説明

有機物系植物栽培用素材の製造方法。

【課題】
蓄糞、鶏糞などの家畜排泄物を主原料として有効利用し、化学肥料に依存することなく、各種の栽培植物および使用時期に応じた適正な機能を持った栽培用素材を提供する。
【解決手段】
蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹を燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として1〜9、ゼオライト粉を重量で2〜20、およびかに殻などの甲殻類外皮を重量で1〜10加えて堆肥化処理する。この配合割合、堆肥化処理時の最高温度の調整、超好熱菌の添加の有無などの堆肥化処理条件、
堆肥化後のEM菌、竹の抽出液などの添加物条件によって、栽培植物の種類(葉菜、根菜、果菜および果樹)および使用時期(苗床用、元肥用、追肥用)の各々に適した栽培用素材を作る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜排泄物などを原料として植物栽培用素材、すなわち肥料、堆肥、腐植土、腐養土、培養土、土壌改良材などと呼ばれているものを、各種栽培植物に適した安定した効能を持ち、かつ副作用の少ないものにするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培のために重要なものの一つが土壌である。土壌は、植物に対して、水の供給、肥料分の供給、植物と共生する微生物などが活動する場の提供などの役割をする。ある一定条件以上の肥料効果を持つ土壌への添加剤が肥料と呼ばれ、一方、肥料効果はその条件を満足しないが、植物の栽培に効果のあるものが堆肥、腐植土、土壌改良材などさまざまな名称で呼ばれている。本発明ではこれらの土壌の条件を整えるのに用いられるものを総称して植物栽培用素材と呼ぶことにする。
植物栽培のために土壌に要求される成分としては、肥料の3要素としてのチッソ、リン酸、カリ、2次要素としてのマグネシウム、カルシウム、イオウ、さらには微量必要元素としてマンガン、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、塩素などが知られている。これらは必要量以上存在すればいいというのではなく、それぞれ適正量が、あるバランスをもって存在していることが要求される。また、必要な供給成分の量は、栽培する植物とその成長時期によって異なる。
従来の肥料の中心をなしてきた化学肥料は、必要とする元素を供給するという意味では的確な効果を有するが、土壌に肥料に随伴していた酸性成分などを残存することによる土壌酸性化などの問題を伴なっている。したがって、長期的な視点から見れば出来るだけ、その使用量を減らしてゆくことが望まれる。
これに対して、家畜糞などを発酵させて成分条件を調整したものが堆肥である。適正な条件で作られた堆肥はチッソ、りん、カリウムなどの肥料成分を含むものとして、また土壌の物理特性を改善するものとして用いられる。しかし、堆肥化時の発酵の挙動は原料の組成や温度条件などの影響を受ける。発酵が不十分なまま得られた堆肥を土壌に施用すると、土壌中でバクテリアが急激に繁殖することによって作物の根が障害を受けるという根やけという現象を起こしたり、あるいは窒素飢餓を引き起こすおそれがある。このように堆肥は品質がばらつきやすいので、一般的には農家では使いにくいという問題があり、有機農法用として拡大が期待されながらも、化学肥料なかなかに取って代われないというのが現状である。また、堆肥の製造条件によっては、雑草などの種や有害な細菌類の残存が問題になる。最近、廃棄物の有効利用という観点からも、家畜糞の有効利用の拡大が要望されているが、上記の課題を克服できていない状況にあり現在の堆肥は製造しても用途を拡大できにくい状況にある。また、最近、バイオベッド農法と呼ばれる、共存する微生物を制御する方法も注目されているが、まだ技術が体系化されていない状況である。
このように、化学肥料の使用量を減らすという目的、および廃棄物を循環利用するという観点から、畜糞、鶏糞のような天然系有機廃棄物を主体として有効利用したものを植物栽培用素材として品質の向上を図り用途を拡大してゆく必要がある。そのために着眼点としては、(1)効果があり、悪影響の少ない添加物の使用、(2)対象植物、使用時期に応じた使用目的に適合した植物栽培用素材の製造条件の選定、(3)有効な微生物の調整法などが挙げられる。
【0003】
これに対して、これまでの蓄糞や鶏糞の堆肥化方法では、温度、好気性発酵の推進のための酸素含有ガスの供給、添加物などが十分に制御されていなかった。特許文献1には、リンゴの絞り滓を混合して蓄糞有機材料を発酵させて堆肥化する方法が示されている。ゼオライトは吸収力、吸着力、脱臭力を利用して、厩肥の消臭、発酵促進材として使用されている。また、堆肥や肥料にまぜて施すと、保肥性やリン酸の利用効率がよく高まることが知られている。特許文献2には園芸栽培用の混合用土に陽イオン置換された人工ゼオライト混合して過剰施肥による肥料焼けや、栽培植物による産出される有機酸を吸着または中和して担子菌類の増殖を抑制し、根腐れを防止する人工ゼオライトの利用法が示されている。
かに殻などの甲殻類外皮は粉砕するとチッソ、リンを含む普通肥料に利用できること、未粉砕でも特殊肥料に使われることが知られている。また特許文献3には、樹木の枝葉を短期間で完熟状態に堆肥化できる方法として、枝葉材に刈芝または雑草、米ぬか、発酵菌および水分を添加して混合攪拌した後、かに殻を添加してから発酵工程に移る方法が示されている。特許文献4には、有機性廃棄物に火山灰、軽石粉末、酸化アルミニウム、酸化鉄、カオリナイト、および酸性白土からなる群から選ばれる1種または2種以上の無機触媒を添加して加熱乾燥処理した後、150〜200℃で8〜40時間 保持する熱処理を行って有機質肥料を製造する方法が示されている。 特許文献5には生ゴミを炭化するステップと、炭化した生ゴミにEM菌を配合するステップを有する肥料生成方法が示されている。特許文献6には、バーク堆肥などの有機質土壌改良材、光合成細菌、菌根菌、根粒菌、放射菌のうちから選ばれるいずれか少なくとも1種からなる植物生育促進用微生物などからなる緑化資材が示されている。特許文献7には、家畜糞を堆肥化過程を経ないで燃焼し、過剰に持ち込まれたチッソを系外に排出し、その過程で発生するエネルギーを発電に活用し、さらに生成した家畜糞燃焼灰と鉱酸を反応された肥料組成物を得る方法が示されている。特許文献8には、土壌の団粒構造化に必要な資材を過不足なく含む土壌改良材として、土壌の粒子をつなぐためのシルト・粘土分を含む泥土や焼却灰などの繋ぎ材料、有機物分解菌などの生育場所となる珪藻土やそれを高熱処理したものなどの多孔質資材、有機物を分解するための分解菌やバクテリアなどの微生物、および堆肥や合成肥料などの有機物を混合し、これにセメント系などの固化材を混入して硬化させ粒状としたものが示されている。草木灰はカリウム、カルシウムなどを含むことから、土壌に全面に梳きこむなどの元肥としての使用、あるいはカリを含むことから追肥として使用することが知られている。しかし、草木灰は、アンモニア性窒素を含んだ肥料と混合使用すると、アンモニアの揮発を促進したり、水溶性リン酸を含んだ肥料と混合すると、リン酸の不溶化を起こすこと、カリウムが過剰になると、カルシウム、マグネシウムの吸収を阻害するなどの過剰障害を起こすことも知られている。また、一般に堆肥化の過程ではアルカリ性が強すぎると微生物の活動を阻害すると考えられていた。また、木炭は多孔質で吸着性を有することから、土壌に添加すると土壌の透水性および保水性の改善、陽イオンの交換能力の向上、有害微生物の吸着固定などの機能を有し、土壌改善効果を持つことが知られている。
【特許文献1】特開2004−196580号公報
【特許文献2】特開2002−84877号公報
【特許文献3】特開2000−239084号公報
【特許文献4】特開2004−168614号公報
【特許文献5】特開2001−302378号公報
【特許文献6】特開2006−20553号公報
【特許文献7】特開2006−297187号公報
【特許文献8】特開2003−327963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、蓄糞、鶏糞などの家畜排泄物を主原料として有効利用し、化学肥料に依存することなく、栽培植物の種類と施肥時期に応じた適正な機能を持った栽培用素材を提供するための方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための具体的手段の第1は、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として1以上、9以下、ゼオライト粉を重量で2以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で1以上、10以下加えて堆肥化処理することである。
【0006】
具体的手段の第2は、0005の方法において,蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として1以上、5以下、ゼオライト粉を重量で2以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で1以上、10以下加えて、最高温度が110℃以上で堆肥化処理して、苗床用に用いられものにすることである。
【0007】
具体的手段の第3は、0005の方法において,蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として1以上、5以下、ゼオライト粉を重量で2以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で1以上、10以下加えて、最高温度が70℃以下で堆肥化処理して、元肥用に用いられるものにすることである。
【0008】
具体的手段の第4は、0005の方法において、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として2以上、7以下、ゼオライト粉を重量で3以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で2以上、10以下加えて、最高温度が70℃以下で堆肥化処理して、葉采の追肥用に用いられるものにすることである。
【0009】
具体的手段の第5は、0005の方法において,蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として3以上、7以下、ゼオライト粉を重量で4以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で3以上、10以下加えて、最高温度が110℃以上、180℃以下で堆肥化処理して、根菜の追肥用に用いられるものにすることである。
【0010】
具体的手段の第6は、0005の方法において,蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として4以上、9以下、ゼオライト粉を重量で3以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で2以上、10以下加えて、最高温度が75℃以上、130℃以下で堆肥化処理して、果菜の追肥用に用いられるものにすることである。
【0011】
具体的手段の第7は、0005において、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として4以上、9以下、ゼオライト粉を重量で3以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で3以上、10以下加えて、最高温度が75℃以上、130℃以下で堆肥化処理して、果樹の追肥用に用いられるものにすることである。
【0012】
具体的手段の第8は、0006,0009〜0011において、さらにマコモ菌などの超好熱菌を加えて、堆肥化処理することである。
【0013】
具体的手段の第9は、0009〜0012において、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100において、鶏糞が30以上を占めることである。
【0014】
具体的方法の第10は、0006,0007,0009〜0013の方法によって堆肥化処理後のものに、EM菌などの微生物を含むものを加えることである。
【0015】
具体的方法の第11は、0006〜0014の方法によって堆肥化処理後、竹の抽出液を加えることである。
【0016】
具体的方法の第12は、0006〜0013の方法によって堆肥化後のものに、万田酵素などの植物酵素を含むものを加えることである。
【0017】
具体的方法の第13は、0007、0014〜0016の方法で堆肥化後のものの重量100に対して、軽石や発泡ガラスのような見かけ比重が1.2以下の鉱物質を重量で80以上、120以下加えて混合して屋上緑化用に用いられるものにすることである。
【0018】
具体的方法の第14は、0007、0014〜0016の方法で堆肥化後のものの重量100に対して、麦飯石を重量で3以上、18以下加えて混合して連作用の元肥に用いられるものにすることである。
【発明の効果】
【0019】
0005〜0018で述べた方法を実施することにより、栽培植物の種類としては、
葉菜、根菜、果菜、またはそれらの連作用、果樹、屋上緑化用、また、使用時期としては 苗床用、元肥用そして追肥用の有機物系植物栽培用素材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明では栽培植物として、葉菜、根菜、果菜、果実あるいは屋上緑化用植物などを、また使用時期としては苗床用、元肥用そして追肥用を対象とする。苗床用の素材は、肥料分は多い必要はないが、保水性がよく、発芽や活着がしやすいことが重要である。元肥用には、発根がしやすく、苗が活着して根が伸びて肥料分を吸収するようにすること、チッソ成分が多いことが重要である。なお、連作用にはミネラル成分が十分に供給されることが重要である。又、屋上緑化用には、見かけ比重が大きくないことが重要で、排水性がいいとともに、ある程度の保水性を有していることが望まれる。追肥用の要件は栽培植物の種類によって異なるが、葉菜用にはチッソ分が多いことが重要である。とくにほうれん草、ねぎなどではリンやカリ分が多いほうが望ましい。根菜用にはチッソ分は不要で、リン、カリ分がやや多いこと、また、果菜用にはリン、カリ分が多いことが重要で、チッソ分もある程度必要である。果樹用にはリン、カリ分が多いこと、チッソは少ないことが必要である。それに対して、本発明では、原料として蓄糞、鶏糞などの廃棄物を主原料にして堆肥化する方法を中心にして、各種の栽培植物と使用時期に適した有機物系植物栽培用素材の製造法を提供する。
【0021】
本発明で堆肥化処理という場合には、堆肥化の第1段階である発酵過程、そしてそれに続く熟成家過程を指す。なお、熟成過程は省略される場合がある。本発明の堆肥化時に共通的に加えるものは、木、草あるいは竹を燃焼して得られた、炭分を含む灰、ゼオライト粉粒、およびかに殻などの甲殻類外皮である。まず、燃焼によって得られた、炭分を含む灰については、木、草、竹のような天然系のもの以外の加工物の廃棄物あるいは合成樹脂系の廃棄物を燃焼して得られるものは有害な重金属類などを含んでいるおそれがあるので、本発明に用いることは好ましくない。木、草、竹などを燃焼して得られる灰は、以下に示すような元素の化合物(酸化物、塩化物など)と、燃焼のときに残った炭分が含まれている。木の灰(Ca 約28%,K 約5%,Na 約1%,Mg 約5%,Fe 約2%,C 約5%あるいはそれ以上、P 約1%、Cl 約0,4%など)。草の灰(Ca 約12%,K 約27%,Na 約0.5%,Mg 約3%,Fe 約2%,C 約3%あるいはそれ以上、P 約2%、Cl 約4%など)。竹の灰(Ca 約3%,K 約40%,Na 約0.2%,Mg 約2%,Fe 約1%,C 約1%あるいはそれ以上、P 約4%、Cl 約1%など)。灰は、一般にミネラルと呼ばれるFeをはじめとする各種の鉱物元素が、生体の中で必要な比率で含まれていることが本発明において重要である。この比率は、植物と動物であまり異ならず、灰を通して得られたものが、ほぼ動物に必要な比率を満足している。これらのミネラルと総称される微量成分は、電子の授受の促進を通して堆肥化の発酵促進に関与する微生物、菌類の活性化するのに役立つ。これによって堆肥化処理の反応を促進するのが本発明の着眼点である。また、このミネラル分は栽培植物にとっても重要である。一方、灰に含まれるKOあるいはKCl、CaO、MgOなどは、肥料成分として対象とする栽培植物種類や使用時期によっては有効であるが、アルカリ性が強くなりすぎると、堆肥化発酵に関与する微生物や菌に悪影響を及ぼす。これが、堆肥化のときにこれまで灰が用いられてこなかった理由である。本発明では、灰の利点を生かしつつ、その悪影響を抑制するために0022、0023で述べるように、ゼオライト粉粒や、かに殻などの甲殻類外皮が併用される。
この木、草、竹などを燃焼して得られる、炭分を含む灰は、高温で燃焼した水分を含まない状態、あるいは、これを燃焼炉から取り出す時に水に濡れた状態で得られる。本発明では、これに含まれる水分は少ない方が好ましいので、ろ過、遠心分離、あるいは乾燥して、たとえば水分含有量を30%以下にして用いることが望ましい。なお、灰を乾いた状態で添加した時には、水分の多い畜糞を団粒化によって、堆肥化処理時の空気の流通をよくするという効果を持つ。また、本発明では、灰は炭分を含んだ状態で使用することができる。炭分は、多孔質で吸着性を有することから、土壌に添加すると、土壌の透水性および保水性の改善、陽イオンの交換能力の向上、有害微生物の吸着固定などの機能を有し土壌改善効果を持つからである。
上記のような効果を発揮するための、木、草、竹などを燃焼することによって得られた、炭分を含む灰の必要量は、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して固体分重量として1以上にすることである。一方、アルカリ化による堆肥化への悪影響を抑制するためには、0022,0023に述べるゼオライトや甲殻類外皮の添加と組み合わせても、炭を含む灰の固体分としての9以下にすることが必要である。なお、栽培植物の種類および使用時期によってカリウム分の要求量が異なるので、それに応じて灰の添加量の上限は決まってくる。
【0022】
ゼオライト(沸石)は天然のものと人工のものがあるが、本発明においてはいずれも使用することができる。本発明においては、ゼオライト粉は、灰に含まれるKOあるいはKCl、CaOなどに起因するアルカリ化が堆肥化発酵菌におよぼす悪影響や、カリ分の過剰供給による栽培植物への悪影響を、その表面吸着効果によって抑制し、灰の悪影響を抑制するためのバッファー材として有効である。また、ゼオライト粉は、灰から生成したアルカリ成分が高い場所においては、それを中和する効果を持つとともに、堆肥化発酵用の微生物がアルカリ性の高い場所から避難する場所を提供する。また、ゼオライト粉は、堆肥化のための温度を上げるときの異臭の発生を抑止する効果も持つ。その効果を発揮するためのゼオライト粉粒の添加量は蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対してゼオライト粉粒の重量で2以上が必要である。また、その量は、灰の添加量、および堆肥化の第1段階である発酵処理時の温度にも関連する。一方、ゼオライト粉粒の添加量が20を超えると、植物栽培用に施肥した場合にゼオライトに含まれる塩素分の悪影響が現れるので好ましくない。したがって、ゼオライト粉の添加量は、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して重量で2以上、20以下にすることが必要である。
【0023】
堆肥化時の共通的な添加物の第3は、から殻などの甲殻類外皮である。甲殻類外皮としてはほかにえび殻も用いることができる。本発明において甲殻類外皮は、チッソ、リン分などの肥料効果があるものを含むということだけではなく、別途、添加した灰から発生するアルカリ液と反応してそれを中和する働きをすること、また堆肥化の過程で板状の形状効果で原料相中に空間を形成して堆肥化発酵のための好気性発酵菌の活動を活性化すること、また、含まれているキチン、キトサン成分の機能で、好気性菌の発酵作用を阻害する雑菌の活動を抑える役割をする。その効果を発揮するための必要添加量は、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して添加する甲殻類外皮の重量を1以上にすることである。また、甲殻類外皮の破砕片の最大部の平均長さが10mm以上の破砕片の状態で用いることが望ましい。一方、添加する甲殻類外皮の重量が10を超えると、植物栽培用素材として用いた場合、水の均一浸透を阻害する。また、植物栽培用素材を苗床用や元肥用に用いた場合には、栽培植物の根の伸長を阻害すること、また、追肥用に用いた場合には、肥料分の流出を促進することから好ましくない。したがって、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して添加する甲殻類外皮の重量を1以上、10以下にするのが適正である。
【0024】
蓄糞、鶏糞などの処理対象物は、必要によっては水分含有量などの調整を行い、所定量の木、草あるいは竹を燃焼して得られた、炭分を含む灰、ゼオライト粉粒、およびかに殻などの甲殻類外皮の添加を行った後、混合機を通し、堆肥化の第1段階としての発酵層に移す。肥料分のうちにチッソの必要量は、栽培植物の種類と施肥時期によって大きく異なるが、本発明においては、この発酵層の温度によって得られる植物栽培用素材のチッソ分を制御する。この温度が高いほどチッソ成分の含有量は低下する。この堆肥化の第1段階の発酵層の温度は、堆肥化層に温度計の先端を差し込んで層中の最高温度部の測温を行い、この温度測定結果にもとづいて操業を制御する。温度の制御は、処理対象物の水分含有量の調整、堆肥化層への熱供給量の調整などによって行うことができる。外熱の供給は、たとえば発酵層中に通したパイプを介して行い、温度を上げるには、このパイプに中に供給する常温より高い温度のガス(空気の温風あるいは熱風)の温度と供給量によって制御し、一方、温度を下げたい場合には、パイプに中に常温の空気を流して、冷却する。温風あるいは熱風の熱源としては、発電や蒸気生成に用いた燃焼ガスの廃ガスなどを用いることができる。また、この発酵層を通過したガスは、冷却に用いた常温あるいはそれ以下の空気と合わせて、たとえば外部にある植物栽培用温室の温度調整用などに用いることができる。
この堆肥化の第1段階である発酵の処理を終わった後、必要に応じて熟成処理を行う。この熟成処理は時々切り返しを行いながらそれ以外の時は、静置しておくことによって得られる植物栽培用素材を安定化できる。この処理時間は発酵処理時の温度が高いと、短くしたり、あるいは省略できる。
【0025】
肥効成分のうち、リン酸分は1次鉱物資源の産地が限られていること、また製鋼スラグなどの2次鉱物資源は随伴元素などが土壌に副次的な悪影響が懸念されることから、本発明においては鉱物資源に頼らないで、栽培植物に必要な量を提供できるようにする。そのためのリン酸含有源は、灰(リンとして約1〜4%)、かに殻などの甲殻類外皮(リン酸分として1〜7%)、そして、処理対象物では牛糞(生糞状態でリン酸分を約4%)、豚糞(生糞状態で約5%)、鶏糞(約7%)である。本発明の製造工程では、使用材料の分析結果に基づき、製造される植物栽培用素材の必要なリン含有量に応じて配合が決められる。とくに、原料の中でリン含有量の比率が高い鶏糞を優先的に必要リン含有量が高いものの製造にあてることが効果的である。そのためには、たとえば、原料の固体分重量100の中で鶏糞を固体分重量として30以上を占めるように配合すればよい。
【0026】
本発明のプロセスフローを図1に示す。具体的施形態の第1は、苗床用の植物栽培用素材を製造することである。苗床用の素材は、肥料分は多い必要はないが、保水性がよくて、発芽や活着がしやすいことが重要である。そのための製造方法の第1は、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して木、草あるいは竹を燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として2以上、5以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で1以上、10以下、ゼオライト粉を重量で2以上、20以下添加して混合した後、最高温度が110℃以上で堆肥化処理の第1段階の発酵を行い、ついで熟成を行うものである。熟成は約2週間で、途中、2回程度の切り返しを行えばよい。また、その製造方法の第2は、配合条件は第1の方法と同じであるが、発酵前にマコモ菌などの超高好熱菌を加えて、最高温度が110℃以上で堆肥化の第1段階の発酵処理を行うことである。この場合は、それに続く熟成は省略すること-ができる。
【0027】
具体的施形態の第2は、元肥用の植物栽培用素材を製造することである。元肥用には、発根、苗が活着して根が伸びて肥料分を吸収するようにすること、チッソ成分が多いことが重要である。そのための製造方法の第1は、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹を燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として1以上、5以下、ゼオライト粉を重量で2以上、10以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で1以上、10以下加えて、最高温度が70℃以下で堆肥化処理の第1段階の発酵処理を行い、ついで熟成を行うものである。熟成は約4週間で、途中3回程度の切り返しを行えばよい。
【0028】
具体的施形態の第3は、葉采の追肥用の植物栽培用素材を製造することである。葉采の追肥用にはチッソ分が多いことが重要である。とくにほうれん草、ねぎなどではリンやカリ分も多いほうが望ましい。そのためには、蓄糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹を燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として2以上、7以下、ゼオライト粉を重量で3以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で2以上、10以下加え混合し、最高温度が70℃以下で堆肥化処理の第1段階の発酵を行い、ついで熟成を行うものである。熟成は約4週間で、途中、3回程度の切り返しを行えばよい。
【0029】
具体的施形態の第4は、根采の追肥用の植物栽培用素材を製造することである。根采の追肥用にはチッソ分は不要で、リン、カリ分がやや多いことが重要である。そのためには、第1の方法は、蓄糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹を燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として3以上、7以下、ゼオライト粉を重量で4以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で3以上、10以下加えて、最高温度が110℃以上、180℃以下で堆肥化の第1段階の発酵処理を行い、ついで熟成を行うものである。熟成は約1週間以内で、途中、1回程度の切り返しを行えばよい。また、その第2の方法は、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100において、鶏糞が30以上を占めるように配合することである。この場合、堆肥化の第1段階の発酵処理、および熟成の条件は第1の方法と同じでよい。る。さらに、その第3の方法は、第1、第2の方法にくわえて、マコモ菌などの超好熱菌を加えて堆肥の第1段階である発酵処理を行うことである。この場合には発酵後の熟成処理が省略できる。
超好熱菌とは100℃以上の温度でも活動できる菌である。
【0030】
具体的実施形態の第5は、果采の追肥用である。果菜用にはリン、カリ分が多いことが重要で、チッソ分もある程度必要である。製造のための第1の方法は、蓄糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹を燃焼して得られた灰を固体重量として4以上、9以下、ゼオライト粉を重量で3以上、20以下およびかに殻などの甲殻類外皮を重量で1以上、10以下、最高温度が75℃以上、130℃以下で堆肥化の第1段階の発酵処理を行い、ついで熟成を行うものである。熟成は約2週間以内で、途中、2回程度の切り返しを行えばよい。また、その第2の方法は、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100において、鶏糞が30以上を占めるように配合することである。この場合、堆肥化の第1段階の発酵処理、および熟成の条件は第1の方法と同じでよい。さらに、その第3の方法は、第1、第2の方法にくわえて、マコモ菌などの超好熱菌を加えて堆肥の第1段階である発酵処理を行うことである。この場合には発酵後の熟成処理が省略できる。
【0031】
具体的実施形態の第6は、果樹の追肥用である。果樹用にはリン、カリ分が多いこと、チッソは少ないことが必要である。製造のための第1の方法は、蓄糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹を燃焼して得られた灰を固体重量として4以上、9以下、ゼオライト粉を重量で3以上、20以下およびかに殻などの甲殻類外皮を重量で3以上、10以下、最高温度が75℃以上、130℃以下で堆肥化の第1段階の発酵処理を行い、ついで熟成を行うものである。熟成は2週間以内で、途中、2回程度の切り返しを行えばよい。また、その第2の方法は、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100において、鶏糞が30以上を占めるように配合することである。それ以外は第1の方法と同じでよい。さらに、その第3の方法は、第1、第2の方法にくわえて、マコモ菌などの超好熱菌を加えて堆肥の第1段階である発酵処理を行うことである。この場合には発酵後の熟成処理が省略できる。
【0032】
これらの堆肥化処理によって得られたものを、そのまま植物栽培用素材として用いることもできるが、さらに処理を加えて、バイオベッド土壌に用いられるものにすることができる。バイオベッド用土壌とは、従来の肥料分を土壌に与えるのではなく、作物にとって好ましい状況は、そこに存在する微生物によっても作られることに着目したもので、土壌の状態、肥料成分の含有量、そして存在している微生物の総合作用として、栽培用植物の生育に好ましい状況を提供しようとするものである。これに適した状態とは、プラスの面の効果が大きいこと(例えば、なにかを含んでいることと)とマイナスの面の悪影響が少ないこと(例えば、なにかを含んでいないこと)の両立が求められる。これに対して、本発明の方法は、(1)土壌の物理的性状は、蓄糞、鶏糞などを主原料としているので、もともと腐植土として優れている、(2)肥料成分の、チッソ、カリ、リン酸などの含有量を調整できる、(3)共存する微生物類のうち、好ましくない作用をするものについて、かに殻などの甲殻類外皮に含まれるキチン、キトサンなどで制圧していること、また、発酵温度を上げることによって、そのような微生物類は死滅させていることなどに加えて、堆肥化後、栽培作物に好ましい作用をするものを新たに加える。そのような機能を果たすものとしてはたとえばEM菌がある。EM菌は、肥料分やミネラル分を吸収しやすい形にする。このような機能をするEM菌などの微生物類を堆肥に添加する方法としては、堆肥化処理で得られたものにEM菌などを含む液体を散布した状態で供給する方法と、堆肥化されたものと、EM菌などを含む液体を別々に供給して、使用時にEM菌を含む液体を振りかけて使用する方法のいずれも用いることができる。
【0033】
堆肥化処理によって得られたものをその状態で植物栽培用素材として用いる方法のほかに、竹から抽出された液を加えて耕作物に成長促進効果を与える栽培用素材、すなわち肥料あるいは土壌とすることも出来る。竹は特に成長が早い植物であり、詳細な機構は解明されていないが、成長ホルモンと呼ばれる成長促進剤が作用している。本発明では、この成長促進効果を持つものを抽出して、これを耕作物に与えるために、0026〜0031などで得られた堆肥化されたものを媒体として用いる。その具体的な方法の1つは、次の通りである。用いる竹原料は、3月から6月の間に採取したタケノコ、茎、根などであって、これを破砕し、たとえば水につけて7日間以上置いて得られたものが抽出液である。なお、竹は材料採取から破砕、抽出まで、および抽出して得られた液として5℃以下に保たれた冷蔵庫に保管して変質を防止する。成分抽出の方法には、このほかに、酢酸などを加えた弱酸性液を用いる方法、水に乳酸菌を加える方法もある。いずれにして、抽出成分を水に溶かした液体状態にする。これを、得られた堆肥化処理物に加えるのは、耕作地の散布する直前であって、堆肥化処理物の重量100に対して抽出液の重量が5〜15の割合で振り掛ける。そして耕作地に散布する。なお、竹の採取後、抽出を行うまでの間に、竹の腐敗を防止するには、スピラエ属の樹木、たとえば雪柳から抽出された液をスプレイなどによって振りかけて浸透させる方法が取られる。樹木は害虫や腐敗菌などから身を守るために、害虫や微生物が忌避する成分を放出している。この忌避反応を利用して、変質させる微生物を寄せ付けないようにして、変質を防止する。多くの樹木がこの機能を有しているが、とくに、少量で長期間効果があるものがスピラエ属の樹木である。その代表的なものが雪柳である。スピラエ科に属する樹木からこの抽出液を得るには、初夏、花が咲き終わって葉が出たころ、枝ごと採取して粉砕し、水につけおけばよい。この抽出液は、生ごみなどに散布しておくと、腐敗菌などを忌避するので悪臭を発生しにくいこと、また蝿や蚊などの害虫に対しても忌避作用があること知られていたが、破砕した竹についても変質防止に効果があることが確かめられた。抽出液は、樹木の粉砕したもの1kgに対して、たとえば水を10kgの割合で加えて抽出された。この抽出液は、破砕後の竹の表面に吹き付けて浸透させることによって変質防止が可能になる。
【0034】
竹からの抽出液を得る第2の方法は、0033と同じく3月から6月の間に採取したタケノコ、茎、根などの竹原料を、温度が10℃以下 望ましく0℃で保管し、粉砕後、まず、0033で述べたのと同じように変質防止のために、スピラエ科植物の抽出液を振り掛ける。この粉砕物をまず亜臨界(たとえば温度35℃、圧力70気圧)あるいは超臨界状態(たとえば温度35℃、圧力75気圧)のCOで処理して常圧に戻す。それに続いて、水などをエントレーナーに使って抽出を行う。この亜臨界あるいは超臨界状態のCOの処理によって、強固な竹の細胞膜を破壊することができるので、後続の工程において効率的に竹の成長ホルモン分を抽出することができる。この抽出された液を堆肥化処理物に加える方法は、0033で述べたのと同じである。
【0035】
0026〜0031で得られたものに加える植物から抽出液として、竹からの抽出液の代わりに一般に植物酵素と呼ばれているもの、すなわち各種の植物に発酵作用を加えて得られたもの、たとえば万田酵素と呼ばれているものを用いることができる。植物酵素は、各種植物から抽出されたものに、乳酸菌などの酵母を加えて発酵させることによって得られる。これらを、0033で述べたのと同様の方法で堆肥化後のものに加えて用いることができる。これによって、0033で述べたのと類似の効果が得られる。
【0036】
植物栽培用素材の用途が、とくに屋上緑化用の場合には、重量が大きくなり過ぎないことが重要である。そのためには、植物栽培用素材自体の見かけ密度を小さくするとともに透水性を大きくすることが必要である。そのためには0027、0032、0033、0035などで得られたものに軽石や発泡ガラスのような見かけ比重が1.2以下の鉱物質のものを混合して用いる。その添加量は堆肥化後のものの重量100に対して、重量で80以上、120以下が適正である。その値が80以上であれば、雨が降った時などの重量増加が問題になり、一方、120超では、栽培用土壌としての性能が低下するので好ましくない。
【0037】
植物栽培用の素材の用途がとくに連作用である場合には、ミネラル分の供給量を増やすことが必要である。その必要なミネラル分を、灰からだけでは供給することがむつかしいので、その場合にはミネラル分含有量が多い麦飯石を添加して混合するのが効果的である。麦飯石の添加量は、0027、0032、0033、0035など得られたものの重量100に対して、重量で3以上、18以下が適正である。その値が3未満では、ミネラル分の供給量が不十分であり、一方、18を超えると、総合的肥料効果が低下するので好ましくない。
【実施例1】
【0038】
苗床用の植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は固体分重量として牛糞が65、豚糞25、鶏糞が10の割合で、これに木を燃焼して得られた、炭分を8%含む灰を重量で3、ゼオライト粉を15、かに殻を最大長さが30mm以下になるように破砕したものを7の割合で混合して、全体の水分を70%になるように調整した。これを発酵層に入れ3日間、その内部に、120℃の温風を流した鉄パイプを差し込んで、層の最高温度が125℃になるようにして発酵を行った。ついで熟成を10日間行って、なすびの苗床用土壌に添加した。肥料分として、これだけ用いることによって良好な苗の生育が行われた。
【実施例2】
【0039】
同じく苗床用の植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。畜糞、鶏糞などの処理対象物、木を燃焼して得られた、炭分を含む灰、ゼオライト粉、かに殻などの添加物の配合割合は、0038と同じである。さらに、マコモ菌を培養させた粉末を添加、混合して、0038と同じ条件で発酵処理を行った。その後、熟成工程を省略して、なすびの苗床用土壌に添加した。肥料分としてはこれを用いるだけで良好な苗の生育が行われた。
【実施例3】
【0040】
元肥用の植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は固体分重量として牛糞が65、豚糞20、鶏糞が15の割合で、これに木と草(草は重量で1割)を燃焼して得られた、炭分を10%含む灰を重量で2、ゼオライト粉を8、かに殻を最大長さが30mm以下になるように破砕したものを6の割合で混合して、全体の水分を65%になるように調整した。これを発酵層に入れ7日間、自然に発酵させた。層の最高温度は65℃以下である。ついで熟成を4週間、途中で3回切り返しを行った。これを、トマト栽培の元肥に用いた。元肥としての肥料は、これだけであったが、0045の追肥を用いることで、通常栽培と同程度の収穫量が得られた。
【実施例4】
【0041】
葉采追肥用として植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は固体分重量として牛糞が70、豚糞10、鶏糞が20の割合で、これに木と竹(竹は重量で3割)を燃焼して得られた、炭分を10%含む灰を重量で5、ゼオライト粉を12、かに殻を最大長さが30mm以下になるように破砕したものを7の割合で混合して、全体の水分を70%になるように調整した。これを発酵層に入れ7日間、自然に発酵させた。層の最高温度は65℃以下であった。ついで熟成を4週間、途中で3回切り返しを行った。これを、白菜の追肥に用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料はこの2種類だけを用いることで、通常と同程度の収穫量が得られた。
【実施例5】
【0042】
根采追肥用として植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は固体分重量として牛糞が70、豚糞10、鶏糞が20の割合で、これに木と竹(竹は重量で2割)を燃焼して得られた、炭分を10%含む灰を重量で5、ゼオライト粉を12、かに殻を最大長さが40mm以下になるように破砕したものを7の割合で混合して、全体の水分を70%になるように調整した。これを発酵層に入れ7日間、その内部に、150℃の温風を流した鉄パイプを差し込んで、層の最高温度が130℃になるようにして発酵を行った。ついで熟成を6日間、その間、1回の切り替えし行って、大根の追肥用として用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料はこの2種類だけを用いることで、通常栽培の90%の収穫量が得られた。
【実施例6】
【0043】
根采追肥用として植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は固体分重量として牛糞が55、豚糞10、鶏糞が35の割合で、灰、ゼオライト粉、かに殻破砕物の配合量、水分調整量、発酵条件、熟成条件は0042と同じである。得られたものを大根の追肥用として用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料はこの2種類だけを用いることで、通常栽培と同程度の収穫量が得られた。
【実施例7】
【0044】
根采追肥用として植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は、灰、ゼオライト粉、かに殻破砕物の配合量、水分調整量は0042と同じである。
これに、マコモ菌を培養させた粉末を添加、混合して、0042と同じ条件で発酵処理を行った。この後、熟成工程を省略して、得られたものを大根の追肥用として用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料はこの2種類だけを用いることで、通常栽培と同程度の収穫が得られた。
【実施例8】
【0045】
果采追肥用とし植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は固体分重量として牛糞が70、豚糞10、鶏糞が20の割合で、これに木と竹(竹は重量で3割)を燃焼して得られた、炭分を11%含む灰を重量で5、ゼオライト粉を16、かに殻を最大長さが200mm以下になるように破砕したものを8の割合で混合して、全体の水分を65%になるように調整した。これを発酵層に入れ6日間、その内部に、110℃の温風を流し鉄管を差し込んで、層の最高温度が95℃になるようにして発酵を行った。ついで熟成を14日間、その間、2回の切り替えし行って、トマトの追肥用として用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料はこの2種類だけを用いることで、通常栽培と同程度の収穫が得られた。
【実施例9】
【0046】
果采追肥用として植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は固体分重量として牛糞が55、豚糞10、鶏糞が35の割合で、灰、ゼオライト粉、かに殻破砕物の配合量、水分調整量、発酵条件、熟成条件は0045と同じである。得られたものをトマトの追肥用として用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料はこの2種類だけを用いることで、通常栽培と同程度の収穫が得られた。
【実施例10】
【0047】
果采追肥用とし植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は、灰、ゼオライト粉、かに殻破砕物の配合量、水分調整量は0045と同じである。これに、マコモ菌を培養させた粉末を添加、混合して、0045と同じ条件で発酵処理を行った。この後、熟成工程を省略して、得られたものをトマトの追肥用として用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料はこの2種類だけを用いることで、通常栽培と同程度の収穫が得られた。
【実施例11】
【0048】
果樹追肥用とし植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は固体分重量として牛糞が70、豚糞10、鶏糞が20の割合で、これに木と竹(竹は重量で3割)を燃焼して得られた、炭分を11%含む灰を重量で6、ゼオライト粉を16、かに殻を最大長さが40mm以下になるように破砕したものを7の割合で混合して、全体の水分を65%になるように調整した。これを発酵層に入れ6日間、その内部に、120℃の温風を流した鉄パイプを差し込んで、層の最高温度が100℃になるようにして発酵を行った。ついで熟成を14日間、その間、2回の切り替えし行って、みかんの追肥用として用いた。肥料はこれだけを用いることで、通常栽培の90%程度の収穫量が得られた。
【実施例12】
【0049】
果樹追肥用として植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は固体分重量として牛糞が55、豚糞10、鶏糞が35の割合で、灰、ゼオライト粉、かに殻破砕物の配合量、水分調整量、発酵条件、熟成条件は0048と同じである。得られたものをみかんの追肥用として用いた。肥料はこれだけを用いることで、通常栽培と同程度の収穫量が得られた。
【実施例13】
【0050】
果樹追肥用とし植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。蓄糞、鶏糞などの処理物は、灰、ゼオライト粉、かに殻破砕物の配合量、水分調整量は0048と同じである。これに、マコモ菌を培養させた粉末を添加、混合して、0048と同じ条件で発酵処理を行った。その後の熟成工程を省略して、得られたものをみかんの追肥用として用いた。肥料はこれだけを用いることで、通常栽培とほぼ同程度の収穫が得られた。
【実施例14】
【0051】
苗床用の植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0038と同じ条件で行い、得られたものに、EM菌培養液体を振りかけて、トマトの苗床用土壌に添加した。肥料分として、これだけ用いることによって良好な苗の生育が行われた。
【実施例15】
【0052】
元肥用の植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0040と同じ条件で行い、得られたものにEM菌培養液体を振りかけて、トマトの元肥に用いた。元肥としての肥料は、これだけであったが、0046の追肥を用いることで、通常栽培の1割増しの収穫量が得られた。
【実施例16】
【0053】
根采追肥用として植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0042と同じ条件で行い、得られたものに、EM菌培養液体を振りかけて、大根の追肥に用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料分として、これだけ用いることによって、通常栽培より10%増しの収穫量が得られた。
【実施例17】
【0054】
果采追肥用とし植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0045と同じ条件で行い、得られたものに、EM菌培養液体を振りかけて、トマトの追肥に用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料分として、これだけ用いることによって、通常栽培より20%増しの収穫が得られた。
【実施例18】
【0055】
苗床用の植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0038と同じ条件で行い、得られたものに0033で得られた竹の抽出液を加えて(添加量は堆肥重量100に対して4の割合)、トマトの苗床用土壌に添加した。肥料分として、これだけ用いることによって良好な苗の生育が行われた。
【実施例19】
【0056】
苗床用の植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0038と同じ条件で行い、得られたものに、0034で得られた竹の抽出液を加えて(添加量は堆肥重量100に対して2の割合)、なすびの苗床用土壌に添加した。肥料分として、これだけ用いることによって良好な苗の生育が行われた。
【実施例20】
【0057】
元肥用の植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0040と同じ条件で行い、得られたものに、0033で得られた竹の抽出液を加えて(添加量は堆肥重量100に対して3の割合)、トマトの元肥に用いた。元肥としての肥料はこれだけであったが、0046の追肥を用いることで、通常栽培の2割増しの収穫量が得られた。
【実施例21】
【0058】
元肥用の植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0040と同じ条件で行い、得られたものに0034で得られた竹の抽出液を加えて(添加量は堆肥重量100に対して2の割合)、トマトの元肥に用いた。元肥としての肥料は、これだけであったが、0046の追肥を用いることで、通常栽培の20%増しの収穫が得られた。
【実施例22】
【0059】
葉采追肥用として植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0041と同じ条件で行い、得られたものに、0033で得られた竹の抽出液を加えて(添加量は堆肥重量100に対して3の割合)、白菜の追肥に用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料はこの2種類だけを用いることで、通常の10%増しの収穫量が得られた。
【実施例23】
【0060】
葉采追肥用として植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0041と同じ条件で行い、得られたものに、0034で得られた竹の抽出液を加えて(添加量は堆肥重量100に対して2の割合)、キャベツの追肥に用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料はこの2種類だけを用いることで、通常と20%増しの収穫が得られた。
【実施例24】
【0061】
元肥用の植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0040と同じ条件で行い、得られたものに、万田酵素を振りかけて、トマトの元肥に用いた。元肥としての肥料は、これだけであったが、0046の追肥を用いることで、通常栽培の10%増しの収穫量が得られた。
【実施例25】
【0062】
根采追肥用として植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合から混合、発酵、熟成の処理は0042と同じ条件で行い、得られたものに万田酵素を振りかけて、大根の追肥に用いた。なお、元肥は0040で得られたものと同じである。肥料分として、これだけ用いることによって、通常栽培より10%増しの収穫量が得られた。
【実施例26】
【0063】
トマトの連作用の元肥として用いる植物栽培用素材を次ぎの条件で製造した。配合、
混合、発酵、熟成の工程は0040と同じである。得られたものに、麦飯石を1m実以下に粉砕したものを混合した(堆肥分の重量100に対して、麦飯石の粉の添加量は、11である。元肥としてこれを用い、0045の追肥を用いることで、連作障害なしにトマトの栽培を行うことができた。
【実施例27】
【0064】
ほうれん草の連作用の元肥として、0063と同じものを用い、追肥として0041のものを用いることで、連作障害なしにほうれん草の栽培を行うことができた。
【実施例28】
【0065】
チューリップ栽培による屋上緑化用の土壌を次のように製造した。堆肥分の製造(配合、混合、発酵、熟成)は、0040で述べたのと同じである。得られたものの重量100に対して、軽石を1mm以下に破砕したものを、重量で100添加して混合し、これをプランタンに入れて、チューリップ栽培を行った。雨水の透過、保水性確保など、とくに問題なく、屋上栽培を行うことができた。
【実施例29】
【0066】
ひまわり栽培による屋上緑化用の土壌を次のように製造した。堆肥分の製造(配合、混合、発酵、熟成)は、0040で述べたのと同じである。得られたものの重量100に対して、発泡ガラスを1mm以下に破砕したものを、重量で90添加して混合し、これをプランタンに入れて、ひまわり栽培を行った。雨水の透過、保水性確保などとくに問題なく、屋上栽培を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、対象原料として生ごみや汚泥などが入ってきた場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のプロセスフローを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として1以上、9以下、ゼオライト粉を重量で2以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で1以上、10以下加えて堆肥化処理することを特徴とする、有機物系植物栽培用素材の製造方法。
【請求項2】
請求項1の方法において,蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として1以上、5以下、ゼオライト粉を重量で2以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で1以上、10以下加えて、最高温度が110℃以上で堆肥化処理して、苗床用に用いられるものにすることを特徴とする、有機物系植物栽培用素材の製造方法。
【請求項3】
請求項1の方法において,蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として1以上、5以下、ゼオライト粉を重量で2以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で1以上、10以下加えて、最高温度が70℃以下で堆肥化処理して、元肥用に用いられるものにすることを特徴とする、有機物系植物栽培用素材の製造方法。
【請求項4】
請求項1の方法において,蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として2以上、7以下、ゼオライト粉を重量で3以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で2以上、10以下加えて、最高温度が70℃以下で堆肥処理して、葉采の追肥用に用いられるものにすることを特徴とする、有機物系植物栽培用素材の製造方法。
【請求項5】
請求項1の方法において,蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として3以上、7以下、ゼオライト粉を重量で4以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で3以上、10以下加えて、最高温度が110℃以上、180℃以下で堆肥化処理をして、根菜の追肥用に用いられるものにすることを特徴とする、有機物系植物栽培用素材の製造方法。
【請求項6】
請求項1の方法において,蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として4以上、9以下、ゼオライト粉を重量で3以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で2以上、10以下加えて、最高温度が75℃以上、130℃以下で堆肥化処理して、果菜
の追肥用に用いられるものにすることを特徴とする有機物系植物栽培素材の製造方法。
【請求項7】
請求項1の方法において,蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100に対して、木、草あるいは竹などを燃焼して得られた、炭分を含む灰を固体分重量として4以上、9以下、ゼオライト粉を重量で3以上、20以下、かに殻などの甲殻類外皮を重量で3以上、10以下加えて、最高温度が75℃以上、130℃以下で堆肥化処理して、果樹の追肥用に用いられるものにすることを特徴とする有機物系植物栽培素材の製造方法。
【請求項8】
請求項2、請求項5〜7において、さらにマコモ菌などの超好熱菌を加えて堆肥化処理することを特徴とする、有機物系植物栽培用素材の製造方法。
【請求項9】
請求項5〜8において、蓄糞、鶏糞などの処理対象物の固体分重量100において、鶏糞が30以上を占めることを特徴とする、有機物系植物栽培用素材の製造方法。
【請求項10】
請求項2、請求項3、請求項5〜9の方法によって堆肥化処理後のものに、EM菌などの微生物を含むものを加えることを特徴とする有機物系植物栽培用素材の製造方法。
【請求項11】
請求項2〜10の方法によって堆肥化処理後、竹の抽出液を加えたことを特徴とする有機物植物栽培用素材の製造方法。
【請求項12】
請求項2〜9の方法によって堆肥化後のものに、万田酵素などの植物酵素を含むものを加えることを特徴とする有機物系植物栽培用素材の製造方法。
【請求項13】
請求項3、請求項10〜12の方法で堆肥化後のものの重量100に対して、軽石や発泡ガラスのような見かけ比重が1.2以下の鉱物質を重量で80以上、120以下加えて混合して屋上緑化用に用いられるものにすることを特徴とする有機物系植物栽培素材の製造方法。
【請求項14】
請求項3、請求項10〜12の方法で堆肥化後のものの重量100に対して、麦飯石を重量で3以上、18以下加えて混合して連作用の元肥に用いられるものにすることを特徴とする有機物系植物栽培素材の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2009−280472(P2009−280472A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136939(P2008−136939)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(300057492)
【Fターム(参考)】