有機無機複合塗膜、その製造方法及び水性塗料組成物
【課題】 無機材料のマトリクス中に有機材料が複合化された複合塗膜であって、塗膜内部は規則性のある中空構造を有し、且つ塗膜表面には半球状の凹凸パターンが形成されている有機無機複合塗膜、該複合塗膜の製造方法、該複合塗膜を与える塗料組成物を提供すること。
【解決手段】 ゾルゲル反応から得られる無機酸化物(A)と単分散性の中空ポリマー粒子(B)とを含有する水性塗料組成物を基材表面に塗布して得られることを特徴とする有機無機複合塗膜、その製造方法、該複合塗膜を与えうる水性塗料組成物。
【解決手段】 ゾルゲル反応から得られる無機酸化物(A)と単分散性の中空ポリマー粒子(B)とを含有する水性塗料組成物を基材表面に塗布して得られることを特徴とする有機無機複合塗膜、その製造方法、該複合塗膜を与えうる水性塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機化合物からなるマトリックス中に有機材料が複合化され、塗膜内部には球状の中空構造を有し、且つ塗膜表面には規則的な半球状凹凸パターンを有する、有機無機複合塗膜及び該塗膜を与える水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物などの無機材料が連続相を形成した塗膜は、有機材料が連続相を形成した塗膜では実現できない高い硬度や難燃性を有することから、次世代のコーティング材料として注目されている。また、このような無機塗膜は、これらの特性に加え、耐溶剤性、耐光性、耐候性等に優れると共に、超親水性、超撥水性や静電防止などの付加機能を付与することもできるため、その応用には大きな期待が寄せられている。
【0003】
無機系塗膜としては、ゾル−ゲル反応による金属酸化物塗膜が広く研究されている。特に、塗膜の内外に規則的な構造を有する金属酸化物塗膜の多くは、無機材料のマトリクス中に有機ポリマーがハイブリッドされた、有機ポリマーと無機化合物との複合塗膜であり、これはバイオシリカの研究から端を発するものである。近年のバイオシリカの研究において、珪藻類細胞膜は基本的にシリカで構成され、かつそのシリカ膜にはナノスケールからミクロンスケールまでの極めて精巧なパターンを形成していることが明らかとなり、また、このパターンの誘導にはポリアミン類が深く関与することが明らかとなった(非特許文献1参照。)。このようなバイオシリカの精巧なパターンを無機系塗膜において実現することができれば、その塗膜をバイオセンサー、光学材料、電子材料、機能性触媒材料等の各種デバイス構築に大きな可能性をもたらすこととなるため、精巧なパターンを有する無機系材料の検討や、無機系材料への加工によらない自発的なパターン形成の検討がなされている。
【0004】
例えば、バイオシリカから単離された生体分子を用いて作製された、表面に数百nm以上のホールを多数有するシリカブロックが開示されている(非特許文献2参照。)。当該シリカブロックは表面にホールを有するものであるが、その孔径は大小様々であり、パターン制御されたものではなかった。
【0005】
また、金の表面に重合開始能を有する分子を固定し、これにアミノ基を有する重合性モノマーを重合させて多数のアミンポリマーを金表面にブラシ状に形成した後、該アミンポリマーブラシ上でアルコキシシランの加水分解縮合反応を進行させることによりシリカとポリマーとの複合塗膜が得られることが報告されている(非特許文献3参照)。これにより得られる複合塗膜表面はフラットな構造ではなく、微細なナノ凹凸構造を有するが、当該凹凸構造はシリカ粒子が集合して形成されるものであり、その表面形状は無秩序に形成されることから、精巧にパターン形成されたものではなかった。
【0006】
フラットな膜表面にホールが形成されている有機無機複合塗膜を得る方法として、ポリアミンセグメントを有する水性ポリマーと、金属アルコキシドとを含有する塗料組成物を塗布する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。該塗膜表面のホールの孔径や深さは、材料として用いる水性ポリマーの構造や分子量等に起因するものであり、得られる塗膜を機能性化合物の固定に用いる場合には、該機能性化合物に応じたホールを形成させるために、水性ポリマーの構造等を種々検討する必要がある。更に蛍光性や着色性を有する化合物を該水性ポリマーに導入し、塗膜に新たな機能を付与しようとする場合には、形成されるホールの形状も変わることになり、汎用性が低いものである。また、該塗膜内部に中空構造を有するものではない点からも、その応用範囲が限られている。
【0007】
また、アミノ基含有ポリマーをシェル層として有する水分散性のコア−シェル粒子とシラン化合物とを含有する塗料組成物を塗布することで、ポリマー微粒子が塗膜中で均一に分布した有機無機複合塗膜が得られることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。該塗膜は、ポリマー粒子界面とシリカマトリックスとの密なハイブリッド構造を形成しているが、塗膜表面にホールが形成されることはなく、またその内部に中空構造を有するものではない。従って得られる複合塗膜に機能性を付与するために機能性化合物を複合化させる場合には、該ポリマー粒子表面のアミノ基を修飾することになり、この結果シラン化合物のゾルゲル反応に影響を与え、ひいては得られる有機無機複合塗膜の性状にも影響を及ぼすことになり、汎用性が低いものであった。
【0008】
このように、内部中空構造と表面パターン構造が同時に高度に制御された有機無機複合塗膜は未だ実現されておらず、無機系連続膜の内外表面に制御された階層構造を有する材料の実現が望まれている。
【0009】
【非特許文献1】M.Hildebrand、Progress in Orgnic Coatings、2003年、第47巻、256−266頁
【非特許文献2】N.Poulsen et al.,Proc.Natl.Acad.Sic.USA、2003年、第100巻、12075−12080頁
【非特許文献3】Don Jin Kim et al.,Langmure、2004年、第20巻、7904−7906頁
【特許文献1】WO2006/011512
【特許文献2】特開2006−291089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、無機材料のマトリクス中に有機材料が複合化された複合塗膜であって、塗膜内部は規則性のある中空構造を有し、且つ塗膜表面には半球状の凹凸パターンが形成されている有機無機複合塗膜、該複合塗膜の製造方法、該複合塗膜を与える塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、中空ポリマー粒子は水性媒体中で金属アルコキシドとの安定なゾル液を構成することができ、該ゾル液を固体基材表面に塗布し、揮発分の消失に伴うゾルゲル反応による金属酸化物の膜形成過程で、該中空ポリマー粒子の最密充填配列に沿って、金属酸化物ゾルが硬化されることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、ゾルゲル反応から得られる無機酸化物と単分散性の中空ポリマー粒子とを含有する水性塗料組成物を基材表面に塗布して得られることを特徴とする有機無機複合塗膜、その製造方法、及び該複合塗膜を与えうる、中空ポリマー粒子の水性分散体と、金属アルコキシドと、酸性触媒とを含有する水性塗料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
ゾルゲル反応で得られる無機酸化物をマトリクスとする、内部中空構造と表面凹凸パターンとを有する複合塗膜は、材料そのものの半導体性質に加え、パターン表面に導電性金属のライン構築が可能であり、またバイオセンサー、生体分子・触媒の固定、色素増感型太陽電池、光学干渉による発光性材料、超疎水性または超親水性コーティング膜構成など、多くの先進材料領域で、将来、応用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の有機無機複合塗膜は、無機酸化物からなるマトリクス中に単分散性の中空ポリマー粒子が複合化されていることを特徴とする。無機酸化物からなるマトリクスとは、無機酸化物材料の連続相が塗膜全体にわたって構築された構造をいうものであり、また、単分散性とは、中空ポリマー粒子の粒径の変動係数が0.1以下のものを言う。
【0015】
[無機酸化物]
本発明の有機無機複合塗膜中の無機酸化物(A)は、金属アルコキシド(C)のゾルゲル反応により得られるものである。加水分解により無機酸化物のネットワークを形成することができ、強固な塗膜が得られる点から、三価以上の金属アルコキシドを用いることが好ましい。特にテトラアルコキシシラン等の四価以上の金属アルコキシドを使用する場合には、得られる塗膜の硬度を高くすることができるため好ましい。塗膜硬度を高くする目的で、官能基数の多い金属アルコキシドを使用する場合には、全金属アルコキシド中の四価以上の金属アルコキシドの含有量が、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0016】
前記金属アルコキシド(C)の金属種としては、例えば、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ホウ素、ゲルマニウム、亜鉛等が挙げられ、これらの中でもゾルゲル反応が容易である点から、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムであることが好ましく、工業的入手容易性の点からケイ素であることが特に好ましい。
【0017】
ケイ素を金属種として有する金属アルコキシドとしては、反応性の官能基を有していても良いアルコキシシラン等を挙げることができる。尚、本発明において特に断りのない限り、アルコキシシランは加水分解反応によりオリゴマー化しているものも含む。オリゴマー化したものは、シラノールとなったシリカゾル状態で使用しても良い。オリゴマー化したアルコキシシランとしては、その平均重合度が2〜20のものを好適に使用することができる。この場合の加水分解反応に用いる触媒としては、各種の酸類、アルカリ類を用いることができる。
【0018】
前記アルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(2−エタノール)オルソシリケート、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(イソプロポキシ)シラン等のテトラアルコキシシラン等が挙げられる。
【0019】
更に官能基を有するアルコキシシランとしては、例えば、ハロゲンを有するシラン類として、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシランといったクロロシラン等が挙げられる。
【0020】
チタンを金属種として有する金属アルコキシドとしては、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタン等のアルコキシチタンが挙げられ、アルミニウムを金属種として有する金属アルコキシドとしては、例えば、トリエトキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウムが挙げられる。
【0021】
これらの金属アルコキシド(C)は、単独で用いても、二種以上を併用しても良いが、得られる複合塗膜の硬度を高くするためには、二価以下のアルコキシシランやアルコキシチタン、アルコキシアルミニウム等のシラン以外の金属種を有する金属アルコキシドの使用割合を、全金属アルコキシド中、10質量%以下にすることが好ましい。
【0022】
[中空ポリマー粒子]
本発明の有機無機複合塗膜において使用する中空ポリマー粒子は、前述の無機酸化物と複合化でき、単分散性であればよいが、その該表面が親水性であって水性媒体中で安定に分散しているものが好ましい。また、該中空ポリマー粒子の殻壁が薄いことが、得られる有機無機複合塗膜内部の多孔体構造と表面の凹凸構造を形成しやすい点から好ましい。この様な中空ポリマー粒子が容易に得られる点から、ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)とラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)とを水性媒体中で擬エマルジョン形式のラジカル重合反応を行うことにより得られるものであることが最も好ましい。
【0023】
ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)と、ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)とを含有する単量体群を水性媒体中で共重合する際に、水溶性モノマー(b1)は非水溶性モノマー(b2)に比べ、そのモル濃度は非常に低い。水溶性開始剤を用いて重合を行うと、水溶性モノマー(b1)が優先的に重合され、該モノマー(b1)由来の親水性のセグメントが形成される。ところが、末端ラジカルの親水性のセグメントが一定の大きさに成長すると、重合度の増大等の要因により非水溶性モノマーの液滴との間にdepletion(枯渇)相互作用が強く誘導され、その液滴表面に成長中の親水性セグメントが濃縮される現象が起こる。言い換えれば、親水性セグメントの成長末端周辺は、非水溶性モノマー(b2)で埋まる状態になる。従って、親水性セグメントのラジカル成長末端には非水溶性モノマー(b2)の付加反応が始まり、非水溶性モノマー(b2)の重合が急速に進行し、その結果、二つの相反する性質のセグメントを有する共重合体が生成する。このようにして生成した疎水性セグメントと親水性セグメントとを有する共重合体は、いわゆる高分子界面活性剤として働き、重合反応途中、該共重合体は自発的に疎水セグメントがサンドイッチされたような二分子膜ポリマー会合体粒子(ポリマーベシクル)へ集合する。その結果、残存する多くの非水溶性モノマー(b2)はその会合体粒子の膜中に取り込まれながら重合し、最終的にはポリマーベシクル構造に類似した内外表面が親水性であり、殻壁の厚みが薄い中空ポリマー粒子が与えられる。本発明では、上記のような重合過程を擬エマルジョン重合と定義する。
【0024】
この様にして得られる中空ポリマー粒子の平均粒子径や殻壁の厚みは、目的に応じて調整可能である。本発明で得られる有機無機複合塗膜において、塗膜内部の中空構造を維持しながら、塗膜全体としての強度を発現させるためには、該中空ポリマー粒子(B)の殻壁厚みが10nm以上20nm以下で平均粒径が50nm以上150nm未満の粒子、または殻壁厚みが10nm以上80nm以下で平均粒径が150nm以上800nm以下の粒子であることが好ましい。
【0025】
前記ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)としては、特に限定されるものではないが、25℃の蒸留水に対して1.0質量%以上溶解するものであることが好ましく、蒸留水と任意に混和可能であるものがより好ましく、その構造中に例えば、アミド基、アミノ基、オキシアルキレン鎖、シアノ基、酸無水物基等を有するもの、また、例えばカルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、リン酸基等を有するもの、及びこれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を有するものを用いることができる。具体的には、アミド基を有する水溶性モノマーとしては、例えばアクリルアミドやN−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N,N―ジメチルアクリルアミド、N,N―ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミドやN−ジ置換(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。アミノ基を有する水溶性モノマーとしては、例えば、アリルアミン、N,N―ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。また、カルボキシ基を有する水溶性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられ、ヒドロキシ基を有する水溶性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等を挙げることができる。スルホン酸基を有する水溶性モノマーとしては、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸エチルエステル、スチレンスルホン酸シクロヘキシルエステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。さらにビニルピリジンやグリシジルメタクリレートに有機アミンを反応させて合成したモノマーを四級化させて得られる、四級化モノマーを用いても良い。
【0026】
これらの水溶性モノマー(b1)の中でも、その構造中にアミド基、アミノ基、カルボキシ基又はその塩、スルホン酸基又はその塩を有するものは、工業的入手容易性、水溶性、ラジカル重合容易性等に優れる点から好ましいものである。
【0027】
更に、N−置換アクリルアミドやN,N−ジ置換アクリルアミドは、疎水性基と親水性基とを1分子中に有する点から、界面活性作用を有すると考えられ、また、その単独重合体は、重合度や水性媒体の温度によって水溶性の度合いが変化するという特異な性質を有する。これらの性質によって、前述の反応機構が容易に達成されることになり、本発明で用いる中空ポリマー粒子(B)をより容易に製造することができる。
【0028】
前記ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)としては、前記の水溶性モノマー(b1)と共重合可能な基を有するものであれば、種々のモノマーを用いることが可能であるが、25℃の蒸留水に対する溶解度が0.5質量%以下であることが好ましく、特に前記の水溶性モノマー(b1)との反応性に優れ、且つ工業的入手が容易である点から、アクリレートやメタクリレートであることが好ましい。
【0029】
アクリレートとしては、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸グリシジル、tert−ブチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、1−アダマンチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等を挙げることが出来る。
【0030】
また、メタクリレートとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸−i−ブチル、メクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン等を挙げることが出来る。これらラジカル重合性の非水溶性モノマー(b1)は、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。以下、本文中で使用する(メタ)アクリレートは特に断りのない限り、アクリレート単独、メタクリレート単独及びそれらの混合物を総称するものとして用いる。
【0031】
前記ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)の中でも、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等の環状エーテル構造を有するものは、前記ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)との共重合体を形成する途中、若しくは共重合体となった後、該共重合体の分子内、若しくは分子間で架橋反応することが可能であり、該架橋反応によって、得られる中空ポリマー粒子の殻の部分を形成する共重合体の強度を高め、該中空ポリマー粒子の安定性を高めることに寄与すると考えられるので、特に好適に用いることができる。
【0032】
前記ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)として、二官能のジ(メタ)アクリレート、例えば、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレン(メタ)アクリレート、トリエチレンジ(メタ)アクリレート等のポリエチレンジ(メタ)アクリレート類、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、等のポリプロピレンジ(メタ)アクリレート類、グリセロールジ(メタ)アクリレート等も単独で、または2種以上を併用して用いることができる。これらのジ(メタ)アクリレートを用いる場合には、得られる中空粒子の凝集を防ぐ目的で、単官能の前記(メタ)アクリレートと併用することが好ましく、特にラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)中の(メタ)アクリレートの使用割合がモル比で0.7以上であることが好ましい。
【0033】
前記ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)としては、(メタ)アクリレート以外の、例えば、スチレン系化合物、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビスビニル化合物等を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。このとき、本発明の中空ポリマー粒子を容易に得られる点から、(メタ)アクリレートと併用することが好ましく、特に、ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)中の(メタ)アクリレートの使用割合がモル比で0.5以上であることが好ましい。
【0034】
前記スチレン系化合物は、スチリル基を有する化合物であって、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−、m−、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、p−メトキシスチレン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ビニルピレン等が挙げられる。
【0035】
前記ビニルエステルとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
【0036】
前記ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチルプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0037】
前記ビスビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられ、中空ポリマー粒子の殻中に架橋構造を生じるため、安定した中空粒子を製造することが可能である点から好ましいものである。
【0038】
前記ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)と前記ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)との使用割合としては、目的とする中空ポリマー粒子の平均粒子径や殻壁の厚み等により選択されるものであるが、水性媒体中で安定に存在できる中空ポリマー粒子が得られ、且つ中空構造も安定である点から、ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)とラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)とのモル比(b2)/(b1)が3.5〜12であることが好ましく、特に該比率が3.5〜10であることが好ましい。尚、モノマー類を一括で添加するのではなく、ある程度重合が進行し、中空ポリマー粒子が形成されてからラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)を加えて該中空ポリマー粒子の平均粒子径や殻壁の厚みをコントロールする際には、該比率が12を超える場合においても安定な中空ポリマー粒子を得ることができる。
【0039】
前記擬エマルジョン重合に用いる水性媒体としては、水を単独で用いる他、水にメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類を単独、もしくは複数種混合した混合溶媒を挙げることができる。
【0040】
混合溶媒を用いる際の、その配合割合としては、後述する水溶性重合開始剤とラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)が可溶であり、かつ、ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)の溶解度が0.5質量%以下の範囲であれば良く、目的に応じて適宜選択することができるが、水溶性重合開始剤による重合開始効率を高く保つために、水の割合を50質量%以上、特に80質量%以上にすることが好ましい。
【0041】
前記水溶性重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、種々のものを使用することができるが、過硫酸塩又はアミノ基含有アゾ化合物を用いる事が好ましく、例えば、過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸アンモニウム(APS)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)二塩酸塩四水和物、等が挙げられる。
【0042】
これら水溶性重合開始剤の使用割合としては、ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)とラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)との合計100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲で適宜選択すれば良いが、重合反応の効率を上げ、且つ中空ポリマー粒子の凝集を抑制する目的で0.5〜3質量部の範囲で選択することがより好ましい。
【0043】
また、前記重合時に、必要に応じて適宜各種の分散安定剤をともに用いても良い。前記分散安定剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、有機懸濁保護剤等を挙げることができ、中でも得られる中空ポリマー粒子の分散安定性に優れる点から、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤を用いる事が好ましい。
【0044】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム等のロジン酸塩、オレイン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸等を挙げることができる。
【0045】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル等を挙げることができる。
【0046】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系の界面活性剤を挙げることができる。
【0047】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0048】
これらの分散安定剤は、必要に応じて、単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。分散安定剤の使用にあたっては、得られる中空ポリマー粒子の凝集を防ぐため、水溶性重合開始剤によって該粒子に付与される表面電化と同電荷のイオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0049】
分散安定剤の使用量は、必要に応じて適宜選択すれば良いが、反応の初期段階での濃度が高すぎる場合には、通常の乳化重合が進行し、粒子が中空構造を発現しにくくなるため、初期段階では使用量を控え、粒子の形成に伴って後から添加しても良い。
【0050】
前記擬エマルジョン重合の反応温度としては、用いる水溶性重合開始剤の重合開始温度にあわせて、35〜90℃の範囲で適宜設定すれば良いが、該水溶性重合開始剤の開始能を上げ、且つ、水性媒体の蒸発を防いで反応系の不安定化を抑制する点から、40〜85℃の範囲で設定することが好ましく、60〜80℃の範囲で設定することがより好ましい。
【0051】
前記擬エマルジョン重合時のモノマーの濃度は、低すぎると、中空ポリマー粒子の合成効率が悪く、高すぎる場合には凝集が起こりやすいことから、0.5〜20質量%の範囲で目的に応じて適宜選択する事が好ましく、より安定性の高い中空ポリマー粒子を効率良く得られる点からは、該濃度が1〜10質量%の範囲から選択することが好ましい。
【0052】
擬エマルジョン重合において、原料の仕込み方法としては、水性媒体中に予めラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)と、ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)の全使用量を加えた状態で、水溶性重合開始剤を用いて重合を行う、従来のラジカル重合のワンポットの製法を採用することが出来る。
【0053】
また、水性媒体中に予めラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)と、ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)とを加えた状態で、水溶性重合開始剤を用いて重合を行い、重合反応が進行した状態で、さらにはじめに用いたものと同一又は異なるラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)を添加するワンポット製造方法でも合成可能である。この後添加の方法を用いる場合には、中空構造の殻壁の厚さを大きくすることができる。
【0054】
[有機無機複合塗膜]
本発明の有機無機複合塗膜は、内部には球状の中空構造、表面には凹凸パターンを有するものである。本発明で言う球状の中空構造とは、金属酸化物の連続相となる塗膜断面に沿って、中空ポリマー粒子が規則的に配列した構造をいうものであって、特に三次元空間で最密充填されてなる規則性多孔体構造であることが好ましい。また、膜表面の凹凸パターンは、塗膜の表面全体にわたって、中空ポリマー粒子の配列により形成された半球状の凹凸構造をいうものであって、最密配列による半球状の凹凸パターンであることが好ましく、該パターンがハニカム状であることが最も好ましい。すなわち、無機酸化物が中空ポリマー粒子の3次元配列構造の全体に沿って連続した膜を形成しており、無機酸化物と有機ポリマーとが一体化した自己組織化的な塗膜である。
【0055】
前記有機無機複合塗膜の厚みは中空ポリマー粒子(B)の大きさ、または塗布量により、5〜50μmに調整可能である。厚み方向での塗膜断面構造での球状の孔径は、中空ポリマー粒子の大きさによるものであり、概ね40〜780nmの範囲あることが好ましい。
【0056】
前記有機無機複合塗膜の表面パターンは、基本的には、中空ポリマー粒子(B)の最表面での配列パターンであり、その中空ポリマー粒子(B)の半分当たりが突出したことに由来する凹凸パターン構造である。従って、半球状凹凸パターン構造は、中空ポリマー粒子の直径を反映し、その半球の最大幅は中空ポリマー粒子の直径以下である50〜800nm、凹凸の最大深さは中空ポリマー粒子(B)の最大半径以下の25〜400nmの範囲に制御できる。
【0057】
また、凹凸パターンは、ハニカム状であることが好ましく、その構造は塗膜表面全体に渡り形成可能である。ハニカム状を形成する隣接凸起部または凹下部間距離は、中空ポリマー粒子(B)の直径増大により広くなるが、概ね中空ポリマー粒子(B)の直径の1.2〜1.5倍に制御できる。
【0058】
有機無機複合塗膜中の無機酸化物(A)の含有量としては、30〜90質量%の範囲であることが好ましく、35〜75%の範囲であるとより好ましい。無機酸化物の量が当該範囲内であれば、塗膜全体に均一な無機酸化物のマトリクスを形成できると共に、塗膜の割れが生じにくくなる。
【0059】
本発明の有機無機複合塗膜は、透明または半透明であり、鉛筆硬度5H〜9H以上まで設計可能であり、その塗膜の硬度は高く、耐摩耗性にも強い。
【0060】
[水性塗料組成物]
本発明の水性塗料組成物は、前述の有機無機複合塗膜を容易に与えうるものであって、中空ポリマー粒子(B)の水性分散体と、金属アルコキシド(C)と、酸触媒(D)とを含有するものである。
【0061】
上記水性塗料組成物では、金属アルコキシド(C)の加水分解と縮合反応により金属酸化物のゾルが生成するが、そのゾルの一部は、親水性表面を有する中空ポリマー粒子(B)の外表面で濃縮されることになり、塗料組成物中で中空ポリマー粒子(B)の外表面が金属酸化物(A)のゾルと既にハイブリッドされた構造体が形成される。従って、水性塗料組成物中では、金属酸化物(A)のゾルと外表面がゾルに覆われた中空ポリマー粒子(B)とが存在することになる。それを基材上に塗布した後、揮発成分を揮発させることで、金属酸化物(A)のゾルに覆われた中空ポリマー粒子(B)が最密充填の3次元配列構造を形成し、やがてその構造が金属酸化物(A)のゾルで固まり、結果的に塗膜内部に球状の空洞、外表面に半球状の凹凸パターンを有する塗膜を形成する。
【0062】
上記水性塗料組成物の中空ポリマー粒子(B)及び金属アルコキシド(C)としては、前述の中空ポリマー粒子(B)、金属アルコキシド(C)を好ましく使用することができる。
【0063】
特に中空ポリマー粒子の外表面が、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、またはアミノ基含有(メタ)アクリルエステル由来の構造の密度が高いセグメントからなるものであることが好ましい。アミノ基含有(メタ)アクリルエステル由来の構造を有するものである場合には、それがプロトン化されていると、金属酸化物(A)のゾルを安定化する効果が高いため、該中空ポリマー粒子(B)のアミノ基は、部分プロトン化あるいは完全プロトン化されていることが好ましい。
【0064】
水性塗料組成物に使用する水性媒体は、水又は水と水溶性溶媒との混合溶媒であり、該水溶性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ピリジン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒を使用できる。水と水溶性溶媒との混合溶媒を使用する場合には、水溶性溶媒の量が、使用する水の量に対して40質量%未満であることが好ましい。
【0065】
混合の順序は特に制限されないが、中空ポリマー粒子(B)の水性分散体に、酸触媒(D)の水溶液、金属アルコキシド(C)の溶液を添加する方法、または、金属アルコキシド(C)の水性溶液にと酸触媒(D)を加え、金属アルコキシド(C)の予備的な加水分解を行った後、中空ポリマー粒子(B)の水性分散体を添加する方法等で塗液を調製することができる。
【0066】
前記酸触媒(D)としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸や、酢酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルスルホン酸、エチルスルホン酸等の有機酸を用いることができる。これらの酸は単独または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、pH調整が容易であり、得られる水性塗料組成物の保存安定性が良好で、且つ得られる有機無機複合塗膜の耐水性に優れる点から、マレイン酸、アクリル酸など不飽和有機酸を用いることが好ましい。尚、水性塗料組成物の安定性と基材へ塗布した後の塗膜形成(硬化)が良好である点から、水性塗料組成物のpHは1.5〜6.5に調整することが好ましい。
【0067】
前記金属アルコキシド(C)は、使用する前記中空ポリマー粒子(B)の質量と、金属アルコキシド(C)の質量との比(B)/(C)が、概ね70/30〜5/95の範囲で適宜調整すればよく、40/60〜15/85の範囲にあることが好ましく、35/65〜25/75の範囲にあるとさらに好ましい。上記比(B)/(C)が5/95以上であれば得られる塗膜のクラックを低減することができ、また、70/30以下であると塗膜の耐水性の向上が図られる。
【0068】
また、使用する水性媒体の量としては、使用する金属アルコキシド(C)の0.2〜50倍量程度であることが好ましい。
【0069】
この水性塗料組成物中に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルといった各種の有機溶剤を加えても良く、また、平滑剤・濡れ剤といった各種の添加剤を加えることもできる。
【0070】
また、本発明の水性塗料組成物に、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の硬化剤、例えば、水溶性のポリグリシジルエーテルなどを加えることもできる。
【0071】
上記水性塗料組成物は、ガラス、陶器、金属、木材、プラスチック、紙等の各種の基材上に塗布後、常温もしくは、加熱処理によって容易に硬化でき、有機無機複合塗膜を形成する。加熱によって硬化させる場合には、加熱温度は60〜250℃範囲で選定でき、100℃程度で30分処理することが好ましい。特に鉛筆硬度が9H以上の高硬度塗膜を得るためには、硬化温度を150℃以上までに向上させることが好ましい。
【0072】
基材への塗布方法は特に制限されず、例えば、刷毛塗り、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、バーコート法、エアナイフコート法といった各種の方法を用いることができ、さらにこれらを組み合わせて用いることもできる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断わりがない限り「%」は「質量%」を表わす。
【0074】
測定機器
微粒子の形状及び中空性の観察には、キーエンス社製VE−9800走査型電子顕微鏡 (SEM)を用いた。
複合塗膜の硬さ(ユニバーサル硬度)測定には、Helmut Fischer社製のフィッシャースコープH100硬度計を用いた。
塗膜表面、断面形状の観察には、キーエンス社製VE−9800走査型電子顕微鏡 (SEM)とSII社製SPI4000原子間力顕微鏡 (AFM)を用いた。
塗膜のUV−Vis反射スペクトル測定には、日立製作所製のU−3500分光光度計を用いた。
【0075】
合成例1
<PNIPAM−co−PGMAからなる中空ポリマー粒子B−1の合成>
1.8gのN−イソプロピルアクリルアミド(株式会社興人製、以下NIPAMと称す。)を溶解した水溶液290mlにグリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製、以下、GMAと称す。)11.8gを加えて70℃で窒素フローしながら攪拌した(GMA/NIPAM=5.2mol/mol)。水溶性重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(V−50、和光純薬工業株式会社製)0.15gを溶解した水溶液10mlを添加した。同温度で1時間攪拌することにより粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この微粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径225nmの単分散真球状の粒子であった(図1)。この微粒子を押しつぶして、形態の観察を行ったところ、粒子の中央が空洞の中空ポリマー粒子であることが確認できた(図2)。この粒子の殻壁の厚みはおよそ10nmであった。以下、この中空ポリマーをB−1と称す。
【0076】
合成例2
<PACMO−co−PGMAからなる中空ポリマー粒子B−2の合成>
1.8gのアクリロイルモルフォリン(株式会社興人製、以下ACMOと称す。)を溶解した水溶液290mlにGMA 13.5gを加えて70℃で窒素フローしながら攪拌した(GMA/ACMO=4.8mol/mol)水溶性重合開始剤として、V−50 0.15gを溶解した水溶液10mlを添加した。同温度で1時間攪拌することにより粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この微粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径270nmの単分散真球状の粒子であった(図3)。この微粒子を押しつぶして、形態の観察を行ったところ、粒子の中央が空洞の中空ポリマー粒子であることが確認できた(図4)。この粒子の殻壁の厚みはおよそ10nmであった。以下、この中空ポリマーをB−2と称す。
【0077】
実施例1
<B−1が含まれる水性塗料組成物>
合成例1で得た中空ポリマー粒子B−1の濃度が20%となる水分散体100部、10%のマレイン酸水溶液20部、シランオリゴマーMS−51(コルコート株式会社製)のイソプロパノール溶液(50%)100部を混合し、20℃の浴中2時間撹拌し、均一な分散状態である乳白色の水性塗料組成物を得た。
【0078】
実施例2
実施例1で調製した水性塗料組成物をガラス基材にバーコーター(5番)で塗布して得られる複合塗膜を25、80、130、180℃の各温度で30分間硬化させたところ、クラックの無い良好な膜が得られた。塗膜の物性を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
25、80℃で硬化させた複合塗膜表面のSEM観察では、微粒子が最密充填して規則的に配列した表面形態が確認された(図5及び図6)。この膜の断面をSEM観察した結果、規則的な多孔構造が確認された(図7)。
【0081】
実施例3
実施例1で調製した水性塗料組成物を、ガラス板上に絵画用ブラシで塗布して絵を描いた。得られた絵柄複合塗膜表面のSEM観察から、微粒子の最密充填による規則配列の表面形態が確認された(図8)。
【0082】
実施例4
実施例1で調製した水性塗料組成物に木材板(杉板)を浸漬して塗布し、表面に複合塗膜を形成させた。得られた複合塗膜表面のSEM観察から、微粒子の最密充填による規則配列の表面形態が確認された(図9)。
【0083】
実施例5
<GN−2が含まれる水性塗料組成物>
合成例2で得た中空ポリマー粒子B−2の濃度が25%となる水分散体100部、10%のマレイン酸水溶液20部、シランオリゴマーMS−51のイソプロパノール溶液(50%)100部を混合し、20℃の浴中2時間撹拌し、均一な分散状態である乳白色の水性塗料組成物を得た。
【0084】
実施例6
実施例5で調製した塗料組成物をガラス基材にバーコーター(5番)で塗布して得られる複合塗膜を25、80、130、180℃の各温度で30分間硬化させたところ、クラックの無い良好な膜が得られた。塗膜の物性を表2に示す。硬化温度25℃で得られた複合塗膜表面および断面のSEM観察から、微粒子の規則的な配列パターンが確認された(図10及び図11)。また、この塗膜のAFM観察では、表面粒子配列による凹凸パターンが明確に現れ(図12)、谷間距離は370〜400nmであった(図13)。
【0085】
【表2】
【0086】
応用例1
実施例2で作製した塗膜3種類(25、80、130℃硬化後の膜)の反射スペクトルを測定したところ、いずれの膜でもピークが500〜550nmの可視光域での光応答性が示された(図14)。この現象は、表面にホールが形成したハイブリッド膜(特許文献1)、または内部にポリマー粒子を含む有機無機ハイブリッド膜(特許文献2)では全く現れなかった。即ち、本発明での塗膜表面および塗膜内部における中空粒子の規則的な配列が光反射効果をもたらしたと考えられる。
【0087】
比較例1
中空ポリマー粒子を用いない以外は、実施例1と同様の組成の塗液を調製し、ガラス基材にバーコーター(5番)で塗布して複合塗膜を得た。25、80℃で乾燥すると、膜には多数のクラックが発生し、膜は基板から脱落した。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】合成例1で得られた中空ポリマー粒子の形態を表すSEM観察像である。
【図2】合成例1で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図3】合成例2で得られた中空ポリマー粒子の形態を表すSEM観察像である。
【図4】合成例2で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図5】実施例2で得られた25℃硬化複合塗膜表面の形態を表すSEM観察像である。
【図6】実施例2で得られた80℃硬化複合塗膜表面の形態を表すSEM観察像である。
【図7】実施例2で得られた25℃硬化複合塗膜断面の形態を表すSEM観察像である。
【図8】実施例3で得られた絵柄硬化複合塗膜表面の形態を表すSEM観察像である。
【図9】実施例4で得られた木材板上に形成された複合塗膜表面の形態を表すSEM観察像である。
【図10】実施例6で得られた25℃硬化複合塗膜表面の形態を表すSEM観察像である。
【図11】実施例6で得られた25℃硬化複合塗膜断面の形態を表すSEM観察像である。
【図12】実施例6で得られた25℃硬化複合塗膜表面のAFM観察像である。
【図13】実施例6で得られた25℃硬化複合塗膜断面のAFM観察像である。
【図14】応用例1で得られた硬化膜の反射スペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機化合物からなるマトリックス中に有機材料が複合化され、塗膜内部には球状の中空構造を有し、且つ塗膜表面には規則的な半球状凹凸パターンを有する、有機無機複合塗膜及び該塗膜を与える水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物などの無機材料が連続相を形成した塗膜は、有機材料が連続相を形成した塗膜では実現できない高い硬度や難燃性を有することから、次世代のコーティング材料として注目されている。また、このような無機塗膜は、これらの特性に加え、耐溶剤性、耐光性、耐候性等に優れると共に、超親水性、超撥水性や静電防止などの付加機能を付与することもできるため、その応用には大きな期待が寄せられている。
【0003】
無機系塗膜としては、ゾル−ゲル反応による金属酸化物塗膜が広く研究されている。特に、塗膜の内外に規則的な構造を有する金属酸化物塗膜の多くは、無機材料のマトリクス中に有機ポリマーがハイブリッドされた、有機ポリマーと無機化合物との複合塗膜であり、これはバイオシリカの研究から端を発するものである。近年のバイオシリカの研究において、珪藻類細胞膜は基本的にシリカで構成され、かつそのシリカ膜にはナノスケールからミクロンスケールまでの極めて精巧なパターンを形成していることが明らかとなり、また、このパターンの誘導にはポリアミン類が深く関与することが明らかとなった(非特許文献1参照。)。このようなバイオシリカの精巧なパターンを無機系塗膜において実現することができれば、その塗膜をバイオセンサー、光学材料、電子材料、機能性触媒材料等の各種デバイス構築に大きな可能性をもたらすこととなるため、精巧なパターンを有する無機系材料の検討や、無機系材料への加工によらない自発的なパターン形成の検討がなされている。
【0004】
例えば、バイオシリカから単離された生体分子を用いて作製された、表面に数百nm以上のホールを多数有するシリカブロックが開示されている(非特許文献2参照。)。当該シリカブロックは表面にホールを有するものであるが、その孔径は大小様々であり、パターン制御されたものではなかった。
【0005】
また、金の表面に重合開始能を有する分子を固定し、これにアミノ基を有する重合性モノマーを重合させて多数のアミンポリマーを金表面にブラシ状に形成した後、該アミンポリマーブラシ上でアルコキシシランの加水分解縮合反応を進行させることによりシリカとポリマーとの複合塗膜が得られることが報告されている(非特許文献3参照)。これにより得られる複合塗膜表面はフラットな構造ではなく、微細なナノ凹凸構造を有するが、当該凹凸構造はシリカ粒子が集合して形成されるものであり、その表面形状は無秩序に形成されることから、精巧にパターン形成されたものではなかった。
【0006】
フラットな膜表面にホールが形成されている有機無機複合塗膜を得る方法として、ポリアミンセグメントを有する水性ポリマーと、金属アルコキシドとを含有する塗料組成物を塗布する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。該塗膜表面のホールの孔径や深さは、材料として用いる水性ポリマーの構造や分子量等に起因するものであり、得られる塗膜を機能性化合物の固定に用いる場合には、該機能性化合物に応じたホールを形成させるために、水性ポリマーの構造等を種々検討する必要がある。更に蛍光性や着色性を有する化合物を該水性ポリマーに導入し、塗膜に新たな機能を付与しようとする場合には、形成されるホールの形状も変わることになり、汎用性が低いものである。また、該塗膜内部に中空構造を有するものではない点からも、その応用範囲が限られている。
【0007】
また、アミノ基含有ポリマーをシェル層として有する水分散性のコア−シェル粒子とシラン化合物とを含有する塗料組成物を塗布することで、ポリマー微粒子が塗膜中で均一に分布した有機無機複合塗膜が得られることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。該塗膜は、ポリマー粒子界面とシリカマトリックスとの密なハイブリッド構造を形成しているが、塗膜表面にホールが形成されることはなく、またその内部に中空構造を有するものではない。従って得られる複合塗膜に機能性を付与するために機能性化合物を複合化させる場合には、該ポリマー粒子表面のアミノ基を修飾することになり、この結果シラン化合物のゾルゲル反応に影響を与え、ひいては得られる有機無機複合塗膜の性状にも影響を及ぼすことになり、汎用性が低いものであった。
【0008】
このように、内部中空構造と表面パターン構造が同時に高度に制御された有機無機複合塗膜は未だ実現されておらず、無機系連続膜の内外表面に制御された階層構造を有する材料の実現が望まれている。
【0009】
【非特許文献1】M.Hildebrand、Progress in Orgnic Coatings、2003年、第47巻、256−266頁
【非特許文献2】N.Poulsen et al.,Proc.Natl.Acad.Sic.USA、2003年、第100巻、12075−12080頁
【非特許文献3】Don Jin Kim et al.,Langmure、2004年、第20巻、7904−7906頁
【特許文献1】WO2006/011512
【特許文献2】特開2006−291089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、無機材料のマトリクス中に有機材料が複合化された複合塗膜であって、塗膜内部は規則性のある中空構造を有し、且つ塗膜表面には半球状の凹凸パターンが形成されている有機無機複合塗膜、該複合塗膜の製造方法、該複合塗膜を与える塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、中空ポリマー粒子は水性媒体中で金属アルコキシドとの安定なゾル液を構成することができ、該ゾル液を固体基材表面に塗布し、揮発分の消失に伴うゾルゲル反応による金属酸化物の膜形成過程で、該中空ポリマー粒子の最密充填配列に沿って、金属酸化物ゾルが硬化されることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、ゾルゲル反応から得られる無機酸化物と単分散性の中空ポリマー粒子とを含有する水性塗料組成物を基材表面に塗布して得られることを特徴とする有機無機複合塗膜、その製造方法、及び該複合塗膜を与えうる、中空ポリマー粒子の水性分散体と、金属アルコキシドと、酸性触媒とを含有する水性塗料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
ゾルゲル反応で得られる無機酸化物をマトリクスとする、内部中空構造と表面凹凸パターンとを有する複合塗膜は、材料そのものの半導体性質に加え、パターン表面に導電性金属のライン構築が可能であり、またバイオセンサー、生体分子・触媒の固定、色素増感型太陽電池、光学干渉による発光性材料、超疎水性または超親水性コーティング膜構成など、多くの先進材料領域で、将来、応用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の有機無機複合塗膜は、無機酸化物からなるマトリクス中に単分散性の中空ポリマー粒子が複合化されていることを特徴とする。無機酸化物からなるマトリクスとは、無機酸化物材料の連続相が塗膜全体にわたって構築された構造をいうものであり、また、単分散性とは、中空ポリマー粒子の粒径の変動係数が0.1以下のものを言う。
【0015】
[無機酸化物]
本発明の有機無機複合塗膜中の無機酸化物(A)は、金属アルコキシド(C)のゾルゲル反応により得られるものである。加水分解により無機酸化物のネットワークを形成することができ、強固な塗膜が得られる点から、三価以上の金属アルコキシドを用いることが好ましい。特にテトラアルコキシシラン等の四価以上の金属アルコキシドを使用する場合には、得られる塗膜の硬度を高くすることができるため好ましい。塗膜硬度を高くする目的で、官能基数の多い金属アルコキシドを使用する場合には、全金属アルコキシド中の四価以上の金属アルコキシドの含有量が、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0016】
前記金属アルコキシド(C)の金属種としては、例えば、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ホウ素、ゲルマニウム、亜鉛等が挙げられ、これらの中でもゾルゲル反応が容易である点から、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムであることが好ましく、工業的入手容易性の点からケイ素であることが特に好ましい。
【0017】
ケイ素を金属種として有する金属アルコキシドとしては、反応性の官能基を有していても良いアルコキシシラン等を挙げることができる。尚、本発明において特に断りのない限り、アルコキシシランは加水分解反応によりオリゴマー化しているものも含む。オリゴマー化したものは、シラノールとなったシリカゾル状態で使用しても良い。オリゴマー化したアルコキシシランとしては、その平均重合度が2〜20のものを好適に使用することができる。この場合の加水分解反応に用いる触媒としては、各種の酸類、アルカリ類を用いることができる。
【0018】
前記アルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(2−エタノール)オルソシリケート、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(イソプロポキシ)シラン等のテトラアルコキシシラン等が挙げられる。
【0019】
更に官能基を有するアルコキシシランとしては、例えば、ハロゲンを有するシラン類として、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシランといったクロロシラン等が挙げられる。
【0020】
チタンを金属種として有する金属アルコキシドとしては、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタン等のアルコキシチタンが挙げられ、アルミニウムを金属種として有する金属アルコキシドとしては、例えば、トリエトキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウムが挙げられる。
【0021】
これらの金属アルコキシド(C)は、単独で用いても、二種以上を併用しても良いが、得られる複合塗膜の硬度を高くするためには、二価以下のアルコキシシランやアルコキシチタン、アルコキシアルミニウム等のシラン以外の金属種を有する金属アルコキシドの使用割合を、全金属アルコキシド中、10質量%以下にすることが好ましい。
【0022】
[中空ポリマー粒子]
本発明の有機無機複合塗膜において使用する中空ポリマー粒子は、前述の無機酸化物と複合化でき、単分散性であればよいが、その該表面が親水性であって水性媒体中で安定に分散しているものが好ましい。また、該中空ポリマー粒子の殻壁が薄いことが、得られる有機無機複合塗膜内部の多孔体構造と表面の凹凸構造を形成しやすい点から好ましい。この様な中空ポリマー粒子が容易に得られる点から、ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)とラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)とを水性媒体中で擬エマルジョン形式のラジカル重合反応を行うことにより得られるものであることが最も好ましい。
【0023】
ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)と、ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)とを含有する単量体群を水性媒体中で共重合する際に、水溶性モノマー(b1)は非水溶性モノマー(b2)に比べ、そのモル濃度は非常に低い。水溶性開始剤を用いて重合を行うと、水溶性モノマー(b1)が優先的に重合され、該モノマー(b1)由来の親水性のセグメントが形成される。ところが、末端ラジカルの親水性のセグメントが一定の大きさに成長すると、重合度の増大等の要因により非水溶性モノマーの液滴との間にdepletion(枯渇)相互作用が強く誘導され、その液滴表面に成長中の親水性セグメントが濃縮される現象が起こる。言い換えれば、親水性セグメントの成長末端周辺は、非水溶性モノマー(b2)で埋まる状態になる。従って、親水性セグメントのラジカル成長末端には非水溶性モノマー(b2)の付加反応が始まり、非水溶性モノマー(b2)の重合が急速に進行し、その結果、二つの相反する性質のセグメントを有する共重合体が生成する。このようにして生成した疎水性セグメントと親水性セグメントとを有する共重合体は、いわゆる高分子界面活性剤として働き、重合反応途中、該共重合体は自発的に疎水セグメントがサンドイッチされたような二分子膜ポリマー会合体粒子(ポリマーベシクル)へ集合する。その結果、残存する多くの非水溶性モノマー(b2)はその会合体粒子の膜中に取り込まれながら重合し、最終的にはポリマーベシクル構造に類似した内外表面が親水性であり、殻壁の厚みが薄い中空ポリマー粒子が与えられる。本発明では、上記のような重合過程を擬エマルジョン重合と定義する。
【0024】
この様にして得られる中空ポリマー粒子の平均粒子径や殻壁の厚みは、目的に応じて調整可能である。本発明で得られる有機無機複合塗膜において、塗膜内部の中空構造を維持しながら、塗膜全体としての強度を発現させるためには、該中空ポリマー粒子(B)の殻壁厚みが10nm以上20nm以下で平均粒径が50nm以上150nm未満の粒子、または殻壁厚みが10nm以上80nm以下で平均粒径が150nm以上800nm以下の粒子であることが好ましい。
【0025】
前記ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)としては、特に限定されるものではないが、25℃の蒸留水に対して1.0質量%以上溶解するものであることが好ましく、蒸留水と任意に混和可能であるものがより好ましく、その構造中に例えば、アミド基、アミノ基、オキシアルキレン鎖、シアノ基、酸無水物基等を有するもの、また、例えばカルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、リン酸基等を有するもの、及びこれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を有するものを用いることができる。具体的には、アミド基を有する水溶性モノマーとしては、例えばアクリルアミドやN−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N,N―ジメチルアクリルアミド、N,N―ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミドやN−ジ置換(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。アミノ基を有する水溶性モノマーとしては、例えば、アリルアミン、N,N―ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。また、カルボキシ基を有する水溶性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられ、ヒドロキシ基を有する水溶性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等を挙げることができる。スルホン酸基を有する水溶性モノマーとしては、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸エチルエステル、スチレンスルホン酸シクロヘキシルエステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。さらにビニルピリジンやグリシジルメタクリレートに有機アミンを反応させて合成したモノマーを四級化させて得られる、四級化モノマーを用いても良い。
【0026】
これらの水溶性モノマー(b1)の中でも、その構造中にアミド基、アミノ基、カルボキシ基又はその塩、スルホン酸基又はその塩を有するものは、工業的入手容易性、水溶性、ラジカル重合容易性等に優れる点から好ましいものである。
【0027】
更に、N−置換アクリルアミドやN,N−ジ置換アクリルアミドは、疎水性基と親水性基とを1分子中に有する点から、界面活性作用を有すると考えられ、また、その単独重合体は、重合度や水性媒体の温度によって水溶性の度合いが変化するという特異な性質を有する。これらの性質によって、前述の反応機構が容易に達成されることになり、本発明で用いる中空ポリマー粒子(B)をより容易に製造することができる。
【0028】
前記ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)としては、前記の水溶性モノマー(b1)と共重合可能な基を有するものであれば、種々のモノマーを用いることが可能であるが、25℃の蒸留水に対する溶解度が0.5質量%以下であることが好ましく、特に前記の水溶性モノマー(b1)との反応性に優れ、且つ工業的入手が容易である点から、アクリレートやメタクリレートであることが好ましい。
【0029】
アクリレートとしては、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸グリシジル、tert−ブチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、1−アダマンチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等を挙げることが出来る。
【0030】
また、メタクリレートとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸−i−ブチル、メクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン等を挙げることが出来る。これらラジカル重合性の非水溶性モノマー(b1)は、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。以下、本文中で使用する(メタ)アクリレートは特に断りのない限り、アクリレート単独、メタクリレート単独及びそれらの混合物を総称するものとして用いる。
【0031】
前記ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)の中でも、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等の環状エーテル構造を有するものは、前記ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)との共重合体を形成する途中、若しくは共重合体となった後、該共重合体の分子内、若しくは分子間で架橋反応することが可能であり、該架橋反応によって、得られる中空ポリマー粒子の殻の部分を形成する共重合体の強度を高め、該中空ポリマー粒子の安定性を高めることに寄与すると考えられるので、特に好適に用いることができる。
【0032】
前記ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)として、二官能のジ(メタ)アクリレート、例えば、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレン(メタ)アクリレート、トリエチレンジ(メタ)アクリレート等のポリエチレンジ(メタ)アクリレート類、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、等のポリプロピレンジ(メタ)アクリレート類、グリセロールジ(メタ)アクリレート等も単独で、または2種以上を併用して用いることができる。これらのジ(メタ)アクリレートを用いる場合には、得られる中空粒子の凝集を防ぐ目的で、単官能の前記(メタ)アクリレートと併用することが好ましく、特にラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)中の(メタ)アクリレートの使用割合がモル比で0.7以上であることが好ましい。
【0033】
前記ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)としては、(メタ)アクリレート以外の、例えば、スチレン系化合物、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビスビニル化合物等を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。このとき、本発明の中空ポリマー粒子を容易に得られる点から、(メタ)アクリレートと併用することが好ましく、特に、ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)中の(メタ)アクリレートの使用割合がモル比で0.5以上であることが好ましい。
【0034】
前記スチレン系化合物は、スチリル基を有する化合物であって、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−、m−、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、p−メトキシスチレン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ビニルピレン等が挙げられる。
【0035】
前記ビニルエステルとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
【0036】
前記ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチルプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0037】
前記ビスビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられ、中空ポリマー粒子の殻中に架橋構造を生じるため、安定した中空粒子を製造することが可能である点から好ましいものである。
【0038】
前記ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)と前記ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)との使用割合としては、目的とする中空ポリマー粒子の平均粒子径や殻壁の厚み等により選択されるものであるが、水性媒体中で安定に存在できる中空ポリマー粒子が得られ、且つ中空構造も安定である点から、ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)とラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)とのモル比(b2)/(b1)が3.5〜12であることが好ましく、特に該比率が3.5〜10であることが好ましい。尚、モノマー類を一括で添加するのではなく、ある程度重合が進行し、中空ポリマー粒子が形成されてからラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)を加えて該中空ポリマー粒子の平均粒子径や殻壁の厚みをコントロールする際には、該比率が12を超える場合においても安定な中空ポリマー粒子を得ることができる。
【0039】
前記擬エマルジョン重合に用いる水性媒体としては、水を単独で用いる他、水にメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類を単独、もしくは複数種混合した混合溶媒を挙げることができる。
【0040】
混合溶媒を用いる際の、その配合割合としては、後述する水溶性重合開始剤とラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)が可溶であり、かつ、ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)の溶解度が0.5質量%以下の範囲であれば良く、目的に応じて適宜選択することができるが、水溶性重合開始剤による重合開始効率を高く保つために、水の割合を50質量%以上、特に80質量%以上にすることが好ましい。
【0041】
前記水溶性重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、種々のものを使用することができるが、過硫酸塩又はアミノ基含有アゾ化合物を用いる事が好ましく、例えば、過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸アンモニウム(APS)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)二塩酸塩四水和物、等が挙げられる。
【0042】
これら水溶性重合開始剤の使用割合としては、ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)とラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)との合計100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲で適宜選択すれば良いが、重合反応の効率を上げ、且つ中空ポリマー粒子の凝集を抑制する目的で0.5〜3質量部の範囲で選択することがより好ましい。
【0043】
また、前記重合時に、必要に応じて適宜各種の分散安定剤をともに用いても良い。前記分散安定剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、有機懸濁保護剤等を挙げることができ、中でも得られる中空ポリマー粒子の分散安定性に優れる点から、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤を用いる事が好ましい。
【0044】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム等のロジン酸塩、オレイン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸等を挙げることができる。
【0045】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル等を挙げることができる。
【0046】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系の界面活性剤を挙げることができる。
【0047】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0048】
これらの分散安定剤は、必要に応じて、単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。分散安定剤の使用にあたっては、得られる中空ポリマー粒子の凝集を防ぐため、水溶性重合開始剤によって該粒子に付与される表面電化と同電荷のイオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0049】
分散安定剤の使用量は、必要に応じて適宜選択すれば良いが、反応の初期段階での濃度が高すぎる場合には、通常の乳化重合が進行し、粒子が中空構造を発現しにくくなるため、初期段階では使用量を控え、粒子の形成に伴って後から添加しても良い。
【0050】
前記擬エマルジョン重合の反応温度としては、用いる水溶性重合開始剤の重合開始温度にあわせて、35〜90℃の範囲で適宜設定すれば良いが、該水溶性重合開始剤の開始能を上げ、且つ、水性媒体の蒸発を防いで反応系の不安定化を抑制する点から、40〜85℃の範囲で設定することが好ましく、60〜80℃の範囲で設定することがより好ましい。
【0051】
前記擬エマルジョン重合時のモノマーの濃度は、低すぎると、中空ポリマー粒子の合成効率が悪く、高すぎる場合には凝集が起こりやすいことから、0.5〜20質量%の範囲で目的に応じて適宜選択する事が好ましく、より安定性の高い中空ポリマー粒子を効率良く得られる点からは、該濃度が1〜10質量%の範囲から選択することが好ましい。
【0052】
擬エマルジョン重合において、原料の仕込み方法としては、水性媒体中に予めラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)と、ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)の全使用量を加えた状態で、水溶性重合開始剤を用いて重合を行う、従来のラジカル重合のワンポットの製法を採用することが出来る。
【0053】
また、水性媒体中に予めラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)と、ラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)とを加えた状態で、水溶性重合開始剤を用いて重合を行い、重合反応が進行した状態で、さらにはじめに用いたものと同一又は異なるラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)を添加するワンポット製造方法でも合成可能である。この後添加の方法を用いる場合には、中空構造の殻壁の厚さを大きくすることができる。
【0054】
[有機無機複合塗膜]
本発明の有機無機複合塗膜は、内部には球状の中空構造、表面には凹凸パターンを有するものである。本発明で言う球状の中空構造とは、金属酸化物の連続相となる塗膜断面に沿って、中空ポリマー粒子が規則的に配列した構造をいうものであって、特に三次元空間で最密充填されてなる規則性多孔体構造であることが好ましい。また、膜表面の凹凸パターンは、塗膜の表面全体にわたって、中空ポリマー粒子の配列により形成された半球状の凹凸構造をいうものであって、最密配列による半球状の凹凸パターンであることが好ましく、該パターンがハニカム状であることが最も好ましい。すなわち、無機酸化物が中空ポリマー粒子の3次元配列構造の全体に沿って連続した膜を形成しており、無機酸化物と有機ポリマーとが一体化した自己組織化的な塗膜である。
【0055】
前記有機無機複合塗膜の厚みは中空ポリマー粒子(B)の大きさ、または塗布量により、5〜50μmに調整可能である。厚み方向での塗膜断面構造での球状の孔径は、中空ポリマー粒子の大きさによるものであり、概ね40〜780nmの範囲あることが好ましい。
【0056】
前記有機無機複合塗膜の表面パターンは、基本的には、中空ポリマー粒子(B)の最表面での配列パターンであり、その中空ポリマー粒子(B)の半分当たりが突出したことに由来する凹凸パターン構造である。従って、半球状凹凸パターン構造は、中空ポリマー粒子の直径を反映し、その半球の最大幅は中空ポリマー粒子の直径以下である50〜800nm、凹凸の最大深さは中空ポリマー粒子(B)の最大半径以下の25〜400nmの範囲に制御できる。
【0057】
また、凹凸パターンは、ハニカム状であることが好ましく、その構造は塗膜表面全体に渡り形成可能である。ハニカム状を形成する隣接凸起部または凹下部間距離は、中空ポリマー粒子(B)の直径増大により広くなるが、概ね中空ポリマー粒子(B)の直径の1.2〜1.5倍に制御できる。
【0058】
有機無機複合塗膜中の無機酸化物(A)の含有量としては、30〜90質量%の範囲であることが好ましく、35〜75%の範囲であるとより好ましい。無機酸化物の量が当該範囲内であれば、塗膜全体に均一な無機酸化物のマトリクスを形成できると共に、塗膜の割れが生じにくくなる。
【0059】
本発明の有機無機複合塗膜は、透明または半透明であり、鉛筆硬度5H〜9H以上まで設計可能であり、その塗膜の硬度は高く、耐摩耗性にも強い。
【0060】
[水性塗料組成物]
本発明の水性塗料組成物は、前述の有機無機複合塗膜を容易に与えうるものであって、中空ポリマー粒子(B)の水性分散体と、金属アルコキシド(C)と、酸触媒(D)とを含有するものである。
【0061】
上記水性塗料組成物では、金属アルコキシド(C)の加水分解と縮合反応により金属酸化物のゾルが生成するが、そのゾルの一部は、親水性表面を有する中空ポリマー粒子(B)の外表面で濃縮されることになり、塗料組成物中で中空ポリマー粒子(B)の外表面が金属酸化物(A)のゾルと既にハイブリッドされた構造体が形成される。従って、水性塗料組成物中では、金属酸化物(A)のゾルと外表面がゾルに覆われた中空ポリマー粒子(B)とが存在することになる。それを基材上に塗布した後、揮発成分を揮発させることで、金属酸化物(A)のゾルに覆われた中空ポリマー粒子(B)が最密充填の3次元配列構造を形成し、やがてその構造が金属酸化物(A)のゾルで固まり、結果的に塗膜内部に球状の空洞、外表面に半球状の凹凸パターンを有する塗膜を形成する。
【0062】
上記水性塗料組成物の中空ポリマー粒子(B)及び金属アルコキシド(C)としては、前述の中空ポリマー粒子(B)、金属アルコキシド(C)を好ましく使用することができる。
【0063】
特に中空ポリマー粒子の外表面が、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、またはアミノ基含有(メタ)アクリルエステル由来の構造の密度が高いセグメントからなるものであることが好ましい。アミノ基含有(メタ)アクリルエステル由来の構造を有するものである場合には、それがプロトン化されていると、金属酸化物(A)のゾルを安定化する効果が高いため、該中空ポリマー粒子(B)のアミノ基は、部分プロトン化あるいは完全プロトン化されていることが好ましい。
【0064】
水性塗料組成物に使用する水性媒体は、水又は水と水溶性溶媒との混合溶媒であり、該水溶性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ピリジン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒を使用できる。水と水溶性溶媒との混合溶媒を使用する場合には、水溶性溶媒の量が、使用する水の量に対して40質量%未満であることが好ましい。
【0065】
混合の順序は特に制限されないが、中空ポリマー粒子(B)の水性分散体に、酸触媒(D)の水溶液、金属アルコキシド(C)の溶液を添加する方法、または、金属アルコキシド(C)の水性溶液にと酸触媒(D)を加え、金属アルコキシド(C)の予備的な加水分解を行った後、中空ポリマー粒子(B)の水性分散体を添加する方法等で塗液を調製することができる。
【0066】
前記酸触媒(D)としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸や、酢酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルスルホン酸、エチルスルホン酸等の有機酸を用いることができる。これらの酸は単独または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、pH調整が容易であり、得られる水性塗料組成物の保存安定性が良好で、且つ得られる有機無機複合塗膜の耐水性に優れる点から、マレイン酸、アクリル酸など不飽和有機酸を用いることが好ましい。尚、水性塗料組成物の安定性と基材へ塗布した後の塗膜形成(硬化)が良好である点から、水性塗料組成物のpHは1.5〜6.5に調整することが好ましい。
【0067】
前記金属アルコキシド(C)は、使用する前記中空ポリマー粒子(B)の質量と、金属アルコキシド(C)の質量との比(B)/(C)が、概ね70/30〜5/95の範囲で適宜調整すればよく、40/60〜15/85の範囲にあることが好ましく、35/65〜25/75の範囲にあるとさらに好ましい。上記比(B)/(C)が5/95以上であれば得られる塗膜のクラックを低減することができ、また、70/30以下であると塗膜の耐水性の向上が図られる。
【0068】
また、使用する水性媒体の量としては、使用する金属アルコキシド(C)の0.2〜50倍量程度であることが好ましい。
【0069】
この水性塗料組成物中に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルといった各種の有機溶剤を加えても良く、また、平滑剤・濡れ剤といった各種の添加剤を加えることもできる。
【0070】
また、本発明の水性塗料組成物に、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の硬化剤、例えば、水溶性のポリグリシジルエーテルなどを加えることもできる。
【0071】
上記水性塗料組成物は、ガラス、陶器、金属、木材、プラスチック、紙等の各種の基材上に塗布後、常温もしくは、加熱処理によって容易に硬化でき、有機無機複合塗膜を形成する。加熱によって硬化させる場合には、加熱温度は60〜250℃範囲で選定でき、100℃程度で30分処理することが好ましい。特に鉛筆硬度が9H以上の高硬度塗膜を得るためには、硬化温度を150℃以上までに向上させることが好ましい。
【0072】
基材への塗布方法は特に制限されず、例えば、刷毛塗り、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、バーコート法、エアナイフコート法といった各種の方法を用いることができ、さらにこれらを組み合わせて用いることもできる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断わりがない限り「%」は「質量%」を表わす。
【0074】
測定機器
微粒子の形状及び中空性の観察には、キーエンス社製VE−9800走査型電子顕微鏡 (SEM)を用いた。
複合塗膜の硬さ(ユニバーサル硬度)測定には、Helmut Fischer社製のフィッシャースコープH100硬度計を用いた。
塗膜表面、断面形状の観察には、キーエンス社製VE−9800走査型電子顕微鏡 (SEM)とSII社製SPI4000原子間力顕微鏡 (AFM)を用いた。
塗膜のUV−Vis反射スペクトル測定には、日立製作所製のU−3500分光光度計を用いた。
【0075】
合成例1
<PNIPAM−co−PGMAからなる中空ポリマー粒子B−1の合成>
1.8gのN−イソプロピルアクリルアミド(株式会社興人製、以下NIPAMと称す。)を溶解した水溶液290mlにグリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製、以下、GMAと称す。)11.8gを加えて70℃で窒素フローしながら攪拌した(GMA/NIPAM=5.2mol/mol)。水溶性重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(V−50、和光純薬工業株式会社製)0.15gを溶解した水溶液10mlを添加した。同温度で1時間攪拌することにより粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この微粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径225nmの単分散真球状の粒子であった(図1)。この微粒子を押しつぶして、形態の観察を行ったところ、粒子の中央が空洞の中空ポリマー粒子であることが確認できた(図2)。この粒子の殻壁の厚みはおよそ10nmであった。以下、この中空ポリマーをB−1と称す。
【0076】
合成例2
<PACMO−co−PGMAからなる中空ポリマー粒子B−2の合成>
1.8gのアクリロイルモルフォリン(株式会社興人製、以下ACMOと称す。)を溶解した水溶液290mlにGMA 13.5gを加えて70℃で窒素フローしながら攪拌した(GMA/ACMO=4.8mol/mol)水溶性重合開始剤として、V−50 0.15gを溶解した水溶液10mlを添加した。同温度で1時間攪拌することにより粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この微粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径270nmの単分散真球状の粒子であった(図3)。この微粒子を押しつぶして、形態の観察を行ったところ、粒子の中央が空洞の中空ポリマー粒子であることが確認できた(図4)。この粒子の殻壁の厚みはおよそ10nmであった。以下、この中空ポリマーをB−2と称す。
【0077】
実施例1
<B−1が含まれる水性塗料組成物>
合成例1で得た中空ポリマー粒子B−1の濃度が20%となる水分散体100部、10%のマレイン酸水溶液20部、シランオリゴマーMS−51(コルコート株式会社製)のイソプロパノール溶液(50%)100部を混合し、20℃の浴中2時間撹拌し、均一な分散状態である乳白色の水性塗料組成物を得た。
【0078】
実施例2
実施例1で調製した水性塗料組成物をガラス基材にバーコーター(5番)で塗布して得られる複合塗膜を25、80、130、180℃の各温度で30分間硬化させたところ、クラックの無い良好な膜が得られた。塗膜の物性を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
25、80℃で硬化させた複合塗膜表面のSEM観察では、微粒子が最密充填して規則的に配列した表面形態が確認された(図5及び図6)。この膜の断面をSEM観察した結果、規則的な多孔構造が確認された(図7)。
【0081】
実施例3
実施例1で調製した水性塗料組成物を、ガラス板上に絵画用ブラシで塗布して絵を描いた。得られた絵柄複合塗膜表面のSEM観察から、微粒子の最密充填による規則配列の表面形態が確認された(図8)。
【0082】
実施例4
実施例1で調製した水性塗料組成物に木材板(杉板)を浸漬して塗布し、表面に複合塗膜を形成させた。得られた複合塗膜表面のSEM観察から、微粒子の最密充填による規則配列の表面形態が確認された(図9)。
【0083】
実施例5
<GN−2が含まれる水性塗料組成物>
合成例2で得た中空ポリマー粒子B−2の濃度が25%となる水分散体100部、10%のマレイン酸水溶液20部、シランオリゴマーMS−51のイソプロパノール溶液(50%)100部を混合し、20℃の浴中2時間撹拌し、均一な分散状態である乳白色の水性塗料組成物を得た。
【0084】
実施例6
実施例5で調製した塗料組成物をガラス基材にバーコーター(5番)で塗布して得られる複合塗膜を25、80、130、180℃の各温度で30分間硬化させたところ、クラックの無い良好な膜が得られた。塗膜の物性を表2に示す。硬化温度25℃で得られた複合塗膜表面および断面のSEM観察から、微粒子の規則的な配列パターンが確認された(図10及び図11)。また、この塗膜のAFM観察では、表面粒子配列による凹凸パターンが明確に現れ(図12)、谷間距離は370〜400nmであった(図13)。
【0085】
【表2】
【0086】
応用例1
実施例2で作製した塗膜3種類(25、80、130℃硬化後の膜)の反射スペクトルを測定したところ、いずれの膜でもピークが500〜550nmの可視光域での光応答性が示された(図14)。この現象は、表面にホールが形成したハイブリッド膜(特許文献1)、または内部にポリマー粒子を含む有機無機ハイブリッド膜(特許文献2)では全く現れなかった。即ち、本発明での塗膜表面および塗膜内部における中空粒子の規則的な配列が光反射効果をもたらしたと考えられる。
【0087】
比較例1
中空ポリマー粒子を用いない以外は、実施例1と同様の組成の塗液を調製し、ガラス基材にバーコーター(5番)で塗布して複合塗膜を得た。25、80℃で乾燥すると、膜には多数のクラックが発生し、膜は基板から脱落した。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】合成例1で得られた中空ポリマー粒子の形態を表すSEM観察像である。
【図2】合成例1で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図3】合成例2で得られた中空ポリマー粒子の形態を表すSEM観察像である。
【図4】合成例2で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図5】実施例2で得られた25℃硬化複合塗膜表面の形態を表すSEM観察像である。
【図6】実施例2で得られた80℃硬化複合塗膜表面の形態を表すSEM観察像である。
【図7】実施例2で得られた25℃硬化複合塗膜断面の形態を表すSEM観察像である。
【図8】実施例3で得られた絵柄硬化複合塗膜表面の形態を表すSEM観察像である。
【図9】実施例4で得られた木材板上に形成された複合塗膜表面の形態を表すSEM観察像である。
【図10】実施例6で得られた25℃硬化複合塗膜表面の形態を表すSEM観察像である。
【図11】実施例6で得られた25℃硬化複合塗膜断面の形態を表すSEM観察像である。
【図12】実施例6で得られた25℃硬化複合塗膜表面のAFM観察像である。
【図13】実施例6で得られた25℃硬化複合塗膜断面のAFM観察像である。
【図14】応用例1で得られた硬化膜の反射スペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾルゲル反応から得られる無機酸化物(A)と単分散性の中空ポリマー粒子(B)とを含有する水性塗料組成物を基材表面に塗布して得られることを特徴とする有機無機複合塗膜。
【請求項2】
前記無機酸化物(A)が、三価以上の金属アルコキシドのゾルゲル反応により得られるものである請求項1記載の有機無機複合塗膜。
【請求項3】
前記中空ポリマー粒子(B)が、ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)とラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)とを水性媒体中でラジカル重合させて得られるものである請求項1記載の有機無機複合塗膜。
【請求項4】
前記中空ポリマー粒子(B)が水性媒体中で分散している請求項3記載の有機無機複合塗膜。
【請求項5】
前記中空ポリマー粒子(B)の殻壁厚みが10nm以上20nm以下で平均粒径が50nm以上150nm未満の粒子、または殻壁厚みが10nm以上80nm以下で平均粒径が150nm以上800nm以下の粒子である請求項1記載の有機無機複合塗膜。
【請求項6】
前記無機酸化物(A)からなるマトリクス中に、前記中空ポリマー粒子(B)が3次元空間で最密充填されてなる規則性多孔体構造である請求項1記載の有機無機複合塗膜。
【請求項7】
前記多孔体の孔径が40〜780nmの範囲にある請求項6記載の有機無機複合塗膜。
【請求項8】
塗膜の表面が中空ポリマー粒子(B)の最密配列による半球状の凹凸パターンを有する請求項1記載の有機無機複合塗膜。
【請求項9】
前記凹凸パターンがハニカム状である請求項8記載の有機無機複合塗膜。
【請求項10】
前記金属アルコキシド(C)と前記中空ポリマー粒子(B)との使用割合が(B)/(C)で表される質量比で70/30〜5/95の範囲である請求項1〜9のいずれか1項記載の有機無機複合塗膜。
【請求項11】
中空ポリマー粒子(B)の水性分散体と、金属アルコキシド(C)と、酸性触媒(D)とを含有する水性塗料組成物を基材上に塗布した後、硬化することを特徴とする有機無機複合塗膜の製造方法。
【請求項12】
中空ポリマー粒子(B)の水性分散体と、金属アルコキシド(C)と、酸触媒(D)とを含有することを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項13】
前記金属アルコキシド(C)が、官能基を有していても良いアルコキシシランである請求項12記載の水性塗料組成物。
【請求項1】
ゾルゲル反応から得られる無機酸化物(A)と単分散性の中空ポリマー粒子(B)とを含有する水性塗料組成物を基材表面に塗布して得られることを特徴とする有機無機複合塗膜。
【請求項2】
前記無機酸化物(A)が、三価以上の金属アルコキシドのゾルゲル反応により得られるものである請求項1記載の有機無機複合塗膜。
【請求項3】
前記中空ポリマー粒子(B)が、ラジカル重合性の水溶性モノマー(b1)とラジカル重合性の非水溶性モノマー(b2)とを水性媒体中でラジカル重合させて得られるものである請求項1記載の有機無機複合塗膜。
【請求項4】
前記中空ポリマー粒子(B)が水性媒体中で分散している請求項3記載の有機無機複合塗膜。
【請求項5】
前記中空ポリマー粒子(B)の殻壁厚みが10nm以上20nm以下で平均粒径が50nm以上150nm未満の粒子、または殻壁厚みが10nm以上80nm以下で平均粒径が150nm以上800nm以下の粒子である請求項1記載の有機無機複合塗膜。
【請求項6】
前記無機酸化物(A)からなるマトリクス中に、前記中空ポリマー粒子(B)が3次元空間で最密充填されてなる規則性多孔体構造である請求項1記載の有機無機複合塗膜。
【請求項7】
前記多孔体の孔径が40〜780nmの範囲にある請求項6記載の有機無機複合塗膜。
【請求項8】
塗膜の表面が中空ポリマー粒子(B)の最密配列による半球状の凹凸パターンを有する請求項1記載の有機無機複合塗膜。
【請求項9】
前記凹凸パターンがハニカム状である請求項8記載の有機無機複合塗膜。
【請求項10】
前記金属アルコキシド(C)と前記中空ポリマー粒子(B)との使用割合が(B)/(C)で表される質量比で70/30〜5/95の範囲である請求項1〜9のいずれか1項記載の有機無機複合塗膜。
【請求項11】
中空ポリマー粒子(B)の水性分散体と、金属アルコキシド(C)と、酸性触媒(D)とを含有する水性塗料組成物を基材上に塗布した後、硬化することを特徴とする有機無機複合塗膜の製造方法。
【請求項12】
中空ポリマー粒子(B)の水性分散体と、金属アルコキシド(C)と、酸触媒(D)とを含有することを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項13】
前記金属アルコキシド(C)が、官能基を有していても良いアルコキシシランである請求項12記載の水性塗料組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−222911(P2008−222911A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64983(P2007−64983)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]