説明

有機物の磁気分解処理装置

【課題】 有機物の磁気分解処理装置の処理効率を向上させることを目的とした廃棄有機物の磁気分解処理装置の提供を課題とする。
【解決手段】
筒状処理槽の上部に密閉蓋付きの有機物投入口を有し、下部に磁化空気の吹出しノズルを配置して、前記処理槽の内側に収容した有機物を磁化空気により分解する装置において、前記処理槽の少なくとも二側壁を、小間隙を介する三重壁とし、該三重壁の内壁に分解気体を通過させる多数の小孔を設け、該小孔と連続する小間隙は分解気体の下降通路用間隙とし、その外側の間隙は、上下を槽内に開放して分解気体の循環用間隙としたことを特徴とする有機物の磁気分解処理装置により前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃棄有機物を強磁場を通過した空気により分解することを目的とした廃棄有機物の磁気分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄有機物の低温磁気分解処理については、数件の提案がされており、実用化の域に達している装置もあるが、未だ実験中の装置が大部分であり、産業上広く利用される域に達していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−190733号公報
【特許文献2】特許第433712号公報
【特許文献3】特開2010−270980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃棄有機物の磁気分解処理について、幾多の提案があることは前記のとおりである。例えば、250℃〜400℃の酸素を制限した活性熱気体を、廃棄有機物の中へ吹き込み、該有機物を分解する方法と装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、処理すべき有機物の下部へ磁化空気を給気し、分解された気体を下降させて、前記磁化空気と共に上下対流させ、前記有機物を分解させるようにした低温分解処理装置も提案されている(特許文献2)。
【0006】
更に、磁場を通過させた空気を有機物に接触させて分解する低温熱分解炉の提案もある(特許文献3)。
【0007】
前記各発明については、それぞれ特徴があって、実施できるものと認められるが、磁気分解の効率向上の点については未だ不十分と認められる。
【0008】
前記各発明において、処理効率の向上が難しい理由の一つは、磁気分解に際し、多量の水分が生成され、これを気化し、又は微粒水分として排出すると多くのエネルギーを消失するものと認められるからである。
【0009】
この発明は、磁気分解気体中の水分を分離排除して、前記処理効率の向上を図ることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、磁気分解により生成された気体中に水の微粒子が多量に含まれることに着目し、前記水粒子を側壁に沿って下降させ、冷却させることにより下降気体中の水粒子を分離し、水滴に変化させることに成功した。
【0011】
即ち、廃棄有機物の分解によって、装置の上部の気圧が必然的に高くなるので、装置の側壁を小間隙による三重壁とし、最内壁に多数の小孔を設けた。そして、上下の気圧差を利用し、水分を含む気体を下降させ、この下降気体の温度を下げることにより水分を分離したのである。
【0012】
前記有機物の分解に際しては、分解熱により装置内は100℃〜300℃位になり、有機物に含まれた水分は水蒸気となって分解された気体と共に上昇するので、装置内の上部の気圧が上昇する。
【0013】
前記装置は、例えば角筒状の処理槽であって、上端部は有機物投入口となっており、該投入口は開閉蓋により密封する。前記処理槽の上と中央部は有機物の収容部であって、該部は有機物の分解処理部である。また、下部内側は、灰の集積場所であると共に、磁化空気吹出し用の複数のノズルが設置されている。
【0014】
前記ノズルは、収容した有機物の下部へ磁化空気を均等に吹き付けるべく、底板上に均等に配置されている。前記底板上には灰が溜まるので、前記ノズルは灰に埋まらないような配慮が必要である。
【0015】
この発明の処理槽は、四周を三重壁とし、各壁間に小間隙を設けて、水蒸気の多い排気体と分解気体の多い排気体とを下降させる排気路としてある。前記最内側の側壁には多数の小孔が穿設してあり、水蒸気及び分解気体を自動的に吸入し、排気路内を下降させ、冷却して水蒸気を水滴とする。前記において、処理槽内の上部は高気圧となり、下部は低気圧となるので、小間隙は必然的に下降気体の通路となり、中央部の上昇気体と循環流動する。
【0016】
前記磁化空気による分解は化学変化であるから、分解熱を生じ、ほぼ200℃〜350℃となる。即ち、有機物は磁化空気に接触して磁気分解するが、分解熱によって加温(例えば200℃〜350℃)されるので、加温により磁気分解が促進される。
【0017】
前記のように分解した空気は、槽内を上昇し開閉蓋に達すると、外壁側の小間隙に沿って下降し、そのまま槽の下部から排気される。また、排気の一部は、ノズルの吹出し方向に沿って上昇し、磁化空気と共に有機物に接触してこれを分解する。前記において、有機物は自重により下降するので、必然的に混合されて撹拌されるが、撹拌機を付設すれば確実にかつ均等に撹拌することができる。
【0018】
前記磁化空気は、強い磁場(例えば0.4テスラ以上)を通過して槽内へ吸入される。この場合に、ファンを用いて吸入量、吸入圧力をコントロールすれば、磁化空気の吹出し量を規制し、分解の進行をコントロールすることができる。この発明においては、有機物へ磁化空気を均等に吹き付けることを必須要件とするものである。
【0019】
一方、装置の下部は、排気と磁化気体の吹出しなどで比較的気圧が低いので、装置内部の気体は、側壁の小孔から吸入されて、自動的に下降する。そして、比較的低温の下部で冷却され、排気に含まれた水蒸気は水滴となって装置底に溜まることになる。また、下降気体を水分で冷却することもできる。
【0020】
即ち、気水分離について特別の装置を設置しなくても、冷却によって水滴が生成され、装置の下部に溜まる。従って、前記により生成された水分を蒸発させるエネルギーは使用されないことになるので、化学分解がスムーズに進行し、結果的に有機物の処理効率を向上させることになる。
【0021】
この発明における磁化空気の吹出ノズルは、前記のように底板上へ上向きに複数均等配置する。これにより磁化空気を有機物へ均等に接触させることができる。元来有機物は、磁化空気に接触すると分解されるから、均等接触は基本条件となる。前記磁化空気は常時上向きに放出されるので、循環気体は上向きに流動することになり、両者は同一方向へ流動する。
【0022】
前記において、分解気体は外壁内側の間隙に沿って下降し、一部はノズルからの吹出しに伴って上昇し、再び有機物に接触してその分解を促進させる(循環流動)。前記において、分解気体は分解熱により加温されながら(例えば300℃前後)上昇するので、槽内の上部は気圧が高くなる。一方、槽内の下部は、外界への排気とノズルからの吹出し作用によって気圧が下降する。そこで、槽上部内の高い気圧の気体は、間隙を通って低い気圧の槽下部に至り、必然的に循環流動することになる。
【0023】
この発明の処理槽は基本的に角筒又は円筒であり、角筒は通常断面正方形又は矩形である。そして、分解部位と側壁の流通部との処理槽は、断面正方形又は円形が最も普通に考えられる。
【0024】
次に、有機物の投入時に、処理槽の開閉蓋を開くと内部の気体が排出するおそれがある。(通常処理槽内の気圧は常圧より高い)。そこで、処理槽の上端開口部にホッパーを接続し、ホッパーの基部とホッパーの上部にそれぞれ開閉蓋(例えばスライド蓋)を設置すれば、前記開閉蓋を交互に開放することにより、有機物投入時の排気洩れを未然に防止することができる。
【0025】
また、磁化装置の大きさは、一定時間に必要な総磁化空気量と磁化空気の適正な流速との関係から容易に導くことができる。前記必要な磁化空気量は予め算定できるので、この点から、磁化空気室の容積、磁化空気の流動断面積及び流速を定める必要がある。要するに、処理すべき有機物へ所定量の磁化空気を均等に吹き付けるようにする。
【0026】
この発明においては、処理装置の中央部へ回転軸を架設し、この回転軸に撹拌羽根を固定する。前記撹拌羽根は、図2中左右一対の軸に取り付けられており、同一軸については、方向の異なる羽根を図1中左右に固定する。そこで、回転軸、例えば右回転させれば、有機物が中央側へ寄せられ、左回転させれば、有機物が側壁側へ寄せられるように左右の羽根はその角度を変えてある。即ち、羽根は単に撹拌だけでなく、有機物の横移動(回転軸と平行)もできる。
【0027】
また、羽根の外縁に切刃を付けることにより、接触した有機物を部分的に切断することができる。例えば有機物の一部が合成樹脂袋の場合には、袋を破らない限り磁化空気の働きが遅くなり、分解処理時間が長くかかる原因の一つになることがあるので、これを未然に防止する。
【0028】
次に、水分の多い有機物(塩素を含む)の場合には、遊離水分が塩素と結合して塩酸が生じ、有毒気体となるおそれがあるので、分解気体中の水分を可及的速やかに水滴とし排水する必要がある。この点からも、この発明は分解気体中の水分を除去するので、塩素を含む有機物であっても分解気体からの塩酸の生成を未然に防止することができる。
【0029】
この発明においては、多数のノズルを使用するので、この各ノズルへ磁化空気を均等に送る必要がある。そこで、一方法としては、容量の大きい磁化空気室を作り、該磁化空気室の磁化空気をブロアなどで強制、定量移送することが考えられる。
【0030】
前記磁化空気は、加圧流入させることもあるが、循環気体は磁化空気の吹出しによりその速度が助長される。これは溜灰が加温され、溜灰の温度(中央部の温度は200℃〜350℃位)による上昇気流が前記磁化空気の加速原因と考えられる。
【0031】
即ち、前記循環流動の力は、磁化空気の吹出しと灰の加温による上昇流動とが考えられる。更に、煙道へ適度に流動させ、又は処理槽内の下部へ冷水を流動させて排気を冷却し、これにより下部気圧を低くして、内部気圧を調整すれば、内部気体の流動制御をすることができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、分解により生成した水分を可及的に分離し、水にすることで、水分を蒸発させるのに要したエネルギーが節約されると共に、分解に有効に使用されるので、分解効率を向上させる効果がある。
【0033】
また、分解により生成した気体の一部を水分混入のまま下降させ、下部で水分を分離するので、上昇気体が軽くなり、磁化空気と共にスムーズに上昇し、磁化空気の吹出しを阻害しないで容易に混合できる効果がある。
【0034】
更に、水分の上昇が少ないので、塩素などの有害物含む分解気体であっても、塩素と水と結合して有害液(例えば塩酸)の生成を妨げる効果がある。
【0035】
また、少なくとも二側壁、可能ならば四側壁へ小孔を設ければ、分解により生成した気体は、それぞれの高さから気圧に応じて下降し、自動的に気圧変化が調整されるので、局部的に高圧部分を生じるおそれがなく、下降した排気中の水蒸気が冷却され水滴となり分離されるので、下部槽内の気圧は低下する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施例の一部を省略した縦断正面図。
【図2】同じく一部を省略した縦断側面図。
【図3】(a)同じく一部を省略した横断平面図、(b)同じく側壁の一部断面拡大図。
【図4】同じく処理槽の上端部にホッパーを設置した実施例の一部を省略した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
この発明は、筒状の処理槽の上部内側へ廃棄有機物を収容し、上部を閉塞すると共に、前記有機物の下部へ磁化空気を吹き出して、これにより有機物を順次気体(例えばCO、HO、H、O、Nなど)と灰(無機物)とに分解するものである。即ち、灰以外は前記気体となり排出されるが、前記成分中窒素が化合物を作り、臭気を発することもあるので、この場合には臭気を処理して無色無臭の気体とする排気処理が必要となる。
【0038】
前記磁化空気による処理の際、分解熱を生じるが、ほぼ400℃以下である。従って、有機物の処理は磁気分解を主としており、燃焼とは明らかに異なるので、分解の際の発熱により(例えば200℃〜350℃)、磁化空気と前記加熱気体或いは水蒸気などの気体の中で急速に分解されることになる。
【0039】
有機物の種類によって生成される気体の成分比は異なるが、有機物がその構成成分に分解されて気体となり、固体は無機物(灰)のみになることは明らかである。
【0040】
前記分解速度は、有機物の材質、大きさ、磁気の強さなどによって大差がある。例えば、0.4テスラ〜0.6テスラの磁場を通過した磁化空気で、平均的な大きさが3cm〜5cmの木片、鋸屑などの場合に、従来の装置では1mの処理に3時間〜4時間かかっていたが、この発明の実施装置を用いた場合には、2.5時間〜3時間で処理できることが確認された。従って、平均25%の効率改善が見込まれた。分解気体の流動状態と水蒸気の処理をすれば、更なる効率の改善が見込まれる。
【0041】
また、前記有機物に、放射性土壌を20%(重量)混入したところ、処理終了時に、灰の放射能は10分の1以下に低減していた。従って、磁気分解に伴って、放射能も低減されることが確認された。前記における放射能の低減については、放射性土壌の場合と、放射性有機物(例えば合成樹脂衣類)とでは、効果に格段の相違が認められたが、処理態様の相違に帰因するものと推定される。
【0042】
前記によれば、水蒸気として排気されるべき気体が水滴となるために放出された熱量と、水滴となった時の潜熱とが有効に働くために、化学分解時の熱損失が少なくなり、その分だけ分解効率の向上につながったものと推定される。
【実施例1】
【0043】
この発明の実施例を図1〜3に基づいて説明する。鋼板製の四角筒状外壁1内へ、小間隙1a、1bを介して内壁2、3を順次併設し、三重胴の本体5を構成する。
【0044】
本体5の内底板4a上には、磁化空気の吹出しノズル6、6を配置する。吹出しノズル6、6は、処理すべき有機物7の下面へ磁化空気を均等に吹き出すことを目的としているので、吹出しノズルの数に応じて均等に配置する。
【0045】
前記吹出しノズル6、6は、それぞれパイプ25、25を介して磁化空気室26に連結され、磁化空気室26は、パイプ27を介して磁化室28に連結されている。図中29は磁化室28の吸入パイプである。磁化室28内には、強磁性体が小間隙を介して対向設置され強磁場を構成している。前記吸入パイプ29で吸入した空気は、磁化室28の強磁場を通過し、パイプ27を介して磁化空気室26に送られる。そこで、磁化空気室26からパイプ25を介して吹出しノズル6、6に送られる。前記磁化空気室26とパイプ25との間にブロア40を介在させて、吹出し圧力を調整する。
【0046】
前記内壁3には、上下左右に多数の小孔8、8を設ける。小孔8について大きさに制約はないが、内壁3の内側(処理空間)に収容した有機物7の小片などが入って小孔8を塞がないことを要件とする。従って、例えば実施例のようにカバー8a、8aを有する矩形小孔(打ち出し孔)が好ましい。
【0047】
即ち、カバー8a、8aが小孔8、8を覆うので、有機物7の小片が小孔8、8に入るおそれがなく、かつ小片により小孔8を塞ぐおそれもない。図中10はこの発明の処理装置、19は残渣物点検口、20は灰点検口、21は開閉蓋である。前記開閉蓋21は、軸49を中心にして開閉される。図中47は開閉蓋21の把手、48は把手47を固定する係止環である。
【0048】
前記本体5の中央部であって、側面図中、中央左右へ所定間隔で回転軸30、30を水平に架設し、各回転軸30、30の図1中、左右へ撹拌羽根31、32をそれぞれ固定する。前記撹拌羽根31、32は、それぞれ逆傾斜になっており、回転軸30、30の回転に伴って、有機物を矢示33、34又は35、36のように撹拌、移動させる。従って、撹拌羽根31、32に接触する有機物は、矢示33、34のように中央部へ寄せられ、又は矢示35、36のように側壁側へ寄せられ大きく撹拌される。
【0049】
また、撹拌羽根31、32の外周には、刃31a、32aが設けられており(図2)、この刃に接触した有機物を切断する。例えば、合成樹脂袋又は合成樹脂袋の近似物は31a、32aによって細断されるので、磁化空気に均等に接触し、分解を促進する。通常、合成樹脂袋に入っている有機物は、袋が分解されてから分解が始まるが、前記のように、羽根の刃により袋が破られると、袋と内容物が同時に分解されるので、全体の分解処理時間を著しく短縮することができる。図1中46は回転軸30、30を回転するモータである。
【0050】
前記本体5の上部にホッパー45を連結し(図4)、ホッパー45の下端面と本体5の上端面との間に、開閉蓋41を設置し、前記ホッパー45の上端部へ開閉蓋42を設置する。開閉蓋41、42を交互に開閉すれば、本体5(処理槽)からの排気の洩れだしを未然に防止することができる。
【0051】
即ち、実施例の如く、本体5の上部に開閉蓋21のみを取り付けた場合には、開閉蓋21を開閉する度に処理槽内の分解気体が上昇して排出され、付近に臭気を拡散させるおそれがあるが、前記のように、本体5の上部にホッパー45を連結し、ホッパー45の上下端部に開閉蓋41、42を設ければ、本体5からの排気が外部へ排出するのを未然に防止することができる。
【0052】
従って、ホッパー45内へ有機物を収容する時には、下の開閉蓋41を閉鎖して本体5内から排気が洩れるの遮断し、本体5内へ有機物を入れる時には、上の開閉蓋42を閉鎖して本体5内から排気が洩れるのを防止することができる。開閉蓋41、42は通常平塞してある。
【0053】
前記において、ホッパー45内の有機物を本体5内へ移動させるには、有機物の自重に依存するけれども、有機物の状態によっては自由落下が不正確な場合もあるので、積極的に有機物投入用補助手段を架設することもある。
【0054】
前記有機物投入については、ホッパー45の下部の詰まりを解消するもので、回転羽根又はロールその他従来公知の手段を採用することができる。
【0055】
前記実施例において、有機物7は通常下側部から分解するが、分解により生じた気体と水蒸気との混合物は、矢示11、11、12、12のように側方及び上方に拡散する。そこで、主として側方に流動した気体は、矢示12から小孔8、8に入り、矢示14、14のように下降する(図1)。
【0056】
分解気体の多くは矢示11、11のように上昇し、矢示13、13のように下降する。また、下部に溜まった水と排気は矢示17のように外界(例えば煙突(非図示))へ排出され、他部は矢示18、18のように内部へ上昇する。そして磁化空気と混合して有機物に接触し、分解を促進する。前記磁化空気はほぼ常温(例えば20℃〜25℃)であるが、分解気体は100℃〜300℃位になっているので、加温により有機物の分解を促進する。前記磁化空気は、その量を調整することが好ましいので、ブロワーなどで加圧して吹き出すこともある。
【0057】
図3において、ノズル6、6aに二重円と三重円が表れているが、三重円(ノズル6a)にはヒーター(最高300℃)が付けてある。このヒーターは、装置による分解の立ち上がり時に5分程つけるヒーターである。前記ヒーターに通電することによって、付近の空気を加温して上昇気流が生じる(矢示18a)ので、立ち上がり時に新聞紙などを燃やして上昇気流を生成させるなどの、立ち上がり動作は不要となる。
【0058】
図に示した実施例の装置にあっては、主スイッチを入れると同時にヒーターにも通電すると、付近の空気が加熱され、上昇気流が生じるが、通電後5分位で通常の進行になって、前記スイッチが切れるようにしてある。従って、通常運転では、運転開始時における管理者の注意が不要となる。
【0059】
前記における磁化空気(空気中の微粒子が磁化される)により、酸素が活性化されて、有機物を分解するものと推定される。また、有機物は分解熱により加熱されるので(例えば、有機物の下面は200℃以上)、磁化空気の活性酸素による分解が促進されるものと認められる。
【0060】
前記有機物の水分が仮に50%〜60%としても、圧倒的に水分が多いことになり、加温と分解促進とは必然的に生起され、水蒸気の発生も著しいと思われる。
【0061】
前記水蒸気が加温されて加熱蒸気となり、分解して活性酸素と水素を生成すれば、分解効率は著しく促進される。この発明の場合には、著しく多い水蒸気中から水分の一部を分離することになる。この水分は、本体5の底板4上へ溜まり、矢示17のように流れて処理槽外へ排出される(図1)。
【0062】
前記実施例は、本体の四側壁を三重壁としたが、三側壁又は二側壁を三重壁とした場合にも処理効率の向上が認められた。
【符号の説明】
【0063】
1 外壁
2、3 内壁
4a 内底板
5 本体
6 吹出しノズル
7 有機物
8 小孔
10 処理装置
21 開閉蓋
26 磁化空気室
28 磁化室
30 回転軸
31、32 撹拌羽根
41、42 開閉蓋
45 ホッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状処理槽の上部に密閉蓋付きの有機物投入口を有し、下部に磁化空気の吹出しノズルを配置して、前記処理槽の内側に収容した有機物を磁化空気により分解する装置において、前記処理槽の少なくとも二側壁を、小間隙を介する三重壁とし、該三重壁の内壁に分解気体を通過させる多数の小孔を設け、該小孔と連続する小間隙は分解気体の下降通路用間隙とし、その外側の間隙は、上下を槽内に開放して分解気体の循環用間隙としたことを特徴とする有機物の磁気分解処理装置。
【請求項2】
筒状処理槽の上部に密閉蓋付きの有機物投入口を有し、下部に磁化空気の吹出しノズルを配置して、前記処理槽の内側に収容した有機物を磁化空気により分解する装置において、前記処理槽の少なくとも二側壁を、小間隙を介する三重壁とし、該三重壁の内壁に分解気体を通過させる多数の小孔を設け、該小孔と連続する小間隙は分解気体の下降通路用間隙とし、その外側の間隙は、上下を槽内に開放して分解気体の循環用間隙とし、前記筒状処理槽の下部から排気するようにしたことを特徴とする有機物の磁気分解処理装置。
【請求項3】
筒状処理槽の上部に密閉蓋付きの有機物投入口を有し、下部に磁化空気の吹出しノズルを配置して、前記処理槽の内側に収容した有機物を磁化空気により分解する装置において、前記処理槽の前後左右の側壁に、小間隙を介する三重壁をそれぞれ設け、前記三重壁の内壁に分解気体を通過させる多数の小孔を設け、該小孔と連続する小間隙は分解気体の下降通路用間隙とし、その外側の間隙は、上下を槽内に開放して分解気体の循環用間隙としたことを特徴とする有機物の磁気分解処理装置。
【請求項4】
筒状処理槽の上部に密閉蓋付きの有機物投入口を有し、下部に磁化空気の吹出しノズルを配置して、前記処理槽の内側に収容した有機物を磁化空気により分解する装置において、前記処理槽の前後左右の側壁に、小間隙を介する三重壁をそれぞれ設け、前記三重壁の内壁に分解気体を通過させる多数の小孔を設け、該小孔と連続する小間隙は分解気体の下降通路用間隙とし、その外側の間隙は、上下を槽内に開放して分解気体の循環用間隙とし、前記小孔にカバーを設けたことを特徴とする有機物の磁気分解処理装置。
【請求項5】
筒状処理槽の中央部に回転軸を水平に架設し、回転軸の左右に撹拌羽根を所定間隔をおいて夫々固定したことを特徴とする請求項1乃至4記載の有機物の磁気分解処理装置。
【請求項6】
回転軸は同一高さで二本並列架設したことを特徴とする請求項5記載の有機物の磁気分解処理装置。
【請求項7】
撹拌羽根の外周部に切断刃を設けたことを特徴とする請求項5記載の有機物の磁気分解処理装置。
【請求項8】
吹出ノズルと磁化室との間に磁化空気室を介装したことを特徴とする請求項1乃至4記載の有機物の磁気分解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−10088(P2013−10088A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145832(P2011−145832)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(311009778)株式会社エスジェック (1)
【Fターム(参考)】