白色OPCクリンカーから成ることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図19】
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【図20】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−63067(P2013−63067A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219802(P2012−219802)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2009−522344(P2009−522344)の分割
【原出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(509031257)ビービーエム テクノロジー リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】BBM TECHNOLOGY LTD
【住所又は居所原語表記】132 BURNT ASH ROAD,LEE,LONDON SE12 8PU,GREAT BRITAIN
【Fターム(参考)】