説明

有機物分解処理装置

【課題】従来の過熱水蒸気を用いる方式や接触水素化反応を用いる方式の装置とは異なる方法で、これらの方式と同等かそれ以上の分解性能を有する、有機物の分解処理装置を提供する。
【解決手段】有機物分解処理装置1は、有機物分解活性ガスの入口部11と排気ガスの出口部12とを有し被処理物100を収容する中空状の本体10と、空気を下記の化学式にて示される触媒21に接触させて有機物分解活性ガスを生成する有機物分解活性ガス生成手段20と、有機物分解活性ガスを入口部11を通して本体10内部に送りこむ有機物分解活性ガス導入手段30と、被処理物100の表面を少なくとも300℃以上に加熱する加熱手段40とを備えた構成とした。
NaX3Al6(BO33Si1618(OHF)4
(式中、XはMg,Fe,Li,Al,Mn,Caのいずれか)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を分解処理する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、減容化、混在金属の回収、無害化、エネルギーの回収等のために、有機物を分解する装置が、種々提案されている(例えば特許文献1〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−209314号公報
【特許文献2】特開2001−208311号公報
【特許文献3】特開平10−165803号公報
【特許文献4】特開2009−263263号公報
【特許文献5】特開2010−195895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、過熱水蒸気を用いる方式や接触水素化反応を用いる方式のこれらの装置とは全く異なる方法で、これらの装置と同様かそれ以上の分解性能を有する、有機化合物の分解処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明の有機物分解処理装置では、有機物分解活性ガスの入り口部と排気ガスの出口部とを有し被処理物を収容する中空状の本体と、空気を下記の化学式にて示される触媒に接触させて有機物分解活性ガスを生成する有機物分解活性ガス生成手段と、有機物分解活性ガスを入り口部を通して本体内部に送りこむ有機物分解活性ガス導入手段と、被処理物の表面を少なくとも300℃以上に加熱する加熱手段を備えたことを特徴としている。
NaX3Al6(BO33Si1618(OHF)4
(式中、XはMg,Fe,Li,Al,Mn,Caのいずれか)
【0006】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の有機物分解処理装置において、触媒を本体内部にも配置したことを特徴としている。
【0007】
請求項3に係る発明の有機物分解処理装置では、有機物分解活性ガスの入り口部と排気ガスの出口部とを有し被処理物を収容する中空状の本体と、有機物分解活性ガスを生成する有機物分解活性ガス生成手段と、有機物分解活性ガスを入り口部を通して本体内部に送りこむ有機物分解活性ガス導入手段と、被処理物の表面を少なくとも300℃以上に加熱する加熱手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項4に係る発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の有機物分解処理装置において、本体の内底面から離間して配置され、内底面との間が有機物分解活性ガスの通路になっており、多数の通風小穴を有する被処理物載せ板と、本体の内壁から離間して被処理物を水平方向に囲むように配置され、内壁との間が有機物分解活性ガスの通路になっており、多数の通風小穴を有する反射板をさらに備えたことを特徴としている。なお、ここでいう、多数の通風小穴を有するという概念には、金網状のものも含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る有機物分解処理装置によれば、被処理物である有機物を分解処理し、炭化、灰化を経て、最終的には分子化することができる。分解処理にあたって有害物質を出すこともない。これにより、様々な有機物系廃棄物を減容化することができる。有機物系廃棄物は、例えば食品残さとプラスチックごみ等のように複数の種類が混在していてもよい。法的に処理基準が厳しい紙おむつなどの医療系ごみも無害化して減容することができる。また、有機物と金属の複合製品から金属を回収することができる。分解途中の灰分を回収して研磨剤の原料として使用することもできる。
【0010】
本発明に係る有機物分解処理装置が有機物を分解処理し、炭化、灰化を経て、最終的には分子化することができる原理について、完全に明らかになっているわけではないが、発明者らは、次のように考えている。
【0011】
有機物を分解するためには、有機物の基本骨格であるC−C結合(結合エネルギー約347kJ/mol)やC−H結合(結合エネルギー約415kJ/mol)、あるいは、C=C結合のπ結合(結合エネルギー約285kJ/mol)などの結合を切断しなければならない。
【0012】
この結合を切断するためには、結合エネルギーよりも高い解離エネルギーが必要となるが、本発明においては、空気を下記の化学式にて示される触媒に接触させて生成した何らかの有機物分解活性ガスと熱エネルギーの相乗作用によって、それを実現している。
NaX3Al6(BO33Si1618(OHF)4
(式中、XはMg,Fe,Li,Al,Mn,Caのいずれか)
【0013】
この有機物分解活性ガスとしては、活性酸素種などが考えられる。活性酸素種には、一重項酸素、過酸化水素、オゾンなどがあるが、例えば、過酸化水素の場合、酸化電位は1.77Vであり、解離エネルギーは319kJ/molである。これは、C=C二重結合のπ結合を切断することができる値であり、C−C結合を切断するエネルギーよりも僅かに低い程度である。
【0014】
また、一般に寿命が極めて短いと言われているが、ヒドロキシルラジカルや、水素ラジカルの可能性もある。いずれにしても、これらのうちの一つまたは複数と熱エネルギーの相乗効果によって有機物を分解させていると推察する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】有機物分解処理装置を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明である有機物分解処理装置を具体化した実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0017】
実施例の有機物分解処理装置1の構成について、図1を参照して説明する。有機物分解処理装置1は、主に、本体10と、有機物分解活性ガス生成手段20と、有機物分解活性ガス導入手段30と、加熱手段40と、被処理物載せ板50と、反射板60とで構成される。
【0018】
本体10は、中空状で、外観は略直方体の形状をしており、下部側面に入口部11を有し、上部に出口部12を有している。本体10には被処理物100が収容される。
【0019】
有機物分解活性ガス生成手段20は、本体10の入口部11に連結された配管16に接続されている。有機物分解活性ガス生成手段20は、配管16を一回り太くした円筒形状で、内部に下記の化学式にて示される触媒21を収納している。
NaX3Al6(BO33Si1618(OHF)4
(式中、XはMg,Fe,Li,Al,Mn,Caのいずれか)
【0020】
触媒21の成分含有率を表1に示す。下記成分含有率は、原材料における質量%である。
【0021】
【表1】

【0022】
また、触媒21は、生活用水中でも大気中でも表1に示す成分が溶出せず、酸性に対してもアルカリ性に対しても安定しており、300℃で表1に示す成分が溶出しないものである。
【0023】
有機物分解活性ガス生成手段20の配管16と反対側には、配管17が接続されている。配管17側から送り込まれた空気が触媒21に接触するようになっている。
【0024】
有機物分解活性ガス導入手段30は、電動モータの回転軸にファンが取り付けられた一般的な小型の送風機である。これが配管13の末端に取り付けられている。これにより、外部から取り込んだ空気を有機物分解活性ガス生成手段20に送りこみ、有機物分解活性ガス生成手段20で生成された有機物分解活性ガスを入口部11から本体10の内部に送りこむことができる。
【0025】
被処理物載せ台50は、クリンプ織金網である。被処理物載せ台50に溶接された4本の脚の先が本体10内部の底面に溶接され、本体10の内底面から離間して固定されている。これにより、被処理物載せ台50の下が有機物分解活性ガスの通路になっている。被処理物載せ台50の上に被処理物100が載せられる。被処理物載せ台50の下方には、触媒21が配置されている。
【0026】
反射板60は、多数の丸穴を有する板、いわゆるパンチングメタルである。反射板60に溶接された4本の脚の先が本体10の内壁に溶接され、本体10の内壁から離間して被処理物100を水平方向に4方向から囲むように固定されている。つまり、反射板60は、4枚である。これにより、反射板60と内壁との間が有機物分解活性ガスの通路になっている。
【0027】
加熱手段40は、一般的な近赤外線ハロゲンヒータで、被処理物100の上方と、被処理物載せ台50の下方に固定されている。加熱手段40は、被処理物100の表面を少なくとも300℃以上に加熱する能力を有している。なお、別の実施形態として、被処理物が生ごみ等水分を含んでいる場合は、マイクロ波加熱も好適である。また、被処理物載せ台50を加熱するヒータを用いるのも有効である。配管17側から送り込む空気を加熱する方法や有機物分解活性ガス生成手段20で生成された有機物分解活性ガスを入口部11から本体10の内部に送りこむまでに加熱する方法も採用することができる。
【0028】
本体10の入口部11から入った有機物分解活性ガスは、被処理物載せ台50の下、反射板60と本体内壁との間を通過しながら、金網の間や丸穴を通って被処理物100の表面に接するようになっている。その後、有機物分解活性ガスは、出口部12を通して本体10の外部に排出される。なお、別の実施形態として、この排出される有機物分解活性ガスを再度配管17側から送り込んでもよい。
【0029】
次に、有機物分解処理装置1の使用方法について説明する。被処理物載せ台50に被処理物100を載せ、加熱手段40によって、被処理物100の表面を少なくとも300℃以上になるまで加熱する。その後、有機物分解活性ガス導入手段30を作動させる。被処理物100の分解が進むと、発熱反応がおこるため、被処理物100の表面温度が300℃を下回らないように加熱手段40の出力を調整すれば、電力を節約することができる。被処理物100の分解が完了するまで、これを維持する。
【0030】
また、被処理物100の分解過程の途中で、灰分を取りだし、これを研磨剤の原料とすることも可能である。この場合、被処理物100は、様々な有機物の混在物ではなく、できるだけ単一の有機物であることが望ましい。例えば、自動車の配線に使用されるワイヤーハーネスから電線を抜いたものなどが好適である。
【0031】
なお、実施の形態は、前記実施例に限定されるものではなく、例えば、被処理物載せ台50と反射板60をなくし、被処理物100をかご状の構造物に入れ、上から吊るす形態のように適宜変更して実施することもできる。また、水素ラジカルを発生させる装置(例えば、特開2008−23057号公報)やヒドロキシラジカルを発生する光触媒(例えば、特開2010−187798号公報)が多数提案されており、これらを有機物分解活性ガス生成手段とすることもできる。
【0032】
(実験例)
つぎに、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。実験方法は、次のとおりである。まず、有機物分解処理装置1に、下記被処理物を収容し、加熱手段40により加熱する。被処理物の表面温度が300℃になったところで、有機物分解活性ガス導入手段30を作動させ、外部から取り込んだ空気を有機物分解活性ガス生成手段20に送りこみ、有機物分解活性ガス生成手段20で生成された有機物分解活性ガスを入口部11から本体10の内部に送りこむ。処理時間は、この有機物分解活性ガス導入手段30を作動させた時点から計測する。処理中は、被処理物の表面温度が300℃を維持するように加熱手段40を作動または停止させる。被処理物の体積が十分小さくなり、見かけ上体積の縮小が止まったところで、処理を終了する。以下が実験結果である。
【0033】
【表2】

【0034】
上記のように、有機物分解処理装置1は、有機物を効率的に低エネルギーで分解できることが確認できた。なお、被処理物の加熱を行わずに有機物分解活性ガスを本体内に送った実験では、全ての被処理物で外観および質量の変化は見られなかった。また、被処理物の加熱のみを行った実験では、ペットボトルやプラスチック系ごみで変形が見られたほか一部の被処理物で変色が見られたが、質量はほとんど変化しなかった。このことから、被処理物の表面を加熱し、かつ、有機物分解活性ガスを接触させたときに有機物を分解できることが確認された。
【符号の説明】
【0035】
1:有機物分解処理装置
10:本体 11:入口部 12:出口部
16:配管 17:配管
20:有機物分解活性ガス生成手段 21:触媒
30:有機物分活性ガス導入手段
40:加熱手段
50:被処理物置き台
60:反射板
100:被処理物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物分解活性ガスの入口部と排気ガスの出口部とを有し被処理物を収容する中空状の本体と、
空気を下記の化学式にて示される触媒に接触させて前記有機物分解活性ガスを生成する有機物分解活性ガス生成手段と、
前記有機物分解活性ガスを前記入口部を通して前記本体内部に送りこむ有機物分解活性ガス導入手段と、
前記被処理物の表面を少なくとも300℃以上に加熱する加熱手段と、
を備えたことを特徴とする有機物分解処理装置。
NaX3Al6(BO33Si1618(OHF)4
(式中、XはMg,Fe,Li,Al,Mn,Caのいずれか)
【請求項2】
前記触媒を本体内部にも配置したことを特徴とする請求項1に記載の有機物分解処理装置。
【請求項3】
有機物分解活性ガスの入口部と排気ガスの出口部とを有し被処理物を収容する中空状の本体と、
前記有機物分解活性ガスを生成する有機物分解活性ガス生成手段と、
前記有機物分解活性ガスを前記入口部を通して前記本体内部に送りこむ有機物分解活性ガス導入手段と、
前記被処理物の表面を少なくとも300℃以上に加熱する加熱手段と、
を備えたことを特徴とする有機物分解処理装置。
【請求項4】
前記本体の内底面から離間して配置され、前記内底面との間が前記有機物分解活性ガスの通路になっており、多数の通風小穴を有する被処理物載せ板と、
前記本体の内壁から離間して前記被処理物を水平方向に囲むように配置され、前記内壁との間が前記有機物分解活性ガスの通路になっており、多数の通風小穴を有する反射板と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機物分解処理装置。




【図1】
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【公開番号】特開2012−217964(P2012−217964A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88650(P2011−88650)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(310024125)
【Fターム(参考)】