説明

有機無機複合薄膜、その製造方法、及びそれを利用した光記録媒体

【課題】 大容量の光カードの光記録素子などに使用される有機無機複合薄膜、その製造方法、及びそれを利用した光記録媒体を提供する。
【解決手段】 基板上に規則的な二次元の格子状パターンを持つポリマーを有し、その格子の孔の部分に金属超微粒子を含有することを特徴とする有機無機複合薄膜により、耐光性が高くかつ、電子的性質、導電的性質、光学的性質等の新たな機能を充分に発揮する。また、有機無機複合薄膜を光記録媒体の記録層に用いることにより、金属超微粒子部位を照射光の回折限界よりも小さな面積を形成でき、ピックアップレンズの回折限界を超える記録密度で記録再生が可能でかつ再生安定性に優れた記録/再生信号を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的性質、導電的性質、光学的性質などの新たな機能を発揮する機能性複合材料に関し、特に、大容量の光カードの光記録素子などに使用される有機無機複合薄膜、その製造方法、及びそれを利用した光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
サブミクロンサイズの規則的に並んだ機能性材料を作製することは、電子的性質、導電的性質、光学的性質、磁気的性質等の新たな機能を発揮する材料を得るのに重要な技術であり、従来から、機能性材料として金属超微粒子(金属ナノクラスター)を用いた金属−有機複合材料の研究開発は進められている。
【0003】
しかしながら、二次元に規則的な格子状構造の再現性や均一性が未だ不足していて、電子的性質、導電的性質、光学的性質、磁気的性質等の新たな機能を充分に発揮できる有機無機複合薄膜には至っていないのが現状である。
【0004】
一方、光情報記録の分野では、基板上に反射層を有する光記録媒体であるCD規格、DVD規格に対応した記録可能な光記録媒体(CD−R、DVD−R)が商品化されている。今後このような光記録媒体において、さらなる記録容量向上と小型化、記録密度の向上が求められている。
【0005】
現行システムでの記録容量向上の要素技術として、記録ピットの微小化技術とMPEG2に代表される画像圧縮技術がある。特に、記録ピットの微小化技術においては、記録再生光の短波長化や光学系の開口数NAの増大化が検討されているが、回折限界を超える記録再生は不可能である。
【0006】
そこで、最近、回折限界を超える記録再生が可能な超解像技術や近接場光を利用した光記録媒体・システムが研究・開発されているが、未だ実用化には至っていないのが現状である。
【0007】
これらの課題に対し、二次元に規則的な格子状構造を持つポリマーと、その格子の孔の部分に機能性色素を含有することを特徴とする有機薄膜とその製造方法及びそれを利用した光記録媒体を提案した。該提案により、基板表面を格子状にサブミクロンサイズのパターンを形成した後、格子の孔の部分に機能性色素を埋め込むことで、機能性色素がサブミクロンサイズで規則的に配列した有機薄膜を得ることができた。さらに、該有機薄膜を光記録媒体に利用することで、上記の従来の課題を克服した新しい構造の光記録媒体を提案した。
【0008】
特許文献1記載の有機薄膜を応用した光記録媒体は、高度に秩序化されて存在する記録層ドット(機能性部位)が非連続に存在する。かつ、記録層ドットのサイズが均一なサブミクロンサイズで形成されているため、最小記録ピットのサイズはレーザの発振波長やレンズのNAで決定されることなく、形成する記録層ドットのみで決定され、任意の記録密度の記録媒体が設計可能となる。さらにピットの最外周のエッジもこの有機薄膜の構造体で決定されているため、この記録層ドット全体を変化させるように記録することで、ピットのバラツキの無い高品質の信号特性を得る事が可能となる。
【特許文献1】特開2003−123312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記の発明は以下の問題を有している。
【0010】
従来の有機薄膜は、耐光性が弱く、光記録媒体としての再生光安定性が悪く、再生を繰り返すとエラー率が増大するという問題点もあった。また、この有機薄膜では、耐光性が弱く、電子的性質、導電的性質、光学的性質、磁気的性質等の新たな機能が次第に劣化する問題があり、ポリマーマトリックスのモルホロジーに起因するノイズのため、高S/Nの信号での記録再生が出来ないという問題点があった。またそれを利用した光記録媒体でも、再生光安定性が悪く、再生を繰り返すとエラー率が増大するという問題点もあった。
【0011】
そこで、本発明は、従来のポリマー/色素からなる有機薄膜の代わりに、従来では実現不可能であったピックアップレンズの回折限界を越えた記録密度で記録再生可能な機能を持ち、サブミクロンサイズの二次元に規則的な格子状構造の孔の部分に金属超微粒子を含有する新たな形態の再生光安定性、耐光性に優れた有機無機複合薄膜、その製造方法、及びそれを利用した光記録媒体を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ポリマーで形成される規則的な格子構造を利用して、その孔の部分に金属超微粒子を含有させることにより、目的とする電子的性質、導電的性質、光学的性質等の新たな機能を発揮する機能性材料としての耐光性に優れた有機無機複合薄膜を得ることができた。また、有機無機複合薄膜中の金属超微粒子部位は照射光の回折限界よりも小さな面積を形成できるため、ピックアップレンズの回折限界を超える記録密度で記録再生が可能で再生光安定性に優れた光記録媒体が得られることが判明し本発明に至ったものである。
【0013】
請求項1記載の有機無機複合薄膜は、基板上に規則的な二次元の格子状パターンを持つポリマーを有し、その格子の孔の部分に金属超微粒子を含有することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の有機無機複合薄膜において、前記ポリマーは、ポリイオンコンプレックスからなり、前記格子の孔の部分に金属超微粒子を含有することを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の有機無機複合薄膜において、前記ポリマーが自己組織的に規則配列することにより、格子状パターンを形成し、前記格子の孔の部分に金属超微粒子を含有することを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の有機無機複合薄膜において、前記ポリマーが疎水性有機溶媒に可溶であり、前記格子の孔の部分に金属超微粒子を含有することを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項記載の有機無機複合薄膜において、前記基板上の前記金属超微粒子が親水性であることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項記載の有機無機複合薄膜において、前期基板が親水性であることを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項記載の有機無機複合薄膜の製造方法において、前記基板上にポリマーの疎水性有機溶媒溶液をキャストすることにより格子状のパターンを形成し、更にその上から金属超微粒子分散液をキャストして膜形成することを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項記載の有機無機複合薄膜の製造方法において、前記基板上にポリマーの疎水性有機溶媒溶液をキャストすることにより格子状のパターンを形成した後、その基板ごと金属超微粒子分散液に浸漬して膜形成することを特徴とする。
【0021】
請求項9記載の光記録媒体は、請求項1から6のいずれか1項記載の有機無機複合薄膜を記録層として有することを特徴とする。
【0022】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の光記録媒体において、前記有機無機複合薄膜のプラズモン吸収の最大吸収波長が、記録再生用のレーザの波長近傍にあることを特徴とする。
【0023】
請求項11記載の発明は、請求項9記載の光記録媒体において、前記有機無機複合薄膜の最大屈折率が記録再生用のレーザの波長近傍にあることを特徴とする。
【0024】
請求項12記載の発明は、請求項9から11のいずれか1項記載の光記録媒体において、前記有機無機複合薄膜の金属超微粒子が金、銀、プラチナであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、基板上に規則的な二次元の格子状パターンを持つポリマーを有し、その格子の孔の部分に金属超微粒子を含有することを特徴とする有機無機複合薄膜により、耐光性が高くかつ、電子的性質、導電的性質、光学的性質等の新たな機能を充分に発揮することができる。
【0026】
また、本発明は、有機無機複合薄膜を光記録媒体の記録層に用いることにより、金属超微粒子部位を照射光の回折限界よりも小さな面積を形成でき、ピックアップレンズの回折限界を超える記録密度で記録再生が可能でかつ再生安定性に優れた記録/再生信号を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の有機無機複合薄膜Aの第1構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【0029】
図1(a)に示された本発明の有機無機複合薄膜Aは、基板1(図1(b)参照)上に規則的な二次元の格子状パターン(構造)を持つポリマー5を有し、その格子の孔の部分にのみ金属超微粒子4を含有する構成からなる。
【0030】
この有機無機複合薄膜Aの特徴としては、金属超微粒子4がサブミクロンサイズで規則的に存在することにある。その規則的なパターン(構造)は、ポリマー5の配列を利用したものであるが、生産性を考慮すると、その配列は、自己組織的に形成されることが好ましい。その際、ポリマー5は有機溶媒、特に疎水性有機溶媒に可溶でキャストにより膜形成可能であることが好ましい。金属超微粒子4は格子状パターンを形成した後に孔に導入するため、金属超微粒子4の分散溶媒としては、ポリマー5の格子状パターンを侵さないものが好ましく、金属超微粒子4は基板1と同じ親水性であることが好ましい。
【0031】
更に、基板1はポリマー5と逆の親水性である方が、自己組織化を助ける意味で好ましく、金属超微粒子4を吸着させる意味でも金属超微粒子4と同じ親水性であることが好ましい。
【0032】
このようにしてサブミクロンサイズの金属超微粒子4を規則的に再列させることにより、電子的性質、導電的性質、光学的性質等の新たな機能を発揮する機能性材料としての耐光性に優れた有機無機複合薄膜を得ることができる。
【0033】
図2は、本発明の有機無機複合薄膜Aの第2構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【0034】
図2に明らかな通り、本構成例は、第1構成例とは異なりポリマーの格子状パターンの上に金属微粒子4の層が積層された構造である(図2(b)参照)。この場合も基板1側からみるとポリマー5の格子状パターンの孔の中に金属微粒子4が埋め込まれた構造である。
【0035】
次に、本発明の有機無機複合薄膜の製造方法について述べる。格子状の規則的な表面のパターニング技術として、特定の構造を持つポリマー5の溶液を基板1上にキャストすることにより、サブミクロンサイズのパターンを持ったフィルムが得られることが知られている。本発明は斯かる現象を元に発案されたものである。
【0036】
即ち、上記の方法で基板1表面を格子状にパターニングした後、更に金属超微粒子4の分散液をキャストして、格子の孔の部分に金属超微粒子4を埋め込むことにより、金属超微粒子4がサブミクロンで規則的に配列した有機無機複合薄膜Aを得ることができる
【0037】
同様に、パターニング後にポリマー5のネットワークを金属超微粒子4の分散液に浸漬することによっても、格子の孔の部分に金属超微粒子4を埋め込むことができる。
【0038】
第1構成例、第2構成例のいずれの場合も上記の方法で製造できる。ただし、金属微粒子分散液と基板1の表面およびポリマー5の格子状パターン表面の親和性により、第1構成例と第2構成例の製造法が異なる。即ち、金属微粒子4分散液と基板1表面の親和性が高く、金属微粒子4分散液とポリマー5の格子状パターン表面の親和性が低いときは第1構成例が製造でき、金属微粒子4分散液と基板1表面およびポリマー5の格子状パターン表面が共に親和性が高ければ第2構成例が製造できることになる。
【0039】
次に、この有機無機複合薄膜を記録層として用いた光記録媒体Bについて、図3を参照しつつ説明する。(a)は第1の実施態様である基板と記録層のみを有する構成例を説明する断面図、(b)は第2の実施態様である基板、記録層、反射層の順に積層した構成例を説明する断面図、(c)は第3の実施態様である基板、反射層、記録層の順に積層した構成例を説明する断面図である。
【0040】
従来の光記録媒体の記録層は連続した層をなし、そこにレーザビームを照射し、記録材料にレーザビームの形状に対応したなんらかの変化を形成して記録する。従って最小記録ピットのサイズは、発振波長とレンズのNAで決定されるレーザビームの径に依存するため、従来の記録再生システムでは、高密度化は基本的にレーザの発振波長やレンズのNAの実用化技術力に左右されてきた。
【0041】
また、ビーム形状がガウス分布した形状であること、記録材料として熱もしくは光に対し明瞭な閾値で変化する材料はほとんど存在しないこと等から、形成されるピットの最外周の大きさや変化量は均一とはならず、その再生信号品質にもバラツキの要因が存在し、高品質の信号特性を得るにも限界があった。
【0042】
本発明の光記録媒体Bは、前述の有機無機複合薄膜Aを記録材料2として用いた点に特徴がある。有機無機複合薄膜Aを記録材料2として用いることにより、再生安定性に優れかつ、最小記録ピットのサイズはレーザの発振波長やレンズのNAで決定されることなく、形成する記録層ドットのみで決定されるため、任意の記録密度の記録媒体が設計可能となった。さらにピットの最外周のエッジもこの有機無機複合薄膜の構造体で決定されているため、この記録層ドット全体を変化させるように記録することで、ピットのバラツキの無い高品質の信号特性が得られる光記録媒体が実現できた。
【0043】
<記録媒体の構成>
本発明の記録媒体は、通常の追記型光ディスクである構造(2枚貼合わせたいわゆるエアーサンドイッチ、又は密着貼合わせ構造としてもよい)あるいはCD−R用メディアの構造としてもよい。また、CD−R構造を貼り合わせた構造でもあるいはDVD−/+R用メディアの構造としても良い。以下記録媒体を構成する各層について順に説明する。
【0044】
<基板>
基板1の必要特性としては基板1側より記録再生を行う場合のみ使用レーザ光に対して透明でなければならず、記録層2側から記録、再生を行う場合、基板1は透明である必要はない。
【0045】
基板1の材料としては例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等のプラスチック、(石英)ガラス、セラミック、シリコンウェハーあるいは金属等を用いることができる。
【0046】
本発明の有機無機複合薄膜Aは、ポリマー5の孔の部分に金属超微粒子4が吸着される必要があるため、基板1も超微粒子吸着面が親水性材料であることが好ましい。疎水性材料の基板1の素材に親水性を与えるには、紫外線照射法やプラズマ処理法等の通常知られた方法を用いることも可能である。なお、基板1の表面には、トラッキング用の案内溝や案内ピット、さらにアドレス信号等のプレフォーマットが形成されていても良い。
【0047】
<記録層>
記録層2レーザ光の照射によりなんらかの光学的変化を生じさせ、その変化により情報を記録・再生可能なものであって、その記録層2は、基板上1に二次元に規則的な格子状のパターンを持つポリマー5と、その格子の孔の部分に金属超微粒子4を含有する構造からなる。金属超微粒子4の光学特性としては、記録再生用レーザ波長に対しその吸収特性変化を利用して再生する場合にはレーザ波長近傍に最大吸収波長を持つことが好ましく、記録再生用レーザ波長に対しその屈折率変化を利用して再生する場合にはレーザ波長近傍に最大屈折率を持つことが好ましい。
【0048】
格子状のパターンを形成可能なポリマー5の例としては、ポリスチレンスルホン酸と長鎖ジアルキルアンモニウム塩に代表されるポリイオンコンプレックス、ポリスチレンとポリパラフェニレン等のブロック共重合体、アクリルアミドを主鎖骨格として側鎖に長鎖アルキル(疎水部)とカルボン酸や糖(親水部)を持った両親媒性ポリマー、等が挙げられ、分子量分布の制御や両親媒性の制御が容易で、二次元に規則的な格子状構造が容易に得られるポリイオンコンプレックスが特に好ましい。これらのポリマーは単独で用いても良いし、2種以上の組み合せても良い。
【0049】
ナノメータサイズの金属超微粒子は、通常、有機溶媒中に金属化合物とその還元剤を溶解し加熱することで得られる。本発明の金属超微粒子4は、分散剤で保護された金属超微粒子を利用することが好ましく、その製造法は、金属化合物とその還元剤を有機溶媒中に溶解し、分散剤の存在下で加熱還元することで得られる。
【0050】
分散剤は、金属超微粒子の表面に対し強い吸着力を有する顔料親和性基(例えば、オルガノゾルに対し:第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、塩基性窒素を有する複素環基、ヒドロキシ基、カルボキシル基等、ヒドロゾルに対し:フェニル基、ラウリル基、ステアリル基、ドデシル基、オレイル基等)を有する部位と、溶媒親和性基(溶媒和)を有する部位から構成されており、ポリマーの孔の部分に金属超微粒子を吸着させる必要があるため、基板同様に親水性であることが好ましい。
【0051】
本発明の光記録媒体には、金、銀、プラチナ、銅、錫、ロジウム、イリジウム等全ての分散剤で保護された金属超微粒子が利用できるが、保存安定性及び光学特性から、金、銀、プラチナ及びその合金の分散剤で保護された金属超微粒子が特に好ましい。上記の金属超微粒子を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0052】
さらに金属超微粒子の光学特性を改良する目的で機能性色素を混合することも可能である。機能性色素としては、例えばレーザ光の照射エネルギーによりヒートモード(熱分解等)でその光学定数を変化させるポリメチン色素、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系染料、及び金属キレート化合物等が挙げられ、また、レーザ光の照射エネルギーによりフォトンモードでその光学定数を変化させるフルギド類、ジアリールエテン類、アゾベンゼン類、スピロピラン類、スチルベン類、ジヒドロピレン類、チオインジゴ類、ビピリジン類、アジリジン類、芳香族多環類、アリチリデンアニリン類、キサンテン類等のフォトクロミック材料も例として挙げられる。
【0053】
さらに上記記録層2中に特性改良の目的で、安定剤(遷移金属錯体等)、紫外線吸収剤、分散剤、難燃剤、潤滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤などを添加しても良い。金属超微粒子4のドット径は、0.05〜5μmが適当である。
【0054】
<下引き層>
下引き層は(a)接着性の向上、(b)水、又はガス等のバリアー、(c)記録層の保存安定性の向上、(d)反射率の向上、(e)溶剤からの基板や記録層の保護、(f)案内溝・案内ピット・プレフォーマット等の形成等を目的として使用される。
【0055】
(a)の目的に対しては高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴム等の種々の高分子物質、およびシランカップリング剤等を用いることができ、(b)及び(c)の目的に対しては、前記高分子材料以外に無機化合物、例えばSiO2、MgF2、SiO、TiO2、ZnO、TiN、SiN等、金属、又は半金属、例えばZn、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Au、Ag、Al等を用いることができる。また(d)の目的に対しては金属、例えばAl、Ag等や、金属光沢を有する有機薄膜、例えばメチン染料、キサンテン系染料等を用いることができ、(e)及び(f)の目的に対しては紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。下引き層の膜厚は0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
【0056】
<反射層>
反射層3は単体で高反射率の得られる腐食されにくい金属、半金属等が挙げられ、材料例としてはAu、Ag、Cr、Ni、Al、Fe、Sn、Cu等が挙げられるが、反射率、生産性の点からAu、Ag、Al、Cuが最も好ましく、これらの金属、半金属は単独で使用しても良く、2種以上の合金としても良い。膜形成法としては蒸着、スッパタリング等が挙げられ、膜厚としては50〜5000Å、好ましくは100〜3000Åである。
【0057】
<保護層、基板表面ハードコート層>
保護層、又は基板表面ハードコート層は(a)記録層(反射吸収層)を傷、ホコリ、汚れ等から保護する、(b)記録層(反射吸収層)の保存安定性の向上、(c)反射率の向上等を目的として使用される。これらの目的に対しては、前記中間層に示した材料を用いることができる。又、無機材料としてSiO、SiO2等も用いることができ、有機材料としてポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、芳香属炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジン等の熱軟化性、熱溶融性樹脂も用いることができる。
【0058】
前記材料のうち保護層、又は基板表面ハードコート層に最も好ましい例としては生産性に優れた紫外線硬化樹脂である。保護層又は基板面ハードコート層の膜圧は0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
【0059】
本発明において、前記下引き層、保護層、及び基板面ハードコート層には記録層の場合と同様に、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を含有させることができる。
【実施例1】
【0060】
ポリスチレンスルホン酸塩(重量平均分子量:50000)とビスヘキサデシル−ジメチルアンモニウム塩とから得られるポリイオンコンプレックスをクロロホルムに溶解し(400mg/l)、温度35℃・湿度51%RHの状態下で、石英基板上にキャストし、静置することによりポリマー薄膜を形成した。こうして得られた有機薄膜の構造を、光学顕微鏡、原子間力顕微鏡およびレーザ顕微鏡等を用いて観察した結果、孔径が約0.8μm、深さ約0.2μmの格子状のポリマーネットワークが観察できた。
【0061】
純水(40ml)中に、塩化金酸(20mmol)と高分子含量分散剤(5.5g:ソルスパール27000/ゼネカ社)を溶解させた後、ジメチルアミノアルコール(2.0ml)を加え加熱し、金超微粒子を調整し、その後エタノール(20ml)とブタノール(5ml)を加え塗布液とした。
【0062】
先に作成したポリマーネットワーク上に、上記塗布液をスピンコートし金属超微粒子層を形成した。レーザ顕微鏡による観察から、ポリマーネットワークの上に金属超微粒子層が積層されている有機無機複合薄膜が形成されていることを確認した。この状態を図4に示す。
【実施例2】
【0063】
ポリマーとして、それぞれ長鎖アルキル置換アクリルアミドと長鎖アルキルカルボン酸置換アクリルアミドのクロロホルム溶液(1g/l)を用い、温度35℃・湿度51%RHの状態で、マイカ基板上へキャストし、静置することによりポリマー薄膜を形成し、同様にポリマーネットワークの形成を確認した。
【0064】
純水(40ml)中に、硝酸酸性の硝酸銀(60mmol)と高分子含量分散剤(4.5g:ディスパービック180/ビックケミー社)を溶解させた後、ジメチルアミノアルコール(2.5ml)を加え加熱し、銀超微粒子を調整し、その後プロパノール(30ml)を加え塗布液とした。
【0065】
先に作成したポリマーネットワーク上に、上記塗布液をスピンコートし金属超微粒子層を形成した。同様にレーザ顕微鏡による観察から、ポリマーネットワークの上に金属超微粒子層が積層されている有機無機複合薄膜が形成されていることを確認した。
【実施例3】
【0066】
実施例1でポリマーネットワーク上に、純水(40ml)中に、塩化金酸(15mmol))と高分子含量分散剤(4.5g)を溶解させた後、ジメチルアミノアルコール(1.5ml)を加え加熱し、金超微粒子を調整した溶液をスピンコートし金属超微粒子層を形成した。同様にレーザ顕微鏡による観察から、ポリマーネットワークの中に金属超微粒子層が形成されている有機無機複合薄膜が形成されていることを確認した。
【実施例4】
【0067】
実施例2のポリマーネットワークを成形基板上に形成し、実施例3と同様にしてその上に金属超微粒子層を形成した。レーザ顕微鏡による観察から、ポリマーネットワークの中に金属微粒子層が形成されている有機無機複合薄膜が形成されていることを確認した。
【実施例5】
【0068】
実施例1で得たポリマーネットワークを形成した基板を用い、実施例1の塗布液による浸漬塗布法で金属超微粒子層を形成した。レーザ顕微鏡による観察から、ポリマーネットワークの上に金属超微粒子層が形成されている有機無機複合薄膜が形成されていることを確認した。
【0069】
[比較例1]
実施例1のポリマーネットワーク上に、ニュートラルレッドのエタノール溶液をスピンコートし色素層を形成し、有機薄膜とした。レーザ顕微鏡による観察から、ポリマーネットワークの上に色素層が形成されている有機薄膜が形成されていることを確認した。
【0070】
[耐光性試験]
実施例1〜5及び比較例1で得た有機無機複合膜、有機薄膜を、キセノンランプ下(照度:60000Lux)に20時間放置し、その光学濃度変化を観察した。
【0071】
(結果)
実施例1〜5の有機無機複合膜の光学濃度は、照射前とほとんど変化なし。比較例1の有機薄膜の光学濃度は、照射前の半分以下となった。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
以上の結果から、本発明の方法で得られる有機無機複合薄膜は、サブミクロンサイズの二次元ポリマーネトワークとその中の金属超微粒子とからなる耐光性に優れた有機無機複合構造となることが明らかである。このような二次元な格子状構造を持つ有機無機複合薄膜により、新たな電子的性質、導電的性質、光学的性質等の発現が可能となる。
【実施例6】
【0074】
実施例4で得た有機無機複合薄膜を記録層とし光記録媒体とした。この光記録媒体に、発振波長655nm、ビーム径0.6μmの半導体レーザを、水平方向、垂直方向に5μm間隔で各5mmスキャンさせた。このときの照射部および未照射部を原子間力顕微鏡・光学顕微鏡による観察、顕微分光法による透過率の測定を行った。
【0075】
[比較例2]
比較例1の有機薄膜を記録層とし光記録媒体とし、実施例6同様の評価をした。結果を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
本発明の有機無機複合薄膜は、有機薄膜同様にレーザ光により記録が可能なことは明らかである。さらに、上記の耐光性試験結果から、本発明の有機無機複合薄膜を用いた光記録媒体は、有機薄膜を用いた光記録媒体に比較し、再生安定性が優れていることは同様容易に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の有機無機複合薄膜の構成例の平面及び断面図である。
【図2】本発明の有機無機複合薄膜の構成例の平面及び断面図である。
【図3】本発明の光記録媒体の層構成の例を示す断面図であり、(a)は基板と記録層のみを有する構成例、(b)は基板、記録層、反射層の順に積層した構成例、(c)は基板、反射層、記録層の順に積層した構成例を示す。
【図4】実施例1のレーザ顕微鏡によって撮影した写真である。
【符号の説明】
【0079】
1 基板
2 記録層
3 反射層
4 金属超微粒子
5 ポリマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に規則的な二次元の格子状パターンを持つポリマーを有し、
その格子の孔の部分に金属超微粒子を含有することを特徴とする有機無機複合薄膜。
【請求項2】
前記ポリマーは、ポリイオンコンプレックスからなり、
前記格子の孔の部分に金属超微粒子を含有することを特徴とする請求項1記載の有機無機複合薄膜。
【請求項3】
前記ポリマーが自己組織的に規則配列することにより、格子状パターンを形成し、
前記格子の孔の部分に金属超微粒子を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の有機無機複合薄膜。
【請求項4】
前記ポリマーが疎水性有機溶媒に可溶であり、
前記格子の孔の部分に金属超微粒子を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の有機無機複合薄膜。
【請求項5】
前記基板上の前記金属超微粒子が親水性であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の有機無機複合薄膜。
【請求項6】
前期基板が親水性であることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の有機無機複合薄膜。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の有機無機複合薄膜の製造方法において、
前記基板上にポリマーの疎水性有機溶媒溶液をキャストすることにより格子状のパターンを形成し、更にその上から金属超微粒子分散液をキャストして膜形成することを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項記載の有機無機複合薄膜の製造方法において、
前記基板上にポリマーの疎水性有機溶媒溶液をキャストすることにより格子状のパターンを形成した後、その基板ごと金属超微粒子分散液に浸漬して膜形成することを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項記載の有機無機複合薄膜を記録層として有することを特徴とする光記録媒体。
【請求項10】
前記有機無機複合薄膜のプラズモン吸収の最大吸収波長が、記録再生用のレーザの波長近傍にあることを特徴とする請求項9記載の光記録媒体。
【請求項11】
前記有機無機複合薄膜の最大屈折率が記録再生用のレーザの波長近傍にあることを特徴とする請求項9記載の光記録媒体。
【請求項12】
前記有機無機複合薄膜の金属超微粒子が金、銀、プラチナであることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項記載の光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−213939(P2006−213939A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25302(P2005−25302)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】