説明

有機無機複合充填材

【課題】歯科用修復材組成物に使用した際に、天然歯と同様に表面滑沢性に優れ重合収縮が少ない有機無機複合充填材であって、充分なレントゲン造影性を有し且つ機械的強度の高い歯科用修復材組成物を得ることが可能な有機無機複合充填材を提供する。
【解決手段】歯科修復材料用の有機無機複合充填材を、最大粒径が5μm以下で且つ平均粒径が0.05〜2μmのレントゲン造影性を有するガラス粉末:50〜80重量%と平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン造影性を有する金属化合物:10〜40重量%とを最大で90重量%含む(メタ)アクリレート化合物を硬化し粉砕したたものとする。その平均粒径は、10〜30μmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレントゲン造影性を有する歯科用修復材に使用される充填材として最適な有機無機複合充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な歯科用修復材組成物は、重合時に基材となるモノマーと、ガラス粉末等の充填材と、モノマーを硬化させるための重合触媒とから構成されている。そして充填材であるガラス粉末には平均粒径が0.1〜5μmのガラス粉末が使われていた。この歯科用コンポジットレジンと呼ばれる歯科用修復材組成物は、治療後の確認のためにレントゲン造影性があることが望まれるので、ガラス粉末中にレントゲン造影性を有する物質を配合させることにより硬化後の歯科用修復材組成物にレントゲン造影性を与えていた。
【0003】
しかしながら、平均粒径が0.1〜5μmのガラス粉末を使用したのでは、歯科用修復材組成物が「ベタつき」易い問題、即ち、専用のヘラ等で歯牙の窩洞等へ充填する際にそのヘラに歯科用修復材組成物が付着してしまい操作性が悪いという問題があった。またこのガラス粉末は、粒子の比表面積が大きいので歯科用修復材組成物中のモノマー成分を多く必要とする。これは歯科用修復材組成物中のガラス粉末の占める割合が少なくなることを意味しているので、結果として硬化後の歯科用修復材組成物の重合収縮が大きくなってしまうという問題と、機械的強度が劣るという問題と、レントゲン造影性が不足するという問題とがあった。
【0004】
この「ベタつく」問題と重合収縮の問題とを改善する手段として、最大粒径が10μm以下で且つ平均粒径が0.1〜5μmのガラス粉末とメタクリレート若しくはアクリレートのモノマーとを混合し、モノマーを重合硬化させ、その後粉砕して平均粒径が5〜50μmの有機無機複合充填材を使用した歯科用修復材組成物もある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このガラス粉末を使用した有機無機複合充填材のみを充填材として使用した歯科用修復材組成物では、充填材中の無機含有量が非常に低くなってしまうので、熱膨張係数が高くなって辺縁漏洩の大きな原因となるばかりか機械的強度も弱くなるため、ガラス粉末やコロイダルシリカなどの他の充填材と併用せざるを得ず、その結果歯科用修復材組成物の硬化後の面が滑沢でなくなるという欠点があった。更に、このガラス粉末を使用した有機無機複合充填材では屈折率の影響を受け易いため、ガラス粉末の屈折率をモノマーの重合後の屈折率とを合わせる必要がある。ところがメタクリレート若しくはアクリレートのモノマーは重合硬化することによりその屈折率が変化するという性質があるので、ガラス粉末とモノマーの屈折率の関係が硬化前後で変化してしまい透明性が損なわれてしまうという問題もあった。
【0005】
一方、レントゲン造影性を与えるために、ナノサイズのシリカ粒子に加えて重金属酸化物粒子等の物質を充填材として組成物に直接配合した歯科材料も開発されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、重金属酸化物粒子の平均直径が0.1μm未満の場合ではモノマーの硬化後の屈折率との違いから硬化後の歯科用修復材組成物に天然歯と同様な透明性を出すことができないという問題があり、更に有機無機複合充填材を配合せずに組成物に無機充填材のみを直接配合したのでは従来の微粒子充填材の欠点であった組成物の操作性が劣るという問題が残る。
【0006】
本出願人は以前に、平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン不透過性を有する微粒子充填材と(メタ)アクリレートモノマーとを混合し硬化させ粉砕して作製された平均粒径が5〜50μmの有機無機複合充填材を開発し前述の問題点を解決した(特許文献5参照。)。しかしながら、この有機無機複合充填材を用いた歯科用修復材組成物では使用に際して曲げ強度等の機械的強度が不足する場合や、レントゲン造影性が不足することがあった。
【0007】
【特許文献1】特開平5−194135号公報
【特許文献2】特表2003−512407号公報
【特許文献3】特開2008−81469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は歯科用修復材組成物に使用した際に、天然歯と同様に表面滑沢性に優れ重合収縮が少ない有機無機複合充填材であって、充分なレントゲン造影性を有し且つ機械的強度の高い歯科用修復材組成物を得ることが可能な有機無機複合充填材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の粒子径のレントゲン造影性を有するガラス粉末と特定の平均粒径のレントゲン造影性を有する金属化合物とをレントゲン造影性を有するガラス粉末が50〜80重量%でレントゲン造影性を有する金属化合物が10〜40重量%で、両者の合計が最大で90重量%となるように高密度に混合したものを(メタ)アクリレート化合物に混合し硬化させ粉砕して作製した有機無機複合充填材とすると、微粒のガラス粉末によって優れた表面滑沢性を有し、微粒の充填材を別途多量に使用する必要がないので硬化後の歯科用修復材組成物の重合収縮が起こり難く、更にガラス粉末と金属化合物とが高密度に充填されているため歯科用修復材の機械的強度を高めることができ、微粒のガラス粉末を多量に使用しているために屈折率による影響が少なくなり、更に有機無機複合充填材中にはレントゲン造影性を有する粉末が多量に充填されているのでレントゲン造影性が不足することがないことを究明して本発明を完成した。
【0010】
即ち本発明は、最大粒径が5μm以下で且つ平均粒径が0.05〜2μmのレントゲン造影性を有するガラス粉末:50〜80重量%と平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン造影性を有する金属化合物:10〜40重量%とを最大で90重量%含む(メタ)アクリレート化合物を硬化し粉砕した歯科修復材料用の有機無機複合充填材であり、その平均粒径が10〜30μmであることが好ましい有機無機複合充填材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る有機無機複合充填材は、最大粒径が5μm以下で且つ平均粒径が0.05〜2μmのレントゲン造影性を有するガラス粉末:50〜80重量%と平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン造影性を有する金属化合物:10〜40重量%とを最大で90重量%含む(メタ)アクリレート化合物を硬化し粉砕した歯科修復材料用の有機無機複合充填材であるから、屈折率による影響が少なく、歯科用修復材に使用した際に、天然歯と同様に表面滑沢性に優れ、重合収縮が少なく、機械的強度の高く、レントゲン造影性が不足することがない歯科用修復材組成物を得ることが可能な有機無機複合充填材である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る有機無機複合充填材に用いる(メタ)アクリレート化合物とは、メタクリレート若しくはアクリレートのモノマー若しくはコモノマー,そのオリゴマーやプレポリマーを示し、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレートやそのコモノマーが挙げられる。また、ウレタン結合を持つ(メタ)アクリレートとして、ジ−2−(メタ)アクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5−トリス[1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオンがあり、その他2,2’−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと2−オキシパノンとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとから成るウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとから成るウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート等がある。
【0013】
これ等のメタクリレート若しくはアクリレートの化合物は、歯科用材料としては公知のものであるので必要に応じて単独で或いは混合して使用すればよい。
【0014】
最大粒径が5μm以下で且つ平均粒径が0.05〜2μmのレントゲン造影性を有するガラス粉末の組成としては、レントゲン造影性を有するカルシウム,ストロンチウム,バリウム等のアルカリ土類金属原子を含むガラスや、亜鉛ガラス,鉛ガラス等が例示できる。中でも、酸化アルミニウムと無水ケイ酸とフッ化カルシウムとリン酸カルシウムと炭酸ストロンチウムとを原材料とするようなフルオロアルミノシリケートガラス粉末が、フッ素イオン徐放性を備えているので好ましく使用できる。レントゲン造影性を有するガラスの屈折率は、混合される(メタ)アクリレート化合物の種類とその屈折率にもよるが、1.48から1.54の範囲であることが望ましい。
【0015】
レントゲン造影性を有するガラス粉末は、その最大粒径が5μmを超えると有機無機複合充填材を歯科用修復材組成物に使用した際に表面の滑沢性が低下する。平均粒径が0.05μm未満では有機無機複合充填材中に50重量%以上配合することができなくなり、2μmを超えると屈折率による影響が出てしまい歯科用修復材の透明性が悪化する。
【0016】
最大粒径が最大5μm以下で且つ平均粒径が0.05〜2μmのレントゲン造影性を有するガラス粉末は有機無機複合充填材中に50〜80重量%配合される。50重量%未満又は80重量%を超えると歯科用修復材の機械的強度を向上させることができない。
【0017】
本発明に係る有機無機複合充填材は、平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン造影性を有する金属化合物を更に10〜40重量%含有する。平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン不透過性を有する金属化合物としては、フッ化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、酸化バリウム、炭酸バリウム等の原子番号が20番よりも大きいアルカリ土類金属の化合物や、ジルコニア、酸化イットリウム、フッ化イットリウム、酸化ジルコニア等の原子番号39以降の遷移元素若しくはその化合物、またフッ化ランタン、酸化ランタン、フッ化イッテリビウム、酸化イッテリビウム等ランタノイドの化合物等が挙げられる。更にそれ等のうちも2つ若しくはそれ以上の組み合わせでもよい。
【0018】
この平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン造影性を有する金属化合物の平均粒径は、0.05μm未満では前記多量のレントゲン造影性を有するガラス粉末に加えて10重量%以上有機無機複合充填材中に配合することができなくなり、0.3μmを超えると屈折率による影響が出てしまい歯科用修復材の透明性が悪化する。
このレントゲン造影性を有する金属化合物の有機無機複合充填材中の配合量が10重量%未満ではレントゲン造影性を向上させる効果が低く、40重量%以上配合すると有機無機複合充填材中の(メタ)アクリレート化合物量が少なくなって有機無機複合充填材を形成できなくなる。
【0019】
そして最大粒径が最大5μm以下で且つ平均粒径が0.05〜2μmのレントゲン造影性を有するガラス粉末と平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン造影性を有する金属化合物との有機無機複合充填材中の配合量は、最大で90重量%であることが必要である。これは、90重量%を超えて配合すると有機無機複合充填材中の(メタ)アクリレート化合物量が少なくなって有機無機複合充填材を形成できなくなるからである。
【0020】
最大粒径が最大5μm以下で且つ平均粒径が0.05〜2μmのレントゲン造影性を有するガラス粉末及び平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン造影性を有する金属化合物は混合した状態で、(メタ)アクリレート化合物と混合器で混合して(メタ)アクリレート化合物を硬化させ粉砕することによって有機無機複合充填材が製造される。(メタ)アクリレート化合物を硬化させるための硬化剤としては、熱硬化の場合は有機過酸化物、アゾ化合物等を用いることができる。また光硬化の場合は光重合開始剤等を用いることもできる。他にも常温重合の化学重合等も使用可能である。
【0021】
有機無機複合充填材の粒度は平均粒径が10〜30μmが好ましく、10μm未満であると重合収縮や「ベタつき」が発生し易く、30μmを超えると組成物の表面滑沢性が劣る傾向がある。なお一般的には、歯科用修復材中への有機無機複合充填材の配合量は35〜80重量%である。35重量%より少ないと重合収縮や「ベタつき」を改善する効果が低く、80重量%を超えると組成物の操作性が劣る傾向がある。
【0022】
本発明に係る有機無機複合充填材は、粉砕後にはガラス粉末や金属化合物の一部が表面から露出しているので、従来から充填材に行われているシランカップリング剤等による表面処理を行うと歯科用修復材に使用した際に(メタ)アクリレート化合物と強固に接着することが可能となり、歯科用修復材に優れた強度を与えることが可能となる。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例と比較例とを挙げて説明する。なお、実施例及び比較例で用いるメタクリレート若しくはアクリレートのモノマーとその略号を以下に示す。
UDMA:ジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート、
Bis−GMA:2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、
1,3−BG:1,3−ブタンジオールジメタクリレート、
Bis−MPEPP:2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、
TMPT:トリエチレングリコールトリメタクリレート
【0024】
最大粒径が最大5μm以下で且つ平均粒径が0.05〜2μmのレントゲン造影性を有するガラス粉末としては、以下のものを使用した。
ガラス粉末A:フルオロアルミノシリケートガラス粉末(平均粒径0.7μm、最大粒径2μm)
ガラス粉末B:バリウムガラス粉末(平均粒径0.4μm、最大粒径1μm)
ガラス粉末C:石英ガラス粉末(平均粒径0.7μm、最大粒径2μm)
【0025】
ガラス粉末Aの組成は表1に示す。ガラス粉末Aは、表1に示す原料を充分混合し、1200℃の高温電気炉中で5時間保持し溶融させたガラスを冷却した後に、ボールミルで10時間粉砕し、200メッシュ(ASTM)篩を通過させた後の粉末である。また、ガラス粉末Bは、表2に示す原料を充分混合し、1450℃で溶融した以外はガラス粉末Aと同じ方法で作製した粉末である。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン不透過性を有する金属化合物としては、フッ化イッテリビウム粉末を使用した。
【0029】
<実施例1〜4及び比較例1〜4>
(メタ)アクリレート化合物を硬化させるための硬化剤として1重量%アゾイソブチロニトリルを添加した(メタ)アクリレート化合物に、前記ガラス粉末と前記金属化合物とを混合し熱硬化させてから粉砕することで各実施例の有機無機複合充填材を作製した。配合組成や配合量等の詳細を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
<歯科用修復材の作製>
(メタ)アクリレート化合物(光重合開始剤として、この化合物100重量部に対して光増感剤カンファ−キノン0.5重量部と還元剤としてジメチルアミノエチルメタクリレート1重量部とを溶解した)に、実施例及び比較例の有機無機複合充填材とこの有機無機複合充填材の(メタ)アクリレート化合物との混合時に分散性を良好にする目的でその他の充填材としてコロイダルシリカ:(商品名:アエロジルR−972、日本アエロジル社製)を混合し暗室にて混練器で混練しペーストを得た。以下、得られた歯科用修復材に対して下記に示す試験を行った。
【0032】
(1)曲げ強さ試験
歯科用修復材を2mm×2mm×25mmの金型にセロハンを介してガラス板にて圧接し片側上方より可視光線照射器(商品名:G−ライト、ジーシー社製)にて全体に光が当るように60秒間光照射した。得られたサンプルは水中に24時間浸漬後、万能試験機(オートグラフ、島津製作所製)にてスパン20mm、クロスヘッドスピード1mm/min.にて3点曲げ試験を行った。
【0033】
(2)レントゲン造影性
ISO4049−2000に準じて試験を行った。
【0034】
(4)10点平均粗さ
歯科用修復材を内径20mm,厚さ2mmの金型にセロハンを介してガラス板にて圧接し片面上方より可視光線照射器(商品名:G−ライト、ジーシー社製)にて全体に光が当るように60秒間光照射した。得られたサンプルの照射面をエミリーペーパー600番で研磨後、更にエミリーペーパー1000番で研磨、研磨剤(商品名:ダイヤシャイン、ジーシー社製)を用いて仕上げ研磨を行った。この仕上げ研磨面を表面粗さ試験器(小坂研究所製)にて10点平均粗さを測定した。
【0035】
実施例及び比較例に用いた歯科用修復材組成物の配合組成、配合量及び各試験の結果を表4に纏めて示す。
【0036】
【表4】

【0037】
表3及び表4から明らかなように、ガラス粉末:50〜80重量%と平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン造影性を有する金属化合物:10〜40重量%とを最大で90重量%含む(メタ)アクリレート化合物を硬化し粉砕した本発明に係る歯科修復材料用の有機無機複合充填材である実施例1〜4は、歯科用修復材に使用した際に、機械的強度(曲げ強度)が高く、レントゲン造影性に優れ、10点平均粗さが小さいことから天然歯と同様な表面滑沢性が得られることが判る。
【0038】
これに対し、従来から使用されているレントゲン造影性を持たない有機無機複合充填材として、石英ガラスの混合物を熱硬化させ粉砕した有機無機複合充填材である比較例1は歯科用修復材に使用した際に、機械的強度(曲げ強度)が低く、十分なレントゲン造影性を有していない。
また、平均粒径が0.05〜2μmのレントゲン造影性を有するガラス粉末Bのみを用いた有機無機複合充填材である比較例2は歯科用修復材に使用した際に、十分なレントゲン造影性を有しているが、10点平均粗さ粗いことから天然歯と同様に表面滑沢性が得られない。
また、レントゲン造影性を持たないコロイダルシリカ(商品名:アエロジルR−972、日本アエロジル社製)を混合して熱硬化させ粉砕した有機無機複合充填材である比較例3は歯科用修復材に使用した際に、機械的強度(曲げ強度)が低く、十分なレントゲン造影性を有していない。
更に、フッ化イッテリビウムの粉末のみを混合して熱硬化させ粉砕した有機無機複合充填材である比較例4は歯科用修復材に使用した際に、機械的強度(曲げ強度)が低く、レントゲン造影性も十分ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大粒径が5μm以下で且つ平均粒径が0.05〜2μmのレントゲン造影性を有するガラス粉末:50〜80重量%と平均粒径が0.005〜0.3μmのレントゲン造影性を有する金属化合物:10〜40重量%とを最大で90重量%含む(メタ)アクリレート化合物を硬化し粉砕した歯科修復材料用の有機無機複合充填材。
【請求項2】
平均粒径が10〜30μmである請求項1に記載の有機無機複合充填材。

【公開番号】特開2010−83794(P2010−83794A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253904(P2008−253904)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】