説明

有機無機複合微粒子、その分散体、及び上記分散体の製造方法、並びに塗料組成物

【課題】他の有機材料と溶媒中で混合しても凝集することがなく、溶媒を揮散させた場合にも該有機材料のマトリックス中に凝集することなく分散して、該有機材料の光学特性や機械特性などの諸特性を低下させずに無機微粒子に起因する新しい特性や機能を該有機材料に付与することの可能な有機無機複合微粒子及び該有機無機複合微粒子を用いた塗料組成物、並びに粘度の増大やゲル化といった問題を起こさずに該有機無機複合微粒子の分散体を得ることができる製造方法を提供すること。
【解決手段】リビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)とを、溶媒の存在下で反応させることにより製造された、又はリビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と不飽和モノマー(c)とを、溶媒の存在下で反応させることにより製造された、有機無機複合微粒子の分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機無機複合微粒子、その分散体、及び上記分散体の製造方法、並びに上記複合微粒子又はその分散体を含む塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤中に分散された、粒子径が200nm以下の無機微粒子の分散体は、当該無機微粒子の1次粒子が不安定なため、他の化合物と混合すると、無機微粒子が凝集して沈降する場合がある。また上記分散体と樹脂溶液とを粒子が凝集しないように混合することができた場合においても、成型用途等のために有機溶剤を揮散させると、無機微粒子が凝集し、得られた成形物等の特性が低下することがあった。
【0003】
このような無機微粒子の凝集を防ぐために、無機微粒子をポリマーにより被覆した有機無機複合微粒子の分散体が検討されている。上記分散体は、塗膜、フィルム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の種々の有機系材料に適用されるために、無機微粒子を被覆するポリマーは種々の特性において幅広い設計が求められる。こうした要求に応えるために工業的に多くの種類が入手できる不飽和モノマーが利用され、その重合反応により得られたポリマーと無機微粒子との複合微粒子が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には重合性不飽和基を有する顔料粒子と不飽和モノマーとをラジカル重合開始剤を用いて共重合することにより顔料粒子をポリマーで被覆する方法が開示されている。しかし、この方法で得られた有機無機複合微粒子の分散体を他の有機系材料と混合した場合、有機系材料の機械特性、光学特性等が低下することがあった。
【0005】
上記の方法で得られた有機無機複合微粒子の分散体には無機微粒子に化学的に結合していないポリマーが多く含まれるので、そのポリマーが上記特性の低下の原因になったと考えられる。また、この方法においては有機無機複合微粒子の製造中に反応物がゲル化したり、生成した有機無機複合微粒子の分散体の粘度が高くなる場合があった。その原因は明らかではないが、無機微粒子上の重合性不飽和基が粒子間で共重合し、複数の無機微粒子が化学的に結合したためと推定される。
【0006】
近年、不飽和モノマーの重合技術としていくつか種類のリビングラジカル重合法が開発され、工業的な製造にも利用されるようになってきた。この重合法は不飽和モノマーが重合により消費された後でも生成したポリマーは重合活性な成長末端を有しているために新たにモノマーを追加すると再びリビングラジカル重合を開始するという特徴がある。このリビングラジカル重合の重合開始基を無機微粒子表面に化学的に結合させた無機微粒子上で、不飽和モノマーをリビングラジカル重合することによって、ポリマーで無機微粒子を被覆することが行われるようになってきた。
【0007】
例えば、特許文献2には、リビングラジカル重合法のひとつであるニトロキシド化合物系ラジカル重合法の開始基を、顔料粒子表面に導入し、これを用いて不飽和モノマーのリビングラジカル重合を行い、生成したポリマーにより顔料粒子を被覆した有機無機複合微粒子の分散体が開示されている。しかし、特許文献2の方法では、重合の進行に伴い、有機無機複合微粒子の分散体の粘度が高くなる場合があった。これは重合の進行に伴い複合微粒子が大きくなり粒子同士が接近してくると、隣合う微粒子上のポリマーの成長末端どうしが反応(停止反応)により化学的に結合した結果、粘度が高くなったものと推定される。
【0008】
また、特許文献3には、有機ハロゲン化合物を有する無機微粒子を用い、臭化銅の作用により上記有機ハロゲン化合物をリビングラジカル重合の開始基として利用する原子移動ラジカル重合を行って生成ポリマーで無機微粒子を被覆する方法が開示されている。しかし、特許文献3の方法においては、無機微粒子をポリマーが覆っていない状態で金属化合物等と混合する必要があり、製造工程中に凝集体が発生する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2004−526210号公報
【特許文献2】特開2005−345512号公報
【特許文献3】特開2008−106129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、他の有機材料と溶媒中で混合しても凝集することがなく、溶媒を揮散させた場合にも上記有機材料のマトリックス中に凝集することなく分散して、上記有機材料の光学特性、機械特性等の諸特性を低下させずに無機微粒子に起因する新しい特性、機能等を上記有機材料に付与することができる有機無機複合微粒子の分散体を提供することを目的とする。本発明はまた、粘度の増大、ゲル化等を生じさせずに上記有機無機複合微粒子の分散体を得ることができる、有機無機複合微粒子の分散体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、リビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)とを、溶媒の存在下で反応させることにより製造された、又はリビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と不飽和モノマー(c)とを、溶媒の存在下で反応させることにより製造された、有機無機複合微粒子の分散体により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の態様からなる。
【0012】
[態様1]
リビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)とを、溶媒の存在下で反応させることにより製造された、又はリビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と不飽和モノマー(c)とを、溶媒の存在下で反応させることにより製造された、有機無機複合微粒子の分散体。
[態様2]
重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)が、重合性不飽和基を有するコロイダルシリカである、態様1に記載の有機無機複合微粒子の分散体。
【0013】
[態様3]
態様1又は2に記載の有機無機複合微粒子の分散体から上記溶媒を除去することにより製造された、有機無機複合微粒子。
[態様4]
リビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)とを、溶媒の存在下で反応させる工程、又はリビングポリマー(a)と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と、さらに不飽和モノマー(c)とを、溶媒の存在下で反応させる工程を含むことを特徴とする有機無機複合微粒子の分散体の製造方法。
[態様5]
態様1又は2に記載の有機無機複合微粒子の分散体、又は態様3に記載の有機無機複合微粒子を含む、焼付け硬化型、常温硬化型又はラッカー型塗料組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有機無機複合微粒子の分散体は、他の有機材料と溶媒中で混合しても凝集することがなく、溶媒を揮散させた場合にも上記有機材料のマトリックス中に凝集することなく分散して、上記有機材料の光学特性、機械特性等の諸特性を低下させずに無機微粒子に起因する新しい特性、機能等を上記有機材料に付与することができる。
本発明の有機無機複合微粒子の分散体の製造方法は、粘度の増大、ゲル化等を生じさせずに上記有機無機複合微粒子の分散体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
[リビングポリマー(a)]
本発明に用いられるリビングポリマー(a)は、公知のリビングラジカル重合法により得ることができる。リビングラジカル重合は近年盛んに研究が行われており、種々の方法が提案されている。これに対して「従来のラジカル重合」は、本明細書においてはリビングラジカル重合以外のラジカル重合を意味し、成型材料、塗料、接着剤等に使用する樹脂を製造するために工業的に広く行われている重合である。
【0016】
「従来のラジカル重合」の素反応は開始反応、生長反応、連鎖移動反応及び停止反応からなる(「高分子合成の化学」(第2版、著者:大津隆行、発行:(株)化学同人)の47ページに記載)。生長反応において、生長ラジカル(重合体の生長末端が活性な炭素ラジカル種の状態にあるもの)に不飽和モノマーが連鎖的に付加して重合が進行し、連鎖移動反応又は停止反応により生長ラジカルの状態ではない重合体が生成する。
なお、本明細書において、リビングポリマー(a)を製造するための不飽和モノマーを、後述の不飽和モノマー(c)と区別するために、不飽和モノマー(a−1)と称する場合がある。
【0017】
上記重合体は、もはや生長ラジカルに戻ることはなく、重合を再開始することはできない(このような重合を再開始できない重合体を本明細書では「デッドポリマー」と表記することがある)。このような「従来のラジカル重合」に対してリビングラジカル重合は重合体の生長末端が安定な共有結合種(ドーマント種)から可逆的に活性な炭素ラジカル種を生成させることにより可能となる(このようなリビングラジカル重合により得られ、重合反応の活性を有する重合体を本明細書では「リビングポリマー」と表記する)。従って、リビングラジカル重合においては全ての不飽和モノマーが重合により消費された後に新たに不飽和モノマーを加えると、新たに別の重合体を生成することなく、既に生成していた重合体の成長末端がドーマント種から活性な炭素ラジカル種になって重合を再開始することが可能である。
【0018】
本発明における、リビングポリマー(a)と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と、所望による不飽和モノマー(c)との反応は、このリビングラジカル重合の特性を利用したものである。即ち、リビングポリマー(a)の生長末端が、ドーマント種から炭素ラジカル種になったときに無機微粒子(b)上の重合性不飽和基に付加するか、又は不飽和モノマー(c)及び無機微粒子(b)上の重合性不飽和基と共重合して本発明の有機無機複合微粒子の分散体を得ることが可能となる。このように、本発明は、リビングラジカル重合反応の機構を利用したものであるから、「従来のラジカル重合」のように新たに無機微粒子と化学的に結合していないデッドポリマーを生成することはほとんどなく、高い効率でリビングポリマーを無機微粒子上に化学的に結合して上記無機微粒子を被覆することが可能である。
【0019】
リビングポリマー(a)を得るためのリビングラジカル重合の方法としては、例えば、(1)ニトロキシド化合物系ラジカル重合法、(2)原子移動ラジカル重合法、(3)可逆的付加解裂型連鎖移動重合法、(4)有機テルル化合物系リビングラジカル重合法、(5)ヨウ素化合物系リビングラジカル重合法等を挙げることができる。これらのリビングラジカル重合の方法について以下に記載する。
【0020】
[(1)ニトロキシド化合物系ラジカル重合法]
上記ニトロキシド化合物系ラジカル重合法は、ニトロキシド化合物等の安定ラジカル化合物を生長ラジカルの捕捉剤として用いて、生長末端が可逆的にドーマント種と炭素ラジカル種の状態になることができるように制御するリビングラジカル重合の方法であり、NMP(Nitroxide Mediated Living Radical Polymerization)と表現されることもある。上記ニトロキシド化合物系ラジカル重合法は、特開平6−199916号公報、特表2005−534712号公報、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、第27巻、7228頁、等に記載の公知の方法を挙げることができる。
【0021】
[(2)原子移動ラジカル重合法]
上記原子移動ラジカル重合法は、ハロゲン原子を成長末端の炭素ラジカルに付加させ、この結合したハロゲン原子に金属錯体を作用させて成長末端の炭素ラジカルの可逆的な生成を可能とする方法であり、ATRP(Atom Transfer Radical Polymerization)と表現されることもある。上記原子移動ラジカル重合法は、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1995年、第117巻、5614頁;マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、第28巻、7901頁;サイエンス(Science)、1996年、第272巻、866頁;又はマクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、第28巻、1721頁、等に記載の公知の方法を挙げることができる。
【0022】
[(3)可逆的付加解裂型連鎖移動重合法]
上記可逆的付加解裂型連鎖移動重合法は、ジチオエステル化合物、トリチオカーボネート化合物等のチオカルボニルチオ化合物を、生長ラジカル(X)と付加解裂型連鎖移動反応させ、生長末端をドーマント種の状態とし、他の生長ラジカル(Y)が上記生長末端に付加することにより生長ラジカル(X)が再生し、次いで、生長ラジカル(Y)がドーマント種の状態になるようなリビングラジカル重合法であり、RAFT(Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer Radical Polymerization)と表現されることもある。上記可逆的付加解裂型連鎖移動重合法としては、例えば、国際公開第98/58974号、同第98/01478号、Aust.J.Chem.,2005年、58巻、379頁〜410頁、Polymer、2007年、48巻、1頁等に記載の公知の方法を挙げることができる。
【0023】
また、特開平7−002954号公報に開示されている2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを可逆的付加開裂型連鎖移動剤として用いたラジカル重合により得られる重合体、特公平6−23209号公報、特公平7−35411号公報等に開示されているコバルト錯体を用いた触媒的連鎖移動重合法(Catalytic Chain Transfer Polymerization)により得られる重合体又は特開2000−80288号公報に開示されている高温ラジカル重合により得られる重合体は、何れも生長末端に可逆的付加解裂連鎖移動反応することの可能な不飽和基を有しており、これらの重合体をリビングポリマー(a)として用いても良い。
【0024】
[(4)有機テルル系リビングラジカル重合法]
上記有機テルル系リビングラジカル重合法は、有機テルル化合物を用いたリビングラジカル重合法である。当該重合法として、国際公開第2004/014962号、特開2006−299278号公報、特開2008−247919号公報等に記載の公知の方法を挙げることができる。
【0025】
[(5)ヨウ素化合物系リビングラジカル重合法]
ヨウ素化合物系リビングラジカル重合法は、ヨウ素原子を成長末端の炭素ラジカルに付加させ、この結合したヨウ素原子に触媒を作用させて成長末端の炭素ラジカルの可逆的な生成を可能とする方法である。当該重合法として、特開2007−92014号公報、Polymer,2008年,49巻,24号,5177頁等に記載された公知の方法を挙げることができる。
【0026】
上記リビングラジカル重合法によるリビングポリマー(a)の製造方法について、詳細に説明する。リビングラジカル重合は何れも反応容器内の気相を不活性ガスにより置換して撹拌しながら行うことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。反応温度及び反応時間は、選択したリビングラジカル重合の方法、リビングポリマー(a)の分子量、モノマーの種類等により適宜選択されうる。重合は、通常、常圧下で行われるが、加圧又は減圧下であってもよい。
【0027】
上記(1)〜(5)のリビングラジカル重合の方法の中で、本発明においては、重合反応に適用可能な不飽和モノマー(a−1)の種類が多い観点から、(1)ニトロキシド化合物系ラジカル重合法又は(3)可逆的付加解裂型連鎖移動重合法が好ましい。(1)及び(3)の重合方法について以下に説明する。
【0028】
(1)ニトロキシド化合物系ラジカル重合法には、(1a)アミノエーテル化合物の存在下で重合を行う方法と、(1b)安定ラジカルであるニトロキシド化合物とラジカル重合開始剤の存在下で重合を行う方法等がある。(1a)におけるアミノエーテル化合物は加熱により安定ラジカルであるニトロキシド化合物と重合開始ラジカルを発生することが可能な化合物である。
【0029】
(1a)の方法において使用できるアミノエーテル化合物として、例えば、アルケマ社の商品名「BlocBuilder MA」、ベンゾイルオキシ−2−[(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル)オキシ]−2−フェニルエチル(BS−TEMPO)、2−ベンゾイルオキシ−1−フェニルエチル−ジ−tert−ブチル−ニトロキシド(BS−DBN)を挙げることができる。BlocBuilder MAを用いたリビングラジカル重合は、モノマーとBlocBuilder MAとを含む混合物を加熱することにより行うことができる。重合温度は、約60〜約200℃、好ましくは約80〜約160℃、より好ましくは約90〜約120℃であることができる。上記重合温度が約60℃未満であると、重合速度が遅いために重合時間が長くなり製造効率が低下することがある。上記重合温度が約200℃よりも高くなると、連鎖移動反応等により再開始反応を行うことのできない重合体が生成することがある。
【0030】
(1b)の方法におけるニトロキシド化合物としては、特に限定されないが、例えば、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシ)、ジ−tert−ブチル−ニトロキシド(DBN)、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(4−カルボキシTEMPO)、4−オキソ−TEMPO、テトラメチル−イソインドリン−1−オキシル、テトラエチル−イソインドリン−1−オキシル、N−tert−ブチル−N−[1−ジエチルフォスフォノ−(2,2−ジメチルプロピル)]ニトロキシド(以下、DEPNと略す)、2,2,5−トリメチル−4−フェニル−3−アザヘキサン−3−ニトロキシド(以下、TIPNOと略す)等が挙げられ、重合速度や分子量の制御の容易さから、DEPN及びTIPNOを好適に使用することができる。
【0031】
(1b)の方法において、(1a)と同じ温度範囲で重合を行うことが好ましいが、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、第27巻、7228頁に記載されているように、重合反応を行うための予備反応としてニトロキシド化合物、ラジカル重合開始剤及びモノマーを含む混合物を、上記重合温度よりも低い温度で数時間撹拌することによりアミノエーテル化合物を生成させた後、反応温度を上げてリビングラジカル重合を行うことが好ましい。
【0032】
(1b)の方法におけるラジカル重合開始剤は、特に種類は制限されるものではなく、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2’−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルヒドロキシパーオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、過酸化水素等の過酸化物系重合開始剤;1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−ジ(2−ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)等のアゾ系重合開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸系開始剤、過酸化物と還元剤とからなるレドックス型開始剤等を挙げることができる。
【0033】
(1b)の方法におけるニトロキシド化合物と上記ラジカル重合開始剤とのモル比は、前者/後者の比で約0.1〜約5.0であり、好ましくは約0.2〜約2.0の範囲である。上記モル比が約5.0を超える場合は、重合速度が低下して重合時間が長くなる場合がある。上記モル比が約0.1未満では生長末端にニトロキシド化合物が付加していないデッドポリマーが生成する場合がある。本発明の有機無機複合微粒子の分散体は、リビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と、所望による不飽和モノマー(c)とを、溶媒の存在下で反応させることにより得られるので、リビングポリマー(a)を製造する際に、これらの反応を行うことができないデッドポリマーの生成ができるだけ少なくなるように、ニトロキシド化合物とラジカル重合開始剤とのモル比を、上記モル比の範囲内で調整することが好ましい。
【0034】
(3)可逆的付加解裂型連鎖移動重合法において用いられうる、可逆的付加解裂型連鎖移動反応が可能な化合物であるジチオエステル化合物は、例えば、国際公開第98/01478号に記載の方法により得ることが可能である。上記ジチオエステル化合物の具体的として、1−フェニルエチルジチオベンゾエート(1−phenylethyl dithiobenzoate)、ジチオ安息香酸ベンジル、ジチオ安息香酸クミル、ジチオ酢酸ベンジル等を挙げることができる。また、上記可逆的付加解裂型連鎖移動重合法に用いられうるトリチオカーボネート化合物としては、例えば、特開昭53−105450号公報に記載の方法により得られるものを挙げることができる。上記トリチオカーボネート化合物の具体例としては、ジベンジルトリチオカーボネート等を挙げることができる。他の可逆的付加解裂型連鎖移動反応が可能な化合物である、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンは、市販品をそのまま使用することができる。
【0035】
(3)可逆的付加解裂型連鎖移動重合は、可逆的付加解裂型連鎖移動反応可能な化合物又は重合体、及びラジカル重合開始剤の存在下において行うことができる。上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、上述の(1)ニトロキシド化合物系ラジカル重合法における(1b)の方法で用いることの可能なラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0036】
上述のチオカルボニルチオ化合物及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの使用量は、ラジカル重合開始剤1質量部あたり、好ましくは約0.05〜約100質量部、更に好ましくは約0.1〜約50質量部である。上記使用量が、約0.05質量部よりも少ないと、リビングポリマーに対するデッドポリマーの生成比率が高くなる場合がある。上記使用量が、約100質量部よりも多いと、チオカルボニルチオ化合物及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンが、未反応のまま残る場合がある。また、ラジカル重合開始剤の使用量は、不飽和モノマー(a−1)100質量部あたり、好ましくは約0.01〜約20質量部であり、さらに好ましくは約0.1〜約10質量部である。
【0037】
上記リビングラジカル重合の際の重合温度に特に制限はないが、約0〜約250℃、好ましくは約30〜約200℃、更に好ましくは、約60〜約180℃であることができる。約0℃未満の重合温度では重合速度が遅いために重合時間が長くなり製造効率が低下する場合がある。約250℃よりも高い重合温度では、生長末端をドーマント種にするためのチオカルボニルチオ化合物由来の基が熱分解したり、可逆的付加解裂型連鎖移動反応以外の連鎖移動反応や停止反応が起こったりすることによりデッドポリマーが生成する場合がある。
【0038】
リビングポリマー(a)を得るために用いることのできる不飽和モノマー(a−1)は、リビングラジカル重合することが可能なものであれば、特に種類は制限されるものではなく、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0039】
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
【0040】
(ii)イソボルニル基を有する不飽和モノマー:例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii)アダマンチル基を有する不飽和モノマー:例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv)トリシクロデセニル基を有する不飽和モノマー:例えば、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
【0041】
(v)芳香環含有不飽和モノマー:例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi)アルコキシシリル基を有する不飽和モノマー:例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
【0042】
(vii)フッ素化アルキル基を有する不飽和モノマー:例えば、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する不飽和モノマー。
(ix)ビニル化合物:例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
【0043】
(x)リン酸基含有不飽和モノマー:例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等。
(xi)水酸基含有不飽和モノマー:例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;上記(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等。
【0044】
(xii)カルボキシル基含有不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xiii)含窒素不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等。
【0045】
(xiv)重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する不飽和モノマー:例えば、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xv)エポキシ基含有不飽和モノマー:例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、4−(グリシジルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート等。
【0046】
(xvi)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xvii)スルホン酸基を有する不飽和モノマー:例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
【0047】
(xviii)紫外線吸収性官能基を有する不飽和モノマー:例えば、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
【0048】
(xix)光安定性不飽和モノマー:例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
【0049】
(xx)カルボニル基を有する不飽和モノマー:例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、約4〜約7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
(xxi)酸無水物基を有する不飽和モノマー:例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
不飽和モノマー(a−1)は、1種又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0050】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0051】
上述のリビングラジカル重合は、無溶媒で行ってもよく、又は溶媒中で行ってもよい。上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、メチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール系溶媒、n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン又は水等、あるいはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0052】
リビングラジカル重合により得られるリビングポリマー(a)の数平均分子量は、約500〜約500,000、さらに約1,000〜約30,000の範囲にあることが好ましい。本発明の有機無機複合微粒子の分散体が取り扱い安い粘度になるためである。
【0053】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0054】
リビングポリマー(a)を得るためのリビングラジカル重合において、不飽和モノマー(a−1)の重合率は約100%であっても、又は約100%未満であってもよい。重合率が約100%未満の場合においても、リビングポリマー(a)と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と、所望による不飽和モノマー(c)との反応を、リビングポリマー(a)を得るためのリビングラジカル重合における不飽和モノマー(a−1)のうち、未反応のもの(以下、「未反応の不飽和モノマー(a−1)」と称する場合がある)の存在下で行うことができる。
【0055】
リビングポリマー(a)を得るためのリビングラジカル重合における不飽和モノマー(a−1)の重合率は、約30%以上、好ましくは約50%以上、さらに好ましくは約80%以上であることができる。重合率が約30%未満であると、後述するリビングポリマー(a)と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と、所望による不飽和モノマー(c)との反応における反応時間が長くなり、製造効率が低下する場合がある。また、未反応の不飽和モノマー(a−1)、重合に使用した溶媒等は、減圧下で除去したり、リビングポリマー(a)が溶解しない溶剤を用いて沈殿処理したりすることによりリビングポリマー(a)を単離してから、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)との反応に用いてもよい。
【0056】
[重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)]
重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)は、無機微粒子と加水分解性シリル基を有するモノマーとを反応させることにより得られる。上記無機微粒子は、後述する加水分解性シリル基を有するモノマーとの反応により共有結合を形成して重合性不飽和基による表面修飾が可能な無機微粒子であれば何れでも使用することができる。このような無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化錫微粒子、又はこれらを主成分とする複合酸化物微粒子が挙げられる。これらの中でも、シリカ微粒子、特に、水酸基及び/又はアルコキシ基を粒子表面に有し、分散媒に分散されたシリカ微粒子であるコロイダルシリカが好ましい。
【0057】
上記分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール等の多価アルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶剤等が挙げられる。上記分散媒としては、炭素数3以下の低級アルコール系溶剤が好ましい。重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)の製造における溶剤除去工程で除去しやすいからである。
【0058】
コロイダルシリカとしては、例えば、メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、PGM−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL(いずれも日産化学工業社製)等が挙げられる。
【0059】
コロイダルシリカの平均一次粒子径は、約1〜約200nmが好ましく、約5〜約80nmがより好ましい。平均一次粒子径が約1nm未満であると、本発明の有機無機複合微粒子の分散体を他の有機材料と混合して使用した場合に、上記材料の、機械特性等の改良効果が小さくなるときがある。平均一次粒子径が約200nm以上であると、上記材料の透明性が損なわれる場合がある。
本明細書において、「平均一次粒子径」は、動的光散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(d50)を意味し、例えば、日機装社製のナノトラック粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0060】
加水分解性シリル基を有するモノマーとしては、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、各種シランカップリング剤と不飽和化合物との反応により得られる加水分解性シリル基を有するモノマー等、又はその加水分解物を挙げることができる。
【0061】
シリカ微粒子と加水分解性シリル基を有するモノマーとを反応させる方法としては、特に限定されない。例えば、[i]水を含む有機溶剤の存在下にシリカ微粒子と加水分解性シリル基を有するモノマーとを混合し、加水分解縮合を行う方法、[ii]水を含む有機溶剤の存在下で加水分解性シリル基を有するモノマーを加水分解した後に得られる加水分解物とシリカ微粒子とを縮合させる方法が挙げられる。
ここで、これら製造方法において使用する水は、原材料に含まれる水、例えば、コロイダルシリカの分散媒である水であってもよい。
【0062】
重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)を製造する方法についてより具体的に説明する。重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)は、例えば、コロイダルシリカと、加水分解性シリル基を有するモノマーと、所望による低級アルコールとの存在下で、コロイダルシリカの分散媒、及び低級アルコール(加水分解性シリル基を有するモノマーを加水分解して生じた低級アルコールを含む。)を常圧又は減圧下で低級アルコールよりも高沸点の溶剤とともに共沸留出させ、分散媒を上記高沸点の溶剤に置換しながら、又は置換した後に加熱下で脱水縮合反応させることにより製造することができる。
【0063】
この製造方法においては、シリカ微粒子であるコロイダルシリカと、加水分解性シリル基を有するモノマーと、所望による低級アルコールとの混合物に必要により加水分解触媒を加え、常温又は加熱下で攪拌する等の常法によって、加水分解性シリル基を有するモノマーの加水分解を行う。続いて、コロイダルシリカの分散媒、及び低級アルコールを常圧又は減圧下で低級アルコールよりも高沸点の溶剤とともに共沸留出させ、分散媒を上記高沸点溶剤に置換した後、約60〜約150℃、好ましくは約80〜約130℃の温度で、通常不揮発分濃度を約5〜約50質量%の範囲に保ちながら、約0.5〜約10時間攪拌下で反応させる。反応後には、縮合反応又は加水分解で生ずる水及び低級アルコールを、低級アルコールよりも高沸点の溶剤とともに共沸留去することが好ましい。
【0064】
上記反応に用いられる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン等のハロゲン化炭化水素類;1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル類;メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。
【0065】
反応中の不揮発分濃度は約5〜約50質量%の範囲が好ましい。不揮発分濃度が約5質量%未満、すなわち溶媒が約95質量%を超えると、シリカ微粒子と加水分解性シリル基を有するモノマーとの反応時間が長くなり製造効率が低下する場合がある。一方、不揮発分濃度が約50質量%を超えると、生成物がゲル化する恐れがある。
【0066】
これらの製造方法によりシリカ微粒子表面のケイ素原子と、加水分解性シリル基を有するモノマーのケイ素原子が酸素原子を介して結合することにより、シリカ微粒子と加水分解性シリル基を有するモノマーとが化学的に結合した重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)が得られる。
【0067】
重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)を得る際の加水分解性シリル基を有するモノマーの配合割合は、シリカ微粒子100質量部に対して、好ましくは約0.2質量部〜約95質量部であり、より好ましくは約0.5質量部〜約90質量部、そしてさらに好ましくは約1.0質量部〜約80質量部である。加水分解性シリル基を有するモノマーの割合が約0.2質量部未満であると、生成する有機無機複合微粒子が、分散媒中で安定性に劣る場合がある。加水分解性シリル基を有するモノマーの割合が約95質量部よりも多いと、無機微粒子(b)との反応において加水分解性シリル基を有するモノマーが未反応のまま残存する場合がある。
【0068】
[不飽和モノマー(c)]
本発明の有機無機複合微粒子の分散体はまた、リビングポリマー(a)と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と、不飽和モノマー(c)とを、溶媒の存在下で反応させることによっても得られる。
【0069】
不飽和モノマー(c)は、リビングポリマー(a)を製造するための不飽和モノマー(a−1)、又はその組み合わせであることができる。また、リビングポリマー(a)の製造における不飽和モノマー(a−1)の重合率が約100%未満の場合であって、リビングポリマー(a)から未反応の不飽和モノマー(a−1)が持ち込まれるときには、未反応の不飽和モノマー(a−1)は、不飽和モノマー(c)に含まれる。不飽和モノマー(c)の使用量は、リビングポリマー(a)100質量部に対して約230質量部以下、好ましくは約100質量部以下であることができる。不飽和モノマー(c)が約230質量部よりも多いと、反応時間が長くなり製造効率が低下する場合がある。
【0070】
[有機無機複合微粒子の分散体]
本発明の有機無機複合微粒子の分散体は、リビングポリマー(a)と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と、所望による不飽和モノマー(c)とを、溶媒の存在下で反応させることにより得られる。
【0071】
上記反応は、リビングポリマー(a)を得るために用いられたリビングラジカル重合法に応じて、リビングポリマー(a)に、適宜、触媒、ラジカル重合開始剤等を添加して、実施することができる。(1)ニトロキシド化合物系ラジカル重合法により得られたリビングポリマー(a)を用いる場合には、リビングポリマー(a)と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と、所望による不飽和モノマー(c)との混合物を加熱することにより有機無機複合微粒子の分散体を得ることができる。
【0072】
(3)可逆的付加解裂型連鎖移動重合法により得られたリビングポリマー(a)を用いる場合には、上記混合物にラジカル重合開始剤を添加して加熱することにより、有機無機複合微粒子の分散体を得ることができる。上記ラジカル重合開始剤は、上記(1b)の方法において記載したものを使用することができ、その使用量はリビングポリマー(a)100質量部に対して約0.05〜約20質量部、好ましくは約0.1〜約10質量部であることができる。上記ラジカル重合開始剤が約0.05質量部未満であると、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と反応しない未反応のリビングポリマー(a)の割合が多くなる場合がある。上記ラジカル重合開始剤が約20質量部よりも多いと、ラジカル重合開始剤由来の開始ラジカル種が、リビングポリマー(a)の生長末端に付加して無機微粒子(b)と反応できないデッドポリマーの生成割合が多くなる場合がある。
【0073】
リビングポリマー(a)と所望による不飽和モノマー(c)の合計質量と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)との質量比は、約5:95〜約95:5、好ましくは約20:80〜約80:20であることができる。上記質量比が約5:95よりも小さいと、得られる有機無機複合微粒子の分散体の貯蔵安定性が劣る場合がある。上記質量比が約95:5よりも大きいと、本発明の有機無機複合微粒子の分散体を他の有機材料と混合して使用した場合に、上記有機材料の機械特性等の改良効果が小さくなることがある。
【0074】
リビングポリマー(a)と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と、所望による不飽和モノマー(c)との反応は、溶媒中で行なうことができる。リビングポリマー(a)と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と、所望による不飽和モノマー(c)との合計質量濃度は、約10質量%〜約90質量%、好ましくは約20質量%〜約70質量%であることができる。上記合計質量濃度が約10質量%未満であると、反応時間が長くなり製造効率が低下する場合がある。上記合計質量濃度が約90質量%よりも高いと、反応系の粘度が高くなり攪拌が困難になる場合がある。溶媒はリビングポリマー(a)の製造において使用した溶剤、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)の分散媒として使用した溶剤等を使用することができる。
【0075】
リビングポリマー(a)の生長末端と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)の重合性不飽和基との反応、又はリビングポリマー(a)の生長末端と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)の重合性不飽和基と、不飽和モノマー(c)の重合性不飽和基との反応は、リビングラジカル重合と同様に反応容器内の気相を不活性ガスにより置換して撹拌しながら行うことが好ましい。反応温度と反応時間は、リビングポリマー(a)の製造におけるリビングラジカル重合の方法、不飽和モノマー(c)の種類等により適宜選択することができるが、反応温度は約0〜約250℃の範囲内であるのが好ましく、反応時間は1〜72時間の範囲内であるのが好ましい。反応は、通常、常圧下で行われるが、加圧又は減圧下で行うことができる。
【0076】
上記反応における、不飽和モノマー(c)の重合率は、約90%以上、好ましくは約95%以上であることができる。不飽和モノマー(c)の重合率が約90%未満だと、得られる有機無機複合微粒子の分散体の使用時に未反応の不飽和モノマー(c)に起因する臭気が問題になる場合がある。未反応のモノマーは、反応時間を延長して消費させてもよく、又は未反応モノマーが少量の場合には、ラジカル重合開始剤を添加して重合反応により消費させてもよい。また、得られた有機無機複合微粒子の分散体は、所望により、溶媒が水等の他の溶媒に置換されてもよい。
【0077】
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、上述の有機無機複合微粒子の分散体、又は有機無機複合微粒子を含む。上記塗料組成物は、有機無機複合微粒子の分散体、又は有機無機複合微粒子以外に、樹脂(d)、硬化剤(f)、顔料等を含んでいてもよく、そして1液型又は2液型以上の塗料組成物であることができる。また、上記塗料組成物は、クリヤー塗料又はエナメル塗料であることができる。さらに、上記塗料組成物は、焼付け硬化型、例えば、1液型の焼き付け硬化型塗料組成物若しくは2液型の焼き付け硬化型塗料組成物、又は常温硬化型、例えば、1液型の常温硬化型塗料組成物若しくは2液型の常温硬化型塗料組成物であることができ、又は非硬化型のラッカー型、例えば、1液型のラッカー型塗料組成物であることができる。
【0078】
上記塗料組成物に含まれうる樹脂(d)としては、例えば、アクリル、ポリスチレン、アルキド、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンカーボネート等、又はこれらの組み合わせが挙げられる。有機無機複合微粒子と樹脂(d)との固形分の質量比は、約0.1:99.9〜約100:0の範囲内が好ましく、約0.5:99.5〜約100:0の範囲内がより好ましい。上記質量比が約0.1:99.9よりも小さいと、有機無機複合微粒子による塗膜の物性の改良効果が小さくなる場合がある。
【0079】
上記塗料組成物に含まれうる硬化剤(f)としては、例えば、ポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン化合物等、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
上記塗料組成物がエナメル塗料である場合には、上記塗料組成物は、顔料として、塗料分野で既知の着色顔料、光輝性顔料、体質顔料、防錆顔料等を含むことができる。
【0080】
本発明の塗料組成物はまた、所望により、有機溶剤、水、硬化触媒、紫外線吸収剤、表面調整剤、流動性調整剤、顔料分散剤等を含むことができる。
上記塗料組成物の用途は、特に限定されるものではなく、上記塗料組成物は、建築用、自動車外板用、自動車部品用、建材用、一般工業用等に用いられうる。
【0081】
本発明の塗料組成物は、例えば、アルミニウム板、鉄鋼板等の金属板、プラスチック等の被塗物素材に直接、又は被塗物素材にプライマーもしくはプライマー/中塗りを施した塗膜面に塗布されうる。また、本発明の塗料組成物が自動車用塗料である場合には、例えば、上塗りエナメル塗料及びクリヤートップコート用塗料であることができる。
【0082】
本発明の塗料組成物を、被塗物素材に塗布する手段としては、例えば、ロールコーティング、スプレー塗装、刷毛塗り、吹き付け塗り、電着塗装等のそれ自体既知の任意の方法を用いることができる。また、塗布膜厚は、通常、硬化塗膜として約2〜約100μm程度の範囲であり、常温乾燥又は焼付け乾燥により塗膜が形成されうる。塗膜の焼付けは、一般に約40℃〜約300℃、好ましくは約60℃〜約230℃の温度で、約20〜約600秒間、好ましくは約30〜約300秒間行われる。
【0083】
本発明の有機無機複合微粒子の分散体は、リビングポリマー(a)と、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と、所望による不飽和モノマー(c)とを、溶媒の存在下で反応させることにより製造される。上記反応は、リビングポリマー(a)の成長末端が、活性な炭素ラジカルの状態で無機微粒子上の重合性不飽和基、又は不飽和モノマー(c)の重合性不飽和基を攻撃し、リビングラジカル重合の反応機構により進行する。この反応機構においては、粒子どうしを結合して粘度が増大するか、又は系がゲル化する反応が起こらないので、低粘度の有機無機複合微粒子の分散体を製造することでき、無機微粒子に結合していない未反応のポリマーの生成がほとんどないので、他の有機材料と混合した場合でも、その特性を損なうことなく、無機微粒子に起因する新しい特性や機能を効率良く発揮することができる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
【0085】
[リビングポリマー(a)の製造]
[製造例1]
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、BlocBuilder MA(アルケマ株式会社製、商品名)7.5部、スチレン50部、アクリル酸ブチル50部、及び3−エトキシプロピオン酸エチル20部を仕込んだ。その後、窒素をフラスコ中に通気させながら120℃に加熱し、同温度で8時間攪拌し、リビングポリマー(a1)の溶液を得た。リビングポリマー(a1)の数平均分子量(Mn)は5,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.3、重合率(%)(注1)は99%であった。
【0086】
(注1)重合率は下記式1により計算した。
重合率(%)
=100×(実測された不揮発分(%)/計算された不揮発分(%)) (式1)
式1における「実測された不揮発分(%)」は、重合溶液2.0g〜2.2gを秤量し、熱風乾燥機で130℃、3時間加熱した後の乾燥残差の質量を、乾燥前の重合溶液の質量に対する百分率で表わしたものである。
【0087】
式1における「計算された不揮発分(%)」は、下記式2により計算した。
計算された不揮発分(%)
=100×(使用した不飽和モノマーの質量+使用したリビング重合開始剤の質量×リビング重合開始剤の実測された不揮発分(%)÷100)/(全使用原料の質量) (式2)
式2における「リビング重合開始剤」は、モノマーや溶媒以外のリビング重合を行うため必須の開始剤、連鎖移動剤、停止剤等の成分である。例えば、アルケマ社のBlocBuilder MAをリビング重合の開始剤として用いた場合、その実測された不揮発分(%)は20%であったので、その値を、実測された不揮発分として使用した。
【0088】
[製造例2〜7]
製造例1において、各成分、配合量及び重合時間を表1に記載した各成分、配合量及び重合時間に代えた以外は、製造例1と同様にして、リビングポリマー(a2)〜(a7)の溶液を得た。
【0089】
[製造例8]
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、ジベンジルトリチオカーボネート1.0部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.06部、及び3−エトキシプロピオン酸エチル33部を仕込み、均一に溶解したことを確認した後、窒素雰囲気下で80℃に昇温し、スチレン50部、アクリル酸ブチル50部の混合物を2時間かけて滴下した。次いで、同温度で窒素ガスを通気しながら10時間攪拌することにより、リビングポリマー(a8)の溶液を得た。リビングポリマー(a8)の数平均分子量(Mn)は25,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.6、不揮発分から求めた重合率は99%であった。
【0090】
【表1】

【0091】
[製造例9]
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、3−エトキシプロピオン酸エチル45部、及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(以下、「MSD」と略称する場合がある)1.5部を仕込み、気相に窒素ガスを通気し、攪拌しながら160℃に昇温した。160℃に達したら、メタクリル酸メチル50部、メタクリル酸ブチル50部及びジ−tert−アミルパーオキサイド7部からなる混合液を3時間かけて滴下し、同温度で2時間攪拌した。次いで、30℃まで冷却し、3−エトキシプロピオン酸エチル13部で希釈して固形分65%のリビングポリマーの溶液を得た。リビングポリマー(a9)の数平均分子量は4,500であった。また、プロトンNMRでの解析によるとMSD由来のエチレン性不飽和基のうち97%以上がポリマー鎖末端に存在し、2%は消失していた。
【0092】
なお、上記プロトンNMRでの解析は、溶媒として重クロロホルムを使用し、重合反応前後の、MSDの不飽和基のプロトンに基づくピーク(4.8ppm、5.1ppm)、リビングポリマー鎖末端のエチレン性不飽和基のプロトンに基づくピーク(5.0ppm、5.2ppm)及びMSDに由来する芳香族プロトン(7.2ppm)のピークを測定した後、上記MSDに由来する芳香族プロトン(7.2ppm)は重合反応前後で変化しないと仮定し、これを基準として、各不飽和基(未反応、リビングポリマー鎖末端、消失)を定量化することによって行った。
【0093】
[製造例10〜15]
表2に示す配合とする以外は、製造例9と同様にして、固形分65%のリビングポリマー(a10)〜(a15)の溶液を得た。
【0094】
【表2】

【0095】
[製造例16]
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、3−エトキシプロピオン酸エチル42部を仕込み、液相に窒素ガスを通気し、攪拌しながら105℃に昇温した。105℃に達したら、メタクリル酸メチル50部、メタクリル酸ブチル50部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.0部、及びビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキイシメイト)Co(II)0.004部からなる混合液を3時間かけて滴下し、同温度で1時間攪拌した。次いで、3−エトキシプロピオン酸エチル12部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5部からなる混合液を1時間かけて滴下し、同温度で1時間攪拌し、固形分65%のリビングポリマー(a16)の溶液を得た。リビングポリマー(a16)の数平均分子量は1,200であった。
なお、エチレン性不飽和単量体及び溶媒は、いずれも使用前に、それらの中に窒素ガスを少なくとも1時間通気することにより脱気(脱酸素)した。
【0096】
[製造例17及び18]
表3に示す配合とする以外は、製造例16と同様にして合成し、固形分65%のリビングポリマー(a17)及び(a18)の溶液を得た。
【0097】
【表3】

【0098】
[製造例19]
温度計、サーモスタット、撹拌装置、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた耐圧反応容器に、3−エトキシプロピオン酸エチル42部を仕込み、気相に窒素ガスを通気し、攪拌しながら185℃に昇温した。185℃に達したら、メタクリル酸ブチル70部、アクリル酸ブチル30部、及びジ−tert−アミルパーオキサイド1.0部からなる混合液を2時間かけて滴下し、同温度で15分間攪拌した。次いで、3−エトキシプロピオン酸エチル12部及びジ−tert−アミルパーオキサイド0.25部からなる混合液を30分間かけて滴下し、同温度で30分間攪拌し、固形分65%のリビングポリマー(a19)の溶液を得た。リビングポリマー(a19)の数平均分子量は2,600であった。
【0099】
[製造例20及び21]
表4に示す配合とする以外は、製造例19と同様にして合成し、固形分65%のリビングポリマー(a20)及び(a21)の溶液を得た。
【0100】
【表4】

【0101】
[製造例22]
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、臭化第一銅1.4部、メタクリル酸メチル50部、及びアクリル酸ブチル50部を仕込み、気相に窒素ガスを通気し、攪拌した。その後、2−ブロモプロピオン酸エチル3.6部、及びアセトニトリル8部からなる混合液を加え、70℃まで昇温し、同温度で30分間攪拌した。その後、ペンタメチルジエチレントリアミン0.2部を加え、重合を開始した。ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで、重合速度を制御しながら、重合率99%に達したところで30℃まで冷却し、3−エトキシプロピオン酸エチル48部で希釈して固形分65%のリビングポリマー(a22)の溶液を得た。リビングポリマー(a22)の数平均分子量(Mn)は4,800、分子量分布は1.3であった。
配合を、表5に示す。
【0102】
【表5】

【0103】
[製造例23]
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチル−2−メチル−2−メチルテラニルプロピオネート5.4部、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬株式会社製、商品名V−70)6.2部、メタクリル酸メチル50部、及びアクリル酸ブチル50部を仕込み、気相に窒素ガスを通気しながら40℃へ昇温し、同温度で5時間攪拌した。次いで、3−エトキシプロピオン酸エチル60部で希釈して固形分65%のリビングポリマー(a23)の溶液を得た。リビングポリマー(a23)の数平均分子量(Mn)は4,700、分子量分布は1.3で、重合率は99%であった。
配合を、表6に示す。
【0104】
【表6】

【0105】
[重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)の製造]
[製造例24]
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA−ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5部、p−メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール233部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。
【0106】
続いて、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b1)の分散体(実測された不揮発分40%)を得た。
【0107】
[製造例25〜31]
各成分、配合量を、表7に記載した各成分、配合量に代えた以外は、製造例24と同様にして、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b2)〜(b8)の分散体を得た。
【0108】
【表7】

【0109】
(注2)IPA−ST:日産化学工業(株)社製コロイダルシリカ、平均一次粒子径10〜20nm、分散媒、イソプロパノール、シリカ微粒子濃度、30質量%(日産化学工業のホームページに記載されている説明から抜粋)
(注3)IPA−ST−ZL:日産化学工業(株)社製コロイダルシリカ、平均一次粒子径70〜100nm、分散媒、イソプロパノール、シリカ微粒子濃度、30質量%(日産化学工業のホームページに記載されている説明から抜粋)
【0110】
[アクリルポリマーの製造]
[製造例32]
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、3−エトキシプロピオン酸エチル31部を仕込み、窒素雰囲気下で125℃に昇温し、スチレン20部、アクリル酸イソボロニル20部、アクリル酸2−エチルヘキシル30部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル30部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5部の混合物を4時間かけて滴下した。次いで、125℃で窒素ガスを通気しながら30分間熟成させた後、更に32部の−エトキシプロピオン酸エチル及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて滴下し、その後1時間熟成させることにより、固形分濃度60%のアクリルポリマー(d1)の溶液を得た。アクリルポリマー(d1)の重量平均分子量(Mw)は9,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、そして不揮発分から求めた重合率は99%であった。
【0111】
[有機無機複合微粒子の分散体の製造]
[実施例1]
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、製造例1で得られたリビングポリマー(a1)の溶液128部と、製造例24で製造された無機微粒子(b1)の分散体244部とを仕込んだ。その後、窒素をフラスコ中に通気させながら120℃に加熱し、同温度で10時間攪拌した。その後、3−エトキシプロピオン酸エチルを加え、減圧状態で共沸留出することで溶剤を置換し、有機無機複合微粒子の分散体(e1)(実測された不揮発分45%)を得た。有機無機複合微粒子の分散体(e1)のガードナー粘度はA3であった。
【0112】
次いで、有機無機複合微粒子の分散体(e1)に、製造例32で製造されたアクリルポリマー(d1)の溶液2060部と、硬化剤(f)としての、スミジュールN−3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型ポリイソシアネート、固形分100%、NCO含有率22%)613部とを加え、ディスパーで攪拌して混合した。得られた混合物を、ガラス板上にアプリケーターで乾燥膜厚が30μmとなる条件で塗装し、熱風乾燥機を用い、140℃で30分間乾燥し、塗膜の透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表8に示す。
【0113】
[実施例2〜17]
各成分及び配合量を、表8に記載した各成分及び配合量に代えた以外は、実施例1と同様にして、有機無機複合微粒子の分散体(e2)〜(e17)を得た。それらのガードナー粘度を、表8に示す。また、実施例1と同様にして塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を、表8に示す。
【0114】
[実施例18]
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、製造例3で得られたリビングポリマー(a3)の溶液67.5部、製造例24で製造された無機微粒子(b1)の分散体244部、スチレン25部、及びアクリル酸ブチル25部を仕込んだ。その後、窒素をフラスコ中に通気させながら120℃に加熱し、同温度で14時間攪拌した。その後、3−エトキシプロピオン酸エチルを加え、減圧状態で共沸留出することで溶剤を置換し、有機無機複合微粒子の分散体(e18)(実測された不揮発分45%)を得た。有機無機複合微粒子の分散体(e18)のガードナー粘度はA2であった。
【0115】
次いで、有機無機複合微粒子の分散体(e18)に、製造例32で製造されたアクリルポリマー(d1)の溶液2060部と、硬化剤(f)としての、スミジュールN−3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型ポリイソシアネート、固形分100%、NCO含有率22%)613部とを加え、ディスパーで攪拌して混合した。得られた混合物から、実施例1と同様にして塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表8に示す。
【0116】
[実施例19]
各成分及び配合量を表8に記載した各成分及び配合量に代えた以外は、実施例18と同様にして、有機無機複合微粒子の分散体(e19)を得た。有機無機複合微粒子の分散体(e19)のガードナー粘度を表8に示す。また、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を、表8に示す。
【0117】
[比較例1]
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、製造例24で製造された無機微粒子の(b1)分散体244部、スチレン50部、アクリル酸ブチル50部、3−エトキシプロピオン酸エチル20部、及び過酸化ベンゾイル2.0部を仕込んだ。その後、窒素をフラスコ中に通気させながら120℃に加熱し、同温度で10時間攪拌した。不揮発分から求めた重合率は99%であった。その後、3−エトキシプロピオン酸エチルを加え、減圧状態で共沸留出することで溶剤を置換し、有機無機複合微粒子の分散体(e20)(実測された不揮発分45%)を得た。有機無機複合微粒子の分散体(e20)のガードナー粘度を、表8に示す。また、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を、表8に示す。
【0118】
[比較例2]
過酸化ベンゾイル配合量を1.0部に減らした以外は、比較例1と同様に、有機無機複合微粒子の分散体(e21)(実測された不揮発分45%)を得た。不揮発分から求めた重合率は99%であった。しかし、有機無機複合微粒子の分散体(e21)は、ゲル状であり、粘度を測定することができなかった。また、有機無機複合微粒子の分散体(e21)は、アクリルポリマー(d1)及び硬化剤(f)と混合しなかったので、塗膜の透明性及び耐擦り傷性を評価することができなかった。
【0119】
[比較例3]
重合性不飽和基を有する無機微粒子(b1)の分散体を、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b3)の分散体に変更した以外は、比較例1と同様に、有機無機複合微粒子の分散体(e22)(実測された不揮発分45%)を得た。不揮発分から求めた重合率は99%であった。得られた有機無機複合微粒子の分散体(e22)のガードナー粘度を、表8に示す。また、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表8に示す。
【0120】
[比較例4]
重合性不飽和基を有する無機微粒子(b1)の分散体を、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b3)の分散体に変更し、スチレン12.5部、アクリル酸ブチル12.5部、3−エトキシプロピオン酸エチル5部、及び過酸化ベンゾイル0.5部を仕込んだ以外は、比較例1と同様にして、有機無機複合微粒子の分散体(e23)(実測された不揮発分45%)を得た。不揮発分から求めた重合率は99%であった。有機無機複合微粒子の分散体(e23)のガードナー粘度を、表8に示す。また、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表8に示す。
【0121】
[比較例5]
製造例32で製造されたアクリルポリマー(d1)の溶液2060部と、硬化剤(f)としての、スミジュールN−3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型ポリイソシアネート、固形分100%、NCO含有率22%)613部とをディスパーで攪拌した。得られた混合物から、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表8に示す。
【0122】
[試験方法]
塗膜の透明性:塗膜の透明性を、下記基準により評価した。
◎:濁り無く透明である、
○:わずかに白く濁りが認められるが、透明性がある(向こう側を透かして見ることができる)、
△:白く濁りが認められるが、透明性がある(向こう側を透かして見ることができる)、
×:白濁著しく、透明性がない(向こう側を透かして見ることができない)。
【0123】
耐擦り傷性:染色物摩擦堅牢度試験機(大栄化学精器製作所製)を用いて評価した。磨き粉(ダルマ・クレンザー)を水で固練りして試験塗板の塗面に置き、その上を、500gの加重を有する試験機端子で押さえて、25往復させ、水洗した後、塗面を目視観察し、擦り傷の程度を下記基準にて評価した。
◎:擦り傷が全く又はほとんど観察されない(合格)、
○:少し擦り傷がみられるが、その程度は軽い(合格)、
△:擦り傷が目立つ(不合格)、
×:はっきりと著しい擦り傷が判る(不合格)。
【0124】
【表8】

【0125】
【表9】

【0126】
[実施例20]
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、製造例9で得られたリビングポリマー(a9)の溶液136部、製造例24で製造された重合性不飽和基を有する無機微粒子(b1)の分散体244部、及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)2.0部を仕込んだ。その後、窒素をフラスコ中に通気させながら120℃に加熱し、同温度で10時間攪拌した。その後、3−エトキシプロピオン酸エチルを加え、減圧状態で共沸留出することで溶剤を置換し、有機無機複合微粒子の分散体(e24)(実測された不揮発分45%)を得た。有機無機複合微粒子の分散体(e24)のガードナー粘度はA3であった。
【0127】
次いで、有機無機複合微粒子の分散体(e24)に、製造例32で製造されたアクリルポリマー(d1)の溶液2060部と、硬化剤(f)としての、スミジュールN−3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型ポリイソシアネート、固形分100%、NCO含有率22%)613部とを加え、ディスパーで攪拌して混合した。得られた混合物から、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表9に示す。
【0128】
[実施例21〜40]
各成分及び配合量を表9に記載される各成分及び配合量に代えた以外は、実施例20と同様にして、有機無機複合微粒子の分散体(e25)〜(e44)を得た。それらのガードナー粘度を表9に示す。また、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表9に示す。
【0129】
[実施例41]
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、製造例11で得たリビングポリマー(a11)の溶液69部、製造例24で製造された重合性不飽和基を有する無機微粒子(b1)の分散体244部、メタクリル酸メチル25部、メタクリル酸ブチル25部、及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)2.0部を仕込んだ。その後、窒素をフラスコ中に通気させながら120℃に加熱し、同温度で14時間攪拌した。不揮発分から求めた重合率は99%であった。その後、3−エトキシプロピオン酸エチルを加え、減圧状態で共沸留出することで溶剤を置換し、有機無機複合微粒子の分散体(e45)(実測された不揮発分45%)を得た。有機無機複合微粒子の分散体(e45)のガードナー粘度はA2であった。
【0130】
次いで、有機無機複合微粒子の分散体(e45)に、製造例32で製造されたアクリルポリマー(d1)の溶液2060部と、硬化剤(f)としての、スミジュールN−3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型ポリイソシアネート、固形分100%、NCO含有率22%)613部とを加え、ディスパーで攪拌して混合した。得られた混合物から、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表9に示す。
【0131】
[実施例42]
各成分及び配合量を表9に記載した各成分及び配合量に代えた以外は、実施例41と同様にして、有機無機複合微粒子の分散体(e46)を得た。不揮発分から求めた重合率は99%であった。そのガードナー粘度を表9に示す。また、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表9に示す。
【0132】
(実施例43)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、製造例22で得たリビングポリマー(a22)の溶液154部、及び製造例24で製造された重合性不飽和基を有する無機微粒子(b1)の分散体244部を仕込んだ。その後、窒素をフラスコ中に通気させながら70℃に加熱し、その後、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで、重合速度(付加反応速度)を制御しながら、同温度で10時間攪拌した。その後、3−エトキシプロピオン酸エチルを加え、減圧状態で共沸留出することで溶剤を置換し、有機無機複合微粒子の分散体(e47)(実測された不揮発分45%)を得た。有機無機複合微粒子の分散体(e47)のガードナー粘度はA3であった。
【0133】
次いで、有機無機複合微粒子の分散体(e47)に、製造例32で製造されたアクリルポリマー(d1)の溶液2060部と、硬化剤(f)としての、スミジュールN−3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型ポリイソシアネート、固形分100%、NCO含有率22%)613部とを加え、ディスパーで攪拌して混合した。得られた混合物から、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表9に示す。
【0134】
[実施例44]
リビングポリマー(a22)の溶液を、リビングポリマー(a23)の溶液に変更し、さらに反応温度を40℃とした以外は、実施例43と同様にして、有機無機複合微粒子の分散体(e48)を得た。有機無機複合微粒子の分散体(e48)のガードナー粘度を、表9に示す。また、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表9に示す。
【0135】
[比較例6]
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、製造例24で製造された無機微粒子(b1)の分散体244部、メタクリル酸メチル50部、メタクリル酸ブチル50部、3−エトキシプロピオン酸エチル20部、及び過酸化ベンゾイル2.0部を仕込んだ。その後、窒素をフラスコ中に通気させながら120℃に加熱し、同温度で10時間攪拌した。不揮発分から求めた重合率は99%であった。その後、3−エトキシプロピオン酸エチルを加え、減圧状態で共沸留出することで溶剤を置換し、有機無機複合微粒子の分散体(e49)(実測された不揮発分45%)を得た。有機無機複合微粒子の分散体(e49)のガードナー粘度を表9に示す。また、実施例1と同様に塗膜枝を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表9に示す。
【0136】
[比較例7]
過酸化ベンゾイル配合量を1.0部に減らした以外は、比較例6と同様にして、有機無機複合微粒子の分散体(e50)(実測された不揮発分45%)を得た。不揮発分から求めた重合率は99%であった。しかしながら、有機無機複合微粒子の分散体(e50)は、ゲル状のため、粘度を測定することができなかった。また、有機無機複合微粒子の分散体(e50)は、アクリルポリマー(d1)及び硬化剤(f)と混合しなかったので、塗膜の透明性及び耐擦り傷性を評価することができなかった。
【0137】
[比較例8]
重合性不飽和基を有する無機微粒子(b1)の分散体を、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b3)の分散体に変更した以外は、比較例6と同様にして、有機無機複合微粒子の分散体(e51)(実測された不揮発分45%)を得た。不揮発分から求めた重合率は99%であった。有機無機複合微粒子の分散体(e51)のガードナー粘度を表9に示す。また、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表9に示す。
【0138】
[比較例9]
重合性不飽和基を有する無機微粒子(b1)の分散体を、重合性不飽和基を有する無機微粒子(b3)の分散体に変更し、メタクリル酸メチル12.5部、メタクリル酸ブチル12.5部、3−エトキシプロピオン酸エチル5部、及び過酸化ベンゾイル0.5部を仕込んだ以外は、比較例6と同様にして、有機無機複合微粒子の分散体(e52)(実測された不揮発分45%)を得た。不揮発分から求めた重合率は99%であった。有機無機複合微粒子の分散体(e52)のガードナー粘度を表9に示す。また、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表9に示す。
【0139】
[比較例10]
製造例32で製造されたアクリルポリマー(d1)の溶液2060部と、硬化剤(f)としての、スミジュールN−3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型ポリイソシアネート、固形分100%、NCO含有率22%)613部とをディスパーで攪拌した。得られた混合物から、実施例1と同様に塗膜を形成し、その透明性及び耐擦り傷性を目視評価した。結果を表9に示す。
【0140】
【表10】

【0141】
【表11】

【0142】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)とを、溶媒の存在下で反応させることにより製造された、又はリビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と不飽和モノマー(c)とを、溶媒の存在下で反応させることにより製造された、有機無機複合微粒子の分散体。
【請求項2】
重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)が、重合性不飽和基を有するコロイダルシリカである、請求項1に記載の有機無機複合微粒子の分散体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機無機複合微粒子の分散体から前記溶媒を除去することにより製造された、有機無機複合微粒子。
【請求項4】
リビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)とを、溶媒の存在下で反応させる工程、又はリビングポリマー(a)と重合性不飽和基を有する無機微粒子(b)と不飽和モノマー(c)とを、溶媒の存在下で反応させる工程を含むことを特徴とする有機無機複合微粒子の分散体の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の有機無機複合微粒子の分散体、又は請求項3に記載の有機無機複合微粒子を含む、焼付け硬化型、常温硬化型又はラッカー型塗料組成物。

【公開番号】特開2012−17446(P2012−17446A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230461(P2010−230461)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】