説明

有機無機ハイブリッド粒子の製造方法

【課題】同一の粒子内に有機高分子領域と無機高分子領域の分布した複合粒子であって、耐摩耗性、耐溶剤性、高弾性率等の無機粒子としての特徴と、柔軟性、造粒性等の有機粒子としての特徴を併せ持ち、粒径の均一性に優れた複合粒子(有機無機ハイブリッド粒子)の製造方法を提供する。
【解決手段】水中への自己水分散性樹脂の乳化プロセスを用いて、多価金属アルコキシドやその加水分解縮合物である金属酸化物ゾルを含有した自己水分散性樹脂の乳化液滴を形成し、該液滴中で、多価金属アルコキシドの加水分解、重縮合によるゲル化反応を起こすことによって、有機無機ハイブリッド粒子を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一粒子径を有し、同一粒子内に有機高分子部分と無機材料部分とが均一に混在する球形の有機無機ハイブリッド粒子及び該粒子の水性分散体の製造方法に関する。さらに前記有機無機ハイブリッド粒子を主成分として含有する研磨剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック等の無機の粒子は増量、紫外線吸収、耐摩耗、光学・電磁気特性の付与等様々な用途で単独もしくは有機高分子等と複合して利用されている。一方、有機高分子粒子ではポリマーが持つ特性である柔軟性・密着性・加工性を利用して電子写真用トナーや艶消し、着色剤その他で利用されているが、従来より樹脂粒子中に種々の無機材料を混合して耐熱性、力学特性、耐久性等を改良した材料が用いられており、またそのような微細な粒子が水性分散体として提供されてきた。
近年、有機高分子と無機材料の複合化をより微細に行うことにより、より均一で有機高分子と無機材料の特性を併有する高性能の材料を開発することが検討され、さらにそのような材料から粒子が形成されることが期待されている。しかし一般に有機高分子と無機材料との相溶性は十分ではなく、多価金属アルコキシドを用いて種々の試みが成されているが、そもそも均一な複合化材料である有機無機ハイブリッド材料を形成することが容易ではなく、ましてそのような材料からなる粒子を実用的化するのは困難であった。
【0003】
有機無機ハイブリッド粒子の具体的な製造方法としては、例えば多価金属アルコキシドを含む膨潤溶媒でシード粒子を膨潤させた後、該多価金属アルコキシド中の不飽和二重結合により重合させ、次いで多価金属アルコキシドのアルコキシ基を加水分解及び縮合させる製造方法が用いられている(特許文献1参照)。しかし該製造方法において形成される粒子は、中心部分にシード粒子が配置されることになり、均一な内部構造を有するものではない。また膨潤処理やその後の重合等の操作、更には界面活性剤や分散剤の使用等製造工程が複雑で粒子径の制御は困難である。このため粒子は必ずしも球形とはならず、形状的にも物性的にも粒子に充分な均一性を持たせることは困難であった。また文献3にも記載されている通り、粒径も1μmより小さいものを製造するのは困難であった。
【0004】
さらには、有機高分子、シリコンアルコキシド又はその縮合物、有機溶剤を必須成分として含む均質溶液を加熱された不活性ガス中に噴霧して粒子化する方法が提示されている
が(特許文献2参照)、文献中にも記載されているように、製造された粒子の構造は有機高分子中に平均粒径500nm以下のシリカが分散した複合粒子であり、有機高分子とシリコンアルコキシドの重縮合物が均一に混合しているものではない。また文献中に平均粒径が5〜200μmと記載されているように、微粒子化が困難で粒径分布も広く制御が困難であった。
【0005】
さらに焼成用の炭化ケイ素粉体を製造する過程において、シリコンアルコキシドとノボラック型フェノール樹脂の混合溶液を塩基水溶液に滴下し、加水分解してシリカ/樹脂複合微粒子を調整することが記載されている(特許文献3参照)。しかし、ノボラック型フェノール樹脂とシリコンアルコキシドの加水分解生成物とは、必ずしも容易に均一混合できないため、粒子内で均一に混合した構造を取ることが困難である。またノボラック型フェノール樹脂は自己水分散性が乏しく、塩基水溶液中に滴下した時点で激しく攪拌しつつ強制的に乳化しているため粒子が大粒径化しやすく粒度分布も広くなりやすい。
【0006】
さらに、オルガノシラン中に有機ポリマーを混合させた溶液を作製し、水中で乳化分散させてエマルジョンを形成した後、オルガノシランの加水分解及び縮合反応を行うポリオルガノシロキサン/有機ポリマー複合粒子を含む水系分散体の製造方法が提示されている(特許文献4参照)。しかしポリオルガノシロキサンは無機材料ではなく、特許文献4に規定された製造方法では有機無機ハイブリッド粒子を作ることは極めて難しい。該製造方法によると、有機ポリマーをオルガノシランに溶解させた混合物を水中に乳化させ、乳化液滴中のオルガノシランの加水分解を行うため、粒子化の過程で有機ポリマーが不溶化、析出し、均一な混合状態が乱れやすい。さらに親水性の大きいオルガノシランの加水分解生成物と通常の有機ポリマーとは本来均一混合しにくく、かりに加水分解がさらに進んでケイ素酸化物となるとすると、有機ポリマーとは一層混合しにくくなる。したがって該文献記載の方法で、有機化合物成分と無機材料成分とが均一混合した構造を形成することは極めて困難である。更に乳化剤を用いて強制的に乳化を行っているため、粒子形状も球形から離れやすいと考えられる。
【0007】
このように従来の製造方法のうちのあるものは、粒子形成プロセスが複雑であって、しかも有機高分子部分と無機材料部分が均一に分布した粒子を形成することが困難であった。また他のものは、簡便な乳化プロセスを用いてはいるが、乳化粒子の安定性が不足しており、大量の乳化剤の使用や激しい攪拌を行いつつ多価金属アルコキシドの加水分解と樹脂の粒子化を行うため、形状が球形からはずれやすい。
さらに多価金属アルコキシドの加水分解重縮合生成物が親水性のため、多くの場合使用される樹脂とは均一に混合せず、粒子化の過程で無機材料部分が有機高分子部分から析出し、分離して、単に金属酸化物粒子が樹脂粒子内に分布しただけの状態となりやすい。このように粒子化の過程を通じて、有機高分子成分と無機材料成分とが均一に混合した状態を保ちつつ、最終的に有機無機ハイブリッド粒子を得ることは非常に困難であった。
【0008】
一方、例えば自己水分散性樹脂を水混和性有機溶剤中に溶解し、顔料を添加した混合物を塩基性化合物存在下に水中へ乳化、分散させて、顔料を含む樹脂の水性分散体を形成し、液体成分を除去して真球状で粒径の揃ったトナー用樹脂粒子を製造する方法が開示されている(特許文献5参照)。引用文献5に記載された樹脂粒子製造方法は、様々な有機粒子、無機粒子を含有した樹脂粒子の製造に適用が可能であるが、分散樹脂子内に多価金属アルコキシドを均一に混合して含有させ、有機高分子成分と無機材料成分とが均一に混合した複合化粒子を形成させることは未だ試みられていない。
【0009】
一方近年、半導体の高集積化、高性能化のために、その製造プロセスにおいて研磨による平坦化技術が必須となっており、研磨剤と被研磨体の間の化学的作用と、研磨粒子の機械的作用を複合させた化学的機械研磨方法(ケミカルメカニカルポリッシング、以下CMPと省略する)が極めて有効な平坦化方法とされている。ハードディスク用のディスクや、光学部品等の精密部品における分野においても平坦化を伴う精密研磨の必要性が増大しており、CMPが極めて重要な技術となっている。
一般に金属膜のCMPでは、アルミナやシリカ等の無機化合物粒子と硝酸第二鉄や過酸
化水素水などの酸化剤との混合物からなるCMPスラリーが利用されているが、硬度の高
い無機化合物粒子で研磨すると金属表面の傷の発生による表面の荒れや金属膜への研磨粒
子の埋め込みの問題がある。また、無機化合物粒子のスラリーは凝集・沈殿しやすく、
凝集した大粒径の無機化合物粒子によるスクラッチ痕の発生が精密研磨の障害となっていた。
【0010】
上記無機粒子からなるCMPスラリーの欠点を改善するために、有機高分子化合物から
なる粒子、または少なくとも炭素を主成分とする粒子を研磨粒子として用いた研磨剤やCMPスラリーが提案されており(特許文献6参照)、具体的な有機高分子化合物としては
、PMMA等のメタクリル樹脂、これと同等の硬度を有するフェノール樹脂、ユリア樹脂
、メラミン樹脂等が例示されている。しかし本方法では分散安定性が必ずしも十分ではなく分散安定剤の併用が必要で、樹脂粒子の硬度も低く、化学的な活性も乏しいことから研磨速度が著しく小さいという問題があった。またスチレン、メタクリレート、ジビニルベンゼンを主体とする共重合体をからなる球状の重合体粒子を研磨粒子として用いることが検討されているが(特許文献7参照)、無機粒子の研磨力と研磨痕の無い研磨用砥粒を実現するには至っていない。
このため研磨力が良好で研磨傷を発生させない精密研磨に適したCMP用の研磨剤が求められており、無機化合物粒子と有機高分子化合物からなる粒子のそれぞれの利点を併せ持つ研磨用粒子が求められている。
【特許文献1】特開平07−265686号公報
【特許文献2】特開2000−212455号公報
【特許文献3】特開平09−208210号公報
【特許文献4】特開2003−26923号公報
【特許文献5】特開平05−066600号公報
【特許文献6】特開平07−086216号公報
【特許文献7】特開2000−204275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、球形で粒子径が揃い、かつ有機高分子成分と無機材料成分とが同一粒子内に均一に混在した有機無機ハイブリッド粒子の製造方法、及び該粒子の水性分散体の製造方法を提供することである。
さらに本発明の目的は、研磨力が良好で研磨傷の発生の少ない研磨用砥粒、及び研磨剤を提供することである。
さらに本発明の目的は、耐摩耗性、耐熱性、耐溶剤、柔軟性、密着性等の良好なコーティング用水性塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは球形で粒径の揃った有機無機ハイブリッド粒子を製造する方法として、水中への自己水分散性樹脂の乳化プロセスを用いて、多価金属アルコキシドやその加水分解縮合物である金属酸化物ゾルを含有した自己水分散性樹脂の乳化液滴を形成し、該液滴中で、多価金属アルコキシドの加水分解、重縮合によるゲル化反応を起こすことによって、有機無機ハイブリッド粒子を形成できることを見いだした。
【0013】
即ち、本発明は、(1)多価金属アルコキシドまたは多価金属アルコキシドの縮合生成物と、水または水混和性有機溶剤と、必要に応じて加えられた塩基性化合物とを含有する混合物を作製する混合工程と、(2)前記多価金属アルコキシド又は多価金属アルコキシドの縮合生成物を加水分解、及び縮合させる加水分解縮合工程と、(3)前記混合物を酸価50〜200の自己水分散性樹脂とともに水中に乳化し乳化液滴を形成する乳化工程と、(4)前記乳化液滴中の多価金属アルコキシド及びその加水分解生成物の加水分解、縮合を進行させ前記液滴を粒子化する粒子化工程を有し、前記酸価50〜200の自己水分散性樹脂は前記混合工程または前記乳化工程において添加されることを特徴とする有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法を提供する。
さらに本発明は前記有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法によって製造された有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体から、液体成分を除去する工程を有することを特徴とする有機無機ハイブリッド粒子の製造方法を提供する。
さらに本発明は前記有機無機ハイブリッド粒子の製造方法によって製造された有機無機ハイブリッド粒子から有機成分を除去することによって得られることを特徴とする無機粒子を提供する。
さらに本発明は前記有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法によって製造された有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体を主成分として含有することを特徴とする研磨剤を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本製造方法においては、多価金属アルコキシドの加水分解縮合工程と、該多価金属アルコキシドと自己水分散性樹脂を含有する混合物を乳化する工程を有するため、多価金属アルコキシドの加水分解物や縮合物を樹脂中に含んだ、球形度に優れた粒子を形成することができる。本発明で用いる酸価50〜200の自己水分散性樹脂は、分散性が良好で、
水中で極めて安定した乳化状態を形成する。このため乳化状態の維持のための乳化剤が不溶であり、強力な攪拌をせずとも樹脂中に多価金属アルコキシドやその加水分解生成物縮合物を取り込んだ状態で、安定に乳化が進行する。このため従来知られている方法に比べてより真球に近い粒度分布の鋭い粒子を得ることが可能である。
また本発明の製造方法で用いる自己水分散性樹脂の酸価は50〜200であるため、親水性である多価金属アルコキシドの加水分解生成物や縮合物と、容易に一様な混合状態を形成することができる。このため粒子が形成される過程で有機高分子部分と無機材料部分が偏らず、粒子内に金属酸化物ゾルが均一に分布した乳化液滴を経て、金属酸化物ゲルと自己水分散性樹脂とが均一に分布した有機無機ハイブリッド材料を作製することができる。
【0015】
さらに、本発明の有機無機ハイブリッド粒子から有機成分を除去して得られる無機粒子は、有機部分と無機部分のナノスケールの海島構造から有機部分が除去された多孔質粒子で、一般的な気相法や湿式法で得られる金属酸化物微粒子と比較して極めて緻密なポーラス構造を有することから、従来にない無機粒子の物性が期待できる。
さらに、本発明の有機無機ハイブリッド粒子を主成分として含有する研磨剤は、良好な研磨力を有し、かつ研磨傷の発生がなく、CMP用の研磨剤として精密研磨に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明における有機無機ハイブリッド粒子とは、有機高分子部分と無機材料部分とが同一粒子内に均一に分布した有機無機複合材料粒子であって、無機材料としての特性である耐摩耗性、表面硬度、高弾性率等の特徴と、有機高分子としての特性である柔軟性、加工性、造粒性等の特徴をバランス良くを併せ持つ粒子である。
本発明における有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法は、(1)多価金属アルコキシドまたは多価金属アルコキシドの縮合生成物と、水または水混和性有機溶剤と、必要に応じて加えられた塩基性化合物とを含有する混合物を作製する混合工程と、(2)前記多価金属アルコキシド又は多価金属アルコキシドの縮合生成物を加水分解、及び縮合させる加水分解縮合工程と、(3)前記混合物を酸価50〜200の自己水分散性樹脂とともに水中に乳化し乳化液滴を形成する乳化工程と、(4)前記乳化液滴中の多価金属アルコキシド及びその加水分解生成物の加水分解、縮合を進行させ前記液滴を粒子化する粒子化工程を有し、前記酸価50〜200の自己水分散性樹脂は前記混合工程または前記乳化工程において添加されることを特徴とする。
【0017】
以下本発明の製造方法に使用する主要な原料について詳細に説明する。
本発明の有機無機ハイブリッド粒子に使用される樹脂は、50から200の酸価を有する自己水分散性樹脂である。本発明において自己水分散性樹脂とはカルボキシル基の少なくとも一部が塩基により中和されることにより、水に対して分散性あるいは溶解性を有する樹脂である。分散性、溶解性の程度は自己水分散性樹脂の酸価と塩基による中和量によって調整することができる。自己水分散性樹脂の酸価が50未満では塩基で中和したときに該樹脂の分散性が不足し易く、後述する製造方法における有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体形成が不十分となる傾向がある。酸価が200を越えると、塩基で中和したときに同じく後述する製造方法において樹脂が水に膨潤や溶解しやすく、目的とする有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体が得にくくなる傾向がある。酸価は70〜200の範囲ががさらに好ましく、特に酸価が100から200の範囲が本発明において最も好適である。
【0018】
自己水分散性樹脂としては天然樹脂、合成樹脂等特に制限はないが、後述の製造方法に対して好適な樹脂として、塩基性化合物が存在しない状態で有機溶剤可溶の樹脂が好ましく、具体的にはアクリル酸樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは有機無機ハイブリッド粒子形成後に、必要に応じて公知の方法で三次元架橋を行う事が可能である。
また樹脂の分子量範囲については特に制限はないが、1000以上10万以下の分子量のものがより好ましい。樹脂と多価金属アルコキシドの比率は特に制限はないが、質量比で1:10〜10:1の範囲が好ましい。
【0019】
これらの中で造粒のし易さの点ではアクリル樹脂が好ましい。アクリル酸樹脂としては、例えばスチレン、置換スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーと、(メタ)アクリル酸との共重合体が、樹脂の粒子化と多価金属イオンによる架橋の点で好適である。
具体的にはスチレン;α−メチルスチレン等の置換スチレン;アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸ブチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル;及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも一つ以上のモノマーと、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれる少なくとも一つ以上のモノマーを含む(メタ)アクリル酸系共重合体が好ましい。
【0020】
本発明の多価金属アルコキシドとは、金属に一つ以上のアルコキシル基が直接結合した化合物及びそれらの重縮合物を指しており、金属が珪素の場合はオルガノシロキサン、シランカップリング剤とも呼ばれる。
本発明において使用する多価金属アルコキシドの金属としては2価以上の多価金属で、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、セリウム、カルシウム、バリウム、マンガン、亜鉛、ニッケル、スズ、銅、鉄、コバルト、ホウ素、アルミニウム、タングステン、ビスマス、モリブデン、ニオブ、イットリウム、ストロンチウム、ガリウム、ゲルマニウムなどがあるがこれらに限定されるものではなく、少なくとも1種類以上含むことができる。
前記の多価金属と組み合わせるアルコキシドとしては、金属に対して少なくとも一つ以上のアルコキシ基(OR)が結合し、アルコキシ基(OR)のRはアルキル基・アルキレン基・アリル基・ビニル基・ビニルベンジル基、(メタ)アクリレート基等任意に選択すればよいが、炭素数1〜4のアルキル基が一般的で利用しやすい。また金属には、直接他の官能基が結合してもよく、一例として水酸基、アルキル基、アルキレン基・アリル基・ビニル基・ビニルベンジル基、(メタ)アクリレート基、カルボキシル基、アセチルアセトン基・アセト酢酸エステル基等の配位子等がある。また、必要に応じてそれらの縮合化合物も使用可能である。具体的な化合物例としては以下があるがこれらに限られたものではない。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
【化12】

【0033】
【化13】

【0034】
【化14】

【0035】
本発明の製造方法に使用する塩基性化合物としては、一価の塩基が好ましく、例えばリチウム・カリウム・ナトリウム等のアルカリ金属、アンモニア、有機アミン・アルコールアミン・モルホリン・ピリジン等の有機塩基等が用いられる。中和用の塩基としてはアルカリ金属、またはアンモニア、または有機アミンが好ましい。
一般に塩基性化合物は多価金属アルコキシドに対して加水分解触媒として作用するので、多価金属アルコキシドの加水分解を抑制する効果を有するモノエタノールアミン・ジエタノールアミン・トリエタノールアミン等のアルコールアミンを用いる方が乳化時に多価金属オキシドの加水分解が抑制され、樹脂と多価金属オキシドがより均一に混じるようになるため好ましい。さらに本発明の有機無機ハイブリッド粒子を例えば研磨用砥粒として、特に半導体等に使用する場合にはアルカリ金属イオン成分はなるべく少なくし、アルコールアミン等を用いた方が、金属イオンの残留による半導体特性への悪影響を排除できるので好ましい。
一価の塩基の使用量は、自己水分散性樹脂のカルボキシル基の10%以上好ましくは50モル%以上に相当する量を用いるのが好ましい。
【0036】
前記製造方法の際に用いられる自己水分散性樹脂を溶解するための水混和性有機溶剤としては、例えばアセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、酢酸エチルエステル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、アミド類等、樹脂を溶解して、単独あるいは他の有機溶剤との組合せで水混和性があるものであれば使用可能である。
水混和性有機溶剤としてアルコールを併用することにより、乳化時に多価金属アルコキシドの加水分解を抑制し、樹脂と多価金属アルコキシドが均一に混じり易くなるため好ましい。特に自己水分散性樹脂成分がアクリル系樹脂の場合にはケトン系溶剤とアルコール系溶剤から、それぞれ少なくとも1種類以上を選んで組み合わせて用いることにより良好な水性分散体を得ることができる。
【0037】
以下本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、(1)多価金属アルコキシドまたは多価金属アルコキシドの縮合生成物と、水または水混和性有機溶剤と、必要に応じて加えられた塩基性化合物とを含有する混合物を作製する混合工程と、(2)前記多価金属アルコキシド又は多価金属アルコキシドの縮合生成物を加水分解、及び縮合させる加水分解縮合工程と、(3)前記混合物を酸価50〜200の自己水分散性樹脂とともに水中に乳化し乳化液滴を形成する乳化工程と、(4)前記乳化液滴中の多価金属アルコキシド及びその加水分解生成物の加水分解、縮合を進行させ前記液滴を粒子化する粒子化工程を有し、前記酸価50〜200の自己水分散性樹脂は前記混合工程または前記乳化工程において添加されることを特徴とする。
上記製造工程に関しては、加水分解縮合工程を省略して、代わりに混合工程において予め加水分解、及び縮合を行った多価金属アルコキシド加えてもよい。またこのために混合工程に先立って、多価金属アルコキシドに対して予め加水分解、及び縮合を行う工程を加えても良い。
また乳化工程については具体的な乳化手法に応じて以下の2つの方法を用いることができる。すなわち
(I)混合工程で作製する混合物の溶剤として水混和性有機溶剤を使用し、前記混合物に塩基性化合物と水を加えて乳化を行う方法。
(II)混合工程で作製する混合物の溶剤として水を使用し、前記混合物に塩基性化合物を含有させ、塩基性化合物の少なくとも一部を揮散させるか、または前記混合物中に酸性化合物を添加させることによって、前記混合物の乳化を行う方法。
さらに(I)の方法には塩基性化合物存在下において、樹脂を含んだ混合物に徐々に水を加えて乳化する転相乳化法と、塩基性化合物を含んだ水中に樹脂を含んだ混合物を添加する方法とがある。
【0038】
以下に本発明の製造方法を各工程別にさらに詳細に説明する。
(a)混合工程
本発明の混合工程においては、必要に応じて酸価50〜200の自己水分散性樹脂と、多価金属アルコキシドと、溶剤として水または水混和性有機溶剤と、さらに必要に応じて塩基性化合物を含有する混合物を作製する。
自己水分散性樹脂を添加するとき、多価金属アルコキシドの配合比は、有機無機ハイブリッド粒子の用途に応じて適宜調整できるが質量比で1:100〜100:1の範囲が好ましい。特に研磨剤として用いるときは、自己水分散性樹脂と多価金属アルコキシドの比率は、質量比で1:100〜10:1の範囲が好ましい。溶剤として水混和性有機溶剤を用いるときの溶剤使用量は、本発明における効果を達成すれば特に規定されないが、樹脂/該有機溶剤の重量比が1/1〜1/20となるような量が好ましい。また溶剤として水を用いて塩基性化合物を添加し自己水分散性樹脂を溶解して均一な混合物を形成するときは、自己水分散性樹脂の酸価に応じて該樹脂を溶解するのに必要な量の塩基性化合物を添加する。
【0039】
本製造方法においては多価金属アルコキシドが樹脂に取り込まれる前に水と接触すると、加水分解が過度に進行して凝集物を生じやすくなるので、均一な有機無機ハイブリッド粒子を作製するためには前述のアルコール系溶剤のような加水分解抑制剤の使用が好ましい。加水分解抑制剤としては、塩基としても作用するアルコールアミンや樹脂を溶解する溶剤としても作用するアルコールの他に、例えば、アセチルアセトン・アセト酢酸エステル・ジアセト酢酸アルキルエステルの如きキレート化剤、アセトイン、ジエチレングリコール・ポリエチレングリコール等のポリオール等を好適に用いることができる。
水混和性有機溶剤としてアルコールを併用することにより、脱アルコール反応である多価金属アルコキシドの加水分解が抑制され、樹脂と多価金属アルコキシドが均一に混じり易くなるため好ましい。
なお、必要に応じて無機または有機の不溶性の粒子を混合物中に添加してもよい。これら粒子の添加にあたっては、添加後に前記混合物中に分散させるか、予め混合物中の自己水分散性樹脂、溶剤と相溶する樹脂、溶剤中に分散させたものを前記混合物に添加して用いることができる。このように別途用意された無機または有機粒子を用いることにより、これら粒子をコアにして表面を本発明のハイブリッド体で被覆して粒子化をより容易に行わせたり、製造コストを下げたりすることができる。
【0040】
(b)加水分解・縮合工程
本発明の製造方法の加水分解縮合工程においては、必要に応じて自己水分散性樹脂、溶剤としての水または水混和性有機溶剤、酸触媒または塩基触媒のもとで混合物中の多価金属アルコキシドの加水分解、及び縮合を行わせる。酸触媒としては塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸等のカルボン酸類等公知のものが使用可能であるが酸価50から200の自己水分散性樹脂も酸触媒として機能しうる。また塩基触媒としては公知のものが使用されるが、酸価50から200を有する自己水分散性樹脂を水性分散体とするための乳化用塩基の一部を塩基触媒としてもよい。
加水分解縮合工程においては、時間、温度条件は混合物の配合に応じて適宜設定できるが、乳化工程前に充分な加水分解、縮合を行わせるためには室温以上で、3〜48時間が好ましい。多価金属アルコキシドの加水分解、および縮合は、乳化工程と同時に行っても良いが、乳化工程前に混合物中で加水分解縮合工程を充分進行させることにより、無機材料と有機高分子がより均一に混合した粒子を形成することができる。また水性分散体の保存安定性も良好となる。
【0041】
加水分解縮合工程の結果、多価金属アルコキシドからその加水分解生成物、縮合生成物として金属酸化物ゾルが形成される、金属酸化物ゾルは親水性であるが酸価50〜200の自己水分散性樹脂とは相溶性が良好で、混合物内に一様に分布して自己水分散性樹脂と混ざり合う。加水分解縮合工程においては金属酸化物ゾルの縮重合が進みすぎて金属酸化物ゲルが形成されることは、以後の乳化工程の障害となりやすいため好ましくない。
加水分解縮合工程で混合物中の多価金属アルコキシドの加水分解縮合を行うかわりに、あらかじめ形成された多価金属アルコキシドの加水分解縮合生成物を混合工程に添加して、自己水分散性樹脂と該縮合物の混合物を形成することもできる。該加水分解縮合生成物を得るには水混和性有機溶剤中で多価金属アルコキシドの加水分解、および縮合を予め行って混合工程で添加すればよい。
【0042】
(c)乳化化工程
本発明の製造方法の乳化化工程においては、加水分解縮合工程で形成された自己水分散性樹脂と多価金属アルコキシドの加水分解縮合物である金属酸化物ゾルとの均一混合物を水中に乳化する。混合物が溶剤として水混和性有機溶剤を含有し、自己水分散性樹脂と多価金属アルコキシドとともに均一混合物を形成しているときは、該混合物中に一定中和率の塩基性化合物を加えた後、攪拌しつつ水を徐々に加えて水中に該混合物を乳化させる。
乳化工程において自己水分散性樹脂または自己水分散性樹脂溶液を添加するときは、攪拌時磁に多価金属アルコキシドまたはその加水分解縮合物が樹脂中に取り込まれる。酸価50〜200の自己水分散性樹脂はカルボキシル基の少なくとも一部が塩基性化合物で中和されているため分散性が高く、金属酸化物ゾルを含有したまま安定した乳化状態となる。
さらに塩基性化合物添加時に塩基による中和率を制御することにより粒子径の制御を行うことが可能である。すなわち塩基の使用量が多いほど粒子の粒径は小さくすることが可能で、使用目的によって必要であれば100モル%以上に相当する量の塩基を添加することによって、遊離塩基量が増加し微粒径で安定した有機無機ハイブリッド粒子の水分散体をうることができる。塩基の添加量を少なくすると、有機無機ハイブリッド粒子の粒子径をより大きくすることができる。
【0043】
一方乳化工程前の混合物が、溶剤として水を使用し塩基性化合物を含有し、自己水分散性樹脂と多価金属アルコキシドを含有した均一混合物となっているときは、混合物中の塩基性化合物を揮散または酸性化合物で中和して自己水分散性樹脂のカルボキシル基の中和率を下げ、該樹脂の溶解度を低下させると徐々に樹脂の疎水性基が内側に向き、親水性基が外側に向いたエマルジョンを形成し、該樹脂を含む混合物が水中に乳化するようになる。
【0044】
(d)粒子化工程(ゲル化工程)
上記のように形成され水中に乳化された混合物の液滴中で、含有される多価金属アルコキシドの加水分解と縮合、または該アルコキシドの加水分解縮合生成物のさらなる縮合が起こりゲル化が進行する。
乳化された自己水分散性樹脂、多価金属アルコキシドを含有する混合物が溶剤として水混和性有機溶剤を含有するときは、該有機溶剤及び加水分解縮合によって生成するアルコールを留去することによって一層ゲル化が進行し、金属酸化物ゲルと樹脂が均一に混合した有機無機ハイブリッド粒子が形成される。
乳化された自己水分散性樹脂、多価金属アルコキシドを含有する混合物が塩基性化合物と溶剤として水を含有し、混合物中の塩基性化合物の留去によって該樹脂の溶解性を低下させることにより前記混合物を乳化させているときは、さらに多価金属アルコキシドの加水分解重縮合が進行し金属酸化物ゲルが形成される。塩基性化合物の留去あるいは中和をさらに進め、加水分解縮合によって生成するアルコールを留去することによって一層ゲル化が進行し、金属酸化物ゲルと樹脂が均一に混合した有機無機ハイブリッド粒子が形成される。
【0045】
本願発明の製造方法においては、上記製造方法によって得られた有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体をさらにオートクレープ等で加熱する加熱工程を設けることによって、ゲル化をさらに進行させ、液体成分を少なくとも一部を除去してから、さらに表面硬度の増した、金属酸化物ゲルを含有する有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体を製造することもできる。有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の加熱は、未反応の多価金属アルコキシドを更に有機無機ハイブリッド粒子の表面に加水分解生成物として積層させるため、成分の傾斜構造を有する有機無機ハイブリッド粒子とすることが可能となる。一方、加熱工程に先立ち未反応の多価金属アルコキシドを除去することにより、水性分散体の分散安定性を極めて向上させることができ、また傾斜構造を持たない均一な内部構造を有する有機無機ハイブリッド粒子を製造するこができる。
有機無機ハイブリッド粒子の製造を行うには以上に記載の各工程を組み合わせて行えばよい。より具体的な製造方法として以下に例をあげる。
【0046】
製造工程例1
自己水分散性樹脂を水混和性有機溶剤溶液に溶解し、この時点で必要に応じて無機または有機の不溶性の粒子を混練によって分散し、酸触媒または塩基触媒を添加して、多価金属アルコキシドまたは多価金属アルコキシドの縮合生成物を加えるか、それらと塩基の水混和性有機溶剤溶液を加えて攪拌する。多価金属アルコキシドの加水分解、縮合を行わせて金属酸化物ゾルを形成した後、塩基と水を少しずつ加えて樹脂の乳化と、さらなる加水分解縮合生成物の加水分解、縮合を進行させて該加水分解縮合生成物をゲル化し、水混和性有機溶剤や加水分解過程で生成したアルコールを留去して、樹脂と多価金属アルコキシドの有機無機ハイブリッド化を行う。多価金属アルコキシドはそのままでも酸価50〜200の自己水分散性樹脂の樹脂溶液中で加水分解や縮合反応をしてゲル化が進行し、有機無機ハイブリッド粒子となるが、有機溶剤を留去することによって一層ゲル化が進行し、さらに自己水分散性樹脂も硬化して強固な有機無機ハイブリッド粒子となる。多価金属アルコキシドの加水分解による金属酸化物ゾルの形成は、乳化の前に行うことが好ましいが、乳化と同時あるいは乳化の後におこなうこともできる。
【0047】
製造工程例2
酸触媒または塩基触媒を含有する水または水混和性有機溶剤中に、多価金属アルコキシドまたはその縮合物を加えて適当な時間・温度で加水分解、縮合し、金属酸化物ゾルを形成する。その後自己水分散性樹脂または該樹脂の樹脂溶液を加えて溶解する。その後さらに塩基と水を少しずつ加えて樹脂を乳化する。乳化液滴中の加水分解縮合生成物はそのままでもゲル化が進行するが、樹脂溶液中の溶剤を留去することにより一層ゲル化が進行し、粒子中に自己水分散性樹脂と金属酸化物ゲルが均一に分布した有機無機ハイブリッド粒子が形成される。自己水分散性樹脂の添加は水、塩基性化合物の添加と同時に行って、一気に乳化を行っても良い。
【0048】
製造工程例3
塩基性化合物の添加により自己水分散性樹脂を溶解した水溶液中で、必要に応じてアルコールを加えてから多価金属アルコキシドを加水分解し、樹脂溶液中に金属酸化物ゾルを含む混合物を形成する。必要に応じて水を加えて希釈し、その後で樹脂を不溶化させて前記混合物を水中に乳化させる。乳化液滴中の加水分解縮合生成物はそのままでもゲル化が進行するが、樹脂溶液中の溶剤を留去することにより一層ゲル化が進行し、粒子中に自己水分散性樹脂と金属酸化物ゲルが均一に分布した有機無機ハイブリッド粒子が形成される。
【0049】
本発明の製造方法によって製造される有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体に含有される有機無機ハイブリッド粒子の硬度や機械的強度を向上させることにより、研磨剤、保護コート用塗料、あるいは各種塗料用添加物としての実用性が向上する。
本発明の有機無機ハイブリッド粒子は、樹脂と多価金属アルコキシドの加水分解縮合物をハイブリッド化することによって機械的強度を向上させている。しかし硬度や機械的強度をより向上させるためには以下のような処置を行うことが好ましい。
有機無機ハイブリッド粒子の硬度を高くする場合には、上記モノマーの組み合わせにおいて樹脂のガラス転移温度は室温以上、できれば50℃以上であることが好適である。一方(メタ)アクリル酸エステルのようなガラス転移温度の低いモノマーを多量に使用すると前記粒子の硬度は低下する。
【0050】
本発明の有機無機ハイブリッド粒子の硬度をより良好にして、例えば研磨能力に優れかつ研磨傷のない研磨用砥粒として好適なものとするためには、前記自己水分散性樹脂に加えさらにフェノール樹脂を使用するものであることが好ましい。
一般にフェノール樹脂としては、フェノール性化合物とアルデヒド化合物とを公知一般の方法により反応せしめ製造することができる。フェノール性化合物としてはフェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール等及びそれらの誘導体の単独または混合物があげられ、アルデヒド化合物としてはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、パラホルム、グリオキザール等の単独または混合物があげられる。
【0051】
本発明の製造方法にて用いることが出来るフェノール樹脂としては、フェノール性化合物とアルデヒド化合物をモル比でホルムアルデヒド過剰条件でアルカリ触媒を用いて得られるレゾールタイプと、フェノール性化合物過剰条件で酸性触媒を用いて得られるノボラックタイプとがあるが、ノボラックタイプのフェノール樹脂を使用すると併用する酸価50から200の自己水分散性樹脂と、多価金属アルコキシドの反応ゲルとの組合せにおいて得られる有機無機ハイブリッド粒子を微粒子化し易く、またと分散安定性が向上するので好ましい。フェノール樹脂と酸価50から200の自己水分散性樹脂の好ましい比率は、目的とする粒子径と硬度に応じて適宜最適な比率とすればよい。フェノール樹脂の比率が高まると硬度は増すが、粒子径は大きくなる傾向があり、逆に酸価50から200の自己水分散性樹脂が増すとより微粒子になるが硬度が減少する傾向がある。
これらフェノール樹脂は単独で使用したのでは自己水分散性が不足しており、水中へ安定した乳化を行うことは出来ないが、酸価50〜200の自己水分散性樹脂と併用することにより、前記混合工程において該自己水分散性樹脂と相溶して水中に安定して乳化する。
【0052】
前記フェノール樹脂の硬化剤としては、レゾールタイプにはp−トルエンスルホン酸、リン酸等の有機または無機酸を、ノボラックタイプにはヘキサメチレンテトラミン等のアミンを用いることができ、これらを前記フェノール樹脂とともに添加して使用することができる。
【0053】
有機無機ハイブリッド粒子の硬度や機械的強度を向上させるには、さらに(a)あらかじめ架橋性モノマーと開始剤又は触媒を前記混合工程で添加することにより、有機無機ハイブリッド粒子に取り込み、粒子化後に架橋するか、(b)あるいは有機無機ハイブリッド粒子化時に多価金属イオンを取り込んで、自己水分散性樹脂のカルボキシル基の一部を架橋させたいわゆるアイオノマー樹脂化をさせることによって、より強靱な有機無機ハイブリッド粒子とする事が出来る。
【0054】
(a)架橋性モノマーの添加
前記架橋性モノマーとしては、自己水分散性樹脂のカルボキシル基と反応可能な多官能性の反応性基を有する化合物を用いることができ、オキサゾリン径化合物、エポキシ基やイソシアネート基を二官能以上有する化合物が架橋剤として利用可能である。
具体的には、例えばオキサゾリン架橋剤として、2、2‘−ビス(2−オキサゾリン)、2、2’−ビス(3−メチル−2−オキサゾリン)、1、4−ビス(2−(4−メチル−5−フェニルオキサゾリン))ベンゼン、2、2’−(1、4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2、2’−(1、3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)があげられる。
【0055】
イソシアネート架橋剤としては、たとえばトリレンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネート(PPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、トリジンジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、テトラメチレンキシレンジイソシアネート(TMXDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ト
リス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、ウンデカントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1、8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、ビシクロヘプタントリイソシアネート、およびそれらのウレタン変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体、ブロックイソシアネート、それらの混合物等が挙げられる。
【0056】
エポキシ架橋剤としては、たとえばエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリン−1、3ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂が挙げられる。
なかでも3級アミノ窒素原子を持つ4官能性エポキシ樹脂、具体的にはN、N、N′、N′−テトラグリシジルm−キシレンジアミンまたは1、3、−ビス(N、N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンは、乳化時の粒子への取り込みが良好で、かつ架橋温度も70℃前後で可能なことから本発明においてより好ましい。これらを乳化工程以前に混合物に添加しておき乳化時に粒子内に取り込み、しかる後に加熱して粒子内で架橋反応を行うことによって硬化性をより向上させた粒子を得ることが可能である。
【0057】
(b)アイオノマー樹脂化
本発明で用いる樹脂の多価金属イオンによるアイオノマー樹脂化は、自己水分散性樹脂中のカルボキシル基と多価金属化合物の金属との反応によって容易に生じる。多価金属化合物としては、酸化物、無機・有機酸塩、金属キレート等を用いることが出来るが、有機溶剤に可溶な有機酸塩または金属キレートがより好適である。
当該多価金属イオンの価数は、2以上であれば良いが、硬度の点で好ましくは3以上が
好ましい。多価金属として、カルシウム、バリウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、ニ
ッケル、スズ、銅、鉄、コバルト、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、セリウム、タ
ングステンなどがあるがこれらに限定されるものではなく、特にバリウム、カルシウム、
マグネシウム、亜鉛、アルミニウムからなる群のうちから1種以上を選定することが好ま
しい。
多価金属化合物としては有機溶媒に可溶性であれば特に制限はなく、具体的には前述の2価以上の価数を有する多価金属と、酢酸、プロピオン酸、酪酸、等の有機カルボン酸とから得られるアシレート類、アセチルアセトン、プロピオニルアセトンに代表されるβ−ケトン類、アセト酢酸アルキルエステル、ジアセト酢酸アルキルエステルに代表されるβ−ケト酸エステル類等のキレート化剤とから得られるキレート類の塩が好適である。またこれらの多価金属塩は併用して用いてもよい。
多価金属イオンを介して架橋した際の樹脂の架橋率は、樹脂の酸価、分子量と多価金属
イオンの価数によって最適なアイオノマー樹脂が得られるよう調整することができる。
【0058】
前記製造方法で得られた有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体は、そのまま分散体として利用することもできるが、水や有機溶剤等の液体成分を完全に除いて粉体として用いても良い。また粉体を更に数百度以上の温度で焼成したり、有機成分を湿式酸化したり、有機溶剤で可溶成分を除去することによって非常に多孔質で表面活性の大きい無機粒子が得られる。特に多価金属アルコキシドとは異なる元素の多価金属イオンで粒子がイオン架橋された有機無機ハイブリッド粒子の焼成を行うことにより、異種金属が均一にドープされた多孔質の無機粒子を容易に得ることが可能になる。
【0059】
上記の有機無機ハイブリッド粒子を含有する水性分散体から、本発明の研磨剤を作製するには、有機無機ハイブリッド粒子に加えて補助的に金属酸化物のような親水性表面を有する無機の砥粒、酸化剤やキレート化合物の如き溶解剤、無機塩等の研磨促進剤、pH調整剤、エチレングリコール・ジエチレングリコール・グリセリンのようなポリオールからなる乾燥防止剤、防菌・防かび剤、表面張力調整剤等の既知の添加助剤を加えて行うことが出来る。
前記した製造方法によって得られた有機無機ハイブリッド粒子を含む水性分散体は、これをそのまま水性の研磨剤スラリーとして用いる場合は出来るだけ乳化後に水より低い沸点を有する有機溶剤を除去する工程を導入して調製しておくことが望ましく、これによって研磨用粒子の溶解・膨潤がなくなり、優れた研磨能力と安定した水性分散体が得られる。
なお、本発明の有機無機ハイブリッド粒子は研磨剤における砥粒として用いられるほか、研磨板や研磨シート等の砥粒としても用いられ、優れた研磨能力と研磨傷の少ない研磨を可能にする。
【0060】
上記の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体から、本発明の水性塗料を作製するには、水性分散体そのものか水性分散体から有機溶剤成分を除去したものに、染顔料、pH調整剤、レベリング剤、バインダー樹脂、防菌・防かび剤、表面張力調整剤等の既知の添加助剤を加えて作製することが出来る。
本発明により得られる有機無機ハイブリッド粒子及び有機無機ハイブリッド粒子から有機成分を除去して得られる無機粒子は、例えばスペーサー、液体クロマトグラフィー充填剤、化粧品、樹脂組成物、塗料、磁性材料、臨床診断薬等の幅広い分野で好適に使用され得る。
【実施例】
【0061】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中における「部」は『質量部』を表わす。
(実施例1)
スチレンアクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/アクリル酸2エチルヘキシルエステル=77/13/10;酸価100;分子量4万)10部をメチルエチルケトン50部に溶解する。得られた樹脂溶液にCe(O−i−C10部、メチルエチルケトン40部、イソプロピルアルコール40部、トリエタノールアミン2.7部(自己水分散性樹脂のカルボキシル基の中和率100%に相当する量)の混合溶液を撹拌しながら加えた後、純水420部を毎分5mlの速度で滴下し、分散液を得た。その後ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールと水の一部を留去して固形分10%の水分散体を得た後、オートクレーブ中で80℃24時間加熱攪拌後、遠心分離で粗大粒子を除去して有機無機ハイブリッド粒子水性分散体とした。得られた有機無機ハイブリッド粒子の体積平均粒径は120nmで粒径の均一性が良く、沈降物も無く分散は安定であった。
これを市販の研磨装置と研磨パッドを用いて、ニッケル−リン無電解メッキを施した3.5インチのアルミニウム合金磁気ディスク基板を、基板回転数50rpm、研磨パッド加重70g/cm、定盤回転数回転数50rpm、研磨剤供給量15ml/分、研磨時間10分の条件で基板の研磨を行った。
研磨速度は150nm/分で、研磨したディスクを乾燥後、暗室内でスポットライトを当て、目視で研磨傷の有無を観察した結果、研磨傷は全く認められなかった。
【0062】
(実施例2)
アクリル酸樹脂(アクリル酸/アクリル酸メチル/アクリル酸2エチルヘキシルエステル=13/82/5;酸価98;分子量4万)10部をメチルエチルケトン50部に溶解する。得られた樹脂溶液にTi(O−i−C10部、メチルエチルケトン40部、イソプロピルアルコール40部、トリエタノールアミン2.6部(自己水分散性樹脂のカルボキシル基の中和率100%に相当する量)の組成の混合物を加えた後、撹拌しながら純水420部を毎分5mlの速度で滴下し、分散液を得た。その後ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンとエタノールと水の一部を留去して固形分10%の水分散体を得た後、オートクレーブ中で80℃24時間加熱攪拌後、遠心分離で粗大粒子を除去して有機無機ハイブリッド粒子脂粒子水性分散体とした。得られた有機無機ハイブリッド粒子の体積平均粒径は1.5μmで粒径の均一性が良く、沈降物も少なく分散は安定であった。得られた分散体を完全に乾燥し、400℃で焼成を行い、有機成分が抜けた酸化チタンの多孔質パウダーが得られた。
【0063】
(実施例3)
Si(O−C12部、メチルエチルケトン22部、エタノール10部、アセチルアセトン11部、トリエタノールアミン4部(自己水分散性樹脂のカルボキシル基に対して中和率100モル%相当量)、ジエチレングリコール10部、純水160部からなる組成の混合物を攪拌しながらスチレンアクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/メタアクリル酸=70/17/13;酸価161;分子量4万3千)10部を加え、乳化物を得た。その後ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンとエタノールとアセチルアセトンと水の一部を留去して固形分10%、水分散体を得た後、オートクレーブ中で80℃24時間加熱攪拌後、遠心分離で粗大粒子を除去して有機無機ハイブリッド粒子脂粒子水性分散体とした。得られた有機無機ハイブリッド粒子を実施例1と同様にして研磨剤を得た。得られた有機無機ハイブリッド粒子は150nmの体積平均粒子径を有しており、研磨用粒子の有機無機ハイブリッド粒子の体積平均粒径は150nmで粒径の均一性が良く、室温で6ヶ月間放置しても凝集物の発生も少なく分散が安定であった。
実施例1と同様にして研磨を行った結果、研磨速度は140nm/分で、研磨したディスクを乾燥後、暗室内でスポットライトを当て、目視で研磨傷の有無を観察した結果、研磨傷は全く認められなかった。
【0064】
(比較例1)
実施例1のCe(O−i−Cを除く以外は同様の製造方法によって樹脂乳化物からなる研磨剤を得た。得られた研磨剤中の樹脂粒子の平均粒子径は90nmであった。得られた研磨剤を室温で6ヶ月間放置後も凝集物の発生は認められなかった。
これを実施例1と同様にして研磨実験を行ったところ、ほとんど研磨効果を示さなかっ
た。
【0065】
(比較例2)
特開2000−204275号公報の実施例1に記載された方法を用いて以下のように重合体粒子の水性分散体を得て、研磨剤を作製した。
すなわち、重合用4つ口フラスコに、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリ
ウム)20部を溶解させた蒸留水800部、並びにスチレン65部、純度55%のジビニ
ルベンゼン(残部はエチルビニルベンゼン)30部及びメタクリル酸5部を投入し、窒素
ガスでパージしながら70℃に昇温したところで過硫酸アンモニウムの5%水溶液20部
を添加し、4時間重合してスチレン/メタクリル酸/ジビニルベンゼン共重合体からなる
球状の重合体粒子を含有する水性分散体を得た。重合体粒子の平均粒径は350nmであ
った。この水性分散体に含まれる全固形分比を10.0重量%に調整し、研磨促進剤と水
を実施例1と同様の配合比で添加して、遠心分離を行い研磨剤を得た。得られた研磨剤を
室温で6ヶ月間放置後若干の凝集物の発生が認められた。
これを実施例1と同様にして研磨実験を行ったところ、研磨速度は120nm/分で、研磨したディスクを乾燥後、暗室内でスポットライトを当て、目視で研磨傷の有無を観察した結果、研磨傷が若干認められた。
【0066】
以下に多価金属化合物を用いてアイオノマー樹脂化を行った例を示す。
(実施例4)
Si(O−C12部、アセチルアセトンセリウム塩0.6部(自己水分散性樹脂のカルボキシル基に対して架橋率20モル%相当量)、メチルエチルケトン22部、エタノール10部、アセチルアセトン11部、トリエタノールアミン4部(自己水分散性樹脂のカルボキシル基に対して中和率100モル%相当量)、ジエチレングリコール10部、純水160部からなる組成の混合物を攪拌しながらスチレンアクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/メタアクリル酸=70/17/13;酸価161;分子量4万3千)10部を加え、乳化物を得た。その後ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンとエタノールとアセチルアセトンと水の一部を留去して固形分10%の水分散体を得た後、オートクレーブ中で80℃24時間加熱攪拌して有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体とした。
得られた研磨用粒子水性分散体を実施例1と同様にして研磨剤を得た。得られた研磨剤
粒子は125nmの平均粒子径を有しており、室温で6ヶ月間放置しても凝集物の発生も
少なく分散が安定であった。
実施例1と同様にして研磨を行った結果、研磨速度は145nm/分で、研磨したディスクを乾燥後、暗室内でスポットライトを当て、目視で研磨傷の有無を観察した結果、研磨傷は全く認められなかった。
【0067】
以下に架橋剤を使用した実施例を記載する。
(実施例5)
スチレンアクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/メタアクリル酸の共重合体;酸価161;分子量4万3千)5部、メチルエチルケトン20部、イソプロピルアルコール20部の混合溶液にSi(O−C20部を加え、撹拌しながらトリエタノールアミンの10%水溶液を加え、60℃6時間撹拌した後、更に30℃で18時間撹拌して半透明分散液を得た。その後撹拌しながら架橋剤N、N、N´、N´−テトラグリシジルm−キシレンジアミンを0.5部加え、続いてトリエタノールアミンの10質量%水溶液20部を滴下し、更に純水を30部滴下して乳化物を得た。ロータリーエバポレーターを用いて有機溶剤成分と水の一部及び残留Si(O−Cを留去して固形分10%の水分散体を得た。オートクレーブ中で60℃24時間加熱攪拌後、遠心分離で粗大粒子を除去して有機無機ハイブリッド粒子水性分散体とした。得られた有機無機ハイブリッド粒子の体積平均粒径は180nmで粒径の均一性が良く、沈降物も無く分散は安定であった。
【0068】
以下に有機溶剤を使用しない製造方法の実施例を記載する。
(実施例6)
メタアクリル酸/アクリル酸2エチルへキシル/メタアクリル酸メチルの共重合体(酸価137;分子量1万8千)のアンモニア水溶液(樹脂分32質量%、アンモニア水8%)5部、28質量%アンモニア水0.1部、水84.9部の混合溶液にSi(O−C10部を加え、80℃2時間撹拌して分散液を得た。さらに酢酸を滴下しながら分散液のpHを7に調整し80℃3時間攪拌した後ロータリーエバポレーターを用いてアルコキシシランの加水分解によって生じたエタノールとアンモニアを留去、更に脱水濃縮して固形分10%の水分散体を得た。オートクレーブ中で80℃4時間加熱攪拌後、遠心分離で粗大粒子を除去して有機無機ハイブリッド粒子脂粒子水性分散体とした。得られた有機無機ハイブリッド粒子の体積平均粒径は30nmで粒径の均一性が良く、沈降物も無く分散は安定であった。
得られた研磨用粒子の水性分散体50部に研磨促進剤として硝酸アルミニウム5部、水
45部を加え攪拌した後、遠心分離を行い粗大粒子を除去して研磨剤を得た。得られた研
磨剤粒子は30nmの平均粒子径を有しており、室温で6ヶ月間放置しても凝集物の発
生も少なく分散が安定であった。
これを市販の研磨装置と研磨パッドを用いて、ニッケル−リン無電解メッキを施した3
.5インチのアルミニウム合金磁気ディスク基板を、基板回転数50rpm、研磨パッド
加重70g/cm、定盤回転数回転数50rpm、研磨剤供給量15ml/分、研磨時
間10分の条件で基板の研磨を行った。
研磨速度は150nm/分で、研磨したディスクを乾燥後、暗室内でスポットライトを
当て、目視で研磨傷の有無を観察した結果、研磨傷は全く認められなかった。
【0069】
以下にフェノール樹脂を用いた実施例を記載する。
(実施例7)
ノボラック型フェノール樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製TD−672、ヘキサ
メチレンテトラミン14%含有)4部、スチレンアクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸
/メタアクリル酸=77/13/10;酸価150;分子量5万)6部をメチルエチルケ
トン10部とイソプロピルアルコール6部に溶解する。得られた樹脂溶液にポリメトキシ
シロキサン15部を加え、室温で一昼夜攪拌した後、10%トリエタノールアミン水溶液
30部の混合溶液を加え、撹拌しながら純水160部を毎分5mlの速度で滴下し、分散
液を得た。その後ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンとイソプロピル
アルコールと水の一部を留去して固形分10%の水分散体を得た。その後、オートクレー
ブ中で80℃24時間加熱攪拌して有機無機ハイブリッド粒子を研磨用粒子として含有し
た水性分散体とした。
【0070】
得られた研磨用粒子の水性分散体50部に研磨促進剤として硝酸アルミニウム5部、水
45部を加え攪拌した後、遠心分離を行い粗大粒子を除去して研磨剤を得た。得られた研
磨剤粒子は125nmの平均粒子径を有しており、室温で6ヶ月間放置しても凝集物の発
生も少なく分散が安定であった。
これを市販の研磨装置と研磨パッドを用いて、ニッケル−リン無電解メッキを施した3
.5インチのアルミニウム合金磁気ディスク基板を、基板回転数50rpm、研磨パッド
加重70g/cm、定盤回転数50rpm、研磨剤供給量15ml/分、研磨時
間10分の条件で基板の研磨を行った。
研磨速度は150nm/分で、研磨したディスクを乾燥後、暗室内でスポットライトを
当て、目視で研磨傷の有無を観察した結果、研磨傷は全く認められなかった。
【0071】
(実施例8)
ノボラック型フェノール樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製TD−672、ヘキサメチレンテトラミン14%含有)を6部、スチレンアクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/メタアクリル酸=77/13/10;酸価150;分子量5万)を4部とした以外は、実施例7と同様の方法で有機無機ハイブリッド粒子を研磨用粒子として含有した水性分散体とした。
得られた研磨用粒子の水性分散体50部に研磨促進剤として硝酸アルミニウム5部、水
45部を加え攪拌した後、遠心分離を行い粗大粒子を除去して研磨剤を得た。得られた研
磨剤粒子は288nmの平均粒子径を有しており、室温で6ヶ月間放置しても凝集物の発
生も少なく分散が安定であった。
これを市販の研磨装置と研磨パッドを用いて、実施例7と同様の条件でニッケル−リン無電解メッキを施した3.5インチのアルミニウム合金磁気ディスク基板の研磨を行った。
研磨速度は180nm/分で、研磨したディスクを乾燥後、暗室内でスポットライトを
当て、目視で研磨傷の有無を観察した結果、研磨傷は全く認められなかった。
【0072】
(実施例9)
ノボラック型フェノール樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製TD−672、ヘキサメチレンテトラミン14%含有)を8部、スチレンアクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/メタアクリル酸=77/13/10;酸価150;分子量5万)を2部とした以外は、実施例7と同様の方法で有機無機ハイブリッド粒子を研磨用粒子として含有した水性分散体とした。
得られた研磨用粒子の水性分散体50部に研磨促進剤として硝酸アルミニウム5部、水
45部を加え攪拌した後、遠心分離を行い粗大粒子を除去して研磨剤を得た。得られた研
磨剤粒子は750nmの平均粒子径を有しており、室温で6ヶ月間放置しても凝集物の発
生も少なく粒子の沈降はしているものの再分散は良好であった。
これを市販の研磨装置と研磨パッドを用いて、実施例7と同様の条件でニッケル−リン無電解メッキを施した3.5インチのアルミニウム合金磁気ディスク基板の研磨を行った。
研磨速度は200nm/分で、研磨したディスクを乾燥後、暗室内でスポットライトを
当て、目視で研磨傷の有無を観察した結果、研磨傷は全く認められなかった。
実施例7〜9から明確なように例えばフェノール樹脂とスチレンアクリル酸樹脂の比率を調整することによっても、粒子の粒径を制御することが可能である。
【0073】
以上実施例に示したように、粒径の均一性に優れ分散性の良好な有機無機ハイブリッド粒子を作製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の有機無機ハイブリッド粒子は、その機械強度を利用する研磨剤・耐摩耗コーティング材あるいは成型物・接着剤、その光学的な性質を利用する各種光学フィルム・光通信材料、その電気特性や耐熱性を利用する半導体封止材等の電子材料やその他複合材料等、粒子単独あるいは塗料として様々な産業上の利用が可能である。
また、有機無機ハイブリッド粒子を焼成して得られる多孔質セラミックとして、センサー・太陽電池・光触媒等の電子材料分野、濾過材・吸着剤等の一般工業分野、バイオセラミックスとして医薬・医療分野等、様々な産業上の利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)多価金属アルコキシドまたは多価金属アルコキシドの縮合生成物と、水または水混和性有機溶剤と、必要に応じて加えられた塩基性化合物とを含有する混合物を作製する混合工程と、(2)前記多価金属アルコキシド又は多価金属アルコキシドの縮合生成物を加水分解、及び縮合させる加水分解縮合工程と、(3)前記混合物を酸価50〜200の自己水分散性樹脂とともに水中に乳化し乳化液滴を形成する乳化工程と、(4)前記乳化液滴中の多価金属アルコキシド及びその加水分解生成物の加水分解、縮合を進行させ前記液滴を粒子化する粒子化工程を有し、前記酸価50〜200の自己水分散性樹脂は前記混合工程または前記乳化工程において添加されることを特徴とする有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法。
【請求項2】
前記混合工程において、水混和性有機溶剤及び酸価50〜200の自己水分散性樹脂を添加し、前記乳化工程において、前記混合物に水を加えて、塩基性化合物存在下で乳化を行う請求項1に記載の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程において、水、水混和性有機溶剤、塩基性化合物を添加し、前記乳化工程において酸価50〜200の自己水分散性樹脂を添加する請求項1に記載の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法。
【請求項4】
前記混合工程において、水、酸価50〜200の自己水分散性樹脂、及び塩基性化合物を添加して前記自己水分散性樹脂を溶解させ、前記乳化工程において、前記塩基性化合物の一部を留去するかまたは酸性化合物を添加して、前記混合物の乳化を行う請求項1に記載の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法。
【請求項5】
前記自己水分散性樹脂は、スチレン、置換スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーと、(メタ)アクリル酸との共重合体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法。
【請求項6】
前記混合物中に、さらにフェノール樹脂を含有する請求項1から4のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法。
【請求項7】
前記混合工程または前記乳化工程において、前記自己水分散性樹脂をアイオノマー樹脂化することが可能な多価金属化合物を添加する請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法。
【請求項8】
前記混合工程または前記乳化工程において、前記自己水分散性樹脂の有するカルボキシル基と、共有結合性の架橋反応を行う多官能反応性基を有する化合物を添加する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法。
【請求項9】
前記多官能反応性基を有する化合物が、第3級アミノ原子を有する4官能性エポキシ樹脂である請求項8に記載の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法において、最後に水性分散体の加熱を行う加熱工程を有する有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法によって製造された有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体から、液体成分を除去する工程を有することを特徴とする有機無機ハイブリッド粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法によって製造された有機無機ハイブリッド粒子から有機成分を除去することによって得られることを特徴とする無機粒子。
【請求項13】
請求項11に記載の有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法によって製造された有機無機ハイブリッド粒子の、水性分散体を主成分として含有することを特徴とする研磨剤。

【公開番号】特開2006−169390(P2006−169390A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364285(P2004−364285)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】