説明

有機無機複合体を用いた粘着部材

【課題】外部刺激により粘着性を示す有機無機複合体を用いた粘着テープ、特に、両面粘着性が可能な、離型紙フリーの粘着テープを提供すること。
【解決手段】水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物により形成された三次元網目構造からなる高分子ゲルを乾燥した、大気雰囲気下で非粘着性であって、水または有機溶媒との接触、または加熱により、粘着性を示す有機無機複合体をテープの片面または両面に有する粘着テープ。本発明を用いると、離型紙を用いないで両面粘着性を有するテープが得られ、産業廃棄物として捨てられる離型紙を使用しないですむ。また、そのために低コストで両面粘着性を有するテープの製造が可能であり、水や溶媒、加圧、加熱などにより粘着性が誘起されるため、必要な箇所のみに粘着性が与えられ、また、粘着性の強さを使用時に制御できるなどの効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック材料、金属材料、木材、紙類、布製品等を貼り合わせる際に使用する粘着テープ、粘着シート等の粘着部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学・電気・自動車・建築・医療などの多くの産業において、粘着テープ、特に二つの部材を接合するのに用いられる両面に粘着性を有する両面粘着テープの必要性は近年、益々増加している。これまで、両面粘着テープは、大気雰囲気下で両面が粘着性を示すテープを、離型紙を間に挟んだ形で提供されているのが一般的である。使用に当たっては、離型紙と共に切断し、離型紙と反対側の粘着面を部材に貼り付け、次いで、離型紙を剥離した後、別の部材を接合させる。この過程で、離型紙は消耗品として用いられ、最終的に廃棄物として捨てられる。また、離型紙が両面粘着テープから剥離しにくかったりして、上記の両部材の接合に手間取る問題もあった。
【0003】
ところで、水溶性有機高分子と水膨潤性粘土鉱物とが複合化して形成された三次元網目中に水が包含されている有機無機複合ヒドロゲルが知られている(特許文献1)。この文献中には該ヒドロゲルの乾燥体に関する技術も記載されているが、この乾燥体を粘着剤として使用する技術に関しては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−53629号公報(請求項、段落(0060))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、水または有機溶媒との接触、或いは加熱等の外部刺激により粘着性を示す材料を用いた粘着部材、および両面粘着性が可能な、離型紙フリー(離型紙を用いない)の粘着部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究に取り組んだ結果、水溶性のラジカル重合性有機モノマーから得られる重合体と水膨潤性粘土鉱物とからなる三次元網目を有する高分子ゲルを乾燥して得られる有機無機複合体を用いることにより、大気雰囲気で非粘着性であるが、水または有機溶媒との接触、或いは加熱等の外部刺激により粘着性を示す粘着部材、また、両面粘着性が可能な、離型紙を用いない両面粘着部材を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、大気雰囲気下で非粘着性であり、水又は有機溶媒との接触或いは加熱により粘着性を示す粘着剤層(C)を支持体の片面または両面に有する粘着部材であって、
前記粘着剤層(C)が、水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する有機無機複合体を用いた層であることを特徴とする粘着部材を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、大気雰囲気下で非粘着性であり、水又は有機溶媒との接触或いは加熱により粘着性を示す粘着剤層(C)を片面に有し、反対面に、大気雰囲気で粘着性を示し、且つ前記粘着剤層(C)と大気雰囲気下で容易に剥離可能な粘着剤層(D)を有する粘着部材であって、
前記粘着剤層(C)が、水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する有機無機複合体を用いた層であることを特徴とする粘着部材を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、大気雰囲気下で非粘着性であり、水又は有機溶媒との接触或いは加熱により粘着性を示す粘着剤層(C)を用いた粘着部材であって、
前記粘着剤層(C)が、水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する有機無機複合体を用いた層であることを特徴とする粘着部材を提供するものである。
【0010】
更に、本発明は、大気雰囲気下で非粘着性であり、水又は有機溶媒との接触或いは加熱により粘着性を示す粘着剤層(C)を形成するための材料であって、
水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有することを特徴とする前記粘着剤層(C)用の有機無機複合体を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明における粘着部材を用いると、離型紙を用いないで両面粘着性を有する部材が得られ、産業廃棄物として捨てられる離型紙を使用しないですむこと、また、そのために低コストで両面粘着性を有する部材の製造が可能であること、水や溶媒、加圧、加熱などにより粘着性が誘起されるため、必要な箇所のみに粘着性が与えられ、また、粘着性の強さを使用時に制御できるなどの効果を有する。かかる粘着部材は、数多くの種類の部材を接合するのに用いられるため、各種用途へ適用でき、特に電機部品用、電子部品用、機械装置用、自動車用、住宅・建築用、農業用、土木用、医療部材用、美容用、健康保持・スポーツ用具用などに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)を以下、水溶性有機モノマー重合体(A)と記載する。また、本明細書における粘着部材とは、幅狭で非常に長く、柔軟性のある、帯状の材料である粘着テープや、薄くて幅が広い粘着シート及び粘着フィルム等、種々の形状、寸法の材料を含む。
【0013】
本発明における粘着部材は、大気雰囲気下では非粘着性を示し、且つ、水または有機溶媒との接触、及び/または加熱により、粘着性が誘起される有機無機複合体を用いた粘着剤層(C)を、支持体の片面または両面に有する形態を基本とする。
【0014】
本発明で使用する支持体としては、粘着剤層を支持し得るものであれば特に制限されず、伸縮性又は非伸縮性の支持体を用いることができる。例えば、紙、布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウムシート、ナイロン、アクリル、綿、レーヨン、アセテート等、各種の材質のものを使用することができる。
【0015】
本発明において、大気雰囲気下では非粘着性であり、且つ、水または有機溶媒との接触、及び/または加熱により、粘着性が誘起される粘着剤層(C)に用いる有機無機複合体としては、具体的には、水溶性有機モノマー重合体(A)と層状に剥離した水膨潤性粘土鉱物(B)が分子レベルで複合化し、三次元網目を形成している高分子ゲルを乾燥して得られる有機無機複合体があげられる。なお、水溶性有機ポリマー重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)との結合は、主に水素結合、イオン結合、配位結合のいずれかによるものであり、少量の共有結合を含むものは用いることが可能であるが、共有結合の導入量が増すと比較例において示すように急激に誘起される粘着性のレベルが低下する。
【0016】
本発明における水溶性のラジカル重合性有機モノマーとしては、水に溶解する性質を有し、水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物と相互作用を有するものが好ましく、例えば、粘土鉱物と水素結合、イオン結合、配位結合、共有結合等を形成できる官能基を有するものが好ましい。これらの官能基を有する水溶性のラジカル重合性有機モノマーとしては、具体的には、アミド基、アミノ基、エステル基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基などを有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーが挙げられ、アミド基やエステル基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーがより好ましく、アミド基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーが特に好ましい。なお、本発明で言う水には、水単独以外に、水と混和する有機溶媒をとの混合溶媒で水を主成分とするものが含まれる。
【0017】
アミド基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーとしては、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体モノマー、メタクリルアミド、メタアクリルアミド誘導体モノマーがあげられ、特にアクリルアミドまたはその誘導体モノマーは好ましく用いられる。具体的には、アクリルアミド誘導体モノマーとしては、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミドが、一方、メタアクリルアミド誘導体モノマーとしては、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミドが挙げられる。ここでアルキル基としては炭素数が1〜4のものが特に好ましく選択される。一方、エステル基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーとしては、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレートなどがあげられる。
【0018】
かかる水溶性有機モノマー重合体としては、例えば、ポリ(N−メチルアクリルアミド)、ポリ(N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(アクリロイルモルフォリン)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(N−メチルメタクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)、ポリ(N−アクリロイルピロリディン)、ポリ(N−アクリロイルピペリディン)、ポリ(N−アクリロイルメチルホモピペラディン)、ポリ(N−アクリロイルメチルピペラディン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メトキシエチルアクリレート)、ポリ(エトキシエチルアクリレート)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(エトキシエチルメタクリレート)が例示される。水溶性有機モノマー重合体としては、以上に示した単一の重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーからの重合体の他、これらから選ばれる複数の異なる重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーを重合して得られる共重合体を用いることも有効であり、例えば、特に、優れた共重合体の一つとして、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)とポリ(メトキシエチルアクリレート)の共重合体があげられる。
【0019】
本発明における水溶性有機モノマー重合体(A)は、上記水溶性有機モノマーを重合したものであるが、重合体に柔軟性を付与し、且つ、外部刺激により粘着性を発現し、部材との接着性を高めるために、更に、他の水溶性のラジカル重合性有機モノマーを併せて用いることは特に有効である。具体的には、水溶性のラジカル重合性有機モノマーとして、上記したアクリルアミド、メタクリルアミド、またはそれらの誘導体であるアミド基含有水溶性モノマー(A1)に加えて、エチレングリコールまたはプロピレングリコール残基をモノマー中に有するアクリルエステルモノマー(A2)、及び/または、水酸基、メトキシ基、カルボン酸基、スルフォン酸基、エポキシ基、リン酸基を含むアクリルエステルモノマー(A3)を含むものが用いられる。A2モノマーの例としては、式1で示されるエチレングリコール残基をモノマー中に含むアクリルエステルモノマー、式2で示されるプロピレングリコール残基をモノマー中に含むアクリルエステルモノマーが挙げられる。また、A3モノマーの例としては、式3〜式11で示されるモノマー、及びアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、メチロールアクリルアマイド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、A1に対するA2及び/またはA3のモル比は特に制限されず、目的に応じて選択して用いられる。
【0020】
【化1】

(式中、nは2〜100の整数を、RはH又はCHを表す。)
【0021】
【化2】

(式中、nは1〜3の整数を、RはH又はCHを表す。)
【0022】
【化3】

(式中、nは1〜5の整数を、RはH又はCHを表す。)
【0023】
【化4】

(式中、RはH又はCHを表す。)
【0024】
【化5】

(式中、RはH又はCHを表す。)
【0025】
【化6】

(式中、RはH又はCHを表す。)
【0026】
【化7】

(式中、RはH又はCHを表す。)
【0027】
【化8】

(式中、RはH又はCHを表す。)
【0028】
【化9】

(式中、RはH又はCHを表す。)
【0029】
【化10】

(式中、RはH又はCHを表す。)
【0030】
【化11】

(式中、nは10〜20の整数を、mは5〜10の整数を、RはH又はCHを表す。)
【0031】
本発明における有機無機複合体に用いる粘土鉱物(B)としては、水に膨潤性を有するものであり、好ましくは水によって層間が膨潤する性質を有するものが用いられる。より好ましくは少なくとも一部が水中で層状に剥離して分散できるものであり、特に好ましくは水中で1ないし10層以内の厚みの層状に剥離して均一分散できる層状粘土鉱物である。例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などが用いられ、より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。
【0032】
本発明における水溶性有機モノマー重合体(A)に対する水膨潤性粘土好物(B)の質量比(B/A)は、0.01〜1.0であることが好ましく、より好ましくは、0.02〜0.7、特に好ましくは、0.05〜0.5である。この範囲であれば、大気雰囲気下で非粘着性であり、外部刺激により十分な粘着性の誘起を起こさせることができる。
【0033】
本発明では、高分子ゲルにおいて、更に他の水溶性有機高分子(E)を複合しておくことも外部刺激により発現する粘着性を高めるために好ましく用いられる。用いる水溶性有機高分子(E)としては、水に溶解または混和することができる有機分子または有機高分子であり、特に水膨潤性粘土鉱物(B)と相互作用できるものが好ましい。具体的には、エーテル基、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基などの親水性官能基を有する水溶性有機高分子であり、例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N−メチルアクリルアミド)、ポリ(N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(アクリロイルモルフォリン)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(N−メチルメタクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)、ポリ(N−アクリロイルピロリディン)、ポリ(N−アクリロイルピペリディン)、ポリ(N−アクリロイルメチルホモピペラディン)、ポリ(N−アクリロイルメチルピペラディン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、アガロース、アルギン酸、カラギーナン、コラーゲン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース誘導体、キタンサンガム、ジェランガム、キトサンなどが挙げられる。これらは単独または複数を組み合わせて用いられる。これらを高分子ゲルと複合させる方法としては、あらかじめ高分子ゲル調製時の反応液に混合して用いるか、または、高分子ゲルが得られた後、水または溶媒に溶解させておき、高分子ゲルに含浸させる方法が用いられる。
【0034】
更に本発明では、非粘着性を示す材料中に、加熱や加圧により、変質して粘着性を示すようになる成分を含ませておくことも有効に用いられる。
【0035】
本発明における高分子ゲルを乾燥して得られる有機無機複合体は、高分子ゲルを支持体と複合化して薄膜状に形成したもの、高分子ゲルを薄膜状に形成したもののいずれもが用いられる。また、高分子ゲルを乾燥して得られる有機無機複合体の外部刺激による粘着性を向上させるため、切断した高分子ゲル面を用いることや、粉砕した高分子ゲル面を用いること、高分子と水膨潤性粘土鉱物を混合により三次元網目構造を有する高分子ゲルとしたものを用いることなどが、いずれも好ましく用いられる。
【0036】
具体的には、高分子ゲルを乾燥後、粉末にした高分子ゲル乾燥物を支持体の片面又は両面に含ませたもの、或いは高分子ゲルをゲル状態で水を加えて粉砕してスラリー状にしたものを支持体の片面又は両面に含ませたものが特に好ましい例として挙げられる。
【0037】
本発明における粘着部材は、大気雰囲気下では粘着性を有せず、外部刺激により粘着性を発現する有機無機複合体を用いた粘着剤層(C)を粘着部材の片面に有する場合と、それを両面に有する場合のいずれも用いられる。片面に有する場合、もう一方の面には、大気雰囲気下で粘着性を有し、且つ、反対側の有機無機複合体面と重ねた場合は容易に剥離する性質を有する粘着材料を用いた粘着剤層(D)を積層することが可能である。粘着剤層(D)は、粘着剤層(C)と支持体を挟んで積層されていてもよく、支持体を使用せずに両者が直接接するように積層された形態であってもよい。
【0038】
粘着剤層(D)として使用できる粘着材料としては、具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、スチレン−イソプレン系ゴムなどのゴム系エラストマー、炭素数2〜10の(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基や、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボン酸や、メチロールアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を含む官能基含有モノマーとの共重合体であるアクリル系エラストマー、シリコーンゴムやシリコンレジンなどからなるシリコーン系エラストマー、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート成分とポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリオキシプロピレンジオール、ポリテトラメチレングリコールジオール、ポリオキシエチレンジオールなどのポリオール成分からなるウレタン系エラストマー、その他、ポリビニルエーテル系、エチレン酢酸ビニル系などのエラストマーを挙げることができる。
【0039】
更に、本発明の粘着部材は、大気雰囲気下で非粘着性であり、水又は有機溶媒との接触或いは加熱により粘着性を示す粘着剤層(C)を単独で使用してもよい。この場合、粘着剤層(C)の片面に水または有機溶媒を接触させ、或いは加熱等の外部刺激を与えるとその面のみが粘着性を発現して片面の粘着部材となる。粘着剤層(C)の両面に外部刺激を与えると両面の粘着部材となる。
【0040】
以上の結果、本発明における粘着部材は、大気雰囲気下で非粘着性の有機無機複合体を両面または片面のいずれに有する場合でも、積層したり、巻いて重ねて置く場合に間に離型紙を入れる必要性がない特徴を有し、最終的に廃棄する離型紙を用いないで済むほか、離型紙を剥離するのに手間がかかるのを防ぐことができる。
【0041】
本発明において、粘着性を誘起する外部刺激としては、水または有機溶媒との接触、圧力、熱、超音波などが用いられ、特に好ましくは、水または有機溶媒との接触、及び/または加熱が用いられる。有機溶媒としては、粘着性を誘起するものであれば良く必ずしも限定されないが、低沸点で揮発性の高いもの、もしくは安全性の高いものがより好ましく用いられる。具体的には、前者としては、アルコール、エーテル、ケトン類など、後者としては、グリセリンやグリコール類などがあげられる。また、これらを混合して用いることは有効である。いずれの場合でも、水や有機溶媒を加熱しておくことは、有機無機複合体に粘着性を誘起させるのにより有効である。また、加熱、圧力、超音波の強さは、粘着性を誘起する範囲で選択して用いられ、特に限定されない。
【0042】
本発明により得られる両面に有機無機複合体を有する粘着テープを用いた場合、多くの部材を貼り合わせることが可能である。貼り合わせ可能な部材の例としては、プラスチック、ゴム・エラストマー、セラミック、ガラス、金属、木材、その他があげられる。具体的例としては、プラスチックとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などがあげられ、セラミックとしては、素焼きタイル、カーボン、アルミナ、コンクリートなどがあげられ、金属としては、ステンレス、アルミ、銅、鉄、洋銀などがあげられ、その他としては、紙、布、皮革、皮膚などがあげられる。
【0043】
本発明において得られる粘着部材を用いた場合、上記の部材を2N/cm以上、好ましくは5N/cm以上、より好ましくは10N/cm以上のT字型90°剥離強度を示す結果が得られる。
【実施例】
【0044】
次いで本発明を実施例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
【0045】
(実施例1、2)
水膨潤性粘土鉱物には、[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na0.66の組成を有する水膨潤性合成ヘクトライト(商標ラポナイトXLG)を、水溶性有機モノマーには、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA、株式会社 興人製)を用いた。DMAAは精製により重合禁止剤を取り除いてから使用した。重合開始剤は、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)をKPS/水=0.40/20(g/g)の割合で水溶液にして使用した。触媒は、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を使用した。
【0046】
20℃の恒温室において、ガラス容器に、純水38.04gと0.457gのラポナイトXLGを加え、無色透明の溶液を調製した。これにDMAA3.96gを加えて無色透明溶液を得た。次にKPS水溶液2.0gとTEMED32μlを攪拌しながら加え、この溶液を、厚さ30μmの紙製テープを含む型内に注入し、20℃の恒温水槽中で20時間静置して重合を行うことにより、紙の内部および両面に高分子ゲルを形成した。得られた高分子ゲル/紙複合体の両表面(高分子ゲル面)を薄く(約100μm)はぎ取り、次いで、25℃で20時間、次いで80℃で30分間乾燥して、紙テープの両面に高分子ゲル乾燥体(有機無機複合体)を有する両面テープ1を調製した。乾燥時の両面テープ1の厚みは90μmであり、紙製テープの両面に約30μmの高分子ゲルを乾燥して得られる有機無機合体層が形成されていた。この両面テープ1は離型紙を用いることなく、大気雰囲気中で巻物状に巻き上げることができた。その後、両面テープ1の片面に水蒸気(実施例1)またはメタノール(実施例2)を当てることで、粘着性が発現し、厚さ5mmの合板に貼り付けた。貼り付けた両面テープ1の乾燥後の接着強度をT字(90°)剥離試験により行ったところ、接着強度として8.7N/cm(実施例1)、10.5N/cm(実施例2)が得られた。また、合板に貼り付けた後、更に貼り付けた両面テープ1の上面を同じように水蒸気(実施例1)またはメタノール(実施例2)で湿した後、厚さ5mmのもう一枚の合板を貼り合わせることができた。
【0047】
尚、接着強度(T字(90°)剥離試験)は引張試験機(オートグラフAGS-H、島津製作所製)を用いて行った。サンプルは、幅1.5cm、長さ6cmとし、室温(25℃)の条件下、毎分100mmの速度で引っ張った。
【0048】
(実施例3、4)
水溶性有機モノマーとして、DMAAの代わりに2−メトキシエチルアクリレート(MEA)(アクリックスC−1、東亜合成株式会社製)を5.2g、合成ヘクトライトXLGの使用量を0.64gとすること、および高分子ゲル面を薄くはぎ取ることをしない以外は実施例1と同様な方法で紙テープの両面に厚み約40μmの高分子ゲル乾燥体(有機無機複合体)を有する両面テープ2を調製した。
【0049】
この両面テープ2は離型紙を用いることなく、大気雰囲気中で巻物状に巻き上げることができた。その後、両面テープ2の片面に水蒸気を当てることで、粘着性が発現し、ポリスチレン製の板(厚さ2mm)(実施例3)とポリプロピレン製のシート(厚さ0.5mm)(実施例4)に貼り付けた。貼り付けた両面テープ2の乾燥後の接着強度をT字(90°)剥離試験により行ったところ、接着強度として7N/cm(実施例3)、5N/cm(実施例4)が得られた。また、ポリスチレン板(実施例3)とポリプロピレンシート(実施例4)に貼り付けた後、更に貼り付けた両面テープ2の上面を同じように水蒸気で湿した後、それぞれもう一枚のポリスチレン板(実施例3)とポリプロピレンシート(実施例4)を貼り合わせることができた。
【0050】
(実施例5、6)
水溶性有機モノマーとして、MEAを4.2gとDMAA0.8gを用いる以外は実施例3と同様な方法で紙テープの両面に高分子ゲル乾燥体(有機無機複合体)を有する両面テープ3を調製した。
【0051】
この両面テープ3は離型紙を用いることなく、大気雰囲気中で巻物状に巻き上げることができた。その後、両面テープ3の片面に水蒸気を当てることで、粘着性が発現し、ポリイミド製のフィルム(厚さ0.1mm)(実施例5)とステンレス板(厚さ0.5mm)(実施例6)に貼り付けた。貼り付けた両面テープ3の乾燥後の接着強度をT字(90°)剥離試験により行ったところ、剥離前にテープ3が破断した。ポリイミドフィルム(実施例5)及びステンレス板(実施例6)に対する接着強度は、共に10N/cm以上であることが判明した。また、ポリイミドフィルム(実施例5)及びステンレス板(実施例6)に貼り付けた後、更に貼り付けた両面テープ3の上面を同じように水蒸気で湿した後、それぞれもう一枚のポリイミドフィルム(実施例5)とステンレス板(実施例6)を貼り合わせることができた。
【0052】
(実施例7−実施例16)
水溶性有機モノマーとして、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)3.4gとメトキシポリエチレングリコールアクリレート(23EGA;NKエステル AM230G;新中村化学株式会社製)(式1のn=23、R=Hのモノマー)を2.9g(モノマー比:DMAA/23EGA=54/46)、合成ヘクトライト(ラポナイトXLG)を0.64g、KPS水溶液2.0g、TEMED32μLを用いて、酸素を遮断した条件下、20℃で20時間重合して高分子ゲルフィルムを調製し、それを25℃で20時間、次いで80℃で30分間乾燥して、高分子ゲル乾燥体からなる厚み200μmの有機無機複合体フィルム1を得た。有機無機複合体フィルム1は非粘着性を示したが、水と接触させることにより、粘着性を示した。粘着性を示す有機無機複合体フィルム1を表1に示す基材と貼り合わせ、乾燥後のT字剥離強度を測定した。基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ0.1mm)(実施例7)、ポリメチメタクリレート(PMMA)フィルム(厚さ0.1mm)(実施例8)、ポリカーボネート(PC)板(厚さ1mm)(実施例9)、天然ゴムフィルム(厚さ0.05mm)(実施例10)、ガラス板(厚さ2mm)(実施例11)、タイル(厚さ5mm)(実施例12)、ステンレス板(厚さ0.5mm)(実施例13)、アルミ板(厚さ0.5mm)(実施例14)、銅板(厚さ0.3mm)(実施例15)、紙(実施例16)、皮革(ウシ)(厚さ2mm)(実施例17)、木材(赤松)(実施例18)を用いた。表1に示すように、いずれも強い接着強度を示した。
【0053】
【表1】

【0054】
(実施例19〜23)
水溶性有機モノマーとして、DMAA3.1gと23EGA(式1のn=23、R=Hのモノマー)2.6gと2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA;ライトエステルHOA、共栄社化学株式会社製)(式3のn=2、R=Hのモノマー)1.0g(実施例19)、DMAA3.1gと23EGA2.6gとメトキシジプロピレングリコールアクリレート(2PGA;ライトアクリレートDPM−A、共栄社化学株式会社製)(式2のn=2、R=Hのモノマー)1.0g(実施例20)、DMAA3.4gと23EGA2.7gと2−アクリロイロキシエチルコハク酸(実施例21;HOA−MS、共栄社化学株式会社製)(式6のR=Hのモノマー)0.2g、DMAA3.0gと23EGA2.4gと2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸(実施例22;HOA−MPL、共栄社化学株式会社製)(式7のR=Hのモノマー)0.5g、DMAA3.0gと23EGA2.4gとカルボキシジカプロラクトンアクリレート(実施例23;アロニックス M−5300、東亜合成株式会社製)(式8のR=Hのモノマー)0.5g、DMAA3.0gと23EGA2.4gとグリシジルメタクリレート0.3g(実施例24;ライトエステルG、共栄社化学株式会社製)(式4のR=CHのモノマー)を用いて、実施例7と同じ手順でそれぞれ有機無機複合体フィルム2〜6を得た。有機無機複合体フィルム2〜7はいずれも非粘着性であったが、水と接触させることにより、粘着性を示した。粘着性を示す有機無機複合体フィルム2〜7をガラス板に貼り付け、乾燥させた。T字剥離試験を行って剥離強度を測定したところ、剥離強度は実施例19が28N/cm、実施例20が25N/cm、実施例21が30N/cm、実施例22が28N/cm、実施例23が28N/cm、実施例24が30N/cmであった。実施例11の剥離強度を更に向上させている。
【0055】
(実施例25)
実施例7の有機無機複合体フィルム1において、23EGAの代わりにメトキシポリエチレングリコールアクリレート(9EGA,NKエステル AM90G;新中村化学株式会社製)(式1のn=9、R=Hのモノマー)2.9gを用いた以外は実施例7と同じ方法で有機無機複合体フィルム8を調製した。有機無機複合体フィルム8は非粘着性を示したが、水と接触させることにより、粘着性を示した。粘着性を示す有機無機複合体フィルム8をガラス板に貼り付け、乾燥させた。T字剥離試験を行って剥離強度を測定したところ、剥離強度は非常に強く、18N/cmであった。
【0056】
(実施例26)
水溶性有機モノマーとして、DMAA2.4gと2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA;ライトエステルHOP−A、共栄社化学株式会社製)(式3のn=3、R=Hのモノマー)2.1gを用いて、実施例7と同じ手順で有機無機複合体フィルム9を得た。有機無機複合体フィルム9は非粘着性を示したが、水と接触させることにより、粘着性を示した。粘着性を示す有機無機複合体フィルム9の両端にPETフィルムを貼り付け、乾燥させた。有機無機複合体フィルム9を挟みこんだ2枚のPETを引張り、剥離強度を測定したところ、剥離強度は25N/cmであった。
【0057】
(実施例27)
水溶性有機モノマーとして、DMAA3.4gと23EGA2.7gと2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(ライトエステルP−1M、共栄社化学株式会社製)(式5のR=CHのモノマー)0.3gを用いて、実施例7と同じ手順でそれぞれ有機無機複合体フィルム10を得た。有機無機複合体フィルム10は非粘着性を示したが、水と接触させることにより、粘着性を示した。粘着性を示す有機無機複合体フィルム10を銅板に貼り付け、乾燥させた。T字剥離試験を行って剥離強度を測定したところ、剥離強度は25N/cmであった。実施例15の剥離強度を更に向上させている。
【0058】
(実施例28)
水溶性有機モノマーとして、DMAA4.0gを用いて、それ以外は実施例7と同じ手順で有機無機複合体フィルム11を得た。有機無機複合体フィルム11は非粘着性を示した。有機無機複合体フィルム11をポリエチレングリコール200(PEG)(和光純薬株式会社製)の10%水溶液に浸漬して300%均質に膨潤させた。膨潤した有機無機複合体フィルム11を40℃で4時間、80℃で30分間保持し乾燥させた。重量変化より約30重量%のPEGが有機無機複合体中に導入されたことが確認できた。乾燥後、PEGを含有した有機無機複合体フィルム11には粘着性は見られなかった。一方、水と接触させると非常に強い粘着性が現れた。この粘着性のある有機無機複合体フィルム11をPETフィルムに貼り付けT字剥離試験を行い剥離強度を測定した。剥離強度は1.5N/cmであった。また、PEGを含有しない有機無機複合体フィルム11を水に接触させ、発現した粘着性の粘着強度を同じように測定したところ、剥離強度は0.4N/cmであった。また、粘着性のあるPEGを含有する有機無機複合体フィルム11を合板に貼り付けた後、乾燥させて、接着強度を測定した。接着強度は約8N/cmであり、強いものであった。
【0059】
(実施例29)
実施例7で得られた有機無機複合体フィルム1の表面を部分的に水と接触させた。水と接触した部分だけで粘着性が発現した。この表面をPETフィルムの上に載せ、軽く圧力を加え押さえた。室温で20時間乾燥させた。水と接触した部分だけがPETフィルムと接着していた。
【0060】
(実施例30)
水溶性有機モノマーとして、MEA5.2gを用いて、それ以外は実施例7と同じ手順で有機無機複合体フィルム12を得た。有機無機複合体フィルム12は非粘着性を示した。有機無機複合体フィルム12をPETフィルムに挟み込み、120℃で10分間加熱プレスを行った。加熱プレス後、有機無機複合体フィルムとPETフィルムは接着していた。有機無機複合体フィルム12を挟みこんだ2枚のPETフィルムをT字に引張り、剥離強度を測定した。剥離強度は15N/cmであった。一方、プレス温度を室温とした以外は同じ条件で10分間プレスを行った場合は、有機無機複合体フィルムとPETフィルムは接着しなかった。
【0061】
(実施例31)
実施例5と同様な手段により、紙テープの片面に高分子ゲル乾燥体(有機/無機複合体)を有するテープを調製した。この面は、大気雰囲気下で粘着性を示さなかった。もう片方の紙テープ面には、市販のアクリル系粘着剤(固形分約40%、ファインタックMD327、DIC株式会社製)100gと硬化剤(ファインタックD−45、DIC株式会社製)0.5gの混合液を塗布し、80℃で乾燥して、次いで、50℃で2日間熱処理を行い、厚さ35μmの粘着剤層を形成させた。この粘着剤を塗布した面は大気雰囲気下で粘着性を有し、様々の基材に貼り付けることができた。しかし、この面を反対側の高分子ゲル乾燥体の面と重なるように積層しても両者は容易に離すことができ、この両面塗工テープを離型紙なしで巻き取り、また取り出すことができた。このテープの粘着面をPETフィルムに貼り付けた後、テープの粘着性を持たない表面を水に接触させると粘着性が発生し、他の基材を貼り付けることができた。具体的には、水により粘着性が発現した面に更に別のPETフィルムを貼り付けた後、乾燥させることにより、テープの両面にPETフィルムが張り付いたものが得られた。
【0062】
(実施例32)
水分散性有機モノマーとして、DMAA5g、水膨潤性合成ヘクトライト(XLG)0.8g、実施例1で用いたKPS水溶液2.5gを47.5gの水に均質に分散混合した重合溶液を調製した。この重合溶液を60mLのガラス容器に入れ、50℃で20時間保持して、無色透明なゲルを得た。得られたゲルを5mmほどの大きさに切断して、ポリプロピレン製のトレイ容器に入れ、40℃で24時間かけて乾燥させた。更に、乾燥したゲルを粉砕機(ミルサーIFM-700G、岩谷株式会社製)に入れ、粉砕して、粉体状のゲル乾燥物を得た。粉体状のゲル乾燥物5gを水100gに入れ、撹拌して流動性のあるゲル分散体を得た。この流動性のあるゲル分散体を不織布に塗布し、乾燥させた後、更に、反対の面にもゲル分散体を塗布し、乾燥させて、ゲル乾燥粉末の集合体からなる塗膜を両面に持つテープ(厚さ約0.1mm)を得た。テープの断面を顕微鏡で観察したところ、ゲル乾燥物は不織布の内部まで入り込んでおり、ゲル乾燥物は不織布を挟んで一体化していた。このテープは離型紙を用いることなく、大気雰囲気中で巻物状に巻き上げることができた。その後、テープの片面を水と接触させると粘着性が発現し、合板に貼り付けることができた。貼り付けたテープの乾燥後の接着強度をT字(90°)剥離試験により行ったところ、剥離する前にテープが破断した。破断強度から接着強度は少なくとも5N/cm以上であることが判った。また、合板に貼り付けた後、更に貼り付けたテープの上面を同じように水で湿した後、厚さ5mmのもう一枚の合板を貼り合わせることができた。
【0063】
(実施例33)
水分散性有機モノマーとして、DMAA4.3g、23EGA3.6g、水膨潤性合成ヘクトライト(XLG)0.8g、実施例1で用いたKPS水溶液2.5gを47.5gの水に均質に分散混合した重合溶液を調製した。この重合溶液を60mLのガラス容器に入れ、50℃で20時間保持して、無色透明なゲルを得た。得られたゲル50gと水100gを粉砕機に入れ、粉砕してペ−スト状のゲルを得た。このペースト状ゲルを不織布に塗布し、乾燥させた後、更に、反対の面にもペースト状ゲルを塗布し、乾燥させて、ペースト状ゲル乾燥物を両面に持つテープ(厚さ約0.12mm)を得た。テープの断面を顕微鏡で観察したところ、ゲル乾燥物は不織布の内部まで入り込んでおり、ゲル乾燥物は不織布を挟んで一体化していた。このテープは離型紙を用いることなく、大気雰囲気中で巻物状に巻き上げることができた。その後、テープの片面を水と接触させると粘着性が発現し、PETフィルムに貼り付けることができた。貼り付けたテープの乾燥後の接着強度をT字(90°)剥離試験により行ったところ、剥離する前にテープが破断した。破断強度から接着強度は少なくとも6N/cm以上であることが判った。また、PETフィルムに貼り付けた後、更に貼り付けたテープの上面を同じように水で湿した後、厚さ5mmのもう一枚のPETフィルムを貼り合わせることができた。
【0064】
(比較例1)
水分散性粘土鉱物を用いないで、水溶性有機モノマーとして、DMAA4g、KPS水溶液2.0g、TEMED32μLを用いて、酸素を遮断した条件下、20℃で20時間重合して高分子含水フィルムを調製し、それを25℃で20時間、次いで80℃で30分間乾燥して、高分子乾燥体からなる厚み200μmの高分子フィルム1を得た。高分子フィルム1は非粘着性を示し、水と接触させると粘着性を示した。粘着性を示す高分子フィルム1の両面に実施例24と同じように2枚のPETを貼り付け乾燥させた。実施例24と同じように剥離強度を測定した。接着強度は0.5N/cm以下で接着面は非常に脆かった。
【0065】
(比較例2)
水分散性粘土鉱物を用いないで、水溶性有機モノマーとして、MEA5.2g、KPS水溶液2.0g、TEMED32μLを用いて、比較例1と同じ方法で高分子フィルム2を得た。高分子フィルム2は粘着性を示した。比較例1と同じように2枚のPETを貼り付け乾燥させた。比較例1と同じように剥離強度を測定した。接着強度は0.3N/cm以下で接着面は非常に弱いものであった。
【0066】
(比較例3)
水分散性粘土鉱物の代わりに有機化合物の架橋剤(N,N‘−メチレンビス(アクリルアミド))を0.05g使用し、水溶性有機モノマーとして、DMAA4g、KPS水溶液2.0g、TEMED32μLを用いて、比較例1と同じ方法で高分子ゲルフィルムを調製し、それを25℃で20時間、次いで80℃で30分間乾燥して、高分子ゲル乾燥体からなる厚み高分子フィルム3を得た。高分子フィルム3は非粘着性であり、水と接触させるとわずかに粘着性を示した。比較例1と同じように粘着性を示す有機フィルム3の両面に2枚のPETを貼り付け乾燥させた。比較例1と同じように剥離強度を測定した。接着強度は0.4N/cm以下接着面は非常に弱く脆いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気雰囲気下で非粘着性であり、水又は有機溶媒との接触或いは加熱により粘着性を示す粘着剤層(C)を支持体の片面または両面に有する粘着部材であって、
前記粘着剤層(C)が、水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する有機無機複合体を用いた層であることを特徴とする粘着部材。
【請求項2】
大気雰囲気下で非粘着性であり、水又は有機溶媒との接触或いは加熱により粘着性を示す粘着剤層(C)を片面に有し、反対面に、大気雰囲気で粘着性を示し、且つ前記粘着剤層(C)と大気雰囲気下で容易に剥離可能な粘着剤層(D)を有する粘着部材であって、
前記粘着剤層(C)が、水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する有機無機複合体を用いた層であることを特徴とする粘着部材。
【請求項3】
大気雰囲気下で非粘着性であり、水又は有機溶媒との接触或いは加熱により粘着性を示す粘着剤層(C)を用いた粘着部材であって、
前記粘着剤層(C)が、水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する有機無機複合体を用いた層であることを特徴とする粘着部材。
【請求項4】
前記水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)が、アミド基含有水溶性モノマー(A1)と、エチレングリコール又はプロピレングリコール残基をモノマー中に有するアクリルエステルモノマー(A2)或いは水酸基、メトキシ基、カルボン酸基、スルフォン酸基、エポキシ基又はリン酸基を含むアクリルエステルモノマー(A3)との重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の粘着部材。
【請求項5】
大気雰囲気下で非粘着性であり、水又は有機溶媒との接触或いは加熱により粘着性を示す粘着剤層(C)を形成するための材料であって、
水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有することを特徴とする前記粘着剤層(C)用の有機無機複合体。

【公開番号】特開2011−184476(P2011−184476A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47709(P2010−47709)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000173751)一般財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】