説明

有機発光ダイオードディスプレイ

【課題】OLEDディスプレイ内部で周囲光を検出するための改良型光センサを提供すること。
【解決手段】a)基板と、
b)該基板上に形成されたアドレス可能なOLEDを配列してなる表示領域と、
c)該基板上に形成され、かつ、該表示領域の縁部に沿って配置された細長い光センサであって周囲照明に応答しこれに応じたフィードバック信号を発生させる光センサと
を含んでなり、該細長い光センサが、該光センサの長さ方向に延びる第1導電性電極及び第2導電性電極を有することを特徴とする、光センサ付きOLEDディスプレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体素子型フラットパネルOLEDディスプレイ、特に周囲照明を検出するための光センサを有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体素子型(solid-state)有機発光ダイオード(OLED)画像表示装置には、優れたフラットパネル形デジタル表示装置として多大な関心が寄せられている。これらの表示装置は、有機材料薄膜に流れる電流を利用して光を発生させるものである。放出される光の色や、電流から光へのエネルギー変換効率は、当該有機薄膜材料の組成によって決まる。
【0003】
暗い環境(周囲輻射線が少ない)で観察する時には、明るい環境(周囲輻射線が多い)で観察する時ほどディスプレイを明るくする必要はない。表示装置の光出力を周期的に再較正するならば、周囲光が変化するような場合でも、周囲光と表示光との差を一定に維持することができる。このことは、ひいては、暗環境での表示輝度が不必要に高くなることを抑え、かつ、明環境での表示装置の視認性を高めることにより、表示装置の寿命を延ばすことができる。
【0004】
周囲光を検出するためディスプレイに光センサを使用し、周囲照明に応じてディスプレイの輝度を調整することが知られている。例えば、特開2002−297096号公報に、電場発光ディスプレイに周囲補償を与えるための回路が記載されている。しかしながら、実施例では、光センサはディスプレイから独立したものであり、光の検出も1点でしか行われていない。このため、コスト、部品点数及び装置サイズは増加し、光センサの感度は低下し、その上、ディスプレイ自体に入射する光を直接測定することにならない。
【0005】
表示装置自体から放出される光を検出するために表示装置の上に光センサを統合することが知られている。例えば、2002年12月3日発行のYoungらの米国特許第6489631号明細書に、ディスプレイの発光要素が放出する光を検出するための光センサを統合させたディスプレイが記載されている。しかしながら、発光体にセンサを結合させる構成では、光センサの大きさや、その周囲光検出能力に限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6509574号明細書
【特許文献2】米国特許第6489631号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1194013号明細書
【特許文献4】特開2002−297096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、OLEDディスプレイの内部で周囲光を検出するための改良型光センサが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の要求は、基板;該基板上に形成されたアドレス可能なOLEDを配列してなる表示領域;及び該基板上に形成され、かつ、該表示領域の縁部に沿って配置された細長い光センサであって周囲照明に応答しこれに応じたフィードバック信号を発生させる光センサを含んでなる、光センサ付きOLEDディスプレイを提供する本発明によって満たされる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による有利な効果は、周囲照明の検出が改良され、かつ、構成が簡素化された発光性デジタル画像表示装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明により表示装置に光センサを採用した一態様を示す略図である。
【図2】本発明による光センサの別態様を示す略図である。
【図3】本発明による光センサのさらなる態様を示す略図である。
【図4】本発明による光センサのさらなる態様を示す略図である。
【図5】本発明による表示装置の一態様を示す略図である。
【図6】本発明による光センサのさらなる態様を示す略図である。
【図7】本発明による表示装置の別態様を示す略図である。
【図8】本発明による表示装置のさらなる別態様を示す略図である。
【図9】本発明の光センサを動作させるための従来型回路を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照する。上面発光型OLEDディスプレイにおいて本発明により使用するための細長い光センサ20の一態様を、該細長い光センサの細い寸法を横切る横断面で示す。細長い光センサ20には、基板50の上に配置された第1電極52と、第1電極52の上に付着されこれと電気接触している第1伝導型(例、n型)の第1半導体54と、第1半導体54の上に付着されこれと電気接触している第2伝導型(例、p型)の第2半導体56と、第2半導体56の上に配置されこれと電気接触している第2電極58とが含まれる。本態様では、第2電極58は、導電率が制限されている透明部分59と、より導電率が高い不透明部分60とを含み、かつ、第2半導体層56にその長さ方向に沿って電気接触している。第2電極58は、絶縁層62によって、第1電極52から絶縁されている。電極58の透明部分59に光65が入射する。電極58の不透明部分60は光センサ20を完全に包囲する。
【0012】
図2を参照する。底面発光型OLEDディスプレイにおいて使用するための光センサの別態様を横断面で示す。該センサには、導電率の低い透明第1部分59と、より導電率の高い不透明部分60とを有する電極52が含まれる。第2電極58は、不透明で高導電性であることができるが、半導体層54及び56の上に付着され、そして第2半導体層56と電気接触している。電極52の透明部分59に光65が入射する。
【0013】
光センサは、当該技術分野で知られているように、シリコン系又は有機物系半導体を使用した薄膜技法によって製造することができる。典型的なOLEDアクティブマトリックス式ディスプレイにも使用されるので、薄膜デバイス技術が有用である。
【0014】
光センサからの利用可能な信号を最大化し、かつ、従来型OLED電極の従来付着法を補足するためには、図1及び図2に示したように、光センサの半導体材料及び電極を平らなシート状に配置することが有益である。OLEDディスプレイ分野では、適当な透明電極の構成が知られており、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)で構築すること、又は銀もしくはアルミニウムのような金属の薄いシートもしくはマグネシウム銀のような金属化合物の薄いシートで構築することができる。当該技術分野では不透明電極も周知であり、例えば、アルミニウム、銅又は銀で作製することができる。
【0015】
本発明の光センサ20は、半導体層54及び56の間の接合部に当たる周囲輻射線束が最大化されるとき、最も有利に使用される。したがって、当該半導体層は、基板に対して平行になるように層状配置される。光センサからの信号は比較的小さいので、当該層は、ディスプレイの表面上可能な限り遠方まで延在することができる。透明でない電極は、必要な低い抵抗率において多量の電流を流せるよう所望の厚さにすることができる。しかしながら、電極52又は58の透明部分59は、その組成(例、インジウム錫酸化物)のため、又は透明性確保に必要な電極の薄さのために、所望より高い抵抗率を有することになる。電極の全体抵抗率を下げるため、不透明部分60は、半導体層の長さ方向に沿って電極52又は58の透明部分59と電気接触するように配置され、かつ、必要に応じて他の層から絶縁される。
【0016】
別の代わりの配置では、電極52の追加的な不透明で導電性の高い部分61が、図3(底面発光型の場合)に示したような光センサの中央部及び図4(上面発光型の場合)に示したような電極58の中央部を通して延在する。電極の不透明部分60の下方の光センサ領域には入射光は当たらないが、当該不透明電極により当該半導体への接続が一層近づくと共に導電率が高まり、デバイスの精度が向上する。このような場合、電極の不透明部分60及び61は、例えば細長い光センサの一端において、共通に電気接続される(図示なし)。
【0017】
図1〜図4に示した構成は、比較的大面積に周囲照明が当たることにより、当該ディスプレイのサイズを有意に増加することなく光信号を最大化できる利点がある。その上、比較的抵抗の高い透明電極から導電性の高い不透明領域までの距離が、当該電極の導電性の高い部分を当該光センサの全長に沿って延在させることにより縮まり、よって電極の全体抵抗が下がり、測定精度及び応答性が向上する。
【0018】
別の態様では、光センサの受光面側の電極が不透明の導電性の高いものであり、光センサの全面には延在しないものである。図6を参照する。第1の高導電性不透明電極60が半導体層56の長さ方向に沿って電気接触するように配置され、そして第2の高導電性不透明電極60’が半導体層54の長さ方向に沿って電気接触するように配置される。この構成は、不完全透明電極が存在して吸光することが一切ないため露光性が高まる利点があるが、電極60及び60’が半導体接合部からさらに除かれ、デバイスの精度は低下する。この構成は、電極60及び60’が共に単一処理工程で形成できる利点もある。
【0019】
導体及び半導体のような材料の多重層を付着させる手段は、当該技術分野では周知である。ディスプレイの追加の層の上に本発明の光センサ層を配置することは、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0020】
図5を参照する。本発明による周囲光を検出するための細長い統合型光センサ20及び表示領域12を有するディスプレイ10を示す。細長い統合型光センサ20は、表示領域12の周辺部14に配置されている。例えば、表示領域12の縁部において、アスペクト比の高い長方形の光センサ20を、光センサ20の長い縁部が表示領域12の縁に沿って配置されるように配置することができる。電極の不透明部分60は光センサ20の縁部に沿って配置されている。
【0021】
薄膜光センサ20からの信号は、それが覆う面積と、それに入射する周囲輻射線とに直接関連する。統合型光センサ20を長くすることにより該面積を増大させることで、ディスプレイのサイズを有意に増加させることなく光センサ20からの信号を増大させることができる。
【0022】
光センサ20は、共通に電気接続することにより1つの統合された光信号を提供することも、個別にアドレスすることも可能である。統合型光センサ20の個数又はサイズが大きいほど信号は増大し、よって周囲光検出の応答性を向上させることができる。その上、該信号は、ディスプレイに入射する周囲照明全体を一層代表する。というのは、ディスプレイの一部が陰になる場合、複数個のセンサを有することにより複数の信号を提供し、これを平均化することにより表示領域に入射する照明の全体平均を得ることができるためである。実際、表示領域12に落ちるいかなる陰の場所及び形状も限られた程度ではあるが測定することができ、よって当該ディスプレイの性能を最適化するために使用できるさらなる情報を提供することができる。
【0023】
本発明は、上面発光型及び底面発光型のどちらのOLED構造体にも使用することができる。アクティブマトリックス式OLEDディスプレイのために使用される薄膜構造体を採用することにより、光センサを形成し、かつ、該光センサに適した制御信号を発生させて処理するための回路を提供することができる。同一のパワー及び制御信号法を使用してディスプレイを動作させることができる。また、ディスプレイのレイアウト並びに電極及び信号線の導電率のような各種要因に左右される光センサを接続することができる各種方法がある。
【0024】
光センサ要素は、個別に(表示画素要素であるように)又はグループとして選択することができる。現存する電子制御法を使用して現存するアドレス及び信号線を使用して要素を選択又はリセットすることができる。光センサ要素のグループを物理的又は論理的に結合させることにより、一層大きな面積にわたる入射光を測定し、よって情報の特異性並びにロジック及び内部接続を支持するための必要性の双方を低減することができる。1つのケースとして、図7に示したように、光センサ20を表示領域の角部周辺に配置することができる。極端なケースとして、図8に示したように、光センサ20がディスプレイを包囲する1つの大きな要素を構成し、その信号が表示装置に全体として入射する周囲光を代表する場合もある。
【0025】
また、本発明を使用して、周囲照明の色に関する情報を取得することも可能である。光センサと周囲光との間にカラーフィルターを配置して利用することにより、周囲光をフィルタリングすることができる。再度図1を参照するが、カラーフィルター層70は第2電極58の上に付着される。この配置は、周囲光が第2電極58を照らす上面発光型構成に適している。別態様として、底面発光型構成の場合には、カラーフィルターを第1電極52の下方に配置して周囲輻射線をフィルタリングすることができる(図示なし)。このようなカラーフィルターの付着技法は当該技術分野では周知であり、公然と例証されている。複数の光センサに異なるフィルターを設ける場合には、該光センサからの複数の信号を利用して、例えば、当該ディスプレイの色又は白色点を調整することにより、ディスプレイを最適化することができる。この場合にだけ、同一色のカラーフィルターを具備した光センサが並列に接続されることになる。
【0026】
本発明の作用は以下の通りである。図5を参照する。表示システム8にはディスプレイ10と、これを駆動するコントローラ30が含まれる。コントローラ30は、表示領域12へのデータ、並びに該表示領域内の特定の表示要素11へのデータを、データ、アドレス及び制御信号32を使用して書き込む。コントローラ30は、表示要素を具備した基板上に集積された光センサ制御回路42へ、リセット信号40を送信する。光センサ制御回路42は、追加の回路要素(図示なし)を含むことができ、また単に光センサ領域20への接続を提供することができる。
【0027】
図9を参照する。光センサ制御用の従来型回路を示す。該回路には、リセット信号40と、スイッチトランジスタ43と、信号47を増幅器46へ提供する光センサ20とを含み、その電流又は電圧は負荷48を横断し、それを、例えばADコンバータ49でデジタル信号へ変換することができる。ディスプレイ内で光センサが発生したフィードバック信号は制御回路42(図5参照)に渡され、そして信号34を介してコントローラへ送られる。コントローラ30は、周囲照明を補償するように表示要素11の出力を適宜調節するため、信号32を変更する。周囲照明が急速に変化することによるフリッカを抑えるため、フィードバック信号を一定時間にわたり平均化することが望まれる場合もある。光センサからの信号を検出するための別の従来型回路も知られており、光センサからの様々な応答、例えば、周囲光への暴露による電流、を測定することができる。
【0028】
発光ディスプレイは、当該技術分野で知られているように、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層及び電子輸送層のような多重支持層を含む有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイである。光センサ電極及び半導体材料は、ディスプレイ回路と共通の工程において付着することができ、また、処理加工及び製造を簡略化するため同一材料を含むことができる。
【0029】
光センサ制御回路42は、表示装置と同一の基板上に直接集積させてもよいし、該表示装置の外部に付与してもよい。一般に、表示装置に回路を直接集積させることにより性能を向上させ、かつ、精度を高めることができるが、すべての表示装置に対して望ましいとはいえない。
【0030】
好適な態様として、本発明は、有機発光ダイオード(OLED)を含むデバイスにおいて使用される。OLEDは、例えば、1988年9月6日発行のTangらの米国特許第4769292号明細書及び1991年10月29日発行のVanSlykeらの米国特許第5061569号明細書に記載されているような低分子系又は高分子系のOLEDで構成される。
【符号の説明】
【0031】
8 表示システム
10 ディスプレイ
11 表示要素
12 表示領域
14 周辺部
20 光センサ
30 コントローラ
32 制御信号
34 信号
40 リセット信号
42 光センサ制御回路
43 スイッチトランジスタ
46 増幅器
47 信号
48 負荷
49 デジタルコンバータ
50 基板
52 第1電極
54 第1半導体
56 第2半導体
58 第2電極
59 透明部分
60 不透明部分
60’ 不透明電極
61 高導電性部分
62 絶縁層
65 光
70 カラーフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)基板と、
b)該基板上に形成されたアドレス可能なOLEDを配列してなる表示領域と、
c)該基板上に形成され、かつ、該表示領域の縁部に沿って配置された細長い光センサであって周囲照明に応答しこれに応じたフィードバック信号を発生させる光センサと
を含んでなり、該細長い光センサが、該光センサの長さ方向に延びる第1導電性電極及び第2導電性電極を有することを特徴とする、光センサ付きOLEDディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−70225(P2011−70225A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288036(P2010−288036)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【分割の表示】特願2004−114451(P2004−114451)の分割
【原出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(510059907)グローバル オーエルイーディー テクノロジー リミティド ライアビリティ カンパニー (45)
【Fターム(参考)】