説明

有機物処理方法及び有機物処理装置

【課題】 有機物の種類によらず分解処理することができ、処理後の生成物が吸湿することがない有機物処理方法及び分解処理装置を提供する。
【解決手段】 有機物を、排気弁が設けられた密閉容器に収納し、排気弁を閉じた状態で密閉容器に加熱水蒸気を導入し、有機物を加圧・加熱しながら攪拌して分解し、
排気弁を開放して、密閉容器内を略常圧にした状態で、密閉容器に乾燥過熱水蒸気を導入して、分解後の有機物を無酸素若しくは、低酸素雰囲気下で加熱しながら攪拌し、有機物に含まれる水分を、気化して排気弁から排出することにより除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみ等の有機物を分解処理する有機物の処理方法及びこれに用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるような生ごみ処理機が知られている。この生ごみ処理機は、生ごみが収納された処理機内に熱風を導入し、生ごみに含まれる水分を気化して水蒸気とし、この水蒸気を冷却して凝縮・液化した状態で外部に排出して、生ごみを乾燥して減容する装置である。被処理物である生ごみが、家庭での残飯である場合には、減容処理することができるが、例えば食肉加工工場で排出される家畜の頭部である場合には、当該頭部の骨が分解されることなく、減容処理することができない。また、たとえ乾燥により減容処理することができた場合であっても、処理物をそのまま放置すると、当該処理物が、外気中に含まれる水分を吸湿し、微生物の働きにより腐敗し、悪臭を放ってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−331275号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決し、有機物の種類によらず分解処理することができ、処理後の生成物が吸湿することがない有機物処理方法及び分解処理装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明は、有機物を、排気弁が設けられた密閉容器に収納し、前記排気弁を閉じた状態で前記密閉容器に加熱水蒸気を導入し、有機物を加圧・加熱しながら攪拌して分解し、前記排気弁を開放して、前記密閉容器内を略常圧にした状態で、前記密閉容器に乾燥過熱水蒸気を導入して、分解後の有機物を無酸素若しくは、低酸素雰囲気下で加熱しながら攪拌し、有機物に含まれる水分を、気化して前記排気弁から排出することにより除去することを特徴とする。
【0006】
本発明の有機物処理方法を実現する最適な装置である請求項2に記載の発明は、内部を密閉/開放する排気弁が設けられた密閉容器と、前記密閉容器内に回転自在に軸支された攪拌羽根部材と、前記攪拌羽根部材に回転力を付与する回転力発生手段と、前記密閉容器または過熱装置に供給する加熱水蒸気を生成する水蒸気生成装置と、前記水蒸気生成装置が生成した加熱水蒸気をさらに加熱して、乾燥過熱水蒸気を生成し前記密閉容器内に供給する過熱装置と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、有機物を前記密閉容器内に投入後所定時間は、前記排気弁を閉塞した状態で、水蒸気生成装置が生成した加熱水蒸気を密閉容器に供給し、前記所定時間経過後は、排気弁を開放した状態で、過熱装置が生成する乾燥過熱水蒸気を前記密閉容器に供給する制御を行なう制御手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明の過熱装置は、請求項2または請求項3に記載の発明において、水蒸気生成装置が生成した過熱水蒸気が導かれ、乾燥過熱水蒸気を排出する管体と、前記管体内に配設された発熱体と、前記管体の外側に配設された誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給する高周波電源装置とから構成され、前記誘導加熱コイルが発する交番磁束により、前記発熱体に渦電流を流して、前記発熱体を発熱させることにより、前記管体内を流通する水蒸気を、加熱して乾燥加熱水蒸気を生成するように構成した電磁誘導過熱式であることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4に記載の発明において、攪拌羽根部材の支軸に、蒸気流路を設けるとともに、この蒸気流路から、密閉容器内に開放する蒸気吐出口を前記蒸気流路に形成し、水蒸気生成装置が生成する加熱水蒸気及び過熱装置が生成する乾燥過熱水蒸気を、前記蒸気流路に供給して、前記蒸気吐出管から、密閉容器内に供給するように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜請求項5に記載の発明において、蒸気生成装置が生成する加熱蒸気及び過熱蒸気生成装置が生成する乾燥過熱水蒸気が流通する流路を、スイベルジョイントを介して攪拌羽根の支軸に設けられた蒸気流路に接続したことを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項2〜請求項6に記載の発明において、排気弁を主排気弁と従排気弁とから構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜請求項7に記載の発明において、密閉容器の少なくとも下部の断面形状を半円形状にするとともに、当該半円中心に攪拌羽根部材の支軸を回転自在に取り付け、攪拌羽根部材の回転軸中心と、攪拌羽根部材の羽根先端までの寸法を、密閉容器の下部内面の曲率半径よりも僅かに小さい寸法にしたことを特徴とする。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項2〜請求項8に記載の発明において、密閉容器の断面形状を円形状にしたことを特徴とする。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、密閉容器の両側端を膨出させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明は、有機物を、排気弁が設けられた密閉容器に収納し、前記排気弁を閉じた状態で前記密閉容器に加熱水蒸気を導入し、有機物を加圧・加熱しながら攪拌して分解し、前記排気弁を開放して、前記密閉容器内を略常圧にした状態で、前記密閉容器に乾燥過熱水蒸気を導入して、分解後の有機物を無酸素若しくは、低酸素雰囲気下で加熱しながら攪拌し、有機物に含まれる水分を、気化して前記排気弁から排出することにより除去することを特徴とする。このため、加熱水蒸気で有機物を高圧・高温下で、分解処理した後に、乾燥加熱水蒸気で乾燥処理を行なうので、粗大な有機物であってもパウダー状に処理することが可能となる。
【0016】
本発明の有機物処理方法を実現する最適な装置である請求項2に記載の発明は、内部を密閉/開放する排気弁が設けられた密閉容器と、前記密閉容器内に回転自在に軸支された攪拌羽根部材と、前記攪拌羽根部材に回転力を付与する回転力発生手段と、前記密閉容器または過熱装置に供給する加熱水蒸気を生成する水蒸気生成装置と、前記水蒸気生成装置が生成した加熱水蒸気をさらに加熱して、乾燥過熱水蒸気を生成し前記密閉容器内に供給する過熱装置と、を有することを特徴とする。このため、加熱水蒸気で有機物を高圧・高温下で、分解処理した後に、乾燥加熱水蒸気で乾燥処理を行なうので、粗大な有機物であってもパウダー状に処理することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、有機物を前記密閉容器内に投入後所定時間は、前記排気弁を閉塞した状態で、水蒸気生成装置が生成した加熱水蒸気を密閉容器に供給し、前記所定時間経過後は、排気弁を開放した状態で、過熱装置が生成する乾燥過熱水蒸気を前記密閉容器に供給する制御を行なう制御手段を設けたことを特徴とする。このため、自動で有機物を処理することができるので、手間や人件費がかからない。
【0018】
請求項4に記載の発明の過熱装置は、請求項2または請求項3に記載の発明において、水蒸気生成装置が生成した過熱水蒸気が導かれ、乾燥過熱水蒸気を排出する管体と、前記管体内に配設された発熱体と、前記管体の外側に配設された誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給する高周波電源装置とから構成され、前記誘導加熱コイルが発する交番磁束により、前記発熱体に渦電流を流して、前記発熱体を発熱させることにより、前記管体内を流通する水蒸気を、加熱して乾燥加熱水蒸気を生成するように構成した電磁誘導過熱式であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4に記載の発明において、攪拌羽根部材の支軸に、上記流路を設けるとともに、この蒸気流路から、密閉容器内に開放する蒸気吐出口を前記蒸気流路に形成し、水蒸気生成装置が生成する加熱水蒸気及び過熱装置が生成する乾燥過熱水蒸気を、前記蒸気流路に供給して、前記蒸気吐出管から、密閉容器内に供給するように構成したことを特徴とする。このため、有機物を攪拌しながら、満遍なく、均一に、加熱蒸気や乾燥過熱水蒸気を供給することが可能となり、有機物の分解処理及び乾燥処理を促進し、短時間で且つ確実に行なうことが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜請求項5に記載の発明において、蒸気生成装置が生成する加熱蒸気及び過熱蒸気生成装置が生成する乾燥過熱水蒸気が流通する流路を、スイベルジョイントを介して攪拌羽根の支軸に設けられた蒸気流路に接続したことを特徴とする。このため、加熱水蒸気及び乾燥過熱水蒸気が漏出することなく、密閉容器に加熱水蒸気及び乾燥過熱水蒸気を確実に供給することができ、密閉容器を密閉した状態で、加熱水蒸気を供給した場合であっても、密閉容器内の圧力を高く加圧することが可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項2〜請求項6に記載の発明において、排気弁を主排気弁と従排気弁とから構成したことを特徴とする。このため、処理後の有機物を排出する際に、故障等により主排気弁が閉塞し、密閉容器内が常圧以上となること防止して、処理後の有機物が噴出することを防止することが可能となる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜請求項7に記載の発明において、密閉容器の少なくとも下部の断面形状を半円形状にするとともに、当該半円中心に攪拌羽根部材の支軸を回転自在に取り付け、攪拌羽根部材の回転軸中心と、攪拌羽根部材の羽根先端までの寸法を、密閉容器の下部内面の曲率半径よりも僅かに小さい寸法にしたことを特徴とする。このため、密閉容器内に収納された有機物が、満遍なく、均一に攪拌され、当該有機物が全く攪拌されない部分が生じることや、有機物が、密閉容器の内壁面に固着することを防止することが可能となる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項2〜請求項8に記載の発明において、密閉容器の断面形状を円形状にしたことを特徴とする。このため、密閉容器に集中応力が作用することを防止し、密閉容器破損を防止するとともに、密閉容器の耐圧力を向上させることが可能となる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、密閉容器の両側端を膨出させたことを特徴とする。このため、密閉容器に集中応力が作用することを防止し、密閉容器破損を防止するとともに、密閉容器の耐圧力を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る有機物処理装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(有機物処理装置の構造)
図1に本発明の有機物処理装置100の説明図を示す。本発明の有機物の処理装置100は、主に密閉容器1、攪拌羽根部材2、水蒸気生成装置3、過熱装置4、回転力発生手段5とから構成されている。詳細に付いては、順次説明する。
【0027】
密閉容器1は、本実施形態では、円筒形状で両端が閉塞された形状をしている。本実施形態では、さらに、密閉容器1の両側端を膨出させている。このように構成したのは、密閉容器1内を加圧した場合であっても、密閉容器1に集中応力が作用することを防止し、密閉容器1の破損を防止するとともに、密閉容器1の耐圧力を向上させるためである。密閉容器1の形状は、この形状に限定されないが、後述するように、攪拌羽根部材2で均一に攪拌するために、少なくとも、攪拌羽根部材2の回転軸中心よりも下側が半円形状であることが好ましい。
【0028】
密閉容器1の上部には、密閉容器1の内外を連通する投入口1aが形成されている。この投入口1aには、投入口1aを閉塞する蓋体1bが、開閉可能に取り付けられている。投入口1a及び蓋体1bの少なくとも一方には、パッキンが取り付けられ、蓋体1bを閉じた場合には、蓋体1bと投入口1aとが密着して、密閉容器1の気密性が保たれるようになっている。有機物を密閉容器1内に投入する際には、蓋体1bを開けて、投入口1aから、有機物を密閉容器1内に投入する。
【0029】
密閉容器1の下部には、密閉容器の内外を連通する排出口1cが形成されている。この排出口1cには、排出口1cを閉塞する蓋体1dが、開閉可能に取り付けられている。排出口1c及び蓋体1dの少なくとも一方には、パッキンが取り付けられ、蓋体1dを閉じた場合には、蓋体1dと排出口1cとが密着して、密閉容器1の気密性が保たれるようになっている。有機物の分解処理が終了し、当該処理物を密閉容器1から排出するには、蓋体1dを開けて、排出口1cから処理物を外部に排出する。
【0030】
密閉容器1には、密閉容器1の内外を連通する、主排気管11、従排気管12が設けられている。主排気管11には、主排気弁13が設けられている。主排気弁13は、主排気管11を閉塞/開放するものである。従排気管12には、従排気弁14が設けられている。従排気弁14は、従排気管12を閉塞/開放するものである。本実施形態では、主排気弁13及び従排気弁14は、電磁弁である。
【0031】
密閉容器1には、安全弁16が設けられている。この安全弁16は、密閉容器1が所定以上の圧力に達した場合に、開放して、密閉容器1が所定以上の圧力にならないようにするための弁である。なお、本実施形態では、安全弁16は、1.8MPaの圧力で作動して開放するようになっている。安全弁16には、機械式、電磁式の両方が含まれる。
【0032】
密閉容器1の両端の側板には、密閉容器1の内外を連通する支軸穴1fが形成されている。本実施形態では、支軸穴1fは、側板の中心に形成されている。この支軸穴1fには、軸受部材20が取り付けられている。軸受部材20は、ボールベアリング等の軸受と、パッキンを有している。密閉容器1の支軸穴1f及び軸受部材20を攪拌羽根部材2の支軸2aが貫通して、攪拌羽根部材2が軸受部材20に回転自在に取り付けられている。軸受部材20のパッキンには、攪拌羽根部材2の支軸2aが貫通して、密閉容器1の気密性が保たれるようになっている。
【0033】
攪拌羽根部2は、支軸2aと、この支軸2aに放射状に植設された、羽根部2bとから構成されている。羽根部2bは、支軸2aの長手方向に一定間隔をおいて、複数取り付けられている。隣接する羽根部2bは、支軸2aの回転方向に所定角度をおいて、取り付けられている。本実施形態では、支軸2aの回転中心から、羽根部2bの先端までの長さ寸法は、密閉容器1の下部内壁面の曲率半径よりも僅かに小さい寸法になっている。このように構成することにより、密閉容器1内に収納された有機物が、満遍なく、均一に攪拌され、当該有機物が全く攪拌されない部分が生じることや、有機物が密閉容器1の内壁面に固着することを防止している。
【0034】
攪拌羽根部材2の支軸2aの両端は、密閉容器1の両側方に配設された、ピローブロック21で、回転自在に軸支されている。このように、ピローブロック21でも、支軸2aを軸支することにしたのは、軸受部材20に過度な応力が作用して、軸受部材20が破損することを防止するためである。
【0035】
攪拌羽根部材2の支軸2aの一端側には、攪拌羽根部材2に回転力を付与する、回転力発生手段5が設けられている。本実施形態では、回転力発生手段5は、電導モータ26と、減速機27とから構成されている。減速機27から延びる回転軸27aと、攪拌羽根部材2の支軸2aの一端は、チェーンカップリング等のカップリング部材29で接続されている。
【0036】
支軸2aには、蒸気流路管2cが設けられている。本実施形態では、支軸2aの一端から、支軸2a内に、蒸気流路管2cを配設し、密閉容器1内で、蒸気流路管2cを、支軸2aの外側に出して、密閉容器1内では、蒸気流路管2cを支軸2aの外周面に取り付けている。支軸2aには、一定間隔をおいて、蒸気吐出管2dが取り付けられている。この蒸気吐出管2dは、一端が、蒸気流路管2cに連通し、他端が、密閉容器1内に開放している。このような構成により、蒸気流路管2cに供給された水蒸気は、蒸気吐出管2dから、密閉容器1内に吐出されるようになっている。なお、支軸2aをパイプ形状にして、支軸2aに、水蒸気が流通する流路にする構成にしても差し支えない。
【0037】
水蒸気生成装置3は、ボイラー等で構成され、加熱水蒸気を精製するものである。この加熱水蒸気は、100℃〜500℃・0.7〜1MPaの蒸気であり、乾燥蒸気及び飽和蒸気を含む。
【0038】
図1に示されるように、水蒸気生成装置3には、配管31が接続している。この配管31に水蒸気生成装置3が生成した加熱水蒸気が供給されるようになっている。
【0039】
配管31には、配管32と配管33が接続している。言い換えると、配管31はその先端で2分岐している。配管32は、配管34に接続している。配管34は、スイベルジョイント40を介して、蒸気流路管2cに接続している。このようにスイベルジョイント40を使用することにより、加熱水蒸気及び乾燥過熱水蒸気が漏出することなく、回転する攪拌羽根部2の支軸2aに設けられた蒸気流路管2cに加熱水蒸気及び乾燥過熱水蒸気を確実に供給することができ、後述するように、密閉容器1を密閉した状態で、加熱水蒸気を供給した場合であっても、密閉容器1内の圧力を高く加圧することが可能となる。
【0040】
配管32には、蒸気生成装置3側から順番に、圧力コントロール弁51、圧力検出部52、ストップ弁53が設けられている。
【0041】
圧力コントロール弁51は、圧力コントロール弁51の下流の配管32の圧力、つまり、蒸気流路管2cの圧力を調整する弁である。
【0042】
圧力検出部52は、配管32内の圧力を検出する装置である。
【0043】
ストップ弁53は、配管32の流路を遮断する弁である。本実施形態では、ストップ弁53は、電磁弁である。
【0044】
配管33の途中には、ストップ弁62が設けられている。ストップ弁62は、配管33の流路を遮断する弁である。本実施形態では、ストップ弁62は、電磁弁である。
【0045】
配管33は、セパレータ61に接続している。セパレータ61は加熱水蒸気と共に同伴される水滴や浮遊物を分離する装置である。セパレータ61は、配管35を介してスチームトラップ63に接続している。セパレータ61で分離された、水滴及び浮遊物は、配管35内を流通して、スチームトラップ63に導かれるようになっている。
【0046】
スチームトラップ63は、水蒸気を漏らさずに、水滴及び浮遊物のみを外部に排出する装置である。なお、本実施形態では、スチームトラップ63が破損した場合に備えて、ストップ弁64を配管35に接続している。スチームトラップ63が破損した場合には、ストップ弁64を開放して、水滴及び浮遊物を外部に排出する。
【0047】
セパレータ61と過熱装置4とは、配管36を介して接続している。配管には、セパレータ61側から順番に、減圧弁66、圧力検出部67、ストップ弁68が設けられている。
【0048】
減圧弁66は、過熱装置4に供給される加熱水蒸気の圧力を減圧する装置である。本実施形態では、加熱水蒸気を0.1〜0.3MPaに減圧している。このように、減圧弁で、加熱水蒸気を減圧するのは、過剰な水分が過熱装置4に供給されることを防止するためである。
【0049】
圧力検出部67は、配管36内の圧力を検出する装置である。
【0050】
ストップ弁68は、配管36の流路を遮断し、過熱装置4に供給される加熱水蒸気を遮断する弁である。
【0051】
過熱装置4は、加熱水蒸気をさらに加熱して、多大な潜熱を与えて、乾燥過熱水蒸気を生成する装置である。ここで、乾燥過熱水蒸気とは、乾き度が100%である蒸気(飽和液を含まない蒸気、つまり、全てが気相の蒸気)である。乾燥過熱水蒸気生成のための過熱装置4の前段にセパレータ61を設けて、水滴を除去することにしたので、過剰な水分が過熱装置4に供給されないようになっている。本実施形態では、110℃〜500℃・0.1〜0.3MPaの乾燥過熱水蒸気を生成する。過熱装置4は、電磁誘導加熱式、電熱線加熱式、化石燃料を使用したバーナー加熱式が含まれる。本発明では、過熱装置4は、電磁誘導加熱式であることが好ましい。
【0052】
電磁誘導加熱式の過熱装置4は、管体、発熱体、誘導加熱コイル、高周波電源装置とから構成されている。発熱体は、金属薄板を多数積層したものや、多孔質のセラミックス表面に金属層を形成したものであり、体積に比べて表面積が著しく大きいものである。この発熱体は、管体内部に配設されている。誘導加熱コイルは、管体の外部に配設されている。高周波電源装置は、誘導加熱コイルに高周波電流を供給するものである。電磁誘導加熱コイルに、高周波電流を流すと、誘導加熱コイルから交番磁束が発生し、発熱体に渦電流が流れ、発熱体に流れる渦電流の電気抵抗熱により、発熱体が発熱する。発熱体は、120℃まで加熱することが可能となっている。前述したように、発熱体の表面積は大きいので、管体を流通する加熱水蒸気が接触する面積が大きく、瞬時に加熱されて、乾燥過熱水蒸気が生成される。また、発熱体は、表面積に対して体積が小さいので、熱容量が小さく、このために、発熱体を瞬時に昇温・降温させることができ、前述したように、発熱体の表面積は大きいので、過熱装置4で生成する乾燥過熱水蒸気の温度を瞬時に、昇温・降温することができ、温度制御が容易である。
【0053】
過熱装置4は、配管37を介して配管34に接続している。配管37の途中には、ストップ弁69が設けられている。配管37の流路を遮断し、配管34(つまり蒸気流路管2c)に供給される乾燥過熱水蒸気を遮断する弁である。
【0054】
80は、制御装置であり、水蒸気生成装置3、過熱装置4、主排気弁13、従排気弁14、電導モータ26、圧力コントロール弁51、ストップ弁53、ストップ弁62、ストップ弁64、ストップ弁68、ストップ弁69を集中制御するものである。
【0055】
(本発明の有機物の処理方法)
以下、本発明の有機物の処理方法について、説明をする。まず、蓋体1bを開けて、投入口1aから分解処理する有機物を投入する。本発明の有機物処理装置で分解処理される有機物には、木質バイオマス、畜糞、下水汚泥、都市ごみ、生ごみ、家畜や魚の骨・内臓、樹脂製注射器等の石油由来のプラスチック、RPF等、一般廃棄物、産業廃棄物等の廃棄物や、エビ・蟹の殻や穀物等の有機物を含む。つまり、金属、セラミックス(ガラス、陶器等を含む広義のセラミックス)以外のものである。
【0056】
次に、主排気弁13及び従排気弁14を閉じて、密閉容器1を完全に密閉した状態(器気密状態)にする。また、ストプ弁62及びストップ弁69を閉じて、水蒸気生成装置3が生成する加熱水蒸気が、配管34から蒸気流路管2cに流れるような流路を形成する。この状態で、電導モータ26を作動させて、攪拌羽根部材2を回転させ、更に、水蒸気生成装置3を作動させて、加熱水蒸気を蒸気流路管2cに供給する。すると、蒸気吐出管2dから、加熱水蒸気が密閉容器1内に吐出する。密閉容器1内は、密閉されているので、密閉容器1内の圧力は、安全弁16が作動する圧力まで高くなる。なお、本実施形態では、安全弁16は、1.8MPaで作動するようになっている。安全弁16が作動すると、安全弁16から水蒸気と同伴して、密閉容器1内の空気が外部に排出される。このため、密閉容器1内は、低酸素若しくは無酸素雰囲気になる。
【0057】
密閉容器1は、140℃〜180℃の高温、1.8MPaの高圧(大気圧の18倍)になる。密閉容器1内の有機物は、加熱水蒸気が有している潜熱及び顕熱により加熱される。高温高圧下で有機物は、羽根部2bで攪拌されて、分解される。密閉容器1内は、高温高圧であるので、亜臨界水が生成され、この亜臨界水の水熱反応により、有機物が溶解・加水分解され、例えば、セルロースやデンプンがブドウ糖に、タンパク質がアミノ酸に分解されて、低分子化し、固形分が液状化される。このため、牛の頭等の大型の有機物であっても、分解することができる。前記したように密閉容器1内は低酸素若しくは無酸素状態であるので、密閉容器1内の有機物が酸化することがない。分解処理中の有機物は、羽根部2bで攪拌されるので、当該有機物が、満遍なく、均一に分解処理される。処理する有機物の性状や量にもよるが、10分〜1時間の間、攪拌しながら、有機物を分解処理する。
【0058】
有機物が十分に分解した場合には、主排気弁13を開放して、密閉容器1内を略常圧(大気圧)にする。さらに、ストップ弁53を閉じるとともに、ストップ弁62、ストップ弁68及びストップ弁69を開放して、水蒸気生成装置3から、配管31、配管33、配管36、過熱装置4、配管37、配管34、蒸気流路管2cに連通する流路が形成される。電導モータ26を作動させて、攪拌羽根部材2を回転させる。更に、水蒸気生成装置3を作動させて、加熱水蒸気を過熱装置4に供給する。過熱装置4で生成された乾燥過熱水蒸気は、蒸気流路管2cに流入し、蒸気吐出管2dから、密閉容器1内に吐出される。
【0059】
主排気弁13は、開放しているが、連続的に乾燥過熱水蒸気が蒸気吐出管2dから、密閉容器1内に吐出されるので、主排気弁13から、外気が密閉容器1内に侵入することがなく、密閉容器1内は、低酸素若しくは無酸素雰囲気状態が維持される。
【0060】
分解された有機物は乾燥過熱水蒸気が有している、多大な潜熱により加熱され、分解された有機物に含まれる水分が、気化し、主排気管11から排出される。前記したように密容器1内は、低酸素若しくは無酸素雰囲気状態であるので、乾燥処理中の有機物が酸化することがない。乾燥処理中の有機物は、羽根部2bで攪拌されるので、当該有機物が満遍なく、均一に乾燥処理される。処理する有機物の性状や量にもよるが、10分〜1時間の間、攪拌しながら、有機物を乾燥処理する。
【0061】
有機物が十分に乾燥処理され、有機物の処理が終了した場合には従排気弁14を開放してから、蓋体1dを開けて、処理後の有機物を、排出口1cから排出する。このように従排気弁14を開放してから、蓋体1dを開けることにしたのは、故障等により主排気弁13が閉塞し、密閉容器1内が常圧以上の状態で、蓋体1dを開けると、排出口1cから、勢い良く処理後の有機物が噴出して、危険だからである。
【0062】
なお、本実施形態では、蓋体1dを開放した状態で、攪拌羽根部材2を回転し続けて、処理後の有機物を、排出口1cから排出することにしている。
【0063】
本発明では、加熱蒸気や乾燥過熱水蒸気を支軸2aに取り付けた蒸気吐出管2dから密閉容器1内に吐出することにしたので、有機物を攪拌しながら、満遍なく、均一に加熱蒸気や乾燥過熱水蒸気を供給することが可能となり、有機物の分解処理及び乾燥処理を促進し、短時間で且つ確実に行なうことが可能となる。
【0064】
本発明の有機物処理装置100で処理された、有機物は、パウダー状であり、また、低分子化しているので、吸湿することがない。これは、処理後の有機物が、大気中の水分を吸水しない方が安定な状態に、有機物の組成が変化しているからである。本発明の有機物の処理装置100で処理した有機物の含水率は、50%〜5%となっていて、吸湿することなく、低含水率に状態が維持されるので、微生物が活動することができず、処理後の有機物が、発酵や腐敗することがない。このため、従来、肥料としてしか使用することができなかった、生ごみを処理した場合には家畜の飼料として使用することができ、特別なストックヤードでなくても、長期保存することが可能となる。
【0065】
魚を解体した後に排出される、魚の頭・骨・内蔵を、本発明の有機物処理装置100で処理した場合には、パウダー状になり、稚魚のえさとして使用することができる。
【0066】
また、エビや蟹等の甲殻類の殻を、本発明の有機物処理装置100で処理した場合には、パウダー状になりアミノ酸等人体に有益な栄養素を多量に含む健康食品を生成することが可能となる。
【0067】
以上、現時点において最も、実践的であり、且つ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う有機物処理方法及び有機物処理装置もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0068】
1 密閉容器
1a 投入口
1b 蓋体
1c 排出口
1d 蓋体
1f 支軸穴
2 攪拌羽根部材
2a 支軸
2b 羽根部
2c 蒸気流路管
2d 蒸気吐出管
3 水蒸気生成装置
4 過熱装置
5 回転力発生手段
11 主排気管
12 従排気管
13 主排気弁
14 従排気弁
16 安全弁
20 軸受部材
21 ピローブロック
26 電動モータ
27 減速機
29 カップリング部材
31 配管
32 配管
33 配管
34 配管
35 配管
36 配管
37 配管
40 スイベルジョインント
51 圧力コントロール弁
52 圧力検出部
53 ストップ弁
61 セパレータ
62 ストップ弁
63 スチームトラップ
64 ストップ弁
66 減圧弁
67 圧力検出部
68 ストップ弁
69 ストップ弁
80 制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を、排気弁が設けられた密閉容器に収納し、排気弁を閉じた状態で密閉容器に加熱水蒸気を導入し、有機物を加圧・加熱しながら攪拌して分解し、
排気弁を開放して、密閉容器内を略常圧にした状態で、密閉容器に乾燥過熱水蒸気を導入して、分解後の有機物を無酸素若しくは、低酸素雰囲気下で加熱しながら攪拌し、有機物に含まれる水分を、気化して排気弁から排出することにより除去することを特徴とする有機物処理方法。
【請求項2】
内部を密閉/開放する排気弁が設けられた密閉容器と、
密閉容器内に回転自在に軸支された攪拌羽根部材と、
攪拌羽根部材に回転力を付与する回転力発生手段と、
密閉容器または過熱装置に供給する加熱水蒸気を生成する水蒸気生成装置と、
水蒸気生成装置が生成した加熱水蒸気をさらに加熱して、乾燥過熱水蒸気を生成し密閉容器内に供給する過熱装置と、
を有することを特徴とする有機物処理装置。
【請求項3】
有機物を密閉容器内に投入後所定時間は、排気弁を閉塞した状態で、水蒸気生成装置が生成した加熱水蒸気を密閉容器に供給し、所定時間経過後は、排気弁を開放した状態で、過熱装置が生成する乾燥過熱水蒸気を密閉容器に供給する制御を行なう制御手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の有機物処理装置。
【請求項4】
過熱装置は、
水蒸気生成装置が生成した加熱水蒸気が導かれ、乾燥過熱水蒸気を排出する管体と、
管体内に配設された発熱体と、
管体の外側に配設された誘導加熱コイルと、
誘導加熱コイルに高周波電流を供給する高周波電源装置とから構成され、
誘導加熱コイルが発する交番磁束により、発熱体に渦電流を流して、発熱体を発熱させることにより、管体内を流通する水蒸気を、加熱して乾燥加熱水蒸気を生成するように構成した電磁誘導加熱式であることを特徴とする請求項2または3記載の有機物処理装置。
【請求項5】
攪拌羽根部材の支軸に、蒸気流路を設けるとともに、この蒸気流路から、密閉容器内に開放する蒸気吐出口を蒸気流路に形成し、
水蒸気生成装置が生成する加熱水蒸気及び過熱装置が生成する乾燥過熱水蒸気を、蒸気流路に供給して、蒸気吐出管から、密閉容器内に供給するように構成したことを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の有機物処理装置。
【請求項6】
蒸気生成装置が生成する加熱蒸気及び過熱蒸気生成装置が生成する乾燥過熱水蒸気が流通する流路を、スイベルジョイントを介して、攪拌羽根の支軸に設けられた蒸気流路に接続したことを特徴とする請求項5記載の有機物処理装置。
【請求項7】
排気弁を主排気弁と従排気弁とから構成したことを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載の有機物処理装置。
【請求項8】
密閉容器の少なくとも下部の断面形状を半円形状にするとともに、当該半円中心に攪拌羽根部材の支軸を回転自在に取り付け、
攪拌羽根部材の回転軸中心と、攪拌羽根部材の羽根先端までの寸法を、密閉容器の下部内面の曲率半径よりも僅かに小さい寸法にしたことを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載の有機物処理装置。
【請求項9】
密閉容器の断面形状を円形状にしたことを特徴とする請求項2ないし8のいずれかに記載の有機物処理装置。
【請求項10】
密閉容器の両側端を膨出させたことを特徴とする請求項9記載の有機物処理装置。


【図1】
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【公開番号】特開2013−91015(P2013−91015A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233520(P2011−233520)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(511258101)
【出願人】(511258145)
【Fターム(参考)】