説明

有機物質に由来する揮発性有機化合物の吸着

【課題】有機物質に由来する揮発性有機化合物(VOC)を、所望により常温で吸着する。
【解決手段】パラジウムドーピングされたZSM-5を使用する。有機物質は、腐りやすい有機商品、例えば果物および/または野菜を包含する食品、植物および/または切り花を包含する園芸産物、または廃棄物でよい。Si:Al比が100:1以下であり、パラジウム含有量が、ドーピングされたZSM-5の総重量に対して0.1重量%〜10.0重量%である、パラジウムドーピングされたZSM-5。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、有機物質に由来する揮発性有機化合物(VOC)の吸着に関する。より詳しくは、有機物質は、腐りやすい有機商品、例えば食品、でよい。
【0002】
VOCは、環境汚染物、例えば自動車排ガスの特定成分、溶剤およびエーロゾルガス、を含む広範囲な区分の化合物であるが、有機物質に由来する化合物群も含む。有機物質に由来するVOCの一例は、エチレン、すなわち熟成を引き起こす植物ホルモンであり、もう一つの例は、トリメチルアミン、すなわち魚が分解する時に一般的に放出されるガスである。
【0003】
有機物質に由来するVOCの除去は、様々な用途で重要である。エチレンを吸着することにより、好ましくない熟成および軟化、色あせ、葉の損失や芽吹きが果物や野菜に起こるのを阻止することができ、他の食品や園芸産物が早期に朽ちるのを阻止すること、および不快臭の排除に役立つことも分かっている。
【0004】
VOCを酸化または燃焼させるのに、AlまたはKMnO上のPtを使用する様々な方法が使用されている。しかし、これらの方式は、VOCの除去には効率的であるが、それらの使用に関連する欠点がある。Al上のPtは、エチレンを高温で触媒作用により燃焼させることにより機能し、従って、Al上のPtは、VOCの供給源から分離した、加熱された装置で使用する必要がある(英国特許第2163637A号明細書および米国特許第4,331,693号明細書参照)。KMnOは、湿った環境からVOCを効率的に除去することができない(例4参照)。有機物質、例えば食品、は、変質させずに加熱することはできず、本来、湿分を放出するので、そのような方式は、有機物質に由来するVOCの除去に使用することには適していない。
【0005】
VOCの除去に使用される、低温で使用するのに適している他の方法としては、通常は助触媒と併用する、VOC吸着用の高表面積担体の使用がある。例えば、日本国特許第2-261341号明細書は、冷凍保存室からのエチレン吸着を開示しており、日本国特許第2000-004783号明細書は、冷蔵庫で使用するための、エチレン吸着剤、脱臭剤および抗菌製品の組合せを開示している。これらのどの文献にも、具体的な担体材料は開示されてなく、代わりに、活性炭および金属酸化物がこれらの担体に一般的に好適であるとして記載されている。英国特許第2252968A号明細書は、セピオライトをゼオライト、および所望により白金族金属、鉄族金属、I族金属、VII族金属および希土類金属から選択された金属と組み合わせて含んでなる吸着剤に関する。英国特許第'968号明細書に記載されている発明に使用するのに最も好ましいゼオライトはシリカライトであるが、これは、アルミナ含有量がほとんどゼロであるためである。
【0006】
ここで我々は、先行技術で開示されている方式よりも該ガスをより効率的に吸着することにより、常温で、または有機商品、例えば食品、を冷却または冷蔵して貯蔵寿命を延長する温度で、有機物質に由来するVOCを除去することができる触媒系を開発した。
【0007】
本発明の第一の態様により、有機物質に由来するVOCを吸着するためのパラジウムドーピングされた、Si:Al比が100:1以下であるZSM-5の使用を提供する。所望により、ZSM-5のSi:Al比は22:1〜28:1である。
【0008】
吸着されたVOCの少なくとも一部は、ドーピングされたZSM-5上に吸着された後、二次化合物に転化される。
【0009】
一実施態様では、有機物質は、腐敗しやすい有機商品、例えば食品および園芸産物、からなる。食品は、果物および/または野菜を含んでなることができる。園芸産物は、植物および/または切り花を含んでなることができる。
【0010】
別の実施態様では、有機物質は、廃棄物を含んでなる。そのような廃棄物には、分解の際に不快臭を発生する台所の廃棄物、例えば生ゴミ、が挙げられる。
【0011】
VOCを発生する有機物質は、ドーピングされたZSM-5が、閉鎖された、または半分閉じ込められた環境を有し、その中でVOCを吸着するように、貯蔵容器または包装物の中に収容することができる。腐敗しやすい有機商品の場合、貯蔵容器または包装物は、商品を収容する容器または包装物、例えば輸送の際に商品の貯蔵に使用される箱、または購入前の展示する時に商品を保管する包装物、でよい。別の実施態様では、ドーピングされたZSM-5は、貯蔵容器または包装物自体の中に、あるいはその一部の中に配合する。さらに別の実施態様では、ドーピングされたZSM-5を、貯蔵容器または包装物の中に挿入または保持するための基材を備えてなるラベルの中に配合する。
【0012】
腐敗しやすい有機商品が食品を含んでなる場合、ドーピングされたZSM-5は、食品との直接接触を防止する様式で、例えばガス透過性バリヤー層の背面に包装することができる。ガス透過性バリヤー層は、粉末状のドーピングされたZSM-5を収容する香料袋またはラベルの一部を形成するか、またはガス透過性層は、ドーピングされたZSM-5を含んでなるインク層の上に取り付けることができよう。インクは、貯蔵容器または包装物の内側表面に、印刷、キャスティング、ローラー塗布、ブラシ塗り、スプレーまたは同等の技術により、固定することができる。さらに、ドーピングされたZSM-5の吸着能力は、水の存在にある程度敏感なので(例4参照)、ドーピングされたZSM-5は、吸水性材料、例えばシリカゲル、と共に包装することができる。
【0013】
しかし、VOCの供給源が廃棄物である場合、貯蔵容器または包装物は、廃棄物容器でよい。
【0014】
一般的に、ドーピングされたZSM-5は、粒子状であり、例えば香料袋(上記参照)の中に、バラで包装することができる。あるいは、これらの粒子を、別の物体と、例えば貯蔵容器中に配合することにより、インクの中に配合することにより(上記のように)、あるいは単に別の物体、例えば触媒担体として使用されるようなセラミックまたは金属モノリス、の上に塗布することにより、結合させることもできる。例えば触媒担体として一般的に使用されるような、他の圧力低下が少ない基材の形態も使用できる。別の実施態様では、ドーピングされたZSM-5は、押出物、ペレット、錠剤、粒子または顆粒の形態にある。ZSM-5は、そのような押出物、ペレット、錠剤、粒子または顆粒に形成した後に、ドーピングすることができる。
【0015】
本発明を使用する他の方法も、適当な状況下で使用することができる。
【0016】
本発明に関連する利点の一つは、VOCを比較的低い温度、例えば−10℃〜50℃、より一般的には0℃〜30℃、で吸着させることができることである。これによって、ドーピングされたZSM-5を、有機物質が一般的に見られる環境、例えば冷蔵庫、で、または常温で、複雑な加熱および空気循環装置の使用を必要とせずに、使用することができる。それにも関わらず、加熱および空気循環装置(例えば空調装置)を使用できる特別な用途の場合、ドーピングされたZSM-5を、例えば60℃を超える高温で操作することもできる。
【0017】
一実施態様では、VOCはエチレンを含んでなる。エチレンは、植物から放出され、植物をしおれさせ、果物を熟成させることができる気体状ホルモンである。植物から発生するVOCを除去することにより、これらの過程を遅延させ、食品および園芸産物を、腐敗を促進することなく、長期間、移動および/または貯蔵することができる。従って、本発明は、特に食品および園芸産物を生産、輸送、輸出および購入する産業に応用される。初期の試験では、先行技術の方法と異なり、本発明の吸着剤を使用することにより、完熟後の果実の貯蔵寿命延長できることが示唆されている(Terry L, Ilkenhans T, Poulston S, Rowsell EおよびSmith AWJ, Postharvest Biol. and Tech.-提出)。すなわち、完熟呼吸増加が開始された後でも、パラジウムドーピングされたZSM-5を使用してエチレンを吸着することにより、果物のそれ以上の熟成が防止される(あるいは、少なくとも熟成速度が遅くなる)。
【0018】
別の実施態様では、VOCがホルムアルデヒドおよび/または酢酸を含んでなる。ホルムアルデヒドおよび酢酸は、家庭で見られることが多い悪臭化学物質である。ホルムアルデヒドは、圧縮接着された木材製品、例えば合板、から放出されることがあるが、染料、織物、プラスチック、紙製品、肥料、および化粧品中にも見られる。酢酸は、生ゴミおよび動物の廃棄物から放出されることがある。従って、本発明に可能な一用途は、家庭環境から来る悪臭の除去である。
【0019】
もう一つの重要な点は、パラジウムドーピングされたZSM-5は、水に露出されると、活性がある程度失われるが、「湿った」場合でも効果的に機能し得ることである。食品および園芸産物は、通常、湿った環境中に保存されるので、この特徴も関連する産業には有利である。
【0020】
パラジウムドーピングされたZSM-5の製造方法は、当業者には公知であり、様々なパラジウム塩、例えばPd(NO)、Pd(OCHCO)およびPdCl、の使用を包含する。一般的に、ZSM-5は、少なくとも一種のパラジウム塩で含浸した後にか焼するが、用途によっては、この必要がない場合もある。パラジウムドーピングされたZSM-5の、か焼された試料は、少なくとも部分的に酸化されたパラジウムを含んでなる。
【0021】
パラジウム自体は、ZSM-5の総重量に対して0.1重量%〜10.0重量%、所望によりZSM-5の総重量に対して0.5重量%〜5.0重量%を構成することができる。
【0022】
一実施態様では、ドーピングされたZSM-5が、VOCを0.10 ppm以下のレベルに、所望により0.05 ppm以下のレベルに吸着することができる。
【0023】
本発明のもう一つの利点は、ドーピングされたZSM-5を、長時間、例えば数日間、VOC除去に連続的に使用することができる(実際の時間は、それを使用する環境によって異なる)。さらに、使用後に、ZSM-5を空気中で250℃に30分間加熱し、ZSM-5上に吸着されたVOCおよび存在する全ての二次化合物を放出させ、パラジウムドーピングされたZSM-5を再生してさらに使用することができる。これによって、パラジウムドーピングされたZSM-5を長期間使用し、次いでVOC供給源から取り出し、再生し、再使用することができる。再生工程は、短時間で済み、コストもかからない、すなわちドーピングされたZSM-5は、VOC除去にコスト的に有効な製品である。対照的に、KMnOは、加熱によりKOおよび酸化マンガンに分解するので、この材料の再生は不可能である。
【0024】
ドーピングされたZSM-5がそのVOC吸着容量に達し、従って、再生を必要としている時を確認するために、VOC指示薬をドーピングされたZSM-5と共に使用することができる。好適な指示薬としては、日本国特許出願第60-202252号明細書に開示されているパラジウム系エチレン指示薬がある。
【0025】
本発明の第二の態様により、ZSM-5のSi:Al比が100:1以下であり、パラジウムが、ドーピングされたZSM-5の総重量に対して0.1重量%〜10.0重量%を構成する、パラジウムドーピングされたZSM-5を提供する。所望により、ZSM-5のSi:Al比は、22:1〜28:1である、および/またはパラジウムが、ドーピングされたZSM-5の総重量に対して0.5重量%〜5.0重量%を構成する。
【0026】
本発明をより深く理解できるようにするために、添付の図面を参照しながら、下記の非限定的な例を例示のためにのみ記載する。
【0027】
例1
ドーピングされた担体の調製
吸着剤とも呼ばれるドーピングされた担体は、初期湿潤含浸処理方法(incipient wetness impregnation method)を使用して調製した。典型的には、担体(例えば、ゼオライトの水素形態)20 gを、適切な金属の(例えばパラジウム)の硝酸塩または塩酸塩で含浸させ、次いで110℃で乾燥させてから、空気中、500℃で2時間か焼した。
【0028】
例2
エチレン吸着測定
測定は、21℃の栓流反応器中で、粒子径250〜355μmのドーピングされた担体0.1 gを使用し、O10%、C200 ppm、水約1%(存在する場合)、残部He/Arを含んでなるガスの流量50 ml/分で行った。
【0029】
例3
様々な担体上にドーピングしたPdによるエチレン吸着
4.0重量%Pdドーピングされた活性炭および2.5重量%Pd/ZSM-5(23)の試料を、例1により(塩化パラジウム塩および硝酸パラジウムをそれぞれ使用する)、様々な活性炭で調製した。これらの試料を、それらのエチレン吸着容量に関して、例2により試験した。結果を以下に示す。
【0030】

吸着剤 エチレン吸着/μlg−1
Pd/ZSM-5 32228
PdCl/C(Black pearl) 372
PdCl/C(denka) 80
PdCl/C(vulcite) 132
PdCl/C(ketjen) 292
PdCl/C(xc-72R) 205
【0031】
この実験は、Pd/ZSM-5が、Pdドーピングされた活性炭よりも、遙かに高い吸着容量を有することを示している。
【0032】
例4
金属ドーピングされたZSM-5およびAl上のKMnOによる「湿潤」エチレン吸着
例1により製造した2.5重量%Pd/ZSM-5(23)の試料、およびAl上5重量%KMnO(Condea、140 m/g)を、それらのエチレン吸着容量に関して、例2により試験した。これらの材料を、乾燥時に、および水を含むデシケーター中に常温で設定時間置くことにより、水に露出した後で、試験した。この実験の結果を下記の表に示す。
【0033】

吸着剤 前処理 エチレン吸着μlg−1
Pd/ZSM-5 空気中500℃でか焼 4162
Pd/ZSM-5 空気中500℃でか焼、 3753
水蒸気に21℃で100時間露出
KMnO/Al 乾燥110℃ 750
KMnO/Al 乾燥110℃、水蒸気に 0
21℃で72時間露出
【0034】
さらに、2.5重量%M/ZSM-5、M=Pt、Co、Ni、Rh、Ru、Ir、Mo、Cu、W、V、およびAu(全てSiO:Al比23による)を例1により製造し、上記のように水に露出した後、それらのエチレン吸着容量に関して試験した。測定したエチレン吸着容量は、全ての試料で60μlg−1であった。
【0035】
この実験は、パラジウムドーピングされたゼオライトが、湿った時に、その乾燥エチレン吸着容量を約10%しか失わないことを示している。試験した他の全ての金属は、湿った時に無視できる程度のエチレン吸着を示したのに対し、Al上のKMnOは、湿った時に、そのエチレン吸着機能を完全に失う。
【0036】
例5
果物からのエチレン吸着
バナナ(重量約150 g)を容積1.15リットルの気密容器中に入れ、約1日放置した。COおよびエチレン濃度の経時増加を、ガスクロマトグラフィーを使用して測定した。次いで、容器中に吸着剤(2.5重量%Pd/ZSM-5)0.2 gを入れ、この実験を繰り返した。
【0037】
図4から分かるように、バナナ単独では、COおよびエチレン濃度が大体直線的に増加したのに対し、吸着剤が存在する場合には、エチレン濃度は検出できる程の増加を示さないが、COは前とほぼ同じ速度で増加し、同等の呼吸速度を示した。
【0038】
さらに実験を、同じ気密容器中に様々な果物を入れて約20時間放置して行い、下記の結果を得た。
【0039】

果物 果物重量/g 吸着剤 エチレン濃度/ppm
バナナ 140 無し 5.5
バナナ 140 ドーピングしていないZSM-5(23) 3.9
バナナ 156 1重量%Pd/ZSM-5(23) 0.0
バナナ 137 2.5重量%Pd/ZSM-5(23) 0.0
モモ 114 無し 35.0
モモ 114 2.5重量%Pd/ZSM-5(23) 1.5
リンゴ 148 無し 316.4
リンゴ 148 1重量%Pd/ZSM-5(23) 17.2
トマト 208 無し 1.4
トマト 207 2.5重量%Pd/ZSM-5(23) 0.0
ナシ 156 無し 42.9
ナシ 156 1重量%Pd/ZSM-5(23) 1.7
パッション 60.9 無し 109.9
フルーツ
パッション 2.5重量%Pd/ZSM-5(23) 13.7
フルーツ
【0040】
例6
モノリスを使用するエチレン吸着
車両排気触媒に一般的に使用される型の、900 cpsi(セル/平方インチ)コージーライト触媒モノリス、重量3 g、直径2.2 cm、長さ2.5 cm、を、2.5重量%Pd/ZSM-5スラリーで被覆した。スラリーは、細かく粉砕した、ドーピングされたZSM-5を水中に分散させて調製した(ドーピングされたZSM-5は、例1に記載されている方法により調製した)。ウォッシュコート装填量は、0.28 g/cmであった。モノリスは、そのエチレン吸着に関して、ITKリグで、O10%、C20 ppmおよび残部Arを含んでなるガスを使用し、流量10 ml/分で試験した。試験結果を図5に示す。
【0041】
この実験は、吸着剤で被覆したモノリスが、数日間にわたって、存在するエチレンのほとんど全てを除去できることを示している。(追加の実験は、エチレン吸着速度が、実験を行う温度の上昇と共に増加することを示している)。
【0042】
例7
指示薬の存在下におけるエチレン吸着
エチレン指示薬は、日本国特許出願第60-202252号明細書に従って調製した(実質的にモリブデン酸アンモニウムおよび硫酸パラジウムの酸性化された溶液を多孔質担体に含浸させたものである)。エチレンに露出すると、この材料は色が、明るい黄色から暗青/黒色に変化する。
【0043】
1リットルガラスビーカー中に、指示薬0.5 gを単独で、リンゴ1個のみと共に、およびリンゴ1個とエチレン吸着剤0.2 gと共に、入れた(すなわち、ビーカー1=センサーのみ、ビーカー2=果物+指示薬、ビーカー3=果物+吸着剤+指示薬)。各ビーカーを粘着テープで密封し、72時間放置した。24時間間隔で、各エチレンセンサー粉末を取り出し、色をSpectroflash 500シリーズ比色計で測定した。100の値が白であり、0が黒である、CIELAB明度スケール(L)を使用してセンサー粉末の明度変化を監視した。
【0044】
エチレン指示薬の試料もエチレン1000 ppmに24時間露出した。この試料および新しい試料の色測定値も比較用に記録した。
【0045】
図6から分かるように、リンゴから放出されるエチレンは、補集剤無しでは、指示薬を72時間後に、エチレン1000 ppmに24時間露出したエチレン指示薬とほとんど同じ程度に、黒変させた。果物を吸着と共に含むビーカー中のセンサー粉末の色は、あまり黒変せず、エチレン吸着剤がエチレンを除去することを示している。空のビーカー中に密封したエチレンセンサーの試料は、72時間にわたって、大きく変色しなかった。
【0046】
例8
ホルムアルデヒドおよび酢酸吸着
飽和装置を使用し、21℃で、粒子径250〜355μmのドーピングされたZSM-5(23)0.1 gを使用し、O10%、CHOまたはCHCOOH300 ppmおよび残部He/Arを含んでなるガスの流量50 ml/分で測定を行った。
【0047】
2.5重量%Pd/ZSM-5(23)のホルムアルデヒド吸着容量は、9750μl/g吸着剤であることが分かった。2.5重量%Pd/ZSM-5(23)の酢酸吸着容量は、29241μl/g吸着剤であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、パラジウムドーピングされたZSM-5およびドーピングされていないZSM-5によるエチレン吸着と時間の関係を示すグラフ(供給ガス中に水が存在する、および存在しない、湿潤または乾燥)であり、該グラフは、エチレン吸着を可能にするのはパラジウムの存在であることを立証している。
【図2】図2は、SiO:Al比が23であり、パラジウムドーピングレベルが異なり、0.5重量%〜5重量%である、および比較用に銀ドーピング2.5重量%であるZSM-5によるエチレン吸着を示し、該グラフは、他の金属に対するパラジウムドーピングの効果、およびドーピングレベルの変化によるエチレン吸着容量の変化を立証している。
【図3】図3は、様々なパラジウムドーピングされたゼオライト(SiO:Al比を括弧内に示す)によるエチレン吸着を示し、Pd装填量は全ての場合で2.5重量%であり、該グラフは、パラジウムドーピングされたゼオライトによるエチレン吸着は、SiO:Al比が比較的低いZSM-5の方が、より大きいことを立証している。
【図4】図4は、エチレンを放出する有機物質としてバナナを使用する例で測定したCOおよびエチレンの濃度を示す(さらなる考察に関しては、例5参照)。
【図5】図5は、2.5重量%Pd/ZSM-5で被覆したモノリスによるエチレン吸着を示す。
【図6】図6は、リンゴ、リンゴおよび吸着剤に露出した後のエチレン指示薬、および指示薬自体の明度を示すグラフである(エチレンに露出した後の指示薬を基準として測定)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウムドーピングされたZSM-5の使用であって、
有機物質に由来する揮発性有機化合物(VOC)を吸着するものであり、
前記ZSM-5のSi:Al比が100:1以下である、使用。
【請求項2】
前記ZSM-5のSi:Al比が22:1〜28:1である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記有機物質が、腐敗しやすい有機商品からなる、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記腐敗しやすい有機商品が、食品を含んでなる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記食品が、果物および/または野菜を含んでなる、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記腐敗しやすい有機商品が、園芸産物を含んでなる、請求項1または2に記載の使用。
【請求項7】
前記園芸産物が、植物および/または切り花を含んでなる、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記有機物質が、廃棄物を含んでなる、請求項1または2に記載の使用。
【請求項9】
前記有機物質が、貯蔵容器または包装物の中に収容される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記ドーピングされたZSM-5が、前記貯蔵容器または包装物の中に、あるいは前記貯蔵容器または包装物の一部の中に配合される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記ドーピングされたZSM-5が、貯蔵容器または包装物の中に挿入または保持するための基材を備えてなるラベルの中に配合される、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記貯蔵容器または包装物が、廃棄物容器である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記VOCが、温度−10℃〜50℃で吸着される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記VOCが、温度0℃〜30℃で吸着される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記VOCが、エチレンを含んでなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記VOCが、ホルムアルデヒドおよび/または酢酸を含んでなる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記パラジウムが、前記ドーピングされたZSM-5の総重量に対して0.1重量%〜10.0重量%を構成する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記パラジウムが、前記ドーピングされたZSM-5の総重量に対して0.5重量%〜5.0重量%を構成する、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記VOCが、0.10 ppm以下のレベルに吸着される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記VOCが、0.05 ppm以下のレベルに吸着される、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記ZSM-5を空気中で250℃に30分間加熱し、前記ZSM-5上に吸着されたVOCおよび存在する全ての二次化合物を放出させ、それによって、前記ドーピングされたZSM-5を再生し、さらに使用する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記ドーピングされたZSM-5が、VOC指示薬と共に使用される、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
パラジウムドーピングされたZSM-5であって、
前記ZSM-5のSi:Al比が100:1以下であり、
前記パラジウムが、前記ドーピングされたZSM-5の総重量に対して0.1重量%〜10.0重量%を含んでなる、パラジウムドーピングされたZSM-5。
【請求項24】
前記ZSM-5のSi:Al比が、22:1〜28:1である、請求項23に記載のパラジウムドーピングされたZSM-5。
【請求項25】
前記パラジウムが、前記ドーピングされたZSM-5の総重量に対して0.5重量%〜5.0重量%を含んでなる、請求項23または24に記載のパラジウムドーピングされたZSM-5。
【請求項26】
ラベル、香料袋またはインクの形態にあるか、または触媒担体上に被覆された形態、もしくは押出物、ペレット、錠剤、粒子または顆粒の形態にある、請求項23〜25のいずれか一項に記載のパラジウムドーピングされたZSM-5。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−235285(P2011−235285A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147617(P2011−147617)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【分割の表示】特願2008−538426(P2008−538426)の分割
【原出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】