説明

有機溶剤の再生方法、およびインクジェット記録ヘッドの製造方法

【課題】劣化した有機溶剤の溶解能力を向上し、再生可能回数を増加させることにより、コストと環境負荷を低減できる有機溶剤の再生方法と、この技術を適用したインクジェット記録ヘッドの製造方法の提供。
【解決手段】ポリケトン樹脂を構成するモノマーよりも沸点が高く、波長290nmにおける吸光度が4より小さい有機溶剤を使用し、波長が260nm以上320nm以下の紫外線を照射して含有するポリケトン樹脂を分解した後、溶液を加熱して分解物モノマーを蒸発除去する加熱工程を含む有機溶剤の再生、及びこの方法を適用したインクジェット記録ヘッドの製造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリケトン樹脂を含む有機溶剤の再生方法、およびその方法を適用したインクジェット記録ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、集積回路の高密度化が進み、半導体回路の微細化が進められている。微細化はパターニングの露光時に用いる波長を短波長にすることや、液浸方式の採用などにより達成されてきた。半導体回路の微細化が進められる中、製造時に、ウエハ上に異物が存在したまま工程を進めると、パターン上にピンホールを生じるなどして、本来発揮される性能が十分に得られない場合がある。従って、形成すべきパターンの微細化に伴い、ウエハ表面の高い清浄性が今まで以上に要望されている。
【0003】
感光性材料は半導体工程においてエッチング時のフォトレジストなどとして用いられている。一般的な半導体工程では、感光性材料は、パターンを形成すべき材料上部に塗布され、露光することで化学変化を生じる。露光後、現像液を用いることでレジストパターンが形成される。その後、エッチング処理を行い、感光性材料下部の材料にパターンを形成する。最後に不要となった感光性材料のレジストは剥離液により剥離される。
【0004】
一連の工程の中で、現像やレジスト剥離の際には有機溶剤や無機アルカリ水溶液などが用いられることが多く、感光性材料を溶解させた後、ウエハ上に液滴として少量残る。ウエハ上に残存した有機溶剤や無機アルカリ水溶液は水リンスを行うことで水置換を行い、乾燥しやすくする。
【0005】
このような半導体工程は、インクジェット記録ヘッドの製造にも用いられている。感光性材料をシリコンウエハ上に塗布した後、露光、現像、エッチング等を繰り返しノズル部分の形成を行う(特許文献1)。
【0006】
インクジェット方式は、種々の作動原理よりノズルからインクの微小液滴を飛翔させて被記録媒体(紙等)に到達させ、画像や文字等を記録する方法である。この方式は、高速、低騒音、多色化が容易であり、記録パターンの融通性が高い、現像及び定着操作が不要等の特徴があり、様々な用途において急速に普及している。特に、近年はフルカラーの水性インクジェット記録方式技術がめざましい発達を遂げており、従来の製版方式による多色印刷や、カラー写真方式による印画と比較しても遜色のない多色画像を形成することも可能となっている。
【0007】
そして、更なる記録の高精細化、フルカラー化等の記録特性向上の要求に伴って、インクの微小液滴化、ノズルの高密度配置が進み、必要とされるパターン精度が著しく向上している。そのため、半導体工程を用いたノズル形成において、除去すべき感光性材料が残存していると、異物としてインク流路をふさぐことがあり、目詰まりなどの現象を生じることがある。また、エッチングや露光時の異物として本来形成されるべきパターン生成を阻害することがあり、設計時のインクジェット記録ヘッドの性能を十分に発揮することができない場合がある。
【0008】
上記に述べたように、現像やレジスト剥離などの感光性材料の除去工程では、現像液や剥離液の槽にウエハを浸すことで感光性材料を除去した後、純水の槽に浸すことで水リンスを行う。こうしてウエハに付着した現像液や剥離液を純水に置換して、乾燥しやすくすると同時に感光性材料を完全に除去することが多い。そのため、ウエハを処理しつづけることで現像液や剥離液の槽に感光性材料が蓄積していく。また、水リンス槽においても、ウエハ上に付着した感光性材料を多く含む有機溶剤を置換することになるため、有機溶剤槽よりも濃度は低いものの、感光性材料が蓄積していく。
【0009】
このようにウエハを処理しつづけ、ある一定量以上の感光性材料が蓄積すると、感光性材料を現像液や剥離液の槽で十分に溶解しきれなくなる。また、水リンス時においても、ウエハ上に残存した現像液や剥離液中の感光性材料の成分が析出し、残渣として生じる。これを防ぐために、一定枚数のウエハ上の感光性材料を処理した後、現像液や剥離液、水リンス層の純水を新たに取り替えることで感光性材料の量を低減させ、ウエハ上の異物の生成を防いでいる。
【0010】
しかし、感光性材料が蓄積し、取り替えられた液は焼却などの廃棄処分されるため、環境に対して大きな負荷を生じる傾向があった。また、これらの工程で用いられる現像液や剥離液は通常、電子材料グレードの高価な薬品であるため、コストが高くなる傾向があった。
【0011】
このため、これらの感光性材料を溶解させた液を用いて処理可能なウエハの枚数を増やすために、現像やレジスト剥離を行った後の液を蒸留することで感光性材料を除去し、再び使用することなどが行われてきた(特許文献2)。
【0012】
また、水リンスの液を再び利用するために、水リンス液に紫外線を照射して有機物量を低減させ使用することも行われてきた(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3143307号公報
【特許文献2】特開平08−318263号公報
【特許文献3】特開平08−82937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献2の方法では、溶剤(例えば、乳酸メチルや乳酸エチル)を沸点以上の温度(例えば、150〜160℃)に加熱する必要があり、加熱に際して大量の電気エネルギーを使用する必要があった。また、蒸留設備の導入や、可燃性の液体に沸点以上の熱を加えることにより、揮発した有機溶剤が電気回路に接触して周囲に影響を与えることを防止する防爆などの高価な安全確保が望まれ、高額の設備投資が必要となる場合があった。
【0015】
また、特許文献3の方法は、対象を水リンス液としており、より具体的には、水リンス液中の非常に低濃度の樹脂の処理を対象としている。そのため、環境負荷やコストに大きな影響を与えうる現像液や剥離液に用いられる有機溶剤そのものの再生は行われてこなかった。
【0016】
本発明は、これら従来技術の課題を解決するために成されたものである。本発明の目的は、樹脂を溶解することで溶解能力の低下した有機溶剤の溶解能力を向上させ、清浄なウエハを得る為のウエハ洗浄を再び可能とし、有機溶剤の再生可能回数を増加させ、コストと環境負荷を低減できる有機溶剤の再生方法を提供することである。また、本発明の有機溶剤の再生方法を適用したインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、ポリケトン樹脂を含む有機溶剤に対して、波長が260nm以上320nm以下の紫外線を照射して該樹脂を分解する照射分解工程を含む、ポリケトン樹脂に対する有機溶剤の溶解力を向上させる有機溶剤の再生方法であって、
該有機溶剤は、該ポリケトン樹脂を含まない状態で、該樹脂を構成するモノマーの沸点よりも高い沸点を有しかつ波長290nmにおける吸光度が4より小さく、
該照射分解工程より得られる有機溶剤を加熱し、該樹脂の該紫外線による分解物である該モノマーを蒸発させて除去する加熱除去工程を含むことを特徴とする有機溶剤の再生方法である。
【0018】
また、本発明は、
(i)インクを吐出するエネルギーを発生するインク吐出エネルギー発生素子が形成された基板上に、有機溶剤に溶解可能な樹脂からなるインク流路パターンを形成する工程と、
(ii)該インク流路パターン上に、インク流路壁となる被覆樹脂層を形成する工程と、
(iii)該被覆樹脂層に、インク吐出口を形成する工程と、
(iv)該有機溶剤を用いて該インク流路パターンを溶出し、該インク吐出口に連通するインク流路を形成する工程と
を含むインクジェット記録ヘッドの製造方法であって、
該溶解可能な樹脂として、ポリケトン樹脂を使用し、
工程ivに用いる有機溶剤は、該ポリケトン樹脂を含まない状態で、該ポリケトン樹脂を構成するモノマーの沸点よりも高い沸点を有しかつ波長290nmにおける吸光度が4より小さく、
工程ivで該インク流路パターンを溶出させた有機溶剤を、前記有機溶剤の再生方法で再生させ、再び工程ivの有機溶剤として用いることを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、樹脂を溶解することで溶解能力の低下した有機溶剤の溶解能力を向上させ、清浄なウエハを得る為のウエハ洗浄を再び可能とし、有機溶剤の再生可能回数を増加させ、コストと環境負荷を低減できる有機溶剤の再生方法が提供される。また、本発明の有機溶剤の再生方法を適用したインクジェット記録ヘッドの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ポリケトン樹脂を含む有機溶剤に紫外線を照射する装置の一例の模式図である。
【図2】NorrishII型の分解反応を説明するための模式図である。
【図3】NorrishII型の分解反応への樹脂の配座変化による影響を説明するための概念図である。
【図4】異なる吸光度における、光源からの距離と、光の透過率との関係を示すグラフである。
【図5】本発明を適用可能なインクジェット記録ヘッドの製造方法におけるノズル製造工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明では、ポリケトン樹脂を含む有機溶剤に対して、波長が260nm以上320nm以下の紫外線を照射することで、この有機溶剤中の樹脂を分解して低分子化させ(照射分解工程)、ポリケトン樹脂に対する有機溶剤の溶解力を向上させる。その際、紫外線によるポリケトン樹脂の分解物として、ポリケトン樹脂を構成するモノマーが有機溶剤中に含まれる。なお、有機溶剤は、ポリケトン樹脂を含まない状態で、波長290nmにおける吸光度が4より小さく、さらに、有機溶剤自体(ポリケトン樹脂を含まない状態の有機溶剤)の沸点は、上記モノマーの沸点よりも高い。そして、照射分解工程より得られる有機溶剤を加熱することにより、ポリケトン樹脂を構成するモノマーを蒸発させて除去する(加熱除去工程)。
【0022】
また、上記樹脂を含む有機溶剤は、紫外線照射後の他に、紫外線照射前や照射時にも加熱されていても良い。典型的には、照射分解工程後に加熱除去工程を行うが、照射分解工程と加熱除去工程とは並行して行っても良く、さらに、この2つの工程を並行して繰り返し行っても良いし、交互に繰り返し行っても良い。
【0023】
上述した本発明では、照射分解工程によって有機溶剤中の樹脂濃度を低下させるとともに、加熱除去工程によって分解物であるポリケトン樹脂のモノマーが光を吸収することによる樹脂の分解効率の低下を抑制することができる。これにより、ウエハ上に残渣を生じることなく、清浄なウエハを得るためのウエハ洗浄を再生した有機溶剤を用いて行うことができ、さらに有機溶剤の再生可能回数を増加させることができる。そのため、有機溶剤にかかるコストを低減できると同時に、環境負荷を低減させることができる。また、本発明の有機溶剤の再生方法を適用することによって、コストや環境負荷への影響を低減できるインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供することができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、本発明の有機溶剤の再生方法に用いることができる装置の一例を図1に示す。この例は本発明を好適に行うことのできる装置の一例であり、本発明の主旨に反しない限り、本発明の効果はこの実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明にて実際にポリケトン樹脂を溶解した溶剤に紫外線を照射する装置としては、一般的に上市される流水殺菌ランプ装置を流用することができ、これらの装置は、タキエンジニアリング(株)、岩崎電機、三共電気社等から販売されている。また、これらの装置は、金属管(図1の二重管の外側の管4に対応)と石英管(二重管の内側の管5に対応)との間に水の流路(紫外線照射部7に対応)が形成されており、石英管内に殺菌灯(光源6に対応)が配置されている。そして、流路内に水を流しながら、例えば254nmの紫外線を照射して水の殺菌を行うことができる。本発明では、この装置のランプとして特定の波長(260〜320nm)のランプを用い、水の代わりにポリケトン樹脂を溶解した溶剤を流すことで、照射分解工程を実施することができる。
【0026】
図1では、例えばインクジェット記録ヘッドを製造する際に得られる、ポリケトン樹脂を含む有機溶剤2が槽1に蓄えられており、この槽からポンプ3を用い、配管を通じて紫外線照射管(流水型殺菌装置)に有機溶剤2が導入される。紫外線照射管は口径が異なる二つの管4、5が二重管を構成しており、内側の管5内部に、有機溶剤2に紫外線を照射する光源6が紙面上下方向に配置されている。外側の管4と内側の管5との間は空隙となっており、この空隙部分が紫外線照射部7となっている。内側の管5は、例えば石英ガラスなどの紫外線を良好に透過する材質とすることができ、内側管内部の光源6が発する紫外線を空隙である紫外線照射部7に到達させることが可能である。
【0027】
有機溶剤2はこの空隙である紫外線照射部7の一端に導入され、他端から排出される過程で紫外線に曝露され、溶剤2中の樹脂が分解され、その後再び槽1に導入される。槽1には加熱用のヒーター8が備えられており、有機溶剤2を加熱することができる。また、槽1は外気と連通しており、ポリケトン樹脂が分解され、発生したモノマーを大気中へと蒸散させることが可能である。
【0028】
また、有機溶剤2を紫外線照射部7に連続的に流しても良いし、照射部7の内部に一端滞留させた後入れ替えても良い。さらに、一度の紫外線照射及び加熱処理で樹脂を十分に分解除去しきれない場合は繰り返し何度も紫外線照射部7と槽1とを通過させて、これらの処理を行っても良い。
【0029】
紫外線照射を行なうユニット(流水型殺菌装置)としては、上述したように例えば岩崎電気製流水殺菌装置やタキエンジニアリング株式会社製紫外線式殺菌装置、三共電気製流水殺菌装置を用いることができる。
【0030】
なお、本発明に用いる光源としては、UV−BランプやBr2、XeCl、XeBrと言ったエキシマーランプあるいは290nmの紫外線を発光するLED等を好適に用いることが可能である。
【0031】
また、例えば、有機溶剤の流路内(図1では、紫外線照射部7内)に撹拌機構を設けることで、有機溶剤2を撹拌させながら紫外線を照射することができ、処理効率を容易に向上させることができる。撹拌機構としては、例えば図1に示す邪魔板9を挙げることができるが、流路内の有機溶剤2の流れを乱すことができるものであれば適宜使用することができ、磁力等の外部エネルギーを用いて外部から撹拌子を回転させる形態としても良い。
【0032】
有機溶剤2への加温方法は、図1のように槽内にヒーター8を設置する方法の他、槽を加熱ジャケットやスチームなどにより間接的に加熱する方法や、有機溶剤2の配管途中に熱交換器を設ける方法を用いることができる。
【0033】
本発明の有機溶剤の再生方法は、上述したように照射分解工程と、加熱除去工程とを含む。以下に、本発明のメカニズムについて述べる。まず、有機溶剤中で紫外線照射を行い、樹脂を分解する利点について説明する。
【0034】
本発明の再生方法は、例えばインクジェット記録ヘッドを製造する際に得られるポリケトン樹脂を含む有機溶剤を対象としているので、溶出膜中や水等の貧溶媒中で樹脂が会合等している場合と異なり、典型的に樹脂は有機溶剤に溶解され溶媒和されている。このため、紫外線を樹脂分子に満遍なく照射することができ、無駄なエネルギーを低減させるとともに、局所的な昇温による樹脂の変性による難分解化を防ぐことができる。
【0035】
また、一般的に有機溶剤中の物質濃度が上昇するにつれ、物質が溶媒和されにくくなり、分子の運動が制限される傾向があるため、物質の有機溶剤への溶解しやすさは有機溶剤中での濃度に大きく依存する。溶解させる物質が樹脂の場合、樹脂は一般的に分子が大きいため自由度が制限されやすく、有機溶剤中の濃度増大の影響が顕著に現れる傾向があり、濃度上昇と共に著しく溶解しやすさが低下する傾向がある。反面、低分子の物質は分子が小さいため、濃度上昇に対しても分子運動が制限されづらい。そのため、紫外線により有機溶剤中の樹脂を分解し低分子化することで、この溶剤に再び樹脂を溶解させる際に、樹脂が溶媒和されやすく、分子運動が制限されにくくなる。その結果、紫外線処理を行わない場合に比べ多くの枚数のウエハ処理を行うことが可能となる。
【0036】
また、有機溶剤中では図2に示すNorrishII型の分解反応が起こり易い。NorrishII型の分解反応は、多員環の中間状態を経て反応部位から離れた水素原子を引き抜き、樹脂(高分子)の主鎖が直接切断される分解反応であるため、樹脂の低分子化に非常に効果的である。NorrishII型の分解反応は樹脂分子が特定の配座になると生じやすい。有機溶剤等の液体中では樹脂等の高分子は溶媒和されており、図3のように、主鎖を中心軸として回転することが容易であるため、自由に立体配座を変化させて反応部位10同士を接近させて、NorrishII型の分解反応が起こりやすくなる。
【0037】
次に、ポリケトン樹脂の紫外線に対する分解性を述べる。
【0038】
本発明に用いるポリケトン樹脂としては、PMIPK(ポリメチルイソプロペニルケトン)、PVK(ポリメチルビニルケトン)、ポリメチルフェニルケトン、ポリt−ブチルイソプロペニルケトンなどが挙げられる。また、これらの樹脂を構成する各モノマー成分を用いて共重合させた樹脂も好適に用いることが可能である。
【0039】
なお、PMIPKは、ポリケトン樹脂の中でも、Deep−UVレジストとして最も使用される樹脂の一つである。PMIPKは、カルボニル基が結合している主鎖の炭素原子が第三級炭素原子となっており、光を吸収した際に比較的寿命の長い第三級ラジカルを発生しやすく、次いで生じる分解の効率が良い。そのため、本発明により有機溶剤を再生する際に、容易に効率的な処理を行なうことができる。なお、PMIPKのモノマーである、メチルイソプロペニルケトンの沸点は約98℃である。
【0040】
ポリケトン樹脂は、一般的に波長約290nmを中心とした、非結合性軌道と反結合性軌道間の電子遷移、n−π*遷移の吸収をもち、これにより分解する。また、炭素-炭素結合の結合解離エネルギーが約330kJ/mоlであるので、このエネルギーに相当する350nm以下の光ならば、330KJ/mol以上のエネルギーを有するのでポリケトン樹脂の主鎖を切断することが可能である。
【0041】
本発明では、ポリケトン樹脂を含む有機溶剤に波長260nm以上320nm以下の紫外線を照射し、ポリケトン樹脂を分解する。また、ポリケトン樹脂を含まない状態で、ポリケトン樹脂のモノマーよりも沸点が高く、波長290nmにおける吸光度が4より小さい有機溶剤を用いる。
【0042】
乳酸メチルや乳酸エチル等のエステル溶剤は、一般的に、210nm付近に吸収極大があり、250nm付近までは光を透過しにくい傾向があり、290nmの吸光度は、例えば乳酸メチルは0.084、乳酸エチルは0.088と極めて低い。そのため、波長が250nm以上の領域の紫外線を照射することで、ポリケトン樹脂に光エネルギーを実効的に加えることが可能となる。
【0043】
一方、ポリケトン樹脂の溶解性が良好なメチルエチルケトン等のケトン系溶剤は、一般的に290nm付近にカルボニル基の吸収があり、例えばメチルエチルケトンの290nmの吸光度は4以上であり、ポリケトン樹脂に効果的に紫外線を照射することができない。
【0044】
上述したエステル溶剤等の波長290nmの吸光度が4より小さい有機溶剤を用いる場合、波長250nm以上、350nm以下の紫外線を照射することでポリケトン樹脂を原理的には分解することが可能である。しかしながら本発明においては、260nm以上320nm以下の波長領域の紫外線を用いることで、ポリケトン樹脂が紫外光を一層吸収しやすく、分解に必要なエネルギーも十分であることより効率的にポリケトン樹脂を分解することが可能となる。
【0045】
次いで、紫外線照射処理を行うことで有機溶剤中に生じるポリケトン樹脂の分解物の蓄積について述べる。例えば、インクジェット記録ヘッドを作製する際に、有機溶剤によるポリケトン樹脂の溶解除去と、波長260m以上320nmの紫外線照射による有機溶剤再生とを同じ溶剤を再利用して繰り返し行った場合を考える。この場合、有機溶剤中にポリケトン樹脂の分解物であるモノマーが徐々に蓄積するため、再生に要する時間が徐々に長くなる傾向がある。モノマーはポリケトン樹脂と類似した吸収波長を持ち、260nm以上320nm以下の紫外光をポリケトン樹脂同様、十分吸収しやすい。そのため、有機溶剤の再生を繰り返すと有機溶剤中に蓄積したモノマーが紫外光を吸収し、分解すべきポリケトン樹脂に実効的に照射される紫外光の割合が減少する。
【0046】
そこで本発明では、樹脂を含まない状態で、モノマーの沸点よりも高い沸点を有する有機溶剤を再生対象とすることで有機溶剤に比べてモノマーを蒸発しやすくし、大気中への蒸発により有機溶剤に対するモノマーの比率を減少させることが可能となる。理論上、モノマーの沸点以上の沸点を有する有機溶剤を選択することで大気中への蒸発によりモノマー/有機溶剤の比率を低下させることができる。
【0047】
また、有機溶剤自体の沸点を、ポリケトン樹脂のモノマー沸点よりも20℃以上高くすることで、蒸気圧の差から、ポリケトン樹脂の分解により生じたモノマーを容易に効率的に蒸発させることが可能となる。さらに、有機溶剤自体の沸点をポリケトン樹脂のモノマー沸点よりも50℃以上高くすることで、容易にほぼモノマーのみを効率的に蒸発させることが可能となる。
【0048】
ポリケトン樹脂を含有させる有機溶剤としては、上述した沸点や吸光度の要件を満たす様々な種類の有機溶剤を用いることが可能である。例えば、ポリケトン樹脂としてPMIPKを用いた場合は、PMIPKのモノマーであるメチルイソプロペニルケトンの沸点(98℃)よりも20℃以上高い沸点を持つ有機溶剤として、乳酸メチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートなどが挙げられる。また、50℃以上高い沸点を持つ有機溶剤として、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ―ブチロラクトン、エチレンカルボナート、エチレングリコールモノブチルアセタート、グリセリンアセタート、グリセリンジアセタートなどが挙げられる
また、照射分解工程より得られる有機溶剤を、ポリケトン樹脂のモノマーの沸点以上、有機溶剤自体の沸点未満の温度で加熱(加温)することでモノマーの蒸発速度を容易に加速することが可能となる。さらには反応系を大気に連通させることでモノマーはより拡散しやすくなり効率も向上する。
【0049】
有機溶剤中におけるポリケトン樹脂と分解物の量について述べる。一般的に、光源から放射された光は液中を伝播する際、指数関数的に強度が低下する。このため、照射した紫外光を有機溶剤中に十分に透過する観点から、紫外線を照射する際のポリケトン樹脂とその分解物の有機溶剤中の濃度が一定量以下、具体的には、光路長を1cmとした際に、吸収ピークである波長290nmの吸光度が4以下であることが好ましい。
【0050】
図4に、異なる吸光度における、光源からの距離と光の透過率との関係を表すグラフを示す。実線は、溶剤として乳酸メチル(290nmにおける吸光度が0.084)を用いた場合、即ち、有機溶剤中のポリケトン樹脂の濃度が0質量%の場合を示したものである。一方、点線は、乳酸メチルにポリケトン樹脂を溶解して、波長290nmにおける吸光度が4となるように調整した溶液の場合を示したものである。この図に示すように、濃度が増加するにつれて、光の到達距離は著しく短くなる。一般的に光源の強度を強くすることで到達距離を伸ばすことができるが、強い強度の光源は極めて高価となる。このため、紫外線を照射する際の波長290nmにおける吸光度が4以下の、ポリケトン樹脂や分解物を含む有機溶剤を使用することによって、蛍光灯レベルの数十Wの出力の弱い光源を用いて安価に有機溶剤の再生を容易に行うことが可能である。
【0051】
また、例えば、図1に示す流水型殺菌装置において、紫外線が通過する方向の有機溶剤2の厚み、即ち、紙面上下方向に配置された光源6に対して垂直方向の有機溶剤2の厚み(管5の外周面から管4の内周面までの距離)を5mm以下とすることが好ましい。これにより、流路内の光源近くと光源から離れた場所を流れる有機溶剤に、容易に万遍なく紫外線を照射することが可能となり、有機溶剤中の樹脂を容易に均一に紫外線照射処理することが可能となる。不均一な処理の場合、分解した樹脂に再び光が照射されることがあり、エネルギーのロスを生じやすくなる。一方、5mm以下では、容易に樹脂を均一に処理することができるので、十分に紫外線処理され分解された樹脂に再び光を照射する割合を容易に低下させることができ、エネルギーのロスを容易に低下させることができる。そのため、より効率的な樹脂の分解が可能となり、有機溶剤の再生を効率的に行なうことが可能となる。
【0052】
次に、図1の槽1に、ポリケトン樹脂を用いてインクジェット記録ヘッドを形成したウエハを、有機溶剤2中に浸漬してポリケトン樹脂を除去した場合を考える。この場合、有機溶剤2中のポリケトン樹脂は一旦高濃度になるものの、加熱処理と、紫外線照射処理とを併用することによって、効率的にポリケトン樹脂を分解することができ、溶剤中の樹脂濃度を低くすることができる。即ち、溶剤2中の樹脂濃度が低くなった時にウエハを引き上げれば、極めて洗浄度の高い溶剤でポリケトン樹脂を除去した場合と同一の状況とすることができ、インクジェット記録ヘッドの歩留まりの向上にも寄与することが可能となる。
【0053】
本発明により再生を行なった有機溶剤はインクジェット記録ヘッドの製造においても好適に用いることができる。すでに述べたように、インクジェット記録ヘッドには、ノズルの高密度化、微細化に伴い、より清浄なウエハを得ることができるウエハ洗浄性が望まれているためである。
【0054】
次に、本発明の再生方法を適用可能なインクジェット記録ヘッドの製造方法について説明する。この製造方法は、以下の工程を含むことができる。なお、本発明の再生方法は、例えば特許第3143307号公報に記載されるインクジェット記録ヘッドの製造方法に適用することができる。
【0055】
(i)インクを吐出するエネルギーを発生するインク吐出エネルギー発生素子が形成された基板上に、有機溶剤に溶解可能な樹脂からなるインク流路パターンを形成する工程。
(ii)このインク流路パターン上に、インク流路壁となる被覆樹脂層を形成する工程。
(iii)この被覆樹脂層に、インク吐出口を形成する工程。
(iv)この有機溶剤を用いてインク流路パターンを溶出し、インク吐出口に連通するインク流路を形成する工程。
【0056】
この際、溶解可能な樹脂としては、ポリケトン樹脂を使用する。また、工程ivに用いる有機溶剤は、ポリケトン樹脂を含まない状態で、ポリケトン樹脂のモノマーの沸点よりも高い沸点を有しかつ波長290nmにおける吸光度が4より小さい。この製造方法では、工程ivでインク流路パターンを溶出させた有機溶剤を、本発明の有機溶剤の再生方法で再生させ、再び工程ivの有機溶剤として用いることができる。
【0057】
なお、工程ivと、有機溶剤の再生とは並行して、即ち溶剤を再生しつつ工程ivを行っても良い。また、有機溶剤の再生と工程ivとを並行して繰り返し行っても良く、交互に繰り返し行っても良い。本発明の製造方法では、有機溶剤の再生方法に用いる例えば図1に示す再生装置を、工程ivに用いるポリケトン樹脂(例えば、商品名:ODUR)の除去装置に直結させた装置を用いることができる。
【0058】
図5を用いて、上記製造方法の一実施形態を説明する。
【0059】
まず、図5aに示すように、インク吐出エネルギー発生素子として例えばインク吐出圧力発生素子12が形成された基板11上に、上記有機溶剤に溶解可能なポリケトン樹脂からなるインク流路パターン13の形成する(工程i)。
【0060】
次に、図5bに示すように、例えば、常温(25℃)にて固体状のエポキシ樹脂を主成分とする樹脂を溶媒に溶解し、これをインク流路パターン13上にソルベントコートし、インク流路壁となる被覆樹脂層14を形成する(工程ii)。なお、被覆樹脂層中の樹脂としては、例えば特許第3143307号公報に記載されるダイセル社製エポキシ樹脂EHPE−3150(商品名)や、アデカ社製光開始剤SP−170(商品名)を含む樹脂を用いることが可能である。
【0061】
続いて、図5cに示すように、被覆樹脂層14、具体的には、インク吐出圧力発生素子12及びインク流路パターン13の紙面上方の被覆樹脂層14に、インク吐出口15を形成する(工程iii)。
【0062】
そして、図5dに示すように、ポリケトン樹脂からなるパターン13を、上記有機溶剤で溶出し、インク吐出口15に連通するインク流路16を形成する(工程iv)。
【0063】
次に、図5eに示すように、ポリケトン樹脂を溶解した有機溶剤に紫外線を照射して、この溶剤中のポリケトン樹脂を分解し、分解物であるモノマーを蒸発除去することにより、有機溶剤の溶解性を向上させ、再生する。そして、図5fに示すように、再生した有機溶剤を再び工程ivに用いる。
【0064】
以上より、本発明で再生した有機溶剤を用いて、良好なインクジェット記録ヘッドを効率的に連続して作製することができる。
【実施例】
【0065】
次に、実施例及び比較例をあげて、本発明を具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。
【0066】
尚、乳酸メチルの290nmの吸光度は0.084、沸点は144℃である。乳酸エチルの290nmの吸光度は0.088、沸点は155℃である。メチルエチルケトンの290nmの吸光度は4を超えている。
【0067】
[PMIPK薄膜ウエハ]
シクロヘキサノン中に溶解させたPMIPK(ポリメチルイソプロペニルケトン)をスピンコート法によりシリコンウエハ上に薄く塗布した。乾燥炉において80℃で1時間保持し乾燥させ、PMIPK薄膜ウエハを作製した。
【0068】
(実施例1)
このウエハを乳酸メチル10Lに100枚浸漬させPMIPKを含む乳酸メチルを作製し、図1に示す装置を用いて有機溶剤の再生を行った。具体的には、この液をユニコントロールズ製ステンレスタンクに移した後、ポンプを用いて1L/minの流量で三共電気製流水殺菌装置に導入し、出力20Wの三共電気製UV−Bランプにより紫外線を照射した。なお、ステンレスタンクには加温用のジャケットを取り付け、液温を40℃に加熱および調温し、ステンレスタンクは大気と連通させておいた。流水殺菌装置を通過した液を再びステンレスタンクに導入し、繰り返し紫外線照射と加熱処理(循環処理)を行った。処理時間は、後述する評価方法において、水と混合した際に白濁が生じないようになるまで処理を行なった時間とした。用いた流水殺菌装置における紫外線通過方向の有機溶剤2の厚みは2cmであった。なお、PMIPKのモノマーの沸点は約98℃である。
【0069】
(実施例2)
PMIPKを溶解させる有機溶剤を乳酸メチルから乳酸エチルに変更したこと以外は実施例1と同様にした。
【0070】
(実施例3)
ステンレスタンク中の液温、即ち、有機溶剤2の加熱温度を120℃にしたこと以外は実施例2と同様にした。
【0071】
(実施例4)
紫外線通過方向の有機溶剤2の厚みが5mmである流水殺菌装置(エムテクニック社製)を用いたこと以外は実施例3と同様にした。
【0072】
(比較例1)
大気と連通をなくし、ステンレスタンクを密閉したこと以外は実施例1と同様にした。
【0073】
(比較例2)
有機溶剤への加温を行なわず、室温(25℃)のまま処理したこと以外は実施例1と同様にした。
【0074】
(比較例3)
PMIPKを溶解させる有機溶剤をメチルエチルケトン(MEK)に変更したこと以外は実施例1と同様にした。
【0075】
[評価]
・再生に要する時間(処理時間)
有機溶剤の再生に必要な時間を評価するために、再生処理を行なっている液を一定時間毎にサンプリングし、PMIPKが十分に低分子化されているかを評価した。乳酸メチルや乳酸エチル、MEK等の有機溶剤中のPMIPKは水と混合すると沈殿となって析出し、有機溶剤を白濁させるが、PMIPKの低分子化が進むと水と均一に混合しほぼ透明のままである。この度合いまで処理を行なえば水リンス時にも析出しないことになる。よって、水と混合しても白濁を生じない程度の処理を行なえば有機溶剤として再び、現像液や剥離液、水リンス液として使用することが可能となる。そのため、再生時間として、水と混合した際の白濁度合いの吸光度が一定値以下となる時間を採用した。具体的には、再生中の有機溶剤を純水により5倍希釈した後、白濁度合いを株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度経U−3300(商品名)を用いて測定した。光路長1cm、550nmでの吸光度が0.02以下となった時点で再生完了とし、紫外線照射開始から要した時間を比較した。
【0076】
・吸光度
各例において上記方法で算出した処理時間後(再生後)のステンレスタンク内の有機溶剤について、光路長1cm、測定波長290nmにおける吸光度を測定した。
上記の評価方法で得られた結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
表中の実施例1〜4と比較例1〜3とを比べると、以下のことがわかる。即ち、PMIPKのモノマーの沸点より高い沸点を有しかつ290nmの吸光度が4より小さい有機溶剤を用いて、密閉しない状況で有機溶剤を加熱することで、上記モノマーが蒸発除去され、再生時間の短縮に効果があることがわかる。
【0079】
実施例1と実施例2とを比べることで、有機溶剤とPMIPKのモノマーとの沸点差を大きくすることでより効率的に有機溶剤の再生ができ、再生に要する時間をより短くできることがわかる。
【0080】
また、実施例2と実施例3とを比べることで、再生時の温調をPMIPKのモノマーの沸点(約98℃)以上、有機溶剤自体の沸点以下にすることで、より効率的に有機溶剤の再生ができ、再生に要する時間をより短くできることがわかる。
【0081】
さらに、実施例3と4とをそれぞれ比べることで、紫外線が通過する方向の有機溶剤2の厚み(紫外線照射部7の光路長)を5mm以下とすることでより効率的に有機溶剤の再生ができ、再生に要する時間をより短くできることがわかる。
【符号の説明】
【0082】
1:槽
2:ポリケトン樹脂を含む有機溶剤
3:ポンプ
4:二重管の外側の管
5:二重管の内側の管
6:光源
7:紫外線照射部
8:加温用ヒーター
9:邪魔板
10:反応部位
11:基板
12:インク吐出圧力素子
13:ポリケトン樹脂により形成されたインク流路パターン
14:被覆樹脂層
15:インク吐出口
16:インク流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリケトン樹脂を含む有機溶剤に対して、波長が260nm以上320nm以下の紫外線を照射して該樹脂を分解する照射分解工程を含む、ポリケトン樹脂に対する有機溶剤の溶解力を向上させる有機溶剤の再生方法であって、
該有機溶剤は、該ポリケトン樹脂を含まない状態で、該樹脂を構成するモノマーの沸点よりも高い沸点を有しかつ波長290nmにおける吸光度が4より小さく、
該照射分解工程より得られる有機溶剤を加熱し、該樹脂の該紫外線による分解物である該モノマーを蒸発させて除去する加熱除去工程を含むことを特徴とする有機溶剤の再生方法。
【請求項2】
前記有機溶剤のポリケトン樹脂を含まない状態での沸点が、前記モノマーの沸点よりも20℃以上高いことを特徴とする請求項1に記載の有機溶剤の再生方法。
【請求項3】
前記有機溶剤のポリケトン樹脂を含まない状態での沸点が、前記モノマーの沸点よりも50℃以上高いことを特徴とする請求項1または2に記載の有機溶剤の再生方法。
【請求項4】
前記ポリケトン樹脂が、ポリメチルイソプロペニルケトン(PMIPK)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機溶剤の再生方法。
【請求項5】
前記加熱除去工程の加熱温度が、前記ポリケトン樹脂を構成するモノマーの沸点以上、前記有機溶剤のポリケトン樹脂を含まない状態での沸点未満の温度であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機溶剤の再生方法。
【請求項6】
流水型殺菌装置を用いて前記照射分解工程を行い、その際、前記樹脂を含む有機溶剤を撹拌しながら前記紫外線を照射することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機溶剤の再生方法。
【請求項7】
流水型殺菌装置を用いて前記照射分解工程を行い、その際、前記紫外線が通過する方向の前記樹脂を含む有機溶剤の厚みが5mm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機溶剤の再生方法。
【請求項8】
(i)インクを吐出するエネルギーを発生するインク吐出エネルギー発生素子が形成された基板上に、有機溶剤に溶解可能な樹脂からなるインク流路パターンを形成する工程と、
(ii)該インク流路パターン上に、インク流路壁となる被覆樹脂層を形成する工程と、
(iii)該被覆樹脂層に、インク吐出口を形成する工程と、
(iv)該有機溶剤を用いて該インク流路パターンを溶出し、該インク吐出口に連通するインク流路を形成する工程と
を含むインクジェット記録ヘッドの製造方法であって、
該溶解可能な樹脂として、ポリケトン樹脂を使用し、
工程ivに用いる有機溶剤は、該ポリケトン樹脂を含まない状態で、該ポリケトン樹脂を構成するモノマーの沸点よりも高い沸点を有しかつ波長290nmにおける吸光度が4より小さく、
工程ivで該インク流路パターンを溶出させた有機溶剤を、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機溶剤の再生方法で再生させ、再び工程ivの有機溶剤として用いることを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−242548(P2012−242548A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111528(P2011−111528)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】