説明

有機無機複合ヒドロゲルの連続製造方法

【課題】 水膨潤性粘土鉱物の均一分散が可能であり、触媒と重合開始剤を添加し、混合した後であっても連続的に移送可能である有機無機複合ヒドロゲルの連続製造方法を提供する。
【解決手段】重合性ビニル基を有する水溶性有機モノマーと水膨潤性粘土鉱物とを振動式攪拌機(i)を用いて連続的に水中に分散させ、次いで、重合開始剤を振動式攪拌機(ii)により連続的に分散させる工程を行ない、その後前記水溶性有機モノマーを重合させる工程を行なう製造方法であり、前記振動式攪拌機(i)及び(ii)が、上下端面が閉塞された筒状のケーシングと、該ケーシング内部に反応液が流通する流通路と、前記上下端面の一方に設けられた前記反応液の導入口と、他方の端面に設けられた流出口とを備え、更に、前記反応液の流通方向に往復運動可能な攪拌体を備えており、前記攪拌体により、前記反応液を攪拌する機構を有する有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物とから形成される三次元網目構造を有する有機無機複合ヒドロゲルの連続的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルアミド系ヒドロゲルやアクリル酸エステル系ヒドロゲルは優れた水膨潤性を示し、その特徴を生かして医療材料、吸排水材料、土壌改良材料などに有用な材料である。特に、優れた力学物性を示すナノコンポジット材料として、粘土鉱物が有機高分子中に均一に分散した有機無機複合ヒドロゲルが本発明の考案者らによって開示されている(例えば特許文献1、2)。この報告によれば、水媒体中に水膨潤性粘土鉱物を分散させ、その後、アクリルアミドやメタクリルアミドの誘導体のモノマーを添加して、重合開始剤及び触媒の存在下で該モノマーを重合させることにより、力学物性の良い有機無機複合ヒドロゲルを製造できることが記載されている。
【0003】
かかる有機無機複合ヒドロゲルの製造では、有機無機複合ヒドロゲルの力学物性、水膨潤性能、透明性を発揮させるために水膨潤性粘土鉱物のナノスケールでの均一分散、及び触媒と重合開始剤の均一混合処理が重要である。これまでの当該有機無機複合ヒドロゲルの製造法では、本水膨潤性粘土鉱物の均一分散処理、及び重合開始剤と触媒の添加・混合をバイアル容器あるいはタンク内での撹拌で行っている。タンク内撹拌による水膨潤性粘土鉱物の分散処理の場合、凝集しやすい水膨潤性粘土鉱物の分散を達成するために水膨潤性粘土鉱物を極めてゆっくりと添加する必要がある。このため、大量のスケールで分散を完了するまでに工程時間が多く必要、あるいは均一分散が達成されない場合があった。また、重合開始剤添加・混合の際には添加後数分でゲル化による急激な粘度上昇が生じるため、開始剤添加後の大量の反応調製液を移送することが困難であり、大型の成型物を得ることができなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−53762
【特許文献2】特開2004−143212
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、分散を完了するまでに工程時間が多く必要であり、ナノスケールでの水膨潤性粘土鉱物の均一分散が難しく、更に、重合開始剤の添加後数分でゲル化による急激な粘度上昇が生じるため、重合開始剤添加後は反応溶液の移送ができない、といった有機無機複合ヒドロゲルを量産する場合における課題を解決し、水膨潤性粘土鉱物の均一分散が可能であり、触媒と重合開始剤を添加し、混合した後であっても連続的に移送可能であり、大量スケールであっても安定した生産が可能である有機無機複合ヒドロゲルの連続製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、当該有機無機複合ヒドロゲルの製造法における課題に鑑み、鋭意研究を進めた結果、振動式撹拌機を水膨潤性粘土鉱物の均一分散、及び触媒と重合開始剤の添加・混合の両工程に利用することによって、有機無機複合ヒドロゲルの連続的処理による大量製造ができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明は重合性ビニル基を有する水溶性有機モノマーと水膨潤性粘土鉱物とを振動式攪拌機(i)を用いて連続的に水中に分散させ、反応液を製造する工程、重合開始剤を振動式攪拌機(ii)により前記反応液中に連続的に分散させる工程、前記重合開始剤が分散した反応液中の前記水溶性有機モノマーを重合させる工程を順次行なう有機無機複合ヒドロゲルの製造方法であり、前記振動式攪拌機(i)及び振動式攪拌機(ii)が、上下端面が閉塞された筒状のケーシングと、該ケーシング内部に前記反応液が流通する流通路と、前記上下端面の一方に設けられた前記反応液の導入口と、他方の端面に設けられた流出口とを備え、更に、前記流通路に配設され、前記反応液の流通方向に往復運動可能であり、軸部と該軸部の周囲に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備えており、前記反応液の流通方向に往復運動する攪拌体により、前記反応液を攪拌する機構を有することを特徴とする有機無機複合ヒドロゲルの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
振動式撹拌機を用いた連続処理によって、大量生産スケールにおける工程時間の短縮、自動化等が可能となり、生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、
(1)重合性ビニル基を有する水溶性有機モノマーと水膨潤性粘土鉱物とを振動式攪拌機(i)を用いて連続的に水中に分散させ、反応液を製造する工程、
(2)重合開始剤及び触媒を振動式攪拌機(ii)により前記反応液中に連続的に分散させる工程、
(3)前記重合開始剤が分散した反応液中の前記水溶性有機モノマーを重合させる工程を順次行なう有機無機複合ヒドロゲルの製造方法である。
【0010】
(有機無機複合ヒドロゲル)
本発明で製造する有機無機複合ヒドロゲルは、水溶性有機高分子と水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物と水とを必須の構成成分とし、水溶性有機高分子と水膨潤性粘土鉱物が分子レベルで複合化された三次元網目の中に水を取り込んだヒドロゲルである。
【0011】
(重合性ビニル基を有する水溶性有機モノマー)
本発明で使用する重合性ビニル基を有する水溶性有機モノマーは、水に溶解する性質を有し、水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物と相互作用を有し、非共有結合を形成できるものが好ましく、例えば、粘土鉱物と水素結合、イオン結合、配位結合、共有結合等を形成できる官能基を有するものが好ましい。これらの官能基を有する水溶性有機モノマーとしては、具体的には、アミド基、アミノ基、エステル基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基などを有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーが挙げられ、なかでもアミド基やエステル基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーが好ましい。特にアクリルアミド系モノマーが好ましい。なお、本発明で使用する水としては、水単独以外に、水と混和する有機溶媒との混合溶媒であり、水を主成分とするものが含まれる。
【0012】
アミド基を有する重合性ビニル基含有水溶性モノマーの具体例としては、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、アクリルアミド等のアクリルアミド類、または、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、メタクリルアミド等のメタクリルアミド類が挙げられる。ここでアルキル基としては炭素数が1〜4のものが特に好ましく選択される。またエステル基を有する重合性ビニル基含有水溶性有機モノマーの具体例としては、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレートなどがあげられる。
【0013】
またかかる水溶性有機モノマーの重合体としては、単一の(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合体や(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの重合体の他、これらから選ばれる複数の異なる水溶性有機モノマーを重合して得られる共重合体を用いることも有効である。また上記の水溶性有機モノマーとそれ以外の有機溶媒可溶性の重合性不飽和基含有有機モノマーとの共重合体も、得られた重合体が水溶性や親水性を示すものであれば使用することができる。
【0014】
水と混和する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合溶媒が挙げられる。
【0015】
(水膨潤性粘土鉱物)
本発明で用いる水膨潤性粘土鉱物は、水に膨潤し、好ましくは水によって層間が膨潤する性質を有するものが用いられる。より好ましくは少なくとも一部が水中で層状に剥離して分散できるものであり、特に好ましくは水中で1ないし10層以内の厚みの層状に剥離して均一分散できる層状粘土鉱物である。例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などが用いられ、より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。中でも水膨潤性ヘクトライトや水膨潤性サポナイトを用いると有機無機複合ヒドロゲルの透明性が優れ、好ましい。
【0016】
(重合開始剤および重合触媒)
本発明で使用される重合開始剤および触媒としては、慣用のラジカル重合開始剤および触媒のうちから適宜選択して用いることができる。好ましくは水に分散性を有し、系全体に均一に含まれるものが用いられる。特に好ましくは層状に剥離した粘土鉱物と強い相互作用を有するカチオン系ラジカル重合開始剤である。具体的には、重合開始剤として水溶性の過酸化物、例えばペルオキソ二硫酸カリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウム、水溶性のアゾ化合物、例えば、和光純薬工業株式会社製のVA−044、V−50、V−501などが好ましく用いられる。その他、ポリエチレンオキシド鎖を有する水溶性のラジカル開始剤なども用いられる。
【0017】
また触媒としては、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやβ−ジメチルアミノプロピオニトリルなどが好ましく用いられる。重合温度は、用いる水溶性有機高分子、重合触媒および開始剤の種類などに合わせて0℃〜100℃の範囲に設定する。
【0018】
(製造方法)
以下に、本発明の製造方法の好ましい実施形態について説明する。
本発明の有機無機複合ヒドロゲルの製造方法においては、水溶性有機モノマーは、活性アルミナカラムを用いて重合禁止剤を取り除いてから使用することが好ましく、重合開始剤は約2%、触媒は3.2%の濃度に純水で希釈し、水溶液にして使用することが好ましく、水は、イオン交換水を蒸留した純水を用い、高純度窒素を予めバブリングさせ、含有酸素を除去してから使用することが好ましい。
【0019】
(工程1)
内部を窒素置換したタンクに純水と水溶性有機モノマーを加え、モノマー水溶液を調製する。次に、定量ポンプを用いて送られたモノマー水溶液に、粉体フィーダーを用いて水膨潤性粘土鉱物をポンプ上で連続添加し、この混合液を振動式撹拌機(i)に移送・分散することにより、水溶性有機モノマーと水膨潤性粘土鉱物とが水に均一分散した溶液を製造する。
水溶性有機モノマーの重合物と水膨潤性粘土鉱物の量比は、水または水と有機溶媒との混合液からなる溶媒の中で両者が三次元網目を形成する範囲が好ましく、水膨潤性粘土鉱物/水溶性有機モノマーの重合物の質量比として好ましくは0.01〜3、より好ましくは0.1〜3、特に好ましくは0.3〜2.5である。その質量比が0.01未満では、有効な三次元網目を形成することが困難となり、一方、3を越えると水均一な膨潤性粘土鉱物の層状剥離した分散が困難となる場合が多い。
【0020】
(工程2)
次に、工程1で調製した水溶性有機モノマーと水膨潤性粘土鉱物とが水に均一分散した溶液を振動式撹拌機(ii)に送液し、振動式撹拌機(ii)に設けられた2つの添加剤投入口から触媒溶液と重合開始剤溶液を添加・撹拌する。連続的に排出される反応溶液を窒素シールした重合容器に移し、20〜100℃で10〜30時間程度重合を行なう。
【0021】
水溶性有機モノマーの重合物と重合開始剤の量比は、重合開始剤/水溶性有機モノマーの重合物の質量比として好ましくは0.001〜0.10、より好ましくは0.005〜0.01である。その質量比が0.001未満では、有効な三次元網目を形成することが困難となり、一方、0.10を越えるとモノマー/クレイ溶液中での重合開始剤の分散が困難となる場合が多い。
【0022】
なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行うことが好ましい。重合開始から1〜30時間で反応容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な有機無機複合ヒドロゲルが生成する。
重合反応を行う場合、重合開始剤を添加した反応溶液を所望の形状の反応容器内に移して、フィルム状、平板状等、目的とする形状の有機無機複合ヒドロゲルとすることができる。
【0023】
(振動式撹拌機)
本発明で使用する振動式撹拌機としては、本発明の効果を得られるものであれば公知の振動式攪拌機を用いることができる。中でも前記振動式攪拌機(i)及び振動式攪拌機(ii)が、上下端面が閉塞された筒状のケーシングと、該ケーシング内部に前記反応液が流通する流通路と、前記上下端面の一方に設けられた前記反応液の導入口と、他方の端面に設けられた流出口とを備え、更に、前記流通路に配設され、前記反応液の流通方向に往復運動可能であり、軸部と該軸部の周囲に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備えており、前記反応液の流通方向に往復運動する攪拌体により、前記反応液を攪拌する機構を有する装置であることが好ましい。
【0024】
上記の好ましい振動式攪拌機の例を図1により詳細に説明する。図1の振動式攪拌機は、内部に反応液が流通する流通路が設けられた筒状のケーシング1と、前記ケーシング1内に配置され、振動源(図示せず)に接続された軸部3と該軸部3の周囲に取り付けられた撹拌羽根4とからなる撹拌体2と、前記ケーシング1の内部に原料を導入する原料導入口6と、流出口7を有する撹拌混合装置である。
【0025】
撹拌体2を振動撹拌(振動方向8)させることによって、均一撹拌を行いながら、撹拌された物を後方に送り出すことができる。これにより、二次凝集を発生させることなく、また撹拌された物が高粘度になったとしても、ケーシング内に撹拌された物が滞留することがなく、円滑に撹拌混合操作を行うことができる。前記ケーシング1内部には、前記流通路を仕切り板5によって仕切った1つ以上の撹拌室が設けられている。仕切り板5を設けることによって、ケーシング1内の流通路に乱流が生じ、より撹拌効率が向上する。
上記のような振動攪拌装置としては、バイブロミキサー(冷化工業社製)がある。
【実施例】
【0026】
次いで本発明を実施例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示
す実施例にのみ限定されるものではない。
【0027】
(原料の精製方法)
粘土鉱物には、[Mg 5.34 Li0.66 Si20 (OH) ]Na0.66 の組成を有する水膨潤性合成ヘクトライト(商標ラポナイトXLG、ロックウッドアディティブ社製)を用いた。水溶性有機モノマーとしてはN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA:株式会社興人社製)を用い、DMAA1Lに対して活性アルミナカラム(和光純薬株式会社製)50gの容積で重合禁止剤を取り除いてから使用した。重合開始剤は、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS:関東化学株式会社製)を2%の濃度に純水で希釈し、水溶液にして使用した。触媒は、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED:関東化学株式会社製)を3.2%の濃度に純水で希釈し、水溶液にして使用した。水は、イオン交換水を蒸留した純水を用い、高純度窒素を予めバブリングさせ含有酸素を除去してから使用した。
【0028】
(実施例1)
内部を窒素置換した溶液タンクに、純水:DMAA9.3:1の割合でモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液を定量ポンプを用いて1.5L/分で、ラポナイトXLGを粉体フィーダーを用いて46g/分で、撹拌しながらそれぞれ連続供給し、ポンプ(兵神装備社製;モーノポンプ)で振動式撹拌機(バイブロミキサー M35−V1.5;冷化工業社製)へ連続移送した。振動式撹拌機内で強撹拌(25振動/秒;撹拌時間5秒)してラポナイトXLGを均一分散し、無色透明の溶液を連続的に調製した。
【0029】
上記の無色透明の均一分散液を、連続的にもう一台の振動式撹拌機(バイブロミキサー M35−V1.5;冷化工業社製)へ1.5L/分で移送し、70mL/分で供給されるKPS水溶液と、35mL/分で供給されるTEMED水溶液とを振動式撹拌機に設置された2つの添加剤投入口から別々に添加し、混合を行った。振動式撹拌機から連続的に排出された反応溶液を、内部を窒素置換した重合容器に充填し、20℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から18時間後に、密閉容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が760質量%のヒドロゲルであった。
【0030】
(実施例2)
内部を窒素置換した溶液タンクに、純水:DMAA26.7:1の割合でモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液を定量ポンプを用いて1.5L/分で、ラポナイトXLGを粉体フィーダーを用いて114g/分で、撹拌しながらそれぞれ連続供給し、ポンプ(兵神装備社製;モーノポンプ)で振動式撹拌機(バイブロミキサー M35−V1.5;冷化工業社製)へ連続移送した。振動式撹拌機内で強撹拌(25振動/秒;撹拌時間5秒)してラポナイトXLGを均一分散し、無色透明の溶液を連続的に調製した。
【0031】
上記の無色透明の均一分散液を、連続的にもう一台の振動式撹拌機(バイブロミキサー M35−V1.5;冷化工業社製)へ1.5L/分で移送し、70mL/分で供給されるKPS水溶液と、35mL/分で供給されるTEMED水溶液とを振動式撹拌機に設置された2つの添加剤投入口から別々に添加し、混合を行った。振動式撹拌機から連続的に排出された反応溶液を、内部を窒素置換した重合容器に充填し、20℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から18時間後に、密閉容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が855質量%のヒドロゲルであった。
【0032】
(比較例1)
内部を窒素置換したステンレス容器(底部が曲面状、内径30cm、高さ40cm)に、純水18.5kgとDMAA1.98kgを加え、これにラポナイトXLG0.64kgをアンカー翼(翼径:20cm、高さ5cm×2段)で強撹拌(200回転/分)しながら1分間かけて添加した。無色透明の溶液が得られるまでに15分を要した。その後、TEMED溶液0.5kgを加えてラポナイトXLGの分散液(調整用液)を調製した。上記の調製溶液に、KPS水溶液1kgを加え、20℃の恒温水槽中で静置した。KPS添加後から重合が開始し粘度が上昇するまでに2分を要した。
【0033】
(比較例2)
内部を窒素置換したステンレス容器(底部が曲面状、内径30cm、高さ40cm)に、純水18.5kgとDMAA0.69kgを加え、これにラポナイトXLG1.60kgをアンカー翼(翼径:20cm、高さ5cm×2段)で強撹拌(200回転/分)しながら1分間かけて添加した。30分間撹拌を続けたが、水膨潤したラポナイトXLGが固まり、無色透明の溶液は得られなかった。
【0034】
(比較例3)
比較例1で調製したステンレス容器内の調製溶液を1.5L/分でスタティックミキサー(ノリタケ・カンパニー社製、N40;内径11mm、長さ200mm)へ移送し、70mL/分で供給されるKPS水溶液と混合を行った。スタティックミキサーから連続的に排出された反応溶液を、内部を窒素置換した密閉タンクに充填し、50℃の恒温水槽中で18時間静置して重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から18時間後に、密閉容器内に有機高分子と粘土鉱物からなる弾力性、強靭性のある無色透明で均一な円柱状の高分子ゲルが生成した。合成された高分子ゲルは水含有率([水/ゲル乾燥物]×100=)が760質量%のヒドロゲルであった。
【0035】
(残留モノマー量の評価方法)
各実施例、比較例で製造した有機無機複合体ヒドロゲルの残留モノマーの量は、以下の方法にて測定した。測定値を表1にまとめた。合成したヒドロゲル2.0gと純水100gをミキサー(オスターブレンダー;大阪ケミカル株式会社製)に入れ、15700回転で5分間処理し、ゲルスラリー液を得た。このスラリー液を80℃で1時間加熱撹拌し、抽出液を調整した。抽出液を冷却後、メンブランフィルター(細孔径:0.45μm)でゲル成分を除去し、HPLC(日本ウォータース社製; Separation Module 2695、UV Detector 2487; カラム:ジーエルサイエンス株式会社製Inertsil ODS−3 4.6mmID×250mm; 溶離溶媒組成:アセトニトリル/水=20/80; 検出波長:230nm)を用いて残留DMAAモノマーを一点検量線法により定量した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
(本発明で製造する有機無機複合ヒドロゲルの用途)
得られた有機無機複合ヒドロゲルは、優れた透明性、力学物性などを併せ持ち、その特徴を生かして、生活用品、医薬・医療、農業、土木、工業分野等の広い範囲で、特に振動吸収材料、延伸装置部品材料、人工臓器用材料、治療用材料、光学材料などに有用な材料である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明で用いる振動式撹拌機の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の連続製造工程の全体を示す概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1:ケーシング
2:撹拌体
3:軸
4:攪拌羽根
5:仕切板
6:導入口
7:流出口
8;振動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性ビニル基を有する水溶性有機モノマーと水膨潤性粘土鉱物とを振動式攪拌機(i)を用いて連続的に水中に分散させ、反応液を製造する工程、
重合開始剤を振動式攪拌機(ii)により前記反応液中に連続的に分散させる工程、
前記重合開始剤が分散した反応液中の前記水溶性有機モノマーを重合させる工程を順次行なう有機無機複合ヒドロゲルの製造方法であり、
前記振動式攪拌機(i)及び振動式攪拌機(ii)が、
上下端面が閉塞された筒状のケーシングと、該ケーシング内部に前記反応液が流通する流通路と、前記上下端面の一方に設けられた前記反応液の導入口と、他方の端面に設けられた流出口とを備え、
更に、前記流通路に配設され、前記反応液の流通方向に往復運動可能であり、軸部と該軸部の周囲に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備えており、
前記反応液の流通方向に往復運動する攪拌体により、前記反応液を攪拌する機構を有することを特徴とする有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−62478(P2009−62478A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232617(P2007−232617)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】