説明

有機無機複合体の製造方法

【課題】 ポリエステル中に微細な無機化合物を30質量%以上の高い含有率で均一に分散させた複合体を、簡易な合成操作で製造できる方法を提供する。
【解決手段】 二価フェノール類と、酸ハライドと、有機酸とを含有する有機溶剤溶液(1)と、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸化物からなる群から選ばれ少なくとも1つのアルカリ金属を含む2つ以上の金属元素を有する金属化合物又は珪酸アルカリを含有する水溶液(2)を、前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)の少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させることで、ポリエステル及びアルカリ金属以外の金属元素を有する金属化合物又はシリカを生成する工程1と、前記有機酸と前記金属化合物又は珪酸アルカリとを反応させアルカリ金属以外の金属元素を有する金属化合物又はシリカを生成する工程2とを同時に行う有機無機複合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用のポリマーであるポリエステルをマトリクスポリマーとする有機無機複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機無機複合体はマトリクスとなる有機ポリマー中に無機化合物を分散させた複合材料であり、有機ポリマーの加工性や柔軟性等と無機材料の耐熱性や硬度等の特性を併せ持った材料として注目されている。このような有機無機複合体は、そのまま素材として使用する他、汎用ポリマーの改質剤としても期待がなされている。
このような有機無機複合体の製造技術としては、従来、
1.有機化処理を行った粘土鉱物を層状の無機成分として用いる層剥離法や、
2.無機微粒子を有機ポリマーにポリマー溶融状態で直接混合することによる溶融混練法、あるいは、
3.金属アルコキシドを加水分解させる系に溶解したポリマーを共存させるゾル−ゲル法、等が知られている。
【0003】
1.の方法は、マトリクスとして使用する有機ポリマーがポリアミドであれば、粘土層が良好に剥離したいわゆるナノコンポジットが製造できるが、ポリアミド以外、例えばポリエステル等の低極性ポリマーでは分散が困難である。また粘土鉱物の含有率を10質量%以上とすることも困難である。また、有機化処理を行った粘土鉱物は非常に高価(通常5000円/kg以上)であり、得られる有機無機複合体の用途が限定される。
【0004】
また2.の方法は、固体の無機化合物の微粒子を直接樹脂に分散させる。固体状の無機化合物微粒子は、該無機化合物単体の粒径が小さいほど表面エネルギーが高いことにより凝集する傾向があるため、得られる有機無機複合体の無機微粒子径は混合前の粒径かそれ以上となる。無機微粒子径が粗大化するほど無機材料の特性は発揮できなくなるので、無機微粒子の含有率を高めようと多量に分散させた場合は、無機微粒子の凝集体が多々生じ無機導入量に比例した補強効果が期待できなくなる。
【0005】
また3.の方法は、選定するポリマーによって、比較的無機含有率が高く且つ無機成分が微分散した有機無機複合体を製造することができる。しかし、金属アルコキシドの加水分解と脱水縮合に週単位の極めて長時間を要することがあり、製造効率に劣る。また、無機原料である金属アルコシキドは、取り扱い性が悪い上に高価である。
このように、従来法では、含有できる無機化合物量に限界がある上、使用する原料が高価であり得られる有機無機複合体の用途が限られてしまうなどの問題があった。また使用できるポリマーの種類も限られているため、ポリエステル等のプラスチック用途における需要の大きいポリマーをマトリクスとした有機無機複合体を容易に得ることができなかった。
【0006】
これに対し、マトリクスとなるポリマーを合成させながら同時に無機化合物を析出させ、ポリマー中に微細な無機化合物を均一に分散させた複合体を、簡易な合成操作で、且つ珪酸ナトリウムやアルミン酸ナトリウム等の安価な無機原料を用いて製造できる方法がある。例えば、ポリアミドとシリカとの複合体の製造方法や(例えば特許文献1参照)、ポリアミド等の有機ポリマーと酸化アルミニウム等の金属化合物との複合体の製造方法(例えば特許文献2参照)、芳香族ポリエステルとシリカとの有機無機複合体の製造方法(例えば特許文献3参照)が知られている。
【0007】
しかし特許文献1及び2に記載の方法で得られる有機無機複合体は、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素といった極性ポリマーをマトリクスポリマーとしており、例えばポリマーの改質剤として利用する場合に相溶できるポリマーが限られるといった問題があった。
特許文献3に記載の方法は、芳香族ジカルボン酸ハロゲン化物の有機溶剤溶液と、二価フェノール類と水ガラスの水溶液を混合攪拌して重縮合させる方法であり、ポリエステルとガラスとの有機無機複合体が得られる。しかしながら、ニ価フェノールは水に溶解させて使用するために、水溶性のレゾルシンやハイドロキノン以外は効率よく反応しないといった問題があった。
特許文献3に記載の方法で、水溶性に乏しいビスフェノール等を二価フェノール類として使用した場合、二価フェノール類は水ガラス中のナトリウムイオンにより末端の-OHが−ONaにイオン交換されることにより一部溶解はされるが、この溶解に伴う水ガラスの単独析出反応を引き起こすこととなり(即ち水ガラスのSi−O−Naのナトリウムイオンが、2価フェノールのプロトンとイオン交換することで、Si−O―Hとなると、引き続き脱水重縮合を生じ、Si−O−Si結合を形成し固体として単独で析出する)、該文献が目的とする原料の完全溶解からの、無機成分が微粒化した複合体することができない。
また、該方法は、水ガラスをアルミン酸ナトリウム等に置き換えることもまた困難である。即ち水溶時に強アルカリになる無機化合物は、二価フェノール類と同時に溶解させようとすると、二価フェノール類のプロトンにより急速に中和され直ちに析出するため、複合体を合成できない。従って、アルミン酸ナトリウムや亜鉛酸ナトリウムを原料とする、酸化アルミニウム、酸化亜鉛を無機成分に持つ複合体を得ることができない。
【特許文献1】特開平10−176106号公報
【特許文献2】特開2005−036211号公報
【特許文献3】特開2003−252974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、汎用の原料を使用したポリエステルやポリ酸無水物をマトリクスポリマーとし、該ポリマーを合成させながら同時に無機化合物を析出させ、該ポリマー中に微細な無機化合物を高い充填率で均一に分散させた複合体を、簡易な合成操作で、且つ珪酸ナトリウムやアルミン酸ナトリウム等の安価な無機原料を用いて製造できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ポリエステルやポリ酸無水物の原料である二価フェノール類やジカルボン酸化合物や酸ハライド等のモノマーを全て有機溶剤に溶解し、無機化合物の原料であるアルカリ金属を含む金属化合物や珪酸アルカリを水に溶解し、それぞれの溶液を、少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させることで、容易に、ポリエステルやポリ酸無水物中に微細な無機化合物を、非常に高い濃度で均一に分散させた複合体が得られることを見出した。
【0010】
一般に酸ハライドは非常に反応性が高く、例えばベンゾイルクロライドと水とは常温で徐々に反応してしまう。これに対し本発明者らは既に、常温付近の有機溶媒中では短時間であれば、二価フェノール類やジカルボン酸化合物と酸ハライドとは反応せず安定に存在することを見出し、該安定な有機溶液と、アルミン酸ナトリウム等のアルカリ金属複合酸化物や珪酸アルカリ等の無機原料を溶解した水溶液と共存させることで初めて、ポリマー重合反応が開始され、且つ無機析出反応も同時に開始され、平行して反応が進むことを見出している(特願2008−513428)。
具体的には、二価フェノール類やジカルボン酸化合物や酸ハライド等のモノマーを全て有機溶剤に溶解した安定な溶液と、アルミン酸ナトリウム等のアルカリ金属複合酸化物や珪酸アルカリの水溶液とを、少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させることで、アルカリ金属により、二価フェノール類のヒドロキシ基やジカルボン酸化合物のカルボキシ基の水素原子が水素イオンとして解離し、アルカリ金属イオンとイオン交換反応を生じ、二価フェノール類やジカルボン酸化合物はアルカリ金属塩となる。アルカリ金属塩となった二価フェノール類やジカルボン酸化合物は反応性を著しく増し、酸ハライドと重縮合反応を生じる。
一方、アルミン酸ナトリウム等のアルカリ金属複合酸化物や珪酸アルカリはアルカリ金属と水素イオンとがイオン交換反応を生じ化合物末端にヒドロキシ基を生じ、これらが脱水重縮合反応を生じるために微細な無機化合物として析出し、高い含有率でポリエステル等の有機ポリマー中に均一に分散される。
【0011】
前記方法は背景技術に記載の1〜3の方法に比べ、ポリエステルに高い濃度で無機化合物を均一に分散させることができる画期的な方法である。しかしながら一定以上の無機化合物を含有させることが難しいといった問題があった。
前記方法において無機化合物の含有率を上げるには、ポリマー中のエステルや酸無水部位の密度を高くする方法や(該部位の重縮合が無機成分の析出反応を伴うことから、該密度が高い程無機含有率は高くなる)、無機原料中のアルカリ金属濃度を高くする方法(無機析出に先立ち無機原料中のアルカリ金属が二価フェノール類等とのイオン交換される必要があることから、該濃度が低い程無機含有率は高くなる)がある。しかしながら前述のポリマー中のエステルや酸無水部位の密度を高くする方法は使用可能なポリマー構造に制限があり、後述の無機原料中のアルカリ金属濃度を高くする方法は、工業原料としての価格の観点からあまり好ましくない方法である。
そこで本発明者は更に鋭意検討した結果、前記方法において、前記水溶液中に添加する無機原料を増量し、且つ、前記有機溶媒中には予め増量した無機原料を中和しうる量の有機酸を添加しておくことで、増量した無機原料の仕込量に比例して無機微粒子の濃度を高くすることができることを見いだした。
【0012】
具体的には、前記方法において、予め水溶液中に仕込む無機原料を増量し、且つ、有機溶剤中に、増量した無機原料を中和しうる量の有機酸を溶解させておく。
有機酸は、無機酸と異なり有機溶剤溶液に仕込むことができるので、ポリマー合成反応を開始させるまで水溶液中の無機原料と接触することがない。また、有機酸を使用した無機微粒子の析出反応は、前記ポリマー合成反応により発生するハロゲン化水素の作用機序と同様に、無機原料中のアルカリ金属が有機酸のプロトンとイオン交換することではじめて生じる。従って、有機酸を有機溶液中に仕込んでおくことで、ポリマー合成反応と同時に無機微粒子を析出させることができ、マトリクスポリマー中に無機微粒子が均一に分散されてなる有機無機複合体を得ることが可能となる。この反応は非常に定量的に進むので、無機原料の仕込量から、ポリマー合成反応で生成するハロゲン化水素でイオン交換される無機原料分を差し引いた無機原料量と等モルの有機酸量を仕込むことで、無機原料の仕込量に比例して有機無機複合体の無機微粒子濃度を高くすることができる。
【0013】
即ち、本発明は、二価フェノール類と、酸ハライドと、有機酸とを含有する有機溶剤溶液(1)と、
金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸化物からなる群から選ばれ少なくとも1つのアルカリ金属を含む2つ以上の金属元素を有する金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)を含有する水溶液(2)を、
前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)の少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させることで、
前記二価フェノール類のアルカリ金属塩を生成させ、更に該アルカリ金属塩を前記酸ハライドとを反応させてポリエステル及びアルカリ金属以外の金属元素を有する金属化合物又はシリカを生成する工程1と、
前記有機酸と、前記金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)とを反応させアルカリ金属以外の金属元素を有する金属化合物又はシリカを生成する工程2とを同時に行う有機無機複合体の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記製造方法により得た、無機微粒子を30〜80質量%含有する有機無機複合体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、汎用のポリマーであるポリエステルをマトリクスポリマーとし、各原料が完全に溶解した状態から該ポリマーを合成させつつ無機化合物を析出させ、該ポリマー中に微細な無機化合物を均一に分散させた複合体であり、具体的には、30質量%以上の高い濃度で分散された有機無機複合体を、簡易な合成操作で、且つ珪酸ナトリウムやアルミン酸ナトリウム等の安価な無機原料を用いて製造できる。無機微粒子を有機ポリマー中に物理的に混合する方法とは異なり、無機化合物を析出させながらポリマーを合成させるので、非常に微細な状態で複合化させることができる。また、本発明の方法は、無機原料の仕込量に比例して無機微粒子の濃度を高くすることができるので、得られる無機微粒子の濃度を任意に調節することができる。
有機酸としては、特に、カルボン酸化合物やスルホン酸化合物が好ましく用いられる。
【0016】
更に該反応は、汎用の攪拌装置を用いて、常温常圧下、短時間の1ステップで行うことが可能である。また、使用する原料は全て汎用の原料であり、特にアルカリ金属を含む金属化合物としてアルミン酸アルカリや珪酸アルカリを使用すると、原料費も非常に安価で済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の製造方法は、有機ポリマーの原料である二価フェノール類と無機原料である金属化合物(c−1)または珪酸アルカリ(c−2)の何れの材料とも、反応前はいずれかの溶媒に溶解状態であり、有機溶剤溶液(1)と水溶液(2)とを、少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させることで、マトリクスとなるポリマーの合成と無機化合物の析出とが同時に生じるボトムアップ型合成であることが特徴である。相溶あるいは分離の状態で有機溶剤溶液(1)と水溶液(2)とが同一容器即ち1つの反応容器中に存在し、且つ有機溶剤溶液(1)の一部もしくは全部と水溶液(2)の一部もしくは全部とが接触する。各々の溶液の一部が接触する場合とは、見た目反応容器中で分離した状態を指し、通常界面重合により反応は進む。一方各々の溶液の全部が接触する場合とは、見た目反応容器中で相溶した状態を指し、通常均一溶液重合により反応は進む。
【0018】
(有機溶剤溶液(1))
本発明におけるマトリクスとなるポリマーは、二価フェノール類と、酸ハライドとの重縮合反応で得られるポリエステルであることが、反応が容易であり好ましい。これらの化合物はいずれも有機溶剤に溶解しておく。
【0019】
(二価フェノール類)
本発明で使用する二価フェノール類は、酸ハライドと同時に有機溶剤に溶解可能な、2つのフェノール性水酸基を有する化合物である。
2つのフェノール性水酸基は、1つの芳香環上にあっても複数の芳香環上にあっても良い。これらは所望するポリマーの性質により適宜決定される。
2つのフェノール性水酸基が1つの芳香環上にある化合物としては、例えば、レゾルシン(1,3−ジヒドロキシベンゼン)、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)、カテコール(1,2−ジヒドロキシベンゼン)等が挙げられる。
また、2つのフェノール性水酸基がそれぞれ複数の芳香環上にある化合物としては、例えば、2,2’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、3,3’−5,5’−テトラメチルビフェノール(テトラメチルビフェノール)、等のビフェノール化合物、ビスフェノールS、ビスフェノールA、ビスフェノールH、ビスフェノールC、ビスフェノールE等のビスフェノール化合物、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のナフタレン骨格を持つ化合物、アントラセン等の芳香環が3つ以上の化合物のいずれかの芳香環に、置換部位は問わずに2つのフェノール性水酸基を有する化合物をあげることができる。
【0020】
また前記二価フェノール類は、酸ハライドと常温、常圧下では反応せず且つ使用する有機溶剤や後述の水溶液(B)と反応しないような置換基を有していてもよい。このような置換基の例としては、ハロゲン元素やアルキル基が挙げられる。
本発明においては、二価フェノール類の溶媒として有機溶剤を使用するので、水溶性が殆どないビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、ナフタレン骨格やアントラセン骨格等を持つ二価フェノール類等も使用することができる。
【0021】
なお本発明においては、エチレングリコールや1,4−ブタンジオール等の脂肪族アルキルジオール化合物では酸ハロゲン化物と重縮合反応が生じない。これは、脂肪族アルキルジオール化合物の水酸基の水素イオンの解離性が二価フェノール類と比べて極めて低いために、後述の金属化合物(c−1)または珪酸アルカリ(c−2)中のアルカリ金属イオンが脂肪族アルキルジオール化合物の水酸基の水素イオンとイオン交換反応できないためと考えられる。
【0022】
(酸ハライド)
本発明で使用する酸ハライドは、有機溶剤溶液(1)中での常温、常圧条件下では二価フェノール類、ジカルボン酸化合物、ジカルボン酸無水物とは反応せず、水溶液(2)と共存させることで始めて重縮合反応を生じるような2価のハライドを有する化合物であれば特に限定されない。
例えば、芳香族基を有する酸ハライドとしては、例えば、イソフタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、2つ以上の芳香環から構成される1,4−ジカルボキシナフタレン、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレン等の酸ジハロゲン化物が挙げられる。
また、脂肪族基を有する酸ハライドとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の酸ジハロゲン化物が挙げられる。
本発明では、酸ハライドを含む有機溶剤溶液を水溶液と共存させることから、酸ハライドとして比較的水に対して安定である芳香族酸ジハライドが特に好ましく用いられる。また、前記酸ハライドは、有機溶剤や後述の水溶液(B)と反応しないような置換基を有していてもよい。このような置換基の例としては、ハロゲン元素やアルキル基が挙げられる。
【0023】
また、本発明の製造方法においては、二価フェノール類の代わりにジカルボン酸化合物あるいはジカルボン酸無水物を使用し、前記酸ハライドとしてジカルボン酸ハロゲン化物を使用するとポリ酸無水物となり、本発明の製造方法においてはポリ酸無水物をマトリクスポリマーとした有機無機複合体も製造することが可能である。
ポリ酸無水物の場合は、使用するジカルボン酸化合物として芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物、芳香族ジカルボン酸無水物又は脂肪族ジカルボン酸無水物であることが好ましい。
【0024】
(ジカルボン酸化合物)
本発明で使用するジカルボン酸化合物は、酸ハライドと同時に有機溶剤に溶解可能な、2つのカルボキシ基を有する化合物である。ジカルボン酸化合物は脂肪族ジカルボン酸でも芳香族ジカルボン酸でも良い。
【0025】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、芳香環から構成された化合物としてはテレフタル酸、イソフタル酸等の1つの芳香環を有する化合物、1,4−ジカルボキシナフタレン、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレン等のナフタレン骨格を持つ化合物等の複数の芳香環を有する化合物、あるいは、ビフェニル−2,2´−ジカルボン酸等のビフェニル骨格を持つジカルボン酸等が挙げられる。これらは金属化合物(c−1)や珪酸アルカリ(c−2)を析出させるために用いる後述の有機酸とは異なり酸ハライドと重縮合反応を生じる必要があるため、カルボン酸が結合した炭素原子に隣接する炭素原子には置換基を有してないことが好ましい。
【0026】
また脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、エタン二酸(しゅう酸)、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、デカン二酸(セバシン酸)等が挙げられる。これらは金属化合物(c−1)や珪酸アルカリ(c−2)を析出させるために用いる後述の有機酸とは異なり酸ハライドと重縮合反応を生じる必要があるため、α位またはβ位の炭素原子に置換基を有していない必要があり、特に好ましいのは直鎖のジカルボン酸化合物である。
【0027】
(ジカルボン酸無水物)
本発明で使用するジカルボン酸無水物は、水と塩基の存在下で酸無水結合が加水分解されジカルボン酸になる化合物であればよい。
例えばテトラヒドロフラン−2,5−ジオン(無水コハク酸)、無水グルタル酸等を脂肪族ジカルボン酸無水物として例示することができる。加えて、無水フタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1、8−ナフタル酸無水物、1、2−ナフタル酸無水物等の芳香族ジカルボン酸無水物を例示することができる。これらの化合物は酸ハライドと反応せず且つ使用する有機溶剤や後述の水溶液(B)と反応しないような置換基を有していてもよい。このような置換基の例としては、ハロゲン元素やアルキル基が挙げられる。ジカルボン酸無水物は前記ジカルボン酸化合物よりも有機溶剤に対する溶解性が高いため、有機溶剤溶液(1)中の濃度を高めることができ、反応効率をより高くすることができる。
【0028】
(有機酸)
本発明で使用する有機酸は、有機溶剤に溶解し、前記二価フェノール類や酸ハライドと反応しないような化合物であり、且つ、珪酸アルカリやアルカリ金属化合物を中和して無機化合物を析出させることのできる化合物であれば特に限定はない。例えば、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、有機リン酸化合物、フェノール類化合物等を挙げることができる。
中でも、より無機微粒子濃度の高い有機無機複合体を得るためには、下記の性質を有するものが特に好ましい。
1.適当な水/有機溶剤分配係数を有する。このような有機酸は、後述の水溶液(2)と共存させた際に一部が水溶液相に移行するので、無機微粒子の析出反応がよりスムーズに進行する。
2.マトリクスポリマーの合成反応(重縮合反応)を阻害しない。
このような有機酸としては、カルボン酸化合物やスルホン酸化合物が好ましく、特に、4以上の炭素原子数を有するカルボン酸化合物や炭素原子数3以上のアルキル基を有するスルホン酸化合物が後述の理由から特に好ましい。
【0029】
(カルボン酸化合物)
カルボン酸化合物の中には、アルカリ金属化合物や珪酸アルカリ中のアルカリ金属とイオン交換反応する際に生じるカルボキシラート基が強い求核反応性を示すものがある。このようなカルボキシラート基は、合成系内に共存する生成中のポリマー末端に生じた酸ハライド等のカルボニル基炭素原子と反応し、伸長中のポリマー末端に酸無水基を生じさせるおそれがある。該酸無水基は時として、カルボン酸化合物自身のカルボニル基と反応することがあり、この場合生成中のポリマー末端が酸無水物結合により封止され、得られるポリマーの純度が低下する上分子量が低くなる場合がある。
従って、マトリクスポリマーとしてより高純度で高分子量のポリマーを所望する場合には、このような末端封止反応を起こす恐れのない、α位またはβ位の炭素原子に嵩高い基、即ち立体障害の高い基を有するカルボン酸化合物を用いることが好ましい。またこのような立体障害の高い基を有することで、有機溶剤に対する溶解性もより高くなり好ましい。
【0030】
(カルボン酸化合物のカルボニル基に対する立体障害の指標)
また、前記立体障害の高い基を有するカルボン酸化合物の指標として、タフトの立体因子(Es値)を使用することができる。Es値が小さいカルボン酸化合物程立体障害が大きいことを表し、即ちカルボニル基に対する攻撃が生じにくいことを示す。α位の炭素に立体障害がない酢酸でのEs値は0である。
本発明で使用するカルボン酸化合物は、Es値が−1.0以下であることが好ましく、さらには−1.5以下であることが好ましい。このようなEs値を有するカルボン酸化合物は、合成系内に共存する原料モノマー又はポリマー末端の酸ハライド等のカルボニル基炭素原子は反応せず、無機原料中のアルカリ金属をイオン交換した後は、そのまま合成後の洗浄処理により容易に合成系と分離することができる。
【0031】
Es値が−1.0以下のカルボン酸化合物の具体例としては、例えば、炭素原子数4以上で構成されるカルボン酸化合物が挙げられる。具体的には、ピバリン酸(2,2−ジメチルプロパン酸)、2,2−ジエチルプロパン酸、2,2−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、3,3−ジエチルブタン酸、2―エチルブタン酸等のα又はβ位が分岐した炭素原子数4〜12のアルキルモノカルボン酸、2,5−ジクロロ安息香酸、2,5−ジメチル安息香酸等の、オルト位に嵩高い基を持つ安息香酸等が挙げられる。
また、多価のカルボン酸化合物も使用することが可能である。多価のカルボン酸化合物は、1分子中でアルカリ金属とイオン交換できる部位が多いため、有機酸の使用量を減らすことができ特に好ましい。このような多価カルボン酸化合物の例としては、例えばジメチルマロン酸、イソコハク酸、1,2−ジメチルコハク酸、1,1,2,2−テトラメチルコハク酸等が挙げられる。
【0032】
(スルホン酸化合物)
スルホン酸化合物は、イオン交換反応の際に生じるスルホン酸アルカリが求核反応性を持たないため、前記カルボン酸化合物のように、合成系内に共存する生成中のポリマー末端に生じた酸ハライド等のカルボニル基炭素原子と反応する恐れがない。従ってスルホン酸化合物を使用することで、より高い分子量のポリマーを安定に得ることができる。更に炭素原子数3〜12のアルキル基を有することで、有機溶剤に対する溶解性がより高まり好ましい。該アルキル基の置換部位は特に限定されない。
【0033】
このようなスルホン酸化合物の例としては、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、デカンスルホン酸等のアルキル基置換スルホン酸化合物、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2,5‐ジメチルベンゼンスルホン酸等のベンゼンスルホン酸化合物、2,4‐ジメチルベンゼンスルホン酸、2‐ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、1,6−ナフタレンジスルホン酸等のナフタレンスルホン酸化合物、アントラキノンスルホン酸化合物、アントラセンスルホン酸化合物を例示することができる。
またスルホン酸化合物が水和物である場合は、使用する有機溶剤を適宜選択して使用すればよい。例えば、ある程度の極性を有する有機溶剤であるアセトンやテトラヒドロフランを選択し、且つ、前記二価フェノール類として加水分解に強い化合物を選択することで、有機無機複合体を問題なく得ることが出来る。
【0034】
(カルボン酸化合物とスルホン酸化合物との使い分け)
カルボン酸化合物とスルホン酸化合物は、解離定数が異なるために無機微粒子の析出速度が異なる。従って、同時に進行するポリマーの反応速度により、適宜使い分けすることが好ましい。
例えばカルボン酸化合物は、解離定数(pka)が4〜5と高く弱酸に相当する。即ちカルボン酸化合物が有するプロトンは、無機原料中のアルカリ金属とイオン交換する速度が遅く、無機微粒子の析出速度も遅い。従って、重縮合速度が遅いポリマー系で本発明の方法を行う場合は、カルボン酸化合物を使用することで、無機微粒子の析出速度とポリマーの合成速度とを合致させることができる。これより、重縮合速度が比較的遅いポリ尿素やポリウレタンの様なポリマー中にでも、無機微粒子をよりよく分散させることが可能である。
また、スルホン酸化合物は、解離定数(pka)が−2〜0と小さくやや強い酸に相当する。即ち、各種無機原料中のアルカリ金属とイオン交換しやすく無機化合物の析出速度が速い。従って、反応速度が早い脂肪族や半芳香族ポリアミドでの使用が好ましく、無機微粒子をよりよく分散させることが可能となる。
【0035】
(有機酸の使用量)
本発明における、有機酸と無機原料中のアルカリ金属とのイオン交換反応はほぼ定量的に進行する。従って、有機酸の使用量には特に制限なく、所望の有機無機複合体中の無機微粒子の濃度により適宜選択すればよい。
一方、有機酸が有機溶剤に完全に溶解していないと、水に溶解した無機原料との接触が十分に生じない上、予期せぬ副反応が生じ無機微粒子が析出しない場合がある。従って有機酸は有機溶剤に完全に溶解していることが好ましい。このため、使用する有機酸の種類により、有機溶剤は適宜選択することが望ましい。
更に、無機原料中のアルカリ金属のモル量に相当するプロトン量を供給できる量であることが好ましい。該モル量よりも少ない量であると、無機微粒子の析出作用が不十分となる場合があるので、具体的には、無機原料中のアルカリ金属のモル量に相当するプロトン量と同量かそれ以上であることが好ましい。
【0036】
(本発明で無機酸が好ましくない理由)
一方、本発明において無機酸は好ましくない。この理由は、水溶液中に存在する無機原料と先に反応し無機微粒子が析出してしまい、ポリマーと複合化させることできないことにある。これは無機酸が水溶性のために、通常有機溶剤に溶解できないことが大きな理由である。本発明においては、無機微粒子の析出速度とポリマー合成反応速度とが合致することでマトリクスポリマー中に無機微粒子が均一に分散された有機無機複合体が得られるが、無機酸を水溶液に溶解させた反応系では、無機微粒子の析出速度が早すぎることにより、無機酸と無機原料とを均一溶解した水溶液(2)と調製することができない。従って本発明においては、有機溶剤に溶解可能な有機酸を使用することが好ましい。
【0037】
(有機溶剤)
前記二価フェノール類、酸ハライド、及び有機酸は、いずれも有機溶剤に溶解した有機溶剤溶液(1)として使用する。使用できる有機溶剤としては、前記二価フェノール類や前記酸ハライドのいずれとも反応せずに溶解できる有機溶剤であれば特に制限はない。具体的な例としては、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、n−ブチルエーテル、アニソール等のエーテル類、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン類の他、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸アルキル、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、炭酸プロピレン等をあげることができる。またトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類は非常に極性が低いため、前記二価フェノール類の炭化水素部位が大きいことで極性が低く、完全に溶解させることができるときのみ用いることができる。
【0038】
有機溶剤として、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル等の、水可溶性もしくは水溶性である有機溶剤を使用すると、得られる前記有機溶剤溶液(1)と後述の水溶液(2)とが相溶した状態で反応することとなり、反応場が均一な溶液中である溶液重合で反応が進行し、得られる有機無機複合体は粉末状となる。
一方、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、クロロホルム、塩化メチレン等の、水難溶性もしくは水不溶性である有機溶剤を使用すると、得られる有機溶剤溶液(1)と後述の水溶液(2)とが分離した状態で反応することとなり、反応場が水と有機溶剤との界面である界面重合で反応は進行し、得られる有機無機複合体は塊状となる。
【0039】
有機溶剤溶液(1)中の二価フェノール類と酸ハライドとのモノマーのモル比は、有機無機複合体の合成反応が正常に進行すれば特に限定されないが、収率よく反応を進行させるためにはおよそ1:1であることが好ましい。
また、本発明での前記有機溶剤溶液(1)中の二価フェノール類と酸ハライドのそれぞれのモノマー濃度は、重合反応が十分に進行すれば特に制限されないが、各々のモノマー同士を良好に接触させる観点から、0.01〜3モル/Lの濃度範囲、特に0.05〜1モル/Lが好ましい。
また、前記有機溶剤溶液(1)は、その他反応を阻害しないような添加剤を適宜加えてもよい。
【0040】
(水溶液(2))
本発明における無機化合物の原料は、無機化合物のアルカリ金属塩である。具体的には、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ金属を含む2つ以上の金属元素を有する金属化合物(c−1)(以下金属化合物(c−1)と略す)、又は珪酸アルカリ(c−2)が、入手が容易であり安価であり好ましい。金属化合物(c−1)を原料とした場合はアルカリ金属以外の金属元素を有する金属化合物が析出し、珪酸アルカリ(c−2)を原料とした場合はシリカ(酸化ケイ素)が析出する。(以下、前記金属化合物(c−1)の析出体であるアルカリ金属以外の金属元素を有する金属化合物と、珪酸アルカリ(c−2)の析出体であるシリカを称して無機化合物(c)とする。また、金属化合物(c−1)と珪酸アルカリ(c−2)をまとめて無機原料と称する場合がある。)
【0041】
(金属化合物(c−1))
本発明で使用する金属化合物(c−1)は、具体的には、下記一般式(1)で表される。
【0042】
【化1】

【0043】
前記一般式(1)において、Aはアルカリ金属元素を表し、Mはアルカリ金属以外の金属元素を表し、Bは酸素原子、カルボキシ基、またはヒドロキシ基を表す。x、y、及びzは各々独立してA、MとBの結合を可能とする数である。(複合酸化物系の無機材料には不定比化合物(例えばNa1.6Al0.92.8 のような類が多いために、xyzともに整数とも小数とも定義できない。そのため、安定して存在しえる数を指す。)
前記一般式(1)で表される化合物は、水に完全または一部溶解し塩基性を示すものが好ましい。且つ、析出する金属化合物が、水に殆どまたは全く溶解しない化合物であることが好ましい。
【0044】
前記一般式(1)におけるBが酸素原子である化合物としては、例えば、亜鉛酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、亜クロム酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、スズ酸ナトリウム、タンタル酸ナトリウム、亜テルル酸ナトリウム、チタン酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、ジルコン酸ナトリウム等のナトリウム複合酸化物や、亜鉛酸カリウム、アルミン酸カリウム、亜クロム酸カリウム、モリブデン酸カリウム、スズ酸カリウム、マンガン酸カリウム、タンタル酸カリウム、亜テルル酸カリウム、鉄酸カリウム、バナジン酸カリウム、タングステン酸カリウム、金酸カリウム、銀酸カリウム、ジルコン酸カリウム等のカリウム複合酸化物、アルミン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、スズ酸リチウム、マンガン酸リチウム、タンタル酸リチウム、チタン酸リチウム、バナジン酸リチウム、タングステン酸リチウム、ジルコン酸リチウム等のリチウム複合酸化物のほかルビジウム複合酸化物が挙げられる。
【0045】
前記一般式(1)におけるBがカルボキシ基及びヒドロキシ基の両方を含む金属化合物(c−1)としては、例えば、炭酸亜鉛カリウム、炭酸ニッケルカリウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸コバルトカリウム、炭酸スズカリウム等が挙げられる。
前記金属化合物(c−1)は、水に溶解させて用いるために水和物であっても良い。また、各々を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0046】
金属化合物(c−1)の中でも、特に、アルミン酸アルカリ、スズ酸アルカリ、亜鉛酸アルカリ、炭酸ジルコニウムアルカリが特に好ましく用いられる。これらの金属化合物は、水溶性が高く溶解させた際の塩基性が強いため、前記マトリクスとなるポリマーの縮重合反応を進行させやすい。中でもアルミン酸アルカリは特に水溶性が高い上安価であるため最も好ましく用いられる。
【0047】
(珪酸アルカリ(c−2))
本発明で使用する珪酸アルカリ(c−2)は、例えば、JIS K−1408−1950に記載の珪酸ナトリウム(水ガラス)1号、2号、3号、4号が例となるMO・nSiOの組成式で、Mがアルカリ金属、nの平均値が1.8〜4のものが挙げられる。また、nの平均値が1.8以下でありMがナトリウムであるオルト珪酸ナトリウムやメタ珪酸ナトリウム、前記の珪酸ナトリウムのナトリウムが他のアルカリ金属に変更された、珪酸リチウム、珪酸カリウム、珪酸ルビジウム等も用いることができる。
【0048】
(水溶液(2)の溶媒)
前記金属化合物(c−1)又は前記珪酸アルカリ(c−2)は、水に溶解させ水溶液(2)として使用する。また、前記有機溶剤溶液との反応を相溶した状態で行いたい場合には、アセトンやテトラヒドロフラン等の極性有機溶剤を水溶液(2)の30質量%程度を上限にして混合し、溶解度を調節してもよい。
【0049】
また、水溶液(2)には有機ポリマーの合成を促進するために、水酸化アルカリ、炭酸アルカリ等の塩基性物質を溶解させてもよい。また、有機溶剤溶液(1)との混合性を高めるために界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。
【0050】
(製造方法)
本発明の有機無機複合体の製造方法は、前記二価フェノール類と酸ハライドと有機酸を含有する有機溶剤溶液(1)と、前記金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)を含有する水溶液(2)を、前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)の少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させることで、前記二価フェノール類のアルカリ金属塩を生成させ、更に該アルカリ金属塩を前記酸ハライドとを反応させてポリエステル及びアルカリ金属以外の金属元素を有する金属化合物又はシリカを生成する工程1と、前記有機酸と、前記金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)とを反応させアルカリ金属以外の金属元素を有する金属化合物又はシリカを生成する工程2とを同時に行うことを特徴とする。
本発明においては、二価フェノール類の仕込量に対して、金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)は大過剰に使用し、過剰分を有機酸と反応させることで、無機化合物(c)を非常に高い濃度で含有させることができる。
本発明での有機無機複合体の合成機構は以下のように推定している。
【0051】
(工程1 マトリクスとなるポリマーの合成反応)
前述の通り、前記二価フェノール類と前記酸ハライドとは、常温常圧下では塩基の不存在下では反応しない。即ち、前記二価フェノール類と前記酸ハライドと有機酸とを溶解させた有機溶剤溶液は常温下では反応せず安定に存在する。一方、前記金属化合物(c−1)又は前記珪酸アルカリ(c−2)の水溶液も安定である。
これらの安定な溶液を、少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させると、前記金属化合物(c−1)又は前記珪酸アルカリ(c−2)のアルカリ金属により、前記二価フェノール類のヒドロキシ基やカルボキシ基の水素原子が水素イオンとして解離し、アルカリ金属イオンとイオン交換反応を生じ、前記二価フェノール類はアルカリ金属塩となる。アルカリ金属塩となった前記二価フェノール類は反応性を著しく増し、前記酸ハライドとの重縮合反応が開始され、ポリエステルが生じる。具体的には、アルカリ金属塩として、ナトリウム金属塩の場合、フェノール性水酸基の水素原子が水素イオンとして解離し、ナトリウムイオンとイオン交換し、−ONa基が生じる。
【0052】
このようにアルカリ金属塩となった前記二価フェノール類は反応性を著しく増すことで、前記酸ハライドと重縮合反応を生じ、ポリエステルが生成する。その際に発生するNaCl等のハロゲン化アルカリは、合成系中の水や洗浄工程での水に溶解することで、合成系外に排出される。
【0053】
該反応は、前記二価フェノール類の代わりにジカルボン酸化合物やカルボン酸無水物でも可能である。ジカルボン酸化合物やカルボン酸無水物の場合は、カルボキシ基の水素原子が水素イオンとして解離し、ナトリウムイオンとイオン交換し、−COONaが生じる。
【0054】
(工程1 無機化合物の析出反応)
一方、アルカリ金属がプロトンとイオン交換された金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)は、無機析出反応である脱水重縮合を生じやすくなる。これにより、無機化合物(c)が析出する。(以下析出反応1と称する)
例えば珪酸ナトリウムを使用した場合では、前記イオン交換反応時に、−Si−ONaがシラノール基(−Si−OH)となる。生成したシラノール基が複数会合して脱水重縮合反応を生じて(−Si−O−Si−)の結合が生成する。これによりシリカ(無機化合物(c−2))が固体化して析出する。
【0055】
前記ポリマーの合成反応と無機化合物(c)の析出反応は、それぞれの反応の前駆物質が前記イオン交換反応時に同時に生じる。従って、どちらか一方の反応のみが一方的に生じることはなくほぼ同時に進行するものと考えられる。ポリマーが合成しながら同時に無機化合物を析出させるので、該ポリマー中に微細な無機化合物を均一に分散させた複合体を、簡易な合成操作で得ることができる。
【0056】
(工程2 有機酸による無機化合物の析出反応)
本反応においては、前記工程1におけるポリマー反応と無機化合物(c)の析出反応と、前記有機酸と前記金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)とを反応させ無機化合物(c)を析出する工程2とが同時に進行する。
本発明においては二価フェノール類の仕込量に対して、金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)を大過剰に仕込むため、前記工程1では使用されない余剰の金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)が存在する。これは、有機溶剤溶液(1)に仕込んでおいた有機酸とイオン交換反応(中和反応)する。これにより−OH末端を生成し脱水重縮合により無機化合物(c)が析出される。
工程2の反応は、二価フェノール類とのイオン交換反応同様に、水溶液(2)と有機溶剤溶液(1)との接触が起こらないと生じ得ないため、有機酸による無機析出反応が生じる極近傍ではポリエステルポリマーの合成反応が生じていると考えられる。従って、工程1の反応と工程2との反応が同時に進行しても、ポリエステル中に無機化合物(c)が均一に分散した有機無機複合体を得ることが可能であるのだと考えられる。
【0057】
(有機無機複合体の合成反応場)
前記合成反応の反応場は、有機溶剤溶液(1)と水溶液(2)とが相溶するか、非相溶であるかにより異なる。
前述の通り、有機溶剤として、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、アセトン、酢酸エチル等の、水可溶性もしくは水溶性である有機溶剤を使用すると、得られる前記有機溶剤溶液(1)と後述の水溶液(2)とが相溶した状態で反応することとなり、反応場が均一な溶液中である溶液重合で反応が進行し、得られる有機無機複合体は粉末状となる。この時得られるポリマーの分子量は低いものが多い。
一方、前述の通り、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、クロロホルム、塩化メチレン等の、水難溶性もしくは水不溶性である有機溶剤を使用すると、得られる有機溶剤溶液(1)と後述の水溶液(2)とが分離した状態で共存し反応することとなる。このとき、反応場が水と有機溶剤との界面であると、界面重合で反応は進行し、得られる有機無機複合体は塊状〜粗大粒子状となる。この時得られるポリマーの分子量は高いものが多い。
これらの重合方法は特に限定されず、所望する有機無機複合体の形状、ポリマーの分子量等により選択することが可能である。
【0058】
(有機溶剤溶液(1)と水溶液(2)の共存方法)
前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)とを、少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させるには、前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)とが接触する環境があれば特に限定はなく、通常は、攪拌翼を有する1つの反応釜に前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)とを同時に仕込めばよい。反応温度は特に高く設定する必要は無く、例えば−10〜50℃の常温付近の温度範囲で十分に反応が進行する。また、加圧や減圧は特に必要としない。有機無機複合体の合成反応は、用いるモノマー種や反応装置、スケールにもよるが、通常10分以下の短時間で完結する。
【0059】
具体的には、前記有機溶剤溶液(1)または前記水溶液(2)を仕込んだ反応釜中に、攪拌しながらもう1方の溶液を添加していく方法が挙げられる。前記有機溶剤溶液(1)及び前記水溶液(2)の仕込み順序については特に限定はないが、より好ましくは、前記有機溶剤溶液(1)を仕込んだ反応釜中に、攪拌しながら前記水溶液(2)を滴下し、前記水溶液(2)を徐々に添加していく方法であると、得られる有機無機複合体のポリマー成分であるポリエステルのエステル部位が切断する恐れもなく、良好な有機無機複合体を得ることができる。これは、アルカリ性水溶液が共存する状態ではエステル部位が切断する恐れがあり、アルカリ性を示す水溶液(2)と生成したポリエステルが長時間接触するのを避けるためである。
【0060】
(製造装置)
本発明で用いる製造装置としては、有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)とを良好に接触反応させることができる製造装置であればとくに限定されず連続式、バッチ式のいずれの方式でも可能である。連続式の具体的な装置としては大平洋機工株式会社製「ファインフローミルFM−15型」、同社製「スパイラルピンミキサSPM−15型」、あるいは、インダク・マシネンバウ・ゲーエムベー(INDAG Machinenbaugmb)社製「ダイナミックミキサDLM/S215型」などが挙げられる。また、バッチ式の場合は有機溶液と水溶液の接触を良好に行わせる必要があるので、アンカ−翼やマックスブレンド翼やファウドラ−翼等の攪拌力が強い攪拌装置を用いるのが好ましい。
【0061】
(その他の成分 金属化合物(c−3))
本発明の製造方法においては、異なる無機種を有する無機化合物を複数有する有機無機複合体を得ることも可能である。具体的には、例えば、前記金属化合物(c−1)に該当する金属化合物を複数種使用してもよいし、前記金属化合物(c−1)と前記珪酸アルカリ(c−2)とを併用させてもよい。
また、前記金属化合物(c−1)や前記珪酸アルカリ(c−2)とは異なる無機化合物を併用して、異なる無機化合物を複数有する有機無機複合体を得てもよい。具体的には、例えば、前記水溶液(2)に、塩基性水溶液に溶解し且つ中性溶液では析出する、前記金属化合物(c−1)とは異なる種の金属化合物(c−3)を添加する方法がある。この方法は、前記ポリマーの合成反応と前記無機化合物(c)の析出反応が進行するに従い、水溶液のpHが塩基性から中性に変化することを利用する。即ち、ポリマー生成反応初期では水溶液が塩基性であるために、金属化合物(c−3)は溶解状態のままであるが、有機無機複合化反応が進み水溶液が中性に近づくと、容易に析出し、異種の無機化合物を複数有する有機無機複合体が得られる。金属化合物(c−3)の析出反応は前記無機化合物(c)の析出反応とはやや遅れると推定されるために、得られる有機無機複合体は、ポリエステル中に前記無機化合物(c)が均一に分散され、その上に前記金属化合物(c−3)が担持された形状を有すると推定される。
【0062】
本発明で使用する金属化合物(c−3)の塩基性溶液への溶解量は、pH13の常温下の塩基性溶液に100mg/L以上が目安となる。該量よりも溶解量が小さい場合、得られる有機無機複合体の金属化合物(c−3)担持量が少なすぎて、金属化合物(c−3)に由来する機能を十分に発揮させることができない場合がある。また、本発明に用いる金属化合物(c−3)の中性溶液への溶解量は、pH6〜8の常温下の中性水溶液に30mg/L以下が目安となる。この量よりも溶解量が大きい場合には、該複合体の合成後のろ過や水洗の工程で金属化合物が流出し、担持効率が低くなり、目的とする担持量が得られにくくなる場合がある。
【0063】
本発明で使用する金属化合物(c−3)の金属種は、上記の溶解特性を示す化合物を有するものであればいずれの金属も用いることができる。リチウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、金、モリブデン、タングステン、パラジウム、ルテニウムなどの遷移金属、アルミニウム、亜鉛、インジウム、スズ、鉛、アンチモン等の典型金属を例示することができる。中でも、周期表第3〜第12族の遷移金属元素又は周期表第13〜16族の典型金属元素の物が好ましく使用される。また、金属元素が2種以上含まれる複合化合物を用いることもできる。また、化合物種としては上記溶解特性を満たすものであれば酸化物、ハロゲン化物、水酸化物や、各種金属のシュウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩等を制限なく用いることができる。そのため、本発明では極めて多種多様の金属酸化物を容易に担持することができる。
【0064】
本発明で使用する金属化合物(c−3)として、好適に用いられる金属化合物を例示すると、リン酸リチウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属化合物、酸化タングステン(VI)、酸化バナジウム(V)、酸化コバルト(II) 、水酸化コバルト(II) 、シュウ酸コバルト(II)、酸化ニオブ(II)、水酸化鉄(II)、酸化ニオブ(V)、酸化モリブデン(VI)、水酸化マンガン(II)、酸化金(III)、水酸化金(III)、ヨウ素酸銀(I)、炭酸銀(I)、酸化銀(I)、硫化銀(I)、酸化銅(I)、水酸化銅(II)、塩基性炭酸銅(II)、酸化銅(II)、リン酸銅(II)、シュウ酸銅(II)、酸化レニウム(VI)、水酸化パラジウム(II)、水酸化ルテニウム(IV)等の遷移金属化合物、酸化スズ(II)、水酸化スズ(II)、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化インジウム(III)、シュウ酸ニッケル(II)、酸化亜鉛(II)、水酸化亜鉛(II)、シュウ酸亜鉛(II)、酸化アンチモン(III)、酸化ガリウム(III)、酸化鉛(II) 、酸化鉛(IV)、リン酸鉛(II)、 水酸化鉛(II)等の典型金属化合物が挙げられる。これら金属化合物は水に溶解させて用いるため、水和物であっても良い。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
前記水溶液(2)中への前記金属化合物(c−3)の溶解方法としては、前記金属化合物(c−3)を溶解させることができ、且つ該水溶液(2)中の無機主成分の原料である金属化合物(c−1)及び珪酸アルカリ(c−2)を析出させることが無ければ制限は無い。例えば、予め所定量の水に金属化合物(c−1)及び珪酸アルカリ(c−2)を溶解した後に、金属化合物(c−3)を溶解させる方法、金属化合物(c−1)及び珪酸アルカリ(c−2)の濃厚な水溶液を作製し該水溶液に金属化合物(c−3)を溶解させたのち、水により希釈する方法、金属化合物(c−1)及び珪酸アルカリ(c−2)が液体である場合には、直接金属化合物(c−3)を溶解させた後に水で希釈する方法が挙げられる。前記水により希釈する方法は、金属化合物(c−3)が強アルカリであるほど溶解させやすいので好ましい。また、金属化合物(c−1)及び珪酸アルカリ(c−2)が析出しなければ適当に加温しても良い。
【0066】
(その他の成分 粘土鉱物)
また、前記水溶液(2)に、粘土鉱物を添加する方法がある。本発明に用いる粘土鉱物としては水中で金属化合物(c−1)及び珪酸アルカリ(c−2)と共存しても膨潤または微分散することができる材料であれば特に限定されないが、特にアルカリ金属イオン層間に持つ粘土鉱物、中でも、該アルカリ金属がナトリウムである粘土鉱物が好ましく用いられる。層間にアルカリ金属イオンを含有した粘土鉱物は、安価な粘土鉱物として知られているが、本材料は水中で膨潤または微分散し、その際にアルカリ性を示す。また、粘土層間のアルカリ金属もまた、金属化合物(c−1)や、珪酸アルカリ(c−2)中のアルカリ金属と同様に、ポリマーの合成を促進する。粘土層間のアルカリ金属としてはNaである粘土鉱物(Na型粘土鉱物)が最も水に対する膨潤性、溶解性が高いため好ましい。
【0067】
粘土構造として特に好ましいのはスメクタイトと呼ばれる群が挙げられ、その中でもさらに具体的にはモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等を例示することができる。
【0068】
(有機無機複合体の無機成分)
本発明の製造方法で得られる有機無機複合体において無機成分は、前述の通り、前記無機化合物(c)の微粒子と、前記金属化合物(c−3)や粘土鉱物を使用した際はそれらの微粒子とから構成される。
例えば、原料に金属化合物(c−1)を用いた場合には、無機成分は、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物類となる。また珪酸アルカリ(c−2)を用いた場合には二酸化ケイ素(シリカ)となる。中でも、酸化アルミニウム(アルミナ)や二酸化ケイ素(シリカ)は、得られる無機化合物の粒径が小さくなる傾向があり複合化しやすく特に好ましい。例えば耐熱付与剤、寸法安定付与剤として使用する場合は、できるだけ無機粒径が小さい方が高い効果が得られ、例えば平均粒径が500nm以下であるとより高い効果が得られ好ましい。
【0069】
(有機無機複合体全量100質量%に対する無機化合物(c)の含有率)
本発明の方法は、有機酸を併用するため、無機化合物(c)を高い濃度で含有させることが可能であり、具体的には無機化合物(c)を常に安定に30質量%以上含有させることが可能である。無機化合物(c)含有率が多くなりすぎると、逆にシート化や積層板等への加工性や樹脂への混練性が損なわれる場合があるため、上限は80質量%程度にとどめておくことが望ましい。
【0070】
(有機無機複合体全量100質量%に対する金属化合物(c−3)、粘土鉱物の含有率)
金属化合物(c−3)の含有率即ち担持量は、得られる有機無機複合体の用途により適宜選定されれば良く特に限定は無い。しかし、金属化合物(c−3)が前記無機化合物(c)の表面上に担持されることから、前記無機化合物(c)量よりも少ない量が現実的である。具体的には、有機無機複合体全量100質量%に対して最大量15質量%程度担持されているのが好ましい。
一方の粘土鉱物は、粘土層間のアルカリ金属が除去されることにより前記無機化合物(c)と同様に析出することより、前記無機化合物(c)と等しい量であっても差し支えない。
金属化合物(c−3)や粘土鉱物はナノサイズで担持されているので担持効果が高く、用途によっては0.01質量%以上担持すれば機能することもあるが、特に好ましい範囲は0.1質量%〜10質量%である。
【0071】
(有機無機複合体の形状)
得られる有機無機複合体の形状は特に限定はなく、製造方法、使用原料によって粉体状、塊状の各形状にて得ればよい。具体的には、有機ポリマーを合成するためのモノマーの種類や、有機溶液(A)の水への相溶性の影響、合成工程での複合体のせん断処理の影響が大きく、これらを変更することにより設計可能である。
【実施例】
【0072】
以下に具体例をもって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
(複合体の合成処理)
アセトン50gに有機酸としてピバリン酸(2,2−ジメチルプロパン酸)3.56gを入れ常温下で1分間攪拌することで完全に溶解させた。次に二価フェノール類として4,4’‐イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)を3.78g入れて常温下で5分間攪拌を行い完全に溶解させた。さらに酸ハライドとしてテレフタル酸ジクロライド3.37gをいれ常温下で5分間攪拌することにより淡黄色の透明均一な有機溶剤溶液(1−1)を得た。次に、イオン交換水60gに金属化合物(c−1)として浅田化学工業(株)製粉末アルミン酸ナトリウムP−100の5.94gを入れ常温下で10分間攪拌することにより、透明淡黄色の水溶液(2−1)を得た。次に、有機溶剤溶液(1−1)をアンカ−翼を持つ300cm攪拌装置の中に入れ、常温下で翼の回転数200回転/分で攪拌しつつ、1分間かけて水溶液(2−1)を滴下し、反応させた。水溶液(2)を滴下するに伴い白色生成物が発生した。この状態で攪拌を20分間継続することで白色の複合体を含有するスラリーを得た。尚、ピバリン酸のタフトの立体因子(Es値)は−1.54である。
【0074】
(複合体の洗浄処理)
このスラリーを95mmφのヌッチェ上に目開き4μmの濾紙を設置し0.015MPaで減圧濾過することにより白色のぺ−スト状の均一な含液有機無機複合体を得た。この粉体をメタノール200g中に分散させ常温下で30分間攪拌することによりメタノール洗浄を行いその分散液を、上記と同様な方法で濾過することで含メタノール有機無機複合体を得た。これを引き続き蒸留水250g中に分散させ常温下で30分間攪拌することにより水洗浄を行いその分散液を、上記と同様な方法で濾過することで含水有機無機複合体を得た。これを150℃で3時間熱風乾燥することにより、白色の有機無機複合体を得た。
【0075】
(実施例2)
実施例1の有機溶剤溶液(1−1)中のピバリン酸の量のみを10.68gに変更した有機溶剤溶液(1−2)を得た。次に水溶液(2−1)中の粉末アルミン酸ナトリウムの量を11.88gに変更した透明淡黄色の水溶液(2−2)を得て、これを用いた以外は実施例1と同様な合成、洗浄処理を行うことにより、白色の有機無機複合体を得た。
【0076】
(実施例3)
実施例1の有機溶剤溶液(1−1)中の有機溶剤のみを60gのアニソールに変更した有機溶剤溶液(1−3)を用いた以外は、実施例1と同様な組成の水溶液、及び同様な合成、洗浄処理を行うことにより、白色の有機無機複合体を得た。
【0077】
(実施例4)
実施例1の有機溶剤溶液(1−1)中の4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)を3,3’−5,5’−テトラメチルビフェノール(テトラメチルビフェノール)4.01gに、テレフタル酸ジクロライドをイソフタル酸ジクロライド3.37gに変更した黄色透明な有機溶剤溶液(1−4)を使用した以外は実施例1と同様な組成の水溶液、同様な合成、洗浄処理を行うことにより、淡黄色の有機無機複合体を得た。
【0078】
(実施例5)
実施例1の有機溶剤溶液(1−1)中の有機酸のみをピバリン酸から1,5−ナフタレンジスルホン酸・四水和物6.28gに変更した淡黄色透明な有機溶剤溶液(1−5)を調製した。次に水溶液(2−1)中の粉末アルミン酸ナトリウムを、珪酸アルカリ(c−2)として水ガラス1号の18.4gに変更した無色透明な水溶液(2−5)を用いた以外は実施例1と同様な合成、洗浄処理を行うことにより、白色の有機無機複合体を得た。
【0079】
(実施例6)
実施例5の有機溶剤溶液(1−5)中の1,5−ナフタレンジスルホン酸・四水和物の量を12.56gに変更した淡黄色透明な有機溶剤溶液(1−6)を調製した。次に水溶液(2−5)中の水ガラス1号を36.8gに変更した無色透明な水溶液(2−6)を用いた以外は実施例1と同様な合成、洗浄処理を行うことにより、白色の有機無機複合体を得た。
【0080】
(実施例7)
実施例5の水溶液(2−5)中の水ガラス1号を、金属化合物(c−1)として日本軽金属(株)製炭酸ジルコニウムカリウム水溶液“ジルメル1000”の21.8gに変更した無色透明な水溶液(2−7)を用いた以外は実施例5と同様な合成、洗浄処理を行うことにより、白色の有機無機複合体を得た。
【0081】
(参考例)
参考例1〜3は実施例1,5,7で合成した有機無機複合体と同様な成分を持ち、複合体合成工程で水溶液中の無機原料の増量及び有機酸を併用する手法を用いない場合に相当する。
【0082】
(参考例1)
実施例1の有機溶剤溶液(1−1)でピバリン酸を全く入れない以外は同一の組成である溶剤溶液(1−S1)を得た。次に水溶液(2−1)中の粉末アルミン酸ナトリウムの量を2.97gに変更した透明淡黄色の水溶液(2−S1)を得て、これを用いた以外は実施例1と同様な合成、洗浄処理を行うことにより、白色の有機無機複合体を得た。
【0083】
(参考例2)
実施例5の有機溶剤溶液(1−5)で1,5−ナフタレンジスルホン酸・四水和物を全く入れない以外は同一の組成である溶剤溶液(1−S2)を得た。次に水溶液(2−5)中の水ガラス1号の量を9.20gに変更した透明淡黄色の水溶液(2−S2)を得て、これを用いた以外は実施例1と同様な合成、洗浄処理を行うことにより、白色の有機無機複合体を得た。
【0084】
(参考例3)
実施例7の有機溶剤溶液(1−7)で1,5−ナフタレンジスルホン酸・四水和物を全く入れない以外は同一の組成である溶剤溶液(1−S3)を得た。次に水溶液(2−7)中の炭酸ジルコニウムカリウム水溶液の量を10.9gに変更した透明淡黄色の水溶液(2−S3)を得て、これを用いた以外は実施例1と同様な合成、洗浄処理を行うことにより、白色の有機無機複合体を得た。
【0085】
(比較例)
比較例1〜3は実施例1、5、7で合成した有機無機複合体と同様な成分を持つが無機原料のみを増量した場合に相当する。また、比較例4〜6は実施例1、5,7で合成した有機無機複合体と同様な成分を持つが、有機酸の合成系への導入ではなく無機酸を溶解させた水溶液を合成時に添加した手法である。
【0086】
(比較例1)
実施例1の有機溶剤溶液(1−1)でピバリン酸を全く入れない以外は同一の組成である溶剤溶液(1−H1)を得て、これを用いた以外は実施例1と同様な合成、洗浄処理を行うことにより、白色の有機無機複合体を得た。本操作では実施例1と較べて得られた複合体の量が少なかった。また、複合体スラリーを濾過した際の濾過液のpHをpH試験紙で調べるとpH13以上の強アルカリ性を示し(各実施例、参考例で本濾過液はほぼ中性となることが解っている)、無機原料のアルミン酸ナトリウムが完全に消費されずに濾液中に残存したことがわかった。
【0087】
(比較例2)
実施例5の有機溶剤溶液(1−5)で1,5−ナフタレンジスルホン酸・四水和物を全く入れない以外は同一の組成である溶剤溶液(1−H2)を得た。これを用いた以外は実施例5と同様な合成、洗浄処理を行うことにより、白色の有機無機複合体を得た。本操作でも実施例5と較べて得られた複合体の量が少なかった。また、複合体スラリーを濾過した際の濾過液のpHをpH試験紙で調べるとpH11以上のアルカリ性を示した上、本濾過液を放置したところ半透明のゲル状物が多量に析出し、無機原料の水ガラス1号が完全に消費されずに濾液中に残存したことがわかった。
【0088】
(比較例3)
実施例6の有機溶剤溶液(1−7)で1,5−ナフタレンジスルホン酸・四水和物を全く入れない以外は同一の組成である溶剤溶液(1−H3)を得た。これを用いた以外は実施例6同様な合成、洗浄処理を行うことにより、白色の有機無機複合体を得た。本操作でも実施例6と較べて得られた複合体の量が少なかった。また、複合体スラリーを濾過した際の濾過液のpHをpH試験紙で調べるとpH10以上のアルカリ性を示した上、本濾過液を放置したところ比較例2と同様に半透明のゲル状物が析出し、無機原料の炭酸ジルコニウムカリウムが完全に消費されずに濾液中に残存したことがわかった。
【0089】
(比較例4)
比較例1と同様な組成の有機溶剤溶液(1−H4)及び水溶液(2−H4)を調製した。次に、不足の酸を補うために蒸留水57.6gに35質量%塩酸3.63gを溶解させた水溶液(3)を調整した。水溶液(2−H4)をアンカ−翼を持つ300cm攪拌装置の中に入れ、常温下で翼の回転数200回転/分で攪拌しつつ、1分間かけて有機溶剤溶液(1−H4)と水溶液(3)を同時に滴下し反応させた。これらの溶液を滴下するに伴い実施例1よりも急速に白色生成物が発生した。この状態で攪拌を20分間継続することで白色の複合体を含有するスラリーを得た。このスラリーを濾過したところ、各実施例、参考例とはことなり無機成分リッチと推定される淡黄色粉末層が濾過面に偏析した。この層は各洗浄処理の濾過の際にも生成し、均一な有機無機複合体を得ることができなかった。これらの層を分離して150℃で3時間熱風乾燥することにより、有機無機複合体層と無機成分リッチ層と推定される2成分を得た。
【0090】
(比較例5)
比較例2と同様な有機溶剤溶液(1−H5)及び水溶液(2−H5)と比較例4で用いたのと同様な無機酸含有水溶液(3)を調製した。これらを用い比較例4と同様な方法により有機無機複合体を含有するスラリーを得た。このスラリーを濾過したところ無機成分リッチと思われる半透明層が濾過面に分離析出し、この状態は複合体を洗浄した後も同様であった。本例でも比較例4と同様に有機無機複合体層と無機成分リッチ層と推定される2成分を分離して得た。
【0091】
(比較例6)
比較例3と同様な有機溶剤溶液(1−H6)及び水溶液(2−H6)と比較例4で用いたのと同様な無機酸含有水溶液(3)を調製した。これらを用い比較例4と同様な方法により有機無機複合体を含有するスラリーを得た。このスラリーを濾過したところ比較例6と同様に無機成分リッチと思われる半透明層が濾過面に分離析出し、この状態は複合体を洗浄した後も同様であった。本例でも比較例4と同様に有機無機複合体層と無機成分リッチ層と推定される2成分を分離して得た。
【0092】
上記各実施例、参考例及び比較例で得られた有機無機複合体について以下の項目の測定、試験を行なった。
【0093】
(測定1)無機化合物の含有率の測定
有機無機複合体を絶乾後に精秤(複合体質量)し、これを空気中、600℃で1時間焼成しポリマー成分を完全に焼失させ、焼成後の質量を測定し灰分質量とした。下式により灰分含有率を算出した。各実施例、参考例、比較例とも本値を無機含有率(質量%)とした。但し成分が分離した比較例4〜6では各成分とも本測定を行い、無機含有率が高い方を成分1、無機含有率が低い方を成分2とした。各実施例、参考例で得た有機無機複合体の焼成後の無機成分はいずれも焼成前の複合体の形状を保っており、無機成分が微粒子状態で存在していることが強く示唆された。
【0094】
【数1】

【0095】
(測定2)蛍光X線による無機成分の検証及び残存アルカリ金属量の測定
有機無機複合体粉末約1gを開口部が直径10mmの測定用ホルダ−にセットし測定用試料とした。該試料を理化学電気工業株式会社製蛍光X線分析装置「ZSX100e」を用いて全元素分析を行った。
得られた全元素分析の結果を用い、測定用試料の試料データ(与えたデータは、試料形状;粉末、補正成分;セルロース、実測した試料の面積当たりの質量値)を装置に与えることにより、FP法(Fundamental Parameter法;試料の均一性、表面平滑性を仮定し装置内の定数を用いて補正を行い成分の定量を行う方法)にて該複合体中の元素存在割合を算出した。
【0096】
いずれの実施例で得られた試料でも、複合化する目的の無機化合物の元素(珪酸ナトリウムの場合がケイ素、アルミン酸ナトリウムの場合はアルミニウム、炭酸ジルコニウムカリウムの場合はジルコニウム)が大量に検出され、目的とする無機化合物の複合化がされていることが示された。
また、各実施例及び参考例では無機原料中のアルカリ金属(珪酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムの場合はナトリウム、炭酸ジルコニウムカリウムの場合はカリウム)は検出限界以下か、検出されたとしても極僅かであった。従って、無機化合物微粒子の測定方法で得られた灰分はアルカリ金属を実質的に含有しておらず、本発明では金属化合物(c−1)、又は珪酸アルカリ(c−2)からのアルカリ金属除去及び固体化反応が予測された反応機構の通り行われていることが明らかとなった。一方、過剰な無機原料を用いて有機酸を用いなかった比較例1〜3ではアルカリ金属含有率が1質量%を超え、アルカリ金属除去が完全に行われなかったことを示した。各実施例、参考例、比較例での結果をまとめた下記の表3〜5中ではアルカリ金属残存として、本測定でアルカリ金属量が0.2質量%以下の場合は「無し」、1質量%以上の場合は「有り」として記した。
【0097】
(測定3)有機ポリマーの検証
(フ−リエ変換型赤外分光分析:FT−IRの測定)
得られた有機無機複合体の粉末をKBr粉末と混合粉砕した試料を作製しKBrディスク法により、FT−IR(日本分光(株)製FT/IR−550)による測定を行った。
参照用のサンプルとして、実施例1〜3、5〜7ではビスフェノールA型の芳香族ポリエステル(ポリアリレート)であるユニチカ“U−ポリマー U−100”を粉砕して用いた。また実施例4では3,3’−5,5’−テトラメチルビフェノール(テトラメチルビフェノール)型の芳香族ポリエステル(ポリアリレ−ト)であるDIC株式会社製“N−80”を粉砕して用いた。
【0098】
その結果、いずれの実施例でも参照サンプルと同一のピ−ク位置に、殆ど同様なピ−ク強度を持つIRスペクトルデ−タ−が得られた。また、この結果、いずれの実施例でも有機ポリマーの合成が良好に行われていることが示された。
【0099】
以下、表1に各実施例の、表2に各参考例、比較例での試験に用いた原料溶液中に溶解させた材料を記した。尚、表1の有機溶剤溶液(1)の欄の上段は酸ハライド、中段は二価フェノール類、下段は有機酸である。また、表2では有機酸を用いていないので本欄の下段は空欄としてある。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】



【0102】
以下の表3に各実施例で得られた有機無機複合体の(測定1)から得られた無機含有率及び、(測定2)から得たアルカリ金属の残存状況を記した。
【0103】
【表3】

【0104】
以下の表4に各参考例で得られたで得られた有機無機複合体の(測定1)から得られた無機含有率及び、(測定2)から得たアルカリ金属の残存状況を記した。
【0105】
【表4】

【0106】
以下の表5に各比較例で得られた有機無機複合体の(測定1)から得られた無機含有率及び、(測定2)から得たアルカリ金属の残存状況を記した。尚、比較例4〜6では複合体成分に分離が生じたため、分離成分毎の測定結果を示した。
【0107】
【表5】

【0108】
表1に示したとおり、本発明の製造方法により有機ポリマー成分がポリエステルであり無機成分の含有率が30質量%以上である有機無機複合体が安価な無機原料を使用し且つ常温、常圧での短時間の合成操作により得ることができた。また、本複合体では無機成分内に原料由来のアルカリ金属がポリマー重縮合工程及び、添加した有機酸による中和工程により除去されていた。一方、比較例1〜3での結果の通り、無機原料を析出させうる有機酸を有機溶剤溶液に添加しなかった場合は、無機成分の一部にアルカリ金属が残存した上、無機成分の析出が生じ難くなったことにより無機含有率が参考例よりも逆に低下する結果となった。また、比較例4〜6に示したとおり、無機酸水溶液を利用した場合はポリマー合成と無機析出とが独立して生じたため無機成分リッチな部分が分離し均一な複合体が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明で得られた有機無機複合体は成形等の処理で加工が可能であり構造材料や耐熱材料として用いることができる。また、得られた有機無機複合体を他の樹脂に溶融混練、添加することにより、該樹脂に対して無機化合物(c)による強度、弾性率、耐衝撃性、ガスバリア性、電子伝導性、帯電防止特性等の性質を付与できる。本発明で得られた有機無機複合体は無機含有率が高いため特に無機成分の導入を目的とした添加剤としての機能が優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価フェノール類と、酸ハライドと、有機酸とを含有する有機溶剤溶液(1)と、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸化物からなる群から選ばれ少なくとも1つのアルカリ金属を含む2つ以上の金属元素を有する金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)を含有する水溶液(2)を、前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)の少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させることで、前記二価フェノール類のアルカリ金属塩を生成させ、更に該アルカリ金属塩を前記酸ハライドとを反応させてポリエステル及びアルカリ金属以外の金属元素を有する金属化合物又はシリカを生成する工程1と、前記有機酸と、前記金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)とを反応させアルカリ金属以外の金属元素を有する金属化合物又はシリカを生成する工程2とを同時に行うことを特徴とする有機無機複合体の製造方法。
【請求項2】
前記金属化合物(c−1)がアルミン酸アルカリ、スズ酸アルカリ、亜鉛酸アルカリ又は炭酸ジルコニウムアルカリである、請求項1に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項3】
前記有機酸が、カルボン酸化合物又はスルホン酸化合物である、請求項1又は2に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの製造方法により得た、無機微粒子を30〜80質量%含有することを特徴とする有機無機複合体。

【公開番号】特開2009−270049(P2009−270049A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123258(P2008−123258)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】