説明

有機発光ダイオード照明器具

有機発光ダイオード照明器具が提供されている。この有機発光ダイオード照明器具は第1の電極と、第2の電極と、それらの間の電界発光層とを含む。電界発光層は、
− 青緑色である発光色を有する電界発光できるホスト材料と;
− 赤/赤橙色である発光色を有する電界発光ドーパントと、
を含む。発光した色の加法混色は白色の全体的発光を結果としてもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、全体が参照により本明細書に援用されている2009年10月29日出願の米国仮特許出願第61/255975号および2010年7月7日出願の第61/362403号からの35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、一般に、有機発光ダイオード(「OLED」)照明器具に関する。本開示は同様に、このようなデバイスの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
光を発する有機電子デバイスは、数多くの異なる種類の電子機器の中に存在する。このようなデバイスの全てにおいて、有機活性層は2つの電極の間に挟まれている。電極の少なくとも1つは、光透過性であって光が電極を通過できるようになっている。有機活性層は、電極を横断して電気を適用した時点で光透過性電極を通して光を発出する。電界発光層と1つまたは複数の電極の間には、追加の電気活性層が存在してよい。
【0004】
発光ダイオード中の活性成分として有機電界発光性化合物を使用することは周知である。アントラセン、チアジアゾール誘導体およびクマリン誘導体などの単純な有機分子が電界発光を示すことは公知である。一部の場合において、これらの小分子材料は、加工および/または電子特性を改善するためにホスト材料中にドーパントとして存在する。白色光を発出するOLEDは、照明の利用分野のために使用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新しいOLED構造そして、照明の利用分野のためにそれらを製造する方法に対する継続的なニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の電極と、第2の電極と、それらの間の電界発光層とを含む有機発光ダイオード照明器具において、電界発光層が、
− 青緑色である発光色を有する電界発光できるホスト材料と;
− 赤/赤橙色である発光色を有する電界発光ドーパントと;
を含み、発光した2色の加法混色が白色の全体的発光を結果としてもたらす有機発光ダイオード照明器具が提供されている。
【0007】
同様にOLED照明器具の製造方法において、
− 第1の電極を基板上に有する該基板を提供するステップと;
− 青緑色である発光色を有する電界発光できるホスト材料と、赤/赤橙色である発光色を有する電界発光ドーパントとを分散させている液体媒質を含む液体組成物を堆積させるステップと;
− 堆積した組成物を乾燥させて電界発光層を形成するステップと;
− 第2の電極を全体に形成するステップと;
を含む方法も提供されている。
【0008】
上述の一般的記述および以下の詳細な説明は、単に例示的かつ説明的なものにすぎず、添付のクレームに定義されている本発明を制限するものではない。
【0009】
本明細書中に提示されている概念をより良く理解するために、添付図面中に実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】1つの先行技術の白色発光デバイスを示す。
【図1b】別の先行技術の白色発光デバイスを示す。
【図2】OLED照明器具を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
当業者であれば、図中の物体が単純さおよび明確さを期して示されたものであり、必ずしも原寸に比例して描かれたものでないということを認識する。例えば、図中の一部の物体の寸法は、実施形態をより良く理解するための一助となるよう、他の物体と比べて誇張されているかもしれない。
【0012】
数多くの態様および実施形態が上述されてきたが、これらは単に例示的なものであり、制限的なものではない。本明細書を読んだ後、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく他の態様および実施形態が可能であることを認識する。
【0013】
いずれか1つ以上の実施形態の他の特徴および利益は、以下の詳細な説明ならびにクレームから明らかになる。詳細な説明はまず最初に、用語の定義および明確化とそれに続いて、照明器具、材料、方法そして最後に実施例を扱かっている。
【0014】
1.用語の定義および明確化
以下で記述する実施形態の詳細を扱う前に、いくつかの用語を定義または明確化する。
【0015】
本明細書中で使用される「アルコキシ」という用語は、RO―基を意味し、ここでRはアルキルである。
【0016】
「アルキル」という用語は、1つの付着点を有する脂肪族炭化水素から誘導された基を意味するように意図され、直鎖、分岐鎖または環状基を含む。この用語は、ヘテロアルキル類を含むように意図されている。「炭化水素アルキル」という用語は、ヘテロ原子を一切有していないアルキル基を意味する。一部の実施形態において、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0017】
「アリール」という用語は、1つの付着点を有する芳香族炭化水素から誘導された基を意味するように意図されている。「芳香族化合物」という用語は、非局在化π電子を有する少なくとも1つの不飽和環状基を含む有機化合物を意味するように意図されている。この用語は、ヘテロアリール類を含むように意図されている。「炭化水素アリール」という用語は、環内にヘテロ原子を一切有していない芳香族化合物を意味するように意図されている。一部の実施形態において、アリール基は3〜30個の炭素原子を有する。
【0018】
「青緑色」という用語は、x=0.16〜0.21およびy=0.47〜0.63の色座標を有する発光を意味する。
【0019】
「色座標」という用語は、C.I.E色度等級(Commission Internationale de L’Eclairage,1931)によるxおよびy座標を意味する。
【0020】
「CRI」という用語は、CIE演色評価数を意味する。これは、理想的な光源すなわち自然光源と比較した、さまざまな物体の色を忠実に再現する光源の能力の定量的尺度である。黒体放射などの基準源は、100というCRIを有するものとして定義される。
【0021】
「ドーパント」という用語は、ホスト材料を含む層の内部で、そのような材料が無い場合のこの層の放射線放出の1つまたは複数の波長に比べてこの層の放射線放出の1つまたは複数の波長を変更する材料を意味するように意図されている。
【0022】
「乾燥(drying)」という用語は、液体媒体の少なくとも50重量%の除去、一部の実施形態においては、少なくとも75重量%の液体媒体の除去を意味するように意図されている。「部分的に乾燥された」層は、一部の液体媒体が残留している層である。「本質的に完全に乾燥されている」層は、さらなる乾燥の結果としてさらなる重量損失を一切もたらさない程度まで乾燥された層である。
【0023】
「電界発光(electroluminescence)」という用語は、材料内部を通過する電流に応答した材料からの光の発出を意味する。「電界発光性(electroluminescent)」という用語は、電界発光できる物質または層を意味する。
【0024】
「フルオロ」という接頭辞は、1つ以上の利用可能な水素原子がフッ素原子で置換されたことを表わす。
【0025】
接頭辞「ヘテロ」は、1つ以上の炭素原子が異なる原子で置換されたことを意味する。一部の実施形態において、この異なる原子はN、OまたはSである。
【0026】
「ホスト材料」という用語は、通常は層の形をしており、電界発光ドーパントが添加されてよく、そこからそのドーパントが放出されることになる材料を意味するように意図されている。ホスト材料は、全てのドーパント濃度の和よりも高い濃度で存在する。
【0027】
「液体組成物」という用語は、材料が溶解して溶液を形成している液体媒体、材料が分散され、分散を形成している液体媒体、または材料が懸濁されて懸濁液またはエマルジョンを形成している液体媒体を意味するように意図されている。
【0028】
「液体媒体」という用語は、純粋な液体、液体の組合せ、溶液、分散、懸濁液、およびエマルジョンを含めた液体材料を意味するように意図されている。液体媒体は、1つ以上の溶媒が存在するか否かに関わらず使用される。
【0029】
「照明器具」という用語は、照明パネルを意味し、付随するハウジングおよび電源に対する電気的接続を含んでいてもいなくてもよい。
【0030】
照明器具に言及する場合の「全体的発光」という用語は、照明器具全体として知覚される光出力を意味する。
【0031】
「赤/赤橙色」という用語は、x=0.60〜0.68およびy=0.28〜0.38の色座標を有する赤色から赤橙色までの範囲の色を有する発光を意味する。
【0032】
「シリル」という用語は、R3Si−基を意味し、ここでRはH、D、C、C1−20アルキル、フルオロアルキルまたはアリールである。一部の実施形態では、Rアルキル基中の1個以上の炭素がSiで置換されている。一部の実施形態において、シリル基は(ヘキシル)2Si(CH3)CH2CH2Si(CH32−、および[CF3(CF26CH2CH22Si(CH3)−である。
【0033】
「白色光」という用語は、人間の目によって白色を有するものとして知覚される光を意味する。
【0034】
全ての基は、未置換かまたは置換されていてよい。一部の実施形態において、置換基は、D、ハロゲン化物、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシおよびフルオロアルキルからなる群から選択される。
【0035】
別段の指示のないかぎり、全ての基は未置換であるかまたは置換され得る。別段の指示のないかぎり、全ての基は、可能な場合、線状、分岐または環状であり得る。一部の実施形態において、置換基は、ハロンゲン化物、アルキル、アルコキシ、シリル、シロキサン、アリールおよびシアノからなる群から選択される。
【0036】
本明細書中で使用される「含む(comprises、comprising、includes、including)」「有する(has、having)」という用語またはその任意の他の変形形態は、非排他的包含を網羅するように意図されている。例えば、一群の要素リストを含むプロセス、方法、物品または装置は、必ずしもこれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されていないまたはこのようなプロセス、方法、物品または装置に固有の他の要素を含んでいてよい。さらに、別段の明示的記述がない場合、「または(or)」は、排他的「or」ではなく、包括的「or」を意味する。例えば、条件AまたはBは、Aが真であり(または存在する)、Bは偽である(または存在しない);Aは偽であり(または存在しない)Bは真である(または存在する);およびAとBの両方が真である(または存在する)、のいずれか1つによって満たされる。
【0037】
「a」または「an」の使用は、本明細書中に記述されている元素および成分を記述するために用いられる。これは便宜上、かつ本発明の範囲の一般的意味合いを与えるために行なわれている。この記述は1つまたは少なくとも1つを含むように解釈されるべきであり、単数は、別段の意味が明らかであるのでないかぎり、複数をも含んでいる。
【0038】
元素周期表中の縦列に対応する族番号には、CRC Handbook of Chemistry and Physics、81st Edition(2000−2001)中に見られる通りの「新表記法」規則が使用されている。
【0039】
別段の定義がないかぎり、本明細書中で使用されている全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本明細書中で記述されているものと類似のまたは等価の方法および材料を本発明の実施形態の実践または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記述する。本明細書中で言及する全ての出版物、特許出願、特許および他の参考文献は、特定の下りが引用されているのでないかぎり、その全体が参照により本明細書に援用される。矛盾が生じた場合、定義を含め本明細書が支配することになる。さらに、材料、方法および実施例は一例にすぎず、限定するように意図されているものではない。
【0040】
本明細書に記述されていない範囲で、具体的な材料、加工技術および回路に関する多くの詳細は、従来通りであり、有機発光ダイオードディスプレー、光検出器、光電池および半導体部材の技術分野の範囲内で教本および他の情報源の中に見出されるかもしれない。
【0041】
2.照明器具
アノードとカソードの間で異なる色の発光層(emissive layer)が互いに積重ねられている白色発光層(light−emitting layer)を得ることは公知である。2つの例示的な先行技術のデバイスが図1に示されている。図1aでは、アノード3とカソード11は、基板2上で互いに積重ねられた青色発光層6、緑色発光層9および赤色発光層10を有する。電界発光層のいずれかの側に、正孔輸送層4、電子輸送層8がある。同様に、正孔遮断層7および電子遮断層5も存在する。図1bでは、図示した通りに基板2、アノード3、正孔輸送層4、電子輸送層8およびカソード11が存在する。発光層12は、ホスト材料中の黄色および赤色発光体の組合せである。発光層13は、ホスト材料中の青色発光である。層14はホスト材料の追加層である。
【0042】
本明細書中で記述されている照明器具は、積層構成の多数の電界発光層ではなくむしろ単一の発光層を有する。
【0043】
この照明器具は、第1の電極と、第2の電極と、それらの間の電界発光層とを含む。電界発光層は、青緑色発光を有する電界発光できるホスト材料と、赤/赤橙色発光を有する電界発光ドーパントとを含む。発光した色の加法混色は白色の全体的発光を結果としてもたらす。電極の少なくとも1つは、少なくとも部分的に透明で、発生した光の透過を可能にする。
【0044】
電極の一方はアノードであり、これは、正電荷担体を注入するために特に効率の良い電極である。一部の実施形態において、第1の電極はアノードである。一部の実施形態において、アノードは少なくとも部分的に透明である。
【0045】
他方の電極はカソードであり、これは電子または負電荷担体を注入するために特に効率の良い電極である。一部の実施形態において、カソードは連続する全体層である。
【0046】
高いCRI値を獲得できるかぎりにおいて、代案として高い発光効率に基づいて電界発光材料を選択可能である。
【0047】
一部の実施形態において、OLED照明器具はさらに追加の層を含む。一部の実施形態において、OLED照明器具はさらに1つ以上の電荷輸送層を含む。「電荷輸送」という用語は、層、材料、部材または構造に言及している場合、このような層、材料、部材または構造が、比較的効率良くかつ小さい電荷損失で、これらの層、材料、部材または構造の厚みを通したこのような電荷の移動を容易にすることを意味する。正孔輸送層は正電荷の運動を容易にし、電子輸送層は負電荷の運動を容易にする。電界発光材料はいくつかの電荷輸送特性も有していてよいが、「電荷輸送層、材料、部材または構造」という用語は、その一次機能が発光である層、材料、部材または構造を含むようには意図されていない。
【0048】
一部の実施形態において、OLED照明器具はさらに、電界発光層とアノードの間に1つ以上の正孔輸送層を含む。一部の実施形態において、OLED照明器具はさらに、電界発光層とカソードの間の1つ以上の電子輸送層を含む。
【0049】
一部の実施形態において、OLED照明器具はさらに、アノードと正孔輸送層の間に正孔注入層を含む。「正孔注入層」または「正孔注入材料」という用語は、電気的導体または半導体材料を意味するように意図されている。正孔注入層は有機電子デバイス中で、下位層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉および有機電子デバイスの性能を容易にするかまたは改善するための他の側面を含めた(ただしこれに限定されない)1つ以上の機能を有機電子デバイスにおいて有していてよい。
【0050】
OLED照明器具の一例が図2に示されている。OLED照明器具100は、アノード120を伴う基板110を有する。アノードの上には、有機層すなわち正孔注入層130、正孔輸送層140および電界発光層150がある。電子輸送層380およびカソード390は全体的に塗布される。
【0051】
さらには、空気および/または水分に起因する劣化を防止するため、OLED照明器具を封入することもできる。さまざまな封入技術が公知である。一部の実施形態において、パッケージの縁部から水分浸透をさせないように乾燥用シールを内蔵した薄い不透湿性ガラス製のフタを用いて、面積の広い基板の封入が達成される。封入技術は、例えば米国特許出願公開第2006−0283546号明細書中に記載されている。
【0052】
ドライブエレクトロニクスの複雑性のみが異なる(OLEDパネル自体は全ての場合において同じである)OLED照明器具のさまざまな変形形態が存在し得る。ドライブエレクトロニクス設計はなお非常に単純なものであり得る。
【0053】
3.材料
デバイスの電界発光層は、青緑色である発光色を有する電界発光できるホスト材料と、赤/赤橙色である発光色を有する電界発光ドーパントとを含む。一部の実施形態において、電界発光層は本質的にホスト材料とドーパントで構成されている。
【0054】
a.ホスト
本発明のホストは、青緑色発光色を有する電界発光材料である。ホストは、このホストと2つのドーパントからの発光を達成できるように選択される。例えば、ホストは、2つの電界発光ドーパントの各々のためのギャップより大きいHOMO−LUMOギャップを有していなくてはならない。さらに、ホストの三重項エネルギーは、有機金属電界発光材料からの発光を消光しないように充分高いものでなくてはならない。
【0055】
適切な電子材料を有するかぎり、任意のタイプの電界発光(「EL」)材料をホストとして使用することができる。ELホスト材料のタイプとしては、小分子有機発光化合物、発光金属錯体、共役ポリマーおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、青色発光を有する2つ以上の電界発光材料の組合せがホストとして存在する。
【0056】
一部の実施形態において、青緑色の発光色を有する電界発光できるホスト材料はIrの有機金属錯体である。一部の実施形態において、有機金属Ir錯体は、IrL3という式を有するトリス−シクロメタル化錯体またはIrL2Yという式を有するビス−シクロメタル化錯体であり、式中Yはモノアニオン二座配位子であり、Lは、
【0057】
【化1】

【0058】
【化2】

【0059】
という構造式L−1〜L−17からなる群から選択される構造式を有し、
式中、
− R1〜R8は同じかまたは異なるものであり、H、D、電子供与基および電子求引基からなる群から選択され、
− R9はH、Dまたはアルキルであり、
− *は、Irとの配位点を表わす。
【0060】
発光した色は、電子供与および電子求引置換基の選択および組合せにより調整される。さらに、色はビス−シクロメタル化錯体内のY配位子の選択によって調整される。より短かい波長への色のシフトは、(a)R1〜R4について1つ以上の電子供与置換基を選択することおよび/または(b)R5〜R8について1つ以上の電子求引置換基を選択すること;および/または(c)以下で示す配位子Y−1を伴うビス−シクロメタル化錯体を選択すること;によって達成される。反対に、より長い波長への色のシフトは、(a)R1〜R4について1つ以上の電子求引置換基を選択すること;および/または(b)R5〜R8について1つ以上の電子供与置換基を選択すること;および/または(c)以下で示す配位子Y−2を伴うビス−シクロメタル化錯体を選択すること;により達成される。電子供与置換基の例としては、アルキル、シリル、アルコキシおよびジアルキルアミノが含まれるが、これらに限定されない。電子求引置換基の例としては、F、CN、フルオロアルキル、アルコキシおよびフルオロアルコキシが含まれるが、これらに限定されない。溶解度、空気および水分安定性、発光寿命その他などの材料の他の特性に影響を及ぼすように、置換基を選択してもよい。
【0061】
構造式L−1〜L−17の一部の実施形態において、R1〜R4の少なくとも1つは電子供与置換基である。構造式L−1の一部の実施形態において、R5〜R8の少なくとも1つは電子求引基である。
【0062】
構造式L−1〜L−12の一部の実施形態において、
− R1はH、D、アルキルまたはシリルであり;
− R2はH、D、アルキルまたはシリルであり;
− R3=H、D、F、OR10、NR102
− R4=H、アルキルまたはシリル;
− R5=H、DまたはF;
− R6=H、D、F、CN、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、フルオロアルコキシ、アリールまたはジアリールオキソホスフィニル;
− R7=H、D、F、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、フルオロアルコキシ、アリールまたはジアリールオキソホスフィニル;
− R8=H、D、CN、アルキル、フルオロアルキル;
− R9=H、D、アルキルまたはシリル;
− R10=アルキルであり、ここで隣接するR10基が結合して飽和環を形成し得る。
【0063】
一部の実施形態において、Yは、
【0064】
【化3】

【0065】
というY−1、Y−2およびY−3からなる群から選択され、
式中、
− R11は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から選択され;
− R12は、H、DまたはFであり;
− R13は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から選択される。
【0066】
一部の実施形態において、アルキルおよびフルオロアルキル基は、1〜5個の炭素原子を有する。一部の実施形態において、アルキル基はメチルである。一部の実施形態において、フルオロアルキル基はトリフルオロメチルである。一部の実施形態において、アリール基はヘテロアリールである。一部の実施形態において、ヘテロアリール基は1つ以上の窒素へテロ原子を有する。一部の実施形態において、アリール基は、D、F、CN、CF3およびアリールからなる群から選択される1つ以上の置換基を有するフェニル基である。一部の実施形態において、アリール基は、o−フルオロフェニル、m−フルオロフェニル、p−フルオロフェニル、p−シアノフェニルおよび3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルからなる群から選択される。一部の実施形態において、ジアリールオキソホスフィニル基はジフェニルオキソホスフィニルである。
【0067】
一部の実施形態において、青緑色の発光色を有する有機金属Ir錯体は式IrL3を有する。一部の実施形態において、錯体は式IrL3を有し、式中Lは構造式L−1であり、R5、R6、R7およびR8はのうちの少なくとも1つは、F、アリール、ヘテロアリールまたはジアリールオキソホスフィニルである。
【0068】
一部の実施形態において、青緑色の発光色を有する有機金属Ir錯体は式IrL2Yを有し。L=L−6またはL−13である。一部の実施形態において、全てのRは、HまたはDである。
【0069】
青緑色の発光色を有する有機金属Ir錯体の例としては以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
【0070】
【化4】

【0071】
【化5】

【0072】
【化6】

【0073】
一部の実施形態において、青緑色発光色を有するホストは小発光有機化合物である。
【0074】
一部の実施形態において、ホストは、クリセン誘導体である。一部の実施形態において、クリセン誘導体は、
【0075】
【化7】

【0076】
という構造式Iを有し、
ここで
− R14、R15およびR16は同じであるかまたは異なるものであり、H、D、アルキル、アルコキシ、シリル、シロキサンおよびNAr2からなる群から選択され、ここでR14、R15およびR16の少なくとも1つがNAr2であり;
− R17は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、D、アルキル、アルコキシ、シリルおよびシロキサンからなる群から選択されるかまたは、または隣接するR17基が互いに結合して5員または6員の脂肪族環を形成してよく;
− Arは出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アリール基であり;
− aは、0〜5の整数であり;
− bは、0〜4の整数である。
【0077】
一部の実施形態において、ホストは、
【0078】
【化8】

【0079】
という構造式IIを有するクリセン誘導体であり、
式中
− Ar1とAr3は同じかまたは異なるものであって、アリールであり、電子求引性置換基が全く存在しないことを条件として、Ar1とAr3の少なくとも1つが少なくとも1つのアルキル置換基を有し;
− Ar2とAr4が同じであるかまたは異なるものであり、アリールであり;
− R18、R19およびR21は同じであるかまたは異なるものであり、H、Dおよび電子求引基からなる群から選択され;
− R20は電子求引基であり;
− R22〜R27は同じであるかまたは異なるものであり、H、Dおよびアルキルからなる群から選択される。
この化合物は、青緑色の発光ができる。
【0080】
一部の実施形態において、電子求引基(「EWG」)は、フルオロ、ペルフルオロアルキル、シアノ、ニトロ、−SO2R(なお式中Rはアルキルまたはペルフルオロアルキルである)、その重水素化誘導体およびその組合せからなる群から選択される。一部の実施形態において、EWGはトリフルオロメチルまたはシアノである。
【0081】
一部の実施形態において、R18およびR20は両方ともEWGである。一部の実施形態において、R19およびR22〜R27はHまたはDである。
【0082】
一部の実施形態において、Ar1〜Ar4は独立して、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ビナフチルおよびその重水素化誘導体からなる群から選択される。一部の実施形態において、Ar1〜Ar4の少なくとも1つがC1〜20アルキルまたは重水素化アルキルで置換されている。一部の実施形態において、アルキルは分岐アルキルである。
【0083】
一部の実施形態において、Ar1およびAr3はフェニル基またはその重水素化誘導体である。一部の実施形態において、フェニル基は、1〜5個のアルキルまたは重水素化アルキル置換基を有する。
【0084】
一部の実施形態において、Ar2およびAr4の少なくとも1つは、少なくとも1つのアルキルまたは重水素化アルキル置換基を有する。一部の実施形態において、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有する。一部の実施形態において、Ar2およびAr4の両方ともフェニル、ビフェニルおよびその重水素化誘導体からなる群から選択されている。
【0085】
一部の実施形態において、Ar1およびAr3は、少なくとも1つのアルキルまたは重水素化アルキル置換基を有するフェニル基であり、Ar2およびAr4は少なくとも1つのアルキルまたは重水素化アルキル置換基を有するビフェニル基である。一部の実施形態において、Ar1およびAr3は、少なくとも1つのアルキルまたは重水素化アルキル置換基を有する重水素化フェニル基であり、Ar2およびAr4は、少なくとも1つのアルキルまたは重水素化アルキル置換基を有する重水素化ビフェニル基である。
【0086】
クリセン誘導体は、公知のカップリングおよび置換反応で調製可能である。
【0087】
青緑色の発光色を有するクリセン化合物の例としては、
【0088】
【化9】

【0089】
が含まれるが、これに限定されない。
【0090】
一部の実施形態において赤/赤橙色の発光色を有する電界発光ドーパントは、Irの有機金属錯体である。一部の実施形態において、有機金属Ir錯体は、IrL3という式を有するトリス−シクロメタル化錯体またはIrL2Yという式を有するビス−シクロメタル化錯体であり、式中Yはモノアニオン二座配位子であり、Lが、
【0091】
【化10】

【0092】
という構造式L−18、L−19、L−20およびL−21からなる群から選択される構造式を有し、
式中、
− R1〜R6およびR28〜R37は同じかまたは異なるものであり、H、D、電子供与基、および電子求引基からなる群から選択され、
− *は、Irとの配位点を表わす。
【0093】
上述の通り、発光した色は電子供与および電子求引置換基の選択および組合せ、ならびにビスシクロメタル化錯体中のY配位子の選択によって調整される。より短い波長への色のシフトは、(a)R1〜R4またはR28〜R33について1つ以上の電子供与置換基を選択すること;および/または(b)R5〜R6またはR34〜R37について1つ以上の電子求引置換基を選択すること;および/または(c)配位子Y−1を伴うビス−シクロメタル化錯体を選択すること、によって達成される。反対に、より長い波長への色のシフトは、(a)R1〜R4またはR28〜R33について1つ以上の電子求引置換基を選択すること;および/または(b)R5〜R6またはR34〜R37について1つ以上の電子供与置換基を選択すること;および/または(c)配位子Y−2を伴うビス−シクロメタル化錯体を選択すること、により達成される。
【0094】
構造式L−18〜L−20の一部の実施形態において、
− R1〜R4およびR28〜R33が同じであるかまたは異なるものであり、H、D、アルキル、アルコキシまたはシリルであり;ここで配位子L−19中、(i)R1とR2、(ii)R2とR3および(iii)R3とR4のいずれか1つ以上が共に結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成でき;配位子L−19中、(iv)R30とR31および(v)R31とR32のいずれか1つ以上が共に結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成でき;配位子L−20中、(vi)R30とR31および(vii)R31とR32のいずれか1つ以上が共に結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成でき;配位子L−21中、(viii)R31とR31、(ix)R31とR32および(x)R32とR33のいずれか1つ以上が共に結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成でき;
34=H、D、F、アルキル、シリルまたはアルコキシ;
35=H、D、CN、アルキル、フルオロアルキル、フルオロアルコキシ、シリルまたはアリール;
36=H、D、F、CN、アルキル、シリル、アルコキシ、フルオロアルコキシまたはアリール;
37=H、D、CN、アルキル、フルオロアルキル、フルオロアルコキシまたはシリルである。
【0095】
一部の実施形態において、Yは、
【0096】
【化11】

【0097】
というY−1、Y−2およびY−3からなる群から選択され、
式中、
− R11は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から選択され;
− R12は、H、DまたはFであり;
− R13は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から選択される。
【0098】
構造式の一部の実施形態において、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシおよびフルオロアルコキシ基は、1〜5個の炭素原子を有する。一部の実施形態において、アルキル基はメチルである。一部の実施形態において、フルオロアルキル基はトリフルオロメチルである。一部の実施形態において、アリール基はヘテロアリールである。一部の実施形態において、アリール基は、N−カルバゾリルまたはN−カルバゾリルフェニルである。一部の実施形態において、アリール基は、フェニル、置換フェニル、ビフェニル、または置換ビフェニルである。一部の実施形態において、アリール基はフェニル、ビフェニル、p−(C1-5)アルキルフェニルおよびp−シアノフェニルからなる群から選択される。
【0099】
一部の実施形態において、L=L−19であり、錯体はIrL3という式を有する。一部の実施形態において、L=L−20であり、錯体はIrL2YまたはIrL3という式を有する。一部の実施形態において、L=L−21であり、錯体はIrL2Yという式を有する。一部の実施形態において、Y=Y−1である。Y−1の一部の実施形態において、R11はメチルおよびブチルから選択され、R12はHである。
【0100】
一部の実施形態において、L=L−18である。L−18の一部の実施形態において、全てのRはHまたはDである。
【0101】
一部の実施形態において、L=L−19である。L−19の一部の実施形態において、R28、R29、R30、R31、R32およびR33はHまたはDである。L−19の一部の実施形態において、R34、R35およびR36の少なくとも1つはメチル、メトキシおよびt−ブチルからなる群から選択される。L−19の一部の実施形態において、R30〜R33の少なくとも1つはアルコキシである。L−19の一部の実施形態において、R34〜R37の少なくとも1つはアルコキシまたはフルオロアルコキシである。
【0102】
一部の実施形態において、L=L−20である。L−20の一部の実施形態において、R28、R29、R30、R31、R32およびR33はHまたはDである。L−20の一部の実施形態において、R36はアリールである。L−20の一部の実施形態において、R28およびR36の少なくとも1つはC1-5アルキル基である。
【0103】
一部の実施形態において、L=L−21である。L−21の一部の実施形態において、R30〜R33はHまたはDである。L−21の一部の実施形態において、R28およびR36の少なくとも1つはC1-5アルキル基である。L−21の一部の実施形態において、R34〜R37の少なくとも1つはC1-5アルコシキまたはフルオロアルコキシ基である。
【0104】
配位子L−19の例には、下表1および2に記されているものが含まれるが、これらに限定されない。配位子L−20の例には、下表3に記されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

【0110】
赤/赤橙色の発光色を有する有機金属Ir錯体の例としては、
【0111】
【化12】

【0112】
【化13】

【0113】
が含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
一部の実施形態において、ホスト:ドーパントの重量比は、10:1〜1000:1の範囲内にあり;一部の実施形態では、10:1〜100:1である。一部の実施形態において、ドーパントは電界発光層の総重量に基づいて5wt%未満で存在し、一部の実施形態では、1wt%未満;一部の実施形態では、0.1wt%未満で存在する。
【0115】
b.他の層
本明細書中に記載されている照明器具の他の層のために使用すべき材料は、OLEDデバイスにおいて有用であるとして公知の任意のものであり得る。
【0116】
アノードは、正電荷担体を注入するために特に効率の良い電極である。これは、金属、混合金属、合金、金属酸化物または混合金属酸化物を含む材料で作ることができ、あるいは導電性ポリマーおよびそれらの混合物でもあり得る。適切な金属としては、第11族金属、第4族、5族および6族中の金属ならびに第8〜10族遷移金属が含まれる。アノードが光透過性でなくてはならない場合、インジウムスズ酸化物などの第12、13および14族金属の混合金属酸化物が一般に使用される。アノードは同様に、「Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer」、Nature vol.357、pp477〜479(11 June 1992)中に記載されている通りのポリアニリンなどの有機材料を含んでいてもよい。アノードおよびカソードの少なくとも1つは、生成された光を観察できるように少なくとも部分的に透明でなければならない。
【0117】
正孔注入層は正孔注入材料を含む。正孔注入材料はポリマー、オリゴマー、または小分子であってよく、溶液、分散、懸濁液、エマルジョン、コロイド混合物または他の組成物の形をしていてよい。
【0118】
正孔注入層は、しばしばプロトン酸でドープされているポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリマー材料で形成され得る。プロトン酸は、例えばポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであり得る。正孔注入層は、電荷移動化合物など、例えば銅フタロシアニンおよびテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)を含むことができる。一実施形態において、正孔注入層は、導電性ポリマーとコロイド形成ポリマー酸の分散から作られる。このような材料は、例えば米国特許出願公開第2004−0102577号明細書、第2004−0127637号明細書および第2005−0205860号明細書およびPCT国際公開第2009/018009号パンフレット中に記載されている。
【0119】
正孔輸送層は、正孔輸送材料を含む。正孔輸送層用の正孔輸送材料の例は、例えば、Y.Wangによる「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、Fourth Edition、Vol.18、p.837〜860、1996、中で要約されている。正孔輸送小分子およびポリマーの両方が使用可能である。一般に使用される正孔輸送分子としては、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);4,4’−ビス(カルバゾル−9−イル)ビフェニル(CBP);1,3−ビス(カルバゾル−9−イル)ベンゼン(mCP);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾル−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);およびポルフィリン化合物、例えば銅フタロシアニンが含まれるが、これらに限定されない。一般に使用される正孔輸送ポリマーには、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン類)、ポリアニリン類およびポリピロール類が含まれるが、これらに限定されない。同様に、上記で言及したものなどの正孔輸送分子をポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマー中にドープすることにより、正孔輸送ポリマーを得ることも同様に可能である。一部の場合において、トリアリールアミンポリマー、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマーが使用される。一部の場合において、ポリマーおよびコポリマーは架橋可能である。架橋可能な正孔輸送ポリマーの例は、例えば、米国特許出願公開第2005−0184287号明細書およびPCT国際公開第2005/052027号パンフレット中に見出すことができる。一部の実施形態において、正孔輸送層は、P−ドーパント例えばテトラフルオロテトラシアノキノジメタンおよびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物でドープされる。
【0120】
電子輸送層は、電子輸送を容易にするように機能できると同時に、層界面における励起子の消光を防止するための緩衝層または閉じ込め層としても役立つことができる。好ましくは、この層は、電子の移動性を促進し、励起子の消光を減少する。任意の電子輸送層の中で使用できる電子輸送材料の例としては、金属キノレート誘導体、例えばトリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(AlQ)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、テトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ハフニウム(HfQ)およびテトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ジルコニウム(ZrQ)を含めた金属キレート化オキシノイド化合物;およびアゾール化合物、例えば2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI);キノキサリン誘導体、例えば2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリン;フェナントロリン類、例えば4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA);およびそれらの混合物が含まれる。一部の実施形態において、電子輸送層はさらに、n−ドーパントを含む。N−ドーパント材料は周知である。n−ドーパントには、第1族および第2族金属;第1族および第2族塩、例えばLiF、CsF、およびCs2CO3;第1族および第2族金属有機化合物、例えばLiキノレート;および分子n−ドーパント、例えばロイコ染料、金属錯体、例えばW2(hpp)4(なおここでhppは1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド−[1,2−a]−ピリミジンである)およびコバルトセン、テトラチアナフタセン、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン、複素環ラジカル又はジラジカル、および複素環ラジカルまたはジラジカルのダイマー、オリゴマー、ポリマー、ジスピロ化合物および多環が含まれるがこれらに限定されない。
【0121】
カソードは、電子または負の電荷担体を注入するために特に効率の良い電極である。カソードは、アノードよりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であり得る。カソードのための材料は、第1族のアルカリ金属(例えばLi、Cs)、第2族(アルカリ土類)金属、希土類元素およびランタニドを含む第12族金属、およびアクチニドから選択可能である。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウムおよびマグネシウムなどの材料ならびに組合せを使用することができる。Li含有有機金属化合物、LiF、Li2O、Cs含有有機金属化合物、CsF、Cs2OおよびCs2CO3を有機層とカソード層の間に堆積させて、動作電圧を低下させることもできる。この層は、電子注入層と呼んでもよい。
【0122】
成分層の各々についての材料の選択は好ましくは、高い電界発光効率を有するデバイスを提供するようにエミッタ層内の正および負の電荷のバランスを取ることによって決定される。
【0123】
一実施形態において、異なる層は、以下の厚み範囲を有する:アノード、500〜5000Å、一実施形態では1000〜2000Å;正孔注入層、50〜2000Å、一実施形態では200〜1000Å;正孔輸送層、50〜2000Å、一実施形態では200〜1000Å;光活性層、10〜2000Å、一実施形態では100〜1000Å;電子輸送層、50〜2000Å、一実施形態では100〜1000Å;カソード、200〜10000Å、一実施形態では300〜5000Å。所望される層厚み比率は、使用する材料の正確な性質によって左右される。
【0124】
OLED照明器具は、アウトカップリング効率を増大させ、デバイスの側面上の導波性を防止するために、アウトカップリングの増倍も含んでいてよい。光アウトカップリング増倍のタイプとしては、ミクロスフェアまたはレンズなどの秩序構造を含む表示側の表面被膜が含まれる。別のアプローチは、表面の光散乱様のサンディングを達成するためのランダム構造の使用および/またはエアロゾルの塗布である。
【0125】
本明細書中で記述されているOLED照明器具は、現在の照明用機材に比べいくつかの利点を有することができる。OLED照明器具は、白熱電球に比べて電力消費量が低くなる可能性を有する。50lm/w超の効率が達成されるかもしれない。OLED照明器具は、蛍光灯に比べて改善された光質を有することができる。演色は、蛍光灯が62であるのに対し、80超となり得る。OLEDは拡散性をもつため、他の全ての照明オプションと異なり、外部拡散器の必要性が低減される。
【0126】
さらに、本明細書中に記載されているOLED照明器具は、他の白色発光デバイスに比べて利点を有する。構造は、積重ね型電界発光層を伴うデバイスに比べてはるかに単純である。色の調整がより容易である。電界発光材料の蒸発によって形成されるデバイスの場合に比べて、材料利用率が高い。電界発光ポリマーも含めたあらゆるタイプの電界発光材料の使用が可能である。
【0127】
4. 方法
OLED照明器具の製造方法は、
− 第1の電極を基板上に有する該基板を提供するステップと;
− 青緑色である発光色を有する電界発光できるホスト材料と、赤/赤橙色である発光色を有する電界発光ドーパントとを分散させている液体媒質を含む液体組成物を堆積させるステップと;
− 堆積した組成物を乾燥させて電界発光層を形成するステップと;
− 第2の電極を全体に形成するステップと、
を含む。
【0128】
連続技術および不連続技術を含めた、公知のあらゆる液体堆積技術を使用することができる。一部の実施形態において、電界発光材料を含む液体組成物は連続液体堆積によって堆積される。連続液体堆積技術の例としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティングおよび連続ノズルコーティングが含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
加熱、真空およびその組合せを含めた任意の従来の乾燥技術を使用することができる。一部の実施形態において、乾燥ステップが合わさって本質的に完全に乾燥した層を結果としてもたらす。本質的に完全に乾燥した層をさらに乾燥しても、デバイスのさらなる性能変化がもたらされることはない。
【0130】
一部の実施形態において、乾燥ステップは多段階プロセスである。一部の実施形態において、乾燥ステップは、堆積された組成物を部分的に乾燥させる第1段階と、部分的に乾燥した組成物を本質的に完全に乾燥させる第2段階を有する。
【0131】
一部の実施形態において、この方法は基板として、ITOでコーティングされたガラス基板を使用する。水溶液から正孔注入層をコーティングするためにスロットダイコーティングを使用することができ、それに続いて正孔輸送層のためにスロットダイコーターを通して第2のパスが行なわれる。電界発光層も同様にスロットダイコーティングにより堆積させることができる。スロットダイプロセスステップは、標準的なクリーンルーム雰囲気内で実施され得る。次に、デバイスは電子輸送層および金属カソードの堆積のため真空チャンバに輸送される。これが、真空チャンバ設備を必要とする唯一のステップである。最後に、照明器具全体は、上記の通り、封入技術を用いて密閉される。
【0132】
一般的記述の中で前述した活動の全てが必要とされるわけではなく、具体的活動の一部分は必要とされないかもしれず、かつ記述されたものに加えて1つ以上のさらなる活動が実施されてよいという点に留意されたい。さらに、活動を列挙した順序は、必ずしもそれらの実施順序ではない。
【0133】
以上の明細書においては、具体的実施形態を参照しながら概念を説明してきた。しかしながら、当業者であれば、以下のクレームに記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更を加えることができることを認識する。したがって、明細書および図面は、限定的ではなく例示的なものとみなされるべきものであり、このような修正は全て本発明の範囲内に含まれるよう意図されている。
【0134】
以上では、利益、他の利点および課題に対する解決法が具体的実施形態に関連して記述されてきた。しかしながら、これらの利益、利点、課題に対する解決法および任意の利益、利点または解決法を発生させるかまたはより顕著なものにするかもしれない任意の1つのまたは複数の特徴は、いずれかまたは全てのクレームの極めて重要な、所要のまたは本質的な特徴とみなすべきものではない。
【0135】
明確さを期して本明細書では別個の実施形態という状況で説明されているいくつかの特徴を単一の実施形態の形に組合せて提供してもよいということが認識されるべきである。反対に言うと、簡略化のために単一の実施形態という状況で説明されているさまざまな特徴を別個にまたは任意の下位組合せの形で提供してもよい。さらに、範囲の形で記された値に対する言及には、その範囲内のあらゆる値が含まれる。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、第2の電極と、それらの間の電界発光層とを含む有機発光ダイオード照明器具において、前記電界発光層が、
− 青緑色である発光色を有する電界発光できるホスト材料と;
− 赤/赤橙色である発光色を有する電界発光ドーパントと;
を含み、前記発光した2色の加法混色が白色の全体的発光を結果としてもたらす有機発光ダイオード照明器具。
【請求項2】
前記青緑色の発光色を有する発光できるホスト材料が、IrL3という式を有するトリス−シクロメタル化錯体またはIrL2Yという式を有するビス−シクロメタル化錯体であり、式中Yはモノアニオン二座配位子であり、Lが、
【化1】

【化2】

【化3】

という構造式L−1〜L−17からなる群から選択される構造式を有し、式中、
− R1〜R8は同じかまたは異なるものであり、H、D、電子供与基、および電子求引基からなる群から選択され;
− R9はH、Dまたはアルキルであり;
− *は、Irとの配位点を表わす、
請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
− R1がH、D、アルキルまたはシリルであり;
− R2がH、D、アルキルまたはシリルであり;
− R3=H、D、F、OR10、NR102
− R4=H、D、アルキルまたはシリル;
− R5=H、DまたはF;
− R6=H、D、F、CN、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、フルオロアルコキシ、アリールまたはジアリールオキソホスフィニル;
− R7=H、D、F、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、フルオロアルコキシ、アリールまたはジアリールオキソホスフィニル;
− R8=H、D、CN、アルキル、フルオロアルキル;
− R9=H、D、アルキルまたはシリル;
− R10=アルキルであり、ここで隣接するR10基が結合して飽和環を形成し得る、
請求項2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記青緑色発光色を有するホスト材料が、
【化4】

という構造式Iを有するクリセンであり、式中、
− R14、R15およびR16は同じであるかまたは異なるものであり、H、D、アルキル、アルコキシ、シリル、シロキサンおよびNAr2からなる群から選択され、ここでR14、R15およびR16の少なくとも1つがNAr2であり;
− R17は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、D、アルキル、アルコキシ、シリルおよびシロキサンからなる群から選択されるかあるいは、隣接するR1基が互いに結合して5員または6員の脂肪族環を形成してよく;
− Arは出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アリール基であり;
− aは、0〜5の整数であり;
− bは、0〜4の整数である、
請求項1に記載の照明器具。
【請求項5】
前記青緑色の発光色を有するホストが、
【化5】

という構造式IIを有するクリセン誘導体であり、式中
− Ar1とAr3は同じかまたは異なるものであって、アリールであり、電子求引性置換基が全く存在しないことを条件として、Ar1とAr3の少なくとも1つが少なくとも1つのアルキル置換基を有し;
− Ar2とAr4が同じであるかまたは異なるものであり、アリールであり;
− R18、R19およびR21は同じであるかまたは異なるものであり、H、Dおよび電子求引基からなる群から選択され;
− R20は電子求引基であり;
− R22〜R27は同じであるかまたは異なるものであり、H、Dおよびアルキルからなる群から選択される、
請求項1に記載の照明器具。
【請求項6】
電界発光ドーパントが、IrL3という式を有するトリス−シクロメタル化錯体またはIrL2Yという式を有するビス−シクロメタル化錯体であり、式中Yはモノアニオン二座配位子であり、Lが
【化6】

という構造式L−18、L−19、L−20およびL−21からなる群から選択される構造式を有し、式中
− R1〜R6およびR28〜R37は同じかまたは異なるものであり、H、D、電子供与基、および電子求引基からなる群から選択され、
− *は、Irとの配位点を表わす、
請求項1に記載の照明器具。
【請求項7】
− R1〜R4およびR28〜R33が同じであるかまたは異なるものであり、H、D、アルキル、アルコキシまたはシリルであり;ここで配位子L−19中、(i)R1とR2、(ii)R2とR3および(iii)R3とR4のいずれか1つ以上が共に結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成でき;配位子L−19中、(iv)R30とR31および(v)R31とR32のいずれか1つ以上が共に結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成でき;配位子L−20中、(vi)R30とR31および(vii)R31とR32のいずれか1つ以上が共に結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成でき;配位子L−21中、(viii)R31とR31、(ix)R31とR32および(x)R32とR33のいずれか1つ以上が共に結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成でき;
34=H、D、F、アルキル、シリルまたはアルコキシ;
35=H、D、CN、アルキル、フルオロアルキル、フルオロアルコキシ、シリルまたはアリール;および
36=H、D、F、CN、アルキル、シリル、アルコキシ、フルオロアルコキシまたはアリール;および
37=H、D、CN、アルキル、フルオロアルキル、フルオロアルコキシまたはシリルである、
請求項6に記載の照明器具。
【請求項8】
Yが、
【化7】

というY−1、Y−2およびY−3からなる群から選択され、式中、
− R11は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から選択され;
− R12は、H、DまたはFであり;
− R13は、出現するごとに同じであるかまたは異なるものであり、アルキルおよびフルオロアルキルからなる群から選択される、
請求項2または6に記載の照明器具。
【請求項9】
ホスト:ドーパントの重量比が10:1〜1000:1の範囲内にある、請求項1に記載の照明器具。
【請求項10】
OLED照明器具の製造方法において、
第1の電極を基板上に有する該基板を提供するステップと;
− 青緑色である発光色を有する電界発光できるホスト材料と、赤/赤橙色である発光色を有する電界発光ドーパントとを分散させている液体媒質を含む液体組成物を堆積させるステップと;
− 前記堆積した組成物を乾燥させて電界発光層を形成するステップと;
− 第2の電極を全体に形成するステップと;
を含む方法。

【図2】
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【公表番号】特表2013−509724(P2013−509724A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537093(P2012−537093)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/054613
【国際公開番号】WO2011/059791
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】