説明

有機溶剤中のインライン微量水分測定装置および測定方法

【課題】 比較的簡便な構成で、有機溶剤中の微量の水分を効率よくかつ高い測定精度で連続的に測定することが可能な有機溶剤中のインライン微量水分測定装置および測定方法を提供すること。
【解決手段】 有機溶剤が導入され、有機溶剤の沸点以上の所定温度まで加温処理が可能で所定の容量を有する定量充填槽10と、定量充填槽10に有機溶剤が導入される溶剤導入部1と、加熱処理された有機溶剤が供出される溶剤供出部2と、定量充填槽10の有機溶剤を消費設備30に移送する溶剤移送部と、有機溶剤が溶剤導入部1から消費設備30に移送される移送流路Lと、加熱処理された有機溶剤を所定量移送するように制御する移送量制御部と、溶剤供出部2から移送される有機溶剤を測定する分析部20と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤中のインライン微量水分測定装置および測定方法に関し、例えば、半導体や太陽電池等の生産装置や研究設備等において使用される洗浄液等の有機溶剤や使用後の有機溶剤、あるいは有機合成反応等の原料となる有機溶剤中のインライン微量水分測定装置および測定方法に関するものである。
【0002】
なお、本願にいう「有機溶剤」とは、広く工業的に用いられる溶剤、例えばオクタン等の有機溶剤、フロン系や塩素系溶剤等を含む。特に、本願は、例えばn−オクタン等の無極性で水の溶解度の低い有機溶剤、あるいは例えばテトラヒドロフラン(THF)等の極性を有するが混和した水分との分離が比較的容易な非プロトン性を有する有機溶剤、つまり液相中では水分の分離が困難であるが、気相中では水分との分離が比較的容易な「無極性の有機溶剤あるいは極性非プロトン性の有機溶剤」を対象とする場合に、有効である。
【背景技術】
【0003】
半導体や太陽電池等を生産する製造装置や新たな素材を開発する研究設備、あるいは各種の有機物質の原料等として、有機溶剤が多く使用されている。こうした有機溶剤は、少量ではあるが水分を含むことが多く、こうした製造・研究あるいは製品の特性に大きな影響を与えることがあることから、所定の水分除去処理を行い、水分量が確認された後に使用されている。このとき、水分除去処理された有機溶剤中の水分濃度を正確に把握することは、非常に重要であり、例えば、一般的にカールフィッシャー滴定法が知られている。
【0004】
具体的には、メタノールにメチレンブルーを添加し、カールフィッシャー試薬によって無水化した黄緑色のメタノール溶剤をセプタム付きの容器に入れておき、注射器で採取した絶縁油(有機溶剤)を該容器内に注入する。約1分間振とうし、該絶縁油中の水分を該メタノール溶剤中に抽出した後、静置して2層に分離させる。このとき、該絶縁油中に水分が存在していれば、該溶剤(上層)は青色に変化する。そしてカールフィッシャー試薬を注射器によって添加し、目視の判断によって黄褐色になったところを終点とする方法が挙げられる。また、こうした従来法に対して、油中水分量を簡単にかつ高い精度で測定することのできる方法として、指示薬を含有しカールフィッシャー試薬によって無水化したアルコール溶剤と、測定対象である油とを混合し、該油中の水分を該アルコール溶剤中に抽出した後、該溶剤の吸光度を測定する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかし、分子構造中にSi−Hを有するシラン化合物や亜燐酸エステルなどのALD(Atomic Layer Deposition)用原料又はCVD(Chmical Vapor Deposition)用原料に用いられる有機溶剤は、カールフィッシャー試薬と反応してしまうため、カールフィッシャー法を用いることができないものが多く、カールフィッシャー試薬を用いない測定方法が検討されている。具体的には、こうした気化プロセス用薄膜原料中の水分含有量の定量分析方法として、赤外分光法を用いて水のスペクトル吸収を検知することにより、液状物中の水分を直接測定する方法がある。水分含有量既知の試料について近赤外分光法によるスペクトル吸収測定を行なって予め検量線を作成し、該検量線を用いて、分析対象である気化プロセス用薄膜原料のスペクトル吸収測定結果から、水分含有量を算出する。検量線の作成や測定結果のデータ処理等も、常法に従って行なう方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−88836号公報
【特許文献2】特開2007−9254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のような有機溶剤中の水分測定方法あるいは測定装置では、以下のような種々の課題が生じることがあった。
(i)カールフィッシャー滴定法では、密閉容器を開放し、シリンジなどで一定量を採取し、オフラインで分析計へ導入しなければならない。その為、試料採取中に環境からの水分混入が避けられず、実際に測定できる水分濃度の検出下限値は10ppm程度であり、微量な水分濃度を測定することは困難である。また、毒性、臭気性の高い有機溶剤に至っては、試料採取中、サンプルが測定環境下へ漏洩する恐れがあり、非常に危険である。これらの問題点を改善する為に、乾燥した不活性ガス雰囲気のグローブボックス内でカールフィッシャー滴定を行うことが知られているが、1ppmの水分濃度を測定する為には、少なくともグローブボックス内の水分濃度を1ppm未満に管理する必要があり、その為のグローブボックス製作と、パージガスなどによる水分管理に相当の費用と作業時間がかかる。また、特許文献2に記載されるように、カールフィッシャー法では滴定に使用する試薬と反応するような有機溶剤は測定不可能であるが、こうした制限のない有機溶剤中の水分測定方法が不可欠である。
【0008】
(ii)また、上記のような生産設備等においては、特に有機溶剤が連続的に使用されることからインラインでの微量水分測定装置および測定方法の要請が強い。このとき、特許文献2に記載されるような従前の分析装置は、採取した有機溶剤を測定装置の試料セルにセットし、所定範囲の波長域(特許文献2の実施例1では、近赤外線スペクトル吸収を11000〜2500cm−1の範囲)で測定するもので、そのままインラインに適用することはできない。また、インライン用に適用するためには、こうした分析装置において、試料の連続供給が可能で、その周囲温度や設置条件などの基本的な機能を確保するのみならず、装置の操作性や分析精度の維持管理を図るために、有機溶剤について圧力・温度・流量条件を正確な制御を行う必要がある。
【0009】
本発明の目的は、生産設備等のインラインにおいて、比較的簡便な構成で、有機溶剤中の微量の水分を効率よくかつ高い測定精度で連続的に測定することが可能であると同時に、特に微量水分という取扱いの難しい試料に対して操作性のよい有機溶剤中のインライン微量水分測定装置および測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す有機溶剤中のインライン微量水分測定装置および測定方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
本発明は、有機溶剤中のインライン微量水分測定装置であって、予め脱水処理されたインラインの有機溶剤を対象とし、該有機溶剤が導入され、該有機溶剤の沸点以上の所定温度まで加温処理が可能で所定の容量を有する定量充填槽と、該定量充填槽に前記有機溶剤が導入される溶剤導入部と、前記加熱処理された有機溶剤が供出される溶剤供出部と、前記定量充填槽の有機溶剤を消費設備に移送する溶剤移送部と、有機溶剤が前記溶剤導入部から前記消費設備に移送される移送流路と、該移送流路に設けられ、前記加熱処理された有機溶剤を所定量移送するように制御する移送量制御部と、前記移送流路に設けられ、前記溶剤供出部から移送される有機溶剤をフーリエ変換赤外分光光度法またはキャビティリングダウン分光法を用いて測定する分析部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
インラインの有機溶剤中の水分濃度の測定においては、インライン用測定装置に適した堅牢かつ比較的簡便な構成で、操作性がよく有機溶剤中の微量の水分を効率よく連続的に測定することが可能であると同時に、特に微量水分という取扱いの難しい試料に対して、常に水分の外部からの混入や流路内部からの湧き出しあるいは流路内壁への吸着の影響を考慮しつつ、有機溶剤移送量に対する定量性を確実に管理し、水分濃度に対する高い測定精度を確保する必要がある。本発明は、前者の要求に対して、分析部として、光学系の安定性が高く、外乱影響の補正・補償が容易なフーリエ変換赤外分光光度法(以下「FTIR」という)またはキャビティリングダウン分光法(以下「CRDS」という)を用いるとともに、後者の要求に対して、有機溶剤の加熱気化による圧力上昇、特に一定容量の定量充填槽に一旦充填し、その定量充填槽を一定温度で加熱によって、一定量の有機溶剤を移送するという推進力を確保したものです。こうした構成によって、分析部に導入され測定される有機溶剤の定量性(圧力・温度を補正した絶対量)つまり移送される有機成分中の水分の絶対量を精度よく測定することが可能となった。これによって、生産設備等のインラインにおいて、比較的簡便な構成で、有機溶剤中の微量の水分を効率よくかつ高い測定精度で連続的に測定することが可能であると同時に、特に微量水分という取扱いの難しい試料に対して操作性のよい有機溶剤中のインライン微量水分測定装置を提供することが可能となった。また、インラインで測定可能なため、試料採取および分析中に環境へ漏洩する可能性がなく、毒性、臭気性の高い有機溶剤にも対応可能である。加えて、カールフィッシャー法では試薬と反応する有機溶剤中の水分測定ができないが、この方法では有機溶剤の種類による不適合はない。
【0013】
本発明は、上記有機溶剤中のインライン微量水分測定装置であって、前記移送量制御部が、移送流路に設けられた有機溶剤の質量流量を制御する手段あるいは該定量充填槽の重量から有機溶剤の移送重量を制御する手段を有し、有機溶剤の積算移送量が、前記定量充填槽の内容積相当あるいはそれ以下の所定容量に制御されることを特徴とする。
上記のように、定量充填槽に充填された定容量の定温加熱による有機溶剤の定量移送を、本発明の特徴の1つとする。こうした有機溶剤の定量移送の精度をさらに高める方法として、移送量制御部に、流量計(例えば積算流量計や質量流量計等)および制御弁を設け、あるいは定量充填槽の重量を測定し充填状態から重量変化を算出する方法を用い、有機溶剤の移送重量を制御することが好ましい。このとき、制御指標として定量充填槽の内容積相当あるいはそれ以下の所定容量を設定し、こうした指標を基準に制御されることによって、有機溶剤の積算移送量を適正制御することができる。具体的な値は後述するが、所定温度で気化する有機溶剤を定量充填槽内に、その温度で所定の蒸気圧を有するに十分な量を充填した場合、定量充填槽をその温度に加熱し気化した有機溶剤を真空ポンプを用いて全量移送することによって、定量充填槽の内容積相当の気体換算の有機溶剤が移送される。このとき一定流量で移送される有機溶剤中の水分濃度を連続的に測定することによって、瞬時の水分量を得ることができるとともに、一定時間間隔の積算値あるいは有機溶剤中の水分全量を得ることができる。
【0014】
本発明は、上記有機溶剤中のインライン微量水分測定装置であって、前記定量充填槽内の有機溶媒を、所定の液面位置、所定の温度条件、所定の圧力条件となるように制御する制御部を有することを特徴とする。
本測定装置においては、定量充填槽等の部材内および流通流路内にある有機溶剤全容量の把握が重要となる。本発明は、本測定装置に導入される有機溶剤全容量を、その初段に設けられた定量充填槽内の有機溶剤の状態を基に把握するもので、こうした簡便な構成によって、有機溶剤中の微量の水分を効率よくかつ高い測定精度で連続的に測定することが可能となった。
【0015】
本発明は、上記有機溶剤中のインライン微量水分測定装置であって、前記定量充填槽に不活性ガス導入部を設け、有機溶剤が導入される前に、該定量充填槽から前記消費設備までの移送流路の不活性ガスパージを行い、前記分析部に導入された該不活性ガス中の水分濃度が予め設定された所定値以下の場合に、有機溶剤を前記定量充填槽に供給を開始するパージ制御部を設けるとともに、前記移送量制御部によって定量充填槽内の有機溶剤を圧送して前記消費設備までの移送量を制御することを特徴とする。
こうした構成によって、有機溶剤中の水分濃度の測定精度に大きな影響を与える誤差要因となる可能性のある、測定系において残留または湧き出しにより生じる水分を予め除去することができる。と同時に、こうしたパージガスは、通常生産設備等のインラインにおいても使用されることが多く、インラインへの混入が支障となることが少ない。また、有機溶剤の移送においても、有機溶剤自身の移送能力が小さい場合(特に、気相における吸着性が強いあるいは粘性が高い等の場合)の移送を補助するキャリアガスとして使用することによって、有機溶剤中の微量の水分を効率よくかつ高い測定精度で連続的に測定することが可能となった。
【0016】
本発明は、上記有機溶剤中のインライン微量水分測定装置を構成する要素が、インラインの有機溶剤の主流路から分岐されたバイパス流路に設けられるとともに、前記分析部から排出された有機溶剤が、前記主流路に還流または別途の消費設備に移送されることを特徴とする。
既述のように、インライン微量水分測定装置は、その測定精度を維持するために、試料となる有機溶剤の流量、圧力や温度などを厳格に管理制御することが求められる場合がある。本発明は、半導体や太陽電池等の生産装置等に用いられる洗浄液等の有機溶剤に対して要求される条件とインライン微量水分測定装置として要求される条件が異なる場合、あるいは相互に影響を受合うことが適切でない場合に対応すべく、インライン微量水分測定装置用の流路を配設することによって、適正な有機溶剤(水分を含む)の測定条件を確保し、高い測定精度を維持するものである。
【0017】
また、本発明は、有機溶剤中のインライン微量水分測定方法であって、いずれかに記載の有機溶剤中のインライン微量水分測定装置を用い、
以下のプロセスからなる1次処理プロセスと、
(1)予め定量充填槽から消費設備までの移送流路を不活性ガスによってパージする。
(2)パージされた不活性ガスが分析部に導入され、該不活性ガス中の水分濃度を測定し、予め設定された所定値と比較する。
以下のプロセスからなる2次処理プロセスと、
(3)該水分濃度が、前記所定値以下の場合、前記定量充填槽に有機溶剤が導入され、予め設定された所定の液面位置を維持するように、その導入量が制御される。
(4)該定量充填槽が有機溶剤の沸点以上の所定温度まで加熱され、予め設定された圧力条件となるように制御される。
(5)加熱状態で有機溶剤が、前記定量充填槽から供出される。供出される有機溶剤の量は、前記定量充填槽の圧力が予め設定された所定圧力となるまで、または該定量充填槽の重量減少量が予め設定された所定重量となるまで、制御される。
以下のプロセスからなる3次処理プロセスと、
(6)供出された有機溶剤が、前記分析部に導入され、有機溶剤中の水分濃度が測定される。
以下のプロセスからなる4次処理プロセスと、
(7)有機溶剤中の瞬時の水分濃度、水分濃度の平均値または水分濃度の積算値が、予め設定された所定値以下の場合、該有機溶剤を消費設備に供給される。
を有することを特徴とする。
上記のような構成を有するインライン微量水分測定装置を用い、こうしたプロセスによって処理することによって、生産設備等のインラインにおいて、比較的簡便な構成で、有機溶剤中の微量の水分を効率よくかつ高い測定精度で連続的に測定することが可能であると同時に、特に微量水分という取扱いの難しい試料に対して操作性のよい有機溶剤中のインライン微量水分測定方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る有機溶媒中のインライン微量水分測定装置の基本構成例を示す概略図
【図2】本発明に係る水分測定装置に備えられた定量充填槽の構成例を示す概略図
【図3】本発明に係る水分測定装置に備えられた定量充填槽の他の構成例を示す概略図
【図4】本発明に係る有機溶媒中のインライン微量水分測定装置の他の構成例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、有機溶剤中のインライン微量水分測定装置(以下「本装置」という)であって、予め脱水処理されたインラインの有機溶剤が導入され、有機溶剤の沸点以上の所定温度まで加温処理が可能で所定の容量を有する定量充填槽と、定量充填槽に有機溶剤が導入される溶剤導入部と、加熱処理された有機溶剤が供出される溶剤供出部と、定量充填槽の有機溶剤を消費設備に移送する溶剤移送部と、溶剤供出部からの有機溶剤が消費設備に移送される移送流路と、移送流路に設けられ、加熱処理された有機溶剤を所定量移送するように制御する移送量制御部と、移送流路に設けられ、溶剤供出部から移送される有機溶剤をフーリエ変換赤外分光光度法またはキャビティリングダウン分光法を用いて測定する分析部と、を備えることを特徴とする。
【0020】
ここでいう「有機溶剤」は、各種プロセスガスを含め特に限定されず、広く工業的に用いられる溶剤、例えばオクタン等の有機溶剤、フロン系や塩素系の有機溶剤等を含む。一般に常温(20〜30℃)常圧(約0.1MPa)で液体であるが、ここでは、広く加圧条件下あるいは低温条件下において液化された溶剤をも含む。具体的には、半導体や太陽電池等の製造装置用の洗浄液として使用された後の有機溶剤、あるいはこれらの研究用設備において使用された有機溶剤や有機合成反応等の原料となる有機溶剤などを挙げることができる。飽和炭化水素(例えばn−ヘキサンやn−オクタン等)や環状飽和炭化水素(例えばシクロヘキサン等)、あるいはケトン(例えばアセトン等)やエステル(例えば酢酸エチル等)や芳香族化合物(例えばベンゼンやトルエン等)や環状エーテル化合物(例えばTHF等)や複素環式化合物(例えばピリジン等)を挙げることができる。本装置は、後者のように従前困難であった低濃度の水分を含む有機溶剤を測定対象とする場合にも適用可能であり、後述するn−ヘキサンやn−オクタンでの検証のように、残存水分量が極微量な(約10ppm以下)有機溶剤を測定する場合に有用である。
【0021】
<本装置の基本構成例>
図1は、本装置Aの基本構成例(第1構成例)を示す概略図であり、処理される有機溶剤が導入・貯留される定量充填槽10と、定量充填槽10で気化された有機溶剤中の微量水分が測定される分析部20が設けられている。定量充填槽10には、有機溶剤が導入される溶剤導入部1と加熱処理され気化された有機溶剤(以下「処理ガス」という)が供出される溶剤供出部2が接続される。溶剤供出部2から供出された処理ガスは、移送流路Lを介して分析部20に導入された後、消費設備30に供給される。処理ガスの移送は、定量充填槽10における有機溶剤の気化に伴う蒸気圧および分析部20の下流に設けられた真空ポンプ3の吸引圧よって操作され、溶剤移送部は、真空ポンプ3およびその圧力緩衝機能を有するバッファタンクBFによって構成される。溶剤導入部1には、導入される有機溶剤を制御する積算流量計F1および制御弁V1が設けられ、溶剤供出部2には、供出される処理ガスを制御する質量流量計F2および制御弁V2が設けられ、分析部20の下流には、定量充填槽10および分析部20の圧力を制御する圧力調整弁R1が設けられ、これらが移送量制御部を構成する。移送流路Lには、これらに加え、定量充填槽10,分析部20および消費設備30への気体および液体状の有機溶剤の導入や供出あるいはバイパスを制御する開閉弁S1〜S9、およびこれらの圧力を管理する圧力計P1〜P3が設けられる。さらに、ここでは、有機溶剤の供給源として容器4が設けられ、溶剤導入部1を介して有機溶剤が定量充填槽10に供給されるとともに、不活性ガスが、圧力調整弁R2および圧力計P4が設けられた不活性ガス導入部5を介して容器4に導入される構成を示している。なお、これら構成要素の配列や設置の要否については、図1の構成に限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、圧力調整弁R1として背圧調整手段を用い、圧力計P2とともに分析部20と真空ポンプ3の間に設けられているが、これに限定されるものではなく、定量充填槽10の下流側に減圧吸引ポンプおよび2次圧調整手段(図示せず)を設けることによって圧力調整を行う構成等種々の構成を用いることができる。
【0022】
対象となる有機溶媒は、容器4から開閉弁S12,積算流量計F1,制御弁V1および開閉弁S1を介して溶媒導入部1から定量充填槽10に導入され、所定の液面高さとなるまで、制御部(図示せず)により制御弁V1が作動されて新たな有機溶媒が補充される。容器4内部からの移送に際しては、不活性ガス導入部5から不活性ガスが導入され、容器4内の有機溶剤液面を押圧することによって、所望の移送量を供出することができる。こうしたパージガスは、通常生産設備等のインラインにおいても使用されることが多く、インラインへの混入が支障となることが少ない。定量充填槽10に導入された有機溶剤は、液面高さがほぼ一定の状態で加熱され気化された後、制御弁V2を介して溶媒供出部2から供出される。気化された有機溶剤は、水分とともに処理ガスとして質量流量計F2,開閉弁S4を介して分析部20に導入される。分析部20で有機溶媒中の微量水分が測定された処理ガスは、開閉弁S6,圧力調整弁R1および開閉弁S7を介してバッファタンクBFで緩衝された後、開閉弁S9を介して真空ポンプ3によって吸引され、さらに消費設備30に供出される。定量充填槽10に充填された有機溶剤は、気化された状態で分析部20によって効率よく測定することができる。このとき、移送流路Lのうち処理ガスが移送される流路あるいはこれに配設された構成要素(具体的には、図1の破線部が相当する)は、加熱可能な構成であることが好ましい。気化された有機溶剤の液化あるいは水分の流路内壁への吸着を防止することができ、特に不活性ガスによるパージ処理時において、高いパージ効果を確保することができる。また、インラインで測定可能なため、試料採取および分析中に環境へ漏洩する可能性がなく、毒性、臭気性の高い有機溶剤にも対応可能である。加えて、カールフィッシャー法では試薬と反応する有機溶剤中の水分測定ができないが、この方法では有機溶剤の種類による不適合はない。
【0023】
また、定量充填槽10に充填された有機溶剤中に溶解あるいは混和された水分は、気化された有機溶剤に同伴され、処理ガスの一部として分析部20に導入され、その成分濃度が測定される。このとき、水分濃度が所定値(例えば、10ppm)を超える場合には、真空ポンプ3を停止し、開閉弁S9を閉とすることによって、水分濃度が高い有機溶剤の消費設備30への供出を停止することができる。また、容器4内の有機溶剤を消費設備30に連続的に供給する場合、初期段階の定量測定において有機溶剤中の水分濃度が低いことが確認された後は、定量充填槽10,分析部20およびバッファタンクBFをパスして消費設備30に連続的に供給することができる。具体的には、定量充填槽10について、開閉弁S1,S3を閉/開閉弁S2を開とし、分析部20について、開閉弁S4,S6を閉/開閉弁S5を開とし、バッファタンクBFについて、開閉弁S7,S9を閉/開閉弁S8を開とすることによって、最短かつシンプルな移送流路Lを形成することができ、水分の混入や湧き出しの危険性の低い操作性のよい有機溶剤の供給が可能となる。
【0024】
また、移送流路Lをパージする不活性ガスとしては、例えば窒素やアルゴンのように水分等の不純物が少なく、入手が容易なガスが好ましい。不活性ガスは、予め設定した所定の供給流量となるように、圧力調整弁R2によって制御され、容器4を介して、あるいは直接、溶剤導入部1から定量充填槽10に導入される。導入された不活性ガスは、順次、分析部20等有機溶剤の移送と同様の流路を経て、真空ポンプ3を介して消費設備30まで給送されることによって、移送流路L全体をパージすることができる。このとき、移送流路Lを加熱することによって、流路内壁に吸着している不純物を効果的にパージすることができる。
【0025】
〔定量充填槽の構成〕
定量充填槽10には、図2に例示するように、有機溶媒を所定の温度条件に制御するための加熱手段10aおよび予め設定された所定の液面位置でほぼ一定となるように液面高さを検出する液面計10bが設けられる。加熱手段10aは、温度センサあるいは制御部とともに(図示せず)、ジャケットヒータやシーズヒータ等が定量充填槽10の内部あるいは外周部に配設される。液面計10bは、例えば超音波式やフロート式等のセンサが用いられ、定量充填槽10の内部あるいは外周部に配設される。
【0026】
定量充填槽10の制御温度は、水分の蒸散および有機溶媒の気化を確保できる温度が好ましい。具体的には、69℃以下で気化するn−ヘキサンを、内容積100Lの定量充填槽内に、69℃で0.1MPaの蒸気圧を有するに十分な量を充填した場合、定量充填槽を69℃に加熱し気化したn−ヘキサンを真空ポンプを用いて全量移送することによって、気体換算100Lのn−ヘキサンが移送される。いくつかの有機溶剤について、下記〔表1〕のような沸点を例示することができる。具体的な加熱温度は、〔表1〕の温度よりも高く、10〜30℃高い温度を上限とすることが好ましい。
【0027】
【表1】

【0028】
ここで、図3に例示するように、定量充填槽10に不活性ガス導入部6を設け、有機溶剤が定量充填槽10に導入される前に、定量充填槽10から消費設備30までの移送流路Lを不活性ガスによってパージすることが好ましい。と同時に、このときの不活性ガス中の水分濃度を分析部20によって測定し、予め設定された所定値以下の場合に、有機溶剤の定量充填槽10への供給を開始することが好ましい。こうした制御機能は、パージ制御部(図示せず)によって行われ、有機溶剤中の水分濃度の測定精度に大きな影響を与える誤差要因となる可能性のある、測定系において残留または湧き出しにより生じる水分を予め除去することができる。また、こうした不活性ガスは、パージ機能と同時に、定量充填槽内に残留した有機溶剤を圧送して消費設備30までの移送量を制御する機能を有する。特に、有機溶剤自身の移送能力が小さい場合(例えば、気相における吸着性が強いあるいは粘性が高い等の場合)、開閉弁S13を開とし、不活性ガスを質量流量計F3によって定量性を確保しつつ、キャリアガスとして使用することによって、有機溶剤中の微量の水分を効率よくかつ高い測定精度で連続的に測定することが可能となった。また、移送流路は、上記〔表1〕の温度よりも高く、10〜30℃高い温度を上限とすることが好ましい。
【0029】
〔分析部の構成〕
分析部20は、供出される有機溶媒中の水分濃度の制御・管理を行い、消費設備30に対して適正な品質を確保するものであり、具体的には、フーリエ変換赤外分光光度法(FTIR)またはキャビティリングダウン分光法(CRDS)を用いた検出器(図示せず)が、制御部(図示せず)とともに配設される。ここで、FTIRは、光学系としてマイケルソン干渉計が用いられ、光学系を構成する移動鏡が動いて生じた光路差により生じたる光の干渉、光の強度を検出し、測定対象の定性や定量を行うことができる。具体的には、検出出力から形成した時間あるいは周波数を指標とする干渉パターン(インターフェログラム)を高速フーリエ変換することによって、各周波数成分を横軸としたスペクトルに変換でき、非常に高速の連続測定が可能であることから汎用性が高い。特に、光学系への測定対象を導入する試料セル(図示せず)の配置についての自由度が高く、また、本装置のように低濃度測定用の長光路セルを用いる構成あるいは試料セルを所定温度で加温する構成も容易であり、インライン用測定装置として適している。また、CRDSは、レーザ光を両端に反射鏡を配設した光学キャビティに照射し、測定対象(試料)が導入された該キャビティからの減衰光の光量変化を検出し、特定波長の吸収量の変化から測定対象の定性や定量を行うことができる。反射回数を多くして有効光路長を長くすることから、本装置のように低濃度用測定装置に適しているとともに、光の減衰時間を測定しているため、レーザ強度の変動影響を受けにくく高い測定精度を確保することができる。また、操作が簡単な点においても、インライン用測定装置として適している。さらに、いずれも光学系の安定性が高く、外乱影響の補正・補償が容易であるという優れた機能を有し、インライン用測定装置に適した堅牢かつ比較的簡便な構成で、操作性がよく有機溶剤中の微量の水分を効率よく連続的に測定することが可能である。
【0030】
分析部20には、処理ガスが凝縮しないように所定温度(有機溶媒の沸点以上の温度)に維持するための加熱手段20aが設けられる。加熱手段20aは、温度センサあるいは制御部とともに(図示せず)、ヒータや加熱蒸気管等が分析部20の内部あるいは外周部に配設される。加熱温度は、有機溶媒の凝縮を防止しつつ分析部20に対する温度影響を抑制する温度が好ましい。具体的には、上記〔表1〕の温度よりも高く、10〜30℃高い温度を上限とすることが好ましい。
【0031】
〔本装置の他の構成例〕
本装置においては、図4に例示するように、本装置Aを、インラインの有機溶剤の主流路Mから分岐されたバイパス流路Lbに設けられるとともに、分析部20から排出された有機溶剤が、主流路Mに還流または別途の消費設備31に移送可能な構成とすることが可能である。半導体や太陽電池等の生産装置等に用いられる洗浄液等の有機溶剤に対して要求される条件とインライン微量水分測定装置として要求される条件が異なる場合、あるいは相互に影響を受合うことが適切でない場合に対応すべく、本装置A用のバイパス流路Lbを配設することによって、主流路Mの状態に関係なく(有機溶剤が消費設備30に供給されているか否かによらずに)、有機溶剤(水分を含む)の適正な測定条件を確保し、高い測定精度を維持するものである。
【0032】
通常の主流路Mの操作においては、容器4から供出された有機溶剤が、積算流量計F4,制御弁V3,質量流量計F7および真空ポンプ7を介して消費設備30に供給される。ここで、供給される有機溶剤中の水分濃度に異常が発生し、バイパス流路Lbに導入された有機溶剤の一部を測定した分析部20の測定値が所定値を超えた場合には、主流路Mの操作において、直ちに真空ポンプ7を停止し、制御弁V3を閉とすることによって、消費設備30への悪影響を回避することができる。
【0033】
<本装置における有機溶媒の処理方法〕
上記のような構成を有する本装置においては、以下の1次〜4次の処理プロセスに沿って、有機溶媒中の水分測定が行われる。各プロセスについて、図1に示す構成に基づき制御部(図示せず)によって制御される場合を、例として説明する。ここで、〔1〕1次処理プロセスは、予備的処理操作であり、〔2〕2次処理プロセスは、定量充填槽10において処理操作が行われ、〔3〕3次処理プロセスおよび〔4〕4次処理プロセスは、分析部20において処理操作が行われる。
【0034】
〔1〕1次処理プロセス
1次処理プロセスは、以下のプロセスからなる。
(1)予め定量充填槽10から消費設備30までの移送流路Lを不活性ガスによってパージする。具体的には、開閉弁S10,12を閉/開閉弁S11を開とし、圧力計P4の出力を指標として圧力調整弁R2によって供給圧力が制御された不活性ガスが、不活性ガス導入部5から本装置Aに導入される。本装置Aにおいては、定量充填槽10について、開閉弁S1,S3を開/開閉弁S2を閉とし、分析部20について、開閉弁S4,S6を開/開閉弁S5を閉とし、バッファタンクBFについて、開閉弁S7,S9を開/開閉弁S8を閉とすることによって、これらの構成要素および積算流量計F1や質量流量計F2等の各構成要素の流路内部をパージしクリーンな状態にすることができる。
(2)パージされた不活性ガスは分析部20に導入され、不活性ガス中の水分濃度を測定し、予め設定された所定値と比較する。所定値よりも高い場合には、パージを継続し、所定値以下の状態が所定時間継続したときパージを完了する。
【0035】
〔2〕2次処理プロセス
2次処理プロセスは、以下のプロセスからなる。
(3)分析部20によって測定された水分濃度が、所定値以下の場合、定量充填槽10に有機溶剤が導入され、予め設定された所定の液面位置を維持するように、その導入量が制御される。具体的には、上記パージが完了した後、開閉弁S10,11を閉とし、移送流路Lおよび各構成要素内部の不活性ガスを除去する。除去の完了は圧力計P1の減圧度を指標として判断することができ、その後、開閉弁S10,12を開/開閉弁S11を閉とし、圧力計P4の出力を指標として圧力調整弁R2によって供給圧力が制御された不活性ガスを、不活性ガス導入部5から容器4に導入する。容器4内の有機溶剤が、液面を押圧されることによって、開閉弁S12を介して本装置Aに導入され、溶剤導入部1を介して有機溶剤が定量充填槽10に供給される。液面計10bによって検出された液面が所定の高さとなると、制御弁V1が閉とされ、液相部と気相部が形成される。充填量は、設定された加熱温度において定量充填槽10の内容積で予め設定された圧力条件が指標とされ、例えば、既述のように、69℃以下で気化するn−ヘキサンを、内容積100Lの定量充填槽内に、69℃で0.1MPaの蒸気圧を有するに十分な量が充填量となる。
(4)定量充填槽10が有機溶剤の沸点以上の所定温度まで加熱され、予め設定された圧力条件となるように制御される。具体的には、加熱手段10aによって、導入される有機溶剤の種類とその水分濃度および製品の有機溶剤中の水分濃度に対応した温度に制御される。上記〔表1〕の温度よりも高く、10〜30℃高い温度を上限とすることが好ましい。このとき、開閉弁S3を開とし、制御弁V2を閉とすることによって、定量充填槽10の内部圧力を所定の値にすることができ、圧力計P1によって内部圧力をモニターすることができる。
(5)加熱状態で有機溶剤が、定量充填槽10から供出される。具体的には、定量充填槽10の内部圧力を所定の値になったとき、制御弁V2によって所定の流量に制御され、処理ガスの分析部20への移送を開始する。定量充填槽10における温度・圧力条件によって処理ガスの移送推進力を形成する。移送流量は、質量流量計F2によってモニターするとともに、制御機能を有する質量流量計の場合には、これによって微量調整が行われる。供出される有機溶剤の量は、定量充填槽10の圧力が予め設定された所定圧力となるまで、または該定量充填槽の重量減少量が予め設定された所定重量となるまで、制御される。これによって、定量の気相の有機溶剤が処理ガスとして供出される。このとき、供出に伴う有機溶剤の減少量を連続的あるいはバッチ的に補充することによって、インラインでのモニター的機能を確保することができる。また、定量充填槽10から分析部20までの流路は、上記〔表1〕の温度よりも高く、10〜30℃高い温度を上限とする温度に制御されることが好ましい。
【0036】
〔3〕3次処理プロセス
3次処理プロセスは、以下のプロセスからなる。
(6)供出された有機溶剤(処理ガス)が、分析部20に導入され、有機溶剤中の水分濃度が測定される。具体的には、開閉弁S4,S6を開とすることによって、制御弁V2によって所定の流量に制御された処理ガスが、分析部20に導入される。このとき、分析部20内の試料セル(図示せず)の圧力は、圧力調整弁R1によって制御され、その温度は、上記〔表1〕の温度よりも高く、10〜30℃高い温度を上限とする温度で制御されることが好ましい。一定の測定条件を維持することによって、有機溶剤中の水分濃度を高い測定精度で測定することができる。
【0037】
〔4〕4次処理プロセス
4次処理プロセスは、以下のプロセスからなる。
(7)有機溶剤中の瞬時の水分濃度、水分濃度の平均値または水分濃度の積算値が、予め設定された所定値以下の場合、該有機溶剤を消費設備30に供給される。具体的には、処理ガスが、定量充填槽10から連続的に移送される場合には、瞬時の水分濃度を連続的に所定値と比較し、バッチ的に移送される場合には、水分濃度の平均値または水分濃度の積算値を、平均値あるいは積算値に相当する所定値と比較し、消費設備30の要求される仕様に合致した場合、開閉弁S7,S9を開/開閉弁S8を閉として、真空ポンプ3を駆動して、所望の水分濃度に管理された有機溶剤を、本装置Aから消費設備30に供給することができる。
【0038】
〔本装置における測定精度の検証〕
本装置における測定精度の検証として、定量充填槽10における有機溶剤移送処理機能および分析部20における測定精度を以下の通り検証した。
【0039】
(a)定量充填槽における有機溶媒の移送条件を分析部における測定条件
図1に示す本装置を用い、下記〔表2〕に示す条件下で、脱水処理前後の有機溶剤(約40ppm水分を含むn−ヘキサン,約50ppm水分を含むn−オクタン)を、定量充填槽10に導入し、分析部20において有機溶剤中の水分濃度を測定した。
【0040】
【表2】

【0041】
(b−2)実験結果
下記〔表3〕にn−ヘキサンにおける検証結果、下記〔表4〕にn−オクタンにおける検証結果を示す。従来の有機溶剤中の水分濃度測定技術であるカールフィッシャー滴定法と比較して、検出下限値を著しく改善することができた。また、カールフィッシャー法では試薬と反応する有機溶剤中の水分測定ができないが、この方法では有機溶剤の種類による不適合はない。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【符号の説明】
【0044】
1 溶剤導入部
2 溶剤供出部
3,7 真空ポンプ
4 容器
5 不活性ガス導入部
10 定量充填槽
10a,20a 加熱手段
10b 液面計
20 分析部
30,31 消費設備
BF バッファタンク
F1,F4 積算流量計
F2,F3,F5 質量流量計
L 移送流路
Lb バイパス流路
M 主流路
P1〜P4 圧力計
R1 圧力調整弁
S1〜S13 開閉弁
V1〜V3 制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め脱水処理されたインラインの有機溶剤を対象とし、該有機溶剤が導入され、該有機溶剤の沸点以上の所定温度まで加温処理が可能で所定の容量を有する定量充填槽と、該定量充填槽に前記有機溶剤が導入される溶剤導入部と、前記加熱処理された有機溶剤が供出される溶剤供出部と、前記定量充填槽の有機溶剤を消費設備に移送する溶剤移送部と、有機溶剤が前記溶剤導入部から前記消費設備に移送される移送流路と、該移送流路に設けられ、前記加熱処理された有機溶剤を所定量移送するように制御する移送量制御部と、前記移送流路に設けられ、前記溶剤供出部から移送される有機溶剤をフーリエ変換赤外分光光度法またはキャビティリングダウン分光法を用いて測定する分析部と、を備えることを特徴とする有機溶剤中のインライン微量水分測定装置。
【請求項2】
前記移送量制御部が、移送流路に設けられた有機溶剤の質量流量を制御する手段あるいは該定量充填槽の重量から有機溶剤の移送重量を制御する手段を有し、有機溶剤の積算移送量が、前記定量充填槽の内容積相当あるいはそれ以下の所定容量に制御されることを特徴とする請求項1記載の有機溶剤中のインライン微量水分測定装置。
【請求項3】
前記定量充填槽内の有機溶媒を、所定の液面位置、所定の温度条件、所定の圧力条件となるように制御する制御部を有することを特徴とする請求項1または2記載の有機溶剤中のインライン微量水分測定装置。
【請求項4】
前記定量充填槽に不活性ガス導入部を設け、有機溶剤が導入される前に、該定量充填槽から前記消費設備までの移送流路の不活性ガスパージを行い、前記分析部に導入された該不活性ガス中の水分濃度が予め設定された所定値以下の場合に、有機溶剤を前記定量充填槽に供給を開始するパージ制御部を設けるとともに、前記移送量制御部によって定量充填槽内の有機溶剤を圧送して前記消費設備までの移送量を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機溶剤中のインライン微量水分測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のインライン微量水分測定装置を構成する要素が、インラインの有機溶剤の主流路から分岐されたバイパス流路に設けられるとともに、前記分析部から排出された有機溶剤が、前記主流路に還流または別途の消費設備に移送されることを特徴とする有機溶剤中のインライン微量水分測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の有機溶剤中のインライン微量水分測定装置を用い、
以下のプロセスからなる1次処理プロセスと、
(1)予め定量充填槽から消費設備までの移送流路を不活性ガスによってパージする。
(2)パージされた不活性ガスが分析部に導入され、該不活性ガス中の水分濃度を測定し、予め設定された所定値と比較する。
以下のプロセスからなる2次処理プロセスと、
(3)該水分濃度が、前記所定値以下の場合、前記定量充填槽に有機溶剤が導入され、予め設定された所定の液面位置を維持するように、その導入量が制御される。
(4)該定量充填槽が有機溶剤の沸点以上の所定温度まで加熱され、予め設定された圧力条件となるように制御される。
(5)加熱状態で有機溶剤が、前記定量充填槽から供出される。供出される有機溶剤の量は、前記定量充填槽の圧力が予め設定された所定圧力となるまで、または該定量充填槽の重量減少量が予め設定された所定重量となるまで、制御される。
以下のプロセスからなる3次処理プロセスと、
(6)供出された有機溶剤が、前記分析部に導入され、有機溶剤中の水分濃度が測定される。
以下のプロセスからなる4次処理プロセスと、
(7)有機溶剤中の瞬時の水分濃度、水分濃度の平均値または水分濃度の積算値が、予め設定された所定値以下の場合、該有機溶剤を消費設備に供給される。
を有することを特徴とする有機溶剤中のインライン微量水分測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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