説明

有機無機複合ヒドロゲルの製造方法

【課題】有機無機複合ヒドロゲルの高弾力性及び強靭性を損なうことなく、残留モノマー量を極力低減させることが可能である有機無機複合ヒドロゲルの製造方法を提供する。また、上記課題を達成し、更に、透明性及び高温での耐変形性に優れた有機無機複合ヒドロゲルの製造方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリルアミド系モノマーと水膨潤性粘土鉱物とが水または水と有機溶媒との混合液に分散した水分散液を製造し、重合触媒の不存在下で、40〜100℃の重合温度範囲にて前記モノマーを重合させることを特徴とする有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性ビニル基を有する水溶性有機モノマーの重合体と粘土鉱物により形成される有機無機複合ヒドロゲルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリウレタンなどの有機高分子を粘土と複合させることによりナノコンポジットと呼ばれる高分子複合体が調製されている。得られた高分子複合体はアスペクト比の大きい粘土層を微細に分散させていることから、弾性率、熱変形温度、ガス透過性、および燃焼速度などが効果的に改良されることが報告されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
高分子複合体中に含まれる粘土鉱物量としては、性能強化の観点からは高い粘土鉱物含有量が望まれるが、より低い粘土鉱物量で効果的な性能強化が達成されることも重要である。これまでの研究では、粘土鉱物の含有量は、通常0.2〜5質量%の範囲であり、0.1質量%以下の高分子複合体や10質量%を超える高分子複合体を製造した例は、ほとんど報告されていない。これは粘土鉱物の含有率が低くなると性能向上の効果がほとんど現れず、一方、含有率が高くなると製造時の粘度増加が大きく、複合体中の粘土鉱物のナノスケールレベルにおける微細且つ均一な分散が達成できなかったり、複合体が脆くなり力学物性(強度や伸び)が大きく低下したりするためである。
【0004】
このような問題に対し、優れた力学物性を示すナノコンポジット材料として、広い範囲の粘土鉱物含有率において、粘土鉱物が有機高分子中に均一に分散した有機無機複合ヒドロゲルが開示されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。この報告によれば、水媒体中に水膨潤性粘土鉱物を分散させ、その後、アクリルアミドやメタクリルアミドの誘導体、(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマーを添加して、重合開始剤及び触媒の存在下で該モノマーを重合させることにより、力学物性の良い有機無機複合ヒドロゲルを製造できることが記載されている。さらに、上記の有機無機複合ヒドロゲルにおいて、放射線や有機架橋剤を添加する手段によって、アミド基含有高分子と粘土鉱物の結合に加えて高分子鎖間に共有結合を形成させ、優れた力学物性と三次元網目の安定性を併せ持つ高分子ゲルが得られることが記載されている。(特許文献3、特許文献4参照)
しかし、この製造方法で得られる有機無機複合ヒドロゲルには未反応の残留モノマーが比較的多く含まれ、これを除去するために洗浄が必要であった。また、特に高温、加圧下において、自重による材料の形状変形が生じる場合があることから、耐変形性の改良が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開2002−53762
【特許文献2】特開2004−143212
【特許文献3】特開2005−113080
【特許文献4】特開2007−154092
【非特許文献1】ピナバイアおよびベアル編(T.J.Pinnavaia and G. W.Beall Eds.)「ポリマークレイナノコンポジット」(Polymer-Clay Nano Composites ),ワイリー社(wiley)、2000年出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、有機無機複合ヒドロゲルの高弾力性及び強靭性を損なうことなく、残留モノマー量を極力低減させることが可能である有機無機複合ヒドロゲルの製造方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、上記課題を達成し、更に、透明性及び高温での耐変形性に優れた有機無機複合ヒドロゲルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、上記従来技術で開示されている有機無機複合ヒドロゲルの製造方法について種々検討した。その結果、重合触媒を用いずに、重合反応を高温下で行なうことにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、(メタ)アクリルアミド系モノマーと水膨潤性粘土鉱物とが水または水と有機溶媒との混合液に分散した水分散液を製造し、重合触媒の不存在下で、40〜100℃の重合温度範囲にて前記モノマーを重合させることを特徴とする有機無機複合ヒドロゲルの製造方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、N−メチル基を有するアクリルアミド系モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物とが複合化して形成された三次元網目構造と、前記重合体の高分子鎖間に形成された化学結合による架橋構造とを併有することを特徴とする有機無機複合ヒドロゲルの製造方法を提供するものである。
【0010】
一般に、(メタ)アクリルアミドモノマーからなる従来のヒドロゲルの水系重合では、アミン触媒等で活性化させた低温での重合条件が用いられる。これに対し、本発明で開示する無触媒条件、及び高温重合での水系重合によって、残留モノマー量を高度に低減したり、物性を制御することは知られていない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、低含有比率〜高含有比率までの広範囲の粘土鉱物の含有比率において、残留モノマー量が極力低減された有機無機複合ヒドロゲルを製造することができる。本発明により製造される有機無機複合ゲルでは、残留モノマー量が低減されることから、より安全性が高まる。更に、重合反応に使用する触媒は十分な安全性を保証されていないことから、該当触媒を用いないことによっても材料としての安全性が高まる。また、高温での反応により粘土鉱物が均一且つ微細に分散し易くなり、ゲル中における粘土鉱物の凝集物の生成を防止できる。その結果、透明性に優れた有機無機複合ゲルが得られる。
【0012】
更に、本発明により製造される有機無機複合ゲルは、フィルム状、平板状等の平面形状に成形され、製造される場合がある。このような形状では、高温加圧下での滅菌条件や長期の保存においても、変形せずに所期の形状及び厚みが維持されることが必要である。本発明の製造方法によれば高温での耐変形性に優れた有機無機複合ヒドロゲルを製造することができる。特に、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N、N−メチルエチルアクリルアミドのようなN−メチル基を有する反応性モノマーを使用した場合、アミド基含有高分子と粘土鉱物を介した架橋構造に加えて、N−メチル基部位での一部を共有結合で結合した高分子鎖間の化学架橋が生成し弾性率の上昇が生じると推定されるため、耐変形性が優れたものとなる。これにより、有機架橋剤や放射線の照射を使用することなく、有機無機複合ヒドロゲルの耐変形性を高めることができ、形状の保持が容易となる。したがって、放射線照射では制御が困難であった厚みのあるフィルム形状や大型ブロック状の有機無機複合ヒドロゲルにおいても、耐変形性の向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の製造方法は、(メタ)アクリルアミド系モノマーと水膨潤性粘土鉱物とが水または水と有機溶媒との混合液に分散した水分散液を製造し、その後、重合触媒の不存在下で、40〜100℃の重合温度範囲にて前記モノマーを重合させることを特徴とする有機無機複合ヒドロゲルの製造方法である。
【0014】
(有機無機複合ヒドロゲル)
本発明で製造する有機無機複合ヒドロゲルは、水溶性有機高分子と水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物と水とを必須の構成成分とし、水溶性有機高分子と水膨潤性粘土鉱物が分子レベルで複合化された三次元網目の中に水を取り込んだヒドロゲルである。
【0015】
((メタ)アクリルアミド系モノマー)
本発明で使用する(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、水に溶解する性質を有し、水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物と相互作用を有するものが好ましい。なお、本発明で使用する水としては、水単独以外に、水と混和する有機溶媒との混合溶媒であり、水を主成分とするものが含まれる。
【0016】
(メタ)アクリルアミド系モノマーの具体例としては、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、アクリルアミド等のアクリルアミド類、または、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、メタクリルアミド等のメタクリルアミド類が挙げられる。ここでアルキル基としては炭素数が1〜4のものが特に好ましく選択される。中でも、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N、N−メチルエチルアクリルアミドのようなN−メチル基を有する反応性モノマーを使用すると耐変形性がより優れたものとなるので好ましい。
【0017】
また(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合体としては、単一の(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合体の他、これらから選ばれる複数の異なる(メタ)アクリルアミド系モノマーを重合して得られる共重合体を用いることも有効である。また上記(メタ)アクリルアミド系モノマーとそれ以外の有機溶媒可溶性の重合性不飽和基含有有機モノマーとの共重合体も、得られた重合体が水溶性や親水性を示すものであれば使用することができる。
【0018】
(水膨潤性粘土鉱物)
本発明で用いる水膨潤性粘土鉱物は、水に膨潤し、好ましくは水によって層間が膨潤する性質を有するものが用いられる。より好ましくは少なくとも一部が水中で層状に剥離して分散できるものであり、特に好ましくは水中で1ないし10層以内の厚みの層状に剥離して均一分散できる層状粘土鉱物である。例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などが用いられ、より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。中でも水膨潤性ヘクトライトや水膨潤性サポナイトを用いると有機無機複合ヒドロゲルの透明性が優れ、好ましい。
【0019】
(重合触媒)
重合触媒としては、例えば3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやβ−ジメチルアミノプロピオニトリルなどが好ましく用いられる。しかしながら、本発明の製造方法では、重合触媒は実質的に使用しない。重合触媒を使用した場合、反応温度の上昇に伴い力学物性において破断強度の著しい低下が生じる。このことから、形状保持性の低下を招き、また前述の安全性の観点からも重合触媒を用いない製造法が好ましい。
【0020】
(重合開始剤)
本発明において用いられる重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤や触媒を適時選択して用いることができる。好ましくは水分散性を有し、系全体に均一に含まれるものが好ましく用いられる。具体的には、水溶性の過酸化物、例えばペルオキソ二硫酸カリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウム、水溶性のアゾ化合物、例えばVA−044、V−50、V−501(いずれも和光純薬工業株式会社製)の他、Fe 2+ と過酸化水素との混合物などが例示される。中でもペルオキソ二硫酸カリウムを使用することが好ましい。
【0021】
(製造方法)
以下に、本発明の製造方法の好ましい実施形態について説明するが、これは一例であり、本発明の効果を損なわない範囲において、種々の実施形態を採ることができる。
【0022】
本発明の有機無機複合ヒドロゲルの製造方法においては、(メタ)アクリルアミド系モノマーは、活性アルミナカラムを用いて重合禁止剤を取り除いてから使用することが好ましく、重合開始剤は約2%の濃度に純水で希釈し、水溶液にして使用することが好ましく、水は、イオン交換水を蒸留した純水を用い、高純度窒素を予め3時間以上バブリングさせ、含有酸素を除去してから使用することが好ましい。
【0023】
(工程1)
内部を窒素置換した反応容器に、純水と(メタ)アクリルアミド系モノマーを加え、これに水膨潤性粘土鉱物を添加して、(メタ)アクリルアミド系モノマーと水膨潤性粘土鉱物とが水に分散した均一な水分散液を製造する。この際、特許文献1及び特許文献2に記載されている通り、純水と水膨潤性粘土鉱物からなる分散液を製造し、その後、(メタ)アクリルアミド系モノマーを添加する順を採っても良いが、本発明では、あらかじめ純水と(メタ)アクリルアミド系モノマーの混合液を製造し、次いで、混合液中に水膨潤性粘土鉱物を添加して均一な水分散液を製造することが好ましい。そのような工程順を採ることにより、水膨潤性粘土鉱物がより均一に純水と(メタ)アクリルアミド系モノマーの混合液中に分散しやすくなり、力学特性、透明性等がより優れた有機無機複合ヒドロゲルを製造することができる。
【0024】
また、純水と(メタ)アクリルアミド系モノマーの混合液中に水膨潤性粘土鉱物を添加する際には、より高シェアの攪拌装置を用いることが好ましい。例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を用いることができる。
【0025】
(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合物と水膨潤性粘土鉱物の量比は、水または水と有機溶媒との混合液からなる溶媒の中で両者が三次元網目を形成する範囲が好ましく、水膨潤性粘土鉱物/(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合物の質量比として好ましくは0.01〜3、より好ましくは0.1〜3、特に好ましくは0.3〜2.5である。その質量比が0.01未満では、有効な三次元網目を形成することが困難となり、一方、3を越えると水均一な膨潤性粘土鉱物の層状剥離した分散が困難となる場合が多い。
【0026】
(工程2)
次に、重合開始剤溶液を加え、密栓をし、40〜100℃の恒温水槽中で10〜30時間程度静置して重合を行なう。
【0027】
(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合物と重合開始剤の量比は、重合開始剤/(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合物の質量比として好ましくは0.001〜0.10、より好ましくは0.005〜0.01である。その質量比が0.001未満では、有効な三次元網目を形成することが困難となり、一方、0.10を越えるとモノマー/クレイ溶液中での重合開始剤の分散が困難となる場合が多い。
【0028】
なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行うことが好ましい。重合開始から1〜30時間で反応容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な有機無機複合ヒドロゲルが生成する。
【0029】
重合反応を行う場合、上記の水分散液を製造した容器内で重合反応を行っても良いが、重合開始剤を添加後、速やかに所望の形状の容器内に水分散液を移して、フィルム状、平板状等、目的とする形状の有機無機複合ヒドロゲルとすることもできる。
【0030】
(有機無機複合ヒドロゲルの力学物性)
本発明の製造方法によれば、強度、伸び、タフネスなどの力学物性に優れた有機無機複合ヒドロゲルを製造することができる。有機無機複合ヒドロゲルの力学物性は、ヒドロゲルの水含有率により異なるため、有機無機複合ヒドロゲルの力学物性や機械的性質は、一定範囲内の水含有率をもつヒドロゲルを用いて試験した結果で表わす。具体的には水(C)を{有機成分(A)+無機成分(B)}に対して600〜1000重量%含むヒドロゲルを用いるか、もしくは水溶性有機高分子(A)の10倍量(重量比)の水(C)を含んだものを用いて試験した結果で表わす。
【0031】
更に、本発明で製造する有機無機複合ヒドロゲルは、破断伸びが大きく、断面積が試験途中で変化するため、試験開始時のヒドロゲルの断面積(初期断面積)を0.237cm2(半径0.275cmの円に相当)にしたものを試験材料として用いて規定する。
【0032】
本発明で製造する有機無機複合ヒドロゲルとして力学的強度が要求される用途に使用する場合は、水含有率が600〜1000重量%、初期断面積が0.237cm2であるヒドロゲルを用いて測定したときに、引っ張り破断荷重が0.1N以上、好ましくは0.5N以上、より好ましくは1N以上、特に好ましくは2N以上であるものが望ましい。
また、引っ張り破断伸びが100%以上、より好ましくは200%以上、更に好ましくは300%以上、特に好ましくは500%以上であること、更に引っ張り伸び100%での荷重が0.01N以上、より好ましくは0.05N以上であること、特に好ましくは0.1N以上である特徴を有するものが望ましい。
(本発明で製造する有機無機複合ヒドロゲルの用途)
得られた有機無機複合ヒドロゲルは、高い透明性、低残留モノマー、高温での耐変形性に優れた特徴を生かし、振動吸収材料、延伸装置部品材料、人工臓器用材料、治療用材料、光学材料などとして用いられる。
【実施例】
【0033】
次いで本発明を実施例により、具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
(原料の精製方法)
粘土鉱物には、[Mg 5.34 Li0.66 Si20 (OH) ]Na0.66 の組成を有する水膨潤性合成ヘクトライト(商標ラポナイトXLG、ロックウッドアディティブ社製)を用いた。水溶性有機モノマーとしてはN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA:株式会社興人社製)を用い、DMAA100mlに対して活性アルミナカラム(和光純薬株式会社製)5gの容積で重合禁止剤を取り除いてから使用した。重合開始剤は、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS:関東化学株式会社製)を2%の濃度に純水で希釈し、水溶液にして使用した。水は、イオン交換水を蒸留した純水を用い、高純度窒素を予め3時間以上バブリングさせ含有酸素を除去してから使用した。
【0034】
(実施例1)
内部を窒素置換したガラス容器に、純水19.00gとDMAA1.98gを加え、これにラポナイトXLG0.64gを撹拌子で強撹拌しながら添加して、無色透明の溶液を調製した。次に、KPS水溶液1gを加え、密栓をし、50℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から18時間後に、ガラス管容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が760質量%のヒドロゲルであった。
【0035】
(実施例2)
実施例1と同様に反応溶液を調製し、40℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。重合開始から18時間後に、ガラス管容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が760質量%のヒドロゲルであった。
【0036】
(実施例3)
実施例1と同様に反応溶液を調製し、95℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。重合開始から18時間後に、ガラス管容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が760質量%のヒドロゲルであった。
【0037】
(実施例4)
内部を窒素置換したガラス容器に、純水19.00gとアルミナカラムによって重合禁止剤を除去したN−アクリロイルモルフォリン(ACMO:株式会社興人社製)2.82gを加え、これにラポナイトXLG0.64gを強撹拌しながら添加して無色透明の溶液を調製した。次に、KPS水溶液1gを加え、密栓をし、50℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から18時間後に、ガラス管容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が540質量%のヒドロゲルであった。
【0038】
(実施例5)
内部を窒素置換したガラス容器に、純水19.00gとDMAA1.98gを加え、これに水膨潤性モンモリロナイトであるクニピアF(クニミネ工業株式会社製)0.64gを撹拌子で強撹拌しながら添加して、乳白色の溶液を調製した。次に、KPS水溶液1gを加え、密栓をし、50℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から18時間後に、ガラス管容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が760質量%のヒドロゲルであった。
【0039】
(比較例1)
内部を窒素置換したガラス容器に、純水19.00gとラポナイトXLG0.64gからなる無色透明の溶液を調製した。これにDMAA1.98gを加え無色透明溶液を得た。次に、重合触媒としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン18μL、KPS水溶液1gを加え、密栓をし、20℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から18時間後に、ガラス管容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が760質量%のヒドロゲルであった。
【0040】
(比較例2)
内部を窒素置換したガラス容器に、純水19.00gとDMAA1.98gを加え、これにラポナイトXLG0.64gを撹拌子で強撹拌しながら添加して、無色透明の溶液を調製した。次に、KPS水溶液1gを加え、密栓をし、35℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から18時間後に、ガラス管容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が760質量%のヒドロゲルであった。
【0041】
(比較例3)
内部を窒素置換したガラス容器に、純水19.00gとラポナイトXLG0.64gからなる無色透明の溶液を調製した。これにDMAA1.98gを加え無色透明溶液を得た。次に、重合触媒としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン18μL、KPS水溶液1gを加え、密栓をし、50℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から18時間後に、ガラス管容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が760質量%のヒドロゲルであった。
【0042】
(比較例4)
内部を窒素置換したガラス容器に、純水19.00gとラポナイトXLG0.64gからなる無色透明の溶液を調製した。これにACMO2.82gを加え無色透明溶液を得た。次に、重合触媒としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン18μL、KPS水溶液1gを加え、密栓をし、20℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から18時間後に、ガラス管容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が760質量%のヒドロゲルであった。
【0043】
(残留モノマー量の評価方法)
各実施例、比較例で製造した有機無機複合体ヒドロゲルの残留モノマーの量は、以下の方法にて測定した。測定値を表1にまとめた。合成したヒドロゲル2.0gと純水100gをミキサー(オスターブレンダー;大阪ケミカル株式会社製)に入れ、15700回転で5分間処理し、ゲルスラリー液を得た。このスラリー液を80℃で1時間加熱撹拌し、抽出液を調整した。抽出液を冷却後、メンブランフィルター(細孔径:0.45μm)でゲル成分を除去し、HPLC(日本ウォータース社製; Separation Module 2695、UV Detector 2487; カラム:ジーエルサイエンス株式会社製Inertsil ODS−3 4.6mmID×250mm; 溶離溶媒組成:アセトニトリル/水=20/80; 検出波長:230nm)を用いて残留DMAAモノマー及びACMOモノマーを一点検量線法により定量した。
【0044】
【表1】

【0045】
(透明性の評価方法)
各実施例、比較例で製造した有機無機複合体ヒドロゲルの耐変形性は、以下の方法にて測定した。測定値を表3にまとめた。合成したヒドロゲルの透過率を、濁度計(日本電色工業(株)社製濁度計 300A)を用いて測定した。
【0046】
【表2】

【0047】
(耐変形性の評価方法)
各実施例、比較例で製造した有機無機複合体ヒドロゲルの耐変形性は、以下の方法にて測定した。測定値を表3にまとめた。DMAAを反応性モノマーに使用して合成した円柱状ヒドロゲル(高さ30mm×径27mm)を底面の直径が90cmのビーカー内に自立させ、120℃/2気圧の水蒸気下で60分保持した。室温/大気圧に戻した後のヒドロゲルの高さを計測し、変化率を求めた。
【0048】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルアミド系モノマーと水膨潤性粘土鉱物とが水または水と有機溶媒との混合液に分散した水分散液を製造し、重合触媒の不存在下で、40〜100℃の重合温度範囲にて前記モノマーを重合させることを特徴とする有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。
【請求項2】
前記水膨潤性粘土鉱物が、水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト及び水膨潤性雲母から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリルアミド系モノマーが、N−メチル基を有するアクリルアミド系モノマーである請求項1又は2記載の有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。

【公開番号】特開2009−46532(P2009−46532A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211315(P2007−211315)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】