説明

有機無機複合材料および光学物品

【課題】透明性と屈折率が高くて、耐熱性と成形性が優れている有機無機複合材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される単位構造を少なくとも一つ有している熱可塑性樹脂中に数平均粒子径が1〜15nmの無機微粒子を分散させる。


〔環αは単環式または多環式の環を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表し、mは0〜4の整数を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性と屈折率が高くて、耐熱性と成形性にも優れている有機無機複合材料、ならびに、これを含んで構成されるレンズ基材(例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、ピックアップ用レンズ、車載カメラ用レンズ、携帯カメラ用レンズ、デジタルカメラ用レンズ、OHP用レンズ等)等の光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学材料の研究が盛んに行われており、特にレンズ材料の分野においては高屈折性、低分散性(すなわち高いアッベ数)、耐熱性、透明性、易成形性、軽量性、耐湿性、耐薬品性・耐溶剤性等に優れた材料の開発が強く望まれている。
【0003】
プラスチックレンズは、ガラスなどの無機材料に比べ軽量で割れにくく、様々な形状に加工できるため、眼鏡レンズのみならず近年では携帯カメラ用レンズやピックアップレンズ等の光学材料にも急速に普及しつつある。
【0004】
それに伴い、レンズを薄肉化するために素材自体を高屈折率化することが求められるようになっており、例えば、硫黄原子をポリマー中に導入する技術(特許文献1、特許文献2参照)や、ハロゲン原子や芳香環をポリマー中に導入する技術(特許文献3参照)や、インデン誘導体とビニル単量体との共重合体を用いる技術(特許文献4参照)等が活発に研究されてきた。しかし、十分に屈折率が大きくて良好な透明性を有しており、ガラスの代替となるようなプラスチック材料は未だ開発されるに至っていない。
【0005】
屈折率を有機物のみで上げることは難しいため、高屈折率を有する無機物を樹脂マトリックス中に分散させることによって高屈折率材料をつくる試みがなされている(特許文献5、6参照)。また、レイリー散乱による透過光の減衰を低減するためには、粒子径が15nm以下の無機微粒子を樹脂マトリクス中に均一に分散させることが好ましい。しかし、粒子径が15nm以下の一次粒子は非常に凝集しやすいために、樹脂マトリクス中に、均一に分散させることは極めて難しい。またレンズの厚みに相当する光路長における透過光の減衰を考慮すると、無機微粒子の添加量を制限せざるを得ない。このため、樹脂の透明性を低下させずに微粒子を高濃度で樹脂マトリクス中に分散することはこれまでできなかった。
【特許文献1】特開2002−131502号公報
【特許文献2】特開平10−298287号公報
【特許文献3】特開2004−244444号公報
【特許文献4】特開2001−89537号公報
【特許文献5】特開昭61−291650号公報
【特許文献6】特開2003−73564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よってこのように、透明性と屈折率が高くて、耐熱性と成形性にも優れている有機無機複合材料、およびそれを含んで構成されるレンズ等の光学部品は未だ見出されておらず、その開発が望まれていた。
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、無機微粒子が樹脂マトリックス中に均一に分散していて、透明性と屈折率が高くて、耐熱性と成形性が優れている有機無機複合材料、ならびに、これを用いたレンズ基材等の光学部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造単位を有する樹脂中に数平均粒子径が1〜15nmの無機微粒子を分散させた有機無機複合材料が、無機微粒子の均一分散効果により、高屈折性と優れた透明性を有し、さらに耐熱性と成形性も兼ね備えることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、課題を解決する手段として、以下の本発明を提供するに至った。
【0008】
[1] 下記一般式(1)で表される単位構造を少なくとも一つ有している熱可塑性樹脂中に数平均粒子径が1〜15nmの無機微粒子を含有していることを特徴とする有機無機複合材料。
【化1】

〔一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、Rは環αを構成する原子と結合して環状構造を形成してもよいし、2つ以上のRが一緒になって環状構造を形成してもよい。mは0〜4の整数を表す。〕
[2] 前記熱可塑性樹脂の波長589nmにおける屈折率が1.57以上であることを特徴とする[1]に記載の有機無機複合材料。
[3] 前記熱可塑性樹脂の数平均分子量が10000〜200000であることを特徴とする[1]または[2]に記載の有機無機複合材料。
[4] 上記一般式(1)で表される単位構造を前記熱可塑性樹脂中に3〜70質量%含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【0009】
[5] 前記熱可塑性樹脂が下記から選ばれる1以上の官能基を有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の有機無機複合材料。
【化2】

[R11、R12、R13、R14、R15、R16は、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表す。]、−SO3H、−OSO3H、−CO2H、−OH、−Si(OR17n18n[R17、R18はそれぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表し、nは1〜3の整数を表す。]
[6] 前記熱可塑性樹脂が前記官能基をポリマー鎖1本あたり平均0.1〜20個有していることを特徴とする[5]に記載の有機無機複合材料。
【0010】
[7] 前記無機微粒子の波長589nmにおける屈折率が1.90〜3.00の範囲にあることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[8] 前記無機微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫および酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[9] 有機無機複合材料の波長589nmにおける屈折率が1.63以上であり、かつ、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が70%以上であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【0011】
[10] [1]〜[9]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を含んで構成される光学部品。
[11] 光学部品がレンズ基材であることを特徴とする[10]に記載の光学部品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明性と屈折率が高く、耐熱性と成形性も併せ持つ有機無機複合材料、およびそれを含んで構成される、透明性と屈折率が高くて耐熱性に優れた光学部品が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明の有機無機複合材料とその製造方法、およびそれを含んで構成される光学部品について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[有機無機複合材料]
本発明の有機無機複合材料の光線透過率は、波長589nmにおいて厚さ1mm換算で70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。また波長405nmにおける光線透過率は60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が70%以上であればより好ましい性質を有する光学物品(特にレンズ基材)を得やすい。なお、本発明における厚さ1mm換算の光線透過率は、有機無機複合材料を成形して厚さ1.0mmの基板を作製し、紫外可視吸収スペクトル測定用装置(UV−3100、(株)島津製作所製)で測定した値である。
【0015】
また本発明の有機無機複合材料は、22℃、波長589nmにおける屈折率が1.63以上であることが好ましく、1.65以上であることがより好ましく、1.66以上であることがさらにより好ましく、1.67以上であることが特に好ましい。
【0016】
本発明の有機無機複合材料は、成形体への埃の付着などを防ぐ目的から帯電しにくいことが望ましい。帯電圧は−2〜15kVであることが好ましく、−1.5〜7.5kVであることがより好ましく、−1.0〜7.0kVであることが特に好ましい。
【0017】
本発明の有機無機複合材料は、ガラス転移温度が100℃〜400℃であることが好ましく、110℃〜380℃であることがより好ましく、120℃〜380℃であることがより好ましく、130℃〜380℃であることがさらにより好ましい。ガラス転移温度が100℃以上であれば十分な耐熱性が得られやすく、ガラス転移温度が400℃以下であれば成形加工を行いやすくなる傾向がある。
【0018】
本発明の有機無機複合材料は、200℃で2時間保持した際の揮発成分が2質量%以下であることが好ましく、230℃で2時間保持した際の揮発成分が2質量%以下であることがより好ましく、250℃で2時間保持した際の揮発成分が2質量%以下であることが特に好ましい。
【0019】
本発明の有機無機複合材料の飽和吸水率は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0020】
[熱可塑性樹脂]
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、一般式(1)で表される単位構造を少なくとも一つ有している。また、本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、側鎖にカルボキシル基を有するランダム共重合体であることが好ましい。ポリマーの種類としては、ビニルモノマーの重合によって得られるビニルポリマー、ポリエーテル、開環メタセシス重合ポリマーおよび縮合ポリマー(ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンなど)など従来公知のポリマーのいずれからでも選択可能であるが、ビニルポリマー、開環メタセシス重合ポリマー、ポリカーボネート、ポリエステルが好ましく、製造適性の点からビニルポリマーがより好ましい。
【0021】
<一般式(1)で表される単位構造>
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、下記一般式(1)で表される単位構造を少なくとも一つ有している。
【化3】

【0022】
一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、Rは環αを構成する原子と結合して環状構造を形成してもよいし、2つ以上のRが一緒になって環状構造を形成してもよい。mは0〜4の整数を表す。
【0023】
環αが単環式の環であるときは、4〜10員環であることが好ましく、5〜9員環であることがより好ましく、5〜7員環であることがさらに好ましく、5または6員環であることがさらにより好ましい。環αが多環式の環であるときは、環を構成する原子数は、10〜30であることが好ましく、10〜25であることがより好ましく、10〜20であることがさらに好ましく、10〜15であることがさらにより好ましい。これらの環αは置換基を有していてもよい。
【0024】
Rがとりうるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子であることがより好ましい。
【0025】
Rがとりうるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。直鎖状または分枝状アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基などを挙げることができる。直鎖状または分枝状アルキル基の炭素数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜6であることがさらにより好ましく、1〜4であることが特に好ましい。環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基などを挙げることができる。環状アルキル基の炭素数は、3〜30であることが好ましく、3〜20であることがより好ましく、3〜10であることがさらに好ましく、3〜8であることがさらにより好ましく、4〜8であることが特に好ましい。
【0026】
ここに記載したアルキル基の説明と好ましい範囲は、Rがとりうるアルコキシ基のアルキル部分にも該当する。
【0027】
Rがとりうるアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基などを挙げることができる。アリール基の炭素数は、6〜30であることが好ましく、6〜22であることがより好ましく、6〜18であることがさらに好ましく、1〜14であることがさらにより好ましく、6〜10であることが特に好ましい。
【0028】
Rは環αを構成する原子と結合して環状構造を形成してもよい。また、2つ以上のRが一緒になって環状構造を形成してもよい。このようにして形成される環は融合環であり、具体例としてシクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などを挙げることができる。好ましくは、シクロペンタン環、シクロヘキサン環である。
【0029】
一般式(1)において、mは0〜4の整数を表す。mは0〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。mが2以上であるとき、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
環αや、Rがとりうるアルキル基、アルコキシ基、アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の種類は特に制限されないが、代表例として、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、脂肪族基〔飽和脂肪基(アルキル基または、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、架橋環式飽和炭化水素基もしくはスピロ飽和炭化水素基を含む環状飽和脂肪族基を意味する)、不飽和脂肪族基(二重結合または三重結合を有す、アルケニル基またはアルケニル基のような鎖状不飽和脂肪族基または、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、架橋環式不飽和炭化水素基もしくはスピロ不飽和炭化水素基を含む環状不飽和脂肪族基を意味する)を含む〕、アリール基(好ましくは置換基を有してもよいフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは、環構成原子が酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含む5〜8員環で、脂環、芳香環やヘテロ環で縮環していてもよい)、シアノ基、脂肪族オキシ基(代表例としてアルコキシ基)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基(代表例としてアルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基〔脂肪族アミノ基(代表例としてアルキルアミノ基)、アニリノ基およびヘテロ環アミノ基を含む〕、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基(代表例としてアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族(代表例としてアルキル)もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基(代表例としてアルキルチオ基)、アリールチオ基、スルファモイル基、脂肪族(代表例としてアルキル)もしくはアリールスルフィニル基、脂肪族(代表例としてアルキル)もしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基(代表例としてアルコキシカルボニル基)、カルバモイル基、アリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基、脂肪族オキシスルホニル基(代表例としてアルコキシスルホニル基)、アリールオキシスルホニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基を挙げることができ、それぞれの基はさらに置換基(例えばここに例示する置換基)を有していてもよい。
【0031】
これらの置換基の中で好ましいのは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子、臭素原子がより好ましい)、アルキル基(炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6がより好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい)、アルコキシ基(炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6がより好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基が好ましく、フェノキシ基がより好ましい)、アリール基(フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基が好ましく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基がより好ましい)である。
【0032】
以下に、重合することによって一般式(1)で表される単位構造を形成することができるモノマーの具体例を以下にA−1〜A−32として挙げるが、本発明で採用することができるモノマーはこれらの具体例に限定されるものではない。
【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
本発明で用いる熱可塑性樹脂を共重合により合成する際には、一般式(1)で表される単位構造を形成することができるモノマーを、モノマー組成物中に3〜70質量%使用することが好ましく、10〜50質量%使用することがより好ましく、15〜40質量%使用することがさらに好ましい。
【0036】
<共重合可能なモノマー>
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、重合することによって一般式(1)で表される単位構造を形成することができるモノマーとともに、他のモノマーを共重合させることにより製造することができる。そのような他のモノマーとして、Polymer Handbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience (1975) Chapter 2 Page 1〜483に記載のものなどを用いることができる。
【0037】
具体的には、例えば、スチレン誘導体、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、イタコン酸ジアルキル類、前記フマール酸のジアルキルエステル類またはモノアルキルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0038】
前記スチレン誘導体としては、スチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、2−フェニルスチレン、4−クロロスチレン等が挙げられる。
【0039】
前記アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert−ブチル、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
【0040】
前記メタクリル酸エステル類としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等が挙げられる。
【0041】
前記アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜6のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0042】
前記メタクリルアミド類としては、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜6のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0043】
前記アリル化合物としては、アリルエステル類(例えば酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノール等が挙げられる。
【0044】
前記ビニルエーテル類としては、アルキルビニルエーテル(アルキル基としては炭素数1〜10のもの、例えば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等が挙げられる。
【0045】
前記ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。
【0046】
前記イタコン酸ジアルキル類としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられ、前記フマール酸のジアルキルエステル類またはモノアルキルエステル類としては、ジブチルフマレート等が挙げられる。
【0047】
その他、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリルなど等も挙げることができる。
【0048】
重合することによって一般式(1)で表される単位構造を形成することができるモノマーとともに共重合することができるモノマーとしては、例えば以下のものが挙げられるが、本発明で採用することができるモノマーはこれらの具体例に限定されるものではない。なお、以下においてnは1以上の整数を表す。
【0049】
【化6】

【0050】
【化7】

【0051】
本発明で用いる熱可塑性樹脂を共重合により合成する際には、上記の共重合することができるモノマーを、モノマー組成物中に30〜97質量%使用することが好ましく、50〜90質量%使用することがより好ましく、60〜85質量%使用することがさらに好ましい。
【0052】
<官能基>
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、下記から選ばれる1以上の官能基を有することが好ましい。官能基は、ポリマー末端の少なくとも1箇所に有していてもよいし、側鎖に有していてもよい。
【化8】

[R11、R12、R13、R14、R15、R16は、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表す。]、−SO3H、−OSO3H、−CO2H、−OH、−Si(OR17n18n[R17、R18はそれぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表し、nは1〜3の整数を表す。]
【0053】
11、R12、R13、R14、R15、R16の好ましい範囲は、次の範囲である。
アルキル基は、炭素数1〜30が好ましく、より好ましくは炭素数1〜20であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基を挙げることができる。置換アルキル基には、例えばアラルキル基が含まれる。アラルキル基は、炭素数7〜30が好ましく、より好ましくは炭素数7〜20であり、例えばベンジル基、p−メトキシベンジル基を挙げることができる。アルケニル基は、炭素数2〜30が好ましく、より好ましくは炭素数2〜20であり、例えばビニル基、2−フェニルエテニル基を挙げることができる。アルキニル基は、炭素数2〜20が好ましく、より好ましくは炭素数2〜10であり、例えばエチニル基、2−フェニルエチニル基を挙げることができる。アリール基は、炭素数6〜30が好ましく、より好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、1−ナフチル基を挙げることができる。ここでいうアリール基の中には、ヘテロアリール基も含まれる。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基の置換基としては、これらのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基の他に、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基)を挙げることができる。R11、R12、R13、R14として特に好ましいのは水素原子またはアルキル基であり、さらに好ましいのは水素原子である。
17、R18の好ましい範囲は、R11、R12、R13、R14、R15、R16と同様である。nは、好ましくは3である。
【0054】
これらの官能基の中でも、好ましくは、
【化9】

、−SO3H、−CO2H、または−Si(OR15m1163-m1であり、より好ましくは、
【化10】

または−CO2Hである。
【0055】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂において、上記官能基はポリマー鎖1本あたり平均0.1〜20個であることが好ましく、0.5〜10個であることがより好ましく、1〜5個であることが特に好ましい。前記官能基の含有量がポリマー鎖一本あたり平均20個以下であれば、熱可塑性樹脂が複数の無機微粒子に配位して溶液状態で高粘度化やゲル化が起こるのを防ぎやすい傾向がある。また、ポリマー鎖一本あたり平均官能基の数が0.1個以上であれば、無機微粒子を安定に分散させやすい傾向がある。
【0056】
<熱可塑性樹脂の具体例>
以下の表に、本発明で使用することができる熱可塑性樹脂の好ましい具体例を挙げる。表に記載される種類のモノマーを表に記載される質量割合で混合して共重合することにより、熱可塑性樹脂を製造することができる。ただし、本発明で用いることができる熱可塑性樹脂はこれらに限定されるものではない。
【0057】
【表1】

【0058】
これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
<熱可塑性樹脂の性質>
本発明で用いられる熱可塑性樹脂の数平均分子量は10,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜150,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることがさらに好ましく、20,000〜100,000であることがさらにより好ましく、40,000〜100,000であることがさらに一段と好ましく、70,000〜100,000であることが特に好ましい。前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量を200,000以下とすることにより、成形加工性が向上する傾向にあり、10,000以上とすることにより力学強度が向上する傾向にある。特に、分子量を大きくすることにより、有機無機複合材料を成形後に金型からはずすときに成形物の破損を効果的に防ぐことができる。
【0060】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂のガラス転移温度は80℃〜400℃であることが好ましく、130℃〜380℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が80℃以上の樹脂を用いれば十分な耐熱性を有する光学物品が得られやすくなり、また、ガラス転移温度が400℃以下の樹脂を用いれば成形加工が行いやすくなる傾向がある。
【0061】
熱可塑性樹脂の屈折率と無機微粒子の屈折率差が大きい場合には、レイリー散乱が起こりやすくなるため透明性を維持して複合できる微粒子の量が少なくなる。熱可塑性樹脂の屈折率が1.48程度であれば屈折率1.60レベルの透明性成形体を提供することができるが、1.65以上の屈折率を実現するためには本発明に用いられる熱可塑性樹脂の屈折率は1.55以上であることが好ましく、1.57以上であることがより好ましく、1.58以上であることがさらにより好ましい。なお、これらの屈折率は22℃、波長589nmにおける値である。
【0062】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、波長589nmにおける厚み1mm換算の光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
【0063】
[無機微粒子]
本発明の有機無機複合材料に用いられる無機微粒子としては特に制限はなく、例えば特開2002−241612号公報、特開2005−298717号、特開2006−70069号各公報等に記載の微粒子を用いることができる。
【0064】
具体的には、酸化物微粒子(酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化テルル、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化錫等)、複酸化物微粒子(ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウムなど)、硫化物微粒子(硫化亜鉛、硫化カドミウム等)、その他半導体結晶微粒子(セレン化亜鉛、セレン化カドミウム、テルル化亜鉛、テルル化カドミウム等)、あるいはLiAlSiO4、PbTiO3、Sc2312、ZrW28、AlPO4、Nb25,LiNO3などを用いることができる。なかでも、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫および酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることが好ましい。
【0065】
無機微粒子は2種類以上を併用してもよい。
【0066】
本発明で用いられる無機微粒子は、屈折率、透明性、安定性などの観点から、複数の成分による複合物であってもよい。また無機微粒子には、光触媒活性低減、吸水率低減など種々の目的から、異種元素をドープしたり、表面層をシリカ、アルミナ等異種金属酸化物で被覆したり、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、有機酸(カルボン酸類、スルホン酸類、リン酸類、ホスホン酸類等)などで表面修飾しても良い。さらに目的に応じて、これらの2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
本発明で用いられる無機微粒子の屈折率に特に制限はないが、本発明の有機無機複合材料が高屈折率を必要とする光学物品に用いられる場合には、無機微粒子は高屈折率特性を持つことが好ましい。この場合、用いられる無機微粒子の屈折率は22℃、589nmの波長において1.9〜3.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜2.7であり、特に好ましくは2.1〜2.5である。微粒子の屈折率が3.0以下であれば樹脂との屈折率差が比較的小さいためレイリー散乱を抑制しやすくなる傾向がある。また、屈折率が1.9以上であれば高屈折率化の効果が得られやすくなる傾向がある。
【0068】
無機微粒子の屈折率は、例えば本発明で用いる熱可塑性樹脂と複合化した複合物を透明フィルムに成形して、アッベ屈折計(例えば、アタゴ社製「DM−M4」)で屈折率を測定し、別途測定した樹脂成分のみの屈折率から算出する方法、あるいは濃度の異なる微粒子分散液の屈折率を測定することにより微粒子の屈折率を算出する方法などによって見積もることができる。
【0069】
本発明で用いられる無機微粒子の数平均粒子径は、小さすぎると該微粒子を構成する物質固有の特性が変化する場合があり、逆に該数平均粒子径が大きすぎるとレイリー散乱の影響が顕著となり、有機無機複合材料の透明性が極端に低下する場合がある。従って、本発明で用いられる無機微粒子の数平均粒子径の下限値は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上であり、上限値は好ましくは15nm以下、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは7nm以下である。すなわち、本発明における無機微粒子の数平均粒子径としては、1nm〜15nmが好ましく、2nm〜10nmがさらに好ましく、3nm〜7nmが特に好ましい。
また本発明に用いられる無機微粒子は上記の平均粒子径を満たし、かつ粒子径分布が狭いほど望ましい。このような単分散粒子の定義の仕方はさまざまであるが、例えば特開2006−160992号公報に記載されるような数値規定範囲が、本発明で用いられる微粒子の好ましい粒径分布範囲にも当てはまる。
ここで、上述の数平均粒子径とは例えば、X線回折(XRD)装置あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)などで測定することができる。
【0070】
本発明に用いられる無機微粒子の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。
例えば、ハロゲン化金属やアルコキシ金属を原料に用い、水を含有する反応系において加水分解することにより、所望の酸化物微粒子を得ることができる。この方法の詳細は、例えば、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス第37巻4603〜4608頁(1998年)、あるいは、ラングミュア第16巻第1号241〜246頁(2000年)等に記載されている。
【0071】
また、水中で加水分解させる方法以外の方法として、有機溶媒中や本発明における熱可塑性樹脂が溶解した有機溶媒中で無機微粒子を作製する方法を採用してもよい。この際、必要に応じて各種表面処理剤(シランカップリング剤類、アルミネートカップリング剤類、チタネートカップリング剤類、有機酸類(カルボン酸類、スルホン類、ホスホン酸類など))を共存させてもよい。
これらの方法に用いられる溶媒としては、アセトン、2−ブタノン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、アニソール等が例として挙げられる。これらは、1種類を単独で使用してもよく、また複数種を混合して使用してもよい。
【0072】
無機微粒子の合成法としては、上記以外に、分子ビームエピタキシー法やCVD法のような真空プロセスで作製する方法など、例えば特開2006−70069号公報等に記載される各種一般的な微粒子合成法を挙げることができる。
【0073】
本発明の有機無機複合材料における無機微粒子の含有量は、透明性と高屈折率化の観点から、20〜95質量%が好ましく、25〜70質量%がさらに好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
【0074】
[添加剤]
本発明においては上記熱可塑性樹脂および無機微粒子以外に均一分散性、成形時の流動性、離型性、耐候性等観点から適宜各種添加剤を配合しても良い。例えば、表面処理剤、可塑化剤、帯電防止剤、分散剤、離型剤等を挙げることができる。また前記熱可塑性樹脂以外に前記官能基を有さない樹脂を添加しても良く、このような樹脂の種類に特に制限はないが、前記熱可塑性樹脂と同様の光学物性、熱物性、分子量を有するものが好ましい。
これら添加剤の配合割合は目的に応じて異なるが、前記無機微粒子および熱可塑性樹脂を足しあわせた量に対して、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがよりこのましく、0〜20質量%であることが特に好ましい。
【0075】
<表面処理剤>
本発明では、後述するように水中またはアルコール溶媒中に分散された無機微粒子を熱可塑性樹脂と混合する際に、有機溶媒への抽出性または置換性を高める目的、熱可塑性樹脂への均一分散性を高める目的、微粒子の吸水性を下げる目的、あるいは耐候性を高める目的など種々目的に応じて、上記熱可塑性樹脂以外の微粒子表面修飾剤を添加しても良い。該表面処理剤の重量平均分子量は50〜50000であることが好ましく、より好ましくは100〜20000、さらに好ましくは100〜10000である。
【0076】
前記表面処理剤としては、下記一般式(2)で表される構造を有するものが好ましい。
一般式(2)
A−B
【0077】
一般式(2)中、Aは本発明における無機微粒子の表面と任意の化学結合を形成しうる官能基を表し、Bは本発明における樹脂を主成分とする樹脂マトリックスに対する相溶性または反応性を有する炭素数1〜30の1価の基またはポリマーを表す。ここで、「化学結合」とは、例えば、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合等が挙げられる。
【0078】
Aで表わされる基の好ましい例は、本発明の熱可塑性樹脂中に導入される微粒子結合性の官能基として前記したものと同じである。
一方、前記Bの化学構造は、相溶性の観点から該樹脂マトリックスの主体である熱可塑性樹脂の化学構造と同一または類似であることが好ましい。本発明では特に高屈折率化の観点から前記熱可塑性樹脂とともにBの化学構造が芳香環を有していることが好ましい。
【0079】
本発明で好ましく用いられる、表面処理剤の例としては例えば、p−オクチル安息香酸、p−プロピル安息香酸、酢酸、プロピオン酸、シクロペンタンカルボン酸、燐酸ジベンジル、燐酸モノベンジル、燐酸ジフェニル、燐酸ジ-α-ナフチル、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸モノフェニルエステル、KAYAMER PM−21(商品名;日本化薬社製)、KAYAMER PM−2(商品名;日本化薬社製)、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、パラオクチルベンゼンスルホン酸、あるいは特開平5−221640号、特開平9−100111号、特開2002−187921号各公報記載のシランカップリング剤などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらの表面処理剤は1種類を単独で用いてもよく、また複数種を併用しても良い。
これら表面処理剤の添加量の総量は無機微粒子に対して、質量換算で、0.01〜2倍であることが好ましく、0.03〜1倍であることがより好ましく、0.05〜0.5倍であることが特に好ましい。
【0080】
<可塑化剤>
本発明における熱可塑性樹脂のガラス転移温度が高い場合、有機無機複合材料の成形が必ずしも容易ではないことがある。このため、本発明の有機無機複合材料の成形温度を下げるために可塑剤を使用してもよい。可塑化剤を添加する場合の添加量は、有機無機複合材料の総量の1〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることが特に好ましい。
本発明で使用できる可塑剤は樹脂との相溶性、耐候性、可塑化効果などトータルで考える必要があり、最適な可塑剤は他の材料に依存するため一概には言えないが、屈折率の観点からは芳香環を有するものが好ましく、代表的な例として下記一般式(3)で表される構造を有するものを挙げることができる。
【0081】
【化11】

(式中、B1およびB2は炭素数6〜18のアルキル基またはアリールアルキル基を表し、mは0または1を表す。Xは、下記の2価の結合基のうちいずれかを表す。)
【化12】

【0082】
また、一般式(3)で表される化合物において、B1,B2は炭素数6〜18の範囲内において任意のアルキル基またはアリールアルキル基を選ぶことができる。炭素数が6未満では、分子量が低すぎてポリマーの溶融温度で沸騰し、気泡を生じたりする場合がある。また、炭素数が18を超えると、ポリマーとの相溶性が悪くなる場合があり添加効果が不十分となることがある。
【0083】
前記B1,B2としては、具体的に、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基や、2−ヘキシルデシル基、メチル分岐オクタデシル基等の分岐アルキル基、またはベンジル基、2−フェニルエチル基等のアリールアルキル基が挙げられる。また、前記一般式(3)で表される化合物の具体例としては、次に示すものが挙げられ、中でも、W−1(花王株式会社製の商品名「KP−L155」)が好ましい。
【0084】
【化13】

【0085】
<帯電防止剤>
本発明の有機無機複合材料の帯電圧を調節するために、帯電防止剤を添加することができる。本発明の有機無機複合材料では、光学特性改良の目的で添加した無機微粒子自体が別の効果である帯電防止効果にも寄与する場合がある。帯電防止剤を添加する場合には、アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯防止剤、ノ二オン性帯電防止剤、両性イオン性帯電防止剤、高分子帯電防止剤、あるいは帯電性微粒子などが挙げられ、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの例としては、特開2007−4131号公報、特開2003−201396号公報に記載された化合物を挙げることができる。
帯電防止剤の添加量はまちまちであるが、全固形分の0.001〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜30質量%であり、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0086】
<その他>
上記成分以外に、成形性を改良する目的で変性シリコーンオイル等の公知の離型剤を添加したり、耐光性や熱劣化を改良する目的で、ヒンダードフェノール系、アミン系、リン系、チオエーテル系等の公知の劣化防止剤を適宜添加しても良く、これらを配合する場合には有機無機複合材料の全固形分に対して0.1〜5質量%程度が好ましい。
【0087】
[有機無機複合材料の製造方法]
本発明の有機無機複合材料は、熱可塑性樹脂と無機微粒子等の成分を混合することにより製造することができる。
本発明に用いられる無機微粒子は粒子径が比較的小さく、表面エネルギーが高いため、固体で単離すると再分散させることが難しい。よって、無機微粒子は溶液中に分散された状態で上記熱可塑性樹脂と混合し安定分散物とすることが好ましい。複合材料の好ましい製造方法としては(1)無機粒子を上記表面処理剤の存在下にて表面処理し、表面処理された無機微粒子を有機溶媒中に抽出し、抽出した該無機微粒子を前記熱可塑性樹脂と均一混合して無機微粒子と熱可塑性樹脂の複合材料を製造する方法、(2)無機微粒子と熱可塑性樹脂の両者を均一に分散あるいは溶解できる溶媒を用いて両者を均一混合して無機微粒子と熱可塑性樹脂の複合材料を製造する方法、が挙げられる。
【0088】
上記(1)の手法によって無機微粒子と熱可塑性樹脂の複合材料を製造する場合には、有機溶媒としてトルエン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、メトキシベンゼン等の非水溶性の溶媒が用いられる。微粒子の有機溶剤への抽出に用いられる表面処理剤と前記熱可塑性樹脂は同種のものであっても異種のものであってもよいが、好ましく用いられる表面処理剤については、前述<表面処理剤>の箇所で述べたものが挙げられる。
有機溶媒中に抽出された無機微粒子と熱可塑性樹脂を混合する際に、可塑化剤、離型剤、あるいは別種のポリマー等の添加剤を必要に応じて添加しても良い。
【0089】
上記(2)の場合には、溶剤として、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシー2−プロパノール、t−ブタノール、酢酸、プロピオン酸等の親水的な極性溶媒の単独または混合溶媒、あるいはクロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、クロロベンゼン、メトキシベンゼン等の非水溶性溶媒と上記極性溶媒との混合溶媒が好ましく用いられる。この際、前述の熱可塑性樹脂とは別に分散剤、可塑化剤、離型剤、あるいは別種のポリマーを必要に応じて添加しても良い。水/メタノールに分散された微粒子を用いる際には、水/メタノールより高沸点で熱可塑性樹脂を溶解する親水的な溶媒を添加した後、水/メタノールを濃縮留去することによって、微粒子の分散液を極性有機溶媒に置換した後、樹脂と混合することが好ましい。この際前記表面処理剤を添加しても良い。
【0090】
上記(1)、(2)の方法によって得られた有機無機複合材料の溶液は、そのままキャスト成形して透明成形体を得ることもできるが、本発明では特に、該溶液を濃縮、凍結乾燥、あるいは適当な貧溶媒から再沈澱させる等の手法により溶剤を除去した後、粉体化した固形分を射出成形、圧縮成形等の公知の手法によって成形することが好ましい。またこの際、本発明の粉状の有機無機複合材料を直接加熱溶融あるいは圧縮などによりレンズ等の成形体に加工することもできるが、いったん押し出し法などの手法で、一定の重さ、形状を有するプリフォーム(前駆体)を作成した後、該プリフォームを圧縮成形で変形させてレンズ等の光学物品を作成することもできる。この場合目的の形状を効率的に作成するために、プリフォームに適当な曲率をもたせることもできる。
【0091】
上記有機無機複合材料をマスターバッチとして他の樹脂に混合して用いても良い。
【0092】
[光学物品]
上述の本発明の有機無機複合材料を成形することにより、本発明の光学物品を製造することができる。本発明の光学物品は、有機無機複合材料の説明で前記した屈折率や光学特性を示すものが有用である。
また本発明の光学物品としては、最大0.1mm以上の厚みを有する高屈折率の光学物品が特に有用である。好ましくは0.1〜5mmの厚みを有する光学物品への適用であり、特に好ましくは1〜3mmの厚みを有する透明物品への適用である。
これらの厚い成形体は溶液キャスト法での製造では、溶剤が抜けにくく通常容易ではないが、本発明の有機無機複合材料を用いることにより、成形が容易で非球面などの複雑な形状も容易に付与することができ、微粒子の高い屈折率特性を利用しながら良好な透明性を有する光学物品とすることができる。
【0093】
本発明の有機無機複合材料を利用した光学物品は、本発明の有機無機複合材料の優れた光学特性を利用した光学物品であれば特に限定はないが、例えば、レンズ基材や、特に光を透過する光学物品(いわゆるパッシブ光学物品)に使用することも可能である。かかる光学物品を備えた機能装置としては、各種ディスプレイ装置(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)、各種プロジェクタ装置(OHP、液晶プロジェクタ等)、光ファイバー通信装置(光導波路、光増幅器等)、カメラやビデオ等の撮影装置等が例示される。かかる光学機能装置における前記パッシブ光学物品としては、レンズ、プリズム、プリズムシート、パネル、フィルム、光導波路、光ディスク、LEDの封止剤等が例示される。
【0094】
本発明の有機無機複合材料を用いた光学物品は、特にレンズ基材に好適である。本発明の有機無機複合材料を用いて製造されたレンズ基材は、光線透過性、軽量性を併せ持ち、光学特性に優れている。また、有機無機複合材料を構成するモノマーの種類や分散させる無機微粒子の量を適宜調節することにより、レンズ基材の屈折率を任意に調節することが可能である。
本発明における「レンズ基材」とは、レンズ機能を発揮することができる単一部材を意味する。レンズ基材の表面や周囲には、レンズの使用環境や用途に応じて膜や部材を設けることができる。例えば、レンズ基材の表面には、保護膜、反射防止膜、ハードコート膜等を形成することができる。また、レンズ基材の周囲を基材保持枠などに嵌入して固定することもできる。ただし、これらの膜や枠などは、本発明でいうレンズ基材に付加される部材であり、本発明でいうレンズ基材そのものとは区別される。
【0095】
本発明におけるレンズ基材をレンズとして利用するに際しては、本発明のレンズ基材そのものを単独でレンズとして用いてもよいし、前記のように膜や枠などを付加してレンズとして用いてもよい。本発明のレンズ基材を用いたレンズの種類や形状は、特に制限されない。本発明のレンズ基材は、例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、ピックアップ用レンズ、撮像レンズ(車載カメラ用レンズ、携帯カメラ用レンズ、デジタルカメラ用レンズ等;ズームレンズや、正/負のパワーレンズなど各種公知の撮像レンズを含む)、OHP用レンズ、マイクロレンズアレイ等)に使用される。
【実施例】
【0096】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0097】
[分析および評価方法]
(1)透過型電子顕微鏡(TEM)観察
日立製作所(株)社製H−9000UHR型透過型電子顕微鏡(加速電圧200kV、観察時の真空度約7.6×10-9Pa)にて行った。
(2)光線透過率測定
測定する樹脂を成形して厚さ1.0mmの基板を作成し、紫外可視吸収スペクトル測定用装置UV−3100(島津製作所製)で波長589nmの光について測定した。
(3)屈折率測定
アッベ屈折計(アタゴ社製DR−M4)にて、波長589nmの光について行った。
(4)耐熱性(ガラス転移温度)
示差走査熱量計DSC7200(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)により測定した。
【0098】
[材料の調製]
(1)チタニア微粒子の合成
0.1モル/Lの硫酸チタニル水溶液を攪拌しながら、同容量の1.5モル/Lの炭酸ナトリウム水溶液を室温で10分かけて滴下した。こうして得た白色の超微粒子の懸濁液を、3500rpmで遠心分離し、上澄み液のデカンテーションによる除去および水洗の工程を繰り返すことにより精製した。こうして得た白色沈殿を0.3モル/Lの希塩酸中に攪拌分散しながら50℃で約1時間加熱して、透明感のある酸性ヒドロゾルを得た。この酸性ヒドロゾルを氷冷し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩の水溶液を加えたところ白色沈殿を生じたので、次いでトルエンで抽出し、乾燥後濃縮した。この濃縮残渣のXRDとTEMより、アナタース型チタニア微粒子(数平均粒子径は約5nm)の生成を確認した。
【0099】
(2)ジルコニア微粒子の合成
50g/Lの濃度のオキシ塩化ジルコニウム溶液を48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水和ジルコニウム懸濁液を得た。この懸濁液をろ過した後、イオン交換水で洗浄し、水和ジルコニウムケーキを得た。このケーキを、イオン交換水で溶媒としてジルコニア換算で濃度15質量%に調整して、オートクレーブに入れ、圧力150気圧、150℃で24時間水熱処理してジルコニア微粒子懸濁液を得た。TEMより数平均粒子径が5nmのジルコニア微粒子の生成を確認した。
【0100】
(3)ジルコニア微粒子トルエン分散液の調製
前記(2)で合成したジルコニア微粒子懸濁液と東京化成製のp−プロピル安息香酸を溶解させたトルエン溶液を混合し、50℃で8時間攪拌した後、トルエン溶液を抽出し、ジルコニア微粒子トルエン分散液を作製した。
他の分散剤を用いる場合にも、同様の方法により調製できる。
【0101】
(4)熱可塑性樹脂の合成
還流冷却器、ガス導入コックを付した300ml三口フラスコに、インデン(A−1)20.0g、スチレン(B−1)75.0g、メタクリル酸(C−2)5.0g、酢酸エチル42.8gを添加し、2回窒素置換した後、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)1.0gを添加し、さらに2回窒素置換した後、窒素気流下80℃で3時間加熱した。室温に戻した後、酢酸エチル50mlを添加後、10分間攪拌し、メタノール3Lに投入し、再沈殿した。沈殿を濾取した後、大量のメタノールで洗浄し、60℃で3時間真空乾燥することによりP−1を得た(収率48%、数平均分子量17,000、重量平均分子量29,000)。
他の例示したポリマーについても、同様の方法で調製できる。
【0102】
(5)有機無機複合材料の調製
(3)で合成したジルコニア微粒子のトルエン分散液(ジルコニア:p−プロピル安息香酸=10:1)を樹脂P−1および株式会社松村石油研究所製S−3103(商品名)を溶解させたトルエン溶液に5分かけて滴下し、これを1時間攪拌した後、溶媒を除去することにより、有機無機複合材料を粉体として得た。
他の有機無機複合材料についても、同様の方法で調製した。
【0103】
[加熱成形による光学部品の製造]
実施例1〜9と比較例1〜3の各レンズを下記の手順で製造した。使用した無機微粒子の種類と無機成分としての使用量は表2に示す通りとした。但し、p−プロピル安息香酸を8.3質量%およびS−3103を4.2質量%含み、残りを樹脂が占めるものである。比較例1では、樹脂としてポリメチルメタクリレート(アルドリッチ社製、製品番号44,574−6、分子量350000)を用い、比較例2では樹脂としてQ−1(構成モノマーはB−12を95質量%、C−2を5質量%であり、数平均分子量は27000)を用い、比較例3ではポリスチレン(アルドリッチ社製、製品番号18,242−7、分子量280000)を用いた。
製造した各有機無機複合材料を180℃で加熱成形し、厚さ1mmのレンズ用成形体を作成した。このとき金型からの離型性を評価した。成形体を切削し、断面をTEMで観察して、無機微粒子が熱可塑性樹脂中に均一に分散しているか否かを確認した。さらに光線透過率測定と屈折率測定を行った。これらの結果は以下の表2に記載した。その後、レンズ用成形体をレンズの形状に成形して、光学部品であるレンズを得た。
【0104】
【表2】

【0105】
表2から明らかなように、本発明により屈折率が1.63より大きくて、無機微粒子の分散性および透明性が良好であり、耐熱性および成形性のある光学部品が得られた(実施例1〜9)。一方、ポリメチルメタクリレートを用いた比較例1では、分散性が低いために無機微粒子を均一に分散することができず、微粒子が凝集しており、光線透過率が低いためにアッベ屈折率計での屈折率測定を行えず、耐熱性も低かった。また、比較用の熱可塑性樹脂Q−1を用いた比較例2では耐熱性が不十分であり、屈折率も低かった。さらに、樹脂としてポリスチレンを用いた比較例3では、分散性が低いために無機微粒子を均一に分散することができず、微粒子が凝集しており、光線透過率が低いためにアッベ屈折率計での屈折率測定を行えなかった。
【0106】
なお、実施例1〜9の有機無機複合材料は、いずれも耐電圧が−1.0〜7.0kVの範囲内であり、250℃で2時間保持した際の揮発成分が2質量%以下であり、飽和吸水率は2質量%以下であった。また、実施例1〜9の有機無機複合材料は、生産性よくかつ型の形状に合わせて正確に凹凸レンズ形状を形成することができるものであった。
【0107】
さらに、実施例1〜9の有機無機複合材料を用いた場合は、加熱成形後に金型から取り出す際に光学面にまったく割れや欠けが認められなかった。実施例6〜8を比較すると、分子量が低い実施例6では光学面ではない縁部の一部に実用上問題のない程度の割れ又は欠けが認められたが、その程度は実施例7ではごく一部に抑えられ、分子量が高い実施例8ではまったく割れも欠けも認められなかった。また、実施例4や実施例9の有機無機複合材料を用いた場合も割れや欠けは一切認められず、実施例1、3、5の有機無機複合材料を用いた場合は、実施例7と同程度であった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の光学部品は、高屈折性、光線透過性、軽量性および、耐熱性を併せ持つ有機無機複合材料を含むものである。本発明によれば、屈折率を任意に調節した光学部品を比較的容易に提供することができる。このため、本発明は、高屈折レンズ等の広範な光学部品の提供に有用であり、産業上の利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単位構造を少なくとも一つ有している熱可塑性樹脂中に数平均粒子径が1〜15nmの無機微粒子を含有していることを特徴とする有機無機複合材料。
【化1】

〔一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、Rは環αを構成する原子と結合して環状構造を形成してもよいし、2つ以上のRが一緒になって環状構造を形成してもよい。mは0〜4の整数を表す。〕
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂の波長589nmにおける屈折率が1.57以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機無機複合材料。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の数平均分子量が10000〜200000であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機無機複合材料。
【請求項4】
下記一般式(1)で表される単位構造を前記熱可塑性樹脂中に3〜70質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【化2】

〔一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、Rは環αを構成する原子と結合して環状構造を形成してもよいし、2つ以上のRが一緒になって環状構造を形成してもよい。mは0〜4の整数を表す。〕
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が下記から選ばれる1以上の官能基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機無機複合材料。
【化3】

[R11、R12、R13、R14、R15、R16は、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表す。]、−SO3H、−OSO3H、−CO2H、−OH、−Si(OR17n18n[R17、R18はそれぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表し、nは1〜3の整数を表す。]
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が前記官能基をポリマー鎖1本あたり平均0.1〜20個有していることを特徴とする請求項5に記載の有機無機複合材料。
【請求項7】
前記無機微粒子の波長589nmにおける屈折率が1.90〜3.00の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項8】
前記無機微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫および酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項9】
有機無機複合材料の波長589nmにおける屈折率が1.63以上であり、かつ、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を含んで構成される光学部品。
【請求項11】
光学部品がレンズ基材であることを特徴とする請求項10に記載の光学部品。

【公開番号】特開2009−179769(P2009−179769A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22312(P2008−22312)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】