説明

有機珪素化合物、液組成物、樹脂組成物、及びそれを用いた金属箔複合膜或いは金属箔積層体、接着剤、コーティング剤。

【課題】低熱処理温度で接着性が得られ、高い耐熱性を有する表面処理剤の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物、該化合物と溶剤を含む液組成物、樹脂組成物、該組成物を含む接着剤、コーティング剤、該組成物と金属箔から成る金属箔複合膜、並びに金属箔積層体。


一般式(1)および(2)において、Rは水素原子またはアルキル基、置換ケイ素基を表し、Xは、アミド結合、イミド環結合、イミノ結合、ウレア結合、ウレタン結合、エーテル結合、又はチオエステル結合、エステル結合、カーボネート結合を表す。Lは、単結合又は任意の2価の連結基を表す。Xはベンゼン環と2つの結合により、環を形成しても良い。R,Rは置換基を表し、nは0以上3以下の整数を表す。nは1以上4以下の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機珪素化合物、該化合物と溶剤を含んで成る液組成物、樹脂組成物、及び該組成物を用いた金属箔複合膜、或いは金属箔積層体、接着剤、及びコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高密度化、高性能化ニーズの増大に伴い、電子デバイスに使用されるプリント配線版のファインピッチ化が望まれている。また、処理情報量の増大化に伴い、高周波への対応も求められている。ファインピッチ化(配線の幅・間隔を狭くする)、高周波への対応のためには、表面粗度の低い銅箔を使用することが不可欠であるが、このような銅箔はアンカー効果(銅箔凹凸への樹脂の食い込み)が低いために、物理的接着強度が低下してしまうのが一般的である。このため、化学的に接着強度を向上させる方法としてシランカップリング剤を使用することにより銅箔と樹脂の接着強度を補強したり、樹脂の組成を変更する方法が行われている。(例えば、特許文献1、2)
【0003】
また、塗装鋼材の鋼材表面処理や、シリカやアルミナなどで構成される樹脂フィラーの表面処理などにおいても、それらの材料特性向上のために、無機材料と有機素材の接着性を向上させることが必要である。このような無機材料と有機素材の接着性を向上させる手段として、シランカップリング剤を樹脂中(有機素材)へ添加したり、有機素材表面または無機材料表面へ処理を施したりすることが行われているが、さらなる改善が求められている。(例えば、特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−2910613号明細書
【特許文献2】特開2000−297094号明細書
【特許文献3】特開2007−277584号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来知られているシランカップリング剤による表面処理では接着強度向上効果が不十分であった。
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、低い熱処理温度で接着性を得ることができ、さらには高い耐熱性を付与できる表面処理剤組成物用化合物、及び該化合物を用いた液組成物、樹脂組成物、該組成物を用いた金属箔複合膜、該金属箔と樹脂組成物を含んでなる金属箔積層体、該組成物を用いた接着剤、コーティング剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の事情に艦み鋭意研究した結果、接着効果を得るための処理として低温処理を可能とし、さらに高い耐熱性を付与するため、特定の非芳香族アセチレン基を有するアルコキシシラン化合物とすることを見出し、本発明至ったものである。即ち本発明の上記目的は下記項目<1>〜<10>の手段により解決される。
【0007】
以下、本発明について詳述する。
<1> 一般式(1)で表される化合物。
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(1)および(2)において、Rは水素原子またはアルキル基、置換ケイ素基を表し、Xは、アミド結合、イミド環結合、イミノ結合、ウレア結合、ウレタン結合、エーテル結合、又はチオエステル結合、エステル結合、カーボネート結合を表す。Lは、単結合又は任意の2価の連結基を表す。Xはベンゼン環と2つの結合により、環を形成しても良い。R,Rは置換基を表し、nは0以上3以下の整数を表す。nは1以上4以下の整数である。)
【0010】
<2> 一般式(1)において、Xが、−C(=O)NR−、−NRC(=O)NR−、−O−、−NRC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−またはイミド環結合であることを特徴とする<1>に記載の化合物。ここでR、Rは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。
<3> 前記一般式(1)において、R=H,n=0であることを特徴とする<1>または<2>に記載の化合物。
【0011】
<4> 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)〜(6)で表される化合物であることを特徴とする<1>に記載の化合物。
【0012】
【化2】


これらの式中、LとRは、一般式(1)におけるLとRと同義である。
【0013】
<5> 前記Lが、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又はそれらと−NR−或いは−O−、−C(=O)O−、−C(=O)−との組合せで構成される基であることを特徴とする<1>に記載の化合物。ここでRは、水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0014】
<6> 少なくとも前記<1>〜前記<5>のいずれか1項に記載の化合物と溶剤とを含有することを特徴とする液組成物。
<7> 前記<6>に記載の液組成物を金属箔へ塗布した後、乾燥させることにより得られることを特徴とする金属箔複合膜。
<8> 少なくとも前記<7>に記載の金属箔複合膜と樹脂を含んでなる金属箔積層体。
【0015】
<9> 少なくとも、前記<1>〜前記<5>のいずれか1項に記載の化合物と樹脂とを含んでなる樹脂組成物。
<10> 前記<9>に記載の樹脂組成物を含んでなる接着剤。
<11> 前記<9>に記載の樹脂組成物を含んでなるコーティング剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低い熱処理温度で接着性を得ることができ、さらには高い耐熱性を付与できる表面処理剤組成物用化合物、及び該化合物を用いた液組成物、樹脂組成物、該組成物を用いた金属箔複合膜、該金属箔と樹脂組成物を含んでなる金属箔積層体、該組成物を用いた接着剤、コーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の一つの態様は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0018】
【化3】

【0019】
一般式(1)において、Xは、アミド結合、イミド環結合、イミノ結合、ウレア結合、ウレタン結合、エーテル結合、又はチオエステル結合、エステル結合、カーボネート結合から成る群から選ばれる2価の有機基を表すが、Xは、ベンゼン環と2つの結合により環を形成してもよく、その場合は3価となる。Xは、具体的には、一般式(1)で表される化合物の合成や原料化合物入手の容易性や、該化合物を用いた組成物や金属箔、ならびに金属箔積層体等の耐熱性等から、−C(=O)NR−、−NRC(=O)NR−、−O−、−NRC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−またはイミド環結合であることが好ましく、−C(=O)NR−、−NRC(=O)NR−、またはイミド環結合であることがより好ましい。特に好ましくは、Xは、−NRC(=O)NR−、またはイミド環結合である。ここでイミド環結合とは、イミド環を有する化合物(例えば、マレイミド、コハクイミド、グルタルイミド、フタルイミド、ピロメリットイミド、或いは後述のテトラカルボン酸二無水物等から得られるジイミド化合物等)の可能な任意の位置からの結合手を2つ有するものを言う。
【0020】
ここでR、Rは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基などが挙げられる。R、Rは、互いに結合して、環を形成(例えば、エチレン尿素環基など)してもよい。これらの中でもR、Rとしては、化合物の合成や原料化合物入手の容易性等の観点から、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基など)が好ましく、更に水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0021】
Lは、単結合又は任意の2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、炭素数1〜20のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、i−プロピレ基、ブチレン基、i−ブチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、2−エチルヘキシレン基、オクチレン基、ドデシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メンチレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基など)、炭素数6〜20のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基など)、又はそれらと−NR−、−O−、−C(=O)O−或いは−C(=O)−との組合せで構成される基である。ここでRは、前記XにおけるRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0022】
前記Lにおけるアルキレン基、及びアリーレン基は、更に他の置換基によって置換されていてもよい。その置換基としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、アルキルアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、モノアリールホスフォノ基、ジアルキルホスフォノオキシ基、ジアリールホスフォノオキシ基、アルキルアリールホスフォノオキシ基、モノアルキルホスフォノオキシ基、モノアリールホスフォノオキシ基、モルホリノ基、シアノ基、ニトロ基が挙げられる。
【0023】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。アラルキル基としては、上記のアルキル基に上記のアリール基が置換したものを挙げることができる。
【0024】
これら置換基のうち、原料の入手性や製造の容易性の観点で、好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl)、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、シアノ基が挙げられる。
【0025】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Cl)、アルキル基(メチル基、トリフロロメチル基、エチル基、トリフロロエチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基)、アリール基(フェニル基、トリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)、アリーロキシ基(フェノキシ基)、アシルオキシ基(アセトキシ基、プロピオニルオキシ基)、アセチル基、アセトキシ基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、アシルアミノ基(アセチルアミノ基)が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、原料の入手性や製造の容易性の観点で、Lとしては、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、炭素数6〜10のアリール基、アリーロキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基で置換された、或いは無置換のアルキレン基又はアリーレン基、又はそれらと−NR−、−O−、−C(=O)O−、或いは−C(=O)−との組合せで構成される基、又は単結合が好ましく、クロル原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、炭素数6〜10のアリーロキシ基、アラルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基で置換された、或いは無置換のアルキレン基又はアリーレン基、又はそれらと−NH−、−O−或いは−C(=O)O−との組合せで構成される基がより好ましく、更に、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、炭素数6〜10のアリーロキシ基、アラルキル基、ヒドロキシ基で置換された、或いは無置換のアルキレン基又はアリーレン基、又はそれらと−NH−或いは−O−との組合せで構成される基がより好ましい。特に、無置換、又はヒドロキシ置換の炭素数1〜6のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基など)、無置換のフェニレン又はビフェニレン基、或いはそれらと−NH−或いは−O−との組合せで構成される基が好ましい。
Lの具体例としては、例えば下記のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されることを企図するものではない。尚、下記具体例において、元素記号上の ・(ラジカル)は連結部分を示す。
【0027】
【化4】

【0028】
は水素原子またはアルキル基、置換ケイ素基を表すが、アルキル基は任意の位置で更に置換されてもよい。無置換のアルキル基としては炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。前記直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などの直鎖、又は分岐のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基、ボルニル基、ノルボニル基、デカリニル基、アダマンチル基、ジアマンチル基などの環状アルキル基などが挙げられる。
【0029】
任意に置換されていてもよいアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、アミド基、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、ドデシルオキシ基)、炭素数1〜20のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ウンデシルカルボニルオキシ基など)、炭素数1〜20のアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、N−メチルアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基など)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基など)、ヒドロキシル基、シリル基などが挙げられる。
【0030】
置換珪素基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジイソプロピルメチルシリル基などが挙げられる。
【0031】
これらの中でも、Rとしては一般式(1)で表される化合物の熱硬化が容易になることから、水素原子、無置換または任意に置換されていてもよい直鎖、又は分岐のアルキル基、又はアルキルシリル基が好ましく、水素原子、無置換又は、ヒドロキシ置換の炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、原料の入手性や製造の容易性の観点から、水素原子が特に好ましい。
【0032】
,Rはそれぞれ独立に、水素原子又は、炭素数1〜10の有機置換基を表し、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの基)、炭素数2〜10のアルケニル基(例えば、エテニル基、アリル基、プロペニル基、i−プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、2−エチルヘキセニル基、オクテニル基、ドデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニルなどの基)、炭素数6〜10のアリ−ル基(例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、メトキシフェニル基、アセトキシフェニル基、エトキシフェニル基などの基)、炭素数7〜10のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などの基)が挙げられる。これらの中でも原料入手性等の観点から、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、更に炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特にメチル基、エチル基が好ましい。一般式(1)において、R又はRが複数存在する場合、それぞれのR又はRは、同じでも異なっていてもよい。
【0033】
一般式(1)において、nは0以上3以下の整数を表し、nは1以上4以下の整数である。化合物の合成や原料化合物入手性等の観点から、nは0〜2が好ましく、より好ましくは、nは0または1であり、特に0が好ましい。
は、1〜3が好ましく、1又は2が更に好ましい。
【0034】
一般式(1)で表される化合物は、更に、ベンゼン環は、無置換か、任意の位置で他の置換基により置換されていてもよい。前記他の置換基としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、アルキルアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、モノアリールホスフォノ基、ジアルキルホスフォノオキシ基、ジアリールホスフォノオキシ基、アルキルアリールホスフォノオキシ基、モノアルキルホスフォノオキシ基、モノアリールホスフォノオキシ基、モルホリノ基、シアノ基、ニトロ基が挙げられる。
【0035】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。アラルキル基としては、上記のアルキル基に上記のアリール基が置換したものを挙げることができる。
【0036】
これら置換基のうち、原料の入手性や製造の容易性の観点で、好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl)、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、シアノ基が挙げられる。
【0037】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Cl)、アルキル基(メチル基、トリフロロメチル基、エチル基、トリフロロエチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基)、アリール基(フェニル基、トリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)、アリーロキシ基(フェノキシ基)、アシルオキシ基(アセトキシ基、プロピオニルオキシ基)、アセチル基、アセトキシ基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、アシルアミノ基(アセチルアミノ基)が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、原料の入手性や製造の容易性の観点で、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、炭素数6〜10のアリール基、アリーロキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基で置換された、或いは無置換のアルキレン基又はアリーレン基、又はそれらと−NR−或いは−O−との組合せで構成される基、又は単結合が好ましく、クロル原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、炭素数6〜10のアリーロキシ基、アラルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基で置換された、或いは無置換がより好ましく、更に、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、炭素数6〜10のアリーロキシ基、アラルキル基、ヒドロキシ基で置換された、或いは無置換がより好ましい。特に、無置換が好ましいが、一般式(1)で表される化合物のベンゼン環が他の置換基により置換されている場合の、置換基の数としては、1〜3が好ましく、更に1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0039】
一般式(1)で表される化合物は、化合物の合成や原料化合物入手、材料の耐熱性等の観点から下記一般式(2)から一般式(6)で表される化合物であることが好ましい。
中でも一般式(2)から一般式(4)のものが好ましく、特に一般式(4)のものが好ましい。
【0040】
【化5】


これらの式中、LとRは、一般式(1)におけるLとRと同義である。
【0041】
前記一般式(1)から一般式(6)で表される具体的な化合物としては、例えば次に掲げる化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0042】
【化6】



【0043】
【化7】



【0044】
【化8】

【0045】
【化9】


ここでMeはメチル基を、Etはエチル基を表す。
【0046】
本発明の他の態様は、少なくとも前記一般式(1)から一般式(6)で表される化合物のいずれか1つの化合物と溶剤とを含有することを特徴とする液組成物であるが、適用時の適用量や適用量の均一性の制御やハンドリング性等の観点から、更に樹脂を溶解又は分散させた樹脂組成物であることが好ましい。
【0047】
前記樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、少なくともエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0048】
用いることの出来るエポキシ樹脂としては特に限定されず、市場で入手可能なものとして例えば、エピコート828EL、エピコート1004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;エピコート806、エピコート4004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン830CRP(大日本インキ社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;エピクロンEXA1514(大日本インキ社製)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;RE−810NM(日本化薬社製)等の2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂;エピクロンEXA7015(大日本インキ社製)等の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂;EP−4000S(旭電化社製)等のプロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂;EX−201(ナガセケムテックス社製)等のレゾルシノール型エポキシ樹脂;エピコートYX−4000H(ジャパンエポキシレジン社製)等のビフェニル型エポキシ樹脂;YSLV−50TE(東都化成社製)等のスルフィド型エポキシ樹脂;YSLV−80DE(東都化成社製)等のエーテル型エポキシ樹脂;EP−4088S(旭電化社製)等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれも大日本インキ社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂;エピクロンN−770(大日本インキ社製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂;エピクロンN−670−EXP−S(大日本インキ社製)等のオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;エピクロンHP7200(大日本インキ社製)等のジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂;NC−3000P(日本化薬社製)等のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂;ESN−165S(東都化成社製)等のナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂;エピコート630(ジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン430(大日本インキ社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ZX−1542(東都化成社製)、エピクロン726(大日本インキ社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等のアルキルポリオール型エポキシ樹脂;YR−450、YR−207(いずれも東都化成社製)、エポリードPB(ダイセル化学社製)等のゴム変性型エポキシ樹脂;デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等のグリシジルエステル化合物;エピコートYL−7000(ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂;その他YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも東都化成社製)、XAC4151(旭化成社製)、エピコート1031、エピコート1032(いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EXA−7120(大日本インキ社製)、TEPIC(日産化学社製)等が例示される。
【0049】
上記エポキシ樹脂の配合量としては特に限定されず、使用する目的に応じ上述した一般式(1)で表される化合物や前記樹脂、溶媒等の種類、配合量等に合わせて適宜調整される。
【0050】
本発明の樹脂組成物を構成するその他の構成成分としては特に限定されないが、溶媒、有機または無機の粒子、有機または無機の繊維、その他の有機または無機重合体等が挙げられる。塗布やコーティング等のハンドリングや硬化処理が容易である観点から、溶液であることが好ましい。よって、本発明の好ましい組成物の態様例は溶液である。
【0051】
好ましい態様例である溶液に用いることのできる溶媒としては、特に限定はされないが、例えばアミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドンなど)、スルホン系溶媒(例えばスルホランなど)、スルホキシド系溶媒(例えばジメチルスルホキシドなど)、ウレイド系溶媒(例えばテトラメチルウレア、エチレン尿素など)、エーテル系溶媒(例えばジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、石油エーテルなど)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなど)、炭化水素系溶媒(例えばトルエン、キシレン、n−デカン)、ハロゲン系溶媒(例えばテトラクロロエタン、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルムなど)、ピリジン系溶媒(例えばピリジン、γ−ピコリン、2,6−ルチジンなど)、エステル系溶媒(例えば酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、ピバロン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、プロパンジオールメチルエーテルアセテートなど)、アルコール系溶媒(例えばエタノール、プロパノール、アミルアルコール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコール、フルフリルアルコールなど)およびニトリル系溶媒(例えばアセトニトリル、プロピオニトリルなど)を単独或いは併用して用いる。このうち重合体の溶解性が良好であるという観点から、好ましくはアミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ウレイド系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、ピリジン系溶媒、およびニトリル系溶媒であり、更に好ましくはアミド系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、およびニトリル系溶媒であり、更により好ましくはアミド系溶媒およびニトリル系溶媒である。これらは、用いる一般式(1)で表されるエチニル基を有する化合物(A)や他の重合体(B)に対する溶解性を示すものが選択されることが好ましく、これら溶媒は単独又は二種類以上を混合して用いても良い。
【0052】
[組成比率]
一般式(1)で表されるエチニル基を有する化合物(A)と樹脂等他の重合体(B)の配合割合は、特に限定されるものではないが、本発明の目的である低温硬化性および耐熱性、耐屈曲性を兼備させるフレキシブルプリント基板を得る観点から、エチニル基を有する化合物(A)/他の重合体(B)との混合比は、質量比で0.01/99.99〜50/50、より好ましくは0.1/99.9〜90/10である。さらに好ましくは、0.2/99.8〜10/90である。
組成比率が上記の範囲内にある場合、低温硬化性、耐熱性、耐屈曲性を有した樹脂組成物を得ることができる。また、組成比率が上記の範囲内にない場合、低温硬化性、耐熱性、耐屈曲性のいずれかの物性が低下した樹脂組成物になる。
【0053】
[助剤]
なお、本発明の樹脂組成物中には、接着剤、コーティング剤やその他の適用目的に応じて、上記バインダー樹脂および溶剤のほかに、フィラー、酸化防止剤、界面活性剤、UV吸収剤、染料、顔料、帯電防止剤、難燃剤等を配合してもよい。また、樹脂組成物や硬化物の性能を損なわない範囲で併用することも可能である。
添加量は樹脂組成物に対して、通常0.01質量%〜50質量%程度配合されるが、0.1質量%〜70質量%程度配合することが好ましい。より好ましくは0.2質量%〜80質量%程度配合することが望ましい。
【0054】
樹脂組成物が溶液の場合、その粘度は特に限定されるものではないが、塗布等の作業性を考慮すると、コーンプレート粘度計で測定した30℃における粘度が、1000mPa・s〜5000mPa・sであることが好ましい。なお、この粘度は、バインダー樹脂の分子量によっても左右されることから、使用する樹脂の分子量に応じて、溶剤の量を適宜加減し、スラリー粘度を上記範囲に調節するとよい。
【0055】
[組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物を製造する方法については特に限定されないが、一般式(1)で表されるエチニル基を有する化合物(A)と他の重合体(B)とが各々溶解する溶媒に溶解させた後に混合する方法、一方を溶媒に溶解させた後に固体状の他方を添加する方法、固体状の両者を直接混合する方法、混合したものを熱溶融させる方法等、特にその製造方法には制限されない。
【0056】
[硬化物]
本発明の樹脂組成物を100℃〜400℃で熱処理することにより、硬化物を形成することが出来る。
本発明の樹脂組成物は、加熱処理することによって架橋反応を起こして硬化させることができる。本発明に係る一般式(1)で表されるエチニル基を有する化合物(A)は、エチニル基同士の付加反応を起こし、本発明の樹脂組成物中に含まれる他の重合体(B)と擬似IPN構造をとって硬化する。
【0057】
<硬化物を形成するための硬化条件>
本発明の樹脂組成物を硬化させるに必要な条件は、特に限定されないが、紫外線や可視光等の電磁波や電子線、熱、ラジカルや酸、塩基等を添加する方法等が利用可能であるが、特に添加剤を使用しないことや反応効率に優れる点から、熱による硬化反応が好ましい。
熱による硬化反応を行う場合、好ましい温度条件は、反応の効率が高くなることや得られた硬化物機械特性に優れること、配線を保護する観点から硬化温度は低温が望ましく、具体的温度範囲としては100℃〜400℃が好ましく、さらに好ましくは150℃〜350℃、より好ましくは200℃〜300℃である。硬化時の処理温度が100℃未満であった場合には硬化反応が不充分となり、400℃を超えると銅配線の酸化が起こって抵抗値が大きくなり易く、また、樹脂組成物の熱分解が起こりやすくなるために好ましくない。
本発明により得られる硬化物は、架橋構造を有しているため、機械特性や熱的特性に優れ、更に耐溶剤性等の化学安定性にも優れる。
【0058】
[フレキシブル金属張積層板]
本発明の他の態様の一つは、金属箔に本発明の前記液組成物や前記樹脂組成物を塗布、乾燥して得られる金属箔複合膜、或いは、それを複数含む金属箔積層体である。
本発明の樹脂組成物と金属箔、特に好ましくは銅箔を積層して、フレキシブル金属張り積層板を形成することが出来る。
【0059】
本発明のフレキシブル金属張り積層板は、高分子フィルムの片面又は両面に、本発明による樹脂組成物より成る接着剤層を設け、該接着剤層を介して該高分子フィルムの片面又は両面に金属箔を張り合わせて形成される。前記高分子フィルム及び前記接着剤層を用いることにより、充分な機械的強度を有しつつ、耐熱性、加工性、接着性に優れ、特に、半田耐熱性に卓越したフレキシブル金属張り積層板を得ることができる。
【0060】
<高分子フィルム>
次に、本発明のフレキシブル金属張り積層板に用いることができる高分子フィルムについて説明する。本発明のフレキシブル銅張り積層板では、高分子フィルムは接着剤層とともに絶縁層を形成するので、絶縁層が極端に薄くなるのを防いで、均一な絶縁層厚みを実現する必要がある。
【0061】
本発明のフレキシブル金属張り積層板に用いることができる高分子フィルムとしては、寸法安定性、耐熱性並びに機械的特性に優れた材料が好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン;エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル;さらに、ナイロン−6、ナイロン−11、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリケトン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂などのフィルムがあげられる。
【0062】
ここで、高分子フィルムは、本発明のフレキシブル金属張り積層板に十分な剛性を付与するために、引張弾性率が5GPa以上であることが好ましく、6GPa以上であることがより好ましい。
また、小径ヴィアホールの形成のために高分子フィルムの厚みは50μm以下が好ましく、35μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。好ましくは1μm以上、より好ましくは、2μm以上である。厚みがあまりなく、かつ充分な電気絶縁性が確保される高分子フィルムが望ましい。
【0063】
更に、フレキシブル金属張り積層板を加工する際には熱的な安定性が求められるので、高分子フィルムには寸法安定性が望まれる。したがって、2.0×10−5/℃以下、より好ましくは1.5×10−5/℃以下、更に好ましくは1.0×10−5/℃以下の線膨張係数を有する高分子フィルムが望ましい。さらに、加工時の熱によって膨れ等の欠陥が発生しないように、低吸水率の高分子フィルムが望ましい。ASTM−D570に準じて測定した高分子フィルムの吸水率は、同一組成でも厚みによって左右されるが、厚み25μmのフィルムの吸水率が、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.2%以下となる組成からなる高分子フィルムが望ましい。
【0064】
上記の諸特性を満足するフィルムとしてポリイミドフィルムが挙げられる。ポリイミドフィルムは、その前駆体であるポリアミド酸重合体溶液から得られる。このポリアミド酸重合体溶液は、当業者が通常用いる方法で製造することができる。すなわち、1種または2種以上のテトラカルボン酸二無水物成分と1種または2種以上のジアミン成分を実質等モル使用し、有機極性溶媒中で重合してポリアミド酸重合体溶液が得られる。
【0065】
ポリイミドフィルムの製造に用いられる代表的なテトラカルボン酸二無水物成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテ
トラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p−フェニレンジフタル酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等がある。
【0066】
これらのテトラカルボン酸二無水物の中で、引張弾性率が5GPa以上で線膨張係数が2.0×10−5/℃以下、吸水率が1.5%以下であるポリイミドフィルムを得るための好ましい組み合わせを例示すると、テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物を0〜80モル%、およびp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)を100〜20モル%用いる場合が挙げられる。
なお、ここに記載したテトラカルボン酸二無水物の組み合わせは本発明のフレキシブル金属張り積層板を構成する高分子フィルムに適するポリイミドフィルムを得るための一具体例を示すものにすぎない。これらの組み合わせに限らず、用いるテトラカルボン酸二無水物の組み合わせおよび使用比率を変えて、ポリイミドフィルムの特性を調整することが可能である。
【0067】
一方、ジアミン成分としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4、4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3、3’−ジアミノジフェニルスルフォン、9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、ビスアミノフェノキシケトン、4、4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4、4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4、4’−ジアミノベンズアニリド、3、3’−ジメチル−4、4’−ジアミノビフェニル、3、3’−ジメトキシ−4、4’−ジアミノビフェニル等の芳香族ジアミン、あるいはその他の脂肪族ジアミンを挙げることができる。
【0068】
これらのジアミン成分の中で、引張弾性率が5GPa以上で線膨張係数が2.0×10−5/℃以下、吸水率が1.5%以下であるポリイミドフィルムを得るための好ましい組み合わせを例示すると、パラフェニレンジアミン及び/又は4、4’−ジアミノベンズアニリドをジアミン成分の20〜80モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを80〜20モル%用いる場合が挙げられる。
【0069】
なお、ここに記載したジアミン成分の組み合わせは本発明のフレキシブル金属張り積層板を構成する高分子フィルムに適するポリイミドフィルムを得るための一具体例を示すものである。これらの組み合わせに限らず、用いるジアミン成分の組み合わせおよび使用比率を変えて、ポリイミドフィルムの特性を調整することが可能である。
【0070】
本発明のフレキシブル金属張り積層板を構成する高分子フィルムとしてポリイミドフィルムを用いる場合、その前駆体であるポリアミド酸の数平均分子量は10,000〜1,000,000であることが望ましい。平均分子量が10,000未満ではできあがったフィルムが脆くなる場合がある。他方、数平均分子量が1,000,000を越えるとポリイミド前駆体であるポリアミド酸ワニスの粘度が高くなりすぎ取扱いが難しくなるおそれがある。
【0071】
また、ポリアミド酸に各種の有機添加剤、或は無機のフィラー類、或は各種の強化材を
添加し、複合化されたポリイミドフィルムとすることも可能である。
ポリアミド酸共重合体の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。これらは単独または混合物として用いるのが望ましい。更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素を前記溶媒に一部混合して使用してもよい。
【0072】
また、このポリアミド酸共重合体は前記の有機極性溶媒中に5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%溶解されているのが取扱いの面から望ましい。
このポリアミド酸共重合体溶液から、ポリイミドフィルムを得るためには熱的に脱水する熱的方法、脱水剤を用いる化学的方法のいずれを用いてもよいが、化学的方法によると生成するポリイミドフィルムの伸び率や引張強度等の機械特性がすぐれたものになるので好ましい。
【0073】
以下に化学的方法によるポリイミドフィルムの作製についての例を説明する。上記ポリアミド酸重合体またはその溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量の第3級アミンを加えた溶液をドラム或はエンドレスベルト上に流延または塗布して膜状とし、その膜を150℃以下の温度で約5分〜90分間乾燥し、自己支持性のポリアミド酸の膜を得る。ついで、これを支持体より引き剥し端部を固定する。その後約100℃〜500℃まで徐々に加熱することによりイミド化し、冷却後端部の固定を解放しポリイミドフィルムを得る。ここで言う脱水剤としては、例えば無水酢酸等の脂肪族酸無水物、無水安息香酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。また触媒としては、例えばトリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン類などが挙げられる。
【0074】
また、高分子フィルムは、接着層との密着性を向上させる目的で各種表面処理を行うことができる。
例えば、高分子フィルムの表面にCr、Ni、Ti、Mo等の金属の酸化物をスパッタ、プラズマイオン打ち込み等の方法で高分子フィルム表面に金属酸化物接着層を形成する方法、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、有機モノマー、カップリング剤等の各種有機物をプライマーとして塗布する方法、金属水酸化物、有機アルカリ等で表面処理する方法、プラズマ処理、コロナ処理する方法、表面をグラフト化させる方法等、高分子フィルムの製造段階で表面処理する方法等が挙げられる。これらの方法を単独でまたは各種組み合わせで高分子フィルム表面の処理を行っても良い。また、上記表面処理方法は、他面側の接着層との密着性を改善する事にも利用できる。
【0075】
<金属箔>
本発明で用いられる金属箔としては金属箔張り積層板や多層印刷配線板を製造する際に用いられるものであれば、その組成や形状等は特に制限されず、通常積層板に用いられている5〜200μmのものを使用できる。アルミニウム、銀、金、クロム、銅、鉄、マンガン、ニッケル、スズ、鉛、チタン、タングステン、モリブデン、亜鉛等の箔などが挙げられる。また、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、この両面に0.5〜15μmの銅層と10〜300μmの銅層を設けた3層構造の複合箔あるいはアルミニウムと銅箔を複合した複合箔を用いることもできる。
これらの中でも金属箔としては、銅、アルミニウム、金、銀の金属箔が好ましく、特に銅箔が好ましい。
【0076】
本発明のフレキシブル金属張り積層板に用いる金属箔には特に制限はないが、金属箔の厚みは挟ピッチ回路パターンを作製するためには12μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。剥離用キャリアを備えた金属箔も使用することができる。その際、剥離用キャリアとしては特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、離型紙、さらには銅箔、アルミ箔、42合金箔などの金属箔を用いることが可能であるが、銅箔を用いる場合には、剥離用キャリアにも銅箔を用いることが好ましい。剥離用キャリアの厚みには特に制限はないが、好ましくは1μm〜100μm、さらに好ましくは5μm〜50μmである。
【0077】
<フレキシブル金属張り積層板の製造方法>
以下、フレキシブル金属張り積層板の製造方法を示す。
まず、エチニル基を有する化合物(A)と他の重合体(B)からなる、本発明の樹脂組成物を溶媒に溶解し、樹脂溶液を得た後、高分子フィルムの表面に塗布後乾燥し、ボンディングシートを得る。あるいは、上記のようにして得た樹脂溶液を支持体上にキャストし、溶媒を除去してシートとした後、高分子フィルムに貼り合わせてボンディングシート得ることもできる。次に、上記ボンディングシートの両面にプレス、ロール加熱などの方法により金属箔を張り合わせて本発明のフレキシブル金属張り積層板を得ることができる。効率よくフレキシブル金属張り積層板を製造できる点で、ロールツーロール方式で製造することが好ましい。
【0078】
また、本発明のフレキシブル金属張り積層板には表面を保護する目的で保護フィルムを用いることも可能である。
上記したフレキシブル金属張り積層板の製造方法は一例であり、当業者が実施しうる範囲内のいずれの方法も可能である。
以上、本発明のフレキシブル金属張り積層板について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施できることはいうまでもない。
【0079】
[カバーレイ、フレキシブルプリント基板]
本発明のフレキシブルプリント基板は、上記のフレキシブル金属張積層板の金属箔面をエッチングによって所望の回路パターンが形成された後、カバーレイ(保護層)として本発明の樹脂組成物を銅配線上にコーティングすることによって、電子機器等の電気的接続に用いられるフレキシブルプリント配線板となされる。
本発明の樹脂組成物をカバーレイとして使用する方法としては特に制限は無く、溶液(樹脂組成物)をコーターやローラーを用いて金属配線上に塗布することが可能であり、特にビアホールを避けて塗布する必要があることから、スクリーン印刷等の公知の印刷技術によって塗布することが好ましい。溶液(組成物)を塗布した後に、熱硬化させる必要があるが、その硬化条件は上述の条件と同様で良い。
【0080】
本発明のフレキシブルプリント基板は耐熱性が高いため、はんだリフローやリワークでの変形や金属と樹脂との剥離トラブルを発生し難く、なおかつJIS C5016等で規定されている耐屈曲性に優れており、スライド式の携帯電話用に好適である。特に、本発明に係るエチニル基を有する化合物と他の重合体とを併用することによって、従来、両立できない領域での使用が可能となった。すなわち、単純に使用する樹脂の耐熱性を高くした場合、概ねフレキシブルプリント基板の耐屈曲性が低下する傾向にあり、逆に、耐屈曲性を向上させるために樹脂の柔らかいものを選択した場合にははんだ耐熱性が低下する傾向にあった。
【0081】
本発明で用いる金属箔を配置した金属張積層板のプレス条件は特に制約はなく、一般に樹脂が溶融した後硬化可能な温度、時間で、使用する基材に溶融した樹脂が含浸する圧力等であればよい。具体的には、通常温度は、130〜180℃の範囲で、場合によっては100〜250℃の範囲で、また圧力は、通常0.5〜6MPaの範囲で、場合によっては0.1〜20MPaの範囲で、プレス機の能力、目的の積層板の厚さ等により適宜選択される。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明がそれらに限定されることを企図するものではない。

【実施例】
【0082】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]化合物A−14の合成
【0083】
【化10】

【0084】
窒素気流下、還流冷却器を取り付けた攪拌機付き500mLの3つ口フラスコに、3−ヨード安息香酸エチルを0.1mol、2−メチル−3−ブチン−2−オールを0.12mol、トリエチルアミン300ml、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを0.1mmol、トリフェニルホスフィンを0.5mmol、ヨウ化銅(I)を1mmol加え5時間加熱還流を行い、その後冷却した。
冷却後反応物をろ過、濾液濃縮し、濃縮物を酢酸エチル500mlと5%希塩酸500mlで抽出した。有機層を2回水洗し、1%炭酸水素ナトリウム水で洗浄した後、有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで合成中間体(A-14a)を0.055molを得た。
【0085】
【化11】



【0086】
窒素気流下、還流冷却器を取り付けた攪拌機付き1Lの3つ口フラスコに、合成中間体(A-14a)を0.055mol、アセトン600mlに溶解し、そこへ30mlの水に溶解させた0.06molの炭酸ナトリウムを加え、50℃で1時間反応させた。その後冷却し、1N塩酸を100ml加えた。アセトン約500mlを濃縮除去し、酢酸エチル500mlと水500mlを加え、有機層を抽出、水洗後濃縮することにより、合成中間体(A-14b)0.035molを得た。
【0087】
【化12】



【0088】
窒素気流下、還流冷却器を取り付けた攪拌機付き500mlの3つ口フラスコに、合成中間体(1−B)30mmolに、THF50mlを加え、塩化オキサリル30mmolを氷冷下滴下した。トリエチルアミン60mmolを加えた後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン65mmolを加え、室温で3時間攪拌した。
生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的とする化合物A−14を9mmol得た。
[実施例2]化合物A−30の合成
【0089】
【化13】





【0090】
窒素気流下、還流冷却器を取り付けた攪拌機付き500mlの3つ口フラスコに、2−エチニル無水フタル酸無水物40mmolに、THF300mlを加え、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン40mmolを加え、室温で6時間攪拌した。次に無水酢酸80mmolとトリエチルアミン20mmolを添加し、50℃にて12時間攪拌し、反応液を濃縮した。次に、酢酸エチル300mlと水500mlを加え有機層を抽出し、有機層の水洗を3回行った。有機層の濃縮後、反応生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的とする化合物A−30を15mmol得た。
[実施例3]化合物A−27の合成
【0091】
【化14】



【0092】
窒素気流下、還流冷却器を取り付けた攪拌機付き500mlの3つ口フラスコに、3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアネート110mmol、3−エチニルアニリン100mmolとTHF300mlを加え、6時間還流を行った。反応液を約400mlの濃縮を行い、酢酸エチル300mlと水500mlを加え有機層を抽出し、有機層の水洗を2回行った。有機層を濃縮することにより、目的とする化合物A−27を94mmol得た。
[実施例4]化合物A−28の合成
【0093】
【化15】



【0094】
窒素気流下、還流冷却器を取り付けた攪拌機付き300mlの3つ口フラスコに、3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアネート110mmol、3−ヒドロキシフェニルアセチレン100mmolとTHF150mlを加え、10時間還流を行った。反応液約200mlの濃縮を行い、酢酸エチル300mlと水300mlを加え有機層を抽出し、有機層の水洗を2回行った。有機層を濃縮することにより、目的とする化合物A−28を90mmol得た。
[実施例5]化合物A−9の合成
【0095】
【化16】



【0096】
窒素気流下、還流冷却器を取り付けた攪拌機付き1Lの3つ口フラスコに、3,5−ジブロモアニリンを0.5mol、トルエン700ml、ピリジン1.2molを加え、氷冷下攪拌しながら無水酢酸1.1molを30分かけて滴下した。室温で3時間攪拌後、反応液を水と5%塩酸水、1%重曹水で抽出を行い、水洗を行った。
【0097】
有機層を濃縮後、この濃縮物を還流冷却器を取り付けた攪拌機付き1Lの3つ口フラスコに入れ、窒素気流下、トリエチルアミン700ml、トリメチルシリルアセチレンを1.8mol、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを0.3mmol、トリフェニルホスフィンを1.2mmol、ヨウ化銅(I)を3mmol加え6時間加熱還流を行い、その後冷却した。
【0098】
冷却後反応物をろ過、濾液濃縮し、濃縮物に酢酸エチルを加えて5%希塩酸で抽出した。有機層を2回水洗し、1%炭酸水素ナトリウム水で洗浄した後、有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで合成中間体(A−9a)を0.38molを得た。
【0099】
【化17】



【0100】
次に窒素気流下、還流冷却器を取り付けた攪拌機付き1Lの3つ口フラスコに、合成中間体(A−9a)を0.2molをアセトン200mlに溶解させ、25%水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、5時間還流を行った。その後冷却し、6N塩酸をpH7以下になるまで加えて中和した。アセトンを濃縮除去し、酢酸エチルと水を加え、有機層を抽出、水洗後濃縮することにより、合成中間体(A−9b)0.14molを得た。
【0101】
【化18】



【0102】
窒素気流下、還流冷却器を取り付けた攪拌機付き300mlの3つ口フラスコに、3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアネート100mmol、3,5−ジエチニルアニリン40mmolとTHF150mlを加え、10時間還流を行った。反応液約100mlの濃縮を行い、酢酸エチル300mlと水300mlを加え有機層を抽出し、有機層の水洗を2回行った。有機層を濃縮することにより、目的とする化合物A−9を30mmol得た。
【0103】
[実施例6]
液組成物の作成、金属箔複合膜の作成
<実施例1〜5>で合成した化合物各1gをアセトン200mlに溶解させ、液組成物とした。この液に銅箔を浸した後、銅箔を取り出し、130℃にて1時間加熱・乾燥を行った。乾燥後、銅箔をアセトンに浸漬することにより過剰なシランカップリング剤を除去し、更に130℃にて1時間乾燥を行った。金属箔として、中間層に亜鉛−クロム合金により処理された層を持つ、総厚み18μm、粗さ平均(Rz)1.5μmの銅箔を使用した。
【0104】
[実施例7] 金属箔積層体の作成
実施例6で作成したそれぞれの金属箔複合膜へ、ポリイミド溶液(新日本理化製SN−20)をキャストし、220℃3時間にて乾燥を行うことで、樹脂層厚み約30μを含む金属箔積層体を得た。
【0105】
[実施例8〜12][比較例1〜4] 熱処理試験、耐熱性試験
実施例7で作成した金属箔積層体及び、同様の方法で比較例化合物(B−1)〜(B−4)を用いて作成した金属箔積層体のサンプルについて、サンプルを3ミリ幅でエッチングを行い、銅箔とポリイミド間の接着強度測定を行った。
【0106】
次に、熱経時試験として350℃3時間の熱処理を行い、同様にして再度接着強度測定を行った。接着強度測定試験は、JIS規格C6471プリント配線板用銅張り積層版試験方法に準じて行った。その条件はJIS規格で詳細に記載されているが、具体的には銅箔除去面に対して角度90°方向に毎分50mmで引き剥がす方法にて行った。結果を表1に示す。
(比較例化合物)
【0107】
【化19】

【0108】
【表1】


(表中*欄の数字は接着強度[単位:N/cm]を示す)
【0109】
[実施例13] 樹脂組成物の作成
実施例3で得られた化合物1.0gと、ポリイミド溶液(新日本理化製SN−20)100gとを混合し、樹脂組成物を作成した。
【0110】
[実施例14] 樹脂接着体の作成
実施例13で得られた樹脂組成物を実施例6で使用した銅箔へキャストし、220℃3時間の乾燥を行って、樹脂接着体を得た。
【0111】
[実施例15] [比較例5] 樹脂接着体の接着力の評価
実施例14で得られた樹脂接着体を実施例8〜12と同様の方法で処理し、同様の方法にて接着力の評価を行った。その結果を表2に示す。また、比較例1に記載の化合物(B−1)について、実施例13〜15と同様の方法にてサンプルを作成し、接着力の評価を行った。評価の結果を比較例5として表2に示す。
【0112】
【表2】


(表中*欄の数字は接着強度[単位:N/cm]を示す)
【0113】
実施例8〜実施例12、15の結果で明らかなように、本発明の化合物を用いたサンプルは、従来知られている化合物のものと比較し、低温の熱処理により高い接着強度を有することを表しており、このことは良好な接着力を得ることができることを示している。また、熱経時後にも高い接着強度を保持しており、従って良好な耐熱性を有していることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物:
【化1】


(一般式(1)および(2)において、Rは水素原子またはアルキル基、置換ケイ素基を表し、Xは、アミド結合、イミド環結合、イミノ結合、ウレア結合、ウレタン結合、エーテル結合、又はチオエステル結合、エステル結合、カーボネート結合を表す。Lは、単結合又は任意の2価の連結基を表す。Xはベンゼン環と2つの結合により、環を形成しても良い。R,Rは置換基を表し、nは0以上3以下の整数を表す。nは1以上4以下の整数である。)
【請求項2】
一般式(1)において、Xが、−C(=O)NR−、−NRC(=O)NR−、−O−、−NRC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−またはイミド環結合であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。ここでR、Rは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R=H,n=0であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)から一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化2】


これらの一般式(2)から一般式(6)中、LとRは、一般式(1)におけるLとRと同義である。
【請求項5】
前記Lが、単結合、又は炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又はそれらと−NR−、−O−、−C(=O)O−、或いは−C(=O)−との組合せで構成される基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。ここでRは、水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【請求項6】
少なくとも請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の化合物と溶剤とを含有することを特徴とする液組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の液組成物を金属箔へ塗布した後、乾燥させることにより得られることを特徴とする金属箔複合膜。
【請求項8】
少なくとも請求項7に記載の金属箔複合膜と樹脂とを含んでなることを特徴とする金属箔積層体。
【請求項9】
少なくとも、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の化合物と樹脂とを含んでなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂組成物を含んでなることを特徴とする接着剤。
【請求項11】
請求項9に記載の樹脂組成物を含んでなることを特徴とするコーティング剤。

【公開番号】特開2010−241724(P2010−241724A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92227(P2009−92227)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】