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有機無機ハイブリッド粒子の水性エマルジョン及びその製造方法
説明

有機無機ハイブリッド粒子の水性エマルジョン及びその製造方法

【課題】硬化速度が早く、高い耐水性、耐溶剤性及び硬度を有する乾燥塗膜を形成することができ、貯蔵安定性にも優れる、有機無機ハイブリッド粒子を含む水性コーティング用組成物を提供する。
【解決手段】有機ポリマー粒子の表面に活性ケイ酸或いはそれの有機塩基との塩が付着又は結合している有機無機ハイブリッド粒子を、水性媒体中に分散した水性のコーティング用組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機無機ハイブリッド粒子の水性エマルジョン及びその製造方法に関し、特に、活性ケイ酸を有機ポリマー粒子に結合又は付着させた有機無機ハイブリッド粒子を分散した水性のコーティング用組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物と無機化合物のハイブリッド材料は、その両者の特性を併せ持つ材料として、非常に広い分野で利用されている。ケイ酸重合体や水ガラス(ケイ酸ソーダ)は、このようなハイブリッド材料及び無機材料で使用される無機物質の1つであり、高純度ガラス、光ファーバー、コーティング剤、接着剤、インクジェット記録シートのインク受容層、土壌処理剤、金属表面処理剤、窯業系シーラー、光触媒バインダー、難燃剤などの製造で利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1において、スチレン(メタ)アクリル酸エステル(メタ)アクリルアミド共重合体樹脂エマルジョンにケイ酸ソーダを配合した接着剤が提案されている。この接着剤は、金属の心棒に厚紙を接着しながら巻きつけて紙菅を製造する際に用いる紙菅接着剤であり、接着が早く、乾燥皮膜の弾性率が高く、紙への含浸性に優れた接着剤を提供しようとするものである。
【0004】
特許文献2及び3には、水ガラスを酸(例えば塩酸)で処理して脱ナトリウム化する工程を含むプロセスにより活性ケイ酸を取得し、得られた活性ケイ酸を重縮合し、更に得られた重合体をリン酸アルキルエステル化してブロッキングする工程を含む、ブロッキングケイ酸重合体を調製する方法が開示されている。得られたブロッキングケイ酸重合体は、バインダーとして用いられ、常温硬化型無機コーティング剤が製造される。このブロッキングケイ酸重合体は、水ガラスから得られる活性ケイ酸のOHをアルコキシル基に変換した後、部分的に加水分解して重縮合させ、更に得られた重合体のOHをリン酸アルキルエステル化してブロッキングして得られるため、線状構造部分を多く含み、重合体同士の3次元架橋が抑制されている構造を有する。このような構造は、この無機重合体自体に有機化合物に類似の特性をもたらし、有機化合物なしで造膜性及び施工性が確保される無機コーティング剤を提供できるとされている。
【0005】
特許文献4には、アニオン性の染料を水系溶媒に溶解しているインクジェット用インクを用いる印字に適用される記録シートのインク受容層として利用される、有機無機ハイブリッドシリカが開示されている。この有機無機ハイブリッドシリカは、シリカとカチオン性ポリマーからなり、シリカとポリマーが両者の存在領域を明確に分けることができない態様で分子レベルにて一体化された構造を有する。また、この有機無機ハイブリッドシリカは、シリカにカチオン性を付与するために、ハイブリッド材料の表面にカチオン性ポリマーが存在するものである。このシリカは重合により高分子化した化合物であり、この文献の有機無機ハイブリッドシリカでは、基本的に、シリカの含有率の方がポリマーの含有率より多くなる。この有機無機ハイブリッドシリカはまた、1次粒子の凝集により多孔質の2次粒子が形成された結果得られるものであり、3nm〜10μmの細孔径及び0.6〜3.0ml/gの細孔容積を有する。
この特許文献にはまた、このようなハイブリッドシリカを製造する方法として、水ガラスを含む水溶液と、酸を含む水溶液と、カチオン性樹脂を含む水溶液とを水性環境に同時に添加するプロセスが開示されている。
【0006】
特許文献5には、水性コロイダルシリカとノニオン性水性樹脂のエマルジョンとを混合し、この水性の混合物を亜鉛系めっき鋼板のクロメート層上に塗布して被膜を形成する方法が開示されている。この文献に記載する水性コロイダルシリカは、SiO又はその水和物が水素結合により粒径0.01〜0.05μm程度のコロイド粒子(このコロイド粒子のSi数は、11以上と考えられる)を形成して比較的安定して存在しているが、アンモニウムイオンでより安定化されたコロイダルシリカも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−136335
【特許文献2】特開平10−158008
【特許文献3】特開2000−86934
【特許文献4】特開2009−46323
【特許文献5】特開2000−24588
【特許文献6】特開2000−248019
【特許文献7】特開2000−119618
【特許文献8】特開平7−316242
【特許文献9】特開2007−126530
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ポリマーダイジェスト 1988.9 梶原鳴雪著、ラバーダイジェスト社発行
【非特許文献2】エマルジョン入門 林貞男著 (株)高分子刊行会 第2版 1972年6月5日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、硬化速度が早く、高い耐水性、耐溶剤性及び硬度を有する乾燥塗膜を形成することができ、貯蔵安定性にも優れる、有機無機ハイブリッド粒子を含む水性コーティング用組成物を提供することを目的とする。
本発明はまた、このような優れた特性を有する水性コーティング用組成物を簡易に製造可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、有機ポリマーによって構成される粒子の表面に、活性ケイ酸又はその所定の塩を少なくとも一部のO及びOH等の官能基がフリーの状態のままで吸着又は結合させた有機無機ハイブリッド粒子が水性媒体に分散しているエマルジョンを調製したところ、分散液中で、ハイブリッド粒子は相互に凝集することなく安定的に存在し、一方、対象基材に塗布し分散媒が除去されると、官能基、特にフリーのO及びOHを有する活性ケイ酸等が、立ち上がりの早い硬化を可能とし、且つ高い耐水性、耐溶剤性及び硬度を有する乾燥塗膜の形成を可能とすることを見出した。
本発明者はまた、アルカリ金属イオンが残存しない工程で活性ケイ酸を調製し、その後素早く活性ケイ酸を有機ポリマー粒子と接触させることで、ケイ酸重合体の形成が抑制され、高い耐水性、耐溶剤性及び硬度を有する塗膜を形成し得るコーティング用組成物が得られることを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成に至ったものである。
【0011】
即ち、本発明は、活性ケイ酸又はその所定の塩、すなわち、少なくとも一部の官能基が、Oであるケイ酸或いはそのアンモニウム塩等の有機塩基との塩の形態を取る化合物が、有機ポリマー粒子の表面に付着又は結合している有機無機ハイブリッド粒子を、水性媒体中に分散している、水性のコーティング用組成物を提供する。
また、本発明は、ケイ酸の金属塩の水溶液を、イオン交換樹脂で処理し、イオン交換処理後10時間より短い時間で、得られた活性ケイ酸水溶液を有機ポリマー粒子の分散液に加えるか、或いは当該イオン交換処理後、アンモニア若しくはアミン等の有機塩基を添加し、得られたケイ酸塩の水溶液を、有機ポリマー粒子の分散液に加えて、有機ポリマー粒子の表面に活性ケイ酸又はその所定の塩を付着又は結合させる、コーティング用組成物の製造方法を提供する。
【0012】
本発明のコーティング用組成物では、有機ポリマーが粒子の形態で存在する。これ自体は、特に目新しいものではない。しかし、本発明のハイブリッド粒子では、このような粒子状の有機ポリマーに、O及びOH等の官能基がフリーの状態のままで活性ケイ酸又はその所定の塩が付着又は結合されている。このような構造では、O及びOH等の官能基を保持していても、活性ケイ酸等の間で重縮合反応が生じ難く、O及びOH等の官能基を保持しながらも凝集を生じることなく粒子を水性媒体中に安定的に分散することができる。一方、O及びOH等の官能基の存在は、コーティング用組成物を塗布して、分散媒が蒸発した際にはコーティング剤としてのメリットをもたらす。即ち、分散媒の蒸発により粒子が強制的に近接すると、粒子はO及びOH等の官能基の存在により縮合反応等を通じて急速に結合して塗膜を形成するため、立ち上がりの早い硬化を実現する。また、本発明の組成物では、ポリマー粒子に個々の活性ケイ酸等が相互に独立して結合又は付着しており、通常、この活性ケイ酸等は低分子(分子量(Mn)1000以下)である。このため、粒子表面全体で見ると、多数のO及びOH等の官能基が保持されている。また、相互に独立して多数存在する個々の活性ケイ酸等は、その分子量に比例して1又は複数のO及びOH等の官能基を有する。このような特性若しくは構造から、本発明の組成物を被塗膜対象に適用すると、粒子間は強固に結合され、高い耐水性、耐溶剤性及び硬度を有する乾燥塗膜を実現する。
なお、このような点で、本発明の組成物は、コロイダルシリカとは明確に区別されるものである。すなわち、コロイダルシリカは、SiO又はその水和物がOH基を介して水素結合により相互に結合して粒子を形成したものであり、これにより粒子が比較的安定して媒中に分散しているが、逆にこのような安定状態により反応性が低く、硬化速度が遅い。
【0013】
ここで、本明細書中で用いる幾つかの用語について定義を記載する。
本明細書中「ケイ酸」とは、Si及びO、或いはSi、O及びHの元素で表される化合物を意味し、本明細書中「活性ケイ酸」とは、ケイ酸のO及び/又はOHの少なくとも一部がOとなった化合物を意味する。また、本明細書中「ケイ酸塩」とは、ケイ酸又は活性ケイ酸のO及び/又はOHの少なくとも一部がO(Rはカチオンを示す)となっている化合物を意味する。本発明のハイブリッドポリマーを構成するケイ酸塩では、Rは有機のカチオンである。
【0014】
本明細書中「水溶性ポリマー」とは、それ単独で水に混和した際、或いは中和剤の存在下で水に混和した際に、水に可溶なポリマーであり、溶解状態は、例えば、肉眼で透明な液体として観察される。一方、本明細書中「疎水性ポリマー」とは、それ単独で水に混和した際、並びに中和剤の存在下で水に混和した際に、水に不溶なポリマーであり、この不溶状態は、例えば、肉眼で混濁した液体又は沈殿物として観察される。
【0015】
本明細書中「有機ポリマー粒子に結合」とは、活性ケイ酸等が化学的に有機ポリマー粒子に結合している状態をいい、本明細書中「有機ポリマー粒子に付着」とは、活性ケイ酸等が、化学的な結合によらず、有機ポリマー粒子の表面に持続的に存在する状態を意味する。
【0016】
本明細書中「コアシェル構造」とは、有機ポリマー粒子の表面部分と中央部とが異なるポリマーで構成されている構造を意味する。本発明の典型例では、水溶性ポリマーでシェル部が構成され、疎水性ポリマーでコア部が構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の組成物及びその製造方法についてより詳細に説明する。
1.水性コーティング用組成物
本発明のコーティング用組成物は、上述の通り、有機ポリマー粒子の表面に活性ケイ酸又はその所定の塩が付着又は結合している有機無機ハイブリッド粒子を含む、水性エマルジョンである。この有機ポリマー粒子の表面に付着又は結合している活性ケイ酸等は、O及びOH等の所定の官能基を保持しており、この官能基の存在により立ち上がりの早い硬化などの種々の優れた特性を達成する。以下、各成分について詳細に説明する。
【0018】
1−1.活性ケイ酸等
本発明における活性ケイ酸又はその所定の塩は、そのO、OH等の所定の官能基を保持したままポリマー粒子表面に付着又は結合しているものである。本発明の有機無機ハイブリット粒子を構成する活性ケイ酸又は所定のケイ酸塩は、基本的に多数(例えば25以上)のSi−O−の繰り返し単位を含むケイ酸重縮合物を含まない。また、各Si原子がフリーのOH、O又はOを有する活性ケイ酸等が望まれる。従って、本発明における活性ケイ酸等は、通常低分子であり、分子量(Mn)=1000以下のものが好ましく、分子量Mn=100〜400のものがより好ましい。また、Si数が1〜10の活性ケイ酸等が好ましく、Si数が2〜4の活性ケイ酸等がより好ましい。また、Si原子一個当たり、平均2〜3のOH、O又はOを有するものが好ましい。
このような活性ケイ酸としては、一般式[SiO(OH)4-2x]〔式中、xは1又は2の整数であり、yは1〜10の整数である〕で表されるケイ酸のOH及び/又はO(=Oがある場合。以下同様)の少なくとも一部(但し、有機ポリマーにO−を介して結合している場合のO−を除く。以下同様)、好ましくはその半分以上、より好ましくは総てがOとなった化合物を挙げることができる。
【0019】
ケイ酸塩は、活性ケイ酸の縮重反応を抑制して分散安定性や貯蔵安定性を高める効果を奏する。一方、選択する有機塩基によっては対象物に塗布した際の硬化の立ち上がりを遅くすることがある。このため、ケイ酸塩を構成する有機塩基は、揮発性が高く、媒体の揮発と共にケイ酸塩から容易に外れるものが好ましく、具体的には、分子量(Mn)=200以下の有機塩基が好ましく、分子量(Mn)=100以下の有機塩基がより好ましい。このような点から、ケイ酸塩は、例えば、一般式[SiO(R)4−2x〔式中、Rは、独立して、O−、OH、ONR、(式中、Rは、独立してH、或いは炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1のアルキル基であり、Rは総てHであることが特に好ましい)、又はO2n−2NO(式中、nは3から5の整数)で表されるヘテロシクロ化合物であり、少なくとも1つのRはONR又はO2n−2NOであり、Xは1又は2の整数であり、yは1〜10、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜5の整数である〕で表されるケイ酸塩が好ましい。
【0020】
上記式中のNRとしては、例えばNH4+、NH、NH(C、及びNH(Cを挙げることができ、C2n−2NOとしては、例えばC10NOを挙げることができる。
【0021】
本発明におけるケイ酸塩は、ケイ酸又は活性ケイ酸のO及びOHの総てがO(Rはカチオンを示す)となっている化合物であってもよいが、活性ケイ酸の縮重反応の抑制と、立ち上がりの早い硬化とのバランスの点からは、活性ケイ酸塩の官能基の少なくとも一部は、フリーのO又はOHであることが好ましく、少なくとも一部は、フリーのOであることがより好ましい。
このようなフリーのO又はOHを有するケイ酸塩において、フリーのO又はOHと、O−NH4+及びO−N(C等のカチオン性官能基とのモル比は、分散安定性、貯蔵安定性及び塗膜の透明性などの特性の点から、1:0.005〜1:1.2とすることが好ましく、1:0.01〜1:0.05とすることがより好ましい。
【0022】
活性ケイ酸等は、種々の構造をとることが知られており、ケイ素が1つで正四面体型構造をとるケイ酸イオン、2個以上のSiO四面体が鎖状に結合若しくは酸素を介して架橋した二又はそれ以上のケイ素を含むケイ酸イオン、環状構造を有するケイ酸イオン、縮合環構造を有するケイ酸イオン並びにそれらに対応する上記の所定の塩等種々の構造のものを挙げることができる。
【0023】
本発明における活性ケイ酸又はその塩は、貯蔵安定性に優れる点から、鎖状構造のものより、環状構造のものが好ましく、中でも、ケイ素数2〜8の環状構造を有するのが好ましく、ケイ素数2〜6の環状構造を有するのがより好ましく、ケイ素数2〜4の環状構造を有するのが特に好ましい。より具体的には、本発明における活性ケイ酸又はその塩は、下記式
【化1】


[式中、nは、1〜9、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3の整数であり、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、O−、O、OH、ONR(式中、Rは、独立してH、又は炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1のアルキル基である)、又はO2n−2NO(式中、nは3から5の整数)で表されるヘテロシクロ環であるか、或いはR及びR、又はR及びRは、それぞれ独立して、1つのOである]で表される化合物が好ましい。
【0024】
上記式中のNRとしては、例えばNH4+、NH、NH(C、及びNH(Cを挙げることができ、C2n−2NOとしては、例えばC10NO、を挙げることができる。中でもNH4+が好ましい。
【0025】
より好ましいケイ酸等としては、例えば、下記式
【化2】


[式中、RからR14は、それぞれ独立して、O−、O、OH、ONR(式中、Rは、独立してH、又は炭素数1〜5のアルキル基である)、又はO2n−2NO(式中、nは3から5の整数)で表されるヘテロシクロ環であるか、或いはR及びR、R及びR10、R11及びR12、又はR13及びR14の各対は、それぞれ独立して、1つのOである]
の構造を有する化合物を挙げることができ、上記6員環の活性ケイ酸を含むものが特に好ましい。
なお、本発明におけるポリマー粒子に結合するケイ酸等は、通常複数の異なる構造を有する。
【0026】
1−2.有機ポリマー粒子
本発明で用いられる有機ポリマー粒子は、上記活性ケイ酸等を保持し、水性媒体中に分散するものである。粒子を構成するポリマーについては特に制限はなく、それ自体の特性で、又は乳化剤、中和剤等を添加して水性の媒体中で粒子が安定的に分散し得るものであればよい。
【0027】
例えば、比較的多数の親水性の官能基を有するカチオン性樹脂、アニオン性樹脂又はノニオン性樹脂で構成される粒子は、それ自体で、又は中和剤、乳化剤等の添加でエマルジョンを形成し得る。また、比較的親水性の官能基が少なく疎水性の大きな樹脂で構成される粒子の場合でも、乳化剤の使用でエマルジョンを形成し得る。
【0028】
本発明において有機ポリマー粒子を構成し得るカチオン性樹脂としては、アミノ基(例えば、3級アミノ基、4級アミノ基)等のカチオン性官能基を有するアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0029】
カチオン性官能基を有する(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、アミノ基(例えば、3級アミノ基、4級アミノ基)を有する(メタ)アクリレート類と、カチオン性官能基及びアニオン性官能基のいずれも有しない重合性化合物を重合したものを挙げることができる。
また、カチオン性官能基を有するウレタン樹脂としては、例えば、アミノ基(例えば、3級アミノ基、4級アミノ基)を有するジオールと、カチオン性官能基及びアニオン性官能基のいずれも有しないジイソシアナートを重合したものを挙げることができる。
また、カチオン性官能基を有する(メタ)アクリルウレタン樹脂としては、上記カチオン性官能基を有するアクリル樹脂を合成するための重合性化合物と上記カチオン性官能基を有するウレタン樹脂を合成するための重合性化合物とを重合したものを挙げることができる。
【0030】
本発明において有機ポリマー粒子を構成し得るアニオン性樹脂としては、カルボキシル基又はスルホン酸基等のアニオン性官能基を含有する、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0031】
アニオン性官能基を有する(メタ)アクリル樹脂としては、例えばカルボキシル基を有する重合性モノマー及び/又はスルホン酸基を有する(メタ)アクリレート類と、カチオン性官能基及びアニオン性官能基のいずれも有しない重合性化合物とを重合したものを挙げることができる。
アニオン性官能基を有するウレタン樹脂としては、カルボキシル基を又はスルホン酸基等のアニオン性官能基を有するジオールと、カチオン性官能基及びアニオン性官能基のいずれも有しないジイソシアナートを重合したものを挙げることができる。
アニオン性官能基を有するアクリルウレタン樹脂としては、上記アニオン性官能基を有するアクリル樹脂を合成するための重合性化合物と上記アニオン性官能基を有するウレタン樹脂を合成するための重合性化合物とを重合したものを挙げることができる。
【0032】
本発明において有機ポリマー粒子を構成し得るノニオン性樹脂としては、水酸基、アミド基、又はケトン基等のノニオン性官能基を含有する、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及び(メタ)アクリルウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0033】
ノニオン性官能基を有する(メタ)アクリル樹脂としては、例えば水酸基、アミド基又はケトン基等のノニオン性官能基を有する重合性化合物(メタ)アクリレート類と、カチオン性官能基及びアニオン性官能基のいずれも有しない重合性化合物とを重合したものを挙げることができる。
ノニオン性官能基を有するウレタン樹脂としては、ジオールと、カチオン性官能基及びアニオン性官能基のいずれも有しないジイソシアナートとを重合し分子末端にジオールの水酸基を残したものを挙げることができる。
ノニオン性官能基を有するアクリルウレタン樹脂としては、上記ノニオン性官能基を有するアクリル樹脂を合成するための重合性化合物と上記ノニオン性官能基を有するウレタン樹脂を合成するための重合性化合物とを重合したものを挙げることができる。
【0034】
本発明においては、金属、プラスチック及びガラスなどの多様な基材に対する密着性に優れる点からはカチオン性ポリマーからなる粒子が好ましく、中でも、透明性が高い塗膜を形成し得る点で、カチオン性官能基を有する(メタ)アクリルポリマーが好ましく、アミノ基(例えば、3級アミノ基、4級アミノ基)を有する(メタ)アクリルポリマーが特に好ましい。
また、活性ケイ酸又はその塩が有する官能基との関係で粒子を構成するポリマーの種類を選択することも貯蔵安定性や分散安定性の点から好ましい。例えば、有機カチオンを有する活性ケイ酸塩と組合せる場合には、その表面部分又は全体がアニオン性ポリマーからなる粒子が好ましく、O及び/又はOHを有する活性ケイ酸と組合せる場合には、その表面部分又は全体がカチオン性ポリマーで構成されたポリマー粒子が好ましい。
【0035】
粒子を構成するポリマーは、通常、疎水性ポリマーであり、例えば、100,000より大きく、好ましくは300,000〜3,000,000、より好ましくは500,000〜1,500,000の重量平均分子量を有し、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、水酸基、アミド基、及びケトン基等の親水性官能基がポリマー中20質量%以下の疎水性ポリマーで粒子を構成することができる。もっとも、このような疎水性ポリマーで粒子を構成する場合でも親水性基を含有させることで分散安定性を高めることができるので、親水性官能基をポリマー中1〜5質量%含む疎水性ポリマーで粒子を構成することも好ましい。
【0036】
本発明におけるポリマー粒子は、いわゆる多層構造等の種々の構造を有することができ、粒子を構成するポリマーの種類、分子量、及びその他の特性を粒子の部位毎に(例えば、表面部分と内部)異なるものとすることもできる。
例えば、シェル部分を水溶性ポリマーで構成し、コア部分を疎水性ポリマーで構成したコアシェル構造の粒子は、好ましい例である。このような構造の粒子は、粒子形状を維持しながらも、その表面が水溶性のポリマーで構成されるため、エマルジョンの分散安定性を高めることができる。また、このような構造を有する粒子は、単位表面積当たりより多くの活性ケイ酸等を持続的に保持、すなわち付着させることができるため、貯蔵安定性が高く、塗膜形成の立ち上がりが早いコーティング用組成物が得られる点で有利である。また、このような粒子では、粒子表面に反応性に富む活性ケイ酸等が存在すると共に、コア部分を高分子量のポリマーで形成し得るため、耐水性、耐溶剤性及び硬度が高い塗膜を形成し得る。
加えて、このような構造の粒子では、粒子表面部分を多数のカチオン性官能基又はアニオン性官能基を有するポリマーで構成することができ、そのような粒子の表面は、プラス又はマイナスの電荷を帯びているため、粒子同士が電気的に反発しあい粒子間の接触が生じにくい。このため粒子に付着した活性ケイ酸等の縮合反応をより効果的に防ぐことができると考えられる。
【0037】
コアシェル構造の粒子において、シェル部分を構成する水溶性ポリマーとしては、重量平均分子量が1,000〜100,000、好ましくは5,000から60,000、より好ましくは20,000から50,000であり、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基等のカチオン性又はアニオン性の官能基をポリマー中5〜60質量%、好ましくはポリマー中5〜50質量%、より好ましくはポリマー中5〜30質量%有するカチオン性又はアニオン性ポリマーを挙げることができる。金属、プラスチック、ガラスなどの多様な基材に対する密着性が高い塗膜を形成できる点では、カチオン性ポリマーでシェル部分を構成することが好ましい。一方、シェル部分をアニオン性水性ポリマーで構成すると、耐候性に優れ無黄変の塗膜を形成できるという利点がある。
【0038】
シェル部分を構成するカチオン性ポリマーの例としては、前述したカチオン性官能基を有するアクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びアクリルウレタン樹脂であって、上記の重量平均分子量及び官能基の含有率を有する樹脂を挙げることができ、シェル部分を構成するアニオン性ポリマーの例としては、前述したアニオン性官能基を有するアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂であって、上記の重量平均分子量及び官能基の含有率を有する樹脂を挙げることができる。
【0039】
コア部分を構成するポリマーとしては、例えば、重量平均分子量が100,000より大きく、好ましくは500,000〜2,000,000、より好ましくは800,000〜1,200,000であり、親水性官能基がポリマー中20質量%以下、好ましくは1〜5質量%の疎水性ポリマーを挙げることができる。
また、シェル部分を構成するポリマーがカチオン性ポリマーである場合には、金属腐食防止の点から、コア部分を構成するポリマーはアニオン性ポリマーであることが好ましい。また、シェル部分を構成するポリマーがアニオン性ポリマーである場合であって、組成物中に硬化剤(例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、グリシジルエステル型等のエポキシ樹脂が挙げられる)を含む場合には、硬化剤との反応性が良く硬化性が向上する点から、コア部分を構成するポリマーがカチオン性ポリマーであることが好ましい。
【0040】
コア部分を構成するカチオン性ポリマーの例としては、前述したカチオン性官能基を有するアクリル樹脂、ウレタン樹脂、又はアクリルウレタン樹脂であって、上記の重量平均分子量及び官能基含有率を有する樹脂を挙げることができ、コア部分を構成するアニオン性ポリマーの具体例としては、前述したアニオン性官能基を有するアクリル樹脂、ウレタン樹脂又はアクリルウレタン樹脂であって、上記の重量平均分子量及び官能基含有率を有する樹脂を挙げることができる。コア部分を構成するノニオン性ポリマーの具体例としては、前述したノニオン性官能基を有するアクリル樹脂、ウレタン樹脂、又はアクリルウレタン樹脂であって、上記の重量平均分子量及び官能基含有率を有する樹脂を挙げることができる。
【0041】
また、コア部分とシェル部分との一体性を高めるために、両部分をグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有ビニル系モノマーを介して結合した構造とすることも好ましい。
【0042】
このようなシェル部分を水溶性ポリマーで構成する粒子は、通常乳化剤を用いずに安定的に分散することができるが、分散液に乳化剤を含有させてもよく、この場合には、粒子の表面を構成するポリマーに応じて乳化剤を選択することが好ましい。また、カチオン性又はアニオン性の官能基を有するポリマーでは、中和剤を媒体中に添加して、エマルジョンの分散安定性を高めることができる。
【0043】
シェル部分を構成するポリマーとコア部分を構成するポリマーとの質量比は、通常、2:8〜8:2(シェル部分:コア部分)である。もっとも、両者の好適な質量比は、それぞれを構成するポリマーの特性及び有機ポリマー粒子の粒径によって変動する。例えば、シェル部分を水溶性ポリマーで構成し、コア部分を疎水性ポリマーで構成する場合、平均粒径0.10μm以上の大きな粒子(通常、平均粒径0.10から0.50μm程度である)では、2:8〜4:6(シェル部分:コア部分)の質量比とすることが好ましく、2.5:7.5〜3.5:6.5(シェル部分:コア部分)の質量比とすることが特に好ましい。また、中程度の大きさの粒子(平均粒径0.03から0.10μm程度)では、4:6〜6:4(シェル部分:コア部分)とすることが好ましく、4.5:5.5〜5.5:4.5(シェル部分:コア部分)とすることが特に好ましい。また、平均粒径0.03μm以下の小さな粒子(通常、平均粒径0.01から0.03μm程度)では、6:4〜8:2(シェル部分:コア部分)とすることが好ましく、6.5:3.5〜7.5:2.5(シェル部分:コア部分)とすることが特に好ましい。
【0044】
粒径が小さい場合、有機ポリマー粒子全体で考えると総表面積は大きくなる。このため、形成される塗膜の基材密着性、耐水性及び耐溶剤性といった性能が向上するという利点がある。また、粒径が小さい場合、その粒子が媒体と接する面積は小さくなる。このため、シェル部分を水溶性ポリマーで構成し、コア部分を疎水性ポリマーで構成する有機ポリマー粒子においては、粒径が小さい程、シェル部分の質量比を大きくすることができる。水溶性ポリマーで構成されるシェル部分の比率が大きくなると、多くのケイ酸化合物を持続的に保持し易くなるため、貯蔵安定性や分散安定性に優れ、硬化の立ち上がり速度が早く、且つ基材密着性、耐水性及び耐溶剤性が高い塗膜を形成することが可能となる。
但し、粒径が0.01μm未満であると、粒子に付着又は結合している活性ケイ酸同士の結合が起こり易くなり、安定性が低くなり易い。一方、粒径が1.0μm以上になると、その粒子が媒体と接する面積は大きくなるため、粒子形状を維持するために、コア部分の質量比をより大きくすることが必要となり、コアシェル構造による利点が低減する。
【0045】
疎水性ポリマーのみで粒子を構成する場合には、平均粒径は、通常0.01〜1.0μmであり、0.05〜0.5μmが好ましく、0.1〜0.3μmがより好ましい。
【0046】
本明細書において、有機ポリマー粒子の表面に活性ケイ酸等が「結合」とは、化学的に活性ケイ酸等が有機ポリマー粒子に結合している状態を意味する。典型例は共有結合であるが、イオン結合、水素結合等の他の結合様式であってもよい。有機ポリマー粒子の表面に活性ケイ酸等が結合している典型例は、有機ポリマー粒子の表面に存在するシラノール基、アミノ基、OH又はエポキシ基等の官能基と、活性ケイ酸等のシラノール基等との縮合反応を通じて活性ケイ酸等が有機ポリマー粒子の表面に共有結合しているハイブリッド粒子であり、このようにして結合されたハイブリッド粒子では、その結合強度に由来して硬度、耐溶剤性が高いという利点がある。
【0047】
本明細書中、有機ポリマー粒子の表面に活性ケイ酸等が「付着」とは、活性ケイ酸等が、化学的な結合によらず、有機ポリマー粒子の表面に持続的に存在する状態を意味する。
本発明者の検討したところでは、親水性若しくは水溶性の高いポリマーほど、水性媒体中で軟性(通常綿状である)であるためか、活性ケイ酸等を保持し易い。このため、少なくともその表面部分を水溶性ポリマーで構成することで、ポリマー粒子に多数の活性ケイ酸等が付着したハイブリッド粒子を形成することができる。
【0048】
このような活性ケイ酸等の吸着性が高いポリマーの例は、水溶性のカチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーである。具体的には、重量平均分子量が1,000から100,000、より好ましくは5,000から60,000、更に好ましくは20,000から50,000であり、カチオン性官能基又はアニオン性官能基をポリマー中5〜60質量%、好ましくはポリマー中5〜50質量%、好ましくはポリマー中5〜30質量%有するカチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーを挙げることができる。中でも、上記重量平均分子量及び官能基含有率を有するカチオン性又はアニオン性のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂は、吸着性に優れる点で特に好ましい。
【0049】
本発明で用いられる有機ポリマー粒子は、上記結合形態なしに、その表面に活性ケイ酸等が付着しているものでもよいが、上記の結合形態に加え、その表面に活性ケイ酸等が付着しているものが好ましい。
活性ケイ酸等が有機ポリマー粒子に結合しているハイブリッド粒子では、得られる塗膜の強度、耐溶剤性が高く、これに加え、その表面に活性ケイ酸等が付着しているハイブリッド粒子では、更に多くの活性ケイ酸等が塗膜形成に関与できるため、エマルジョンを塗布した際の硬化速度がより速く、より高い耐水性、耐溶剤性及び硬度を有する塗膜を得ることができる。
【0050】
本発明の有機無機ハイブリッド粒子は、基本的に、ベースとなる有機ポリマー粒子に活性ケイ酸等が付着又は結合した構造を有するものであり、活性ケイ酸等と有機ポリマーの質量比は、8:2〜0.5:9.5とすることができるが、7.5:2.5〜1:9であることが好ましく、7:3〜2:8であることが特に好ましい。活性ケイ酸等の質量比が8:2より大きくなると、分散安定性、貯蔵安定性及び基材密着性が低下する傾向にあり、極端に多くなった場合には、塗膜形成自体に支障をきたすことがある。一方、活性ケイ酸等の質量比が0.5:9.5より小さくなると、耐溶剤性、塗膜硬度、硬化速度及び基材密着性などの特性が不十分に成り易い。
【0051】
1−3.分散媒
本発明の組成物は、水性のエマルジョンであり、媒体は、基本的に水であり、好ましくはイオン交換水(通常、電気伝導度は1.0μS/cm以下である)である。但し、その目的に応じて、例えば、アルコール類、グリコールエーテル類、ケトン類、エステル類、芳香族類等を含有する水性媒体としてよい。例えば、アルコール等の存在は、シラノール基の反応を抑制する効果があるため、モノマーの混和性を高める等の目的でポリマー粒子のエマルジョンを調製する際に添加したアルコール等をそのまま除去することなく活性ケイ素等の水溶液と混合し、或いはポリマー粒子のエマルジョンと共に、アルコール等を活性ケイ素等の水溶液と混合して本発明の組成物を調製してもよい。
【0052】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等を挙げることができ、グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等を挙げることができる。
【0053】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、イソアセトホロン等を挙げることができ、エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸イソアミル、酢酸ノルマルプロピル等を挙げることができ、芳香族類としては、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
これらの化合物は、1種単独で又は2種以上組合せて媒体中に含有することができる。中でも、エマルジョン重合時の水との混合性が良いアルコール類及びグリコールエーテル類が好ましく、アルコール類がより好ましい。
【0054】
また、本発明の組成物は、その目的に応じて各種添加物を含有することができ、例えば、中和剤、乳化剤、造膜助剤、消泡剤、硬化剤等を含んでよい。
【0055】
中和剤としては、ポリマー粒子の少なくとも表面部分がアミノ基等のカチオン性官能基を有するカチオン性ポリマーで構成される場合には、有機酸又は無機酸を中和剤として使用し、ポリマー粒子の少なくとも表面部分がカルボキシル基等のアニオン性官能基を有するアニオン性ポリマーで構成される場合には、アンモニアやアミン等のアルカリを中和剤として使用することが好ましい。
【0056】
乳化剤としては、ポリマー粒子の少なくとも表面部分がカチオン性ポリマーである場合には、分散安定性及び貯蔵安定性の点で、脂肪族アミノ塩類系、第4級アンモニウム塩系、アルキルピリジニウム塩系等のカチオン性界面活性剤が好ましく、カチオン性のアクリルポリマーである場合には、特に第4級アンモニウム塩系が好ましい。同様の点から、ポリマー粒子の少なくとも表面部分がアニオン性ポリマーである場合には、脂肪酸塩類系、高級アルコール硫酸エステル塩類系、アルキルアリルスルホン酸塩系等のアニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性アクリルポリマーである場合には、特にアルキルアリルスルホン酸塩系の重合性化合物が好ましい。また、ポリマー粒子がノニオン性ポリマーで構成される場合には、乳化剤として、上記カチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤の何れを用いても良い。
乳化剤の量は、ポリマー粒子を構成するポリマーの種類・特性によって異なるが、通常0.1から10質量%である。
【0057】
造膜助剤(高沸点溶剤)は、ポリマー粒子が高硬度の樹脂(例えば、ガラス転移点温度 50℃以上)で構成されている場合に、その表層を軟化させ塗膜形成時に粒子同士を融着させ、透明な塗膜を得ることを容易にするために添加され、高硬度の塗膜形成を要求されるコーティング用組成物を調製する際に有用である。造膜助剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、及びポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。造膜助剤は、通常、1〜10質量%の範囲で含有させればよい。
消泡剤としては、例えば、疎水性シリカ系、金属咳セッケン系、アマイド系、ポリエーテル系、変性シリコン系等を挙げることができ、これら消泡剤は、通常、0.01〜1.0質量%の範囲で含有される。また、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等を挙げることができ、これら紫外線吸収剤は、通常、0.1〜10質量%の範囲で添加される。
光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系等を挙げることができる。これらの光安定剤は、通常0.1〜10質量%の範囲で添加される。
硬化剤としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、グリシジルエステル型等のエポキシ樹脂が挙げられ、これらの硬化剤は、通常、1〜30質量%の範囲で添加される。
【0058】
本発明のコーティング組成物は、耐水性、耐溶剤性等の点で、実質的に金属イオン、特にアルカリ金属イオンを含まないことが好ましい。具体的には、本発明の組成物において、アルカリ金属イオン等の金属イオンは、ケイ酸化合物中の10質量%以下であることが好ましく、3質量%未満であることがより好ましく、究極的には全く含有しないことが望まれる。
金属イオンが10質量%より大きな場合、コーティング組成物の硬化反応に支障を来たし易くなり、得られる塗膜の耐水性及び塗膜硬度が低下する。金属イオンが3〜10質量%である場合は、得られる塗膜の耐水性及び塗膜硬度を十分なレベルとすることはできるが、硬化速度が遅く所望の特性の塗膜とするために十分な養生時間が必要となる。これに対しアルカリ金属が3質量%未満である場合、硬化速度も速く耐水性及び塗膜硬度が良好となる。
【0059】
以上のような本発明のコーティング組成物を用いて、基材を塗装すると、硬化の立ち上がりが早く、高い耐水性、耐溶剤性及び硬度を有する乾燥塗膜を形成することができる。また、本発明のコーティング組成物は、活性ケイ酸等のO、OH等の官能基がフリーな状態にも拘わらず、比較的長期間の貯蔵に対して安定である。
【0060】
2.本発明の製造方法
次に、これまで説明した本発明の有機無機ハイブリット粒子のエマルジョンを製造する方法について説明する。
【0061】
本発明の製造方法は、ケイ酸のアルカリ金属塩等の金属塩の水溶液を、陽イオン交換樹脂で処理し、イオン交換処理後の活性ケイ酸の水溶液を、任意に有機塩基を添加後、有機ポリマー粒子の分散液に加える工程を含むものである。
【0062】
本発明では、ケイ酸金属塩の水溶液を、陽イオン交換樹脂で処理し、得られた活性ケイ酸等を有機ポリマー粒子との反応に供することから、得られるエマルジョン中に金属イオンの残存がなく、耐水性等の特性に優れる塗膜を形成できる組成物を得ることができる。
【0063】
本発明におけるケイ酸の金属塩とは、上述の通り、ケイ酸の少なくとも一部のOH等が、O(式中Rは、金属カチオンを示す)で表される塩となっている化合物をいい、例えばオルトケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸カリウム、オルトケイ酸ナトリウム(NaSi0)、オルトケイ酸カリウム(KSiO)、オルトケイ酸マグネシウム(MgSiO)、オルトケイ酸ベリリウム(BeSiO)、カンラン石族((Fe,Mg)SiO)、ザクロ石族(MgAlSi12、CaAlSi12)、ジルコン(ZrSiO)、紅柱石、珪線石、ラン晶石、ムル石、トパズ、十字石、サフィリン、ノルベルグ石、コンドロ石、ヒューム石、単斜ヒューム石クサビ石、クロリトイドなどのネソ(オルト)ケイ酸塩類;黄長石群、緑レン石族、ローソン石、パンベリー石などのソロケイ酸塩類;キン青石、電気石、緑柱石などのサイクロケイ酸塩;長石類、准長石、ゼオライト類などのテクトケイ酸塩;イノケイ酸塩;メタケイ酸リチウム(LiSiO)、メタケイ酸ナトリウム(NaSiO)、メタケイ酸カリウム(KSiO)、メタケイ酸マグネシウム(MgSiO)、メタケイ酸ナトリウムカルシウム(NaSiO−CaSiO)、メタケイ酸カルシウム(CaSiO)、メタケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSi)、メタケイ酸バリウム(BaSiO)、メタケイ酸マンガン(MnSiO)、メタケイ酸鉄(FeSiO)、メタケイ酸コバルト(CoSiO)、メタケイ酸鉛(PbSiO)、CaMgSi−MgSi固溶体、CaMgSi−FeSi固溶体などのメタケイ酸塩類;白雲母群、黒雲母群などのフィロケイ酸塩類などが挙げられる。
【0064】
ケイ酸金属塩の水溶液は、通常、多様な構造を有するケイ酸金属塩を含んでおり、例えば、ケイ酸ナトリウムの水溶液は、
【化3】


といった種々の構造を有する化合物を含むことが知られている(非特許文献1)。
【0065】
本発明においては、前述の通り、分散安定性、貯蔵安定性の点からは、環状構造を有する活性ケイ酸等をポリマー粒子に結合等することが好ましいため、ケイ酸金属塩としてもそれに対応する構造のものが好ましい。このようなケイ酸金属塩としては、下記構造
【化4】


[式中、nは、1〜5の整数であり、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、O、OH、又はO11+(式中、R11は、Li、Na又はKである)であるか、或いはR及びR、又はR及びR10の1以上の対は、1つのOであり、R、R、R及びR10の少なくとも1つは、O11+である]
で表される化合物が好ましく、下記式
【化5】


[式中、R15からR22は、それぞれ独立して、O、OH、又はO11+(式中、R11は、Li、Na又はKである)であるか、或いはR15及びR16、R17及びR18、R19及びR20、並びにR21及びR22の各対は、それぞれ独立して1つのOであってもよく、それぞれR15からR20、又はR15からR22の少なくとも1つは、O11+である]で表される化合物がより好ましく、上記6員環の化合物が特に好ましい。
【0066】
好都合なことに、いわゆる水ガラスとして市販されているケイ酸ナトリウムの水溶液は、通常、上記の環状構造のケイ酸化合物を含むので、これを利用するのが便利である。市販のケイ酸ナトリウムの水溶液としては、例えばJIS1号ケイ酸ソーダ、JIS2号ケイ酸ソーダ及びJIS3号ケイ酸ソーダが挙げられ、中でも、ナトリウムの含有量が少なく、脱イオン工程を効率良く行うことができる点では、JIS3号ケイ酸ソーダが好ましい。一方、ケイ素数当りのO、OH等の官能基数を多くするといった観点からは、JIS1号ケイ酸ソーダを用いても良い。
【0067】
市販の水ガラスなどの複数の構造のケイ酸金属塩を含む水溶液に対して、電気透析、逆浸透膜等の処理を行うことで、好ましい構造の化合物の濃度を高めたり、精製したりしてもよい。
【0068】
本発明で使用されるケイ酸のアルカリ金属塩等の金属塩の水溶液は、ケイ酸の金属塩を典型的には水、好ましくはイオン交換水に溶解したものである。但し、ケイ酸化合物の過剰な金属イオンを予め除去しイオン交換時の金属除去効率を高める点から、状況に応じて硫酸、塩酸、ギ酸、酢酸等の酸を添加してもよい。
また、ケイ酸金属塩の水溶液は、イオン交換時の金属イオンの除去効率の点から、2〜15質量%の濃度で調製することが好ましく、4〜8質量%の濃度で溶解液を調製することがより好ましい。
【0069】
本発明においては、一般的な陽イオン交換樹脂を使用することができ、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基等の官能基を有する樹脂を使用することができ、スルホン酸基を有する樹脂が特に好ましい。市販の陽イオン交換樹脂としては、三菱レイヨン社製、強酸性陽イオン交換樹脂ゲル型ダイヤイオンSK104、SK1B、SK110、SK12、ポーラス型ダイヤイオンPK208、PK212、PK216、PK218、PK220、PK228等が挙げられる。
イオン交換処理は、例えば、まず、強酸性陽イオン交換樹脂をイオン交換水に入れ、そこに硫酸水溶液を加えて十分攪拌し、その後イオン交換樹脂を濾過することにより、酸処理を行う。次いで、処理後のイオン交換樹脂をイオン交換水で洗浄し、洗浄後のイオン交換樹脂をケイ酸塩の水溶液にケイ酸塩と同質量加え、ケイ酸塩をイオン交換樹脂と接触させてイオン交換処理を行えばよい。
イオン交換樹脂を取り出す時期は、pHを目安にして判断することが好ましく、具体的には処理溶液がpH2〜5となった時点でイオン交換樹脂を分離することが好ましく、pH2〜4がより好ましい。
このpHの範囲は、ケイ酸塩から金属イオンが殆ど除去されて、O−となったことを示し、この数値範囲でイオン交換樹脂を取り出した処理液を使用すると、溶剤耐性等に優れるコーティング用組成物を得ることができる。
【0070】
イオン交換処理により金属イオンが除去されると、活性ケイ酸の水溶液は、縮合反応により急速にゲル化し、多数のケイ酸が重合したシラン化合物を生じる。このため、低分子で(理想的には全く重合せずに)ケイ素数あたり多くのO−、OH等の官能基を有する活性ケイ酸を保持するハイブリッド粒子を得るためには、イオン交換処理後できるだけ早く、活性ケイ酸の水溶液を、有機ポリマー粒子の分散液に加えることが好ましい。具体的には、イオン交換処理後10時間より短い時間で有機ポリマー粒子の分散液に加えることが好ましく、イオン交換処理後5時間以内に有機ポリマー粒子の分散液に加えることがより好ましく、イオン交換処理後3時間以内に有機ポリマー粒子の分散液に加えることが更に好ましく、イオン交換処理後1時間以内に有機ポリマー粒子の分散液に加えることが特に好ましい。
【0071】
一方、イオン交換処理後、上記期間内、好ましくは直ちに、アミン等の有機塩基を活性ケイ酸化合物の水溶液に添加しても良い。このような有機塩基は、Oと塩を形成して、活性ケイ酸の縮合反応を抑制し、重合を遅らせることができる。また、カチオンを有するため、少なくともその表面部分をアニオン性樹脂で構成される有機ポリマー粒子と組み合わせると、分散安定性や貯蔵安定性を高めることもできる。
但し、このような有機塩基との塩の存在は、硬化の立ち上がりを遅らせたり、耐溶剤性を低下させることがあるため、有機塩基としては、アンモニアなどの揮発性が高く、媒体の揮発と共に容易にケイ酸塩から除かれるものが好ましい。また、同様の点から、有機塩基の添加量を調整して、一部の活性ケイ酸のO又はOHがフリーのままの状態が維持されるようにすることも好ましい。
例えば、活性ケイ酸のO及びOH(OHを含む場合)と、アミノ基との比を当量比で、1:0.005〜1:0.9とすることが好ましく、1:0.01〜1:0.05とすることがより好ましい。
【0072】
使用される有機塩基の典型例はアンモニア及びアミンであり、例えば、アンモニア、及びプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ジメチルエタノールアミンなどの炭素数6以下のアミンが挙げられ、中でも揮発性が高く、溶媒の揮発と共に容易にケイ酸塩から除外される点でアンモニアが特に好ましい。
【0073】
本発明においては、その目的に応じて、更に、O又はOHと反応し、これらの官能基を保護する化合物を、活性ケイ酸水溶液に加えてもよい。そのような化合物としては、例えばリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステルを挙げることができる。
活性ケイ酸又はその塩の水溶液を有機ポリマーの分散液に添加する量は、分散安定性及び貯蔵安定性が高く、耐溶剤性、塗膜硬度、硬化速度及び基材密着性などの特性に優れる塗膜形成が可能な組成物を得る観点から、活性ケイ酸等と有機ポリマーの質量比が、8:2〜0.5:9.5(活性ケイ酸等:有機ポリマー、固形分換算値、以下同様)となる量が好ましく、7.5:2.5〜1:9となる量がより好ましく、7:3〜2:8となる量が特に好ましい。
【0074】
本発明で用いられる有機ポリマー粒子は、水性の媒体中で粒子形態を維持し得るものであり、任意に、その表面に上述の活性ケイ酸化合物を結合させるための官能基(例えばシラノール基)を有するものである。
【0075】
このような有機ポリマー粒子を構成し得るポリマーは、前述の通り、例えば、カチオン性、アニオン性又はノニオン性の官能基を有する疎水性ポリマーであり、好ましくは、カチオン性又はアニオン性の官能基を有する疎水性アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はアクリルウレタン樹脂である。
【0076】
カチオン性樹脂の粒子は、例えば、乳化剤としても作用するカチオン性官能基を有する重合性化合物と、カチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも有しない重合性化合物とを溶剤中で重合開始剤を用いて重合することにより調製することができる。
【0077】
カチオン性官能基を有する(メタ)アクリル樹脂は、例えば、アミノ基(例えば、3級アミノ基、4級アミノ基)を含有する(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸のアルキル若しくはシクロアルキルのエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル及び/又はその他のビニル系モノマーとを重合することにより得ることができる。
アミノ基(例えば、3級アミノ基、4級アミノ基)を含有する(メタ)アクリレートとしては、ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート、ジブチルアミノメチルアクリレート、ジヘキシルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレートが挙げられ、(メタ)アクリル酸のシクロアルキルエステルとしては、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等を挙げることができる。その他のビニル系モノマーとしては、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルを挙げることができる。これらの化合物は単独で使用しても、組み合せて使用してもよい。
【0078】
同様に、カチオン性官能基を有するウレタン樹脂は、例えばジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、t−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノ基を有するジオールと、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−、2.4’−又は2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−又は1,4−キシレンジイソシアネート、1,3−又は1,4−テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアナートとを重合することにより得ることができる。
カチオン性官能基を有する(メタ)アクリルウレタン樹脂は、例えば、上記カチオン性官能基を有するアクリル樹脂を合成するための重合性化合物と上記カチオン性官能基を有するウレタン樹脂を合成するための重合性化合物とを重合することにより得ることができる。
【0079】
カチオン性樹脂の粒子を合成する際、上記のカチオン性官能基を有する重合成化合物と、カチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも有しない重合性化合物の質量比は、得られるポリマーで予定される官能基含有率に応じて適宜調整すればよい。但し、ポリマーの水分散安定性を考慮すると、0.1:99.9〜10.0:90.0とすることが好ましく、1.0:99.0〜5.0:95.0とすることがより好ましい。また、樹脂の分子量(通常100,000より大きくする)は、例えば溶剤及び重合開始剤の量を変えることで調整することができる。また、重合は70〜100℃の温度で行うことが好ましい。重合開始剤及び乳化剤は、既知の物を用いることができ、重合開始剤としては、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩基酸塩、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩基酸、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩基酸、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス[2−(5−メチル−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩基酸、2,2−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ化合物系重合開始剤;或いは過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の酸化剤単独、又はこれらと、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、硫酸銅等の水溶性還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤を用いることができる。乳化剤としては、例えば脂肪族アミノ塩類系、第4級アンモニウム塩系、アルキルピリジニウム塩系等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。また、溶液重合の際に使用される溶剤としては、例えば、水を単独で、或いは水にイソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等のアルコール類を添加したものを用いることができる。
【0080】
アニオン性ポリマーの粒子は、例えば、アニオン性官能基を有する重合成化合物と、任意に、カチオン性の官能基、アニオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも有しない重合性化合物とを、必要に応じて乳化剤を添加し、エマルジョン重合して得ることができる。
【0081】
アニオン性官能基を含有するアクリル樹脂は、例えばアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸等のカルボキシル基を有する重合性モノマー;及び/又はビニルスルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等のスルホン酸基を含有する重合性モノマーと、前述した(メタ)アクリル酸のアルキル若しくはシクロアルキルのエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル及び/又はその他のビニル系モノマーとを重合することにより得られる。
【0082】
アニオン性官能基を含有するウレタン樹脂は、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基を含有するジオールと、前述したジイソシアナートとを重合して得られる。
【0083】
アニオン性官能基を含有するアクリルウレタン樹脂は、例えば、上記アニオン性官能基を有するアクリル樹脂を合成するための重合性化合物と上記アニオン性官能基を有するウレタン樹脂を合成するための重合性化合物とを重合して得られる。
【0084】
アニオン性樹脂の粒子を合成する際、上記のアニオン性官能基を有する重合成化合物と、カチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも有しない重合性化合物の質量比は、得られるポリマーで予定される官能基含有率に応じて適宜調整すればよい。但し、ポリマーの水分散安定性の点で、0.1:99.9〜10.0:90.0とすることが好ましく、1.0:99.0〜5.0:95.0とすることがより好ましい。また、樹脂の分子量(通常100,000より大きくする)は、例えば溶剤及び重合開始剤の量を変えることで調整することができる。また、重合は70〜100℃の温度で行うことが好ましい。重合開始剤及び乳化剤は、既知の物を用いることができ、重合開始剤としては、前述のアゾ化合物系重合開始剤又は上記のレドックス系重合開始剤を用いることができ、乳化剤としては、例えばアルキル硫酸エステル系、ポリオキシエチルアルキルエステル硫酸エステル塩系、アルキルベンゼンスルホン酸塩系、脂肪酸塩系等のアニオン性界面活性剤を用いることができる。また、溶液重合の際に使用される溶剤としては、例えば、水を単独で、或いは水にイソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等のアルコール類を添加したものを用いることができる。
【0085】
ノニオン性樹脂の粒子は、例えば、乳化剤としても作用するノニオン性官能基を有する重合性化合物と、カチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも有しない重合性化合物とを溶剤中で重合開始剤を用いて重合することにより調製することができる。
【0086】
ノニオン性官能基を有する(メタ)アクリル樹脂は、例えば、水酸基、アミド基及びケトン基を含有する(メタ)アクリレート類と、(メタ)アクリル酸のアルキル若しくはシクロアルキルのエステル及び/又はその他のビニル系モノマーとを重合することにより得ることができる。
水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、プロピレングリコールアクリレート、エチレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、テトラエチレングリコールアクリレート、テトラプロピレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、エチレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラエチレングリコールアクリレート、テトラプロピレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシエチル)アクリルアミド等を挙げることができる。アミド基を含有する(メタ)アクリレートとしては、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等を挙げることができる。ケトン基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイアセトンアクリルアマイド、アセトアセトキシエチルメタクリレート等を上げることができる。(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレートが挙げられ、(メタ)アクリル酸のシクロアルキルエステルとしては、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートを挙げることができる。その他のビニル系モノマーとしては、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルを挙げることができる。これらの化合物は単独で使用しても、組み合せて使用してもよい。
【0087】
同様に、ノニオン性官能基を有するウレタン樹脂は、例えばエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルジオール等の水酸基を有するジオールと2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−、2,4’−又は2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−又は1,4−キシレンジイソシアネート、1,3−又は1,4−テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアナートとをジオールが過剰の条件で重合することにより得ることができる。
【0088】
ノニオン性官能基を有する(メタ)アクリルウレタン樹脂は、例えば、上記ノニオン性官能基を有するアクリル樹脂を合成するための重合性化合物と上記ノニオン性官能基を有するウレタン樹脂を合成するための重合性化合物とを重合することにより得ることができる。
【0089】
ノニオン性樹脂の粒子を合成する際、上記のノニオン性官能基を有する重合成化合物と、カチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも有しない重合性化合物の質量比は、得られるポリマーで予定される官能基含有率に応じて適宜調整すればよい。但し、ポリマーの水分散安定性を考慮すると、0.1:99.9〜10.0:90.0とすることが好ましく、1.0:99.0〜5.0:95.0とすることがより好ましい。また、樹脂の分子量(通常100,000より大きくする)は、例えば溶剤及び重合開始剤の量を変えることで調整することができる。また、重合は70〜100℃の温度で行うことが好ましい。重合開始剤及び乳化剤は、既知の物を用いることができ、重合開始剤としては、前述のアゾ化合物系重合開始剤又は前述のレドックス系重合開始剤を用いることができ、乳化剤としては、前述のカチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を用いることができる。また、溶液重合の際に使用される溶剤としては、例えば、水を単独で、或いは水に上記のアルコール類を添加したものを用いることができる。
【0090】
一般的な構造のポリマー粒子に関するその他の事項については、非特許文献2等に記載されているような、当業者に周知の技術的事項に基づき実施することができる。
【0091】
本発明においてコアシェル構造のポリマー粒子を使用する場合には、本出願人又は大成化工株式会社の先行技術文献(例えば、特許文献6乃至9)の記載を参照して、コアシェル構造のポリマー粒子を合成することができる。
【0092】
例えば、シェル部分が水溶性のカチオン性ポリマーで構成され、コア部分がノニオン性の又は親水性基を含まない疎水性ポリマーで構成されるコアシェル構造のポリマー粒子のエマルジョンは、シェル部分を構成し且つ乳化剤として作用するカチオン性の水溶性ポリマーの存在下、カチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも含まないノニオン性重合性化合物及び/又はその他の親水性基を含まないビニル系モノマーを乳化重合して、重量平均分子量が100,000より大きなポリマーを合成することで、コアシェル構造の粒子を形成することができる。
【0093】
シェル部分を構成し且つ乳化剤として作用するカチオン性ポリマーは、例えばアミノ基等のカチオン性の官能基を含有する重合性化合物と、カチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも含まないノニオン性の重合性化合物及び/又はその他の親水性基を含まないビニル系モノマーとを、必要に応じてアゾ系又は過酸化物系等の重合開始剤を用いて溶液重合し、100,000以下の重量平均分子量を有するポリマーとすることで得ることができる。また、得られたポリマーを、そのアミノ基等のカチオン性官能基1当量に対して1〜2当量の範囲で有機酸又は無機酸を添加して中和してもよい。溶液重合は70〜120℃の温度で行うことが好ましい。また、得られるポリマーの分子量は、溶剤量、及び重合開始剤量により制御することができる。
また、これらの溶液重合において、アミノ基等のカチオン性官能基を有する重合性化合物の配合量は、得られるポリマーで予定される官能基含有率に応じて適宜調整すればよい。但し、乳化剤として作用を十分に発揮でき、塗膜形成後は、耐水性等の性能に悪影響を及ぼさない量とすることが好ましく、この点から、全固形成分中5質量%〜60質量%含有することが好ましく、10質量%〜30質量%含有することがより好ましい。
【0094】
カチオン性の官能基を含有する重合性化合物の代表例は、アミノ基を有するα,βエチレン性重合性化合物であり、例えば、ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジブチルアミノメチルアクリレート、ジヘキシルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジ(t−ブチル)アミノエチルアクリレート、ジイソへキシルアミノエチルアクリレート、ジヘキシルアミノプロピルアクリレート、ジ(t−ブチル)アミノヘキシルアクリレート等のアクリレート類、並びにこれに対応するメタクリレート類を挙げることができる。これらの化合物は単独で又は組合せて使用することができる。
【0095】
カチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも有しないノニオン性重合性化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、プロピレングリコールアクリレート、エチレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、テトラエチレングリコールアクリレート、テトラプロピレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、エチレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラエチレングリコールアクリレート、テトラプロピレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシエチル)アクリルアミド等の水酸基を含有する(メタ)アクリレート類;アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のアミド基を含有する(メタ)アクリレート類;或いは、例えば、ダイアセトンアクリルアマイド、アセトアセトキシエチルメタクリレート等のケトン基を含有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、その他の親水性基を有しないビニル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキル又はシクロアルキルのエステル(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート等のアクリレート又はそれに対応するメタクリレート)スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
これらの化合物は単独で使用しても、組合せて使用してもよい。
【0096】
中和剤として用いられる有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、シュウ酸等が挙げられ、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。これらの化合物は単独又は組合せて使用することができる。
【0097】
シェル部分が水溶性のアニオン性ポリマーで構成され、コア部分がノニオン性の又は親水性基を含まない疎水性ポリマーで構成されるコアシェル構造のポリマー粒子のエマルジョンは、例えば、シェル部分を構成し且つ乳化剤として作用するアニオン性の水溶性ポリマーの存在下、必要に応じてアゾ系又は過酸化物系等の重合開始剤を用いて、前述したカチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも有しないノニオン性の重合性化合物及び/又はその他の親水性基を含まないビニル系モノマーを乳化重合して、重量平均分子量が100,000より大きなポリマーを合成することで、コアシェル構造の粒子を形成することができる。
【0098】
シェル部分を構成するアニオン性の水溶性ポリマーは、カルボキシル基等のアニオン性官能基を有する重合性化合物と、前述したカチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも含まないノニオン性の重合性化合物及び/又はその他の親水性基を含まないビニル系モノマーとを、必要に応じてアゾ系又は過酸化物系等の重合開始剤を用いて溶液重合し、100,000以下の重量平均分子量とすることで得ることができる。また、任意にこのポリマー溶液に、アニオン性官能基1当量に対して0.5〜1.0当量のアンモニア若しくはアミンを添加して中和してもよい。この際、溶液重合は70〜120℃の温度で行うことが好ましい。また、得られるポリマーの分子量は、溶剤量、重合開始剤量により制御することができる。
【0099】
アニオン性官能基を有する重合性化合物の代表例は、カルボキシル基等の有機酸基を有するα,βエチレン性重合性化合物であり、例えば、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸等のアクリル酸及びこれらに対応するメタクリル酸等が挙げられる。これらの化合物は単独で又は組合せて使用することができる。
【0100】
また、アニオン性官能基を有する重合性化合物の配合量は、得られるポリマーで予定される官能基含有率に応じて適宜調整すればよい。但し、乳化剤として作用を十分に発揮でき、塗膜形成後は、耐水性等の性能に悪影響を及ぼさない量とすることが好ましく、この点から、全固形成分中5質量%〜60質量%含有することが好ましく、10質量%〜30質量%含有することがより好ましい。
【0101】
また、中和剤として用いられるアンモニア若しくはアミンとしては、例えば、アンモニア、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられ、中でも揮発性が高いアンモニアが好ましい。
【0102】
シェル部分が水溶性のカチオン性ポリマーで構成され、コア部分がアニオン性の疎水性ポリマーで構成されるコアシェル構造のポリマー粒子のエマルジョンは、乳化剤として作用するカチオン性の水溶性ポリマーの存在下、前述したカルボキシル基等のアニオン性官能基を有する重合性化合物と、前述したカチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも含まない重合性化合物とを乳化重合して、官能基が20質量%以下で重量平均分子量が100,000より大きなアニオン性ポリマーを合成することで、コアシェル構造の粒子を形成することができる。
【0103】
また、シェル部分を構成し乳化剤として作用するカチオン性ポリマーは、例えば、アミノ基等のカチオン性の官能基を含有する重合性化合物と、カチオン性の官能基やアニオン性の官能基を含まない重合性化合物とを、必要に応じてアゾ系、過酸化物系等の重合開始剤を用いて溶液重合し、100,000以下の重量平均分子量を有するポリマーとすることで得ることができる。また、シェル部分を構成するカチオン性ポリマーは、例えば、上記の溶液重合後に、さらに、得られたポリマーのアミノ基等のカチオン性官能基1当量に対して0.5〜2.0当量の範囲でアニオン性官能基を有する重合性化合物を反応させて調製することもできる。これらのプロセスでの溶液重合は70〜120℃の温度で行うことが好ましい。また、得られるポリマーの分子量は、溶剤の量及び重合開始剤の量を調整することにより制御することができる。
【0104】
シェル部分が水溶性のアニオン性ポリマーで構成され、コア部分がカチオン性の疎水性ポリマーで構成されるコアシェル構造のポリマー粒子のエマルジョンは、乳化剤として作用するアニオン性の水溶性ポリマーの存在下、前述したアミノ基等のカチオン性官能基を有する重合性化合物と、前述したカチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも含まない重合性化合物を乳化重合して重量平均分子量が100,000より大きなカチオン性ポリマーを合成することで、コア/シェル構造の粒子を形成することができる。
【0105】
シェル部分を構成し乳化剤として作用するアニオン性ポリマーは、有機酸基等のアニオン性官能基を含有する重合性化合物の少なくとも1種と、カチオン性の官能基及びアニオン性の官能基の何れも含まない重合性化合物の少なくとも1種とを、必要に応じて重合開始剤及び/又は乳化剤を添加して、溶液重合し、更に、得られるポリマーの有機酸基1当量に対して0.5〜2.0の当量範囲でアミノ基等のカチオン性官能基を有する重合性化合物の少なくとも1種と、任意に重合性を持たないアミンとを反応させて得ることができる。
【0106】
コア部分を構成するポリマーとシェル部分を構成するポリマーとの質量比は、それぞれに対応するもモノマーの質量比を変更することで調整することができる。また、ポリマー粒子の粒径は、例えばシェル部分を水溶性ポリマーで構成し、コア部分を疎水性ポリマーで構成する場合には、各部を構成するモノマーの質量比を変更することで制御することができる。また、この態様及び他の態様の粒子では、官能基数、反応速度の調整、及び溶剤組成(例えばアルコール量)によって粒径を調整することもできる。
【0107】
本発明においてケイ酸等とポリマー粒子との結合は、種々の結合様式、種々の官能基の反応を利用することができるが、典型例は、アルコキシラン化合物を利用してポリマー粒子にシラノール基を導入し、この官能基と活性ケイ酸等の有する官能基との縮合反応を通じて両者を結合することである。
シラノール基は、例えば重合性アルコキシラン化合物を他のモノマー(コアシェル構造のポリマー粒子では、シェルを形成するための他のモノマー)と重合反応させて、ポリマー粒子表面にアルコキシラン化合物を導入し、このアルコキシラン化合物を酸やアルカリで加水分解してアルキル基を脱離することにより導入することができる。また、ポリマー粒子を合成後、当該ポリマー粒子が有する官能基(例えば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基)に対して反応性を持つ官能基(カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基等)を有するアルコキシシラン化合物をポリマー粒子と反応させて、粒子表面にアルコキシラン化合物を結合させ、このアルコキシラン化合物を酸やアルカリで加水分解してアルキル基を脱離することによりシラノール基を導入することもできる。
【0108】
アルコキシラン化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシシラン等のアミノ基を有するアルコキシラン化合物;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するアルコキシラン化合物;並びに3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基を有するアルコキシラン化合物が挙げられる。これらの化合物は単独又は組合せて使用することができる。
また、アルコキシラン化合物は、ポリマー粒子の官能基(例えばアミノ基、カルボキシル基、水酸基)1当量に対して、当該ポリマー粒子の官能基に対して反応性の官能基(例えば、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基等)を、0.01〜1.5当量有することが好ましく、0.1〜1.0当量有することがより好ましく、0.3〜0.5当量有することが更に好ましい。
【0109】
重合性アルコキシラン化合物としては、例えば、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの化合物は単独又は組合せて使用することができる。
重合性アルコキシラン化合物と、他の重合性化合物(コアシェル構造のポリマー粒子では、シェルを形成するための他の重合性化合物)との質量比は、貯蔵安定性及び耐溶剤性の点で、100:0.1〜100:20が好ましく、100:0.5〜100:10がより好ましく100:1〜100:5が特に好ましい。
【0110】
本発明において、活性ケイ酸化合物の水溶液を、有機ポリマー粒子の分散液に加える速度については、特に制限はないが、等速で滴下とすることが好ましい。また、活性ケイ酸化合物と有機ポリマー粒子との付着又は結合が室温条件下で生じる場合はよいが、室温でこのような吸着又は結合を生じない場合(例えば室温が10℃以下の場合)には、必要に応じて加熱して縮合反応等を促進させても良い。
【0111】
また、本発明においては、有機ポリマー粒子にケイ酸化合物を吸着又は結合した後で、活性ケイ酸等を有機塩基と反応させてもよく、有機塩基との塩の形成は、保存安定性を高めることができる。
例えば、ハイブリッド粒子のエマルジョンにアンモニア若しくはアミン等を添加して、活性ケイ酸のOH等の基をアンモニア等と反応させてアンモニウムイオンを導入することができる。
また、ハイブリッド粒子を形成した後で、その目的等に応じて、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステルをエマルジョンに添加してもよい。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を示して本発明を更に詳しく説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、実施例の記載によって限定されるものではない。
【0113】
<実施例1>コアシェル構造のポリマー粒子であって、シェル部分がカチオン性ポリマーで構成される粒子に、活性ケイ酸が結合しているハイブリッド粒子のエマルジョン
[1]コアシェル構造の粒子のエマルジョンの調製
攪拌機、滴下ロート、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、エタノール40gを仕込み、窒素気流下で80℃まで昇温し、下記のモノマーを滴下ロートに仕込み、モノマー混合物を2時間かけて等速でフラスコ内へ滴下した。
【表1】


滴下終了後3時間80℃に保ち、88%蟻酸12gをフラスコに加え、さらに80℃で30分間エージングし、水450gにより希釈し、無色透明のポリマー水溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量は、36,000であり、ポリマー中に20質量%のカチオン性官能基が存在すると考えられる。
次いで、このカチオン性の水溶性樹脂にアスコルビン酸ナトリウム1gと硫酸銅0.5gとを加えた後、80℃に反応液の温度を保ちながら、下記のコア用モノマー混合物と、過酸化水素水希釈液を、それぞれ別の滴下ロートから同時に2時間かけて等速で滴下した。
【表2】


滴下終了後、フラスコ内に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン30gを添加し、さらに2時間80度に保ち、その後30℃まで冷却したところで、水100gで希釈し、コアシェル構造を有するポリマー粒子のエマルジョン(E−1)を得た。コア部分のポリマーの重量平均分子量は、1,140,000であり、平均粒子径は、0.04μmであった。また、コア部分を構成するポリマーとシェル部分を構成するポリマーの質量比は50:50であった。
【0114】
[2]活性ケイ酸水溶液の調製
3号ケイ酸ソーダ(東曹産業(株)社製)10gにイオン交換水90gを加えよく攪拌し、5%硫酸水溶液でナトリウムを置換したスルホン酸基を保持する強酸性陽イオン交換樹脂SK1B(三菱化学(株)社製)50gを加え、ゆっくりと30分間攪拌した。溶液のPHが3.8であることを確認した後、イオン交換樹脂を分離し、不揮発成分4.3%の無色透明な水溶液(K−1)を得た。
【0115】
[3]有機-無機ハイブリット粒子のエマルジョンの調製
コアシェル構造のポリマー粒子のエマルジョン(E−1)35gに、イオン交換樹脂を分離後30分のケイ酸水溶液(K−1)65gを攪拌しながら徐々に加え、添加後さらに30分間攪拌し、有機/無機の固形分質量比が80/20の有機無機ハイブリット粒子のエマルジョンを得た。(株)島津製作所社製 エネルギー分散型蛍光X分析装置 EDX−700HS(以下、蛍光X線分析装置)で確認したところ、アルカリ金属は含まれておらず、エマルジョンのpHは、3.9であった。
【0116】
<実施例2>アニオン性ポリマーで構成される粒子に活性ケイ酸が結合しているハイブリッド粒子のエマルジョン
【0117】
[1]ポリマー粒子の調製
攪拌機、滴下ロート、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、水450g、過硫酸アンモニウム2gを仕込み、窒素気流下で80℃まで昇温し、下記に示すモノマー及び反応性乳化剤(第一工業製薬(株)社製)アクアロンKH−10を滴下ロートに仕込み、その混合物を3時間かけて等速で滴下した。
【表3】

【0118】
滴下終了後2時間80℃に保ち、過硫酸アンモニウム2gを加え、さらに2時間80℃に保った後30℃まで冷却し、水100gと25%アンモニア水5gを加え、ポリマー粒子のエマルジョン(E−2)を得た。ポリマーの重量平均分子量は860,000であり、ポリマー中に4.5質量%のアニオン性官能基が存在していた。また、ポリマー粒子の平均粒径は0.2μmであった。
【0119】
[2]有機-無機ハイブリット粒子のエマルジョンの調製
ポリマー粒子のエマルジョン(E−2)35gに、実施例1に記載するようにして得られた活性ケイ酸水溶液(K−1)65gを、イオン交換樹脂の分離40分後に攪拌しながら徐々に加え、さらに30分間攪拌し、有機/無機の固形分質量比が80/20の有機無機ハイブリット粒子のエマルジョンを得た。
蛍光X線分析装置で確認したところ、アルカリ金属は含まれておらず、エマルジョンのpHは、3.7であった。
【0120】
<実施例3>コアシェル構造のポリマー粒子であって、シェル部分がアニオン性ポリマーで構成される粒子に、活性ケイ酸が結合しているハイブリッド粒子のエマルジョン
【0121】
[1]コアシェル構造の粒子のエマルジョンの調製
攪拌機、滴下ロート、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、エタノール40gを仕込み、窒素気流下で75℃まで昇温し、下記のシェル用モノマーを滴下ロートに仕込み、モノマー混合物を2時間かけて等速でフラスコに滴下した。
【表4】

【0122】
滴下終了後3時間80℃に保った後60℃まで冷却し、25%アンモニア水2.5gを加え、さらに60℃で30分間エージングし、水450gにより希釈し無色透明のポリマー水溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量は49,000であり、ポリマー中に20質量%のアニオン性官能基が存在していた。
次いで、このアニオン性水溶性ポリマーの水溶液に、アスコルビン酸ナトリウム0.1gと硫酸銅0.05gを加えた後、温度を80℃に保ちながら、下記のコア用モノマー混合物と、過酸化水素水希釈液を、それぞれ別の滴下ロートから同時に2時間かけて等速で滴下した。
【表5】


滴下終了後、さらに3時間80℃に保ち、30℃まで冷却後、水100gで希釈し、コアシェル構造のポリマー粒子の水性エマルジョン(E−3)を得た。コア部分のポリマーの重量平均分子量は1,200,000であり、ポリマー粒子の平均粒径は、0.08μmであった。また、コア部分を構成するポリマーとシェル部分を構成するポリマーの質量比は、50:50であった。
【0123】
[2]有機無機ハイブリット粒子のエマルジョンの調製
コアシェル構造のポリマー粒子のエマルジョン(E−3)35gに、実施例1に記載するようにして調製した活性ケイ酸水溶液(K−1)65gを、イオン交換樹脂を分離してから40分後に攪拌しながら徐々に加え、添加後さらに30分間攪拌し、有機/無機の固形分質量比が80/20の有機無機ハイブリット粒子のエマルジョンを得た。蛍光X線分析装置で確認したところ、アルカリ金属は含まれておらず、エマルジョンのpHは、4.7であった。
【0124】
<実施例4>コアシェル構造のポリマー粒子であって、シェル部分がアニオン性ポリマーで構成される粒子に、ケイ酸アンモニウム塩が結合しているハイブリッド粒子のエマルジョン
【0125】
実施例1で得られた活性ケイ酸水溶液(K−1)100gに、イオン交換樹脂を分離後直ちに、10%に調整したアンモニア水を1g加え、pHが8.3のケイ酸アンモニウム塩の水溶液(K−2)を得た。次いでイオン交換樹脂を分離してから30分後に、ケイ酸アンモニウム塩の水溶液(K−2)65gを、実施例3に記載するようにして調製されたコアシェル構造のポリマー粒子のエマルジョン(E−3)35gに攪拌しながら徐々に加え、さらに30分間攪拌し、有機/無機の固形分質量比が80/20の有機−無機ハイブリットエマルジョンを得た。蛍光X線分析装置で確認したところ、アルカリ金属は含まれていなかった。また、アンモニアの量と活性ケイ酸の量によれば、活性ケイ酸の総ての官能基はアンモニウムイオンを含んでいるものと考えられる。
【0126】
<実施例5>コアシェル構造のポリマー粒子であって、シェル部分がアニオン性ポリマーで構成される粒子に、ケイ酸トリエチルアンモニウム塩が結合しているハイブリッド粒子のエマルジョン
【0127】
実施例1で得られた活性ケイ酸水溶液(K−1)100gに、イオン交換樹脂を分離後直ちに、トリエチルアミンを0.1gとエタノール1gの混合物を0.5g加え、PHが8.7のケイ酸トリエチルアンモニウム塩の水溶液(K−3)を得た。次いで、イオン交換樹脂を分離してから1時間で、ケイ酸トリエチルアンモニウム塩の水溶液(K−3)65gを、実施例3に記載するようにして調製されたコアシェル構造のポリマー粒子のエマルジョン(E−3)35gに攪拌しながら徐々に加え、さらに30分間攪拌し、有機/無機の固形分質量比が80/20の有機無機ハイブリットエマルジョンを得た。蛍光X線分析装置で確認したところ、アルカリ金属は含まれていなかった。また、トリエチルアミンの量と活性ケイ酸の量によれば、活性ケイ酸の総ての官能基はトリエチルアンモニウムイオンを含んでいるものと考えられる。
【0128】
以下に、実施例1から5の有機無機ハイブリッドエマルジョンの基本的な組成をまとめて示す。
【表6】

【0129】
<実施例6〜8>組成比を変更したハイブリッド粒子のエマルジョン
下記の表7に示す配合比とした点以外は、実施例1で示すのと同様の手順により有機無機ハイブリット粒子のエマルジョンを得た。
【表7】

【0130】
<比較例1>粒子形態をとらない水溶性カチオンポリマーに活性ケイ酸が結合しているハイブリッド材料のエマルジョンの調製
【0131】
[1]水溶性カチオンポリマーの調製
攪拌機、滴下ロート、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、エタノール50gを仕込み、窒素気流下で80℃まで昇温し、下記のモノマーを滴下ロートに仕込み、2時間かけてフラスコに等速で滴下した。
【表8】


滴下終了後1時間80℃に保ち、アゾビスイソブチロニトリル5gを加え、さらに3時間80℃に保った。次いで88%蟻酸14gを加え、さらに30分間エージングし、水620gにより希釈し、水溶性カチオンポリマーを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は41,000であった。
【0132】
[2]有機−無機ハイブリットポリマーの分散液の調製
水溶性カチオンポリマー35gに、実施例1に記載するようにして得られたケイ酸水溶液(K−1)65gを、イオン交換樹脂を分離してから40分後に、攪拌しながら徐々に加え、さらに30分間攪拌し、有機/無機の固形分質量比が80/20の有機無機ハイブリットポリマーの分散液(PK−2)を得た。溶液の外観は実施例1のエマルジョンより透明であった。
【0133】
<比較例2>アニオン性ポリマーで構成される粒子にコロイダルシリカを結合したハイブリッド粒子のエマルジョン
実施例2で得られたポリマー粒子(シェル部分がアニオン性ポリマーで構成される)のエマルジョン(E−2)57gに、コロイダルシリカ(スノーテックスN、日産化学工業(株)社製)22g及び水21gをこれらの混合後に攪拌しながら徐々に加え、さらに30分間攪拌し、有機/無機の固形分質量比が80/20の有機無機ハイブリット粒子のエマルジョンを得た。
【0134】
<比較例3>アニオン性ポリマーで構成される粒子とケイ酸ソーダ溶液との混合物
実施例2で得られたポリマー粒子(シェル部分がアニオン性ポリマーで構成される)のエマルジョン(E−2)57gに、3号ケイ酸ソーダ(東曹産業(株)社製)10gと水33gの混合物を攪拌しながら徐々に加えさらに30分間攪拌し、有機/無機の固形分質量比が80/20の有機−無機ハイブリットエマルジョンを得た。
【0135】
以下に、比較例1から3の有機無機ハイブリッドエマルジョンの基本的な組成をまとめて示す。
【表9】

【0136】
<比較例4〜10>組成比を変更したハイブリッド粒子のエマルジョン
比較例4〜9では、下記の表10及び11に示す組成比とした点以外は、実施例2、実施例3又は比較例3で示すのと同様の手順により有機−無機ハイブリットエマルジョンを得た。比較例10では、コロイダルシリカ(スノーテックスN、日産化学工業(株)社製)20gと水80gを混合してコロイダルシリカの水溶液を調製した。比較例11では、35号ケイ酸ソーダ(東曹産業(株)社製)4gと水96gを混合してケイ酸ソーダ溶液を調製した。
【0137】
【表10】

【0138】
【表11】

【0139】
<比較例12>
実施例1で得られたケイ酸(K−1)65gを25℃で10時間放置した。ケイ酸水溶液の外観はわずかに青白い透明なものであった。実施例1のコア/シェル型カチオンエマルジョン(E−1)35gに攪拌しながら、徐々に加えさらに30分間攪拌し有機/無機の固形分質量比が80/20の有機−無機ハイブリットエマルジョンを得た。
【0140】
<各試験の評価方法>
[1]分子量の測定
昭和電工(株)社製の示差屈折率検出器(SHODEX RI 101)と、カラム(SHODEX GPC KF-806M)とを使用して、JIS−7252に従い各ポリマーの分子量を測定した。
【0141】
[2]平均粒径の測定
各エマルジョン中のポリマー粒子を、堀場製作所社製 動的光散乱式粒径分布測定装置(LB-500)を使用して液温25℃の条件で測定した
【0142】
[3]耐水性の評価
各実施例及び比較例で得られた組成物を用いて、ガラス板に乾燥塗膜の膜厚が2μmとなるようにバーコーターで塗膜を形成し、25℃で7日間養生した後、塗膜を水道水に7日間浸漬して引き上げ後の塗膜の外観を目視し、綿棒でのラビングテストにより塗膜の軟化を確認した。
◎:外観変化無し、塗膜の軟化無し
○:外観変化無し、やや塗膜の軟化がある
△:外観に小さなフクレ有り、やや塗膜の軟化がある
×:外観に大きなフクレあり、塗膜の軟化が大きい
××:塗膜が溶出している
【0143】
[4]耐溶剤性の評価
各実施例及び比較例で得られた組成物を用いて、ガラス板に乾燥塗膜の膜厚が2μmとなるようにバーコーターで塗膜を形成し、25℃で7日間養生した後、塗膜をメチルエチルケトンで湿らしたガーゼに500gの荷重をかけてラビングし、塗膜にキズが残るまでの回数で評価した。
◎:ラビング100回以上
○:60〜100
△:40〜60
×:20〜40回
××:1〜20回
【0144】
[5]貯蔵安定性の評価方法
各実施例及び比較例で得られた組成物を密閉性の良いガラス容器に入れ、30℃の恒温槽で固化するまでの時間を確認した。
◎:6ヶ月以上安定
○:3ヶ月〜6ヶ月
△:1ヶ月〜3ヶ月
×:7日〜1ヶ月
××:7日以内
【0145】
[6]塗膜外観の評価
各実施例及び比較例で得られた組成物を用いて、ガラス板に乾燥塗膜の膜厚が2μmとなるようにバーコーターで塗膜を形成し、25℃で1日乾燥後、塗膜の濁りを目視で確認した。
◎:透明性があり、光沢がある
○:透明性はあるが光沢がやや劣る
△:やや濁りがある光沢がやや劣る
×:濁りがあり光沢が劣る
××:にごりが強く光沢がまったく無い
【0146】
[7]鉛筆硬度の評価
各実施例及び比較例で得られた組成物を用いて、ガラス板に乾燥塗膜の膜厚が2μmとなるようにバーコーターで塗膜を形成し、25℃で7日間養生した塗膜を用い、JIS5600−5−4の評価方法に従って実施した。
【0147】
[8]硬化速度の評価
各実施例及び比較例で得られた組成物を用いて、ガラス板に乾燥塗膜の膜厚が2μmとなるようにバーコーターで塗膜を形成した後25℃で養生し、耐水性、耐溶剤性が前述評価の○以上となるまでの養生時間で評価した。
◎:12時間以内
○:12時間〜24時間以内
△:24時間〜72時間
×:72時間〜168時間
××:168時間以上
【0148】
[9]基材密着性の評価
各実施例及び比較例で得られた組成物を用いて、ガラス、アルミ及びPETの各基材に、乾燥塗膜が2μmとなるように塗膜を形成し、25℃で1日乾燥後、黒色の水性アクリル塗料を乾燥塗膜が10μmとなるように積層した。7日間養生し、1mm×1mmの100個の碁盤目による粘着テープ剥離テストを行い基材に残った碁盤目の数で評価した。
◎:100個
○:90〜99個
△:80〜89個
×:70〜79個
××:69個以下
【0149】
<試験結果>
【表12】

【0150】
【表13】

【0151】
【表14】

【0152】
上記の表から分かる通り、粒子形態を取らない水溶性ポリマーに活性ケイ酸が結合しているハイブリッド材料を含む比較例1の組成物と比較して、ポリマー粒子に活性ケイ酸が結合しているハイブリッド粒子を含む実施例1の組成物では、貯蔵安定性が良好であり、有機ポリマーを粒子形態とすることが、活性ケイ酸の縮合反応を防ぐ上で効果的であることが実証された。実施例1の組成物では、活性ケイ酸等を有機粒子の表面に結合若しくは付着させたことで活性ケイ酸等同士の縮合反応が抑制されたものと考えられ、一方比較例1の組成物では、有機ポリマーが水溶性で粒子ではないためポリマー同士の接触や活性ケイ酸同士の接触が起き易く、活性ケイ酸の縮合反応が進みゲル化を生じたものと考えられる。また、実施例1の有機粒子はプラスの電荷を帯びているため、粒子同士が電気的に反発し合い粒子間の接触が生じ難いと考えられ、このような特性が、粒子に付着した活性ケイ酸同士の接触をより防げた可能性がある。
実施例1の組成物は、比較例1の組成物と比較して、耐溶剤性及び塗膜硬度も高かった。これは、活性ケイ酸の縮合が抑制された結果、塗膜形成時に粒子表面に保持された活性ケイ酸の縮合反応を生じ、これによって粒子間の結合が促進されたためと考えられる。また、実施例1のコアシェル構造の粒子では、コア部を構成する疎水性ポリマーの分子量は114万であり、比較例1の水溶性ポリマーの分子量4万と比較して非常に大きい。これは、塗膜がより高分子のポリマーで形成されることを意味し、この特性も耐溶剤性及び塗膜硬度の向上に寄与したものと考えられる。
次に、有機/無機固形分比が、それぞれ、80/20、90/10、50/50、30/70及び10/90である実施例1、実施例6、実施例8、実施例9及び比較例7の組成物を比較すると、実施例1、実施例6、実施例8及び実施例9の組成物は、有機/無機固形分比に応じて形成された塗膜の硬度に変化が見られるもののその他の評価項目では何れも高い評価となった。一方、比較例7の組成物では、貯蔵安定性が低下した。この結果は、活性ケイ酸の有機ポリマーが粒子に対する質量比が9:1(活性ケイ酸:有機ポリマー)以上であると、有機ポリマー粒子の表層に付着しきれない活性ケイ酸を生じ、このような遊離の活性ケイ酸の縮合反応が起きたためと考えられる。なお、同じ有機/無機固形分比であるハイブリッド粒子のエマルジョンに関する比較例6では、比較例7のような貯蔵安定性の低下は認められなかった。これは比較例6の無機成分であるコロイダルシリカが反応性に乏しくコロイダルシリカ同士の接触があっても縮合反応が活発に起きないためと考えられる。これは、逆に比較例7のハイブリッド粒子の形成に用いた活性ケイ酸が非常に反応性に富んでいたことを裏付ける。
次に、実施例1の組成物と、無機成分としてコロイダルシリカを含む比較例2及び比較例4の組成物とを比較すると、実施例1の組成物の方が耐溶剤性が高かった。これは比較例2及び比較例4で用いたコロイダルシリカに比べ、実施例1で用いたハイブリッド粒子上に保持されている活性ケイ酸の方が反応性が高く、活性ケイ酸の縮合反応により各ハイブリッド粒子の結合が促進されるためと考えられる。
次に、コアシェル構造の有機ポリマ粒子を含む実施例3の組成物と、このような構造を取らない有機ポリマ粒子を含む実施例2の組成物を比較すると、実施例3の組成物の方が、貯蔵安定性に優れるという結果となった。この結果は、実施例3の有機ポリマ粒子では、コアシェル構造を有し、その粒子表面を水溶性ポリマーで構成する結果、多くのケイ酸化合物を粒子表面に持続的に付着し、活性ケイ酸の縮合反応の抑制に寄与したためと考えられる。
次に、ポリマー粒子に活性ケイ酸が結合しているハイブリッド粒子を含む実施例2の組成物と、同じポリマー粒子とケイ酸ソーダとを含む比較例3の組成物とを比較すると、実施例2の組成物では、耐水性が良好であったのに対して、比較例3の組成物では、耐水性が著しく低下した。この結果は、ケイ酸化ソーダ溶液中のアルカリ金属を除去することで耐水性が改善されることを示す。また、実施例2の組成物と、同じポリマー粒子のエマルジョンである比較例5の組成物を比較すると、実施例2の組成物の方が、比較例5の組成物より耐水性が良好であった。これは、有機ポリマーのみの粒子よりも、活性ケイ酸とのハイブリッド粒子とすることでより耐水性が向上することを示す。恐らく、活性ケイ酸の縮合反応により粒子間の結合が促進され高分子化したためと考えられる。
次に、実施例1の組成物と、ケイ酸アンモニウム塩を含む実施例4及び実施例5の組成物を比較すると、硬化速度は、官能基がO(及び場合によってはOH)である活性ケイ酸を含む実施例1の組成物で最も速く、次いで官能基がONH4+であるケイ酸アンモニウム塩を含む実施例4の組成物、ONH(Cであるケイ酸トリメチルアンモニウム塩を含む実施例5の組成物の順番となった。アンモニアやアミンを添加したものでは、その揮発性が高い方が硬化速度が速いことが示された。
最後に、実施例1の組成物を、イオン交換後、10時間経過した活性ケイ酸水溶液を用いて調製した比較例12の組成物と比較すると、比較例12の組成物により形成された塗膜は、実施例1の組成物を用いて形成された塗膜と比較して塗膜外観が著しく低下した。比較例12の組成物により得られた塗膜は実施例1のものと比較して光沢が全くなく、一部に小さな凝集物のような異物が見られた。また、比較例12の組成物により得られた塗膜の耐溶剤性も実施例1の組成物で得られたものと比較して著しく低下した。これはイオン交換後10時間の経過で活性ケイ酸が重合化して反応性が著しく低下したため、塗膜形成時に硬化反応が十分進行しなかったためと考えられる。また、比較例12の組成物では、実施例1の組成物より貯蔵安定性が低下した。これも、活性ケイ酸が重合化して、媒体中に残存するケイ酸重合物が増加したためと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマー粒子の表面に活性ケイ酸或いはそれの有機塩基との塩が付着又は結合している有機無機ハイブリッド粒子を、水性媒体中に分散している、水性のコーティング用組成物。
【請求項2】
前記活性ケイ酸又はその塩は、化学式[SiO(R)4−2x〔式中、各Rは、独立して、O−、O、OH、ONR、(式中、各Rは、独立してH、又は炭素数1〜5のアルキル基である)、及びO2n−2NO(式中、nは3から5の整数)で表されるヘテロシクロ環からなる群から選択され、Xは1又は2の整数であり、nは1〜10の整数である〕で表される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記活性ケイ酸の塩の有する官能基の少なくとも1部は、O又はOHである、請求項1又は2に記載のコーティング用組成物。
【請求項4】
前記活性ケイ酸又はその塩が、下記式
【化1】


[式中、nは、1〜5の整数であり、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、O−、O、OH、ONR(式中、Rは、独立してH、又は炭素数1〜5のアルキル基である)、又はO2n−2NO(式中、nは3から5の整数)で表されるヘテロシクロ環であるか、或いはR及びR、又はR及びRは、1つのOである]
で表される化合物である、請求項1から3のいずれか1項に記載のコーティング用組成物。
【請求項5】
Rの少なくとも1つ、或いはRからRの少なくとも1つは、O−であって、これを介して前記活性ケイ酸又はその塩が前記有機ポリマー粒子に結合している、請求項2から4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
各R、或いはRからRが、独立してO、OH、ONH4+、ONH(C、及びO10NOから選択される、請求項2〜5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記有機ポリマー粒子は、少なくともその表面がカチオン性ポリマーで構成され、前記無機部分は、活性ケイ酸である、請求項1、2、及び4から6の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記有機ポリマー粒子は、少なくともその表面がアニオン性ポリマーで構成され、前記無機部分は、活性ケイ酸の有機塩基との塩である、請求項1から6の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマー粒子が疎水性ポリマーで構成され、更に乳化剤を含有する、請求項1から8の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマー粒子がコアシェル構造を有し、シェル部分は水溶性ポリマーで構成され、コア部分は疎水性ポリマーで構成されている、請求項1から8の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記シェル部分を構成する水溶性ポリマーが、カチオン性ポリマー又はアニオン性水性ポリマーである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記シェル部分を構成するポリマーは、重量平均分子量が5,000〜100,000で、親水性官能基を5〜60質量%有し、前記コア部分を構成するポリマーは、重量平均分子量が100,000より大きく、親水性官能基を20質量%以下有する、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記シェル部分を構成するポリマーがカチオン性ポリマーであり、前記コア部分を構成するポリマーがアニオン性ポリマー又はノニオン性ポリマーである、請求項10から12の何れか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記シェル部分を構成するポリマーがアニオン性ポリマーであり、前記コア部分を構成するポリマーがカチオン性ポリマー又はノニオン性ポリマーである、請求項10から12の何れか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記シェル部分を構成するポリマーと前記コア部分を構成するポリマーとの質量比が、4:6〜8:2(シェル部分:コア部分)である、請求項10から14の何れか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマー粒子の平均粒径は、0.01〜0.10μmである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ケイ酸及びその塩の前記有機ポリマーに対する質量比が、8:2〜0.5:9.5(ケイ酸等:有機ポリマー)である、請求項1から16の何れか1項に記載の組成物。
【請求項18】
実質的に金属イオンを含まない、請求項1から17の何れか1項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1から18の何れか1項に記載の組成物の硬化により形成される乾燥コーティング膜を有する物品。
【請求項20】
ケイ酸の金属塩の水溶液を、陽イオン交換樹脂で処理して、金属イオンを除去し、
該イオン交換処理後10時間より短い時間で、得られた活性ケイ酸の水溶液を、有機ポリマー粒子の分散液に加えるか、或いは該イオン交換処理後に有機塩基を添加して、得られた活性ケイ酸の塩の水溶液を、有機ポリマー粒子の分散液に加えて、該有機ポリマー粒子の表面に該活性ケイ酸又その塩を付着又は結合させる、コーティング用組成物の製造方法。
【請求項21】
前記活性ケイ酸又はその塩の水溶液を、前記有機ポリマー粒子の分散液に、該活性ケイ酸又はその塩に対する有機ポリマーの質量比で8:2〜0.5:9.5(活性ケイ酸等:有機ポリマー)の割合で加える、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記陽イオン交換樹脂による処理の後1時間以内に、前記活性ケイ酸の水溶液を、前記有機ポリマー粒子の分散液に加える、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記イオン交換処理を、前記活性ケイ酸水溶液のpHが2から5になった時点で終了する、請求項20から22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記有機ポリマー粒子の分散液がアルコールを含有する、請求項20から23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマー粒子がコアシェル構造を有し、シェル部分は水溶性ポリマーで構成され、コア部分は疎水性ポリマーで構成されている、請求項20から24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記シェル部分を構成するポリマーと前記コア部分を構成するポリマーとの質量比が、4:6〜8:2(シェル部分:コア部分)であり、前記ポリマー粒子の平均粒径は、0.01〜0.10μmである、請求項25に記載の方法。

【公開番号】特開2013−72023(P2013−72023A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212755(P2011−212755)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(504389485)大成ファインケミカル株式会社 (4)
【Fターム(参考)】